JP2014015014A - プリフォームの製造方法および繊維強化プラスチックの製造方法と繊維強化プラスチック成形品 - Google Patents

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明祐 今堀
Keisuke Araki
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Abstract

【課題】プレプレグを用いた積層体を凹凸を有する所定形状のプリフォームに賦形するに際し、層間の必要部位に望ましいすべり性を簡単に付与でき、それによって容易に所望の形状のプリフォームに賦形することが可能なプリフォームの製造方法を提供する。
【解決手段】強化繊維とマトリックス樹脂とからなるプリプレグを、所定の形状に裁断した後、プリプレグを1枚以上積層した積層体を複数作製し、複数の積層体を、凹部と凸部との間にキャビティが形成されるプリフォーム型に順次配置して、順次プレス成形することにより、プリフォームを製造する方法であって、2体目以降の積層体をプレス成形する前に、少なくともプリフォーム型の凹部と凸部が相対する領域に配置される積層体間に、プリプレグのタック性を抑えるすべり性付与工程を有するプリフォームの製造方法、およびその方法により製造されたプリフォームを用いる繊維強化プラスチックの製造方法、その方法により製造された繊維強化プラスチック成形品。
【選択図】図1

Description

本発明は、プリプレグを用いたプリフォームの製造方法、その方法により製造されたプリフォームを用いる繊維強化プラスチックの製造方法、その方法により製造された繊維強化プラスチック成形品に関する。
強化繊維と半硬化状態のマトリックス樹脂からなるプリプレグを複数積層し、積層体を最終成形品の形状に近い形状を有するプリフォームに賦形し、賦形されたプリフォームを加熱、加圧するプレス成形により所望の繊維強化プラスチック成形品に成形する方法が知られている。
このような成形方法においては、プリプレグを所定の形状に裁断した後、裁断したプリプレグを複数積層することが多いが、このような積層体を所定の形状へと賦形してプリフォームを作製する際、所定の形状が三次元形状、とくに深絞り形状のように凹凸が存在する形状の場合、積層されたプリプレグの層間で適度にすべる必要があり、そのすべりによって各層が賦形しようとする形状に沿うことができるようになる。
しかし、一般に、半硬化状態のマトリックス樹脂を有するプリプレグは、多かれ少なかれタック性(粘着性)を有しているので、積層されたプリプレグの層間で望ましいすべりが生じにくいため、上記のような凹凸が存在する深絞り形状の場合、とくにR部等でプリプレグ間に貼り付きが発生してすべらず、目標とするプリフォーム形状への賦形ができないことがある。1層目のプリプレグを先に賦形し、その上に2層目のプリプレグを配置して次にそのプリプレグを賦形し、この賦形動作を順次繰り返していく場合においても、1層目のプリプレグのタック性により2層目のプリプレグがすべらず、同様の問題が生じる。
このようなプリプレグのプレス成形に際してのプリフォームの賦形に関して、プリプレグに切れ目を入れてプリプレグが三次元形状に沿いやすくなるようにする手法も提案されているが(例えば、特許文献1)、切れ目を入れる手間を要し、プリフォームの製造工程が煩雑になる。
また、プレス成形用プリプレグの取扱い性向上のため、マトリックス樹脂となるエポキシ系樹脂組成物の組成を工夫した提案もなされているが(例えば、特許文献2)、特殊な組成物を調合する必要があり、汎用性に乏しい。
さらに、積層されるプリプレグの表面近傍にポリアミド微粒子を分布させる技術も知られているが(例えば、特許文献3)、この技術は層間剪断強度の向上を目的としたものであり、すべり性付与の機能はない。
特開2010−18724号公報 特開2010−248379号公報 特開2009−286895号公報
そこで本発明の課題は、プレプレグを用いた積層体を凹凸を有する所定形状のプリフォームに賦形するに際し、プレプレグのタック性による層間のすべり不良に伴う問題を解消すべく、層間の必要部位に望ましいすべり性を簡単に付与でき、それによって容易に所望の形状のプリフォームに賦形することが可能なプリフォームの製造方法を提供し、さらに、その方法により製造されたプリフォームを用いる繊維強化プラスチックの製造方法、その方法により製造された繊維強化プラスチック成形品を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明に係るプリフォームの製造方法は、強化繊維とマトリックス樹脂とからなるプリプレグを、所定の形状に裁断した後、所定の形状に裁断したプリプレグを1枚以上積層した積層体を複数作製し、複数の積層体を、凹部と該凹部に対応する凸部を有し、前記凹部と前記凸部との間にキャビティが形成されるプリフォーム型に順次配置して、前記複数の積層体を順次プレス成形することにより、プリプレグを用いたプリフォームを製造する方法であって、2体目以降の積層体をプレス成形する前に、少なくとも前記プリフォーム型の前記凹部と前記凸部が相対する領域に配置される積層体間に、プリプレグのタック性を抑えるすべり性付与工程を有することを特徴とする方法からなる。
本発明においては、上記プリプレグの強化繊維として、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維等、さらにはこれらの任意の組み合わせを用いることができる。このようなプリプレグの強化繊維の形態は特に限定されず、例えば、織物の形態、または、強化繊維が一方向に配向された形態を有しているものとすることができる。また、マトリックス樹脂としては、熱硬化性樹脂であっても熱可塑性樹脂であってもよい。熱硬化性樹脂の場合、その主材は、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂などを例示することができ、1種類だけであっても、或いは2種類以上を混合して使用してもよい。特に前記エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、イソシアネート変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂などが挙げられる。これらのうち、1種類だけであっても、或いは2種類以上を混合して使用してもよい。これら熱硬化性樹脂をマトリックス樹脂に採用する場合、前記熱硬化性樹脂成分に適切な硬化剤や反応促進剤を添加することが可能である。また、熱可塑性樹脂の場合、その主材は、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、ポリスチレン樹脂、AS樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂、フッ素樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂などを例示でき、1種類だけであっても、或いは2種類以上を混合して使用してもよい。これら熱可塑性樹脂は単独でも、混合物でも、また共重合体であってもよい。混合物の場合には相溶化剤を併用してもよい。さらにまた、難燃剤として臭素系難燃剤、シリコーン系難燃剤、赤燐などを加えてもよい。
このような本発明に係るプリフォームの製造方法においては、2体目以降の積層体をプレス成形する前に、次に例示するようなすべり性付与工程が実行されるので、容易に、積層されるプリプレグのタック性が低く抑えられ、層間で良好なすべり性が発現される。その結果、複雑な三次元形状への賦形(プレス成形)であっても、とくに凹凸部やR部で層間の望ましいすべりが得られ、所望形状のプリフォームへの賦形が容易にかつ確実に行われる。また、以下に例示するような簡単なすべり性付与工程が介在されるだけなので、プリフォームの生産性も極めて優れている。
上記すべり性付与工程としては、例えば、積層体間への不織布の配置を含む工程を挙げることができる。ここで、用いられる不織布としては、室温で粘着性がなく、硬化後成形品の状態となった際に層間強度を低下させないものであればよく、例えば、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂性の不織布を使用できる。このような不織布が積層体間の必要部位に配置されることにより、その部位の層間で良好なすべり性が発現され、所望形状のプリフォームへの賦形が容易にかつ確実に行われる。また、上記不織布としては、ガラス繊維や炭素繊維の不織布でもよい。また、織物でもよい。ただし、ガラス繊維や炭素繊維の不織布、織物を使用した場合は、積層両側のプリプレグからマトリックス樹脂を含浸させ繊維強化プラスチックとする必要あるため、不織布、織物の厚みと、積層両側のプリプレグのマトリックス樹脂量に注意する必要がある。
また、別のすべり性付与工程として、例えば、積層体間への紛体の散布を含む工程を挙げることができる。ここで、用いられる粉体としては、室温で粘着性がなく、硬化後成形品の状態となった際に層間強度を低下させないものであればよく、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂でも、ナイロン、ポリエステル、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂でも、それらが混合した組成物であってもよい。このような紛体が積層体間の必要部位に散布されることにより、その部位の層間で良好なすべり性が発現され、所望形状のプリフォームへの賦形が容易にかつ確実に行われる。
また、別のすべり性付与工程として、例えば、積層体間への熱可塑性フィルムの配置を含む工程を挙げることができる。ここで、用いられるフィルムとしては、室温で粘着性がなく、硬化後成形品の状態となった際に層間強度を低下させないものであればよく、ナイロン、ポリエステル、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂からなるフィルム、それらが混合した組成物からなるフィルムであってもよい。このような熱可塑性フィルムが積層体間の必要部位に配置されることにより、その部位の層間で良好なすべり性が発現され、所望形状のプリフォームへの賦形が容易にかつ確実に行われる。
さらに、本発明では、上記すべり性付与工程が、積層体間への不織布の配置、積層体間への紛体の散布および積層体間への熱可塑性フィルムの配置の少なくとも2つの工程を含む工程であってもよい。このようにすれば、一層良好なすべり性を発現させることが可能になる。
本発明は、上記のような方法で製造されたプリフォームを使用して繊維強化プラスチックを成形する繊維強化プラスチックの製造方法についても提供する。上述の如く、良好なすべり性をもって所望形状への賦形が確実に行われたプリフォームを使用して繊維強化プラスチックを成形することができるので、優れた生産性をもって、機械特性に優れ、しかもそのばらつきの少ない繊維強化プラスチックを効率よく製造することができる。
さらに本発明は、このような方法で製造された繊維強化プラスチック成形品についても提供する。
このように、本発明によれば、タック性を有するプレプレグの積層体を用いてプリフォームに賦形する場合にあっても、賦形時のすべり不良を解消して必要部位に望ましいすべり性を簡単に付与できるようになり、それによって容易に所望の形状のプリフォームを効率よく製造することが可能になる。所望形状に賦形されたプリフォームを用いることにより、優れた生産性をもって、機械特性に優れ、機械特性のばらつきの少ない繊維強化プラスチックおよび繊維強化プラスチック成形品を効率よく確実に製造できるようになる。
本発明の一実施態様に係るプリフォームの製造方法を示す概略構成図である。 図1の方法により製造されたプリフォームあるいはそのプリフォームを用いて成形された繊維強化プラスチック成形品の斜視図である。
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施態様に係るプリフォームの製造方法を示しており、図2は、図1の方法により製造されたプリフォーム、あるいはそのプリフォームを用いて成形された、そのプリフォームと実質的に同じ形状を有する繊維強化プラスチック成形品を示している。
図1において、1は、強化繊維とマトリックス樹脂とからなるプリプレグを、所定の形状に裁断した後、所定の形状に裁断したプリプレグを1枚以上積層した積層体(プリプレグ積層体)を示している。このような積層体1が複数作製され(図示例では、積層体1a、1b)、複数の積層体1が、凹部(例えば、凹部4a)と該凹部に対応する凸部(例えば、凸部4b)を有し、それら凹部と凸部との間にキャビティ3が形成されるプリフォーム型2に順次配置され、複数の積層体1が順次プレス成形されることにより、プリプレグを用いたプリフォームが製造される。例えば、図示例においては、積層体1aがプリフォーム型2の下型2a上に配置され、上型2bを下降させてプレス成形され、その積層体1aの上に積層体1bが配置され、上型2bを下降させてプレス成形される。
このようなプリプレグを用いたプリフォームの製造において、2体目以降の積層体1bをプレス成形する前に、少なくともプリフォーム型2の上記凹部4aと凸部4bが相対する領域に配置される積層体1a、1b間に、プリプレグのタック性を抑えるすべり性付与工程を有している。本実施態様では、このすべり性付与工程は、積層体1a、1b間への不織布6の配置を含む工程からなる。用いられる不織布6としては、前述の如く、室温で粘着性がなく、硬化後成形品の状態となった際に層間強度を低下させないものであればよく、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂性の不織布でも、ガラス繊維等の不織布でもよい。また、図示例では、比較的平坦で比較的広い面積の面5でキャビティ3が形成されている領域では、不織布6は介在されていないが、介在させてもよい。このようなすべり性付与手段としての不織布6は、プレス成形によってプリプレグ側にめり込むので、不織布6を設置した部位の成形後の層間剥離強度の向上が期待できるため、本発明においてすべり性付与が望まれる領域に加えて、より広い領域まで延在されてもよい。
また、前述したように、すべり性付与工程としては、積層体間への紛体の散布を含む工程を採用してもよく、積層体間への熱可塑性フィルムの配置を含む工程を採用してもよく、積層体間への不織布の配置、積層体間への紛体の散布および積層体間への熱可塑性フィルムの配置の少なくとも2つの工程を含む工程であってもよい。用いられる粉体としては、前述したように、室温で粘着性がなく、硬化後成形品の状態となった際に層間強度を低下させないものであればよく、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂でも、ナイロン、ポリエステル、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂でも、それらが混合した組成物であってもよい。また、用いられる熱可塑性フィルムとしては、前述したように、室温で粘着性がなく、硬化後成形品の状態となった際に層間強度を低下させないものであればよく、ナイロン、ポリエステル、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂からなるフィルム、それらが混合した組成物からなるフィルムであってもよい。
上記のように、積層体1a、1b間への不織布6の配置を含む工程からなるすべり性付与工程を2体目以降の積層体1bをプレス成形する前に有することにより、2体目の積層体1b(さらには2体目以降の積層体1b)をプレス成形する際に、積層される積層体1bのプリプレグのタック性が低く抑えられ(さらには、下層側の積層体1aの表面のプリプレグのタック性も低く抑えられることになり)、層間で良好なすべり性が発現される。積層体1a、1b間の層間で良好なすべり性が発現される結果、たとえ複雑な三次元形状への賦形(プレス成形)であっても、とくに凹凸部やR部で層間の望ましいすべりが得られることとなる。
その結果、目標とする所望形状のプリフォーム、例えば、図2に示すような深絞り形状部を有するプリフォーム10への賦形が、優れた生産性をもって容易にかつ確実に行われる。プリフォーム10が目標とする所望形状に賦形されることにより、このプリフォーム10を用いて成形される繊維強化プラスチック成形品11もプリフォーム10と同等の目標とする所望形状を容易に有することができる。すなわち、機械特性に優れ、そのばらつきも少ない繊維強化プラスチック成形品11も、優れた生産性をもって効率よく、容易にかつ確実に製造されることになる。
本発明は、あらゆる分野における繊維強化プラスチックの製造に適用でき、とくに深絞り形状などの比較的複雑な三次元形状を有する成形品の製造に好適なものである。
1 プリプレグを1枚以上積層した積層体
2 プリフォーム型
2a 下型
2b 上型
3 キャビティ
4a 凹部
4b 凸部
5 比較的平坦で比較的広い面積の面
6 不織布
10 プリフォーム
11 繊維強化プラスチック成形品

Claims (8)

  1. 強化繊維とマトリックス樹脂とからなるプリプレグを、所定の形状に裁断した後、所定の形状に裁断したプリプレグを1枚以上積層した積層体を複数作製し、複数の積層体を、凹部と該凹部に対応する凸部を有し、前記凹部と前記凸部との間にキャビティが形成されるプリフォーム型に順次配置して、前記複数の積層体を順次プレス成形することにより、プリプレグを用いたプリフォームを製造する方法であって、
    2体目以降の積層体をプレス成形する前に、少なくとも前記プリフォーム型の前記凹部と前記凸部が相対する領域に配置される積層体間に、プリプレグのタック性を抑えるすべり性付与工程を有することを特徴とするプリフォームの製造方法。
  2. 前記すべり性付与工程が、積層体間への不織布の配置を含む、請求項1に記載のプリフォームの製造方法。
  3. 前記すべり性付与工程が、積層体間への紛体の散布を含む、請求項1に記載のプリフォームの製造方法。
  4. 前記すべり性付与工程が、積層体間への熱可塑性フィルムの配置を含む、請求項1に記載のプリフォームの製造方法。
  5. 前記すべり性付与工程が、積層体間への不織布の配置、積層体間への紛体の散布および積層体間への熱可塑性フィルムの配置の少なくとも2つの工程を含む、請求項1に記載のプリフォームの製造方法。
  6. 前記プリプレグの強化繊維が、織物の形態、または、強化繊維が一方向に配向された形態を有している、請求項1〜5のいずれかに記載のプリフォームの製造方法。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の方法で製造されたプリフォームを使用して繊維強化プラスチックを成形する、繊維強化プラスチックの製造方法。
  8. 請求項7に記載の方法で製造された繊維強化プラスチック成形品。
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