JP2009175937A - 異常検出装置及び異常検出方法 - Google Patents

異常検出装置及び異常検出方法 Download PDF

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Abstract

【課題】駆動系の異常な稼働状態を、その異常な稼働状態が操業に悪影響を与えるほど顕著になる前に早期に検出することができる異常検出装置及び異常検出方法を提供すること。
【解決手段】協働して被加工物に対する加工又は処理を実施する複数の駆動系と、該複数の駆動系それぞれをフィードバック制御す制御系とからなる製造プラントの駆動系で発生する異常な稼働状態を検出する異常検出装置3を提供する。この異常検出装置3は、駆動系の動作状態を検知したフィードバック信号を測定する測定部132,133と、一の駆動系110のフィードバック信号、又は当該フィードバック信号から生成される該一の駆動系の駆動信号から、所定周波数成分を抽出する周波数解析部302と、所定周波数成分の振幅値に基づいて、一の駆動系と協働する他の駆動系120で発生する異常な稼働状態を異常の発生に先立って検出する異常検出部304と、を有する。
【選択図】図1

Description

本発明は、製造プラントの異常な稼働状態を検出する異常検出装置及び異常検出方法に関する。
工業技術や製造業の発達に伴い、様々な種類の製造プラントが稼働しており、これらの製造プラントでは、複数の製造工程において、被加工物(被加工材)が通常は複数の機器による加工又は処理を経て、様々な製品へと製造されている。製造プラントの中では、オートメーション化が進み、長時間連続的に稼働する製造プラントも少なくない。
製造プラント内の製造工程には、回転する部材や移動する部材など様々な駆動系を有する機器が配置され、これらの機器が所定の動作をすることにより各加工又は処理が実施され、その結果として、製品が製造される。しかし、駆動系は、例えば異常な振動が発生したり、指示通りに動作しないなどの何らかの不具合が発生する可能性が、非駆動系に比べて高い。駆動系に不具合が発生した場合、例えば、製造プラントで製造される製品の品質が低下したり、製造ラインが停止してしまう。そこで、このような駆動系の異常を検出する必要がある。なお、本願において駆動系とは、例えば、電気力・空気力・水力・水蒸気力・油圧力などにより駆動する部品、及び当該部品により駆動され、部材の一部又は全部が回転したり、移動したりする部材で構成される機器を言う。この駆動系としては、例えば、電気モータや油圧又は空気圧シリンダー等のアクチュエータ及び当該アクチュエータにより駆動される部材とで構成される様々な装置が挙げられる。
例えば、鉄鋼業において、鋼板を被加工物として熱間や冷間連続圧延を行う製造プラントには、複数の圧延機(スタンド)で構成されるタンデム圧延機が配置されている。スタンドは、圧延すべき鋼板を少なくとも2個本の圧延ロールで挟んで圧延加工するものであり、各圧延ロールは油圧シリンダーで駆動されて鋼板を圧下するとともに、回転駆動されて鋼板を移動させる。すなわちスタンドは駆動系の一つである。また、このタンデム圧延機には、圧延機間にルーパが配置されて、圧延される鋼板に接するルーパの位置をアクチュエータで付勢することにより、鋼板に働く張力が制御される。当該ルーパ及びそのアクチュエータからなる系も駆動系の一つである。このルーパに発生する異常な動作状態の一つに、ハンチング現象が挙げられる。鋼板が水平方向に移動して圧延されている場合に、ハンチング挙動を引き起こしたルーパは、上下に振動する。このような振動が発生すると、圧延されている鋼板の板厚不良などの製品品質の劣化や、圧延機自身に損傷が発生して生産性が低下すると言った重大な弊害に繋がりうる。そこで、例えば、ハンチングの発生を防止するために、製造プラントのオペレータが、経験則等に基づいて手動で自動制御に介入して、ハンチングが発生しないように調節を行っていた。
特開平8−304125号公報 特公平4−44932号公報 特開平6−4789号公報 特開平5−60596号公報
しかし、オペレータの判断によりハンチングを回避できる可能性は、オペレータの熟練度に依存する。よって、安定した操業を確保することが困難である。また、上記例の圧延工程などのように連続稼働する設備を監視する場合、オペレータの負担が大きい。
そこで、上記特許文献1〜4のような自動で異常を検出する装置が開発されている。
例えば、特許文献1には、原子力・火力等の発電プラントや化学・鉄鋼などの各種プラントに設置され、そのプラントの状態を監視・診断するプラント診断装置が開示されている。又、特許文献2には、各種の生産機械・工作機械等における性能低下や故障発生の可能等を環視する設備状態監視方法が開示されている。特許文献1及び特許文献2に開示された装置によれば、FFT(Finite Fourier transform)等の周波数成分分析手法を用いて、監視する駆動系の物理的信号を解析する。そして、解析により得られたスペクトルと、正常のスペクトル又は基準となるスペクトルとの差異を評価して、駆動系の異常を診断する。
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に開示された装置のように、駆動系の異常を発生してから検出したのでは、適切に対処することができない場合も少なくない。よって、かかる駆動系の異常が発生する前に、予め異常な稼働状態を検出することが希求される。
また、特許文献3には、プラントで使用される機器の稼働状態が、正常であるか異常であるかを監視する機器の異常監視方法およびその装置が開示されている。特許文献3などには、回帰モデル係数の許容範囲を監視するなど、シミュレーションを応用した数式モデルを基礎とした方法が開示されている。この方法では、数式モデルを使用して、予め異常な稼働状態を検出する。しかしながら、数式モデルを基礎とした方法では、当該数式モデルの設計の仕方により、異常な稼働状態の検出確率が増減してしまう。つまり、異常な稼働状態の検出確率は、実際の物理的な測定値よりも数式モデルに依存してしまい、適切な信頼性を確保することが難しい。
更に、特許文献4には、回転機器に常設された各種センサからのデータを用いて前記回転機器の監視診断を行なう回転機器異常診断装置が開示されている。特許文献4に開示された装置では、FFT等の周波数分析手法を用いて、駆動系自体の異常の兆候を検出することにより、異常な稼働状態の発生を防止している。つまり、この特許文献4に開示された装置では、駆動系自体が故障していることにより生じる兆候を検出する。一方、駆動系の異常駆動は、駆動系自体の故障に起因するとは限られず、制御状態に起因して発生する場合もある。つまり、駆動系に対する制御条件(例えば制御目標設定値や、制御系パラメータなど)と、運転条件(例えば製造される製品の体積・重量・成分・温度など)とが適切に適合しないことに起因して、駆動系で異常駆動が発生することもあり、このような駆動系の異常稼働状態を検出することは、上記特許文献4では難しい。
以上のように、製造プラント内の駆動系で発生する異常稼働状態、特に制御状態に起因して発生する異常稼働状態を適切に前もって検出することは、難しい。そこで、製造プラント内部では、異常稼働状態が発生した場合に、製品の品質低下や設備の故障による生産性の低下と言った弊害を最小限に抑えるように、例えば運転速度を抑制するなどの安全に対する余裕を十分に確保して、各駆動系が駆動されている。よって、各駆動系の性能を十分に発揮したプラントの制御を実施していない場合が多い。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、制御状態に起因した場合をも含む駆動系の異常な稼働状態を、その異常な稼働状態が操業に悪影響を与えるほど顕著になる前に、かつ、従来よりも早期に検出することが可能な、異常検出装置及び異常検出方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、一の製造ラインに沿って配置され、協働して被加工物に対する加工又は処理を実施する複数の駆動系と、該複数の駆動系それぞれをフィードバック制御するための制御系と、からなる製造プラントについて、該製造プラントの駆動系で発生する異常な稼働状態を検出する異常検出装置であって、各々の駆動系の動作状態を検知したフィードバック信号を測定する測定部と、複数の駆動系のうちの一の駆動系に対するフィードバック信号、又は当該フィードバック信号に基づいて生成され該一の駆動系を制御する駆動信号から、所定の周波数成分を抽出する周波数解析部と、周波数解析部が抽出した所定の周波数成分の振幅値に基づいて、一の駆動系と協働する他の駆動系で発生する異常な稼働状態を異常の発生に先立って検出する異常検出部と、を有することを特徴とする、異常検出装置が提供される。
この構成によれば、一の駆動系に予兆として現れる他の駆動系の異常な稼働状態を検出することができる。つまり、他の駆動系の異常な稼働状態を、その異常な稼働状態が発生する前に検出することができる。より具体的には、上記製造プラントに配置された駆動系は、その駆動系の動作状態を表したフィードバック信号によりフィードバック制御される。従って、このフィードバック信号、又はフィードバック信号に基づいて生成される駆動系への駆動信号は、その駆動系の稼働状態が反映される。また、一の駆動系と他の駆動系が協働して駆動する場合、他の駆動系における稼働状態は、一の駆動系の稼働状態に依存する。従って、周波数解析部が、他の駆動系の稼働状態を表した一の駆動系のフィードバック信号又は駆動信号から所定の周波数成分を抽出し、異常検出部が、所定の周波数成分の振幅値に基づいて、他の駆動系で発生する異常な稼働状態を予め検出することができる。このように一の駆動系の信号に基づいて、他の駆動系の異常な稼働状態を検出することができるので、数式モデルなどに依存しない信頼性の高い異常検出をおこなうことができる。また、異常な稼働状態の検出は、制御系で使用されるフィードバック信号又は駆動信号に基づいて行われるので、制御状態に依存した異常な稼働状態をも検出することができる。なお、この他の駆動系に対する一の駆動系は、製造プラント全体の構成や設計状態を考慮に入れて決定することもできるが、実際に他の駆動系で異常な稼働状態が発生した場合に、それより前に所定の周波数成分の振幅に、その異常な稼働状態と関連した値が見られる駆動系に決定することが好ましい。つまり、一の駆動系は、実験的に決定されることが好ましい。
また、一の駆動系及び他の駆動系は、帯状の被加工物又は一連の被加工物に対して協働して製造工程の加工又は処理を実施してもよい。
この構成によれば、異常な稼働状態の発生が検出される他の駆動系に対する一の駆動系を、帯状物の被加工物又は一連の被加工物に対して協働して製造工程の加工又は処理を実施する駆動系に決定することができる。よって、他の駆動系で発生する異常な稼働状態の前兆は、帯状物の被加工物又は一連の被加工物を介して一の駆動系に伝達される。よって、一の駆動系のフィードバック信号又は駆動信号の所定の周波数成分の振幅値から、他の駆動系で発生する異常な稼働状態を予め検出することができる。
また、製造プラントが製造する製品は鋼板であり、一の駆動系及び他の駆動系は、鋼板に対して連続的に製造工程を実施してもよい。
また、周波数解析部は、2以上の駆動系のそれぞれのフィードバック信号又は駆動信号から、それぞれ所定の周波数成分を抽出し、異常検出部は、周波数解析部が抽出した2以上の所定の周波数成分の振幅値に基づいて、他の駆動系で発生する異常な稼働状態を予め検出してもよい。
この構成によれば、周波数解析部は、2以上の駆動系からの所定の周波数成分の振幅値に基づいて、他の駆動系で発生する異常な稼働状態を検出することができる。つまり、例えば、2以上の振幅全てに兆候が現われた場合に異常を検出したり、いずれかの振幅値に兆候が現われた場合に異常を検出したり、兆候が現われた振幅値が過半数を超えた場合に異常を検出したり、兆候が現われた振幅値を演算した結果から異常を検出するなど、2以上の振幅値の組み合わせにより、他の駆動系で発生する異常な稼働状態を検出できる。よって、他の駆動系で発生する異常な稼働状態の検出精度を向上させることができる。
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、一の製造ラインに沿って配置され、協働して被加工物に対する加工又は処理を実施する複数の駆動系と、該複数の駆動系それぞれをフィードバック制御するための制御系と、からなる製造プラントについて、該製造プラントの駆動系で発生する異常な稼働状態を検出する異常検出方法であって、各々の駆動系の動作状態を検知したフィードバック信号を測定する測定ステップと、複数の駆動系のうちの一の駆動系に対するフィードバック信号、又は当該フィードバック信号に基づいて生成され該一の駆動系を制御する駆動信号から、所定の周波数成分を抽出する周波数解析ステップと、周波数解析ステップで抽出した所定の周波数成分の振幅値に基づいて、一の駆動系と協働する他の駆動系で発生する異常な稼働状態を異常の発生に先立って検出する異常検出ステップと、を有することを特徴とする、異常検出方法が提供される。この構成によれば、一の駆動系に予兆として現れる他の駆動系の異常な稼働状態を検出することができる。
また、一の駆動系及び他の駆動系は、帯状の被加工物又は一連の被加工物に対して協働して製造工程の加工又は処理を実施してもよい。
また、製造プラントが製造する製品は鋼板であり、一の駆動系及び他の駆動系は、鋼板に対して連続的に製造工程を実施してもよい。
また、周波数解析ステップでは、2以上の駆動系のそれぞれのフィードバック信号又は駆動信号から、それぞれ所定の周波数成分を抽出し、異常検出ステップでは、周波数解析ステップで抽出した2以上の所定の周波数成分の振幅値に基づいて、他の駆動系で発生する異常な稼働状態を予め検出してもよい。
以上説明したように本発明によれば、制御状態に起因した場合をも含む駆動系の異常な稼働状態を、その異常な稼働状態が発生する前に検出することができる。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
以下で説明する本発明の一実施形態に係る異常検出装置は、様々な製造プラントに適用することが可能である。ここでは説明の便宜上、製造プラントの一例として、鉄鋼業における鋼板を熱間仕上圧延する鋼板製造プラント(以下単に「プラント」ともいう。)を挙げ、このプラントで加工又は処理される帯状の被加工物やプラントで製造される製品の一例として、鋼板を挙げて説明する。しかしながら、本発明の一実施形態に係る異常検出装置が駆動系の異常な稼働状態を検出することができるプラントは、かかる例に限定されるものではない。この異常検出装置は、例えば、厚板圧延を行うプラント・冷間圧延を行うプラント・連続焼鈍を行うプラント・表面処理を行うプラント・高炉・転炉・コークス炉などの製鉄所内の他のプラント、製紙プラント、石油精製プラント、自動車の製造プラント、電子機器の製造ラインを有する製造プラント、ガスや液体を精製するプラントなど様々なプラントであってもよい。これらのプラントでは、複数の駆動系が稼働して、帯状の被加工物や一連の被加工物に対して、少なくとも1以上の工程の加工又は処理が実施されて、製品が製造される。本発明の一実施形態に係る異常検査装置は、このような複数の駆動系を有する様々な製造プラントに適用することができる。ただし、ここで例示する鋼板製造プラントは、熱間圧延工程のみを行う製造プラントであってもよいし、他の工程をも実施する製造プラントであってもよい。なお、ここでいう一連の被加工物とは、例えば、帯状の連続体や、帯状ではなくともある程度の長さを有する被加工物などが挙げられ、少なくとも2以上の駆動系(一の駆動系及び他の駆動系を含む)に亘る程度の長さを有する被加工物を意味する。換言すれば、一連の被加工物は、2以上の駆動系が同時に加工又は処理を実施することができる程度の長さを有する。なお、ある程度の長さを有する被加工物としては、例えば、切断された鋼板などのように、切断された帯状の被加工物及び帯状の連続体などが挙げられる。
<一実施形態>
図1は、本発明の一実施形態に係る異常検査装置の構成を説明するための説明図である。図2は、本実施形態に係る異常検査装置の適用例であるプラントの構成を説明するための説明図である。
(プラントの一例)
図1には、本発明の一実施形態に係る異常検査装置が適用されるプラントとして、タンデム圧延機を有するプラント1を例示している。タンデム圧延機は、鋼板Sの通板方向Dに沿って配置された複数のスタンドを有する。ここでは、各スタンドを、上流側より順次第1スタンド101,第2スタンド102,第3スタンド103,…と呼び、各スタンドを総称してスタンド100と呼ぶ。各スタンド100には、圧延機110が配置される。例えば、製鋼プラントで製造されたスラブは、加熱炉で加熱され、粗圧延機及び仕上げ圧延機により圧延されて、帯状の連続的に長い鋼板Sが製造される。なお、ここでは、仕上げ圧延機のみを図示している。
一方、このプラント1は、プラント制御装置2により制御される。プラント制御装置2は、制御系の一例であり、各スタンド100毎に配置されたルーパ制御部210を有する。そして、プラント制御装置2は、各スタンド100をそれぞれのルーパ制御部210によりルーパ制御する。なお、各ルーパ制御部210は、更に上位の制御装置により制御されてもよい。
(スタンド)
図2を参照しつつ、各スタンド100の構成について説明する。
図2に示すように、各スタンド100内には、圧延機110とルーパ120とが配置される。
圧延機110は、一の駆動系の一例であって、製造工程の一例として鋼板Sに対する圧延工程を実施する。圧延機110は、一対のワークロール111と、一対のバックアップロールと、ミルモータ112と、ASR113とを有する。一対のワークロール111は、鋼板Sを挟んで配置され、一対のバックアップロールは、この一対のワークロール111を挟んで配置される。バックアップロールは、ワークロール111を鋼板Sの方向に付勢し、この付勢力により上下一対のワークロール111が、鋼板Sを圧延する。なお、このバックアップロールは、説明の便宜上省略している。また、ワークロール111とバックアップロールとの間には、中間ロール(図示せず)が配置されてもよい。
ミルモータ112は、ワークロール111を回転させる。
つまり、ミルモータ112がワークロール111を回転させることにより、ワークロール111と接触している鋼板Sが通板方向Dに通板される。
ASR(速度制御器)113は、ミルモータ112を速度制御する。
この際、ASR113は、プラント制御装置2によって制御される。より具体的には、ASR113は、プラント制御装置2のルーパ制御部210から、ロール速度指令信号を取得する。そして、ASR113は、ワークロール111の回転速度がこのロール速度指令信号を満たす(一致する)ように、ミルモータ112にミル電流を出力してミルモータ112を回転させる。この際、ASR113は、ミルモータ112を、ワークロール111又はミルモータ112の回転速度によりフィードバック制御してもよい。
上記構成を有する圧延機110が鋼板Sに沿って複数は位置され、それぞれの圧延機110が鋼板Sを圧延することにより、鋼板Sの熱間連続圧延工程が実施される。この際、各スタンド100のワークロール111の回転速度が、鋼板Sの通板速度を決定すると共に、鋼板Sの各スタンド100間の張力Tを決定する。一方、鋼板Sの厚みは、各圧延機110を通過するに従い薄くなり、かつ、各スタンド100の全てのワークロール111の回転速度を精密に制御することは難しい。そこで、安定した製造工程の実施を行うために、各圧延機110間の鋼板Sの張力Tを調整するルーパ120が設けられる。
ルーパ120は、他の駆動系の一例であって、製造工程の一例として鋼板Sの張力調整工程を実施する。なお、この張力調整工程は、圧延工程中の一工程と見なしてもよいし、圧延工程とは異なる工程と見なすこともできる。しかしながら、上記圧延機110が実施する圧延工程と、このルーパ120が実施する張力調整工程は、連続して行われる。
ルーパ120は、ルーパロール121と、ルーパモータ123と、ASR124とを有する。ルーパロール121は、回転軸を中心に回転可能に、鋼板Sに当接するように配置される。また、ルーパモータ123は、ルーパモータ123の回転軸とは異なる回転中心122を中心に、ルーパロール121を回動させる。つまり、ルーパモータ123が、回転中心122を中心にルーパロール121を回転させることにより、ルーパロール121を鋼板Sに付勢させて、鋼板Sの張力Tが調整される。
ASR(速度制御器)124は、ルーパモータ123を速度制御する。
この際、ASR124は、プラント制御装置2によって制御される。より具体的には、ASR124は、プラント制御装置2のルーパ制御部210から、ルーパモータ速度指令信号を取得する。そして、ASR124は、ルーパモータ123の回転速度がこのルーパモータ速度指令信号を満たす(一致する)ように、ルーパモータ123に電流を出力してルーパモータ123を回転させる。この際、ASR124は、ルーパモータ123を、ルーパモータ123の回転速度によりフィードバック制御してもよい。
上記圧延機110及びルーパ120は、プラント制御装置2によりルーパ制御される。ルーパ制御とは、ループ制御、特にフィードバック制御の一種であり、鋼板Sの張力Tとルーパ角度θをフィードバック信号として、フィードバック信号が所定の指令値と一致するように、上記圧延機110及びルーパ120を制御する制御方法である。このルーパ制御等を行うために各スタンド100には、各種の測定器(センサ)が配置される。この測定器の一例について説明する。
図2に示すスタンド100中には、ルーパ角度測定器131と、ルーパ張力測定器132と、ミル電流測定器133と、が配置される。
ルーパ角度測定器131は、測定部の一例であって、ルーパモータ123がルーパ120を回転中心122を中心に回動させる角度θを測定する。ルーパモータ123は、このルーパ120の角度θを主なフィードバック信号としてフィードバック制御される。つまり、鋼板Sの張力Tは、主に各スタンド100の圧延機110の回転速度の相対関係により決定されるが、ルーパ120が、このスタンド100間の鋼板Sの弛みや張力Tの変動を抑制する。そのため、ルーパ120は、例えば、角度θが一定になるように制御されてもよく、更に張力Tが大きすぎるときには角度θが小さくなり、張力Tが小さすぎるときには角度θが大きくなるように制御されることも可能である。そのため、このルーパ120の角度θは、主にルーパ120の動作状態を反映しており、間接的には圧延機110の動作状態をも反映した値となる。
ルーパ張力測定器132は、測定部の一例であって、鋼板Sの張力Tを測定するために、ルーパ120に印加されている張力を測定する。つまり、ルーパ120は、鋼板Sに付勢されているため、このルーパ120が鋼板Sから受ける反作用力は、鋼板Sの張力Tを反映している。よって、ルーパ張力測定器132は、鋼板Sからの反作用力を測定することにより鋼板Sの張力Tを測定する。なお、図2では、ルーパ張力測定器132として、ルーパロール121に印加された張力Tを測定する測定器を示しているが、このルーパ張力測定器132は、例えば、ルーパモータ123のトルクから張力Tを算出する測定器であってもよく、鋼板Sから直接張力Tを測定する測定器であってもよい。上述のように張力Tは、主に各スタンド100の圧延機110の回転速度の相対関係により決定される。よって、張力Tは、主に圧延機110の動作状態を反映した値となり、各圧延機110は、この張力Tをフィードバック信号としてフィードバック制御される。なお、張力Tは、上述のようにルーパ120により調整されるため、ルーパ120の動作状態をも間接的に反映した値となる。
ミル電流測定器133は、測定部の一例であって、ミルモータ112に印加されるミル電流Iを測定する。ミル電流Iは、駆動信号の一例であって、フィードバック制御における圧延機110の駆動信号である。つまり、圧延機110は、主に張力Tをフィードバック信号としたフィードバック制御されるので、このミル電流Iは、フィードバック信号に基づいて生成される。より具体的には、張力Tが大きすぎる場合には、張力Tが小さくなる値のミル電流Iが生成され、張力Tが小さすぎる場合には、張力Tが大きくなる値のミル電流Iが生成される。
(プラント制御装置)
図2を参照しつつ、更にプラント制御装置2の構成について説明する。
図2に示すように、プラント制御装置2は、各スタンド100に対応して、目標張力設定部201と、張力偏差算出部202と、目標角度設定部203と、角度偏差算出部204と、ルーパ制御部210とを有する。
目標張力設定部201は、圧延機110の動作状態などにより決定される張力Tの目標値(目標張力T0)を設定する。そして、張力偏差算出部202は、実際の張力T、つまりルーパ張力測定器132が測定した張力Tの目標張力T0からの偏差(偏り、差分)ΔTを算出する。なお、上述のように張力Tは、各スタンドの圧延機110の相対的な稼働速度に依存する。よって、目標張力設定部201は、プラント制御装置2の内部又は外部に配置された更に上位の制御部により制御されて、設定する目標張力T0を変更する。また、この目標張力T0は、例えば、プラント1の稼働中や、同一の鋼板Sを製造している間などには、変更されず一定値に設定されてもよい。
目標角度設定部203は、ルーパ120の動作状態などにより決定されるルーパ120の角度θの目標値(目標角度θ0)を設定する。そして、角度偏差算出部204は、実際の角度θ、つまりルーパ角度測定器131が測定した角度θの目標角度θ0からの偏差(偏り、差分)Δθを算出する。なお、目標張力設定部201と同様に、目標角度設定部203も、プラント制御装置2の内部又は外部に配置された更に上位の制御部により制御されて、設定する目標角度θ0を変更する。また、この目標角度θ0も、例えば、プラント1の稼働中や、同一の鋼板Sを製造している間などには、変更されず一定値に設定されてもよい。
ルーパ制御部210は、ルーパ120の角度θの偏差Δθと鋼板Sの張力Tの偏差ΔTを取得して、この偏差Δθ、ΔTに基づいて、ASR124へのルーパモータ速度指令値とASR113へのロール速度指令値とを生成する。このルーパ制御部210は、例えば、PID(Proportional Integral Derivative)コントローラやPIコントローラのようなフィードバック制御を行うコントローラを含む。なお、ここでは、ルーパ制御部210は、例えばPIDコントローラを含むとするが、かかる例に限定されるものではなく、フィードバック制御を行うコントローラであれば如何なるものであってもよい。そして、ルーパ制御部210は、主に偏差Δθに基づいてルーパ120をPID制御し、主に偏差ΔTに基づいて圧延機110をPID制御する。つまり、ルーパ制御部210は、偏差Δθの値、偏差Δθの積分値及び偏差Δθの微分値に基づいて、偏差Δθが減少するようにルーパモータ速度指令値を変更し、偏差ΔTの値、偏差ΔTの積分値及び偏差ΔTの微分値に基づいて、偏差ΔTが減少するようにロール速度指令値を変更する。なお、ルーパ制御部210は、ルーパ120を制御する際に、偏差Δθだけでなく偏差ΔTにも基づいた制御を行ってもよく、逆に、圧延機110を制御する際に、偏差ΔTだけでなく偏差Δθに基づいた制御を行ってもよい。
このような構成のプラント制御装置2により制御される圧延機110及びルーパ120は、同一の鋼板Sに対して同時に接触して各工程を実施することにより、協働して圧延を行う。更に、圧延機110及びルーパ120の制御状態も、相互に関連している。このようなプラント1における異常な稼働状態を検出するために、本実施形態に係る異常検出装置3が配置される。異常検出装置3は、プラント1における様々な駆動系の異常を検出することができるが、以下では、この異常な稼働状態として、ルーパ120のルーパハンチング現象を検出する場合について説明する。
ルーパハンチング現象とは、ルーパ120において異常な振動が発生する現象のことであり、かかる不具合が発生すると、ルーパ120の振動が鋼板Sへと伝達され、鋼板Sの圧延精度が低下して製品品質が悪くなる恐れがある。また、振動が大きくなれば装置全体が損傷して、修復するために製造ラインを停止しなければならない事態が発生する恐れもある。ルーパ120のハンチングは、その原因によって、例えば2つに大別される。1つ目は、駆動系自体の不具合に起因したルーパハンチングであり、2つ目は、制御状態に起因したルーパハンチングである。駆動系の不具合に起因したハンチングは、例えば、ルーパロール121の摩耗・ルーパロール121が適切に回転しない場合・ルーパモータ123の故障などのルーパ120の不具合に起因するだけでなく、圧延機110の各構成の不具合や他の構成などに起因しても発生しうる。これは、各駆動系が協働して同一の鋼板Sに製造工程を実施することによる。一方、制御状態に起因したルーパハンチングは、制御条件と運転条件とがマッチ(適合)しないことに起因して発生する。運転条件とは、例えば、鋼板Sの成分・温度・板厚・板幅・重量・通板速度などの製品又はその材料の属性や、大気温度・湿度などの環境要因を表す。この運転条件が決定され、経験則又は所定の計算結果などにより制御条件が決定される。制御条件とは、駆動系を制御する際の制御目標や、ルーパ制御系のパラメータ(PIDコントローラやPIコントローラのパラメータなど)を意味する。この制御条件としては、例えば、上記目標張力T0・目標角度θ0、各圧延機110における圧力値などが挙げられる。上記運転条件は、製造する製品が異なる場合だけでなく、同一の鋼板Sを製造中にも経時的に変化しうる。例えば、環境要因を一定に保つことは難しく、この環境要因の影響で、鋼板Sの温度などの属性も変化する。従って、運転条件から制御条件を決定したとしても、実際には必ずしも両者が適合するとは限らない。何らかの原因により、例えば、制御条件が運転条件から外れたり、決定された制御条件が運転条件に適合しない場合が存在して、駆動系で異常な稼働状態が発生する場合がある。かかる異常な稼働状態として、ここでは制御状態に起因したルーパハンチングを例示している。なお、ルーパハンチングは、ここで例示した原因に起因せず、他の原因に起因して発生することも考えられるが、以下で説明する異常検出装置3は、上記2つの原因だけでなく、他の原因に起因して発生する駆動系の異常な稼働状態を検出することができる。
(異常検出装置の構成等)
図1を参照しつつ、更に本発明の一実施形態に係る異常検出装置3について説明する。
図1に示すように、異常検出装置3は、測定信号取得部301と、周波数解析部302と、測定信号記憶部303と、異常検出部304と、異常回避制御部305と、表示部306と、パラメータ設定部307とを有する。
測定信号取得部301は、各スタンド100で行われるフィードバック制御のループから、フィードバック信号と、そのフィードバック信号から生成される駆動系を駆動する駆動信号とを含む測定信号を取得する。ここでは測定信号取得部301は、フィードバック信号の例として、各スタンド100のルーパ張力測定器132が測定した張力Tと、各スタンド100のルーパ角度測定器131が測定したルーパ120の角度θとを取得する。また、測定信号取得部301は、駆動信号の例として、ミル電流Iを取得する。なお、稼働状態を監視して異常な駆動を検出したい駆動系が限られる場合、測定信号取得部301は、全てのスタンド100から各信号を取得する必要はなく、監視している駆動系の異常な駆動が前兆として現れるスタンド100の信号を取得すればよい。また、ここでは、測定信号取得部301が取得するフィードバック信号及び駆動信号を総称して測定信号と呼ぶ。
周波数解析部302は、周波数解析部の一例であって、測定信号取得部301が取得した各測定信号を取得して、各測定信号を周波数解析して、それぞれ所定の周波数成分の振幅値を抽出する。周波数解析部302で使用される周波数解析方法としては、例えば窓つきFFT(Finite Fourier transform)やウェーブレット変換などが挙げられるが、指定した周波数成分の振幅値を抽出できる如何なる周波数解析方法をも使用することができる。また、例えば、測定信号取得部301が10msec周期で測定信号を取得する場合、この周波数解析部302は、随時測定信号取得部301から測定信号を取得してリアルタイムに周波数解析処理を行ってもよい。
なお、周波数解析部302が振幅値を抽出する周波数は、各測定信号によって異なる。これら測定信号毎に決定される周波数は、例えば、0〜40Hz程度に設定さえることが好ましいが、かかる例に限定されるものではない。監視している駆動系の異常な稼働状態の前兆が、どの周波数においてどの測定信号に現れるかは、プラント1の全体の構成等に依存する。よって、この周波数は、例えば、稼働状態をモニターした結果や実験結果などのより求められ、決定されることが好ましい。周波数の決定方法については、詳しく後述する。
なお、本実施形態において周波数解析部302は、ミル電流Iに対しては約16Hz近傍、張力Tに対しては約10Hz近傍、角度θに対しては約2Hz近傍の周波数成分の振幅値を抽出する。この際、例えば約16Hz近傍などのミル電流Iの所定の周波数成分の振幅値は、軸ねじり振動を表し、例えば約10Hz近傍などの張力Tの所定の周波数成分の振幅値は、弦振動を表している。更に、例えば約2Hz近傍などの角度θの所定の周波数成分の振幅値は、ルーパハンチングを表している。本実施形態では、検出する異常な稼働状態として、ルーパハンチングを例示しているが、これは本実施形態に係るプラント1では上述の通りルーパハンチングが与える製造工程への影響が、他の軸ねじり振動・弦振動などよりも大きいためである。本実施形態に係る異常検出装置3は、取得する測定信号等を変更することにより、軸ねじり振動又は弦振動も検出することができることは言うまでのない。
また、周波数解析部302は、各測定信号に対する周波数解析結果を、履歴として測定信号記憶部303に記録してもよい。つまり、周波数解析部302は、所定の周波数成分の振幅値を履歴として測定信号記憶部303に記録してもよい。測定信号記憶部303に記録された周波数解析結果は、例えば、プラント1の稼働状態のモニターなどに使用される。
更に、周波数解析部302は、所定の周波数成分だけでなく他の周波数成分の振幅をも抽出して、この振幅値を履歴として測定信号記憶部303に記録してもよい。この場合、測定信号記憶部303に記録された所定の周波数と他の周波数とを含む周波数解析結果は、上記所定の周波数の決定と下記閾値及び振幅値(どの測定信号の振幅値を使用するのか)の決定となどに使用される。
なお、これら所定の周波数・閾値・振幅値等のパラメータは、稼働状態のモニター結果や実験結果などにより予め定められてもよく、後述するパラメータ設定部307が設定又は更新してもよい。パラメータ設定部307が上記パラメータを設定又は更新する場合、周波数解析部302は、例えば、動作モードとして、異常検出モードとパラメータ設定モードとを有してもよい。異常検出モードでは、周波数解析部302は、既に設定された所定の周波数成分の振幅値を抽出して、測定信号記憶部303に記録する。一方、パラメータ設定モードでは、周波数解析部302は、所定の周波数と他の周波数とを含む周波数帯域に対して振幅値を抽出する。そして、後述するパラメータ設定部307が、所定の周波数と他の周波数とを含む周波数帯域の振幅値から、上記パラメータを設定する。このようにパラメータ設定部307が上記パラメータを更新することにより、異常検出装置3は、異常な稼働状態が発生する状況を学習して検出精度を向上させることができる。また、周波数解析部302が異常検出モードとパラメータ設定モードとを有することにより、異常な稼働状態を検出する際(異常検出モード)には、所定の周波数成分の振幅値のみを抽出すればよく、周波数解析部302における測定信号の周波数解析処理の処理速度を速くすることができる。
異常検出部304は、異常検出部の一例であって、周波数解析部302が抽出した所定の周波数成分の振幅値に基づいて、稼働状態を監視している駆動系の発生する異常な稼働状態を、その異常の発生に先立って検出する。より具体的には、異常検出部304は、それぞれの振幅値(それぞれの測定信号の周波数解析結果)に対して閾値を設定しており、当該閾値と、周波数解析部302から取得する振幅値とを比較する。その結果、振幅値が、それに対応する閾値を異常となった場合、異常検出部304は、稼働状態を監視している駆動系で異常な稼働状態が発生する可能性があるとして、その駆動系の異常な稼働状態を予め検出する。なお、各振幅値に対する閾値や、どの測定信号の振幅値に基づいて監視している駆動系の異常な稼働状態を検出するのかも、プラント1の全体の構成等に依存する。よって、閾値及び振幅値(どの測定信号の振幅値を使用するのか)も、例えば、稼働状態をモニターした結果や実験結果などのより決定されることが好ましい。閾値及び振幅値の決定方法についても、詳しく後述する。
なお、異常検出部304は、複数の振幅値に基づいて、監視対象の駆動系で発生する異常な稼働状態を検出してもよい。つまり、例えば、複数の駆動系の測定信号のそれぞれの振幅値が全て閾値以上となった場合に、その駆動系の異常な稼働状態を検出してもよい。更に、所定の駆動系の振幅値が閾値以上となった場合には、駆動系の異常な稼働状態を検出するが、他の駆動系の振幅値が閾値以上となった場合には、更に他の駆動系の振幅値が閾値以上となった際に、駆動系の異常な稼働状態を検出してもよい。つまり、異常検出部304は、振幅値の組み合わせに基づいて、駆動系の異常な稼働状態を検出してもよい。
異常回避制御部305は、異常検出部304が異常な稼働状態を検出した場合、その異常が発生する前に、異常な稼働状態の発生が回避されるように制御を行う。より具体的には、異常回避制御部305は、異常な稼働状態が検出された場合、表示部306に所定の警告を表示させることにより、異常な稼働状態が発生すると予想される駆動系をユーザに通知する。この通知を見たユーザは、異常が発生する前に異常な稼働状態を回避するように、手動にてプラント1を制御する。また、異常回避制御部305は、異常な稼働状態が検出された場合、各スタンド100のルーパ制御部210の制御パラメータを変更させて、異常な稼働状態が発生することを回避させる。異常な稼働状態がルーパハンチングの場合、例えば、ルーパ制御部210が出力するロール速度指令信号などを小さくして鋼板Sの通板速度を遅くすることにより、ルーパハンチングの発生を回避できることが多い。よって、異常回避制御部305は、目標張力設定部201及び目標角度設定部203に、目標張力T0及び目標角度θ0の少なくとも一方を小さくさせることにより、ルーパハンチングの発生を回避してもよい。また、異常回避制御部305は、ルーパ制御部210が出力するロール速度指令信号及びルーパモータ速度指令信号の少なくとも1つを小さくするためにルーパ制御部210内のPIDコントローラのパラメータを変更して、ルーパハンチングの発生を回避してもよい。なお、異常回避制御部305による回避動作は、かかる例に限定されるものではなく、異常回避制御部305は、他の回避動作を行ってもよいことは言うまでもない。
つまり、周波数解析部302が、一の駆動系のループ制御中の測定信号を周波数解析し、その結果から、異常検出部304が、他の駆動系の異常な稼働状態が発生しうることを検出し、当該異常状態が発生する前に、異常回避制御部305が、異常稼働状態が発生することに対する回避動作を行う。かかる動作を、実際の測定信号の周波数解析結果を参照しつつ、説明する。
図3及び図4は、本実施形態に係る異常検出装置による検出結果の一例及び他の例を説明するための説明図である。この図3及び図4では、異常な稼働状態を検出する対称の一例として、第5スタンド105に配置されたルーパ120を挙げ、このルーパ120のルーパハンチングを検出する測定信号の一例として、第6スタンド106の圧延機110に対するミル電流I(駆動信号)と、第2スタンド102の圧延機110に対する張力T(フィードバック信号)とを挙げている。また、ミル電流Iの周波数を、例えば約16Hz近傍(図3では16.1Hz、図4では16.5Hz)に設定し、張力Tの周波数を、例えば10Hz近傍(図3では10.2Hz、図4では10.5Hz)に設定し、ルーパハンチングを表す角度θの周波数を、例えば2Hz近傍(図3では1.8Hz、図4では1.9Hz)に設定している。更に、ミル電流Iに対する閾値Itを、例えば44.9に設定し、張力Tに対する閾値Ttを、例えば0.0037に設定している。
(第1の測定例)
図3に示すように、この第1の測定例の場合、角度θの1.9Hzの成分の振幅値から、t=35秒近傍で第5スタンド105のルーパ120にルーパハンチング(ピークPθ)が発生していることが判る。一方、このルーパハンチングが発生した時刻よりもΔtI(=11.4秒)前に、第6スタンド106のミル電流Iの16.1Hzの成分の振幅値に、ピークPIが発生していることが判る。また、ΔtT(=7.9秒)前には、第2スタンド102の張力Tの10.2Hzの成分の振幅値に、ピークPTが発生していることが判る。
従って、例えば、周波数解析部302は、第6スタンド106のミル電流Iから16Hz近傍の周波数成分を抽出し、第2スタンド102の張力Tから10Hz近傍の周波数成分を抽出する。そして、異常検出部304は、これらのミル電流I,張力Tと、それぞれの閾値It,Ttとを比較することにより、第5スタンド105における異常な稼働状態を検出する。従って、図3に示す第1の測定例の場合、異常検出部304は、t=約20秒(ハンチング発生の約15秒前)において、第5スタンド105における異常な稼働状態を前もって検出することができる。
(第2の測定例)
上記第1の測定例と同じプラント1において、他のハンチングを検出した第2の測定例を図4に示す。図4に示すように、この第2の測定例の場合、角度θの1.9Hzの成分の振幅値から、t=45秒近傍で第5スタンド105のルーパ120にルーパハンチング(ピークPθ)が発生していることが判る。一方、このルーパハンチングが発生した時刻よりもΔtI(=2.9秒)前に、第6スタンド106のミル電流Iの16.5Hzの成分の振幅値に、ピークPIが発生していることが判る。また、ΔtT(=4.3秒)前には、第2スタンド102の張力Tの10.5Hzの成分の振幅値に、ピークPTが発生していることが判る。
従って、上記第1の測定例と同様に、例えば周波数解析部302は、第6スタンド106のミル電流Iから16Hz近傍の周波数成分を抽出し、第2スタンド102の張力Tから10Hz近傍の周波数成分を抽出する。そして、異常検出部304は、これらのミル電流I,張力Tと、それぞれの閾値It,Ttとを比較することにより、第5スタンド105における異常な稼働状態を検出する。従って、図4に示す第2の測定例の場合、異常検出部304は、t=約39秒(ハンチング発生の約6秒前)において、第5スタンド105における異常な稼働状態を前もって検出することができる。
つまり、監視対象として例示した第5スタンド105のルーパ120で発生するルーパハンチングは、この測定を行ったプラント1の場合、第6スタンド106の圧延機110のミル電流I(駆動電流)及び第2スタンド102の圧延機110に対する張力T(フィードバック信号)との相関関係が強いことが判る。この相関関係は、プラント1毎に異なり、同じタンデム圧延機であっても、監視対象の駆動系と相関関係が強い駆動系は、上記の測定例と同じになるとは限られない。しかしながら、第1の測定例及び第2の測定例に示したように、同じプラント1の場合、監視対象の駆動系と相関関係が強い駆動系の測定信号から、その監視対象の駆動系の異常な稼働状態を前もって検出できることが判る。つまり、監視対象の駆動系と相関関係の強い駆動系とパラメータ(測定信号の種類、周波数、閾値)とを、例えば稼働状態のモニタ結果や実験結果などから決定することにより、本実施形態に係る異常検出装置3は、監視対象の駆動系で発生する異常な稼働状態を、予め精度良く検出することができる。なお、この相関関係は、各駆動系が協働して駆動することにより発生する。つまり、各駆動系が協働していない場合、つまり、全く別の工程を実施する駆動系同士に生じる相関関係よりも、同一の又は連続する工程を実施する駆動系同士に生じる相関関係の方が強いことが予想される。また、同一の製品に対して同時に各製造工程を実施する駆動系同士は、更に相関関係が強い。上記第1の測定例及び第2の測定例の場合、各駆動系(第5スタンド105のルーパ120と、第6スタンド106及び第2スタンド102の圧延機110)は、全て同時に同じ鋼板Sに対してそれぞれの製造工程(張力調整工程、圧延工程)を実施しているため、相互の相関関係が強い。
また、異常検出装置3が異常な稼働状態を検出する際に基づく測定信号には、実際の異常な稼働状態を反映している。よって、この異常検出装置3は、駆動系の不具合に起因する異常な稼働状態と共に、制御状態に起因して発生する異常な稼働状態をも検出することができる。実際、上記第1の測定例及び第2の測定例で検出したルーパハンチングは、制御状態に起因して発生したルーパハンチングである。
再び図2を参照して、異常検出装置3が有する他の構成の説明に戻る。
パラメータ設定部307は、パラメータ設定モードにおいて、測定信号記憶部303から周波数解析部302が解析した周波数成分の履歴を取得して、各種のパラメータを設定又は更新する。このパラメータ設定部307で設定されるパラメータの例としては、周波数解析部302が測定信号から振幅値を抽出する周波数、異常検出部304が使用する各振幅値に対する閾値、「異常検出部304が監視対象の駆動系の異常な稼働状態を検出する際にどの測定信号の振幅値を使用するのか」を表した振幅値などが含まれてもよい。これら各種のパラメータを取得した周波数解析部302及び異常検出部304は、それぞれのパラメータを使用して上記の動作を行う。
上述のように、これら各種のパラメータは、予め設定されていてもよいが、この場合も、各種パラメータは、パラメータ設定部307が設定するような方法により、稼働状態のモニタ結果や実験結果に基づいて、予め設定される。そこで、以下では、パラメータ設定部307における設定方法を説明することにより、この各種のパラメータの設定(更新を含む)方法について説明する。
(各種のパラメータ設定)
パラメータ設定部307は、上述の通り、測定信号記憶部303に記憶された周波数成分の履歴に基づいて、各種のパラメータを設定する。この周波数成分には、パラメータ設定モードで周波数解析部302が抽出した、所定の周波数と他の周波数を含む周波数帯域の成分が含まれる。この周波数帯域の成分から、各種のパラメータを設定する方法について、以下では説明する。そこで以下では、周波数帯域の成分として、図2に示した第1の測定例を例に挙げ、そして、図5A〜図8を参照しつつ説明する。
図5A〜図8は、本実施形態に係る異常検出装置によるパラーメータ設定方法を説明するための説明図である。
(張力Tについて)
図5Aは、ルーパ張力測定器132が測定した張力Tの時間変化を示す。
図5Aに示すように、張力Tの時間変化は、周期的な振動成分を有する。これは、プラント1が、圧延機110のワークロール111等の回転動作によりスラブ等を圧延する設備であることによる。換言すれば、各駆動系が駆動することによる振動など、様々な振動が張力Tの測定信号に現れている。よって、この張力Tだけでなく他の測定信号も同様に周期的な振動成分を有する(図6A,図7A参照。)。
測定信号取得部301は、図5Aに示す張力Tを取得する。
周波数解析部302が、この張力Tを周波数解析して約0〜20Hzの周波数帯域の成分を抽出した結果(パラメータ設定モードにおける抽出結果)を、図5B及び図5Cに示す。
図5Bは、t=t0の時点における抽出結果を示す。
図5Bに示すように、駆動系(例えば圧延機110及びルーパ120)が通常の稼働状態であれば、上記周期的な振動成分が現れる。この張力Tの場合、数Hz帯域に振動が現れている。測定信号記憶部303には、図5Bに示すような張力Tのスペクトルが時系列に沿ったデータとして記録される。
また、図5Cは、t=t1の時点における抽出結果を示す。図3に示すように、t=t1の時点は、ルーパハンチングが発生するよりΔtT前の時点である。この時点では、図5Cに示すように、図5Bの通常稼働状態では見られなかった異常な振動が現れる(約10Hz近傍。)。この異常な振動は、他の周期的な振動に比べて振幅が大きく容易に区別することができる。なお、この異常な振動は、弦振動を表している。
(ミル電流Iについて)
同様に、ミル電流Iについて説明する。
図6Aは、ミル電流測定器133が測定したミル電流Iの時間変化を示す。
図6Aに示すように、ミル電流Iの時間変化も、周期的な振動成分を有し、測定信号取得部301は、このミル電流Iを取得する。
周波数解析部302が、このミル電流Iを周波数解析して約0〜20Hzの周波数帯域の成分を抽出した結果(パラメータ設定モードにおける抽出結果)を、図6B及び図6Cに示す。
図6Bは、t=t0の時点における抽出結果を示す。
図6Bに示すように、駆動系(例えば圧延機110及びルーパ120)が通常の稼働状態であれば、上記周期的な振動成分が現れる。このミル電流Iの場合、約0〜5Hz帯域に振動が現れている。測定信号記憶部303には、図6Bに示すようなミル電流Iのスペクトルが時系列に沿ったデータとして記録される。
また、図6Cは、t=t2の時点における抽出結果を示す。図3に示すように、t=t3の時点は、ルーパハンチングが発生するよりΔtI前の時点である。この時点では、図6Cに示すように、図6Bの通常稼働状態では見られなかった異常な振動が現れる(約16Hz近傍。)。この異常な振動も、他の周期的な振動に比べて振幅が大きく容易に区別することができる。なお、この異常な振動は、軸ねじり振動を表している。
(ルーパ角度θについて)
同様に、ルーパ120の角度θについて説明する。
図7Aは、ルーパ角度測定器131が測定した角度θの時間変化を示す。
図7Aに示すように、角度θの時間変化も、周期的な振動成分を有し、測定信号取得部301は、この角度θを取得する。
周波数解析部302が、この角度θを周波数解析して約0〜20Hzの周波数帯域の成分を抽出した結果(パラメータ設定モードにおける抽出結果)を、図7B及び図7Cに示す。
図7Bは、t=t0の時点における抽出結果を示す。
図7Bに示すように、駆動系(例えば圧延機110及びルーパ120)が通常の稼働状態であれば、上記周期的な振動成分が現れる。この角度θの場合、約1Hz帯域に振動が現れている。測定信号記憶部303には、図7Bに示すような角度θのスペクトルが時系列に沿ったデータとして記録される。
また、図7Cは、t=t3の時点における抽出結果を示す。図3に示すように、t=t3の時点は、ルーパハンチングが発生している時点である。この時点では、図7Cに示すように、図7Bの通常稼働状態では見られなかった異常な振動が現れる(約2Hz近傍。)。この異常な振動も、他の周期的な振動に比べて振幅が大きく容易に区別することができる。なお、この異常な振動が、ルーパハンチングを表している。
(パラメータの設定)
つまり、パラメータ設定部307は、図5B及び図5C(張力T)と、図6B及び図6C(ミル電流I)と、図7B及び図7C(角度θ)に示すような各測定信号のスペクトルの時間変化を表したデータを、測定信号記憶部303から取得する。そして、これらのデータを解析して、上記各種のパラメータを設定する。
より具体的に説明すると以下の通りである。
まず、パラメータ設定部307は、過去の履歴のデータから、ルーパハンチングが発生したルーパ120を、どのスタンド100のルーパ120であるのかをも含めて特定する。そして、そのルーパハンチングが発生したルーパ120を、監視対象の駆動系に設定する。
次に、パラメータ設定部307は、ハンチングが発生したルーパ120以外の他の駆動系からの測定信号を解析する。そのためにまず、パラメータ設定部307は、ハンチング発生時点より前の他の駆動系からの測定信号において、上記のような異常な振動(他の時間帯には見られない振動、つまり、周期的な振動以外の振動)が発生する測定信号を特定する。つまり、パラメータ設定部307は、この第1の測定例の場合、図5B及び図5C(張力T)と、図6B及び図6C(ミル電流I)などのスペクトルから、第2スタンド102のルーパ張力Tと第6スタンド106のミル電流Iとに異常な振動が発生していることを検出する。そして、パラメータ設定部307は、この異常な振動が発生した振幅値を監視対象に設定する。つまり、パラメータ設定部307は、この振幅値を「異常検出部304が監視対象の駆動系の異常な稼働状態を検出する際にどの測定信号の振幅値を使用するのか」を表した振幅値に設定する。更に、パラメータ設定部307は、異常な振動が発生した周波数を、各振幅値に対する抽出周波数(所定の周波数)を決定する。つまり、本実施形態の場合、パラメータ設定部307は、張力Tに対して約10Hz近傍を設定し(図5C参照。)、ミル電流Iに対して約16.1近傍を設定する(図6C参照。)。なお、この際、パラメータ設定部307は、角度θに対して約2Hz近傍を更に設定してもよい(図7C参照。)。従って、周波数解析部302は、各測定信号に対して、これら設定した周波数の成分の振幅値を抽出する。
そして、パラメータ設定部307は、各測定信号の所定の周波数の振幅値に対して、閾値を設定する。この際、パラメータ設定部307は、例えば、ハンチングが発生していない間の振幅値の最大値、この最大値とピークの振幅値との中間値、又は、ピークの振幅値から所定の値を減算した値等を、その測定信号に対する閾値に設定してもよい。
また、図8に示すように、ルーパ120に対して多数の(例えば100以上)圧延実績データ(履歴)が、サンプルとして測定信号記憶部303に記録されている場合、パラメータ設定部307は、これらの実績データから閾値を決定してもよい。この場合、パラメータ設定部307は、例えば、以下に例示する方法の1つ又は組み合わせに従い閾値を決定してもよい。
(1)ハンチングが発生した時に測定したピークの振幅の最小値
(2)ハンチングが発生していない時に測定した振幅の最大値
(3)ハンチングが発生した時に測定したピークの振幅の平均値と、ハンチングが発生していない時に測定した振幅の平均値との平均値
(4)ハンチングが発生した時に測定したピークの振幅の下位(その振幅が小さいピーク)所定個数の平均値
なお、本実施形態では、ミル電流Iの閾値It(=44.9)及び張力Tの閾値Tt(=0.0037)は、それぞれ上記(1)の方法により決定した。つまり、パラメータ設定部307は、上記(1)の方法に従い、図8に示した実績データを参照して、ハンチングが発生したコイルに対するピークの振幅値の最小値(ミル電流Iはコイル4、張力Tはコイル8の振幅値)を、閾値に設定している。
また、パラメータ設定部307は、これらの各種のパラメータを圧延する鋼板S、つまり製造する製品や材料により変更してもよい。各製品・材料に対してパラメータを変更することにより、異常検出装置3は、異常な稼働状態の検出精度を更に向上させることができる。
以上、本実施形態に係る異常検出装置3の構成について説明した。
次に、図9を参照しつつ、本実施形態に係る異常検出装置3の動作について説明する。
(異常検出装置の動作)
図9は、本実施形態に係る異常検出装置の動作を説明するための説明図である。
プラント制御装置2がプラント1の制御を開始すると、異常検出装置3は、図9に示すステップS01を処理する。ステップS01(測定信号取得ステップ、測定ステップの一例)では、測定信号取得部301が、各駆動系を制御する際に使用されている上記測定信号を取得する。つまり、異常検出装置3は、新たに別途の信号などを計測したり測定する必要はなく、既にフィードバック制御のループ内のフィードバック信号と駆動信号を取得するだけで、異常な稼働状態を検出することができる。そして、このステップS01の処理後は、ステップS03に進む。
ステップS03(周波数解析ステップ)では、周波数解析部302が各測定信号から周波数成分を取得する。この際、周波数解析部302は、異常検出モードに設定されている場合には、所定の周波数成分を抽出し、パラメータ設定モードに設定されている場合には、その所定の周波数を含む所定の周波数帯域のスペクトルを抽出する。そして、次のステップS05に進む。
ステップS05(異常検出ステップ)では、異常検出部304が、異常な稼働状態が発生するか否かを確認する。つまり、異常検出部304は、所定の周波数成分の振幅値が、閾値以上であるか否かを確認する。そして、振幅値が閾値以上である場合には、被検出対称の駆動系(例えば第5スタンド105のルーパ120)で、異常な稼働状態が発生する可能性があると判断して、次のステップS07に進む。一方、振幅値が所定の閾値未満である場合には、異常な稼働状態は発生しないと判断して、ステップS19に進む。
異常な稼働状態が発生する可能性があると判断した場合、次のステップS07では、異常回避制御部305が、表示部306に所定の警告表示などを表示させる。この際、異常回避制御部305は、異常な稼働状態が発生することが予想される駆動系を特定するための情報を表示部306に表示させることが好ましい。この情報を参照したユーザは、異常を回避するための動作や操作をすることができる。更に、このステップS07の処理後には、ステップS09に進む。
ステップS09では、異常回避制御部305が、異常な稼働状態の発生が回避されるように、各スタンド100のルーパ制御部210の制御を行う。この際、異常回避制御部305は、例えば、各スタンド100のルーパ制御部210の制御パラメータを変更させたり、目標張力T0及び目標角度θ0の少なくとも一方を小さくさせることにより、ルーパハンチングの発生を回避させる。そして、ステップS11の処理進む。
ステップS11では、異常検出部304が、異常な稼働状態が発生することが回避されたか否かを確認する。この際、異常検出部304は、例えば、閾値異常となった振幅値が、閾値未満となったり、通常時の振幅値に戻ったりした場合に、異常が回避されたと判断してもよい。そして、異常が回避されていない場合には、ステップS09を繰り返し処理して、異常回避制御を継続させる。一方、異常が回避された場合には、ステップS13に進む。
ステップS13では、異常回避制御部305が、ルーパ制御部210に対する異常時の制御を終了する。つまり、異常時制御のためのルーパ制御部210への介入が終了する。そして、ステップS13の処理後は、ステップS15に進む。
ステップS15では、パラメータ設定部307が、パラメータ設定モードに設定されているか否かを確認する。パラメータ設定モードが設定されている場合には、ステップS17に進み、パラメータ設定モードに設定されていない場合(異常検出モードが設定されている場合)には、ステップS19に進む。
ステップS17では、パラメータ設定部307が、既に設定されているパラメータを調整する。この調整されるパラメータとしては、例えば、周波数解析部302が異常検出モードで測定信号から振幅値を抽出する周波数、異常検出部304が使用する各振幅値に対する閾値、「異常検出部304が監視対象の駆動系の異常な稼働状態を検出する際にどの測定信号の振幅値を使用するのか」を表した振幅値などが挙げられる。上記パラメータ設定部307についての説明で説明したように、各種のパラメータが設定される。そして、ステップS17の処理後は、ステップS19に進む。
ステップS19では、測定信号取得部301が、プラント1が停止したか否かを確認する。プラント1が停止していない場合には、ステップS01以降の処理が繰り返し実行され、プラント1が停止している場合には、異常検出装置3は動作を終了する。
(異常検出装置による効果の一例)
以上、本発明の一実施形態に係る異常検出装置3について説明した。
この異常検出装置3によれば、一の駆動系のフィードバック信号又は駆動信号をモニターすることにより、その駆動系と協働した他の駆動系で発生する異常な稼働状態の前兆を検出することができる。よって、監視対象の駆動系(他の駆動系)の異常な稼働状態を、その異常が発生する前に事前に検出することが可能である。また、事前に異常な稼働状態を検出することにより、通常運転時には各駆動系の性能を最大限に発揮することも可能である。そして、ルーパハンチングなど、異常な稼働状態が発生して製品の品質が低下したり、生産性が低下することを効率的かつより確実に防止することができる。
また、異常な稼働状態の検出は、相互に関連した駆動系において行われる。よって、被検出対象の駆動系自身が故障した場合だけでなく、その駆動系を制御する制御状態に異常がある場合をも検出することができる。更に、異常検出モードでは、周波数解析部302は、所定の周波数成分を抽出するので、他の周波数成分をも抽出する場合に比べて処理するデータ量を削減して、異常検出処理に係る時間を短縮し、かつ、装置の製造コストを削減することができる。
また、パラメータ設定部307は、実績データ(履歴)に基づいて各種のパラメータを再設定することも可能なので、異常検出装置3は、プラント1の特性を学習しつつ、その検出精度を更に向上させることが可能である。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
例えば、上記実施形態では、周波数解析部302が、2つの動作モードを有する場合について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。つまり、例えば、周波数解析部302は、異常検出モードだけを有してもよい。この場合、異常検出装置3は、パラメータ設定部307を備えなくてもよく、図9に示すステップS15,ステップS17は処理されなくてもよい。
また、上記実施形態では、パラメータ設定モードであっても、異常を検出する場合について説明した。しかし、本発明はかかる例に限定されず、例えば、パラメータ設定部307は、ステップS17の処理だけを実施してもよい。
また、上記実施形態では、異常な稼働状態の一例としてルーパハンチングを挙げ、かかるルーパハンチングの前兆が現われる測定信号の一例として、張力Tとミル電流Iとを挙げて説明した。しかし、これらはあくまで例示であり、異常検出装置3は、他の駆動系や他の測定信号を使用して、他の異常な稼働状態を検出することができることは言うまでもない。上記実施形態の場合では、ルーパハンチングが周期振動を有し、他の張力Tやミル電流Iにも周期振動が含まれることを利用した。よって、このルーパハンチングを、周期振動を有する他の測定信号(例えば、圧延荷重・ミル速度・圧下位置・ベンダー圧力・板厚など)を使用して検出することが可能であることも、言うまでもない。
また、上記各実施形態で説明した一連の処理は、専用のハードウエアにより実行させてもよいが、ソフトウエアにより実行させてもよい。一連の処理をソフトウエアにより行う場合、汎用又は専用のコンピュータにプログラムを実行させることにより、上記の一連の処理を実現することができる。コンピュータは、CPU(Central Processing Unit)と、HDD(Hard Disk Drive)・ROM(Read Only Memory)・RAM(Random Access Memory)等の記録装置と、LAN(Local Area Network)・インターネット等のネットワークに接続された通信装置と、マウス・キーボード等の入力装置と、フレキシブルディスク、各種のCD(Compact Disc)・MO(Magneto Optical)ディスク・DVD(Digital Versatile Disc)等の光ディスク、磁気ディスク、半導体メモリ等のリムーバブル記録媒体等を読み書きするドライブと、モニタなどの表示装置・スピーカやヘッドホンなどの音声出力装置などの出力装置等と、を有してもよい。そして、このコンピュータは、記録装置・リムーバブル記録媒体に記録されたプログラム、又はネットワークを介して取得したプログラムを実行することにより、上記一連の処理を実行してもよい。
尚、本明細書において、フローチャートに記述されたステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的に又は個別的に実行される処理をも含む。また時系列的に処理されるステップでも、場合によっては適宜順序を変更することが可能であることは言うまでもない。
本発明の一実施形態に係る異常検査装置が適用されるプラントの構成を説明するための説明図である。 同実施形態に係る異常検査装置の構成を説明するための説明図である。 同実施形態に係る異常検出装置による検出結果の一例を説明するための説明図である。 同実施形態に係る異常検出装置による検出結果の他の例を説明するための説明図である。 同実施形態に係る異常検出装置によるパラーメータ設定方法を説明するための説明図である。 同実施形態に係る異常検出装置によるパラーメータ設定方法を説明するための説明図である。 同実施形態に係る異常検出装置によるパラーメータ設定方法を説明するための説明図である。 同実施形態に係る異常検出装置によるパラーメータ設定方法を説明するための説明図である。 同実施形態に係る異常検出装置によるパラーメータ設定方法を説明するための説明図である。 同実施形態に係る異常検出装置によるパラーメータ設定方法を説明するための説明図である。 同実施形態に係る異常検出装置によるパラーメータ設定方法を説明するための説明図である。 同実施形態に係る異常検出装置によるパラーメータ設定方法を説明するための説明図である。 同実施形態に係る異常検出装置によるパラーメータ設定方法を説明するための説明図である。 同実施形態に係る異常検出装置によるパラーメータ設定方法を説明するための説明図である。 同実施形態に係る異常検出装置の動作を説明するための説明図である。
符号の説明
1 プラント
2 プラント制御装置
3 異常検出装置
100,101,102,103,104,105,106 スタンド
110 圧延機
111 ワークロール
112 ミルモータ
113 ASR
120 ルーパ
121 ルーパロール
122 回転中心
123 ルーパモータ
124 ASR
131 ルーパ角度測定器
132 ルーパ張力測定器
133 ミル電流測定器
201 目標張力設定部
202 張力偏差算出部
203 目標角度設定部
204 角度偏差算出部
210 ルーパ制御部
301 測定信号取得部
302 周波数解析部
303 測定信号記憶部
304 異常検出部
305 異常回避制御部
306 表示部
307 パラメータ設定部
θ 角度
I ミル電流
S 鋼板
T 張力

Claims (8)

  1. 一の製造ラインに沿って配置され、協働して被加工物に対する加工又は処理を実施する複数の駆動系と、該複数の駆動系それぞれをフィードバック制御するための制御系と、からなる製造プラントについて、該製造プラントの駆動系で発生する異常な稼働状態を検出する異常検出装置であって、
    前記各々の駆動系の動作状態を検知したフィードバック信号を測定する測定部と、
    前記複数の駆動系のうちの一の駆動系に対する前記フィードバック信号、又は当該フィードバック信号に基づいて生成され該一の駆動系を制御する駆動信号から、所定の周波数成分を抽出する周波数解析部と、
    前記周波数解析部が抽出した所定の周波数成分の振幅値に基づいて、前記一の駆動系と協働する他の駆動系で発生する異常な稼働状態を異常の発生に先立って検出する異常検出部と、
    を有することを特徴とする、異常検出装置。
  2. 前記一の駆動系及び前記他の駆動系は、帯状の被加工物又は一連の被加工物に対して協働して製造工程の加工又は処理を実施することを特徴とする、請求項1に記載の異常検出装置。
  3. 前記製造プラントが製造する製品は鋼板であり、
    前記一の駆動系及び前記他の駆動系は、前記鋼板に対して連続的に前記製造工程を実施することを特徴とする、請求項2に記載の異常検出装置。
  4. 前記周波数解析部は、2以上の前記駆動系のそれぞれの前記フィードバック信号又は前記駆動信号から、それぞれ所定の周波数成分を抽出し、
    前記異常検出部は、前記周波数解析部が抽出した2以上の前記所定の周波数成分の振幅値に基づいて、前記他の駆動系で発生する異常な稼働状態を予め検出することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の異常検出装置。
  5. 一の製造ラインに沿って配置され、協働して被加工物に対する加工又は処理を実施する複数の駆動系と、該複数の駆動系それぞれをフィードバック制御するための制御系と、からなる製造プラントについて、該製造プラントの駆動系で発生する異常な稼働状態を検出する異常検出方法であって、
    前記各々の駆動系の動作状態を検知したフィードバック信号を測定する測定ステップと、
    前記複数の駆動系のうちの一の駆動系に対する前記フィードバック信号、又は当該フィードバック信号に基づいて生成され該一の駆動系を制御する駆動信号から、所定の周波数成分を抽出する周波数解析ステップと、
    前記周波数解析ステップで抽出した所定の周波数成分の振幅値に基づいて、前記一の駆動系と協働する他の駆動系で発生する異常な稼働状態を異常の発生に先立って検出する異常検出ステップと、
    を有することを特徴とする、異常検出方法。
  6. 前記一の駆動系及び前記他の駆動系は、帯状の被加工物又は一連の被加工物に対して協働して製造工程の加工又は処理を実施することを特徴とする、請求項5に記載の異常検出方法。
  7. 前記製造プラントが製造する製品は鋼板であり、
    前記一の駆動系及び前記他の駆動系は、前記鋼板に対して連続的に前記製造工程を実施することを特徴とする、請求項6に記載の異常検出方法。
  8. 前記周波数解析ステップでは、2以上の前記駆動系のそれぞれの前記フィードバック信号又は前記駆動信号から、それぞれ所定の周波数成分を抽出し、
    前記異常検出ステップでは、前記周波数解析ステップで抽出した2以上の前記所定の周波数成分の振幅値に基づいて、前記他の駆動系で発生する異常な稼働状態を予め検出することを特徴とする、請求項5〜7のいずれかに記載の異常検出方法。
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