JP5479584B2 - 生体糊用補強材及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、生体吸収性ポリマーの繊維成形体からなる生体糊用補強材、その製造方法および当該補強材と生体糊とからなる人工生体薄膜に関する。さらに詳しくは、特定の大きさ以上に大きい貫通孔を有さない微細繊維成形体からなりそして、生体膜上での当該微細繊維成形体と生体糊との複合化が可能な生体糊用補強材およびそれを用いた人工生体薄膜に関する。
この人工生体薄膜は、医療用品、とりわけ臓器表面や創傷部位の保護材、被覆材、シール材として、人工代用硬膜、癒着防止材、止血材などとして好ましく用いられる。
脳外科手術により硬膜に大きな欠損を生じた場合、ヒト乾燥硬膜を移植する方法が行われていたが、クロイツフェルト−ヤコブ病ウイルス感染の危険性など、重篤な問題点等が指摘され、現在では、ヒト乾燥硬膜の使用が禁止されている。それゆえ、現在では、硬膜欠損に対しては、例えばゴアテックス(登録商標:ゴアテックス社製)等の人工代用硬膜を縫いつけて補填する方法が採用されている。
しかしながら、ゴアテックス(登録商標)は非分解性の材料からできているため、体内に永久に残留し、異物反応を惹起させる。また、縫合する場合には、一度開けた針穴が塞がり難く、また張力を負荷することによって糸を通した針穴が伸張することがあり、この針穴から髄液が漏出し易い問題があった。そこで、人工代用硬膜の縫合部分に、フィブリン糊を塗布する補填法が採用されている。しかしながら、一般に、人工代用硬膜はPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)の高分子化合物を主成分としているため、フィブリン糊との親和性が低く、針穴を完全に塞ぐことができないといった問題を有している。
特開平11−309151号公報には、上記補填法の問題を解決すべく、生体糊前駆物質の水溶液を含浸させた生体吸収性織布を縫合部分の補填材として使用することが記載されている。しかし、あくまで縫合部位の補填材・補強材として使用することに限定していることから、縫合不要な人工代用硬膜の発明には至っていない。
また、生分解性の材料からなるシームデュラ(登録商標:グンゼ(株)製)も販売されているが、液漏れを防ぐために縫合が必要であり、手術者にとって煩雑である。そのため、縫合を必要とせず、フィブリン糊との親和性が高い人工代用硬膜が望まれていた。
特開2004−089361号公報には、イオンビームによりPTFEの表面を改質し、生体組織接着剤(フィブリン糊)との親和性を向上させた人工代用硬膜とその製造方法が記載されている。フィブリン糊との親和性を高めたことにより無縫合で使用することが可能になったが、PTFEの非分解性は変化しておらず、体内に永久に残存するという問題を残している。
特開2002−204826号公報には、0.1mm〜25mmの網目構造を有する生体吸収性および/または生分解性の合成繊維布を、フィブリン繊維を主成分とする膜で被覆した人工生体薄膜が記載されている。
また、WO2006/025150号公報には、ポリグリコール酸フェルトとフィブリン糊よりなる腸管欠損部閉塞用デバイスを使用することで、縫合を行うことなく、腸管欠損部の閉塞に使用し、縫合不全や狭窄の発生を防止できることが記載されている。
さらには、特開2002−204826号公報およびWO2006/025150号号公報で使用している合成繊維布およびフェルトの繊維構造には、疎と密な部分が存在するため、これらを補強材として用いた場合、フィブリンゲルの厚みが不均一となるため均一な組織再生ができないという問題を有していた。また、網目構造(貫通孔)を有するため、生体糊で被覆した複合膜としてピンホールが発生しやすいという問題を有していた。従来、生体吸収性繊維として使用されているウェブ、ニット、およびメッシュ等は、単繊維を束ねたサブミリオーダーの繊維束から構成されるため、このような粗い網目構造を完全に消失させることは困難であった。
一方、生体吸収性の繊維材料としては、近年、ナノファイバーとよばれる極細繊維の検討がなされており、生体吸収性の脂肪族ポリエステルは、エレクトロスピニング法(静電紡糸法、電界紡糸法ともいう)とよばれる極細繊維の作成方法により、繊維径が数マイクロメーターよりも小さい生分解性の極細繊維が得られることは公知である。これら脂肪族ポリエステル繊維を加工した成形体は、縫合糸や生体吸収性シートなど様々な用途に用いられている。エレクトロスピニング法で作製されるナノファイバーは、従来の成形方法よりも繊維径の細い糸を簡便に作成できるメリットがあり、繊維成形体の表面積を大きくすることで細胞・タンパク質との接着性を高めることができるため、細胞培養用の担体や再生医療のための足場材料などへの応用が検討されている。
しかし、エレクトロスピニング法で得られた微細繊維成形体、特に疎水性である脂肪族ポリエステルからなる微細繊維成形体は親水性に乏しく、親水性の環境下で使用する場合、細胞やタンパク質との相互作用が制限されるという問題を有しており、これまで生体糊の補強材として検討されていない。
本発明が解決しようとする課題は、特に生体膜上にて、生体糊との複合化を均一かつ容易に実施できる生体糊用補強材を提供することである。
また、本発明が解決しようとする課題は、かかる生体糊用補強材の製造方法を提供することである。
さらに、本発明が解決しようとする課題は、生体糊と均一に複合化された人工生体薄膜を提供することである。
本発明者らは前記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の大きさ以上に大きい貫通孔を有さない微細繊維成形体が、生体膜上で接着性に優れた生体糊との複合生体薄膜を作製できることを見出し、本発明を完成するに至った。
従来、エレクトロスピニング法により作製された脂肪族ポリエステルを代表とする生体吸収性ポリマーからなる微細繊維成形体は、比表面積が高く、細胞・タンパク質との接着性が高いにもかかわらず、親水性に乏しいことから、フィブリン糊のような生体糊の補強材として検討されたことはなかった。本発明者らは、驚くべきことに脂肪族ポリエステルからなる微細繊維成形体は、親水性が低いにもかかわらず生体糊との接着性が高く、貫通孔を有さないために生体膜上にて、均一な人工生体薄膜を形成、すなわち均一な再生組織を形成しうることを見出し本発明に到達した。
すなわち、本発明は、平均繊維径が0.1〜10μmの生体吸収性ポリマーの繊維からなり、厚みが10〜150μmであり、0.01mm以上の貫通孔を有さない繊維成形体からなる生体糊用補強材である。
また、本発明は、静電紡糸法にて繊維成形体を得る工程、該繊維成形体に熱処理を行う工程を含む、上記生体糊用補強材を製造する方法である。
さらに、本発明は、上記生体糊用補強材と生体糊とからなり、生体糊用補強材の少なくとも一部が生体糊で被覆されている人工生体薄膜である。
図1は、実施例2で得られたシート状の繊維成形体の電子顕微鏡写真である。
図2は、実施例3で得られた人工生体膜をフィブリンゲル層が脳実質側となるようにビーグル大脳に被せ、1ヶ月後の剖検で得られた標本のHE染色標本の写真である。
図3は、実施例3で得られた人工生体膜をフィブリンゲル層が脳実質側となるようにビーグル大脳に被せ、1ヶ月後の剖検で得られた標本のHE染色標本の写真である。
本発明において、繊維成形体とは、一本または複数本の繊維から積層、織り、編み若しくはその他の手法により形成された3次元の成形体を指す。具体的な繊維成形体の好ましい形態としては、例えば不織布が挙げられ、さらにそれをもとに加工したチューブ、メッシュなども再生医療分野において好ましく用いることができ、本発明における繊維成形体に含まれる。
繊維成形体を構成する繊維の平均繊維径は0.1〜10μmである。平均繊維径が、0.1μmよりも小さいと該繊維成形体の強度が保てないため、好ましくない。また平均繊維径が10μmよりも大きいと、繊維の比表面積が小さく、生着する細胞数が少なくなるため好ましくない。さらに好ましくは、平均繊維径が0.2〜10μmである。なお、繊維径とは繊維断面の直径を表す。繊維断面の形状は円形に限らず、楕円形や異形になることもありうる。この場合の繊維径とは、該楕円形の長軸方向の長さと短軸方向の長さの平均をその繊維径として算出する。また、繊維断面が円形でも楕円形でもないときには円または楕円に近似して繊維径を算出する。
本発明において、繊維成形体は表面開孔面積が0.01mm以上の大きさの貫通孔を有さない繊維成形体である。0.01mm以上の貫通孔を有する場合、生体膜上にて補強材と生体糊との複合化をする際、体液や髄液が浸透することで均一な複合膜を得ることができず、好ましくない。また、体液や髄液が浸透することで、生体糊濃度が低下するため、十分な強度のある代用生体膜が形成されず、好ましくない。さらには、組織再生が不均一に進行するため好ましくない。
従来、生体吸収性繊維として使用されているウェブ、ニットおよびメッシュ等は、単繊維を束ねたサブミリオーダーの繊維束が網目構造における網を形成し、サブミリオーダーの貫通孔が存在し、そのような貫通孔を消失させることは困難であった。しかし、本発明によれば、生体糊で被覆する際、網部と貫通孔部とで生体糊の疎と密な構造を取ることがなく、組織再生が不均一に進行することはない。また、大きな貫通孔を有するが故に、生体膜上にて補強材と生体糊との複合化をする場合、体液や髄液が浸透することで均一な複合膜を得ることが困難であった問題も解消された。さらには、貫通孔を有するため突き刺しのような刺激に対して非常に弱いという欠点も解消された。
本発明で用いられる繊維成形体は、10〜500μmの平均表面開孔面積であるものが好ましい。表面開孔は、繊維成形体の表面を走査型電子顕微鏡(キーエンス(株):商品名「VE8800」)により、倍率30〜200倍で撮影して得た写真から無作為に30箇所を選んで開孔面積を測定し、平均値を求めて平均開孔面積とした。平均表面開孔面積が10μmよりも小さい場合は、生体糊の含浸性が不十分であり、生体糊との接着性が十分に得られず好ましくない。平均表面開孔面積が500μmよりも大きい場合、繊維成形体の十分な強度が得られず、好ましくない。
本発明で用いられる繊維成形体は、表面から裏面にかけて連続孔を有しているが、曲路を介して形成されているため、生体糊との複合薄膜を調製した場合、複合薄膜面内において疎密構造をとらず、均一性に優れている。よって、組織再生も均一に進行することができる。また、突き刺しのような刺激に対して、非常に強いという特徴を有する。
本発明で用いられる繊維成形体の厚みは、10〜150μmである。10μmよりも小さい場合、十分な強度が得られず好ましくない。150μmよりも大きい場合、生体糊と複合して人工生体薄膜として使用する際に、透明性が不十分となり好ましくない。繊維成形体の厚みは、より好ましくは25μm〜150μm、さらに好ましくは50〜150μmである。
本発明で用いられる繊維成形体からなる生体糊用補強材は、生体糊が被覆されていないときは失透しているが、生体糊を被覆、含浸した後は透明性が向上し、人工生体薄膜として欠損部位にカバーした後も内部を観察することができ、視認性に優れている。
本発明における繊維成形体の目付けは、1〜30g/mであることが好ましい。繊維成形体の目付けが1g/m未満の場合、十分な強度が得られず好ましくない。繊維成形体の目付けが30g/mよりも大きい場合、生体吸収性ポリマーから分解された酸成分による炎症が発生するため好ましくない。従来、生体吸収性繊維として使用されているウェブ、ニットおよびメッシュ等は、目付けが大きいことから、分解された炎症誘発成分が多量に発生する。炎症発生の程度は、人、分解速度、使用環境等により影響を受けるが、炎症誘発成分の発生量が少ないほうが好ましいことはいうまでもない。
本発明で用いられる繊維成形体の空孔率は、40〜90%であることが好ましい。繊維成形体の空孔率が40%よりも小さい場合、生体糊を十分に含浸させることができず、接着性が不十分となり好ましくない。繊維成形体の空孔率が90%よりも大きい場合、十分な強度を確保することが困難となり好ましくない。
本発明において使用される生体吸収性(または生分解性)ポリマーは、脂肪族ポリエステルであることが好ましい。生体吸収性のポリマーとしては、具体的には、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸−ポリグリコール酸共重合体、ポリカプロラクトン、ポリグリセロールセバシン酸、ポリヒドロキシアルカン酸、ポリブチレンサクシネートなどや、これらの共重合体および誘導体が例示できる。好ましくは、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、およびそれらの共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、最も好ましいのは、ポリ乳酸、乳酸−グリコール酸共重合体である。
このとき、ポリ乳酸の共重合体は、伸縮性を付与するモノマー成分が少ないほうが好ましい。ここで伸縮性を付与するモノマー成分としては、例えばカプロラクトンモノマーや、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ポリカプロラクトンジオール、ポリアルキレンカーボネートジオール、ポリエチレングリコールユニットなどの軟質成分が例示できる。これらの軟質成分はポリマーに対し20重量%未満であることが好ましい。これよりも軟質成分が多いと自己支持性を失いやすく、やわらかすぎて取り扱いにくい繊維成形体になる。
ポリ乳酸におけるポリマーを構成するモノマーはL−乳酸およびD−乳酸のいずれでもよい。またポリマーの光学純度や分子量、L体とD体の組成比、配列には特に制限はないが、好ましくはL体の多いポリマーである。ポリL乳酸とポリD乳酸のステレオコンプレックスを用いることも問題ない。
また、ポリマーの重量平均分子量としては、好ましくは1×10〜5×10であり、より好ましくは1×10〜1×10、さらに好ましくは5×10〜5×10である。また、ポリマーの末端構造やポリマーを重合する触媒は任意に選択できる。ポリマーの重量平均分子量が1×10より小さい場合、得られた繊維成形体の強度が不十分となり薄いシートが得られ難く好ましくない。一方、ポリマーの重量平均分子量が5×10よりも大きい場合、繊維成形体を得る際に、ポリマー溶液の粘度が高くなり、成形性が乏しくなるので好ましくない。
本発明で用いられる繊維成形体には、その目的を損なわない範囲で、他のポリマーや他の化合物を併用してもよい。例えば、ポリマー共重合、ポリマーブレンド、化合物混合である。
ポリマーは高純度であることが好ましく、とりわけポリマー中に含まれる添加剤や可塑剤、残存触媒、残存モノマー、成形加工や後加工に用いた残留溶媒などの残留物は、少ないほうが好ましい。特に、医療に用いる場合は、安全性の基準値未満に抑える必要があることはいうまでもない。
本発明における生体糊としては、特に限定されるものではないが、手術等に用いられる生体適合性に優れた接着剤のなかでも、特に生体内で経時的に線維芽細胞に変換される接着剤が好ましく用いられる。かかる生体糊は、複数の成分を混合することによって、急速な生化学反応により接着能を示すものであることが好ましい。このことから、一般的に生体糊は、生体糊前駆物質とこれを生体糊に化学変換させる特定の追加成分との組合せとして知られている。ここで、生体糊前駆物質とは、上記した生体糊において、未だ生化学反応が惹起する前段階にあるもので、それ自体接着能を有しないものである。
本発明で用いられる生体糊としては、上記定義に該当するものであれば、特に限定されるものではない。例えば、フィブリン糊、ゼラチン系粘着剤、セルロース製剤、コラーゲン系粘着剤、キトサン系粘着剤、アルギン酸製剤等のいずれか、またはこれらの2種以上の混合物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。このような生体糊の中でも、本発明により提供される人工生体薄膜の適用性から、フィブリン糊またはゼラチン系粘着剤が好ましく、フィブリン糊を用いるのがより好ましい。
本発明で用いられるフィブリン糊は、例えばフィブリン糊の前駆体であるフィブリノゲン凍結乾燥粉末、フィブリノゲン溶解液、トロンビン凍結乾燥粉末、およびトロンビン溶解液から構成されたものを挙げることができる。すなわち、フィブリノゲン凍結乾燥粉末をフィブリノゲン溶解液で溶解してA液とし、トロンビン凍結乾燥粉末をトロンビン溶解液で溶解してB液とする。そして溶解した両液を接着部位に重層または混合して適用する。
フィブリン糊は、血液凝固の最終段階を利用した生理的組織接着剤であり、含有するフィブリノゲンはトロンビンの作用により可溶性フィブリン塊となり、さらにカルシウムイオン存在下でトロンビンにより活性化された血液凝固第XIII因子により、物理的強度をもった尿素不溶性の安定なフィブリン塊となり、組織を接着・閉鎖する。この安定化したフィブリン塊内で、例えば線維芽細胞が増殖し、膠原線維や肉芽基質成分が産生され、組織修復を経て治癒に至る。容易に入手できるこのようなフィブリン糊としては、ボルヒール(登録商標:一般財団法人化学及血清療法研究所製)、ベリプラスト(登録商標:CSLベーリング製)等を例示することができる。
本発明で用いられる繊維成形体は、生体吸収性ポリマー以外の第2成分をさらに含有してもよい。該成分には、例えばFGF(線維芽細胞増殖因子)、EGF(上皮増殖因子)、PDGF(血小板由来増殖因子)、TGF−β(β型形質転換増殖因子)、NGF(神経増殖因子)、HGF(肝細胞増殖因子)、BMP(骨形成因子)などの細胞増殖因子などが挙げられる。
繊維成形体の繊維は長繊維よりなる。長繊維とは具体的には紡糸から繊維成形体への加工にいたるプロセスの中で、繊維を切断する工程を加えずに形成される繊維成形体のことをいい、エレクトロスピニング法、スパンボンド法、メルトブロー法などで形成することができる。その中でもエレクトロスピニング法が好ましく用いられる。ここで、エレクトロスピニング法とは、静電紡糸法、エレクトロスプレー法などとよばれる方法とも原理的には同じであり、これらも本発明でいうエレクトロスピニング法に含まれる。
エレクトロスピニング法は、ポリマーを溶媒に溶解させた溶液に高電圧を印加することで、電極上に繊維成形体を得る方法である。工程としては、ポリマーを溶媒に溶解させて溶液を製造する工程と、該溶液に高電圧を印加させる工程と、該溶液を噴出させる工程と、噴出させた溶液から溶媒を蒸発させて繊維成形体を形成させる工程と、任意に実施しうる工程として形成された繊維成形体の電荷を消失させる工程と、電荷消失によって繊維成形体を累積させる工程、および熱処理する工程を含む。
エレクトロスピニング法における、ポリマーを溶媒に溶解させて溶液を製造する段階について説明する。本発明の製造方法における溶液中の溶媒に対する生体吸収性ポリマーの濃度は1〜30重量%であることが好ましい。生体吸収性ポリマーの濃度が1重量%より小さいと、濃度が低すぎるため繊維成形体を形成することが困難となり好ましくない。また、30重量%より大きいと、得られる繊維成形体の繊維径が大きくなり好ましくない。より好ましい溶液中の溶媒に対する生体吸収性ポリマーの濃度は2〜20重量%である。
溶媒は一種を単独で用いてもよく、複数の溶媒を組み合わせて用いてもよい。前記溶媒としては、生体吸収性ポリマーを溶解可能で、かつ紡糸する段階で蒸発して繊維を形成可能なものであれば特に限定されず、例えば、アセトン、クロロホルム、エタノール、2−プロパノール、メタノール、トルエン、テトラヒドロフラン、水、ベンゼン、ベンジルアルコール、1,4−ジオキサン、1−プロパノール、ジクロロメタン、四塩化炭素、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、フェノール、ピリジン、トリクロロエタン、酢酸、蟻酸、ヘキサフルオロ−2−プロパノール、ヘキサフルオロアセトン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、N−メチル−2−ピロリジノン、N−メチルモルホリン−N−オキシド、1,3−ジオキソラン、メチルエチルケトンおよびこれらの溶媒の混合溶媒が挙げられる。これらのうち、取り扱い性や物性などから、ジクロロメタン、エタノールを用いることが好ましい。
次に、溶液に高電圧を印加させる段階と、溶液を噴出させる段階と、噴出された溶液から溶媒を蒸発させて繊維成形体を形成させる段階について説明する。
本発明に用いる繊維成形体の製造方法においては、生体吸収性ポリマーを溶解した溶液を噴出させ、繊維成形体を形成させるために、溶液に高電圧を印加させる必要がある。電圧を印加させる方法については、生体吸収性ポリマーを溶解した溶液を噴出させ、繊維成形体が形成されるものであれば特に限定されないが、溶液に電極を挿入して電圧を印加させる方法や、溶液噴出ノズルに対して電圧を印加させる方法などがある。
また、溶液に印加させる電極とは別に補助電極を設けることも可能である。また、印加電圧の値については、前記繊維成形体が形成されれば特に限定されないが、通常は5〜50kVの範囲が好ましい。印加電圧が5kVより小さい場合は、溶液が噴出されずに繊維成形体が形成され難く好ましくなく、印加電圧が50kVより大きい場合は、電極からアース電極に向かって放電が起き易く好ましくない。より好ましくは6〜30kVの範囲である。所望の電位は従来公知の任意の適切な方法で作ればよい。
また、生体吸収性ポリマーを溶解した溶液を噴出させた直後に、使用した溶媒が揮発して繊維成形体が形成される。通常の紡糸は大気下、室温で行われるが、揮発が不十分である場合には陰圧下で行うことや、高温の雰囲気下で行うことも可能である。また、紡糸する温度は溶媒の蒸発挙動や紡糸液の粘度に依存するが、通常は0〜50℃の範囲である。
次に、形成された繊維成形体の電荷を消失させる段階について説明する。前記繊維成形体の電荷を消失させる方法は特に限定はされないが、好ましい方法として、イオナイザーにより電荷を消失させる方法が挙げられる。イオナイザーとは、内蔵のイオン発生装置によりイオンを発生させ、前記イオンを帯電物に放出させることにより前記帯電物の電荷を消失させうる装置である。本発明における繊維成形体の製造方法で用いられるイオナイザーを構成する好ましいイオン発生装置として、内蔵の放電針に高電圧を印加させることによりイオンを発生する装置が挙げられる。
次に、前記電荷消失によって繊維成形体を累積させる段階について説明する。前記電荷消失によって繊維成形体を累積させる方法は、特に限定はされないが、通常の方法として、電荷消失により繊維成形体の静電力を失わせ、自重により落下、累積させる方法が挙げられる。また、必要に応じて、静電力を消失させた繊維成形体を吸引してメッシュ上に累積させる方法、装置内の空気を対流させてメッシュ上に累積させる方法などを行ってもよい。
繊維表面が平滑な繊維の作製方法としては、紡糸する際の雰囲気を低湿度に設定することで作製することができる。好ましくは25%以下、さらに好ましくは20%以下である。
次に、熱処理によって繊維成形体を処理する段階について説明する。熱処理によって繊維成形体を処理する方法としては、特に限定されないが、熱風加熱、真空加熱、赤外線加熱、マイクロ波加熱の他、熱板、ホットロールを用いた接触による加熱などが例示できる。この際、段階的に温度を上げて熱処理することも可能である。また、窒素またはアルゴンといった不活性ガス雰囲気下で熱処理を実施することもできる。
熱処理の温度及び時間について特に制限されるものではないが、生体吸収性ポリマーのガラス転移温度以上、融点以下で実施することが好ましい。時間については、選択した熱処理温度により適宜選択することができる。熱処理をすることにより、繊維成形体の毛羽立ちを抑制することができる。
本発明で用いられる繊維成形体としては、本発明の目的を損ねない範囲で、その表面に、さらに綿状の繊維構造物を積層することや、綿状構造物を本発明で用いる繊維成形体ではさんでサンドイッチ構造にするなどの加工をして用いることもできる。
医療応用においては、さらに抗血栓性を付与するためのコーティング処理、抗体や生理活性物質で表面をコーティングすることも任意に実施できる。このときのコーティング方法や処理条件、その処理に用いる化学薬品は、繊維の構造を極端に破壊せず、本発明の目的を損なわない範囲で任意に選択できる。
本発明で用いられる繊維成形体の繊維内部にも任意に薬剤を含ませることができる。エレクトロスピニング法で成形する場合は、揮発性溶媒に可溶であり、溶解によりその生理活性を損なわないものであれば、使用する薬剤に特に制限はない。
かかる薬剤の具体例としては、タクロリムスもしくはその類縁体、スタチン系、またはタキサン系抗癌剤が例示できる。
また、上記薬剤は、揮発性溶媒中において活性を維持することが可能であればタンパク質製剤、核酸医薬であってもよい。また薬剤以外のもの、例えば金属、多糖、脂肪酸、界面活性剤、揮発性溶媒耐性微生物を含んでいてもよい。
また、本発明によれば、上記生体糊用補強材と生体糊とからなり、生体糊用補強材の少なくとも一部が生体糊で被覆されている人工生体薄膜も同様に提供される。ここで用いられる生体糊用補強材としても、好適なものとして上述した生体糊用補強材を用いることが望ましい。
以下、実施例により本発明の実施の形態を説明するが、これらは本発明の範囲を制限するものではない。
1.平均繊維径:
得られた繊維成形体の表面を走査型電子顕微鏡(キーエンス(株):商品名「VE8800」)により、倍率2000倍で撮影して得た写真から無作為に20箇所を選んで繊維の径を測定し、すべての繊維径の平均値を求めて平均繊維径とした。n=20である。
2.平均厚:
高精度デジタル測長機((株)ミツトヨ:商品名「ライトマチックVL−50」)を用いて測長力0.01Nによりn=10にて繊維成形体の膜厚を測定した平均値を算出した。なお、本測定においては測定機器が使用可能な最小の測定力で測定を行った。
3.貫通孔の有無及び平均表面開孔面積
得られた繊維成形体の表面を走査型電子顕微鏡(キーエンス(株):商品名「VE8800」)で撮影して得た写真から無作為に30箇所を選んで表面開孔面積を測定し、平均値を求めて平均表面開孔面積とした。電子顕微鏡観察から、貫通孔の有無を確認した。
4.目付け:
得られた繊維成形体を、5cm×10cmにカットし、その重量を測定、換算することで目付けを算出した。
5.空孔率:
空孔率ε(%)は、ε={1−ρ/ρ0}×100より求めた。
ρ:繊維成形体の密度、ρ0:バルクな状態での生体吸収性ポリマーの密度
6.接触角測定
7%アルブミン(ウシ血清由来、pH5.2:和光純薬製)/PBS(20012 Phosphate−Bufferd Salines (PBS),liquid:GIBCO製)液を使用して接触角測定を5回測定し、平均値を算出した。
7.耐圧試験
生体組織としてウサギの皮膚を採取し、ウサギの皮膚の中央にあけた穴(5mmΦ)の上に、得られた繊維成形体を穴がふさがるように設置し、上からフィブリン糊(ボルヒール(登録商標))を吹き付け、繊維成形体とフィブリン糊からなる複合薄膜をウサギの皮膚欠損部に被覆する。続いて、外部より圧を加えていき、膜が破断したときの内圧を測定した。
実施例1
ポリ乳酸(重量平均分子量26万2千、Purac社製)10重量部をジクロロメタン溶液90重量部で溶解し、均一な溶液を調製した。エレクトロスピニング法により紡糸を行い、シート状の繊維成形体を得た。噴出ノズルの内径は0.8mm、電圧は8kV、噴出ノズルから平板までの距離は25cmであった。上記平板は、紡糸時は陰極として用いた。得られた繊維成形体に、70℃10分間熱処理を実施した。得られた繊維成形体の平均繊維径は4.5μm、厚さは100μm、目付けは16.2g/m、空孔率は87.6%であった。0.01mm以上の貫通孔は観察されず、平均表面開孔面積は31.7μmであった。また、得られた繊維成形体上に、上記7%アルブミン溶液を1μLたらして液滴の変化を観察した。その結果、液滴が繊維成形体の内部に入り込むことはなく、疎水性の表面であることが確認された。繊維成形体表面上の上記7%アルブミン溶液の接触角は120度であり、親水性に乏しいこと、すなわち生体膜上にて繊維成形体と生体糊との複合薄膜を作製する際に、繊維成形体内への体液や髄液の浸透性が低いことがわかった。
次に、前記「7.耐圧試験」の項に記載したように繊維成形体を設置した。このとき、得られた繊維成形体は、フィブリン糊の浸透により透明性が向上し、内部が観察できるようになった。続いて、外部より圧を加えていき、膜が破断したときの内圧を測定した。その結果、膜が破裂したときの圧力は32,460Paであった。以上のことから、親水性に乏しい微細繊維成形体を生体糊との複合薄膜の補強材として使用しても十分な接着性および人工生体膜材料に要求される耐圧性を発現していることがわかった。また、得られた複合薄膜をピンセット先端により突き刺してみたところ、貫通孔は開かなかった。
実施例2
乳酸−グリコール酸共重合体(重量平均分子量20万4千、Purac社製)8.5重量部をジクロロメタン溶液85重量部およびエタノール溶液5重量部で溶解し、均一な溶液を調製した。エレクトロスピニング法により紡糸を行い、シート状の繊維成形体を得た。噴出ノズルの内径は0.8mm、電圧は8kV、噴出ノズルから平板までの距離は25cmであった。上記平板は、紡糸時は陰極として用いた。得られた繊維成形体に、70℃10分間熱処理を実施した。得られた繊維成形体の平均繊維径は4.6μm、厚さは80μm、目付けは13.8g/m、空孔率は86.7%であった。0.01mm以上の貫通孔は観察されず、平均表面開孔面積は134.5μmであった。また、得られた繊維成形体上に、上記7%アルブミン溶液を1μLたらして液滴の変化を観察した。その結果、液滴が繊維成形体の内部に入り込むことはなく、疎水性の表面であることが確認された。繊維成形体表面上の上記7%アルブミン溶液の接触角は123度であり、親水性に乏しいこと、すなわち生体膜上にて繊維成形体と生体糊との複合薄膜を作製する際に、繊維成形体内への体液や髄液の浸透性が低いことがわかった。
生体組織としてウサギの皮膚を採取し、ウサギの皮膚の中央にあけた穴(5mmΦ)の上に、作成した繊維成形体を穴がふさがるように設置し、上からフィブリン糊(ボルヒール(登録商標))を吹き付けた。このとき、得られた繊維成形体は、フィブリン糊の浸透により透明性が向上し、内部が観察できるようになった。続いて、外部より圧を加えていき、膜が破断したときの内圧を測定した。その結果、膜が破裂したときの圧力は31,864Paであった。以上のことから、親水性に乏しい微細繊維成形体を生体糊との複合薄膜の補強材として使用しても十分な接着性および人工生体膜に要求される耐圧性を発現していることがわかった。また、得られた複合薄膜をピンセット先端により突き刺してみたところ、貫通孔は開かなかった。
得られたシート状の繊維成形体の電子顕微鏡写真を、図1に示す。
比較例1
繊維成形体として、ポリグリコール酸系不織布であるネオベール(登録商標)NV−M−015G(グンゼ(株)製、厚さ0.15mm)を用いた以外は、実施例1と同様に、耐圧試験を行った。ネオベール(登録商標)の平均繊維径は20μmであり単繊維を束にした繊維束(146μm)で網目構造を有していた。0.01mm以上の貫通孔が観察され、平均表面開孔面積は、0.34mmであった。厚さは190μm、目付けは32.6g/m、空孔率は88.6%であった。また、ネオベール上に、上記7%アルブミン溶液を1μLたらして液滴の変化を観察した。その結果、繊維成形体表面上の上記7%アルブミン溶液の接触角は78度であり、時々刻々染込んでいくのが観察された。実施例1に比較して親水性に優れていること、すなわち生体膜上にて繊維成形体と生体糊との複合薄膜を作製する際に、繊維成形体内への体液や髄液の浸透性が高いことがわかった。耐圧試験の結果、複合膜が破断したときの圧力は、26,730Paであった。また、得られた複合薄膜をピンセット先端により突き刺してみたところ、貫通孔が開いた。
比較例2
繊維成形体として、ポリグラクチン910からなるメッシュであるバイクリルメッシュニット(登録商標、ジョンソン&ジョンソン(株)製)を用いた。バイクリルメッシュニットの平均繊維径は15.2μmであり単繊維を束にした繊維束(126μm)で網目構造を有していた。0.01mm以上の貫通孔が観察され、平均表面開孔面積は、0.09mmであった。厚さは196μm、目付けは67.0g/m、空孔率は70.7%であった。また、バイクリルメッシュニット上に、上記7%アルブミン溶液を1μLたらして液滴の変化を観察した。その結果、液滴が繊維成形体の内部に速やかに浸透したことから、実施例1に比較して親水性の表面であることが確認された。滴下直後の接触角は70度であった。すなわち生体膜上にて繊維成形体と生体糊との複合薄膜を作製する際に、繊維成形体内への体液や髄液の浸透性が高いことがわかった。また、得られた複合薄膜をピンセット先端により突き刺してみたところ、貫通孔が開いた。
比較例3
繊維成形体として、ポリグリコール酸系メッシュであるデキソンメッシュ#4(登録商標、デービス&ゲック(株)製)を用いた。デキソンメッシュ#4の平均繊維径は13.6μmであり単繊維を束にした繊維束(187μm)で網目構造を有していた。0.01mm以上の貫通孔が観察され、平均表面開孔面積は、0.013mmであった。厚さは205μm、目付けは56.0g/m、空孔率は82.1%であった。また、デキソンメッシュ#4上に、上記7%アルブミン溶液を1μLたらして液滴の変化を観察した。その結果、液滴が繊維成形体の内部に速やかに浸透し、接触角の測定が困難なことから、実施例1に比較して親水性の表面であることが確認された。すなわち生体膜上にて繊維成形体と生体糊との複合薄膜を作製する際に、繊維成形体内への体液及び髄液の浸透性が高いことがわかった。また、得られた複合薄膜をピンセット先端により突き刺してみたところ、貫通孔が開いた。
上記実施例1、2及び比較例1から3の結果を表1に示す。
実施例3
生体に埋め込むための人工生体膜の作製には、市販の生体組織接着剤であるボルヒール(登録商標)を使用した。実施例1で記載した繊維成形体を2cm×2cm(4cm)の大きさに切断し、10cmプラスチックシャーレ中に置いた。3cm×3cm(9cm)の大きさの透明なプラスチックフィルムの中央部に1cm×1cm(1cm)の穴を開け、繊維成形体の上にプラスチックフィルムを被せた。ボルヒール中の凍結乾燥フィブリノゲン240mgおよび第XIII因子225単位を含むバイアルにアプロチニン(3000KIE)を含む溶液3mLを添加して混合し、3mLのフィブリノゲン液を作製し、約0.2mLのフィブリノゲン液を1mLの噴霧用シリンジに吸い込んだ。トロンビン(750単位)の粉末を、塩化カルシウム17.7mgを含む溶液3mLで溶解して、そのうちの0.2mLを1mLのシリンジに吸い込んだ。それぞれのシリンジをボルヒールスプレーセット(秋田住友ベーク(株))に装着した。このスプレーセットを用いてフィブリノゲン液とトロンビン液各0.2mLを同時に繊維成形体に重ねたプラスチックフィルムの上から均等に噴霧した。この後、5分間以上静置した後、プラスチックフィルムを除去することによって、繊維成形体の中央部に1cm×1cm(1cm)の大きさのフィブリンゲル層とその周囲に0.5cmの幅ののりしろ部分を持つ人工生体膜を形成した。この人工生体膜をシャーレから剥離して以後の実験に使用した。
実施例4
ビーグル成犬を用いて動物実験を行った。
(i)硬膜の貼り付け
ビーグル成犬を挿管管理による全身麻酔下におき、両側頭頂前頭開頭を行い、左右に各々1箇所、1cm四方の正方形の硬膜欠損部を作製した。一箇所の欠損部に対して、欠損部周囲の硬膜にフィブリノゲン液を0.1mL滴下して指ですり込み、その上から実施例3に記載した人工生体膜をフィブリンゲル層が脳実質側になるように被せた。次にボルヒールスプレーセットを用いてボルヒール各液0.3mLを人工生体膜の上から噴霧し、人工生体膜を硬膜欠損部に接着させた。3分間以上静置した後、閉頭を行った。
(ii)術後1ヶ月の病理所見
図2に示したように、術後1ヵ月の時点でのヘマトキシリン・エオジン染色(HE染色)標本では、硬膜欠損部において本発明の人工生体薄膜の上部及び下部に自己の結合組織の層が確認された。また、人工生体膜の繊維間にも結合組織が増生していた。また、図3に示したように、脳組織は正常所見を呈していた。なお、術後より剖検時の1ヶ月まで、手術部位からの髄液の漏れはなかった。
以上の結果より、実施例1で示した特定の構造を有する繊維成形体とフィブリン糊を組み合わせることで、硬膜を含む自己組織層の再生を促す人工生体膜になり得ることが確認された。
以上のとおり、本発明の生体糊用補強材は、生体糊との接着性に優れ、均一な複合薄膜を形成できる。したがって、本発明の生体糊用補強材と生体糊とからなる人工生体膜は、医療用品、とりわけ臓器表面や創傷部位の保護材、被覆材、シール材として、人工代用硬膜、癒着防止材、止血材などに好ましく用いられる。

Claims (10)

  1. 平均繊維径が0.1〜10μmである生体吸収性ポリマーの繊維からなり、厚みが10〜150μmであり、表面開孔面積が0.01mm以上の貫通孔を有さない繊維成形体からなることを特徴とする生体糊用補強材。
  2. 繊維成形体の平均表面開孔面積が10〜500μmである請求項1に記載の生体糊用補強材。
  3. 繊維成形体の目付けが1〜30g/mである請求項1または2に記載の生体糊用補強材。
  4. 繊維成形体の空孔率が40〜90%である請求項1〜3のいずれかに記載の生体糊用補強材。
  5. 生体吸収性ポリマーが、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、およびそれらの共重合体よりなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜4のいずれかに記載の生体糊用補強材。
  6. 生体糊が、フィブリン糊、ゼラチン系粘着剤、セルロース製剤、コラーゲン系粘着剤、キトサン系粘着剤、アルギン酸製剤、およびこれらの2種以上の混合物からなる群から選ばれる、請求項1〜5のいずれかに記載の生体糊用補強材。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の生体糊用補強材と生体糊を構成する成分とからなり、生体糊用補強材の少なくとも一部が生体糊を構成する成分で被覆されている人工生体薄膜。
  8. 生体糊が、フィブリン糊、ゼラチン系粘着剤、セルロース製剤、コラーゲン系粘着剤、キトサン系粘着剤、アルギン酸製剤、およびこれらの2種以上の混合物からなる群から選ばれる、請求項7に記載の人工生体薄膜。
  9. 生体吸収性ポリマーから静電紡糸法にて繊維成形体を得る工程および該繊維成形体に熱処理を行う工程を含む、請求項1〜6のいずれかに記載の生体糊用補強材を製造する方法。
  10. 平均繊維径が0.1〜10μmである生体吸収性ポリマーからなり、厚みが10〜150μmであり、0.01mm以上の貫通孔を有さない繊維成形体からなる生体糊用補強材と、生体糊との組み合わせからなる生体膜再生のための治療キット。
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