JP2014004612A - 冷間圧延における異常検出方法および冷間圧延方法 - Google Patents

冷間圧延における異常検出方法および冷間圧延方法 Download PDF

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Abstract

【課題】連続式冷間圧延機におけるスリップやチャタリング等の圧延異常を精度よく検出する方法と、その方法を適用した冷間圧延方法を提案する。
【解決手段】連続式冷間圧延機のスタンド間の鋼板張力値の変動を読み込み、当該読み込んだ張力値の変動を周波数解析し、圧延異常発生時の鋼板の固有振動数を含む周波数帯域における各周波数の実効強度を求め、当該実効強度が所定の閾値以上となったときに圧延異常が発生したと判定し、常発生情報を出力するとともに、圧延速度を所定の速度まで自動減速する。
【選択図】図2

Description

本発明は、連続式冷間圧延機での圧延時に発生するスリップやチャタリング等の圧延異常を精度よく検出する異常検出方法と、その方法を適用した冷間圧延方法に関するものである。
連続式冷間圧延機では、圧延時の圧延ロールと被圧延材(鋼板)との間の潤滑が不適合であると、スリップ(ジャンピング)やチャタリングといった圧延異常が起こることが知られている。斯かる異常が発生すると、圧延機や鋼板等が異常振動(共鳴振動)を起こし、鋼板には板厚変動やスリップ疵、縞模様などが発生するため、その部分は製品とはならない。そのため、上記異常が発生した部分は、下工程で確実に除去する必要があり、製品歩留りの大きな低下を招くだけでなく、完全に除去されない場合にはユーザーにおいて品質トラブルを招くことになる。
また、上記異常が発生した場合には、振動によって、圧延を継続して行うことが不可能となり、場合によっては板破断や絞込みを引き起こしたりする。そのため、圧延速度を減速して対応をせざるを得ず、生産性を阻害する要因の一つともなっている。
そのため、スリップやチャタリング等の圧延異常の発生を精度よく検出し、その発生情報を後工程に流すとともに、圧延速度の減速等、異常現象の回避策を速やかに講じることが必要となる。
従来、スリップやチャタリング等の圧延異常を検出する方法としては、例えば、特許文献1には、圧延機に振動センサを設置し、異常スリップ現象を検出する方法が、特許文献2には、ミルバイトの近傍に圧延材を挟む2段ロールを配設し、その2段ロールに振動センサを設置して振動を測定することでチャタリングを検出する方法が、また、特許文献3には、圧延中の鋼板張力を読み込み、張力値の変動量で異常振動を検出する方法等が知られている。
特開平07−012641号公報 特開平08−029250号公報 特開2010−234422号公報
しかしながら、特許文献1に開示された方法は、スリップ現象には、圧延機の振動を伴わない場合もあるため、必ずしも有効な検知手段とはならない。また、特許文献2に開示された方法は、タンデム式冷間圧延機の場合にはスタンド間が狭く、2段ロールを設置するスペースが限られること、また、例え設置できたとしても、スランド間は圧延油や冷却水が飛散する環境であるため、振動センサや2段ロールのメンテナンスが容易ではない。また、特許文献3に開示された方法は、圧下を操作した時や溶接点の通過時などのように品質に問題がない場合でも張力値の変動が大きくなる場合があるため、やはり検出精度の点で問題がある。
本発明は、従来技術が抱える上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、連続式冷間圧延機におけるスリップ等の圧延異常を精度よく検出する方法と、その方法を適用した冷間圧延方法を提案することにある。
発明者らは、上記課題の解決に向けて鋭意検討を重ねた。その結果、連続式冷間圧延機のスタンド間の鋼板張力値の変動を読み込み、その張力値の変動を高速フーリエ変換等を用いて周波数を解析し、スリップに特有の固有周波数を含む周波数帯域における各周波数の実効強度を求め、これを予め定めた閾値と対比することで、スリップやチャタリング等の圧延異常の発生を精度よく検出することができることを見出し、本発明を開発した。
上記知見に基く本発明は、連続式冷間圧延機のスタンド間の鋼板張力値の変動を読み込み、当該読み込んだ張力値の変動を周波数解析し、圧延異常発生時の鋼板の固有振動数を含む周波数帯域における各周波数の実効強度を求め、当該実効強度が所定の閾値以上となったときに圧延異常が発生したと判定する冷間圧延における異常検出方法である。
本発明の冷間圧延における異常検出方法は、上記張力値の変動の読み込みを、冷間圧延機および圧延中の鋼板の固有振動数の2倍以上のサンプリング周波数で行うことが好ましい。
また、本発明の冷間圧延における異常検出方法は、圧延異常が発生したと判定した場合には、異常発生情報を出力するとともに、圧延速度を所定の速度まで自動減速する機能を有してなることを特徴とする。
また、本発明は、連続式冷間圧延機のスタンド間の鋼板張力値の変動を読み込み、当該読み込んだ張力値の変動を周波数解析し、圧延異常発生時の鋼板の固有振動数を含む周波数帯域における各周波数の実効強度を求め、当該実効強度が所定の閾値未満の圧延速度で冷間圧延することを特徴とする冷間圧延方法である。
本発明によれば、スリップやチャタリング等の圧延異常を精度よく検知することができ、圧延異常に対する回避策を的確かつ迅速に行うことが可能となるので、圧延異常に起因した不良を大幅に低減することができる。また、本発明によれば、スリップやチャタリング等の圧延異常を精度よく検知し、上記情報を下工程に伝達することで異常発生部分を確実に除去することが可能となるので、製品品質の向上にも大いに寄与する。
圧延機の振動測定結果からのスリップ現象の検知可能性を説明する図である。 圧延機のスタンド間張力変動測定結果からのスリップ現象の検知可能性を説明する図である。 本発明の圧延異常の検出方法を5タンデムの連続式冷間圧延機に適用した例を示す図である。 本発明の圧延異常を判定する処理フローを説明する図である。
まず、本発明の基本的な技術思想について、圧延異常がスリップである場合を例にとって説明する。
図1は、5タンデムの連続式冷間圧延機で、引張強さが270MPaクラスの板厚4.0mm×板幅1200mmの熱延鋼板を板厚0.7mmに冷間圧延したときの圧延開始から終了までの圧延データを示したもので、図1(a)は、#5スタンドの圧延速度の推移であり、圧延開始の加速部(A域)でスリップが発生して急速に減速(B域)した後、徐々に加速し、高速で安定して圧延(C域)したことを示している。図1(b)は、上記圧延における#3スタンドのハウジングの上部に振動センサを取り付けて、圧延機の振動速度を測定した結果を示したものであり、スリップが発生したA域と安定圧延したC域とでは、圧延機の振動速度に大差はない。また、図1(c)は、上記#3スタンドの振動速度を高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform,FFT)を用いて周波数解析し、0〜1500Hzの周波数帯域における各周波数の実効強度を求め、その内の変化が認められた0〜500Hzの周波数帯域における結果を示したものであり、やはり、高速で安定圧延したC域でもスリップが発生したA域に近い実効強度が得られている。また、上記実効強度を0〜1500Hzの周波数帯域において測定した理由は、スリップ現象には、圧延機等に依存する固有の振動周波数があり、上記固有振動数は、通常、10〜1000Hzの間にあるためである。
これらの図から、圧延機の振動を測定する方法では、スリップの発生を精度よく検知することができないことがわかる。
一方、図2は、図1と同じ冷間圧延機において、圧延機の振動に替えて、スタンド間の張力変動を測定した結果を示したものであり、(a)は、図1(a)と同じ圧延速度の推移、(b)は、#3−4スタンド間の鋼板の張力値の変動を読み込んだもの、(c)は上記読み込んだ張力値の変動を、高速フーリエ変換を用いて周波数解析し、0〜400Hzの周波数帯域における各周波数の実効強度を求めた結果を示したものである。ここで、上記実効強度を0〜400Hzの周波数帯域において解析した理由は、スリップやチャタリングによって鋼板に張力変動が発生する固有振動数は、圧延機の固有振動数と比較して小さく、振動に要求される帯域まで解析する必要性が少ないからである。図2(b)からは、スリップが発生したA域では、高速で安定圧延したC域と比較して大きな張力変動が測定されていること、また、上記張力値の変動を周波数解析した図2(c)からは、スリップが発生したA域と高速で安定圧延したC域とでは、上記鋼板の張力変動の実効強度にさらに明確な差が認められる。因みに、上記実効強度がピークを示した約100Hzの周波数は、スリップ発生時の鋼板の固有振動数に対応する。
これらの結果は、スタンド間の鋼板張力の変動を測定し、これを周波数解析して各周波数における実効強度を求めることで、スリップの発生を精度よく検知できることを示している。
そこで、本発明では、冷間圧延時のスリップやチャタリング等の圧延異常を検出する方法として、連続式冷間圧延機のスタンド間における鋼板の張力値の変動を読み込み、その読み込んだ張力値の変動を、高速フーリエ変換を用いて周波数解析し、各周波数における実効強度を求め、その強度と予め定めておいた閾値とを対比することで、スリップやチャタリング等の圧延異常の発生を判定することとした。
図3は、本発明の圧延異常の検出方法を5タンデムの連続式冷間圧延機に適用した一例を示したものであり、この圧延機では、図左側から右側に向かって、素材鋼板(熱延鋼板)が直列に並んだ5つのスタンド(圧延機#1〜#5std)を順次通過することによって所望の厚みの冷延板に圧延される。各スタンドのハウジング内には、鋼板1を圧延するための1対のワークロール2および上記ワークロールに圧下力を作用させるための1対のバックアップロール3が配設され、また、各スタンド間には鋼板1の張力値を測定するためのテンションメータ4が設置されている。
上記冷間圧延機では、各スタンド間に配設されたテンションメータ4で各スタンド間を通過する鋼板の張力値の変動を読み込み、その読み込んだ張力値の変動(プロセス信号)をデジタル信号に変換した後、周波数解析装置5で高速フーリエ変換を用いて周波数解析し、所定の周波数帯域における周波数ごとの実効強度を求め、予め定めた閾値との対比からスリップ等の圧延異常が発生したと診断装置6で判定した場合には、当該情報を警報表示装置7に伝達して異常の発生を表示すると同時に、当該情報を圧延条件制御装置8に伝達し、自動速度制御装置(ASR)9を介して、圧延速度を減速し圧延異常を回避する。
上記圧延異常の発生を判定する処理フローについて、図4を用いて説明する。
まず、各スタンド間の鋼板の張力変動を、テンションメータを介して読み込み(サンプリング)、その張力信号を所定のサンプリング期間(2秒以下)連続して記録する。この際、読み込んだ張力信号に対してフィルタ処理し、ノイズ成分を除外するのが望ましい。
ここで、上記張力信号を読み込むサンプリング周波数は、冷間圧延機および圧延中の鋼板の固有振動数の2倍以上とすることが望ましい。サンプリング定理から、サンプリング周波数を測定対象の振動周波数の2倍以上にしないと、測定対象の振動を正確に把握することができないからである。したがって、前述したように、スリップ発生時の鋼板の固有振動はおおよそ50〜400Hzであるから、サンプリング周波数は800Hz以上とするのが好ましい。
なお、スタンド間の鋼板張力を測定する方法としては、上記サンプリング周波数で張力信号をサンプリングできれば、テンションメータ以外の方法を用いてもよい。また、スタンド間の鋼板張力は、全てのスタンド間で測定してもよいし、スリップ等の異常が発生し易いスタンド間に限定して測定してもよい。
次いで、上記記録した張力信号を、高速フーリエ変換(FFT)を用いて周波数解析して、測定対象であるスリップの固有振動を含む特定周波数帯域における、周波数ごとの実効強度を求め、その中で最も高い強度を示す周波数を1つ抽出する。なお、上記特定周波数帯域は、先述したように、鋼板の張力変動の場合には、0〜400Hz程度で十分である。また、抽出する周波数は1つに限定する必要はなく、複数抽出してもよい。
次いで、上記最大値を示した周波数における実効強度と、予め測定しておいたスリップまたはチャタリング発生時の実効強度(閾値)とを対比し、上記閾値よりも小さい場合には、異常発生なしと判定し、元に戻ってプロセス信号(張力振動)の読み込みを実行する。なお、上記閾値は、スリップやチャタリング等の圧延異常で発生する鋼板表面の不良状態と実効強度との関係を予め求めておき、この関係から適宜設定すればよい。
一方、上記実効強度が閾値以上である場合には、圧延異常(スリップ)が発生していると判定し、元に戻ってプロセス信号(張力振動)の読み込みを実行すると同時に、異常発生情報を出力し警報を発するとともに、コイル内の異常が発生したコイル内位置、発生長さ等を主機コンピュータ等の記録媒体に取り込み、これらの品質情報を下工程に伝達する。これにより、下工程(検査工程)で、異常発生部分を見逃しなく除去することが可能となる。
また、圧延異常が発生していると判定した場合には、その情報を圧延条件制御装置に伝達し自動速度制御装置(ASR)を介して、圧延異常を回避するべく、圧延速度を所定の速度、具体的には、上記鋼板振動の実効強度が閾値以下となる速度に減速する指示を出力する。
なお、上記説明では、スリップが発生した場合の検出方法について説明したが、スリップ以外のチャタリング等の圧延異常にも適用できることはいうまでもなく、また、上記検出方法をさらに積極的に活用し、スタンド間の鋼板の張力振動を測定し、上記鋼板の振動の実効強度が、常時、所定の閾値以下となるよう圧延速度を制御することによって、圧延異常の発生を防止する圧延方法を採用してもよい。
上述した本発明の異常(スリップ)検出方法を、図3に示したように、実機の5タンデムの連続式冷間圧延機に適用し、適用前後におけるスリップ発生の検出率(回数比率)およびスリップに起因した不良発生率(質量比率)を比較し、表1に示した。なお、上記スリップの検出は、サンプリング期間を1秒、サンプリング周波数を800Hzとして、0〜400Hzの周波数帯域の周波数解析を行う条件で行った。
表1からわかるように、本発明を適用することによって、スリップの発生を100%の確率で検出し、その発生を回避するとともに、品質情報を下工程に伝達することが可能となったので、スリップ発生による不良部分を大幅に低減し、かつ、従来、見逃されていた不良部分をほぼ完全に除去することができるようになった。
Figure 2014004612
本発明の技術は、冷間圧延におけるスリップやチャタリング等の圧延異常の検出方法に限定されるものではなく、同様の異常振動を伴う異常現象の検出方法としても好適に用いることができる。
1:鋼板
2:ワークロール
3:バックアップロール
4:テンションメータ
5:周波数解析装置
6:異常診断装置
7:警報表示装置
8:圧延条件制御装置
9:自動速度制御装置(ASR)

Claims (4)

  1. 連続式冷間圧延機のスタンド間の鋼板張力値の変動を読み込み、当該読み込んだ張力値の変動を周波数解析し、圧延異常発生時の鋼板の固有振動数を含む周波数帯域における各周波数の実効強度を求め、当該実効強度が所定の閾値以上となったときに圧延異常が発生したと判定する冷間圧延における異常検出方法。
  2. 前記張力値の変動の読み込みを、冷間圧延機および圧延中の鋼板の固有振動数の2倍以上のサンプリング周波数で行うことを特徴とする請求項1に記載の冷間圧延における異常検出方法。
  3. 圧延異常が発生したと判定した場合には、異常発生情報を出力するとともに、圧延速度を所定の速度まで自動減速する機能を有してなることを特徴とする請求項1または2に記載の冷間圧延における異常検出方法。
  4. 連続式冷間圧延機のスタンド間の鋼板張力値の変動を読み込み、当該読み込んだ張力値の変動を周波数解析し、圧延異常発生時の鋼板の固有振動数を含む周波数帯域における各周波数の実効強度を求め、当該実効強度が所定の閾値未満の圧延速度で冷間圧延することを特徴とする冷間圧延方法。
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