JP2013257291A - 溶液塗布方法および電気泳動用試験具の製造方法 - Google Patents

溶液塗布方法および電気泳動用試験具の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】理想的な機能勾配を有する塗布膜の形成が容易となる溶液塗布方法を提供すること。
【解決手段】被塗布材上の塗布領域に機能勾配を形成する溶液塗布方法であって、
前記塗布領域は複数の分割塗布領域に区分されており、各分割塗布領域に応じて溶液を選択し、前記選択した溶液を単位面積当たりの塗布量を変化させながら前記分割塗布領域に塗布することを特徴とする溶液塗布方法。
【選択図】図5

Description

本発明は、溶液塗布方法および電気泳動用試験具の製造方法に関する。
電気泳動法は、溶液またはこれに浸漬した親水性の支持体などの媒体に電圧をかけることによって、該媒体中の荷電物質がその電荷に応じて電界中を移動する現象を利用した分離分析法である。特に、媒体としてゲルを用いる電気泳動(ゲル電気泳動法)は、タンパク質および核酸のような生体高分子を分離する手法として、生化学、分子生物学などの生命科学分野や臨床検査の分野などにおいて広く利用されている。
タンパク質の電気泳動法には、主として、タンパク質の大きさ(分子量)により分離する方法と、電荷(等電点)により分離する方法とがある。分子量による分離には、ポリアクリルアミドゲルを用いて、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)の存在下で行う電気泳動(SDS-PAGE法)が広く利用されている。SDS-PAGE法では、タンパク質は一定の割合でSDSと結合してその電荷密度が一定となり、この状態でタンパク質が網目状構造を有するポリアクリルアミド中を移動することで、タンパク質は分子ふるい効果により、その分子量に応じて分離される。
等電点による分離には、pH勾配の存在下で行う電気泳動(等電点電気泳動法)が利用されている。等電点電気泳動法では、pH勾配中で、タンパク質が自身の等電点と等しいpHの位置に集まることによって、タンパク質が分離される。等電点電気泳動法の媒体として、従来は両性担体が用いられていたが、近年では、通電中にpH勾配が崩れることのない固定化pH勾配(Immobilized pH Gradient:IPG)ゲルがよく用いられている。
近年では、生物が有する全タンパク質の構造および機能を網羅的に解析することを目的とするプロテオーム解析の一環として、上記の2つの電気泳動法を組み合わせた二次元電気泳動法が利用されている。二次元電気泳動法では、一次元目に等電点電気泳動が行われ、続く二次元目にSDS-PAGEが行われる。これにより、数千種類ものタンパク質を高い分解能で一挙に分離することが可能となった。
このように、ゲル電気泳動法はタンパク質などの生体高分子の分離分析に不可欠な手法であるが、いずれの電気泳動法においても分析の精度および再現性は、用いるゲルの品質によるところが大きい。したがって、当該分野においては、分解能の高いゲルを搭載した電気泳動用試験具を安定して製造可能な技術の開発が望まれている。
例えば、特許文献1には、濃度が異なる2種類のゲル原液を撹拌槽で混合し、その混合液をゲル容器内へ底部から導入してゲル化(重合)させることにより濃度勾配を有するゲルシートを作製する方法が開示されている。この場合、ゲル容器内へ導入する混合液中の各ゲル原液の割合を変化させることによって、所定の濃度勾配を有するSDS-PAGE用ゲルシートが得られる。また、特許文献1に記載のグラジェントメイカーを用い、pHが異なる2種類のゲル原液を撹拌槽で混合し、その混合液をゲル容器内へ底部から導入してゲル化させることによりpH勾配を有するゲルシートを作製することができる。この場合、ゲル容器内へ導入する混合液中の各ゲル原液の割合を変化させることによって、所定のpH勾配を有するゲルシートが得られ、このゲルシートをpH勾配方向に所定の幅で切断して細長いプレート上に貼り付けることにより、等電点電気泳動用のゲルプレートが得られる。
特許文献1に記載のゲルプレート製造方法では、ゲル容器内での濃度勾配またはpH勾配の管理が難しく、安定した品質のゲルプレートが得られ難いという面があった。そこで、濃度勾配またはpH勾配を精度よく管理できる技術として、プレート上にモノマー溶液を塗布するゲルプレート製造方法が特許文献2に開示されている。すなわち、プレート上に液たまりを形成し、液たまりにモノマー溶液を吐出した後、重合開始剤を塗布して塗布膜をゲル化させることにより、基材上にゲル層を形成する。この場合、濃度またはpHが異なる2種類のモノマー溶液を混合比率を変化させながら混合して液たまりに塗布することにより、所定の濃度勾配を有するSDS-PAGE用ゲルプレートまたは所定のpH勾配を有する等電点電気泳動用のゲルプレートが得られる。
特開昭62−167459号公報 特開2012−2739号公報
特許文献2のpH勾配の形成方法は、pH溶液の塗布量勾配によりpH勾配を形成する方法であるといえる。一般的に、溶液の塗布量勾配によって機能勾配を形成する場合は、下記の問題がある。例として、機能勾配としてモノマー濃度勾配を形成する場合について説明する。例えば、濃度の最小値と最大値の比が100倍であるようなモノマー濃度勾配を同一濃度の塗布溶液で形成する場合は、濃度が最大値となる個所の塗布量が、濃度が最小値となる個所の塗布量の100倍となるように、個所によって塗布量が極端に大きく変化するように塗布量を制御する必要がある。しかし、一般にこのように極端に大きく塗布量が変化するように制御することは困難である。
上記の問題は、指標としてイオン濃度の対数値を用いるpH勾配を形成する場合は、一般に濃度の変化が極めて大きく、それに伴って塗布量の変化を大きくする必要があるため、より顕著となる。特許文献2のpH勾配の形成方法では、例えば、pH3の強酸性モノマー溶液とpH10の強塩基性モノマー溶液を調製し、強酸性モノマー溶液と強塩基性モノマー溶液とを個別に基材上に塗布する。この際、強酸性および強塩基性モノマー溶液の単位面積当たりの塗布量の合計を一定とし、かつ各溶液の塗布量の比率を変化させながら基材上に1回塗布することにより、一方向にpH勾配を有する塗布膜を形成する。
pH値が大きく異なる2種類のモノマー溶液を用いてpH3〜10の広範囲のpH勾配を有する塗布膜を形成する場合、モノマー溶液の吐出量および吐出位置の精度が僅かでもずれると、pH値(特に中性付近)の大きなブレに繋がり、塗布膜のpH勾配が理想的状態から大きく逸脱してしまう。したがって、その後のゲル化工程を経て得られるゲル層は、理想的状態から大きく逸脱したpH勾配を有するゲル層となるため、高精度かつ信頼性の高い等電点電気泳動を行うことが困難となる。
また、pH値が大きく異なる2種類の溶液を基材上に塗布してpH勾配を形成する方法は、理想的なpH勾配の再現性が困難である。さらに、塩基性側におけるpH3緩衝溶液に起因してゲル化が阻害され、ゲル化の不均一が生じるという問題や、pH緩衝溶液材料は高価であるにも関わらず、塩基性側においてpH3緩衝溶液が使用され、酸性側においてpH10緩衝溶液が使用されることでコストアップとなるという問題がある。
本発明は、このような課題を鑑みてなされたものであり、理想的な機能勾配を有する塗布膜の形成が容易となる溶液塗布方法を提供する。さらに、本発明は、高精度かつ信頼性の高い電気泳動を行うことができる試験具を前記溶液塗布方法に基づいて製造する方法等を提供することを目的とする。
かくして、本発明によれば、被塗布材上の塗布領域に機能勾配を形成する溶液塗布方法であって、前記塗布領域は複数の分割塗布領域に区分されており、各分割塗布領域に応じて溶液を選択し、前記選択した溶液を単位面積当たりの塗布量を変化させながら前記分割塗布領域に塗布する溶液塗布方法が提供される。
本発明の溶液塗布方法は、pH値、濃度等が異なる溶液を用い、被塗布材における各分割塗布領域に選択した溶液を塗布する方法であり、1つの分割塗布領域に対応する溶液としてpH値、濃度等の性質が近い溶液を選択し、さらには、隣接する2つの分割塗布領域に対応する各溶液として性質が近い溶液を選択することができる。
よって、各分割塗布領域におけるpH勾配や濃度勾配等を形成するために必要な塗布量の変化を緩やかにすることができる。この結果、各分割塗布領域において機能勾配を形成するために必要な塗布量の変化が小さくなり、塗布量の制御が容易になり、機能勾配精度を向上させることができる。特に、通常の塗布方法ではわずかな塗布量のばらつきで機能勾配が大きくずれてしまう低濃度領域(機能勾配がpH勾配の場合は中性近傍の領域に該当する)において、塗布量のばらつきによる勾配のブレが抑制でき、機能勾配が理想的な状態で塗布膜内に形成され易くなる。
したがって、本発明の溶液塗布方法によれば、理想的な機能勾配を有するゲル層を再現性よく容易に形成することができ、高精度かつ信頼性の高い電気泳動を行うことができる電気泳動用試験具を製造することが可能となる。
また、本発明の溶液塗布方法によれば、pH勾配を有する塗布膜を形成する場合、塩基性側で強酸性緩衝溶液を使用し、酸性側で強塩基性緩衝溶液を使用し、中性側で高濃度の強酸性および強塩基性緩衝溶液を大量に使用するといった無駄を省くことができるため、pH緩衝材の使用量を低減してコストダウンすることができる。
さらに、塩基性側で強酸性緩衝溶液を使用することがなくなるため、塩基性側における強酸性緩衝溶液に起因してゲル化が阻害され、ゲル化の不均一が生じるという問題も無くなる。
本発明の溶液塗布方法に基づく電気泳動用試験具の製造方法で製造された試験具の実施形態1を示す斜視図である。 図1(A)の電気泳動用試験具におけるゲル層を乾燥した後の保存可能な状態を示す斜視図である。 実施形態1または2の電気泳動用試験具を製造することができる装置を示す構成図である。 図2の製造装置におけるインクジェットヘッドを下方から見た概略底面図である。 図2の製造装置におけるインクジェットヘッドのノズル孔群を示す拡大図である。 本発明の実施形態1における溶液塗布方法での塗布状況を説明する概念図である。 本発明の実施形態2における溶液塗布方法での塗布状況を説明する概念図である。 図2の製造装置を用いて基材へpH緩衝溶液を塗布する状態を示す第1の説明図である。 図7(A)から引き続くpH緩衝溶液の塗布状態を示す説明図である。 図7(B)から引き続くpH緩衝溶液の塗布状態を示す説明図である。 図7(C)から引き続くpH緩衝溶液の塗布状態を示す説明図である。 図8(A)から引き続くpH緩衝溶液の塗布状態を示す説明図である。 図8(B)から引き続く重合開始剤の塗布状態を示す説明図である。
本発明の溶液塗布方法は、被塗布材上の塗布領域に機能勾配を形成する溶液塗布方法であって、前記塗布領域は複数の分割塗布領域に区分されており、各分割塗布領域に応じて溶液を選択し、前記選択した溶液を単位面積当たりの塗布量を変化させながら前記分割塗布領域に塗布する。
ここで、「機能勾配」とは、pH勾配、モノマー濃度勾配等の、塗布溶液の濃度勾配により被塗布材上の塗布領域に形成した物性機能に関する量の勾配を意味する。
上述のように、本発明の溶液塗布方法は、選択した溶液を、単位面積当たりの塗布量を変化させながら各分割塗布領域に塗布する。この例として、機能勾配としてpH勾配を形成する場合について説明すると、被塗布材の塗布領域全面に予め配置した一定のpHをもつベース溶液上に、上記の溶液のpHと異なるpHをもつ1種類のpH緩衝溶液を選択し、上記一定のpHをもつ溶液上に上記選択した溶液を塗布量を変化させながら塗布する。例えば、ベース溶液よりも酸性のpH緩衝溶液を選択した場合、該選択した酸性pH緩衝溶液の塗布量を変化させながら塗布した場合、塗布量が多いほどベース溶液のpHが酸性側にシフトする。ベース溶液よりも塩基性の溶液を選択した場合も同様である。よって、上記の塗布方法により塗布対象の塗布前のpHからのpHのシフト量に勾配をもたせることができるためpH勾配を形成することができる。
本発明の溶液塗布方法は、次の(1)〜(6)のようにしてもよい。
(1)前記分割塗布領域に応じて少なくとも2種類の溶液を選択してもよい。このようにすれば、各分割塗布領域において機能勾配を形成するために必要な塗布量の変化がさらに小さくなり、塗布量の制御がより容易になり、機能勾配精度をさらに向上させることができる。
(2)各分割塗布領域に塗布する溶液は、pH緩衝溶液であってもよい。この場合、pH勾配を有する塗布膜を形成することができ、さらには、等電点電気泳動用試験具(ゲルプレート)を製造することが可能となる。
(3)各分割塗布領域に対してpH値が最も近い2種類のpH緩衝溶液を選択し、選択されたpH緩衝溶液の組は、隣接した分割塗布領域のpH緩衝溶液のpH値が最も近くなるように選択されてもよい。このようにすれば、滑らかなpH勾配を有する塗布膜を形成することができる。
(4)pH勾配が一方向に向かって常に上昇または下降するようにpH緩衝溶液を塗布してもよい。例えば、塗布膜を酸性側から塩基性側へ向かって形成する場合、pH勾配の途中でpH値が4、6、5となるような箇所(pH値が突出した箇所)がなく、pH値が4、5、6というように常に上昇するようにpH緩衝溶液を塗布する。塗布膜を塩基性側から酸性側へ向かって形成する場合は、pH勾配の途中でpH値が5、6、4となるような箇所(pH値が突出した箇所)がなく、pH値が6、5、4というように常に下降するようにpH緩衝溶液を塗布する。このようにしても、滑らかなpH勾配を有する塗布膜を形成することができる。
(5)各分割塗布領域に応じた塗布すべき2種類のpH緩衝溶液を選択し、各分割塗布領域に対して、選択した2種類のpH緩衝溶液の単位面積当たりの塗布量合計が前記塗布領域全体に亘って均一であり、かつ選択した2種類のpH緩衝溶液の単位面積当たりの塗布量の比率が変化するように、選択した2種類のpH緩衝溶液を塗布してもよい。
このようにすれば、被塗布材の塗布領域全体に亘って均一な厚さの塗布膜(表面に凹凸がない塗布膜)を形成することができる。また、各分割塗布領域に対応する各pH緩衝溶液にモノマーが含まれていた場合でも、モノマーの濃度分布が均一な塗布膜を形成することができる。
(6)前記pH緩衝溶液の塗布が、インクジェット装置を用いて行ってもよい。インクジェット装置を用いれば、得ようとする塗布膜の形成領域、膜厚、pH勾配等を容易かつ高精度に制御することができる。
本発明の別の観点によれば、前記溶液塗布方法を用いて被塗布材上にモノマーを含有する溶液を塗布する工程と、
前記被塗布材上に塗布したモノマーを含有する溶液をゲル化する工程とを含む電気泳動用試験具の製造方法が提供される。
また、本発明のさらに別の観点によれば、複数の溶液に個別に対応した複数の吐出部を備え、
前記溶液塗布方法に基づいて、各分割塗布領域に応じて選択された溶液を各吐出部から吐出して被塗布材上に塗布するように構成された溶液塗布装置が提供される。
この場合、前記吐出部が、インクジェットヘッドからなるのもよい。
また、本発明のさらに別の観点によれば、モノマーを含有する複数の溶液に個別に対応した複数の溶液吐出部と、重合剤を吐出する重合剤吐出部とを備え、
前記溶液塗布方法に基づいて、各分割塗布領域に応じて選択されたモノマーを含有する溶液を各溶液吐出部から吐出して被塗布材上に塗布すると共に、被塗布材上に塗布されたモノマーを含有する溶液の塗布膜上に重合剤吐出部から重合剤を吐出して前記塗布膜をゲル化させるように構成された電気泳動用試験具の製造装置が提供される。
この場合、前記溶液吐出部および重合剤吐出部が、インクジェットヘッドからなるのもよい。
また、本発明のさらに別の観点によれば、被塗布材上にゲルが固定されてなる電気泳動用試験具であって、
前記ゲルは複数の領域に区分され、前記領域内で前記ゲルを形成するゲル材料の配合比率が変化している電気泳動試験具が提供される。
これにより、高精度かつ信頼性の高い電気泳動を行うことができる。
以下、図面を参照しながら本発明の溶液塗布方法を説明し、この溶液塗布方法に基づく電気泳動用試験具の製造方法および製造装置等について詳説する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
(実施形態1)
図1(A)は本発明の溶液塗布方法に基づく電気泳動用試験具の製造方法で製造された試験具の実施形態1を示す斜視図であり、図1(B)は図1(A)の電気泳動用試験具におけるゲル層を乾燥した後の保存可能な状態を示す斜視図である。
図1(A)に示す等電点電気泳動用試験具GP1は、基材S上に蒲鉾状のゲル層G1が形成されたものである。このゲル層G1は、緩やかな凸曲面となった上面(基材と反対側の
面)を有している。ゲル層G1を含水率5%以下に乾燥させることにより、ゲル層G1が乾燥して乾燥膜D1となった図1(B)に示す等電点電気泳動用試験具GPD1が得られる。
本発明において、ゲル層G1の長さおよび幅は、基材の長さおよび幅と同じである。基材の長さおよび幅は特に限定されないが、一例としては、長さは50〜250mm程度であり、幅は0.5〜5mm程度である。ゲル層G1の膜厚は特に限定されないが、例えば、195〜1010μm程度である。
このゲル層を乾燥した乾燥膜の膜厚は100μm以下に収縮するが、長さおよび幅はほとんど変化しない。
電気泳動用試験具の基材Sの形態は、特に限定されるものではなく、例えば、細長プレート、所定形状に成型したチップ等が挙げられる。基材Sの材料としては、電気泳動用試験具の基材としての機能が発揮できるものであれば特に限定されず、例えば、石英ガラス、無アルカリガラス等のガラス、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)等の樹脂、アルミナ、低温同時焼成セラミック等のセラミックスなどが挙げられる。また、基材Sが疎水性材料からなる場合、基材Sにおけるゲル層が形成される面を親水性処理してもよく、これにより基材Sに対するモノマー溶液の濡れ性が向上し、モノマー溶液がゲル化したゲル層と基材Sとの密着性が向上する。親水性処理としては、硫酸を用いたニトロ化、硝酸を用いたスルホン化、酸素プラズマ処理等が挙げられる。
電気泳動用試験具GP1のゲル層G1の材料は、電気泳動用試験具のゲル層としての機能が発揮できるものであれば特に限定されず、例えば、一般的なポリアクリルアミドゲルの材料としては、アクリルアミド(モノマー)、ビスアクリルアミド(架橋剤)、pH緩衝溶液、テトラメチルエチレンジアミン(TEMED:重合促進剤)、過硫酸アンモニウム(APS:重合開始剤)および純水が挙げられる。
本発明において、ゲル層G1は、ゲル材料液を基材S上に塗布しゲル化させることにより形成される。この際、予め重合開始剤を添加したゲル材料液(重合開始剤入りゲル材料液)を基材S上に塗布する場合と、重合開始剤以外の材料を混合したモノマー溶液(重合開始剤を含まないゲル材料液)を基材S上に塗布した後、この塗布膜上に重合開始剤を塗布する場合があり、本発明ではこれら両方の場合を包含する。
よって、本発明において、「ゲル材料液」とは、特に言及がない限り、予め重合開始剤を添加したゲル材料液、重合開始剤を含まないゲル材料液、および重合開始剤の全てを意味する。以下、「予め重合開始剤を添加したゲル材料液」を「重合開始剤入りゲル材料液」という場合があり、「重合開始剤を含まないゲル材料液」を「モノマー溶液」という場合がある。
本発明において、基材S上にゲル材料液を塗布する方法は特に限定されず、基材S上面の所定領域にゲル材料液を塗布できるものであればよく、例えば、ピペッター、ディスペンサー、インクジェット装置等が挙げられる。これらの中でも、高精度に微小液滴を吐出して基材に付着させるインクジェットヘッドを備えたインクジェット装置を用いることが好ましい。インクジェットヘッドを用いれば、細長い基材Sの所定領域にも高精度かつ定量的に微小液滴を塗布することができるため、得ようとするゲル層G1の形成領域、膜厚、pH勾配および濃度勾配等を容易かつ高精度に制御することができる。
次に、図1(A)に示す試験具GP1を製造することができる装置について説明し、その後でこの装置を用いて試験具GP1を製造する方法について説明する。
図2は実施形態1の電気泳動用試験具を製造することができる装置を示す構成図である。この試験具製造装置は、基材Sがセットされるステージ10と、塗布部としてのインクジェット装置30と、ステージ10を直線方向に移動させる移動機構40と、これらを収納する密閉可能なケース50と、図示しない制御部とを備える。なお、ケース50には図示しない開閉扉が設けられている。
移動機構40は、ステージ10を支持する支持台40aを有し、この支持台40aが図示しないリニアガイド機構によって直線方向(矢印M方向)に往復移動可能とされている。
図2において、実線で示された支持台40aは待機位置にあり、塗布工程において2点鎖線で示された位置まで支持台40a、ステージ10および基材Sは直進することができる。これにより、ステージ10上にセットされた基材Sは、後述する第1〜第7インクジェットヘッド31b〜37bの真下を通過する。
インクジェット装置30は、pH値が異なる6種類のモノマー溶液A〜Fを個別に吐出する第1〜第6溶液吐出部31〜36と、重合開始剤Gを吐出する重合開始剤吐出部37と、負圧調整部38とを備える。モノマー溶液A〜Fには、例えば、pH3.6、4.6、6.2、7.0、8.5、9.3のpH緩衝溶液が含まれている。
第1溶液吐出部31は、pH3.6の強酸性モノマー溶液Aを貯蔵する第1タンク31aと、第1インクジェットヘッド31bと、第1タンク31aから第1インクジェットヘッド31bへ強酸性モノマー溶液Aを送る第1パイプ31cとを有し、水頭差を利用して第1タンク31aから第1インクジェットヘッド31bへ強酸性モノマー溶液Aが供給されるように構成されている。
第2〜第6溶液吐出部32〜36も、第1溶液吐出部31と同様に、第2〜第6タンク32a〜36aと、第2〜第6インクジェットヘッド32b〜36bと、第2〜第6タンクから第2〜第6インクジェットヘッドへモノマー溶液B〜Fを送る第2〜第6パイプ32c〜36cとを有し、水頭差を利用して第2〜第3タンクから第2〜第6インクジェットヘッドへモノマー溶液B〜Fが供給されるように構成されている。なお、第2タンク32aにはpH4.6の酸性モノマー溶液Bが貯蔵され、第3タンク33aにはpH6.2の弱酸性モノマー溶液Cが貯蔵され、第4タンク34aにはpH7.0の中性モノマー溶液Dが貯蔵され、第5タンク35aにはpH8.5の塩基性モノマー溶液Eが貯蔵され、第6タンク36aにはpH9.3の強塩基性モノマー溶液Fが貯蔵されている。
重合開始剤吐出部37は、重合開始剤Gを貯蔵する第7タンク37aと、第7インクジェットヘッド37bと、第7タンク37aから第7インクジェットヘッド37bへ重合開始剤Gを送る第7パイプ37cとを有し、水頭差を利用して第7タンク37aから第7インクジェットヘッド37bへ重合開始剤Gが供給されるように構成されている。
第1〜第7インクジェットヘッド31b〜37bとしては、サーマルジェット方式、ピエゾジェット方式、静電駆動方式等が挙げられるが、インクジェット装置30における各液(モノマー溶液A〜Fおよび重合開始剤G)を冷却する場合は、各液に熱を加えるサーマルジェット方式を用いず、ピエゾジェット方式または静電駆動方式を用いることが望ましい。
負圧調整部38は、第1〜第7タンク31a〜37aとパイプ31d〜37dにて接続されており、第1〜第7タンク31a〜37a内の気圧を管理し、第1〜第7インクジェットヘッド31b〜37bのノズル孔H(図4参照)から液が垂れ落ちない所定の圧力となるよう、第1〜第7タンク31a〜37a内を大気圧より低い所定圧で一定になるように調整する。
第1〜第7インクジェットヘッド31b〜37bは一体化されて1組の吐出ヘッドユニットUが構成されており、この吐出ヘッドユニットUは図示しない固定部材にて固定されている。そして、図3に示すように、この基材Sの移動軌跡E上に、第1〜第7インクジェットヘッド31b〜37bは一列で配置されているが、ヘッド配置順はこの順番に限定されない。なお、実施形態1の場合、基材Sの移動方向の上流側から第1〜第7インクジェットヘッド31b〜37bの順で配置されている。
また、図3と図4に示すように、基材Sの移動軌跡Eと対向する第1〜第7インクジェットヘッド31b〜37bの下面には、移動軌跡Eの方向と直交する方向に複数のノズル孔Hが1列で設けられている。すなわち、1列のノズル孔群HGが、移動軌跡Eの方向と直交する方向に、かつ移動軌跡Eの幅を超える長さで延びている。ノズル孔径Dおよびノズル孔間隔Pは特に限定されないが、ノズル孔Hの径は10〜100μm程度が適当であり、ノズル孔間隔Pは100〜200μm程度が適当である。なお、ノズル列が直線状に配置されている場合、ヘッド向きを傾けることで見掛け上、ノズル孔間隔を狭くする方法も使用できる。また、第1〜第7インクジェットヘッド31b〜37bにおいて、ノズル孔群HGは2列以上の複数列で設けられていてもよい。
次に、前記構成を有する試験具製造装置を用いて試験具GP1を製造する方法の一例について説明するが、等電点電気泳動用試験具GP1は、本発明の溶液塗布方法に基づく製造方法によって製造することができるため、先ず、溶液塗布方法について説明する。
図5は本発明の実施形態1における溶液塗布方法での塗布状況を説明する概念図である。
本発明の溶液塗布方法では、被塗布材Sx上の塗布領域全面に一定のpHをもつベース溶液が予め配置されている。図5において、ベース溶液のpHが中性である7.0の場合について説明しているが、ベース溶液のpHは上記に限られるものではない。
先ず、被塗布材Sx上の塗布領域が複数の分割塗布領域に区分される。図5では、被塗布材Sx上が第1〜第5分割塗布領域I〜Vに区分され、中間の第3分割塗布領域IIIの矢印M方向の長さは、他の第1、第2、第4および第5分割塗布領域I、II、IV、Vの矢印M方向の長さの半分である場合を例示している。このとき、第1〜第5分割塗布領域I〜Vにおいて、例えば、第1分割塗布領域側を酸性側に設定し、第3分割塗布領域IIIを中性側に設定し、第5分割塗布領域側を塩基性側に設定することができる。
次に、第1〜第5分割塗布領域I〜Vに応じた塗布すべきベース溶液とpHが異なる少なくとも1種類のpH緩衝溶液を選択する。図5では、pH3.6、4.6、6.2、8.5および9.3の5種類のpH緩衝溶液を用意し、第1分割塗布領域IについてはpH3.6のpH緩衝溶液を選択し、第2分割塗布領域IIについてはpH4.6pH緩衝溶液を選択し、第3分割塗布領域IIIについてはpH6.2のpH緩衝溶液を選択し、第4分割塗布領域IVについてはpH8.5のpH緩衝溶液を選択し、第5分割塗布領域VについてはpH9.3のpH緩衝溶液を選択した場合を例示している。すなわち、1つの分割塗布領域に対してpH値が近い1種類のpH緩衝溶液を用いる。
そして、第1〜第5分割塗布領域I〜Vに応じて選択した各pH緩衝溶液を、第1〜第5分割塗布領域I〜Vに溶液塗布装置(例えば、インクジェット装置)を用いて塗布する。
ベース溶液よりも酸性のpH緩衝溶液を選択した分割塗布領域においては、該選択した酸性pH緩衝溶液の塗布量を変化させながら塗布することにより、塗布量が多い箇所ほどベース溶液のpHが酸性側にシフトするため、pH勾配が形成される。ベース溶液よりも塩基性のpH緩衝溶液を選択した分割塗布領域においても同様である。よって、上記の塗布方法により塗布対象の塗布前のpHからのpHのシフト量に勾配をもたせることができるため、pH勾配を形成することができる。
このようにして、被塗布材Sxの隣接する各分割塗布領域にpH値の近い1種類のpH緩衝溶液を塗布することにより、塗布領域を分割しないで全体を同一のpH緩衝溶液を塗布する場合に比べて、各分割塗布領域における塗布量の変化を緩やかにすることができる。この結果、塗布量の制御が容易になり、機能勾配精度を向上させることができる。特に、通常の塗布方法ではわずかな塗布量のばらつきで機能勾配が大きくずれてしまう中性領域において、塗布量のばらつきによる勾配のブレが抑制でき、理想的なpH勾配を有する塗布膜を形成することができる。
なお、図5では、被塗布材Sx上に所定膜厚の塗布膜を1回の塗布で形成した場合を例示したが、複数回の塗布を繰り返して所定膜厚の塗布膜を形成してもよい。また、図5では、酸性側から塗布した場合を例示したが、塗布の方向は限定されず、塩基性側から塗布してもよい。
(実施形態2)
図6は本発明の実施形態2における溶液塗布方法での塗布状況を説明する概念図である。
本発明の溶液塗布方法では、被塗布材Sx上の塗布領域に3種類以上の溶液を塗布して塗布領域全体に亘って機能勾配を形成する溶液塗布方法であり、先ず、被塗布材Sx上の塗布領域が複数の分割塗布領域に区分される。図6では、被塗布材Sx上が第1〜第5分割塗布領域I〜Vに区分され、中間の第3分割塗布領域IIIの矢印M方向の長さは、他の第1、第2、第4および第5分割塗布領域I、II、IV、Vの矢印M方向の長さの半分である場合を例示している。このとき、第1〜第5分割塗布領域I〜Vにおいて、例えば、第1分割塗布領域側を酸性側に設定し、第3分割塗布領域IIIを中性側に設定し、第5分割塗布領域側を塩基性側に設定することができる。
次に、第1〜第5分割塗布領域I〜Vに応じた塗布すべき少なくとも1種類の溶液を3種類以上の溶液のうちから選択する。図6では、pH3.6、4.6、6.2、7.0、8.5および9.3の6種類のpH緩衝溶液を用意し、第1分割塗布領域IについてはpH3.6および4.6のpH緩衝溶液を選択し、第2分割塗布領域IIについてはpH4.6および6.2のpH緩衝溶液を選択し、第3分割塗布領域IIIについてはpH6.2および7.0のpH緩衝溶液を選択し、第4分割塗布領域IVについてはpH7.0および8.5のpH緩衝溶液を選択し、第5分割塗布領域VについてはpH8.5および9.3のpH緩衝溶液を選択した場合を例示している。すなわち、1つの分割塗布領域に対してpH値が近い2種類のpH緩衝溶液を用いる。
そして、第1〜第5分割塗布領域I〜Vに応じて選択した各pH緩衝溶液を、第1〜第5分割塗布領域I〜Vに溶液塗布装置(例えば、インクジェット装置)を用いて塗布する。このとき、各分割塗布領域に対して、選択した2種類のpH緩衝溶液の単位面積当たりの塗布量合計が前記塗布領域全体に亘って均一であり、かつ選択した2種類のpH緩衝溶液の単位面積当たりの塗布量の比率が変化するように、選択した2種類のpH緩衝溶液を塗布する。
例えば、第1分割塗布領域Iでは、被塗布材Sxの一端Sx1側から矢印M方向の他端側Sx2へ向かって2種類の緩衝溶液を塗布する際、pH3.6のpH緩衝溶液の塗布量は徐々に減らし、pH4.6のpH緩衝溶液の塗布量は徐々に増加させる。このとき、pH3.6と4.6のpH緩衝溶液の単位面積当たりの塗布量合計は一定である。第2〜第5分割塗布領域II〜Vについても同様である。
このようにして、被塗布材Sxの各分割塗布領域にpH値の近い2種類のpH緩衝溶液を塗布することにより、塗布領域を分割しないで全体を同一のpH緩衝溶液を塗布する場合に比べて、各分割塗布領域における塗布量の変化を緩やかにすることができる。この結果、各分割塗布領域I〜VにおいてpH勾配の大きなブレが低減する。特に、中性付近のpH勾配のブレが抑制され、理想的なpH勾配を有する塗布膜を形成することができる。
なお、図6では、被塗布材Sx上に所定膜厚の塗布膜を1回の塗布で形成した場合を例示したが、複数回の塗布を繰り返して所定膜厚の塗布膜を形成してもよい。また、図6では、酸性側から塗布した場合を例示したが、塗布の方向は限定されず、塩基性側から塗布してもよい。
等電点電気泳動用試験具GP1の製造方法では、前記溶液塗布方法を用いて被塗布材Sx上にモノマーを含有するpH緩衝溶液を塗布する工程と、被塗布材Sx上に塗布したモノマーを含有するpH緩衝溶液をゲル化する工程とを含む。
以下、前記構成を有する試験具製造装置を用いて試験具GP1を製造する方法の一例について説明する。
先ず、図2に示すように、待機位置にあるステージ10上に細長い矩形の基材Sをセットする。
次に、所定のプログラムに基づく常温大気圧下での塗布工程が行われる。すなわち、図7(A)〜(C)および図8(A)〜(C)に示すように、移動機構40により支持台40aが一方向(矢印M1方向)に一定速度で移動すると共に、第1〜第6インクジェットヘッド31b〜36bから微小液滴が吐出して、基材S上に塗布膜が形成される。
詳しく説明すると、図7(A)に示すように、基材Sの一端がインクジェット装置の第1および第2インクジェットヘッド31b、32bのノズル孔群HGの真下位置まで移動したところで、第1および第2インクジェットヘッド31b、32bからpH3.6と4.6の酸性モノマー溶液の微小液滴La、Lbが吐出されて基材S上に塗布される。このとき、微小液滴Laの吐出量は徐々に減少し、かつ微小液滴Lbの吐出量は徐々に増加する。すなわち、図6で説明したように、基材Sが第1〜第5分割塗布領域に仮想的に区分されており、一端側の第1分割塗布領域Iに、pH3.6〜4.6の間で傾斜したpH勾配を有する塗布膜L1が形成される。なお、ステージ10上に微小液滴La、Lbが吐出されないように、第1および第2インクジェットヘッド31b、32bにおけるノズル孔群HGのうちから微小液滴La、Lbを吐出するノズル孔Hが選択されており、これについては第2〜第7インクジェットヘッド32b〜37bでも同様である。
続いて、図7(B)に示すように、基材Sの第2分割塗布領域IIが第2および第3インクジェットヘッド32b、33bのノズル孔群HGの真下位置まで移動したところで、第2および第3インクジェットヘッド32b、33bからpH4.6と6.2の酸性モノマー溶液の微小液滴Lb、Lcが吐出されて基材S上に塗布される。このとき、微小液滴Lbの吐出量は徐々に減少し、かつ微小液滴Lcの吐出量は徐々に増加する。これにより、基材Sの第2分割塗布領域IIに、pH4.6〜6.2の間で傾斜したpH勾配を有する塗布膜L2が形成される。
続いて、図7(C)に示すように、基材Sの第3分割塗布領域IIIが第3および第4インクジェットヘッド33b、34bのノズル孔群HGの真下位置まで移動したところで、第3および第4インクジェットヘッド33b、34bからpH6.2の酸性モノマー溶液とpH7.0の中性モノマー溶液の微小液滴Lc、Ldが吐出されて基材S上に塗布される。このとき、微小液滴Lcの吐出量は徐々に減少し、かつ微小液滴Ldの吐出量は徐々に増加する。これにより、基材Sの第3分割塗布領域IIIに、pH6.2〜7.0の間で傾斜したpH勾配を有する塗布膜L3が形成される。
続いて、図8(A)に示すように、基材Sの第4分割塗布領域IVが第4および第5インクジェットヘッド34b、35bのノズル孔群HGの真下位置まで移動したところで、第4および第5インクジェットヘッド34b、35bからpH7.0の中性モノマー溶液とpH8.5の塩基性モノマー溶液の微小液滴Ld、Leが吐出されて基材S上に塗布される。このとき、微小液滴Ldの吐出量は徐々に減少し、かつ微小液滴Leの吐出量は徐々に増加する。これにより、基材Sの第4分割塗布領域IVに、pH7.0〜8.5の間で傾斜したpH勾配を有する塗布膜L4が形成される。
続いて、図8(B)に示すように、基材Sの第5分割塗布領域Vが第5および第6インクジェットヘッド35b、36bのノズル孔群HGの真下位置まで移動したところで、第5および第6インクジェットヘッド35b、36bからpH8.5と9.3の塩基性モノマー溶液の微小液滴Le、Lfが吐出されて基材S上に塗布される。このとき、微小液滴Leの吐出量は徐々に減少し、かつ微小液滴Lfの吐出量は徐々に増加する。これにより、基材Sの第5分割塗布領域Vに、pH8.5〜9.3の間で傾斜したpH勾配を有する塗布膜L5が形成され、基材S上の塗布領域全体にpH3.5〜9.3の間で傾斜したpH勾配を有する塗布膜L(図8(C)参照)が形成される。
その後、図8(C)に示すように、移動機構の支持台40aが逆方向(矢印M2方向)に移動することにより基材Sが同方向に移動し、基材S上の塗布膜Lの端部が第7インクジェットヘッド37bのノズル孔群HGの真下位置まで移動したところで、第7インクジェットヘッド37bから重合開始剤の微小液滴Lgが塗布膜L上に吐出される。塗布膜L全体に重合開始剤が塗布されると、第7インクジェットヘッド37bからの微小液滴Lgの吐出が停止し、塗布工程が終了する。なお、このような塗布工程における試験具製造装置の一連の動作は、所定のプログラムに基づいて制御部が各駆動部を制御することにより行われる。
塗布工程後、ケース50の扉を開けて基材Sを取り出し、ゲル化工程用のケース内に収納し、そのケース内で塗布膜のゲル化工程を常温下で行う。なお、常温下でのゲル化完了までには3〜5時間程度の時間を要する。ゲル化完了後は、図1(A)に示すように、四方の端部に丸みを有する蒲鉾形のゲル層Gが基材S上に形成された等電点電気泳動用試験具GP1が得られる。
そして、この等電点電気泳動用試験具GP1のゲル層G1を乾燥することにより、図1(B)に示す等電点電気泳動試験具GPD1が得られる。この乾燥工程において、ゲル層G1を乾燥する方法は特に限定されず、例えば、ゲル層G1をヒータにて加熱する、あるいはゲル層G1に熱風を吹き付けて乾燥する方法が挙げられる。さらに、乾燥工程後に、乾燥膜D1を−20℃以下に冷却する冷却工程を行ってもよい。あるいは、乾燥工程および冷却工程の代わりに、フリーズドライ工程を行ってもよい。
このようにして製造された等電点電気泳動用試験具GPD1は、基材Sの複数の分割領域に対応した複数の領域に区分することができ、各領域はそれぞれ異なる種類のゲル材料から形成されている。また、各領域内のゲルはそれぞれ2種類のゲル材料から形成されており、領域内でゲルを形成するゲル材料の配合比率が変化している。したがって、等電点電気泳動用試験具GPD1は、理想的な機能勾配を有し、等電点電気泳動用試験具GPD1を使用することで精度の高い等電点泳動を行うことができる。
(他の実施形態)
1.本発明の溶液塗布方法において、被塗布材の塗布領域の分割塗布領域の数は、実施形態1で例示した5分割や実施形態2で例示した6分割に限定されず、得ようとする機能勾配(pH勾配、モノマー濃度勾配)の精度に応じて4分割以下でも7分割以上でもよい。
2.実施形態1および2では、塗布工程において、基材上に常温状態の塗布膜を形成する場合を例示したが、ペルチェ素子やタンク冷却部を備えた装置を用い、基材上に冷却下で塗布膜を形成してもよい。また、実施形態1および2では、塗布工程において大気下で塗布膜を形成する場合を例示したが、窒素雰囲気下で塗布膜を形成してもよい。
3.実施形態1および2では、モノマー溶液と重合開始剤を個別に基材上へ塗布する場合を例示したが、重合開始剤入りゲル材料液を基材上へ塗布してもよい。この場合、塗布工程中に重合開始剤入りゲル材料液のゲル化が進行しないよう、冷却状態の重合開始剤入りゲル材料液が用いられる。例えば、塗布部において、冷却されたモノマー溶液と冷却された重合開始剤とをノズル付近で混合し、さらにはノズル付近も冷却して吐出前の重合開始剤入りゲル材料液も冷却する。それに加え、基材を冷却してもよい。
4.基材上に予め水膜を形成し、この水膜上に実施形態1または2の如くモノマー溶液と重合開始剤を個別に塗布してもよく、あるいは重合開始剤入りゲル材料液を塗布してもよい。
本発明の溶液塗布方法は、実施形態1および2で説明したようなpH勾配を有する塗布膜およびゲル層を形成するのに好適であるが、これ以外にも、例えば、濃度の異なる2種類の溶液を被塗布材上に塗布して所定の濃度勾配を有する塗布膜を形成する場合にも適用できる。さらには、粒子径の異なる微粒子が溶媒中に分散した2種類の微粒子分散液を被塗布材上に塗布して、大きい粒子径の割合が徐々に増加する粒子径勾配を有する塗布膜を形成する場合にも本発明の溶液塗布方法を適用できる。
31b〜37b 第1〜第7インクジェットヘッド
A 強酸性モノマー溶液
B 酸性モノマー溶液
C 弱酸性モノマー溶液
D 中性モノマー溶液
1 乾燥膜
E 塩基性モノマー溶液
F 強塩基性モノマー溶液
G 重合開始剤
GP1 使用可能な状態となった等電点電気泳動用試験具(ゲルプレート)
GPD1 保存可能な状態となった等電点電気泳動用試験具
1 ゲル層
S 基材
Sx 被塗布材
I〜VI 分割塗布領域

Claims (13)

  1. 被塗布材上の塗布領域に機能勾配を形成する溶液塗布方法であって、
    前記塗布領域は複数の分割塗布領域に区分されており、各分割塗布領域に応じて溶液を選択し、前記選択した溶液を単位面積当たりの塗布量を変化させながら前記分割塗布領域に塗布することを特徴とする溶液塗布方法。
  2. 前記分割塗布領域に応じて少なくとも2種類の溶液を選択する請求項1に記載の溶液塗布方法。
  3. 前記溶液は、pH緩衝溶液である請求項1または2に記載の溶液塗布方法。
  4. 各分割塗布領域に対してpH値が最も近い2種類のpH緩衝溶液を選択し、選択されたpH緩衝溶液の組は、隣接した分割塗布領域のpH緩衝溶液のpH値が最も近くなるように選択される請求項3に記載の溶液塗布方法。
  5. pH勾配が一方向に向かって常に上昇または下降するようにpH緩衝溶液を塗布する請求項3または4に記載の溶液塗布方法。
  6. 各分割塗布領域に応じた塗布すべき2種類のpH緩衝溶液を選択し、各分割塗布領域に対して、選択した2種類のpH緩衝溶液の単位面積当たりの塗布量合計が前記塗布領域全体に亘って均一であり、かつ選択した2種類のpH緩衝溶液の単位面積当たりの塗布量の比率が変化するように、選択した2種類のpH緩衝溶液を塗布する請求項3〜5のいずれか1つに記載の溶液塗布方法。
  7. 前記pH緩衝溶液の塗布が、インクジェット装置を用いて行われる請求項1〜6のいずれか1つに記載の溶液塗布方法。
  8. 請求項1〜7のいずれか1つに記載の溶液塗布方法を用いて被塗布材上にモノマーを含有する溶液を塗布する工程と、
    前記被塗布材上に塗布したモノマーを含有する溶液をゲル化する工程とを含む電気泳動用試験具の製造方法。
  9. 複数の溶液に個別に対応した複数の吐出部を備え、
    請求項1〜7のいずれか1つに記載の溶液塗布方法に基づいて、各分割塗布領域に応じて選択された溶液を各吐出部から吐出して被塗布材上に塗布するように構成された溶液塗布装置。
  10. 前記吐出部が、インクジェットヘッドからなる請求項9に記載の溶液塗布装置。
  11. モノマーを含有する複数の溶液に個別に対応した複数の溶液吐出部と、重合剤を吐出する重合剤吐出部とを備え、
    請求項1〜7のいずれか1つに記載の溶液塗布方法に基づいて、各分割塗布領域に応じて選択されたモノマーを含有する溶液を各溶液吐出部から吐出して被塗布材上に塗布すると共に、被塗布材上に塗布されたモノマーを含有する溶液の塗布膜上に重合剤吐出部から重合剤を吐出して前記塗布膜をゲル化させるように構成された電気泳動用試験具の製造装置。
  12. 前記溶液吐出部および重合剤吐出部が、インクジェットヘッドからなる請求項11に記載の電気泳動用試験具の製造装置。
  13. 被塗布材上にゲルが固定されてなる電気泳動用試験具であって、
    前記ゲルは複数の領域に区分され、前記領域内で前記ゲルを形成するゲル材料の配合比率が変化していることを特徴とする電気泳動試験具。
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