JP2014006192A - 溶液塗布方法、それを用いた等電点電気泳動用試験具の製造方法および製造装置 - Google Patents

溶液塗布方法、それを用いた等電点電気泳動用試験具の製造方法および製造装置 Download PDF

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Abstract

【課題】理想的な機能勾配を有する塗布膜の形成が容易となる溶液塗布方法を提供すること。
【解決手段】被塗布材上の塗布領域にモノマーを含む第1溶液を塗布する第1溶液塗布工程と、該第1工程後の前記被塗布材上の塗布領域に前記第1溶液をゲル化させるゲル化剤を含む第2溶液を塗布する第2溶液塗布工程とを含み、前記第1溶液塗布工程と前記第2溶液塗布工程を交互に複数回繰り返すことを特徴とする溶液塗布方法。
【選択図】図5

Description

本発明は、溶液塗布方法、それを用いた等電点電気泳動用試験具の製造方法および製造装置に関する。
電気泳動法は、溶液またはこれに浸漬した親水性の支持体などの媒体に電圧をかけることによって、該媒体中の荷電物質がその電荷に応じて電界中を移動する現象を利用した分離分析法である。特に、媒体としてゲルを用いる電気泳動(ゲル電気泳動法)は、タンパク質および核酸のような生体高分子を分離する手法として、生化学、分子生物学などの生命科学分野や臨床検査の分野などにおいて広く利用されている。
タンパク質の電気泳動法には、主として、タンパク質の大きさ(分子量)により分離する方法と、電荷(等電点)により分離する方法とがある。分子量による分離には、ポリアクリルアミドゲルを用いて、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)の存在下で行う電気泳動(SDS-PAGE法)が広く利用されている。SDS-PAGE法では、タンパク質は一定の割合でSDSと結合してその電荷密度が一定となり、この状態でタンパク質が網目状構造を有するポリアクリルアミド中を移動することで、タンパク質は分子ふるい効果により、その分子量に応じて分離される。
等電点による分離には、pH勾配の存在下で行う電気泳動(等電点電気泳動法)が利用されている。等電点電気泳動法では、pH勾配中で、タンパク質が自身の等電点と等しいpHの位置に集まることによって、タンパク質が分離される。等電点電気泳動法の媒体として、従来は両性担体が用いられていたが、近年では、通電中にpH勾配が崩れることのない固定化pH勾配(Immobilized pH Gradient:IPG)ゲルがよく用いられている。
近年では、生物が有する全タンパク質の構造および機能を網羅的に解析することを目的とするプロテオーム解析の一環として、上記の2つの電気泳動法を組み合わせた二次元電気泳動法が利用されている。二次元電気泳動法では、一次元目に等電点電気泳動が行われ、続く二次元目にSDS-PAGEが行われる。これにより、数千種類ものタンパク質を高い分解能で一挙に分離することが可能となった。
このように、ゲル電気泳動法はタンパク質などの生体高分子の分離分析に不可欠な手法であるが、いずれの電気泳動法においても分析の精度および再現性は、用いるゲルの品質によるところが大きい。したがって、当該分野においては、分解能の高いゲルを搭載した電気泳動用試験具を安定して製造可能な技術の開発が望まれている。
例えば、特許文献1には、濃度が異なる2種類のゲル原液を撹拌槽で混合し、その混合液をゲル容器内へ底部から導入してゲル化(重合)させることにより濃度傾斜を有するゲルシートを作製する方法が開示されている。この場合、ゲル容器内へ導入する混合液中の各ゲル原液の割合を変化させることによって、所定の濃度傾斜を有するSDS-PAGE用ゲルシートが得られる。また、特許文献1に記載のグラジェントメイカーを用い、pHが異なる2種類のゲル原液を撹拌槽で混合し、その混合液をゲル容器内へ底部から導入してゲル化させることによりpH傾斜を有するゲルシートを作製することができる。この場合、ゲル容器内へ導入する混合液中の各ゲル原液の割合を変化させることによって、所定のpH傾斜を有するゲルシートが得られ、このゲルシートをpH傾斜方向に所定の幅で切断して細長いプレート上に貼り付けることにより、等電点電気泳動用のゲルプレートが得られる。
特許文献1に記載のゲルプレート製造方法では、ゲル容器内での濃度傾斜またはpH傾斜の管理が難しく、安定した品質のゲルプレートが得られ難いという面があった。そこで、濃度傾斜またはpH傾斜を精度よく管理できる技術として、プレート上にモノマー溶液を塗布するゲルプレート製造方法が特許文献2に開示されている。すなわち、プレート上に液たまりを形成し、液たまりにモノマー溶液を吐出した後、ゲル化剤溶液を塗布して塗布膜をゲル化させることにより、基材上にゲル層を形成する。この場合、濃度またはpHが異なる2種類のモノマー溶液を混合比率を変化させながら混合して液たまりに塗布することにより、所定の濃度傾斜を有するSDS-PAGE用ゲルプレートまたは所定のpH傾斜を有する等電点電気泳動用のゲルプレートが得られる。
特許文献1および2のようにして作製されたゲル層を長期間保存できるようにするために、通常はゲル層を乾燥する。そして、使用時に乾燥膜に試料溶液を吸収させ膨潤させることにより、ゲル層を復元する。
特開昭62−167459号公報 特開2012−2739号公報
特許文献2に記載のゲル製造方法では、酸性モノマー溶液と塩基性モノマー溶液を個別に基材上の液たまりに塗布する際、酸性および塩基性モノマー溶液の単位面積当たりの塗布量の合計を一定とし、かつ各溶液の塗布量の比率を変化させながら基材上に1回塗布する。その後、基材上の酸性および塩基性モノマー溶液を含む塗布膜上にゲル化剤溶液を1回塗布することにより、塗布膜をゲル化させ、一方向にpH勾配を有するゲルを形成する。このゲル製造方法によれば、次の問題がある。
すなわち、図11に示すように、一方の溶液をX方向に1回で塗布する際、塗布量を階段状に増加させながら塗布することになり、階段上に塗布された塗布膜の高さが高くなると、重力により階段状の塗布膜の形状が崩れて均一な高さに変形する。あるいは、他方の溶液をX方向に1回で塗布する際、塗布量を階段状に減少させながら塗布することになり、塗布の初期段階で最も多い塗布量となるため、初期段階で塗布膜の形状が崩れる。なお、図11は従来の溶液塗布方法での塗布量分布を説明図する概念図であり、図11中の符号Sは基材を表している。
この結果、想定した塗布量からずれた量で基材S上の特定領域に各溶液が塗布されたことになってしまい、塗布膜のpH勾配が理想的状態から大きく逸脱してしまう。したがって、その後のゲル化工程を経て得られるゲル層は、理想的状態から大きく逸脱したpH勾配を有するゲル層となるため、高精度かつ信頼性の高い等電点電気泳動を行うことが困難となる。このように、異なる2種類の溶液を被塗布材に塗布してpHや濃度等の機能勾配を形成する場合、従来の塗布方法では理想的な機能勾配を得ることが困難であった。
また、酸性および塩基性モノマー溶液が混合した厚いモノマー塗布膜上にゲル化剤溶液を塗布するため、モノマー塗布膜の上層と下層ではゲル化剤の濃度にむらが生じ、膜厚方向に重合むらが発生し、この結果、膜厚方向でゲル孔サイズが異なるゲル層が形成されるという問題もある。
本発明は、このような課題を鑑みてなされたものであり、理想的な機能勾配を有する塗布膜の形成が容易となる溶液塗布方法を提供し、さらには、高精度かつ信頼性の高い等電点電気泳動を行うことができる試験具を前記溶液塗布方法に基づいて製造する方法および製造装置を提供することを目的とする。
かくして、本発明によれば、被塗布材上の塗布領域にモノマーを含む第1溶液を塗布する第1溶液塗布工程と、該第1工程後の前記被塗布材上の塗布領域に前記第1溶液をゲル化させるゲル化剤を含む第2溶液を塗布する第2溶液塗布工程とを含み、前記第1溶液塗布工程と前記第2溶液塗布工程を交互に複数回繰り返す溶液塗布方法が提供される。
本発明の溶液塗布方法では、モノマーを含む第1溶液(以下、「モノマー溶液」と言う場合がある)と、ゲル化剤を含む第2溶液(以下、「ゲル化剤溶液」と言う場合がある)とを交互に被塗布材上に塗布するため、モノマー溶液が塗布された直後に必ずゲル化剤溶液が塗布されることになる。これにより、モノマー溶液の塗布膜の1層毎にゲル化剤が混合してゲル化が進行するため、膜厚方向に均一にゲル化したゲル層を得ることができる。
また、前記第1および第2溶液塗布工程を交互に複数回繰り返すため、第1および第2溶液塗布工程1回当たりの塗布膜の高さを低くすることができることに加え、ゲルが進行して増粘したモノマー溶液の塗布膜上に、次のモノマー溶液を塗布することができる。この結果、上層のモノマー溶液と下層のモノマー溶液とが相互に拡散および混合する、下層のゲルの形状が崩れる、といった問題が生じない。この効果は、特に、理想的なpH傾斜を有するゲルを形成する場合に有効である。
したがって、本発明の溶液塗布方法に基づく電点電気泳動用試験具の製造方法によれば、膜厚方向の重合度が均一で、かつ理想的なpH傾斜を有するゲル層の形成が容易となり、高精度かつ信頼性の高い等電点電気泳動を行うことができる試験具を製造することが可能となる。
本発明の等電点電気泳動用試験具の製造方法で製造された試験具の実施形態1を示す斜視図である。 図1(A)の等電点電気泳動用試験具におけるゲル層を乾燥した後の保存可能な状態を示す斜視図である。 実施形態1の電気泳動用試験具を製造することができる装置を示す構成図である。 図2の製造装置におけるインクジェットヘッドを下方から見た概略底面図である。 図2の製造装置におけるインクジェットヘッドのノズル孔群を示す拡大図である。 本発明の溶液塗布方法での塗布工程を説明する概念図である。 図2の製造装置を用いて基材へ酸性モノマー溶液を塗布する状態を示す説明図である。 図6(A)から引き続いて基材へ塩基性モノマー溶液を塗布する状態を示す説明図である。 図6(B)から引き続いて基材へゲル化剤溶液を塗布する状態を示す説明図である。 図6(C)から引き続いて基材上の塗布膜へ光を照射する状態を示す説明図である。 図7(A)から引き続く1回目の塗布工程および一部ゲル化工程が終了した状態を示す説明図である。 図7(B)から引き続く2回目の塗布工程および一部ゲル化工程に入る前段階を示す説明図である。 n回目の塗布工程後の状態を示す説明図である。 図8(A)から引き続くゲル化完結工程を示す説明図である。 図8(B)から引き続くゲル化完結工程後の状態を示す説明図である。 実施形態2の電気泳動用試験具を製造することができる装置による1回目の塗布工程を示す説明図である。 図9(A)から引き続く1回目の一部ゲル化工程を示す説明図である。 n回目の塗布工程後に引き続くゲル化完結工程を示す説明図である。 実施形態3の電気泳動用試験具を製造することができる装置による製造方法を示す説明図である。 図10(A)から引き続く1回目の塗布工程および一部ゲル化工程が終了した状態を示す説明図である。 図10(B)から引き続く2回目の塗布工程および一部ゲル化工程を示す説明図である。 従来の溶液塗布方法での塗布量分布を説明する概念図である。
本発明の溶液塗布方法は、被塗布材上の塗布領域にモノマーを含む第1溶液を塗布する第1溶液塗布工程と、該第1工程後の前記被塗布材上の塗布領域に前記第1溶液をゲル化させるゲル化剤を含む第2溶液を塗布する第2溶液塗布工程とを含み、前記第1溶液塗布工程と前記第2溶液塗布工程を交互に複数回繰り返す。これにより、厚み方向の重合度が均一なゲル層を得ることができる。
本発明の溶液塗布方法において、モノマーを含む第1溶液は、1種類でも複数種類でもよく、特に、複数種類の場合は次のように構成されてもよい。
(1)前記第1溶液は、第1のpHを有する第1モノマー溶液と、前記第1のpHとは異なる第2のpHを有する第2モノマー溶液とを含む複数種類の溶液からなり、
前記第1溶液塗布工程は、前記被塗布材上の塗布領域に前記第1モノマー溶液を単位面積当たりの塗布量を変化させながら一方向に塗布する第1モノマー塗布工程と、前記被塗布材上の塗布領域に前記第2モノマー溶液を単位面積当たりの塗布量を変化させながら一方向に塗布する第2モノマー塗布工程とを含んでもよい。
この構成によれば、pH傾斜を有するゲル層を形成する場合に、pH傾斜材料が前記一方向へ過度に拡散することを防止でき、pH傾斜度、pH位置ぶれ、ぼやけのないpH傾斜を有するゲル層を形成することができる。
(2)前記第1溶液塗布工程において、前記第1モノマー溶液と前記第2モノマー溶液の単位面積当たりの塗布量合計が前記塗布領域全体に亘って均一であるように塗布してもよい。
この構成によれば、被塗布材の塗布領域全体に亘って均一な厚さの塗布膜(表面に凹凸がない塗布膜)を形成することができる。また、第1および第2モノマー溶液のモノマー濃度が等しい場合に、塗布領域全体に亘ってモノマー濃度が均一な塗布工程を行うことができる。この結果、ゲル孔サイズが均一なゲル層を形成することができる。
(3)前記第1溶液の塗布および前記第2溶液の塗布が、インクジェット装置を用いて行われてもよい。インクジェット装置を用いれば、得ようとする塗布膜の形成領域、膜厚、pH傾斜等を容易かつ高精度に制御することができる。
(4)前記第2溶液塗布工程と、第2溶液塗布工程後に行う前記第1溶液塗布工程との間に、前記第1および第2溶液を含む塗布膜の一部を進行させる一部ゲル化工程を含んでもよい。
この構成によれば、下層のモノマー溶液を増粘する程度にゲル化させ、半ゲル化した下層ゲル上に次のモノマー溶液を塗布することができるため、上層ゲルと下層ゲルとの間でゲルの結合性および均一性が損なわれることがない。
(5)前記第2溶液に含まれるゲル化剤が光重合剤であり、
前記一部ゲル化工程において、前記被塗布材上の前記第1および第2溶液を含む塗布膜に、この塗布膜の一部がゲル化する光量の光を照射してもよい。
この構成によれば、一部ゲル化工程を、低コストで容易かつ高精度に制御することができる。
なお、本発明において、一部ゲル化工程はこの方法に限定されず、例えば、ゲル化剤として、熱によりモノマー溶液の重合反応の活性度が増加する熱重合開始剤を用い、第1および第2溶液を含む塗布膜を昇温させてゲル化の一部を進行させてもよい。
また、本発明の別の観点によれば、前記溶液塗布方法に基づいて前記被塗布材上に前記第1および第2溶液を含む塗布膜を形成した後、この塗布膜のゲル化を完結させるゲル化完結工程を行う等電点電気泳動用試験具の製造方法が提供される。
また、本発明のさらに別の観点によれば、前記等電点電気泳動用試験具の製造方法に用いられる等電点電気泳動用試験具の製造装置であって、ステージと、該ステージ上に設置された前記被塗布材上の塗布領域に前記第1溶液を塗布する第1溶液塗布部と、前記被塗布材上の塗布領域に前記第2溶液を塗布する第2溶液塗布部と、前記被塗布材上の前記第1および第2溶液を含む塗布膜中のゲル化を促進させるゲル化促進部とを備えた等電点電気泳動用試験具の製造装置が提供される。
以下、図面を参照しながら本発明の溶液塗布方法、それを用いた等電点電気泳動用試験具の製造方法および製造装置の実施形態について詳説する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
(実施形態1)
図1(A)は本発明の等電点電気泳動用試験具の製造方法で製造された試験具GP1の実施形態1を示す斜視図であり、図1(B)は図1(A)の等電点電気泳動用試験具GP1におけるゲル層G1を乾燥した後の保存可能な状態を示す斜視図である。
図1(A)に示す等電点電気泳動用試験具GP1は、基材S上に蒲鉾状のゲル層G1が形成されたものである。このゲル層G1は、緩やかな凸曲面となった上面(基材と反対側の面)を有している。ゲル層G1を含水率5%以下に乾燥させることにより、ゲル層G1が乾燥して乾燥膜D1となった図1(B)に示す等電点電気泳動用試験具GPD1が得られる。
本発明において、ゲル層G1の長さおよび幅は、基材の長さおよび幅と同じである。基材の長さおよび幅は特に限定されないが、一例としては、長さは50〜250mm程度であり、幅は0.5〜5mm程度である。ゲル層G1の膜厚は特に限定されないが、例えば、195〜1010μm程度である。
このゲル層を乾燥した乾燥膜の膜厚は100μm以下に収縮するが、長さおよび幅はほとんど変化しない。
電気泳動用試験具の基材Sの形態は、特に限定されるものではなく、例えば、細長プレート、所定形状に成型したチップ等が挙げられる。基材Sの材料としては、電気泳動用試験具の基材としての機能が発揮できるものであれば特に限定されず、例えば、石英ガラス、無アルカリガラス等のガラス、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)等の樹脂、アルミナ、低温同時焼成セラミック等のセラミックスなどが挙げられる。また、基材Sが疎水性材料からなる場合、基材Sにおけるゲル層が形成される面を親水性処理してもよく、これにより基材Sに対するモノマー溶液の濡れ性が向上し、モノマー溶液がゲル化したゲル層と基材Sとの密着性が向上する。親水性処理としては、硫酸を用いたニトロ化、硝酸を用いたスルホン化、酸素プラズマ処理等が挙げられる。
電気泳動用試験具GP1のゲル層G1の材料は、電気泳動用試験具のゲル層としての機能が発揮できるものであれば特に限定されず、例えば、一般的なポリアクリルアミドゲルの材料としては、アクリルアミド(モノマー)、ビスアクリルアミド(架橋剤)、pH調整材料(pHバッファ)、テトラメチルエチレンジアミン(TEMED:重合促進剤)、重合開始剤および純水が挙げられる。重合開始剤として、モノマーを光重合させる場合はリボフラビン類、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン等のアセトフェノン類、ベンゾフェノン類、アゾイソブチロニトリル類等の光重合開始剤を用いることができ、モノマーを熱重合させる場合は過硫酸アンモニウム(APS)過酸化ベンゾイル等の熱重合開始剤を用いることができる。
本発明において、基材S上にゲル材料を塗布する方法は特に限定されず、基材S上面の所定領域にゲル材料を塗布できるものであればよく、例えば、ピペッター、ディスペンサー、インクジェット装置等が挙げられる。これらの中でも、高精度に微小液滴を吐出して基材に付着させるインクジェットヘッドを備えたインクジェット装置を用いることが好ましい。インクジェットヘッドを用いれば、細長い基材Sの所定領域にも高精度かつ定量的に微小液滴を塗布することができるため、得ようとするゲル層G1の形成領域、膜厚、pH勾配および濃度勾配等を容易かつ高精度に制御することができる。
次に、図1(A)に示す試験具GP1を製造することができる装置について説明し、その後でこの装置を用いて試験具GP1を製造する方法について説明する。
図2は実施形態1の電気泳動用試験具を製造することができる装置を示す構成図である。この試験具製造装置は、基材Sがセットされるステージ10と、塗布部としてのインクジェット装置30と、ステージ10を直線方向に移動させる移動機構40と、ゲル化促進部と、これらを収納する密閉可能なケース60と、図示しない制御部とを備える。なお、ケース60には図示しない開閉扉が設けられている。
移動機構40は、ステージ10を支持する支持台40aを有し、この支持台40aが図示しないリニアガイド機構によって直線方向(矢印M1、M2方向)に往復移動可能とされている。
図2において、実線で示された支持台40aは待機位置にあり、塗布工程において2点鎖線で示された位置まで支持台40a、ステージ10および基材Sは直進することができる。これにより、ステージ10上にセットされた基材Sは、後述する第1〜第3インクジェットヘッド31b、32b、33bの真下を通過する。
インクジェット装置30は、第1溶液塗布部と、第2溶液塗布部と、負圧調製部34とを備える。実施形態1の場合、第1溶液塗布部は酸性溶液吐出部31と塩基性溶液吐出部32からなり、第2溶液塗布部はゲル化剤溶液吐出部33からなる。
酸性溶液吐出部31は、酸性モノマー溶液Aを貯蔵する第1タンク31aと、第1インクジェットヘッド31bと、第1タンク31aから第1インクジェットヘッド31bへ酸性モノマー溶液Aを送る第1パイプ31cとを有し、水頭差を利用して第1タンク31aから第1インクジェットヘッド31bへ酸性モノマー溶液Aが供給されるように構成されている。
塩基性溶液吐出部32は、塩基性溶液Bを貯蔵する第2タンク32aと、第2インクジェットヘッド32bと、第2タンク32aから第2インクジェットヘッド32bへ塩基性溶液Bを送る第2パイプ32cとを有し、水頭差を利用して第2タンク32aから第2インクジェットヘッド32bへ塩基性モノマー溶液Bが供給されるように構成されている。
ゲル化剤溶液吐出部33は、ゲル化剤溶液Cを貯蔵する第3タンク33aと、第3インクジェットヘッド33bと、第3タンク33aから第3インクジェットヘッド33bへゲル化剤溶液Cを送る第3パイプ33cとを有し、水頭差を利用して第3タンク33aから第3インクジェットヘッド33bへゲル化剤溶液Cが供給されるように構成されている。なお、実施形態1の場合、ゲル化剤としては光重合開始剤が用いられている。
第1〜第3インクジェットヘッド31b〜33bとしては、サーマルジェット方式、ピエゾジェット方式、静電駆動方式等が挙げられるが、インクジェット装置30における各液(酸性モノマー溶液A、塩基性モノマー溶液B、ゲル化剤溶液C)を冷却する場合は、各液に熱を加えるサーマルジェット方式を用いず、ピエゾジェット方式または静電駆動方式を用いることが望ましい。
負圧調整部34は、第1〜第3タンク31a〜33aとパイプ35〜37にて接続されており、第1から第3のタンク内の気圧を管理し、第1〜第3インクジェットヘッド31b〜33bのノズル孔H(図4参照)から液が垂れ落ちない所定の圧力となるよう、第1〜第3タンク31a〜33a内を大気圧より低い所定圧で一定になるように調整する。
第1〜第3インクジェットヘッド31b〜33bは一体化されて1組の吐出ヘッドユニットU1が構成されており、この吐出ヘッドユニットU1は図示しない固定部材にて固定されている。そして、図3に示すように、この基材Sの移動軌跡E上に、第1〜第3インクジェットヘッド31b〜33bは一列で配置されているが、ヘッド配置順はこの順番に限定されない。なお、実施形態1の場合、基材Sの搬送方向(矢印M1方向)の上流側から第1〜第3インクジェットヘッド31b〜33bの順で配置されている。
また、図3と図4に示すように、基材Sの移動軌跡Eと対向する第1〜第3インクジェットヘッド31b〜33bの下面には、移動軌跡Eの方向と直交する方向に複数のノズル孔Hが1列で設けられている。すなわち、1列のノズル孔群HGが、移動軌跡Eの方向と直交する方向に、かつ移動軌跡Eの幅を超える長さで延びている。ノズル孔径Dおよびノズル孔間隔Pは特に限定されないが、ノズル孔Hの径は10〜100μm程度が適当であり、ノズル孔間隔Pは100〜200μm程度が適当である。なお、ノズル列が直線状に配置されている場合、ヘッド向きを傾けることで見掛け上、ノズル孔間隔を狭くする方法も使用できる。また、第1〜第3インクジェットヘッド31b〜33bにおいて、ノズル孔群HGは2列以上の複数列で設けられていてもよい。
図2と図3に示すように、ゲル化促進部は、基材S上の塗布膜に光を照射する光照射器50であり、吐出ヘッドユニットU1の基材搬送方向(矢印M1方向)の下流側の側面に設けられている。この光照射器は、所定波長の光(例えば、200〜600nm程度)を所定光量で照射することができ、その下面には光照射口50aが設けられている。なお、照射光波長は、使用する光重合開始剤の種類に応じて適切に設定される。
次に、前記構成を有する試験具製造装置を用いて試験具GP1を製造する方法の一例について説明するが、等電点電気泳動用試験具GP1は、本発明の溶液塗布方法に基づく製造方法によって製造することができるため、先ず、溶液塗布方法について説明する。
図5は本発明の溶液塗布方法での塗布量分布を説明する概念図である。
本発明の溶液塗布方法は、被塗布材Sx上の塗布領域にモノマーを含む第1溶液を塗布する第1溶液塗布工程と、第1工程後の被塗布材Sx上の塗布領域に第1溶液をゲル化させるゲル化剤を含む第2溶液を塗布する第2溶液塗布工程とを含み、第1溶液塗布工程と第2溶液塗布工程を交互に複数回繰り返す方法である。この場合、第1溶液は前記酸性モノマー溶液Aと前記塩基性モノマー溶液Bの2種類からなり、第2溶液は前記ゲル化剤溶液Cからなる。
第1溶液塗布工程において、塗布方向は矢印X方向であれば、左から右でも右から左でもどちらでもよく、左から右へ塗布する場合、塗布領域に酸性モノマー溶液を単位面積当たりの塗布量を徐々に減少しながら塗布し、かつ塗布領域に塩基性モノマー溶液を単位面積当たりの塗布量を徐々に増加させながら塗布する。右から左へ塗布する場合はこの逆である。また、塗布領域全体に亘って酸性モノマー溶液の塗布量と塩基性モノマー溶液の塗布量の合計は均一である。
第2溶液塗布工程においても、塗布方向は矢印X方向であれば、左から右でも右から左でもどちらでもよいが、第1溶液塗布工程と並行して第2溶液塗布工程を行う場合は、第1溶液塗布工程と同じ塗布方向とする。また、第2溶液塗布工程において、ゲル化剤溶液の塗布量は、塗布領域全体に亘って均一である。
この溶液塗布方法によれば、最終的に得ようとする塗布膜の厚みを、1回の塗布で形成するのではなく、複数回の塗布により徐々に厚く形成していくため、塗布1回当たりの塗布量を低減することができる。この結果、各回の塗布における塗布膜の形状崩れによる移動を抑制することができ、理想的なpH傾斜を有する塗布膜を形成し易くなる。
それに加え、例えば、塗布1回目において、酸性モノマー溶液と塩基性モノマー溶液とが混合し、理想的なpH傾斜を有する混合モノマー塗布膜が形成され、混合モノマー塗布膜上にゲル化剤溶液が塗布されるため、理想的なpH傾斜を維持した状態で混合モノマー塗布膜のゲル化が進行して増粘していく。そして、塗布2回目以降も同様に行われるが、増粘した混合モノマー塗布膜(半固化ゲル)上に、次の酸性および塩基性モノマー溶液が塗布されるため、塗布2回目以降の酸性および塩基性モノマー溶液によって下層の半固化ゲルの液移動が生じ難くなっている。このことが、理想的なpH傾斜を維持した状態で各層の混合モノマー塗布膜をゲル化させることに繋がる。
この溶液塗布方法において、第1溶液塗布工程と第2溶液塗布工程を交互に繰り返す回数、第1および第2溶液の組成等は特に限定されないが、1回目に行った第1および第2溶液塗布工程と全く同じ条件で2回目以降を繰り返す必要がある。これにより、1回目の第1および第2溶液塗布工程によって被塗布材Sx上に理想的なpH傾斜を有するモノマー塗布膜が形成され、2回目以降は理想的なpH傾斜を維持しながらモノマー塗布膜が段階的に厚くなっていく。
ところで、第1および第2溶液塗布工程によって、酸性および塩基性モノマー溶液が混合した混合モノマー塗布膜上にゲル化剤溶液を塗布することで、混合モノマー塗布膜のゲル化が進行していくが、この際のゲル化進行速度を制御しない場合は下記の問題が発生する可能性がある。
通常、ゲル化進行速度を制御しない場合は、混合モノマー塗布膜上にゲル化剤溶液を塗布した直後からゲル化が開始し、その後ゲル化終了前までほぼ一定の速度でゲル化が進行し、ゲル化終了時点でゲル化速度が略ゼロとなる。
ここで、混合モノマー塗布膜のゲル化進行速度が遅過ぎる場合は、ゲル化終了までに時間がかかり過ぎるため、その間にpH傾斜が崩れてしまうおそれがある。
反対に、ゲル化進行速度が速過ぎる場合、次回のモノマー溶液を塗布するタイミングとしては、(A)モノマー溶液のゲル化が概ね終了し、ゲル化剤の活性が概ね失われた状態と、(B)モノマー溶液のゲル化が継続中であり、ゲル化剤が活性な状態の2種類が想定される。
(A)の場合、次回の混合モノマーを塗布する時間までに、混合モノマー塗布膜のゲル化が概ね終了するほどまでにゲル化が過剰に進行することで、混合モノマー塗布膜の上層が固化しているため、次の第1溶液塗布工程で塗布した第1溶液(酸性および塩基性モノマー溶液)の液滴が混合モノマー塗布膜の上層とほとんど混合せずにたまる。この結果、上層と下層の界面でゲル層の結合力が低下し、全体として均質なゲル層が形成できなくなるおそれがある。
(B)の場合、次回のモノマー溶液は小体積の液滴で前回のモノマー溶液中に塗布されるため、塗布されたモノマー溶液は前回モノマー溶液中のゲル化剤によって液滴の形状で瞬時にゲル化され、粒状のゲルとなって前回のモノマー溶液の上層に積層することになる。よって、このような場合であっても全体としてゲル層の均質性が損なわれるおそれがある。
上記の問題より、材料の拡散防止の観点からはゲル化進行速度は速いことが望ましく、ゲル全体の均一性向上の観点からはゲル化進行速度が遅いことが望ましい。よって、ゲル化進行速度を制御しない場合は、これらの要望を同時に満たすことができない。
そこで、本発明の溶液塗布方法の好ましい実施形態では、第2溶液塗布工程と、第2溶液塗布工程後に行う第1溶液塗布工程との間に、第1および第2溶液を含む塗布膜のゲル化の一部を進行させる一部ゲル化工程が含まれる。つまり、この一部ゲル化工程では、酸性モノマー溶液と塩基性モノマー溶液とゲル化剤溶液とが混合してなるゲル化剤含有塗布膜を、ゲル化が完結しない(ゲル化が飽和しない)程度にゲル化を進行させる。これにより、より膜厚方向に均質なゲル層を形成することが可能となる。
実施形態1の場合、一部ゲル化工程において、ゲル化剤含有塗布膜に光を照射してモノマーの光重合を促進させる。このとき、ゲル化含有塗布膜が完全にゲル化しない程度の光量の光を、各第2溶液塗布工程の後の被塗布材Sx上のゲル化剤含有塗布膜に照射する。
等電点電気泳動用試験具GP1の製造方法では、前記溶液塗布方法に基づいて被塗布材Sx上に第1および第2溶液を含む塗布膜を形成した後、この塗布膜のゲル化を完結させるゲル化完結工程を行う。これにより、全体的に均質であり、かつ理想的なpH勾配を有するゲル層を形成することができる。
以下、前記構成を有する試験具製造装置を用いて試験具GP1を製造する方法の一例について説明する。
先ず、図2に示すように、待機位置にあるステージ10上に細長い矩形の基材Sをセットする。
次に、所定のプログラムに基づく常温大気圧下での塗布工程が行われる。詳しく説明すると、図6(A)に示すように、基材Sの一端S1がインクジェット装置30の第1インクジェットヘッド31bのノズル孔群HGの真下位置まで移動したところで、第1インクジェットヘッド31bから酸性モノマー溶液の微小液滴Laが吐出されて基材S上に塗布される。これにより、酸性モノマー溶液の塗布膜L1が基材Sの一端S1側に形成される。この場合、ステージ10上に微小液滴Laが吐出されないように、第1インクジェットヘッド31bにおけるノズル孔群HGのうちから微小液滴Laを吐出するノズル孔Hが選択されており、これについては第2および第3インクジェットヘッド32b、33bでも同様である。
そして、図6(B)に示すように、基材Sの一端S1が第2インクジェットヘッド32bのノズル孔群HGの真下位置まで移動したところで、第2インクジェットヘッド32bから塩基性モノマー溶液の微小液滴Lbが吐出されて塗布膜L1上に塗布される。これにより、酸性モノマー溶液と塩基性モノマー溶液とが混合した混合モノマー溶液の塗布膜L2が基材Sの一端S1側に形成される。
そして、図6(C)に示すように、基材Sの一端S1が第3インクジェットヘッド33bのノズル孔群HGの真下位置まで移動したところで、第3インクジェットヘッド33bからゲル化剤溶液の微小液滴Lcが吐出されて塗布膜L2上に塗布される。これにより、酸性モノマー溶液と塩基性モノマー溶液とゲル化剤溶液とが混合した混合溶液の塗布膜L3が基材Sの一端S1側に形成される。
そして、図7(A)に示すように、基材Sの一端S1が光照射器50に接近したところで、光照射器50から下方に向かって所定波長の光50L1が照射される。このときの光50L1の光量は、酸性モノマー溶液と塩基性モノマー溶液とゲル化剤溶液とが混合した混合溶液の塗布膜L3のゲル化が完結しない程度に設定されている。塗布膜L3に光50L1が照射されることにより、塗布膜L3は完全にゲル化しない程度にゲル化し、基材S上に半固化ゲルLg1が形成される。
このように、酸性モノマー溶液、塩基性モノマー溶液およびゲル化剤溶液が順次基材Sの塗布領域全体に塗布され、これらの混合溶液の塗布膜L3全体に光照射器50からの光50L1が照射される。そして、基材Sの他端S2が第1〜第3インクジェットヘッド31b〜33bのノズル孔群HGの真下位置を通過すると、酸性モノマー溶液、塩基性モノマー溶液およびゲル化剤溶液の吐出が停止し、1回目の第1および第2溶液塗布工程が終了する。また、基材Sの他端S2が光照射器50の真下を通過すると、光照射器50からの光照射が停止し、1回目の一部ゲル化工程が終了する。
次に、図7(C)に示すように、移動機構40の支持台40aが逆方向(矢印M2方向)に移動してステージ10と共に基材Sが逆方向に移動し、2回目の第1および第2溶液塗布工程の待機位置へ戻る。その後は、図6(A)〜図7(C)を所定回数繰り返す。これにより、基材S上に半固化ゲルLg1が複数積層されて、図8(A)に示す所望の厚さの半固化ゲルLgnが形成される。
その後、基材Sが矢印M1方向に移動すると共に、図8(B)に示すように、光照射器50から光50L2が半固化ゲルLgnに照射される。このときの光50L2の光量は、半固化ゲルLgnのゲル化が完結する程度に設定されている。そして、半固化ゲルLgn全体に光50L2が照射されることにより、図8(B)に示すように、基材S上に完全にゲル化したゲル層G1を有する等電点電気泳動用試験具GP1が得られる(図1(A)参照)。なお、このような塗布工程における試験具製造装置の一連の動作は、所定のプログラムに基づいて制御部が各駆動部を制御することにより行われる。
等電点電気泳動用試験具GP1のゲル層G1を乾燥することにより、図1(B)に示す等電点電気泳動試験具GPD1が得られる。この乾燥工程において、ゲル層G1を乾燥する方法は特に限定されず、例えば、ゲル層G1をヒーターにて加熱する、あるいはゲル層G1に熱風を吹き付けて乾燥する方法が挙げられる。さらに、乾燥工程後に、乾燥膜D1を−20℃以下に冷却する冷却工程を行ってもよい。あるいは、乾燥工程および冷却工程の代わりに、フリーズドライ工程を行ってもよい。
(実施形態2)
図9は実施形態2の電気泳動用試験具を製造することができる装置による製造方法を示す説明図である。なお、図9において、図6(A)〜図8(C)中の要素と同様の要素には同一の符号を付している。
実施形態1では、各回の第1および第2溶液塗布工程と並行して各回の一部ゲル化工程を行う場合を例示した。実施形態2では、各回の第1および第2溶液塗布工程が終了した時点で各回の一部ゲル化工程を行う場合を説明する。
実施形態2の電気泳動用試験具の製造装置では、実施形態1における光照射器50の代わりに、停止した基材S全体に光を照射できるランプKが設けられる。このランプKは、吐出ヘッドユニットU1の基材移動方向の下流側に配置される。なお、実施形態3の電気泳動用試験具の製造装置におけるその他の構成は、実施形態1と同様である。
実施形態2の溶液塗布方法は、図9(A)に示すように、基材Sが矢印M1方向に移動する際は、実施形態1の図6(A)〜(C)と同様の工程が行われ、それにより基材S上に酸性モノマー溶液と塩基性モノマー溶液とゲル化剤溶液とを含む塗布膜L3が形成されていく。そして、図9(B)に示すように、基材Sの他端S2が吐出ヘッドユニットU1を通過し、基材S全体がランプKの真下で停止した後、基材S上の塗布膜L3に向かってランプKから光Kx1が照射されて一部ゲル化工程が行われる。このときの光Kxの波長および光量は、実施形態1の光照射器50の光50L1の波長および光量と同様である。
そして、図9(A)と(B)で示した工程を複数回繰り返すことにより、図9(C)に示すように、所定厚さまで基材S上に塗布膜Lgnが形成され、その後、塗布膜Lgnに向かってランプKから光Lx2が照射されてゲル化完結工程が行われる。
(実施形態3)
図10(A)は実施形態3の電気泳動用試験具を製造することができる装置による製造方法を示す説明図であり、図10(B)は図10(A)から引き続く1回目の塗布工程および一部ゲル化工程が終了した状態を示す説明図であり、図10(C)は図10(B)から引き続く2回目の塗布工程および一部ゲル化工程を示す説明図である。なお、図10(A)〜(C)において、図6(A)〜図8(C)中の要素と同様の要素には同一の符号を付している。
実施形態1では、基材Sが一方向(矢印M1方向)に移動したときに、第1・第2溶液塗布工程および一部ゲル化工程を行うことができる場合を例示した。実施形態3では、基材Sが往復移動する間に、第1・第2溶液塗布工程および一部ゲル化工程を行うことができる場合を説明する。
実施形態1で説明した吐出ヘッドユニットU1では、矢印M1方向の上流側から酸性モノマー溶液を吐出する第1インクジェットヘッド31b、塩基性モノマー溶液を吐出する第2インクジェットヘッド32b、およびゲル化剤溶液を吐出する第3インクジェットヘッド33bがこの順に配置され、最下流側に光照射器50が配置されている。
実施形態3における吐出ヘッドユニットU2では、ゲル化剤溶液を吐出する第4インクジェットヘッド34bと光照射器51がさらに1個ずつ追加されている点が、実施形態1とは大きく異なる。追加された第4インクジェットヘッド34bは、吐出ヘッドユニットU2の矢印M1方向の最上流側に配置され、追加された光照射器51は第4インクジェットヘッド34bの上流側に配置されている。図示省略するが、第4インクジェットヘッド34bは、ゲル化剤溶液吐出部33(図2参照)の第3パイプ33cの分岐した分岐パイプと接続されており、第3パイプ33cのもう一方の分岐パイプは第3インクジェットヘッド33bと接続されている。なお、実施形態2の電気泳動用試験具の製造装置におけるその他の構成は、実施形態1と同様である。
実施形態3の溶液塗布方法は、図10(A)に示すように、基材Sが矢印M1方向に移動する際は、実施形態1の図6(A)〜図7(B)と同様の工程が行われ、それにより、図10(B)に示すように、基材S上に半固化ゲルLg1が形成される。その後、図10(C)に示すように、基材Sが逆方向(矢印M2方向)に移動し、2回目の第1溶液塗布工程および一部ゲル化工程が行われる。このとき、第1溶液塗布工程では、基材Sの他端S2側から塩基性モノマー溶液の微小液滴Lb、酸性モノマー溶液の微小液滴La、およびゲル化剤溶液の微小液滴Ldがこの順で塗布される。また、一部ゲル化工程では、光照射器51から光51L1が照射される。
そしてこの後は、基材Sを往復移動しながら同様の工程を行うことができる。実施形態2によれば、基材Sの往復移動中に第1・第2溶液塗布工程および一部ゲル化工程を行うことができるため、実施形態1よりも効率よく所定厚さの半固化ゲルを形成することができる。
(実施形態4)
実施形態4では、実施形態2におけるランプK(図9(A)参照)を、実施形態3における光照射器50、51を有さない吐出ヘッドユニットU2(図10参照)の基材移動方向の両側に配置する。これにより、実施形態3のように基材が往復移動する間に第1・第2溶液塗布工程および一部ゲル化工程を行うことができる。
(他の実施形態)
1.実施形態1および2では、第1溶液として、モノマーを含む酸性溶液とモノマーを含む塩基性溶液の2種類を用いて、pH傾斜を有するゲル層を形成する場合を例示したが、第1溶液としてはモノマーを含みかつpHバッファを含まないモノマー溶液の1種類のみを用いることもできる。この場合、基材上に第1溶液(モノマーを含みかつpHバッファを含まないモノマー溶液)を塗布量を変化させながらあるいは均一濃度で塗布する。続いて、第2溶液(ゲル化剤)を塗布したのち、一部ゲル化工程を行う。以後、これらの工程を繰り返すことで、積層構造のゲル層を形成できる。このようにして形成したゲルは、例えば、二次元電気泳動における二次元目のSDS-PAGEに用いることができる。
2.実施形態1および2では、光重合によりモノマーを重合させてゲルを形成する場合を例示したが、熱重合によりモノマーを重合させてゲルを形成してもよい。この場合、電気泳動用試験具の製造装置において、基材Sを載置するステージを環状軌道上を一方向に移動するよう構成すると共に、環状軌道に沿って吐出ヘッドユニットU1およびヒーターを配置する。このようにすれば、基材S上に1回目の混合モノマー溶液の塗布膜が形成されると、この塗布膜がヒーターにて加温されてゲル化の一部が進行し、その後、これらの工程を繰り返し行うことができ、最後に、ゲル化が完結する温度で塗布膜を加熱してゲル化完結工程を行うことができる。
3.実施形態1および2では、塗布工程において、基材上に常温状態の塗布膜を形成する場合を例示したが、ペルチェ素子やタンク冷却部を備えた装置を用い、基材上に冷却下で塗布膜を形成してもよい。また、実施形態1では、塗布工程において大気下で塗布膜を形成する場合を例示したが、窒素雰囲気下で塗布膜を形成してもよい。
本発明の溶液塗布方法は、実施形態1で説明したようなpH勾配を有する塗布膜およびゲル層を形成するのに好適であるが、これ以外にも、例えば、濃度の異なる2種類の溶液を被塗布材上に塗布して所定の濃度勾配を有する塗布膜を形成する場合にも適用できる。さらには、粒子径の異なる微粒子が溶媒中に分散した2種類の微粒子分散液を被塗布材上に塗布して、大きい粒子径の割合が徐々に増加する粒子径勾配を有する塗布膜を形成する場合にも本発明の溶液塗布方法を適用できる。
A 酸性モノマー溶液
B 塩基性モノマー溶液
C ゲル化剤溶液
1 乾燥膜
GP1 使用可能な状態となった等電点電気泳動用試験具(ゲルプレート)
GPD1 保存可能な状態となった等電点電気泳動用試験具
1 ゲル層
S 基材
Sx 被塗布材

Claims (10)

  1. 被塗布材上の塗布領域にモノマーを含む第1溶液を塗布する第1溶液塗布工程と、該第1工程後の前記被塗布材上の塗布領域に前記第1溶液をゲル化させるゲル化剤を含む第2溶液を塗布する第2溶液塗布工程とを含み、前記第1溶液塗布工程と前記第2溶液塗布工程を交互に複数回繰り返すことを特徴とする溶液塗布方法。
  2. 前記第1溶液は、第1のpHを有する第1モノマー溶液と、前記第1のpHとは異なる第2のpHを有する第2モノマー溶液とを含む複数種類の溶液からなり、
    前記第1溶液塗布工程は、前記被塗布材上の塗布領域に前記第1モノマー溶液を単位面積当たりの塗布量を変化させながら一方向に塗布する第1モノマー塗布工程と、前記被塗布材上の塗布領域に前記第2モノマー溶液を単位面積当たりの塗布量を変化させながら一方向に塗布する第2モノマー塗布工程とを含む請求項1記載の溶液塗布方法。
  3. 前記第1溶液塗布工程において、前記第1モノマー溶液と前記第2モノマー溶液の単位面積当たりの塗布量合計が前記塗布領域全体に亘って均一であるように塗布する請求項2記載の溶液塗布方法。
  4. 前記第1溶液の塗布および前記第2溶液の塗布が、インクジェット装置を用いて行われる請求項1〜3のいずれか1つに記載の溶液塗布方法。
  5. 前記第2溶液塗布工程と、第2溶液塗布工程後に行う前記第1溶液塗布工程との間に、前記第1および第2溶液を含む塗布膜のゲル化の一部を進行させる一部ゲル化工程を含む請求項1〜4のいずれか1つに記載の溶液塗布方法。
  6. 前記第2溶液に含まれるゲル化剤が光重合剤であり、
    前記一部ゲル化工程において、前記被塗布材上の前記第1および第2溶液を含む塗布膜に、この塗布膜の一部がゲル化する光量の光を照射する請求項5に記載の溶液塗布方法。
  7. 請求項1〜6のいずれか1つに記載の溶液塗布方法に基づいて前記被塗布材上に前記第1および第2溶液を含む塗布膜を形成した後、この塗布膜のゲル化を完結させるゲル化完結工程を行う等電点電気泳動用試験具の製造方法。
  8. 請求項7に記載の等電点電気泳動用試験具の製造方法に用いられる等電点電気泳動用試験具の製造装置であって、ステージと、該ステージ上に設置された前記被塗布材上の塗布領域に前記第1溶液を塗布する第1溶液塗布部と、前記被塗布材上の塗布領域に前記第2溶液を塗布する第2溶液塗布部と、前記被塗布材上の前記第1および第2溶液を含む塗布膜中のゲル化を促進させるゲル化促進部とを備えたことを特徴とする等電点電気泳動用試験具の製造装置。
  9. 前記ゲル化促進部が、前記塗布膜に光を照射する光照射器である請求項8に記載の等電点電気泳動用試験具の製造装置。
  10. 前記第1および第2溶液塗布部が、インクジェット装置からなる請求項8または9に記載の等電点電気泳動用試験具の製造装置。
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