JP2014004066A - シート状止血材 - Google Patents

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Abstract

【課題】フィブリノゲンおよびトロンビンの担持性に優れ、かつ柔軟性が高いシート状止血材を提供する。
【解決手段】繊維径500nmから30μmの生分解性ポリマー繊維からなり、嵩密度が100μmから2mm間隔で、20から90kg/mと100から200kg/mとの間で交互に存在している繊維成形体にフィブリノゲンが固定化されたシートと、同繊維成形体にトロンビンが固定化されたシートとを重ねてなるシート状止血材。
【選択図】図1

Description

本発明は、フィブリノゲンが固定化された繊維成形体と、トロンビンが固定化された繊維成形体とからなるシート状止血材に関する。
フィブリノゲンは血液凝固因子のひとつであり、健常人の血漿100mL中に200mgから400mg含まれている。フィブリノゲン製剤(フィブリン糊)は、このフィブリノゲンをヒト血漿中から分離精製して製造される血液製剤の一種(血漿分画製剤)である。医療現場において、止血および組織閉鎖などの組織接着は重要な処置の一つであり、フィブリノゲン製剤は、広く外科手術の領域で使用されている。血管が損傷を受けると、まず凝固系の活性化が生じ、最終的に活性化されたトロンビンが可溶性フィブリノゲンを不溶性のフィブリンに変換する。このフィブリンは接着力を有しており、止血や組織接着に有効に働くのがフィブリノゲン製剤の作用機序である。
フィブリノゲン製剤は主に2液混合型の液状型製剤(特許文献1)とコラーゲンなどの支持体にフィブリノゲンとトロンビンを固定化したシート状製剤(特許文献2)が存在する。しかしながら、液状型製剤は、凍結乾燥されたフィブリノゲンとトロンビンをそれぞれ使用時に溶解して用いる必要があること、さらには完全に溶解させるのに時間がかかり、緊急時に使用できないなどの問題点を有している。
一方、シート状のフィブリン糊(製品名:タココンブ(登録商標)/CSLベーリング社)は、支持体であるコラーゲンに厚みがあり、また乾燥状態で臓器閉鎖部位に適用するには支持体自身が硬く、柔軟性を欠くため、閉鎖すべき創傷部位での密着性が低く、効果的な閉鎖は困難である。
また、タココンブの場合、同一シート内にフィブリノゲンとトロンビンが共存しており、使用直前に溶液に浸すと同時にフィブリノゲンとトロンビンが溶解して反応が開始するが、その反応はシート内部で起こる。そのため、たとえフィブリンが溶出したとしても組織接着部位へ十分浸透する前に凝固反応が進み、組織表面のみの接着となるため、十分な組織接着効果を示さない。
したがって、これらの現行製剤により、すべての組織接着、止血が可能となるものではなく、現行製剤では要求される接着力、閉鎖力を示さない場合がある。そのため、医療現場ではより簡易的に使用でき、さらに強力な接着力をもった組織接着剤が求められている。
このような問題点を解決するために、生体吸収性材料からなるシート状フィブリン糊接着剤の検討がなされている(特許文献3)。しかしながら、フィブリノゲン固定化シートに非イオン性界面活性剤が必要であること、シートの網目が大きいために担持させる際の血漿蛋白質溶液のロスが大きいこと、凍結乾燥後、シートから担持させたフィブリノゲンが剥がれ落ちてしまうという問題点を抱えている。
このように、血漿蛋白質の担持性に優れ、さらに担持しているフィブリノゲンが基材から剥がれることがなく、現場でより簡易に使用でき、柔軟性が高く患部に密着し、強力な接着力を発揮する特性を兼ね備えた止血材は存在しない。
特開平9−2971号公報 特表2004−521115号公報 特開2010−69031号公報
本発明が解決しようとする課題は、フィブリノゲンおよびトロンビンの担持性に優れ、かつ柔軟性が高いシート状止血材を提供することである。
本発明の発明者らはフィブリノゲンおよびトロンビンの担持性に優れ、かつ基材の柔軟性が高いシート状止血材について鋭意研究した結果、驚くべきことに長繊維からなるシート状の繊維構造体の嵩密度を特定の間隔で変化させた繊維成形体であれば、柔軟性と保水性がよく、フィブリノゲンおよびトロンビンの支持体として優れることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は繊維成形体(A)にフィブリノゲンが固定化されたシートと、繊維成形体(B)にトロンビンが固定化されたシートとを重ねてなるシート状止血材であって、繊維成形体(A)および繊維成形体(B)はいずれも繊維径が500nmから30μmの生分解性ポリマー繊維からなり、かつ嵩密度の疎密が100μmから2mm間隔で交互に存在しており、疎の部分の嵩密度が20から90kg/m、密の部分の嵩密度が100から200kg/mである、シート状止血材である。
本発明のシート状止血材は柔軟性が高く、しかもフィブリノゲンおよびトロンビンの担持性に優れており、止血性に優れる。
本発明のシート状止血材に用いるフィブリノゲンを担持した実施例1の繊維成形体のSEM像である。 フィブリノゲンを担持した比較例1の繊維成形体のSEM像である。 フィブリノゲンを担持した比較例2の繊維成形体のSEM像である。
本発明は繊維成形体(A)にフィブリノゲンが固定化されたシートと、繊維成形体(B)にトロンビンが固定化されたシートとを重ねたシート状止血材である。
本発明で用いられるフィブリノゲンやトロンビンは、動物から調製したものでも、遺伝子組換え技術により製造したものでもよい。動物由来のものはヒト由来が好ましい。また、アミノ酸配列を改変した蛋白質も使用できる。
なお、シート状止血材はフィブリノゲンおよびトロンビンを含有するため、保存中に一部でフィブリンを生じることがあるが、こうしたフィブリンを含むものも本発明の範囲である。
本発明でいう固定化とは、フィブリノゲンやトロンビンが繊維成形体の表面の繊維の表面だけでなく、繊維成形体の内部の繊維の表面にまで存在している状態をいう。
本発明のシート状止血材において、フィブリノゲンやトロンビンを固定化する方法は問わないが、例えばフィブリノゲン等の溶液に繊維成形体を浸漬した後、凍結乾燥することにより作製できる。また、フィブリノゲン等をエタノールなどに分散させた溶液をスプレーなどで繊維成形体に噴霧して固定化してもよい。
フィブリノゲン固定化シート作製時に、フィブリノゲン等に加えて、薬学的に許容しうる添加剤を加えてもよい。そのような添加剤の例として、例えば血液凝固第XIII因子(ヒト血液由来または遺伝子組換え技術により得られるものが好ましい)、アルブミン、イソロイシン、グリシン、アルギニン、グルタミン酸、界面活性剤、塩化ナトリウム、糖アルコール(グリセロール、マンニトール等)、およびクエン酸ナトリウムなどが挙げられる。これらの添加剤の一つ以上を適宜用いることにより、フィブリノゲン成分の溶解性やフィブリノゲン固定化シートの柔軟性を向上させることが可能となる。
本発明で用いられる生分解性ポリマーとしては、具体的にはポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリジオキサノン、乳酸−グリコール酸共重合体、乳酸−カプロラクトン共重合体、ポリグリセロールセバシン酸、ポリヒドロキシアルカン酸、ポリブチレンサクシネートなどの脂肪族ポリエステルが挙げられる。さらに好ましくは、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸−グリコール酸共重合体などの脂肪族ポリエステルであり、最も好ましくはポリ乳酸、乳酸−グリコール酸共重合体である。
ポリ乳酸の共重合体を用いる場合、伸縮性を付与するモノマー成分が少ないほうが好ましい。ここで伸縮性を付与するモノマー成分としては、例えばカプロラクトンモノマー、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ポリカプロラクトンジオール、ポリアルキレンカーボネートジオール、ポリエチレングリコールユニットなどの軟質成分が挙げられる。これらの軟質成分はポリマー重量に基づいて20重量%未満であることが好ましい。これよりも軟質成分が多いと自己支持性を失いやすく、柔らかすぎて取り扱いにくい繊維成形体になる。
生分解性ポリマーとしてポリ乳酸を用いる場合、モノマーにはL−乳酸およびD−乳酸があるが、特に制限はない。また、ポリ乳酸の光学純度や分子量、L体とD体の組成比、配列には特に制限はないが、好ましくはL体の多いポリ乳酸である。ポリL乳酸とポリD乳酸のステレオコンプレックスを用いてもよい。
また、生分解性ポリマーの重量平均分子量は、好ましくは1×10〜5×10であり、より好ましくは1×10〜1×10、さらに好ましくは5×10〜5×10である。また、生分解性ポリマーの末端構造やポリマーを重合する触媒は任意に選択できる。
本発明で用いる繊維成形体においては、その目的を損なわない範囲で、他のポリマーや他の化合物を併用してもよい。例えば、ポリマー共重合、ポリマーブレンド、化合物混合である。
本発明で用いる生分解性ポリマーは高純度であることが好ましく、とりわけ生分解性ポリマー中に含まれる添加剤や可塑剤、残存触媒、残存モノマー、成型加工や後加工に用いた残留溶媒などの残留物は少ないほうが好ましい。特に医療に用いる場合は、安全性の基準値未満に抑える必要がある。
本発明における繊維の繊維径は500nmから30μmであることが好ましい。ここで、平均繊維径が500nmよりも小さい、または30μmよりも大きいと、所望のフィブリノゲンおよびトロンビンとの担持性が得られない。より好ましい平均繊維径は1〜10μmであり、さらに好ましくは2〜7μmである。なお、繊維径とは繊維断面の直径を表す。繊維断面の形状は円形に限らず、楕円形や異形になることもありうる。この場合の繊維径とは、該楕円形の長軸方向の長さと短軸方向の長さの平均をその繊維径として算出する。また、繊維断面が円形でも楕円形でもないときには円または楕円に近似して繊維径を算出する。
本発明で用いられる繊維成形体は長繊維よりなる。長繊維とは、紡糸から繊維成形体への加工にいたるプロセスの中で、繊維を切断する工程を加えずに形成される繊維成形体をいい、エレクトロスピニング法、スパンボンド法、メルトブロー法などで形成することができるが、エレクトロスピニング法(静電紡糸法、エレクトロスプレー法)が好ましく用いられる。エレクトロスピニング法は、ポリマーを溶媒に溶解させた溶液に高電圧を印加することで、電極上に繊維成形体を得る方法である。エレクトロスピニング法は、ポリマーを溶媒に溶解させて溶液を製造する工程と、該溶液に高電圧を印加する工程と、該溶液を噴出させる工程と、噴出させた溶液から溶媒を蒸発させて繊維成形体を形成させる工程と、任意に実施しうる工程として形成された繊維成形体の電荷を消失させる工程と、電荷消失によって繊維成形体を累積させる工程を含む。長繊維の長さは300mm以上が好ましい。
本発明の繊維成形体を得る方法としては、通常のシートの作製後に、水流絡合法やニードルパンチ処理により嵩密度を変化させる方法が挙げられる。水流絡合とは、ウェブ(綿状の材料)に高圧の水流をノズルからネット上に噴射し繊維間を絡めて、綿状の材料から不織布を作製するために用いられている方法であり、ニードルパンチ処理は、ウェブに棘のある針を突き刺し、機械的に繊維間を絡めるもので、いずれも綿状の材料から不織布を作製するために用いられている。
具体的には、水流絡合法では、ノズルから水圧の加わった水流を噴射して繊維を絡合させる。ノズルヘッドには、繊維成形体の幅方向に多数のノズルが配列されている。ノズルへかかる水圧を変えることができるようになっている。各ノズルからの水流は、連続的に噴射されており、繊維成形体は一定の速度で搬送されながら、表から水流を受け、繊維を絡合させることになる。水流絡合の回数は本発明の目的を損なわない範囲で任意に選択でき、表のみ1回絡合させても、表裏に数回絡合させてもよい。水流絡合する際の水圧については、水圧が高いと、長繊維を切断してしまうためシート強度が脆弱になり、水圧が低いと、シートの嵩密度を変化させることができない。本発明では、中程度の圧力として、シート強度と柔軟性の双方を所望の範囲内に保つのが好ましい。
ニードルパンチ加工では、高速で上下するニードル(針)で、繊維成形体全体を繰り返し突き刺し、ニードルに刻まれたバーブという突起により繊維を絡ませるものである。ニードルパンチ加工の特徴は、バルク性に富み、繊維間の剥離がないことである。
嵩密度の変化させる幅は、100μmから2mmであり、より好ましくは500μmから1mmである。100μm以下では嵩密度をコントロールすることが困難であり、2mm以上では求める柔軟性に達しない。また、嵩密度は疎な部分と密な部分が存在するが、その幅は同一であっても、いずれか一方の幅の方が太くても上記範囲であれば問題ない。疎な部分は、密な部分に比べ、水流絡合法やニードルパンチ処理を受けている分、通常、膜厚が薄くなり、表面に凹凸が形成される。
疎な部分と密な部分のそれぞれの嵩密度は、疎な部分では好ましくは20から90kg/mであり、より好ましくは40から70kg/mである。20kg/m以下では構造保持が難しく、90kg/m以上では密な部分との差が得られない。一方、密な部分は好ましくは100kg/mから200kg/mであり、より好ましくは110から150kg/mである。100kg/m以下では疎な部分との差がなくなり柔軟性が得られず、200kg/m以上ではシート自体が硬すぎて柔軟性が得られない。
本発明のシート状止血材は、フィブリノゲンが固定化されたシートと、トロンビンが固定化されたシートから構成される。好ましくはこれらの二層構造であるが、フィブリノゲンが固定化されたシートおよびトロンビンが固定化されたシートは、それぞれ二層以上あってもよく、また各シートを積層する順序も問わない。さらに、使用時にそれぞれのシートを重ねて使用するようになっているシート状止血材キットであってもよい。
また、本発明のシート状止血材において、繊維成形体(A)および繊維成形体(B)の厚みはいずれも50μmから300μmが好ましい。50μmよりも薄いと必要量のフィブリノゲンおよびトロンビンが担持できず好ましくない。300μmよりも厚いと必要となるフィブリノゲンおよびトロンビンの量が過剰量となり好ましくない。
本発明に用いる繊維成形体は凍結乾燥法を用いてフィブリノゲンおよびトロンビンを担持させる場合、保水性に優れていることが好ましい。このような条件を満足する不織布の保水率は800〜2000重量%、好ましくは1000〜1500重量%である。保水率がこの範囲であると十分な保水効果を有する。このような保水性を保持するためには、上記のような粗密構造が重要となる。保水性を上げるためには、嵩密度を低下させることが重要となるが、嵩密度を低下させるとシートの自己支持性に欠け、その分、膜厚の増加が必要となり、製造時間の上昇、製造コストの増加に繋がる。本発明では、嵩密度の変化する幅が100μmから2mmであることから、嵩密度が疎な部分の構造保持力の低下が密な部分によって補われている。また、表面に凹凸性をもたせることによって、粗密部分のそれぞれの保水力のみならず、構造体として水分保持能力を増加させることができるため、表面に凹凸構造を有してもよい。具体的には、疎な部分は、密な部分よりも水流絡合法やニードルパンチ処理により膜厚が薄くなっている。そのくぼみ部分に水の表面張力作用により水が捕集できるようになっている。
シート状不織布の柔軟性は、剛軟性で測定することができる。具体的には、JIS−L−1906 6.19.1E法(ハンドルオメーター法)などを用いて測定することができる。剛軟度は90mN以下であることが好ましく、より好ましくは70mN以下である。90mN以上であるとシートは柔軟性に欠け、表面が凹凸な組織表面への追従性に欠けるので好ましくない。
トロンビン固定化シートのトロンビン保持量は、130mL/cm以上が好ましい。これ以下であるとシートの膜厚を増加させることで、保持量を増加させなくてはならず、コストと時間の増加につながり好ましくない。上限については特に限定はないが、シートの柔軟性や取扱性などに鑑みて適宜決められる。
本発明で用いる繊維成形体は、リン脂質を生分解性ポリマーに対して0.1〜10重量%含有することが好ましい。リン脂質の含有量が0.1重量%より少ないと、フィブリノゲンまたはトロンビン溶液との親和性に効果を示さず、10重量%よりも多いと、繊維成形体自体の耐久性が低下することがある。好ましい含有量は0.2〜5重量%であり、さらに好ましくは0.3〜3重量%である。
本発明で用いるリン脂質は、動物組織から抽出したものでも、また人工的に合成して製造したものでもよい。かかるリン脂質としては、例えばホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、およびホスファチジルグリセロールからなる群から選択される1種類以上が挙げられる。好ましくはホスファチジルコリンまたはホスファチジルエタノールアミンであり、さらに好ましくはジラウロイルホスファチジルコリンまたはジオレオイルホスファチジルエタノールアミンである。
以下の実施例、比較例において、保水性、保水率、および柔軟性は次のようにして求めた。
保水性:1cm×1cm角の試料を切り取り、試料に5μLずつ水を含浸させ、含水量を求めた。
保水率(重量%)=(W2−W1)/W1×100
W1:初期試料重量 W2:含水時試料重量
柔軟性:(JIS−L−1906 6.19.1E法)ハンドルオメーター法で剛軟度測定を行った。シートは縦方向および横方向での評価を実施した。
トロンビン保持量:シート体積当りに含有した溶液量(mL/cm
実施例1
0.4重量%のジラウロイルホスファチジルコリンを添加したポリ乳酸(重量平均分子量13万3千、PURAC)11重量部を、79重量部のジクロロメタンと10重量部のエタノールに溶解し、均一な溶液を得た。これを用いてエレクトロスピニング法で紡糸し、シート状の繊維成形体を調製した。噴出ノズルの内径は0.8mm、電圧は23kV、噴出ノズルから陰極平板までの距離は35cm、相対湿度18%であり、得られた繊維成形体の厚さは150μm、繊維径は3.2μmであった。次いで、水流絡合により、これに疎構造500μm、密構造1mmの筋を形成させた。疎構造の嵩密度は、70kg/m、密構造の嵩密度は、110kg/mであった。水流絡合は、50メッシュの金属メッシュ上でのウォーターニードル試験機を用いた高圧水流による絡合処理であった(ノズル0.1mmφ、40kg/cm、速度2m/min、表裏各1回)。得られた繊維成形体の目付けは2.9mg/cm、保水率は1624重量%、柔軟性は49mNであった。
市販の生体組織接着剤であるボルヒール(登録商標、一般財団法人化学及血清療法研究所製、以下同じ)のキットに含まれるフィブリノゲン溶液1.25mLを、上記絡合後の繊維成形体(5×5cm)上に染み込ませた。フィブリノゲン溶液は、容易にシート内に染み込んだ。この検体を凍結後、24時間凍結乾燥させたものをフィブリノゲン固定化シートとした。フィブリノゲンは、シート内部全面に均一に担持されていた。シートの両端をピンセットで挟み、10回折りまげを実施し、重量変化を確認した。本シートを取り扱っても担持したフィブリノゲンが崩壊することはなく、重量変化はなかった(100%保持)。そのSEM像を図1に示す。
次に、ボルヒールのキットに含まれるトロンビンを付属の溶解液により溶解し、1875単位/mLのトロンビン溶液を調製した。このトロンビン溶液を、上記絡合後の繊維成形体(2×2.5cm)上に均一にしみ込ませた。トロンビン溶液は、容易にシート内に染み込んだ。この検体を凍結後、24時間凍結乾燥させたものをトロンビン固定化シートとした。トロンビンは、シート内部全面に均一に担持されていた。シートへのトロンビン保持量は、154mL/cmであった。
比較例1
0.4重量%のホスファチジルコリンジラウロイルを添加したポリ乳酸(重量平均分子量13万3千、PURAC)11重量部を、79重量部のジクロロメタンと10重量部のエタノールに溶解し、均一な溶液を得た。これを用いてエレクトロスピニング法で紡糸し、シート状の繊維成形体を調製した。噴出ノズルの内径は0.8mm、電圧は23kV、噴出ノズルから陰極平板までの距離は35cm、相対湿度18%であった。得られた繊維成形体の厚さは80μm、繊維径は5.2μm、嵩密度は146kg/mであった。得られた繊維成形体の目付けは1.2mg/cm、保水率は733重量%、柔軟性は133mNであった。
ボルヒールのキットに含まれるフィブリノゲン溶液1.25mLを、上記絡合していない繊維成形体(5×5cm)上に染み込ませた。フィブリノゲン溶液は、容易にシート内に染み込んだ。この検体を凍結後、24時間凍結乾燥させたものをフィブリノゲン固定化シートとした。フィブリノゲンは、シート内部全面に均一に担持されていた。シートの両端をピンセットで挟み、10回折りまげを実施し、重量変化を確認した。本シートを取り扱っても担持したフィブリノゲンが崩壊することはなく、重量変化はなかった(100%保持)。そのSEM像を図2に示す。
次に、市販の生体組織接着剤(製品名:ボルヒール:一般財団法人化学及血清療法研究所製)のキットに含まれるトロンビンを付属の溶解液により溶解し、1875単位/mLのトロンビン溶液を調製した。このトロンビン溶液を、上記で作製した繊維成形体(2×2.5cm)上に均一にしみ込ませた。トロンビン溶液は、容易にシート内に染み込んだ。この検体を凍結後、24時間凍結乾燥させたものをトロンビン固定化シートとした。トロンビンは、シート内部全面に均一に担持されていた。シートへのトロンビン保持量は119mL/cmであった。
比較例2
繊維成形体として、ポリグリコール酸系不織布であるネオベール(登録商標、グンゼ株式会社製、平均繊維径20μm、厚さ150μm、シート柔軟性70mN)を用いた以外は、実施例1と同様に、フィブリノゲン固定化シートおよびトロンビン固定化シートを作製した。SEM観察により0.01mm以上の貫通孔が観察された。
フィブリノゲン溶液はシートへ染み込みにくかった。この検体を凍結後、24時間凍結乾燥させたものをフィブリノゲン固定化シートとした。シートの両端をピンセットで挟み、10回折りまげを実施し、重量変化を確認した。フィブリノゲンは、シート内部全面に均一に担持されておらず、シートはピンセットで取り扱うと、担持されていたフィブリノゲンが剥落した(重量変化89%)。SEM像を図3に示す。
同様に、トロンビン溶液もシートへの染み込みが悪かった。この検体を凍結後、24時間凍結乾燥させたものをトロンビン固定化シートとした。トロンビンは、シート内部全面に均一に担持されていた。シートへのトロンビン保持量は、125mL/cmであった。
実施例1、比較例1、および比較例2の結果を表1にまとめた。
本発明のシート状止血材はフィブリノゲンおよびトロンビンの担持性に優れ、かつ柔軟性が高く表面が凹凸な組織表面への追従性が高いため、止血材として有用である。

Claims (10)

  1. 繊維成形体(A)にフィブリノゲンが固定化されたシートと、繊維成形体(B)にトロンビンが固定化されたシートとを重ねてなるシート状止血材であって、繊維成形体(A)および繊維成形体(B)はいずれも繊維径が500nmから30μmの生分解性ポリマー繊維からなり、かつ嵩密度の疎密が100μmから2mm間隔で交互に存在しており、疎の部分の嵩密度が20から90kg/m、密の部分の嵩密度が100から200kg/mである、シート状止血材。
  2. フィブリノゲンが固定化されたシート、およびトロンビンが固定化されたシートの厚みがいずれも50μmから300μmである、請求項1に記載のシート状止血材。
  3. 生分解性ポリマーがポリ乳酸および/またはポリ乳酸の共重合体である、請求項1または2に記載のシート状止血材。
  4. 繊維成形体(A)および繊維成形体(B)の繊維長が300mm以上である、請求項1から3のいずれかに記載のシート状止血材。
  5. 繊維成形体(A)および繊維成形体(B)が、生分解性ポリマーに対して0.1から10重量%のリン脂質を含有する、請求項1から4のいずれかに記載のシート状止血材。
  6. リン脂質がホスファチジルコリンおよび/またはホスファチジルエタノールアミンである請求項5に記載のシート状止血材。
  7. リン脂質がジラウロイルホスファチジルコリンである請求項5に記載のシート状止血材。
  8. リン脂質がジオレオイルホスファチジルエタノールアミンである請求項5に記載のシート状止血材。
  9. 繊維成形体(A)および繊維成形体(B)が、いずれもエレクトロスピニング法により繊維構造体を作製する工程、および水流絡合する工程を含む方法にて製造されたものである、請求項1から8のいずれかに記載のシート状止血材。
  10. フィブリノゲンが固定化されたシートとトロンビンが固定化されたシートの二層構造である、請求項1から9のいずれかに記載のシート状止血材。
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