JP2014001836A - 撹拌装置のシール材 - Google Patents

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Abstract

【課題】首振り運動を行う撹拌軸を備えた撹拌装置の安定運転を実現させるシール材を提供する。
【解決手段】 シール材10は、首振り運動を行う撹拌軸5を備えた撹拌装置1に適用され、撹拌軸5の首振り運動に応じて撓み変形する。このシール材10は、弾性材料から筒状に製作されて撹拌軸5が挿通される弾性部20を備え、弾性部20は、軸線方向中間部から径方向に突出する膨出部21と、膨出部21の軸線方向両側に設けられた筒部22A,22Bと、筒部22A,22Bを膨出部21に一体に連続させるように折れ曲がった折曲げ部23A,23Bとを有する。弾性部20には弾性部20を軸線方向に補強するための第1補強繊維41が設けられ、少なくとも折曲げ部23A,23Bに、弾性部20を周方向に補強するための第2補強繊維42が設けられている。
【選択図】図3

Description

本発明は、医薬、化学分野の生産プロセスにおいて、液又はスラリーの混合、溶解、晶析、濃縮、スラリー懸濁及び気液接触等の撹拌処理に利用される撹拌装置のシール材に関するものである。特に、撹拌軸にいわゆる首振り運動(味噌擂り運動、擂り粉木運動又は歳差運動とも称される)を行わせる撹拌装置に適用されるシール材に関する。
撹拌装置には、撹拌軸にいわゆる首振り運動を行わせることによって容器内の物質を撹拌するタイプのものがある(例えば、特許文献1参照)。このタイプの撹拌装置においては、撹拌軸を積極的に自転させないので、精緻に構成された軸封装置が不要になる。以降では説明の便宜上、このタイプの撹拌装置を、撹拌軸と軸封装置との間の摺動を無くし得るという利点に照らして「無摺動型撹拌装置」と称する場合がある。
特許文献1に示されるように、従来の無摺動型撹拌装置は、容器の概略中心線上に形成されて撹拌軸が挿通される軸挿通口と、一端部において容器に固定されて他端部において撹拌軸に固定されるシール材とを備える。撹拌軸の軸線は容器の中心線に対して傾斜している。撹拌軸の容器外方の端部には駆動装置が連結される。駆動装置が動作すると、撹拌軸の容器外方の端部が、容器の中心線に直交する平面上で円周を描くようにして円運動を行う。当該円運動が行われると、撹拌軸は、軸線方向中間部を支点とする首振り運動を行う。撹拌軸の下端部は、この運動に追従して容器内で回され、これにより容器内の物質が撹拌される。
シール材は、撹拌軸の首振り運動に追従して撓み変形可能になっており、これにより撹拌軸の首振り運動が許容される。従来の無摺動型撹拌装置においては、シール材に両端を開放したゴムスリーブが適用され、撹拌軸は当該ゴムスリーブに挿通される。ゴムスリーブの他端部は閉塞され、それにより容器内の空間が密閉される。
特開平3−65175号公報
上記シール材は段付きの円錐状に形成されているので、撹拌軸の首振り運動に追従して撓み変形することができるが、撹拌装置を稼働している間、シール材の軸線方向及び周方向に大きな繰返し応力が発生する。また、撹拌装置を用いて反応を行わせる場合、容器内とシール材の内部とは空間的に連通しているので、シール材に耐圧性が求められる場合がある。しかしながら、特許文献1では、シール材の強度について何ら対策が施されていない。このため、耐圧、耐久性の面で安定的な運転を行わせることが困難となっている。
そこで本発明は、首振り運動を行う撹拌軸を備えた撹拌装置を安定運転可能にするシール材を提供することを目的としている。
本発明は上記目的を達成すべくなされたものである。本発明に係る撹拌装置のシール材は、首振り運動を行う撹拌軸を備えた撹拌装置に適用され、前記撹拌軸の首振り運動に応じて撓み変形するシール材であって、弾性材料から筒状に製作されて前記撹拌軸が挿通される弾性部を備え、前記弾性部は、軸線方向中間部から径方向に突出する膨出部と、前記膨出部の軸線方向両側に設けられた筒部と、前記筒部を前記膨出部に一体に連続させるように折れ曲がった折曲げ部と、を有し、前記弾性部に、前記弾性部を軸線方向に補強するための第1補強繊維が設けられ、少なくとも前記折曲げ部に、前記弾性部を周方向に補強するための第2補強繊維が設けられている。
前記構成によれば、弾性材料から筒状に製作される弾性部が、軸線方向中間部から径方向に突出する膨出部と、この膨出部を軸線方向に挟む筒部とを有しているので、シール材を撹拌軸の首振り運動に応じて撓み変形させることができ、撹拌軸の連続首振り運動が可能になる。このようにシール材の弾性部を製作した場合には、シール材に求められる撓み変形の多くを膨出部が担うことになる。すると、撹拌装置が稼働している間、シール材の全体には軸線方向の繰返し応力が生ずるし、特に膨出部の付け根の部分にあたる折曲げ部には、局所的に周方向の繰返し応力が生ずる。そこで、弾性部に軸線方向補強用の第1補強繊維を設けると共に、少なくとも折返し部に周方向補強用の第2補強繊維を設けているので、このような繰返し応力への耐久性が増す。したがって、撹拌装置の安定運転を実現することができる。
前記第1補強繊維の繊維方向は、前記弾性部の軸線方向に対し、0度以上45度以下の傾斜角で傾斜していてもよい。
前記構成によれば、第1補強繊維を設けた部位において軸線方向の強度を高めることができる。
前記第2補強繊維の繊維方向は、前記弾性部の軸線方向に対し、45度よりも大きく90度以下の傾斜角で傾斜していてもよい。
前記構成によれば、第2補強繊維を設けた部位において周方向の強度を高めることができる。
前記弾性部は、前記撹拌軸への取付けのため前記筒部の軸線方向先端部から径方向に突出す突出部を有し、前記第1補強繊維が、前記筒部の内部から前記突出部の内部へと連続していてもよい。
前記構成によれば、筒部の軸線方向先端部から突出部の径方向内縁部にかけての屈曲部分において、弾性部を補強することができる。したがって、シール材の耐久性が向上する。
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、首振り運動を行う撹拌軸を備えた撹拌装置の安定運転を実現させるシール材を提供することができる。
本発明の第1実施形態に係る撹拌装置の側断面図である。 図2に示すシール材を示す側断面図である。 図2に示す弾性部の内部構造を示す側断面図である。 (a)が、第1補強繊維を成す2つの繊維群のうち一方の繊維方向を示す図、(b)が、第1補強繊維を成す2つの繊維群のうち他方の繊維方向を示す図である。(c)が、第2補強繊維を成す2つの繊維群のうち一方の繊維方向を示す図、(d)が、第2補強繊維を成す2つの繊維群のうち他方の繊維方向を示す図である。
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。同一の又は対応する要素には全ての図を通じて同一の符号を付し、重複する詳細な説明を省略する。
(撹拌装置)
図1は、本発明の実施形態に係る撹拌装置1の側断面図である。図1に示すように、撹拌装置1は、概略円筒状の容器本体2を有し、容器本体2の上壁3には軸挿通口4が設けられ、軸挿通口4には撹拌軸5が挿通されている。撹拌軸5は上下方向に延び、撹拌軸5の上端部は容器本体2の外部に位置し、撹拌軸5の下端部は容器本体2の内部に位置する。容器本体2の上壁からは支持部材6が立設している。撹拌軸5のうち軸挿通口4よりも上側の部分は、支持部材6の内側を上下方向に延び、撹拌軸5の上端部は、支持部材6に設置された駆動装置7に接続される。
駆動装置7は、その下部に回転可能な出力軸8を有し、出力軸8の回転軸線Aは、上下方向に向けられている。出力軸8は、撹拌軸5の上端部を取り付けるための取付部を有し、取付部は、出力軸8の回転軸線Aから径方向に離れている。また、撹拌軸5は、支持部材6に取り付けられた球面軸受9に滑動可能に支持されており、球面軸受9の軸受中心Cは、出力軸8の回転軸線A上に位置する。このため、撹拌軸5の軸線Bは、出力軸8の回転軸線Aに対して傾斜し、軸受中心Cにおいて出力軸8の回転軸線Aと交差する。
出力軸8が回転すると、撹拌軸5の上端部が、出力軸8の回転軸線A周りに当該回転軸線Aに直交する平面内で円を描くようにして周回する。撹拌軸5は球面軸受9で支持されているので、撹拌軸5は軸受中心Cを支点とした首振り運動を行う。すなわち、撹拌軸5のうち軸受中心Cよりも上方の部分が、軸受中心Cを頂点として撹拌軸5の軸線Bを母線とする逆円錐の側面を撫でるようにして運動し、撹拌軸5のうち軸受中心Cよりも下方の部分が、軸受中心Cを頂点として撹拌軸5の軸線Bを母線とする円錐の側面を撫でるようにして運動する。このように撹拌軸5が首振り運動を行うことで、容器本体2の内部に投入された物質を撹拌することができる。
撹拌装置1は、容器本体2の内部を密閉するため、シール材10を備えている。シール材10は、両端が開放した中空空間11を有する筒状に形成されている。シール材10の一端部(本実施形態では下端部)は、容器本体2に固定され、シール材10は、軸挿通口4の周囲から上方に立設される。シール材10の他端部は、撹拌軸5から径方向に突出した円盤状の蓋体12により、気密且つ液密に覆われる。蓋体12は、上下方向において駆動装置7の出力軸8と軸挿通口4との間に位置する。この構造により、撹拌軸5は、蓋体12を貫通し、シール材10の内部空間11及び軸挿通口4の内部を順次に通過し、容器本体2の内部に至る。一方、容器本体2の内部は、軸挿通口4を介してシール材10の内部空間11に連通する。
シール材10の内部空間11は蓋体12で覆われているので、容器本体2に設けた他のノズルが閉鎖されている限り、容器本体2の内部空間を液密且つ気密に密閉することができる。このため、容器本体2の内部空間を大気圧よりも高圧又は低圧にして撹拌処理を行うことが可能になる。そして、シール材10は撓み変形可能に製作されている。このようなシール材10を撹拌装置1に適用することにより、容器本体2を密閉しながら、撹拌軸5の首振り運動を許容することができ、首振り運動を行う撹拌軸5により撹拌処理を安定的に行うことができる。
ただし、撹拌処理を行っている間、シール材10には、撓み変形による繰返し応力が作用する。容器本体2の内圧を大気圧よりも高圧又は低圧として撹拌処理を行う場合には、シール材10には差圧に応じた荷重も作用する。本実施形態に係るシール材10は、この繰返し応力や圧力に基づく荷重に対する強度を確保するように構成されており、これにより撹拌装置1を安定的に運転することができる。以下、このシール材10の構成について具体的に説明する。
(シール材の全体構造)
図2は、図1に示すシール材10の断面図である。図2に示すように、シール材10は、前述の内部空間を有した筒状に製作され、撹拌軸5(図1参照)が挿通される弾性部20を備えている。弾性部20は、弾性材料から製作されている。この弾性材料としては、例えば、可撓性と耐圧性との両立を考慮して、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等の所要硬度(50〜70)を有したゴム材料を好適に適用することができ、その他のゴム材料も好適に適用可能である。
弾性部20は、全体として両端が開放された段付き円筒状に形成されている。弾性部20は、軸線方向中間部から径方向に突出する膨出部21と、膨出部21の軸線方向両側に設けられた上下一対の筒部22A,22Bと、筒部22A,22Bそれぞれを膨出部21に一体に連続させるようにして折れ曲がった上下一対の折曲げ部23A,23Bとを有している。
一端側(本実施形態では下側)の筒部22Aは、弾性部20の一端側の開口から弾性部20の軸線方向中央部へと延びており、軸線方向に関して略一定の内径を有している。他端側(本実施形態では上側)の筒部22Bについても同様である。膨出部21は、軸線通過断面をとると左右にC字状又は半円状に形成され、軸線方向に直交する断面をとると円環状に形成される。膨出部21は、膨出部21の上下の付け根それぞれにおいて折曲げ部23A,23Bを介して筒部22A,22Bに連続している。折曲げ部23A,23Bは、軸線方向中央側に向かうに連れて内径が大きくなっていくようにして湾曲しており、軸線方向に直交する断面をとると、円環状に形成されている。折曲げ部23A,23Bの曲率半径は極力大きくなっており、それにより折曲げ部23A,23Bに生ずる応力集中が極力緩和されている。
一端側の筒部22Aの軸線方向先端部には、半径方向に突出した突出部24Aが設けられている。他端側の筒部22Bの軸線方向先端部にも、同様にして突出部24Bが設けられている。これら突出部24A,24Bは、シール材10の軸線方向に見て円環状に形成されている。シール材10は、筒部22Aの先端部及び筒部22Bの先端部それぞれに取り付けられた2枚のフランジ25A,25Bを有しており、これらフランジ25A,25Bは、中央に貫通口を有した円盤状に形成されている。一端側のフランジ25Aは、一端側の突出部24Aに他端側から接触している。フランジ25Aの端面には、突出部24Aが収容される円環状の窪み部26Aが形成されており、突出部24Aの端面は、フランジ部25Aの端面よりも軸線方向先端側に位置する。窪み部26Aは省略可能ではあるが、窪み部26Aがあれば、突出部24Aをフランジ25Aにしっかりと組み付けることができる。突出部24B、フランジ部25B及びその窪み部26Bの間の関係もこれと同様である。フランジ25A,25Bは金属製であるので、一端側のフランジ25Aを用いてシール材10を容器本体2(図1参照)に強固に取り付けることができ、また、他端側のフランジ25Bを用いてシール材10を蓋体12(図1参照)に強固に取り付けることができる。
撹拌軸5が首振り運動を行うと、膨出部21がこれに追従して軸線方向に押し潰されたり広がったりして、また、円周方向に引っ張られたり圧縮されたりする。このように、弾性部20が膨出部21を有し且つ膨出部21が弾性材料から製作されているので、膨出部21を設けていない場合と対比してシール材10が撓み変形しやすくなり、撹拌軸5の首振り運動が円滑に行われる。
また、突出部24A,24Bの端面は対応するフランジ25A,25Bの端面よりも軸線方向先端側に位置する。このため、フランジ25Aを容器本体2(図1参照)に取り付けるときには突出部24Aがこれらの間に介在して密封作用を発揮する。フランジ25Bを蓋体12(図1参照)に取り付けるときには突出部24Bがこれらの間に介在して密封作用を発揮する。
(シール材の内部構造)
本件発明者らの解析の結果、このように撹拌軸5が首振り運動を行っているときには、膨出部21及び折曲げ部23A,23Bには、シール材10を成すその他の部分(例えば筒部22A,22B)と比べ、繰返し応力が大きく作用することがわかった。特に、折曲げ部23A,23Bには、周方向の繰返し応力が顕著に大きく作用することがわかった。そこで本件発明者は、折曲げ部23A,23Bの周方向の強度を向上させれば、シール材10の全体としての耐久性を効果的に向上させることができ、それにより撹拌装置1を耐久性及び耐圧の面で安定的に運転することができるようになると着想した。そこで本実施形態に係るシール材10の弾性部20の内部には、補強繊維40が設けられている。
図3に示すように、補強繊維40には、弾性部20の略全体に設けられた第1補強繊維41と、折曲げ部23A,23Bの周辺にのみ局所的に設けられた第2補強繊維42とが含まれる。弾性部20はこのようにして補強繊維40を内蔵するので、弾性部20には、補強繊維40よりも径方向内側の内弾性層31と、補強繊維40よりも径方向外側の外弾性層32とが設けられる。なお、本実施形態では、弾性部の内周面(すなわち内弾性層の内周面)にPTFEが設けられており、これにより耐薬品性を高くしている。
本実施形態においては、膨出部21における内弾性層31の厚さは、その他の部位における内弾性層の厚さよりも小さくなっている。なお、内弾性層31は、厚くすれば剛性が上がり強度に寄与する。ただし、厚くし過ぎると変形しづらくなり、撹拌動作の動力浪費につながるので、過度な厚肉は好ましくない。本実施形態では、内弾性層31の厚さをちょうどよい厚みに調整しており、それにより撹拌抵抗を過大にせずに良好な強度を得ることができる。例えば、本実施形態のように、変形に大きく寄与する膨出部21における内弾性層31の厚さをその他の部位における内弾性層31の厚さよりも小さくすると、膨出部21の可撓性が増して撹拌軸5(図1参照)の首振り運動を円滑に行わせることができる。そのうえで、折曲げ部23に補強繊維40を設けているので、可撓性の向上と耐久性の向上とが両立される。
強化繊維40には、ナイロンやポリエステル等の有機繊維を好適に適用することができ、その他スティール繊維、カーボン繊維、ガラス繊維などの高靱性を有した繊維を適用することができる。強化繊維40には、高靱性の繊維又は高靱性の繊維から製作した織布を担持したゴムシートを好適に適用することができ、その他撚った繊維を並べることによって製作される所謂コードの形態でもよい。ゴムシートは、高靱性の繊維が延びる方向を一方向とすることが好ましい。これにより、当該繊維が延びる方向への引張りに強くなる一方、これとは異なる方向(特に、繊維が延びる方向とは直交する方向)には伸縮性を持つことができる。これにより、シール材10の成形性の向上とシール材10の強度確保とを両立可能になる。以降の説明では、高靱性の繊維が延びる方向、すなわち強化繊維40が強靱性を発揮する方向を、強化繊維40にどのような形態のものを適用したかどうかに関わらず、「繊維方向」と称する。
第1補強繊維41は、主として弾性部20の軸線方向の補強を担う。本実施形態では、第1補強繊維41が、筒部22Aの先端から筒部22Bの先端まで、弾性部20の全体に亘って設けられている。本実施形態では、内弾性層31は膨出部21及び筒部22A,22Bの内周側部分と、突出部24A,24Bの軸線方向外側部分とを構成している。外弾性層32は膨出部21及び筒部22A,22Bの外周側部分と、突出部24A,24Bの軸線方向中心側部分とを構成している。第1補強繊維41は、筒部22A,22Bの内部から突出部24A,24Bの内部へと連続しており、突出部24A,24Bの径方向外縁にまで達している。このようにすると、筒部と突出部との間の屈曲部分を補強することができ、この屈強部分に亀裂が生じたりするのを抑えることができる。
図4(a)及び図4(b)に示すように、本実施形態に係る第1補強繊維41には、繊維方向が弾性部20の軸線方向に対して傾斜角θ1Aだけ傾斜した繊維群41Aと、繊維方向が弾性部20の軸線方向に対して傾斜角θ1Bだけ傾斜した繊維群41Bとが含まれている。これら傾斜角θ1A,θ1Bの絶対値は、0度以上45度以下に設定され、それにより弾性部20の強度を軸線方向に高めることができる。好ましくは、傾斜角θ1A,θ1Bの絶対値が、15度以上40度以下であることが好ましい。このようにすれば、弾性部20の強度が軸線方向に大きくなり過ぎるのを緩和することができると共に弾性部20の強度を周方向にも向上させることができ、成形性の確保と強度の確保とを両立することができる。
また、傾斜角θ1Aと傾斜角θ1Bとの間で正負を異ならせ且つ傾斜角θ1Aの絶対値を傾斜角θ1Bの絶対値と等しくすることが好ましい。例えば、傾斜角θ1Aを30度とした場合、傾斜角θ1Bを−30度(+330度)とするのが好ましい。このように、一方の強化繊維41の繊維方向が、筒部21の軸線方向を基準として他方の強化繊維42と対称になっているので、弾性部20の周方向の強度がバランスよく向上する。
図3に示すように、第2補強繊維42は、主として、当該第2補強繊維42が設けられている部位の周方向の補強を担う。本実施形態では、第2補強繊維42が、上下一対の折曲げ部23A,23Bそれぞれに設けられている。また、第2補強繊維42は、対応する折曲げ部23A,23Bの内部から、これに連続する筒部22A,22B(すなわち、軸線方向の位置によらず内径が一定となる部分)にまで連続している。本実施形態では、第1補強繊維41が筒部22A,22B、折曲げ部23A,23B及び膨出部21に設けられており、第2補強繊維42は、この第1補強繊維41を構成する一対の繊維群41A,41Bの間に挟まれている。ただし、この配置は一例であり、第2補強繊維42は一対の繊維群41A,41Bに対して径方向内側に配置されていても径方向外側に配置されていてもよい。
図4(c)及び図4(d)に示すように、本実施形態に係る第2補強繊維42には、繊維方向が弾性部20の軸線方向に対して傾斜角θ2Aだけ傾斜した繊維群42Aと、繊維方向が弾性部20の軸線方向に対して傾斜角θ2Bだけ傾斜した繊維群42Bとが含まれている。これら傾斜角θ2A,θ2Bの絶対値は、45度よりも大きく90度以下に設定され、それにより第2補強繊維が設けられた部位の強度を周方向に高めることができる。また、本実施形態のように、第2補強繊維42が繊維方向を異ならせた2つの繊維群42A,42Bを含む場合には、上記第1補強繊維41と同様にして、傾斜角θ2Aと傾斜角θ2Bとの間で正負を異ならせ且つ傾斜角θ2Aの絶対値を傾斜角θ2Bの絶対値と等しくすることが好ましい。これにより第2補強繊維42が設けられている部位の強度をバランスよく向上させることができる。
このように本実施形態によれば、首振り運動を行う撹拌軸5を備えた撹拌装置1において、繰返し荷重がシール材10のどこにどのように作用するのか解析した結果に照らし、折曲げ部23A,23B周辺に周方向への補強のための第2補強繊維が適用されている。これにより折曲げ部23A,23Bは、周方向の繰返し応力に対する耐久性が大きくなり、それによりシール材10全体の強度を効果的に向上させることができる。特に、本実施形態では、内弾性層31の厚さを調整することで弾性体20の可撓性を確保すると共に、第1補強繊維41及び第2補強繊維42によって耐久性を確保しており、首振り運動を円滑に行わせることとシール材10の寿命を長くすることとを両立させることができる。
(変形例)
これまで本発明の実施形態について説明したが、上記構成は本発明の範囲内で適宜変更可能である。例えば、補強繊維40(特に第1補強繊維41)の径方向外側に存在する外弾性層32は、必須ではなく適宜省略可能である。すなわち、補強繊維40は弾性部20に完全に内蔵されている必要はなく、径方向外側で露出していてもよい。
周方向への補強を目的とした補強繊維42A,42Bは、少なくとも折曲げ部23に適用されていればよい。第2補強繊維42を膨出部21の内部にまで連続させ、一端側の折曲げ部23A周辺に設けられていた第2補強繊維を他端側の折曲げ部23B周辺に設けられていた第2補強繊維と一体化してもよい。また、第2補強繊維42を筒部22A,22Bの軸線方向先端部あるいは更にその先の突出部24A,24Bにまで連続させ、第2補強繊維42を弾性部20の略全体に設けてもよい。また、上記実施形態では、第2補強繊維42が、周方向への補強目的で繊維方向を異ならせた2つの繊維群42A,42Bを含んでいるが、繊維方向を一方向に揃えた単一の繊維群で第2補強繊維42を構成してもよい。この場合、周方向への補強を強化するため、繊維方向の弾性部20の軸線方向に対する傾斜角を90度とすることが好ましい。また、軸線方向への補強を担う第1補強繊維41は、折返し部の周辺で省略されていてもよいし、更には膨出部21においても省略されていてもよい。第1補強繊維41を膨出部から省略する場合には、第2補強繊維42を膨出部21に設けることが好ましく、第2補強繊維42が第1補強繊維41と径方向にオーバーラップすることなく設けられる場合には、第2補強繊維42の繊維方向の弾性部20の軸線方向に対する傾斜角を45度よりも大きく80度以下とすることが好ましい。これにより、第2補強繊維によって、主として周方向の強度が向上すると共に、軸線方向にも強度を向上させることができ、シール材の耐久性を効果的に向上させることができる。
本発明は、撹拌装置の安定運転を実現させるシール材を提供することができるとの顕著な作用効果を奏し、首振り運動を行う撹拌軸に備えた撹拌装置、特に膨出部を有するシール材を備える撹拌装置に適用すると有益である。
1 撹拌装置
5 撹拌軸
10 シール材
21 膨出部
22A,22B 筒部
23A,23B 折曲げ部
24A,24B 突出部
31 内弾性層
32 外弾性層
40 補強繊維
41 第1補強繊維
42 第2補強繊維

Claims (4)

  1. 首振り運動を行う撹拌軸を備えた撹拌装置に適用され、前記撹拌軸の首振り運動に応じて撓み変形するシール材であって、
    弾性材料から筒状に製作されて前記撹拌軸が挿通される弾性部を備え、
    前記弾性部は、軸線方向中間部から径方向に突出する膨出部と、前記膨出部の軸線方向両側に設けられた筒部と、前記筒部を前記膨出部に一体に連続させるように折れ曲がった折曲げ部と、を有し、
    前記弾性部に、前記弾性部を軸線方向に補強するための第1補強繊維が設けられ、少なくとも前記折曲げ部に、前記弾性部を周方向に補強するための第2補強繊維が設けられている、撹拌装置のシール材。
  2. 前記第1補強繊維の繊維方向は、前記弾性部の軸線方向に対し、0度以上45度以下の傾斜角で傾斜している、請求項1に記載の撹拌装置のシール材。
  3. 前記第2補強繊維の繊維方向は、前記弾性部の軸線方向に対し、45度よりも大きく90度以下の傾斜角で傾斜している、請求項1又は2に記載の撹拌装置のシール材。
  4. 前記弾性部は、前記撹拌軸への取付けのため前記筒部の軸線方向先端部から径方向に突出する突出部を有し、
    前記第1補強繊維が、前記筒部の内部から前記突出部の内部へと連続している、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の撹拌装置のシール材。


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