本発明の対象は、ポリマーと微粒状無機固体とから構成されている粒子(複合化粒子)の水性分散液の貯蔵安定性を改善する方法であり、前記方法は、前記水性分散媒体に、水性媒体中に分散された複合化粒子(複合化粒子分散液)の製造中又は製造後に、一般式
[式中、
R
1〜R
3は、
・C
1〜C
10−アルコキシ、
・非置換又は置換されたC
1〜C
30−アルキル、
・非置換又は置換されたC
5〜C
15−シクロアルキル、
・非置換又は置換されたC
6〜C
10−アリール、
・非置換又は置換されたC
7〜C
12−アラルキルを表し、
R
4は、
を表し、
Φは、
・非置換又は置換されたC
1〜C
30−アルキレン、
・非置換又は置換されたC
5〜C
15−シクロアルキレン、
・非置換又は置換されたC
6〜C
10−アリーレン、
・非置換又は置換されたC
7〜C
12−アラルキレンを表し、
Xは、酸素、NR
7又はCR
8R
9を表し、
R
5〜R
9は、水素、C
1〜C
4−アルキルを表し、
nは、0〜5の整数を表し、
yは、0〜5の整数を表し、
その際に基R
1〜R
3のうち少なくとも1種は、C
1〜C
10−アルコキシを表す]
で示される有機シラン化合物Iを添加することにより特徴付けられている。
本発明の対象は同様に、本発明による方法により得られる複合化粒子の水性分散液並びにそのような複合化粒子の水性分散液を含有する水性配合物である。
複合化粒子の水性分散液(複合化粒子分散液)は一般的に知られている。水性分散媒体中の分散相として、互いに絡み合った複数のポリマー鎖からなるポリマーコイル、いわゆるポリマーマトリックスと、微粒状無機固体から構成された粒子とを分散分布した状態で含有する流体系である。前記複合化粒子の直径は頻繁に10nm〜5000nmの範囲内である。
複合化粒子及び複合化粒子の水性分散液の形態でのそれらの製造方法並びにそれらの使用は、当業者に知られており、かつ例えば米国特許(US-A)第3544500号明細書、米国特許(US-A)第4421660号明細書、米国特許(US-A)第4608401号明細書、米国特許(US-A)第4981882号明細書、欧州特許出願公開(EP-A)第104498号明細書、欧州特許出願公開(EP-A)第505230号明細書、欧州特許出願公開(EP-A)第572128号明細書、英国特許出願公開(GB-A)第2227739号明細書、国際公開(WO)第0118081号、国際公開(WO)第0129106号、国際公開(WO)第03000760号の明細書に並びにLong et al., Tianjin Daxue Xuebao 1991, 4, pp.10-15、Bourgeat-Lami et al., Die Angewandte Makromolekulare Chemie 1996, 242, pp.105-122、Paulke et al., Synthesis Studies of Paramagnetic Polystyrene Latex Particles in Scientific and Clinical Applications of Magnetic Carriers, pp.69-76, Plenum Press, New York, 1997、Armes et al., Advanced Materials 1999, 11, No. 5, pp.408-410に開示されている。
前記複合化粒子の水性分散液又はこれらの水性分散液を含有する水性配合物にとって不利であるのは、これらが、より長期の貯蔵の際に、特に≧40℃の温度で、ゲル化に至るまでの粘度上昇を有しうることである。それにより、前記複合化粒子の水性分散液又はこれらの水性分散液を含有する水性配合物の加工を困難にしうる。極端な場合には、前記複合化粒子の水性分散液又はこれらの水性分散液を含有する水性配合物は、その加工のために使用できなくさえなりうる。
複合化粒子の水性分散液の安定化については、専ら次の技術水準から始めることができる。
そして、国際公開(WO)第05083015号には、複合化粒子の水性分散液をヒドロキシ基含有アルキルアミノ化合物の添加により安定化させることが開示されている。
国際公開(WO)第09130238号により、複合化粒子の水性分散液の貯蔵安定性を双性イオン化合物の添加により改善することが開示されている。
出願番号09161827.2を有する欧州優先権出願に基づくまだ公開されていない特許出願PCT/EP2010/057608では、複合化粒子の水性分散液の貯蔵安定性を、アルキレンオキシ基を用いて親水性に変性された特殊なシラン化合物の添加により改善することが提案されている。
本発明の課題は、複合化粒子の水性分散液及びこれらの水性分散液を含有する水性配合物の貯蔵安定性を改善する代替的もしくはより効率的な方法を提供することであった。
それに応じて、冒頭に定義された方法が見出された。
本明細書の範囲内で、その際に"前記複合化粒子の水性分散液の製造中"は、その重合反応中の任意の時点でのシラン化合物Iの水性分散媒体への添加を意味し、かつ"前記複合化粒子の水性分散液の製造後"は、その重合反応の完了後の任意の時点でのシラン化合物Iの水性分散媒体への添加を意味するものとする。その際に、当業者には、水性分散媒体が、その重合反応の完了後になお少量(全モノマー量を基準として、≦5質量%、有利に≦2質量%及び特に有利に≦1質量%)の未反応エチレン系不飽和モノマー、いわゆる残存モノマーを含有しうることは自明である。ゆえに、本明細書の範囲内で、"前記複合化粒子の水性分散液の製造後"は、その重合反応の完了後の水性分散媒体へのシラン化合物Iの添加を意味する。微粒状無機固体の存在下でのエチレン系不飽和化合物の重合による複合化粒子の水性分散液の製造の際に、前記重合は、エチレン系不飽和化合物の目につく転化がもはや行われなくなると直ちに終わったとみなされる。これは通例、全モノマー転化率が≧95質量%、有利に≧98質量%及び特に有利に≧99質量%である場合である。しかしながら重合反応の後に、なお残っている残存モノマーの含量を、別個の工程において前記の重合反応とは異なるラジカル開始剤系を用いて更に低下させる場合には、シラン化合物Iを前記水性分散媒体に、残存モノマーの除去前、除去中又は除去後に添加することができる。しかしながら、有利には、そのような場合に、シラン化合物Iは前記水性媒体に、残存モノマー除去後に添加される。
本発明による方法にとって特に有利であるのは、シラン化合物Iが、前記複合化粒子の水性分散液の前記水性分散媒体に、前記複合化粒子の水性分散液の製造後に添加される場合である。その際に、"前記複合化粒子の水性分散液の製造後"の意味が、水性配合物の製造も含んでおり、その製造の際に、他の配合物成分に加え、複合化粒子の水性分散液及び別個に少なくとも1種のシラン化合物Iも添加されることは自明である。
その際に、シラン化合物Iは、前記水性媒体に、前記複合化粒子の水性分散液の製造中又は製造後に、別個の単独流として又は他の成分との混合物で不連続に1つ以上の部分で又は連続的に一定の又は変わる流量で計量供給することができる。
好都合であるのは、シラン化合物I少なくとも1種を含有する複合化粒子の水性分散液又はこれらの水性分散液を含有する水性配合物が、≧4、≧5、≧6又は≧7かつ≦10、≦11、≦12又は≦13のpH値を有する場合である。有利に、≧7かつ≦11の範囲内のpH値に調節される。特に有利には、前記複合化粒子の水性分散液は、シラン化合物Iの添加前に既に≧7かつ≦11の範囲内のpH値を有する。pH値の測定は、本発明によれば20〜25℃(室温)で、校正されたpH計で行われる。
その際に、一般式(I)の有機シラン化合物中で、置換基R1〜R3は、
・C1〜C10−アルコキシ、特にメトキシ、エトキシ、n−プロポキシ又はイソプロポキシ、n−ブトキシ、t−ブトキシ及び特に有利にメトキシ及びエトキシを表し、
・非置換又は置換されたC1〜C30−アルキル、しかしながら特に非置換のアルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル及びそれらの異性体を表すか又は置換されたアルキルを表し、例えば1個以上のアミノ基、アセトキシ基、ベンゾイル基、ハロゲン基、シアノ基、グリシジルオキシ基、ヒドロキシ基、イソシアナト基、メルカプト基、フェノキシ基、ホスファト基又はイソチオシアナト基で置換されている、
・非置換又は置換された(相応する置換基はC1〜C30−アルキルを参照)C5〜C15−シクロアルキル、しかしながら特にシクロペンチル又はシクロヘキシルを表すか、
・非置換又は置換された(相応する置換基はC1〜C30−アルキルを参照)C6〜C10−アリール、しかしながら特にフェニル、ハロゲノフェニル又はクロロスルホニルフェニルを表すか、又は
・非置換又は置換された(相応する置換基はC1〜C30−アルキルを参照)C7〜C12−アラルキル、しかしながら特にベンジルを表し、
その際に基R1〜R3のうち少なくとも1種は、C1〜C10−アルコキシを表す。有利には、基R1〜R3のうち少なくとも2種及び特に有利には基R1〜R3の3種すべてがC1〜C10−アルコキシを表し、その際にメトキシ基及び/又はエトキシ基が殊に好ましい。基R1〜R3のうち1種又は2種のみがC1〜C10−アルコキシを表す場合には、残っている基は好ましくはC1〜C10−アルキル、特にメチル及び/又はエチルを表す。
更にまた、有機シラン化合物I中で、
R
4は、
を表し、
ここに、Φは、
・非置換又は置換されたC
1〜C
30−アルキレン、しかしながら特に非置換のアルキレン、例えばメチレン(−CH
2−)、エチレン(−CH
2CH
2−)、n−プロピレン(−CH
2CH
2CH
2−)、イソプロピレン(−CH
2CH(CH
3)−)、n−ブチレン(−CH
2CH
2CH
2CH
2−)、イソブチレン(−CH
2CH(CH
3)CH
2−)、t−ブチレン(−CH
2C(CH
3)
2−)、n−ペンチレン、n−オクチレン、n−デシレン、n−ヘキサデシレン及びそれらの異性体を表すか又は置換されたC
1〜C
30−アルキレンを表し、例えば1個以上のアミノ基、アセトキシ基、ベンゾイル基、ハロゲン基、シアノ基、グリシジルオキシ基、ヒドロキシ基、イソシアナト基、メルカプト基、フェノキシ基、ホスファト基又はイソチオシアナト基で置換されている、
・非置換又は置換された(相応する置換基はC
1〜C
30−アルキレンを参照)C
5〜C
15−シクロアルキレン、しかしながら特に1,2−及び1,3−シクロペンチレン又は1,2−、1,3−並びに1,4−シクロヘキシレンを表し、
・非置換又は置換された(相応する置換基はC
1〜C
30−アルキレンを参照)C
6〜C
10−アリーレン、特にしかしながら1,2−、1,3−及び1,4−フェニレン並びに1,2−、1,4−又は1,8−ナフチレンを表すか、又は
・非置換又は置換された(相応する置換基はC
1〜C
30−アルキレンを参照)C
7〜C
12−アラルキレン、しかしながら特にベンジレンを表す。
しかしながら、有利にはΦは、非置換のC
1〜C
5−アルキレン基を表し、その際にC
2〜C
4−アルキレン基が特に好ましい。特に有利には、Φは、エチレン基、n−プロピレン基又はn−ブチレン基及び殊にn−プロピレン基を表す。
更にまた、シラン化合物Iの基R4中で、
Xは、酸素、NR7又はCR8R9を表し、その際に酸素が好ましく、
R5〜R9は、水素、C1〜C4−アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチルを表し、その際に水素が特に好ましく、
nは、0〜5の整数、好ましくは0及び1及び特に好ましくは0を表し、
yは、0〜5の整数、好ましくは0及び1及び特に好ましくは1を表す。
特に有利であるのは、R1及びR2がメトキシ又はエトキシを表し、R3がメトキシ、エトキシ、メチル又はエチルを表し、Φがエチレン、n−プロピレン又はn−ブチレンを表し、Xが酸素を表し、R5及びR6が水素を表し、かつyが1の数を表す、シラン化合物Iである。特に有利には、本発明により(3−グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン及び/又は(3−グリシジルオキシプロピル)メチルジエトキシシランが使用される。シラン化合物Iは、当業者によく知られた方法により製造することができるか又は商業的に直接購入することができる(例えばDynsilan(登録商標) GLYMO[Evonik Industries GmbH社の商品名]、Geniosil(登録商標) GF 80又はGeniosil(登録商標) GF 82[Wacker Chemie AG社の商品名]又はSilquest(登録商標) A-187、Silquest(登録商標) A-1871及びWetLink(登録商標) 78[Momentive Performance Materials Inc.社の商品名])。
本発明による方法において、シラン化合物Iの量は、前記複合化粒子の水性分散液の全量を基準として、それぞれ、有利に0.01〜10質量%、好ましくは0.03〜5質量%及び特に好ましくは0.05〜1質量%である。頻繁に、その際に本発明によれば、シラン化合物Iの量が、前記水性分散液又は配合物中に含まれている前記複合化粒子の全量を基準として、それぞれ、0.1〜20質量%、好ましくは0.1〜10質量%及び特に好ましくは0.25〜5質量%である場合が有利である。その際に、シラン化合物Iの全量が、前記水性分散媒体に、前記複合化粒子の製造中又は製造後に添加することができる。もちろん、シラン化合物Iの部分量を前記水性媒体に、前記複合化粒子の製造中に、かつ残っている残量を前記複合化粒子の得られた水性分散液に、添加することも可能である。しかしながら、有利には、シラン化合物Iの全量が、前記複合化粒子の水性分散液又はこれらの水性分散液を含有する水性配合物に添加される。しかしながら、シラン化合物Iの部分量を、前記複合化粒子の水性分散液にかつシラン化合物Iの残っている残量を、前記複合化粒子の水性分散液を含有する前記水性配合物に添加することも可能である。
本発明による方法は、国際公開(WO)第03000760号に開示された手順―この参照により本明細書の範囲内に明らかに含まれるものとする―により製造された、そのような複合化粒子の水性分散液に有利に適している。この方法は、少なくとも1種のエチレン系不飽和モノマーを水性媒体中に分散分布させ、かつ少なくとも1種のラジカル重合開始剤を用いて、少なくとも1種の分散分布された微粒状無機固体及び少なくとも1種の分散剤の存在下で、ラジカル水性乳化重合の方法により重合させ、その際に
a)前記無機固体少なくとも1種の安定な水性分散液を使用し、前記分散液は、前記無機固体少なくとも1種の水性分散液を基準として≧1質量%の初期固体濃度で、その製造後の1時間後になお、当初に分散された固体の90質量%超を分散された形で含有し、かつその分散された固体粒子が、≦100nmの質量平均直径を有することにより特徴付けられており、
b)前記無機固体少なくとも1種の分散された前記固体粒子が、標準塩化カリウム水溶液中で、前記分散剤の添加の開始前の前記水性分散媒体のpH値に相当するpH値で、ゼロとは異なる電気泳動移動度を示し、
c)前記水性固体粒子分散液を、少なくとも1種の前記エチレン系不飽和モノマーの添加の開始前に、少なくとも1種のアニオン分散剤、カチオン分散剤及び非イオン分散剤と混合し、
d)その後、少なくとも1種の前記モノマーの全量のうち0.01〜30質量%を前記水性固体粒子分散液に添加し、かつ少なくとも90%の転化率まで重合させ、
かつ
e)それに引き続き、少なくとも1種の前記モノマーの残量を、重合条件下でその消費に応じて連続的に添加する
ことにより特徴付けられる。
本発明による方法は同様に、本出願人により出願番号09157984.7を有する優先権の基礎となる欧州特許出願に基づくまだ公開されていない特許出願PCT/EP2010/054332に開示された手順―この参照により本明細書の範囲内に明らかに含まれるものとする―により製造された、そのような複合化粒子の水性分散液に有利に適している。この手順は、少なくとも1種のエチレン系不飽和モノマーを水性媒体中で分散分布させ、かつ少なくとも1種のラジカル重合開始剤を用いて、少なくとも1種の分散分布された微粒状無機固体及び少なくとも1種の分散助剤の存在下で、ラジカル水性乳化重合の方法により重合させ、その際に
a)エチレン系不飽和モノマーの全量(全モノマー量)を基準として、≦100nmの平均粒度を有する無機固体1〜1000質量%及びラジカル重合開始剤0.05〜2質量%を使用し、
b)前記無機固体の少なくとも部分量を、水性重合媒体中へ水性固体分散液の形で装入し、それに引き続き
c)得られた水性固体分散液に、全モノマー量のうち全部で≧0.01かつ≦20質量%及びラジカル重合開始剤の全量のうち≧60質量%を計量供給し、かつ計量供給されたエチレン系不飽和モノマーを、重合条件下で≧80質量%のモノマー転化率まで重合させ(重合段階1)、それに引き続き、得られた重合混合物に
d)前記無機固体の場合により残っている残量、前記ラジカル重合開始剤の場合により残っている残量及び前記エチレン系不飽和モノマーの残っている残量を重合条件下で計量供給し、かつ≧90質量%のモノマー転化率まで重合させる(重合段階2)
ことにより特徴付けられる。
国際公開(WO)第03000760号に開示された方法のためには、≧1質量%の初期固体濃度で、少なくとも1種の前記無機固体の水性分散液を基準として、その製造1時間後になお、撹拌又は振とうせずに、当初に分散された固体の90質量%超を分散された形で含有し、かつその分散された固体粒子が≦100nmの直径を有し、かつ更にまた前記分散剤の添加の開始前の前記水性反応媒体のpH値に相当するpH値で、ゼロとは異なる電気泳動移動度を示す、安定な水性分散液を形成する、全ての微粒状無機固体が適している。
その初期固体濃度及び1時間後の固体濃度定量測定並びにその粒子直径の決定は、分析用超遠心機の方法により行われる(これについてはS.E. Harding et al., Analytical Ultracentrifugation in Biochemistry and Polymer Science, Royal Society of Chemistry, Cambridge, Great Britain 1992, 10章, Analysis of Polymer Dispersions with an Eight-Cell-AUC-Multiplexer: High Resolution Particle Size Distribution and Density Gradient Techniques, W. Maechtle, pp.147-175を参照)。前記粒子直径で記載される値は、いわゆるd50値に相当する。
その電気泳動移動度を決定する方法は当業者に知られている(例えばR.J. Hunter, Introduction to modern Colloid Science, 8.4章, pp.241-248, Oxford University Press, Oxford, 1993並びにK. Oka及びK. Furusawa, Electrical Phenomena at Interfaces, Surfactant Science Series, Vol. 76, 8章, pp.151-232, Marcel Dekker, New York, 1998を参照)。水性反応媒体中に分散された固体粒子の電気泳動移動度は、市販の電気泳動装置、例えばMalvern Instruments Ltd.社のZetasizer 3000を用いて、20℃及び1bar(絶対)で決定される。このためには、前記水性固体粒子分散液は、pHが中性の10ミリモル濃度の(mM)塩化カリウム水溶液(標準塩化カリウム溶液)で、前記固体粒子濃度が、約50〜100mg/lになるまで希釈される。前記分散剤の添加の開始前の前記水性反応媒体が有するpH値への前記測定試料の調節は、通常の無機酸、例えば希塩酸又は希硝酸又は塩基、例えば希釈されたカセイソーダ液又はカセイカリ液を用いて行われる。電場中での分散された固体粒子の移動は、いわゆる電気泳動光散乱を用いて検出される(例えばB.R. Ware及びW.H. Flygare, Chem. Phys. Lett. 1971, 12, pp.81-85を参照)。その際に、電気泳動移動度の符号は、分散された固体粒子の移動方向により定義され、すなわち分散された固体粒子がカソードの方へ移動する場合には、それらの電気泳動移動度は正であり、それとは異なり分散された固体粒子がアノードの方へ移動する場合には、それらの電気泳動移動度は負である。
分散された固体粒子の電気泳動移動度をある範囲内で影響させるか又は調節するのに適したパラメーターは、前記水性反応媒体のpH値である。分散された固体粒子のプロトン化もしくは脱プロトン化により、その電気泳動移動度は、酸性pH範囲内(pH値<7)で正の方向へ及びアルカリ性範囲内(pH値>7)で負の方向へ変わる。国際公開(WO)第03000760号に開示された方法に適したpH範囲は、ラジカルにより開始される水性乳化重合を実施することができるpH範囲内である。このpH範囲は通例pH1〜12、頻繁にpH1.5〜11及びしばしばpH2〜10である。
前記水性反応媒体のpH値は、市販の酸、例えば希塩酸、希硝酸又は希硫酸又は塩基、例えば希釈されたカセイソーダ液又はカセイカリ液を用いて、調節することができる。頻繁に、pH調節に使用される酸量又は塩基量のうち部分量又は全量を前記水性反応媒体に、少なくとも1種の前記微粒状無機固体の前に添加する場合が好都合である。
国際公開(WO)第03000760号により開示された方法のために有利であるのは、分散された固体粒子が前記のpH条件下で
・負の符号を有する電気泳動移動度を有し、少なくとも1種の前記エチレン系不飽和モノマー100質量部あたり、0.01〜10質量部、好ましくは0.05〜5質量部及び特に好ましくは0.1〜3質量部の少なくとも1種のカチオン分散剤、0.01〜100質量部、好ましくは0.05〜50質量部及び特に好ましくは0.1〜20質量部の少なくとも1種の非イオン分散剤及び少なくとも1種のアニオン分散剤を使用し、その際にその量は、カチオン分散剤に対するアニオン分散剤の当量比が1よりも大きいように調節するか、又は
・正の符号を有する電気泳動移動度を有し、少なくとも1種の前記エチレン系不飽和モノマー100質量部あたり、0.01〜10質量部、好ましくは0.05〜5質量部及び特に好ましくは0.1〜3質量部の少なくとも1種のアニオン分散剤、0.01〜100質量部、好ましくは0.05〜50質量部及び特に好ましくは0.1〜20質量部の少なくとも1種の非イオン分散剤及び少なくとも1種のカチオン分散剤を使用し、その際にその量は、アニオン分散剤に対するカチオン分散剤の当量比が1よりも大きいように調節する
場合である。
カチオン分散剤に対するアニオン分散剤の当量比は、アニオン分散剤1モルあたり含まれるアニオン基の数を掛けた、前記アニオン分散剤の使用されるモル数の、カチオン分散剤1モルあたり含まれるカチオン基の数を掛けた、前記カチオン分散剤の使用されるモル数により除した比であると理解される。相応することはアニオン分散剤に対するカチオン分散剤の当量比に当てはまる。
国際公開(WO)第03000760号により使用される少なくとも1種のアニオン分散剤、カチオン分散剤及び非イオン分散剤の全量を、前記水性固体分散液中へ装入することができる。しかしながら、前記の分散剤の部分量のみを、前記水性固体分散液中へ装入し、かつ残っている残量を、前記ラジカル乳化重合中に連続的に又は不連続に添加することも可能である。しかしながら、方法に本質的であるのは、ラジカルにより開始される前記乳化重合前及び乳化重合中に、アニオン分散剤及びカチオン分散剤の前記の当量比が、前記微粒状固体の電気泳動の符号に応じて維持されることである。ゆえに、前記のpH条件下で負の符号を有する電気泳動移動度を有する無機固体粒子が使用される場合には、カチオン分散剤に対するアニオン分散剤の当量比が、全乳化重合中に1よりも大きくなければならない。相応して、正の符号を有する電気泳動移動度を有する無機固体粒子の場合に、アニオン分散剤に対するカチオン分散剤の当量比が、全乳化重合中に1よりも大きくなければならない。好都合であるのは、前記当量比が≧2、≧3、≧4、≧5、≧6、≧7、又は≧10である場合であり、その際に2〜5の範囲内の当量比が特に好都合である。
前記の明示的に開示された双方の方法に並びに一般的に複合化粒子の製造に使用可能な微粒状無機固体は、金属、金属化合物、例えば金属酸化物及び金属塩、しかし半金属化合物及び非金属化合物も適している。微粒状金属粉末として、貴金属コロイド、例えばパラジウム、銀、ルテニウム、白金、金及びロジウム並びにこれらを含有する合金を使用することができる。微粒状金属酸化物として例示的に挙げられるのは、二酸化チタン(例えばSachtleben Chemie GmbH社のHombitec(登録商標)銘柄として商業的に入手可能)、酸化ジルコニウム(IV)、酸化スズ(II)、酸化スズ(IV)(例えばNyacol Nano Technologies Inc.社のNyacol(登録商標) SN銘柄として商業的に入手可能)、酸化アルミニウム(例えばNyacol Nano Technologies Inc.社のNyacol(登録商標) AL銘柄として商業的に入手可能)、酸化バリウム、酸化マグネシウム、多様な酸化鉄、例えば酸化鉄(II(ウスタイト)、酸化鉄(III)(赤鉄鉱)及び酸化鉄(II/III)(磁鉄鉱)、酸化クロム(III)、酸化アンチモン(III)、酸化ビスマス(III)、酸化亜鉛(例えばSachtleben Chemie GmbH社のSachtotec(登録商標)銘柄として商業的に入手可能)、酸化ニッケル(II)、酸化ニッケル(III)、酸化コバルト(II)、酸化コバルト(III)、酸化銅(II)、酸化イットリウム(III)(例えばNyacol Nano Technologies Inc.社のNyacol(登録商標) YTTRIA銘柄として商業的に入手可能)、酸化セリウム(IV)(例えばNyacol Nano Technologies Inc.社のNyacol(登録商標) CE02銘柄として商業的に入手可能)、無定形及び/又はそれらの多様な結晶変態での、並びにそれらのヒドロキシオキシド、例えばヒドロキシチタン(IV)オキシド、ヒドロキシジルコニウム(IV)オキシド、ヒドロキシアルミニウムオキシド(例えばSasol GmbH社のDisperal(登録商標)銘柄として商業的に入手可能)及びヒドロキシ鉄(III)オキシド、無定形及び/又はそれらの多様な結晶変態での。次の無定形及び/又はそれらの多様な結晶構造で存在している金属塩は、本発明による方法において原則的に使用可能である:硫化物、例えば硫化鉄(II)、硫化鉄(III)、二硫化鉄(II)(黄鉄鉱)、硫化スズ(II)、硫化スズ(IV)、硫化水銀(II)、硫化カドミウム(II)、硫化亜鉛、硫化銅(II)、硫化銀、硫化ニッケル(II)、硫化コバルト(II)、硫化コバルト(III)、硫化マンガン(II)、硫化クロム(III)、硫化チタン(II)、硫化チタン(III)、硫化チタン(IV)、硫化ジルコニウム(IV)、硫化アンチモン(III)、硫化ビスマス(III)、水酸化物、例えば水酸化スズ(II)、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化亜鉛、水酸化鉄(II)、水酸化鉄(III)、硫酸塩、例えば硫酸カルシウム、硫酸ストロンチウム、硫酸バリウム、硫酸鉛(IV)、炭酸塩、例えば炭酸リチウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、炭酸ジルコニウム(IV)、炭酸鉄(II)、炭酸鉄(III)、オルトリン酸塩、例えばオルトリン酸リチウム、オルトリン酸カルシウム、オルトリン酸亜鉛、オルトリン酸マグネシウム、オルトリン酸アルミニウム、オルトリン酸スズ(III)、オルトリン酸鉄(II)、オルトリン酸鉄(III)、メタリン酸塩、例えばメタリン酸リチウム、メタリン酸カルシウム、メタリン酸アルミニウム、ピロリン酸塩、例えばピロリン酸マグネシウム、ピロリン酸カルシウム、ピロリン酸亜鉛、ピロリン酸鉄(III)、ピロリン酸スズ(II)、リン酸アンモニウム類、例えばリン酸マグネシウムアンモニウム、リン酸亜鉛アンモニウム、ヒドロキシアパタイト[Ca5{(PO4)3OH}]、オルトケイ酸塩、例えばオルトケイ酸リチウム、オルトケイ酸カルシウム/マグネシウム、オルトケイ酸アルミニウム、オルトケイ酸鉄(II)、オルトケイ酸鉄(III)、オルトケイ酸マグネシウム、オルトケイ酸亜鉛、オルトケイ酸ジルコニウム(III)、オルトケイ酸ジルコニウム(IV)、メタケイ酸塩、例えばメタケイ酸リチウム、メタケイ酸カルシウム/マグネシウム、メタケイ酸カルシウム、メタケイ酸マグネシウム、メタケイ酸亜鉛、層状ケイ酸塩、例えばケイ酸ナトリウムアルミニウム及びケイ酸ナトリウムマグネシウム、特に自発的に離層する形での、例えばOptigel(登録商標) SH(Rockwood Specialties Inc.の商品名)、Saponit(登録商標) SKS-20及びHektorit(登録商標) SKS 21(Hoechst AGの商品名)並びにLaponite(登録商標) RD及びLaponite(登録商標) GS (Rockwood Specialties Inc.の商品名)、アルミン酸塩、例えばアルミン酸リチウム、アルミン酸カルシウム、アルミン酸亜鉛、ホウ酸塩、例えばメタホウ酸塩マグネシウム、オルトホウ酸マグネシウム、シュウ酸塩、例えばシュウ酸カルシウム、シュウ酸ジルコニウム(IV)、シュウ酸マグネシウム、シュウ酸亜鉛、シュウ酸アルミニウム、酒石酸塩、例えば酒石酸カルシウム、アセチルアセトナート、例えばアルミニウムアセチルアセトナート、鉄(III)アセチルアセトナート、サリチル酸塩、例えばサリチル酸アルミニウム、クエン酸塩、例えばクエン酸カルシウム、クエン酸鉄(II)、クエン酸亜鉛、パルミチン酸塩、例えばパルミチン酸アルミニウム、パルミチン酸カルシウム、パルミチン酸マグネシウム、ステアリン酸塩、例えばステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ラウリン酸塩、例えばラウリン酸カルシウム、リノール酸塩、例えばリノール酸カルシウム、オレイン酸塩、例えばオレイン酸カルシウム、オレイン酸鉄(II)又はオレイン酸亜鉛。
本質的な使用可能な半金属化合物として、無定形及び/又は多様な結晶構造で存在している二酸化ケイ素が挙げられる。相応して適した二酸化ケイ素は、商業的に入手可能であり、かつ例えばAerosil(登録商標)(Evonik Industries AG社の商品名)、Levasil(登録商標)(H.C. Starck GmbH社の商品名)、Ludox(登録商標)(DuPont社の商品名)、Nyacol(登録商標)(Nyacol Nano-Technologies Inc.社の商品名)、Bindzil(登録商標)(Akzo Nobel N.V.社の商品名)、Nalco(登録商標)(Nalco Chemical Company社の商品名)及びSnowtex(登録商標)(Nissan Chemistries, Ltd.社の商品名)として購入することができる。適した非金属化合物は、例えばコロイド状で存在しているグラファイト又はダイヤモンドである。
微粒状無機固体として、20℃及び1bar(絶対)での水への溶解度が≦1g/l、好ましくは≦0.1g/l及び特に≦0.01g/lであるものが特に適している。特に好ましいのは、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化スズ(IV)、酸化イットリウム(III)、酸化セリウム(IV)、ヒドロキシアルミニウムオキシド、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、オルトリン酸カルシウム、オルトリン酸マグネシウム、メタリン酸カルシウム、メタリン酸マグネシウム、ピロリン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、オルトケイ酸塩、例えばオルトケイ酸リチウム、オルトケイ酸カルシウム/マグネシウム、オルトケイ酸アルミニウム、オルトケイ酸鉄(II)、オルトケイ酸鉄(III)、オルトケイ酸マグネシウム、オルトケイ酸亜鉛、オルトケイ酸ジルコニウム(III)、オルトケイ酸ジルコニウム(IV)、メタケイ酸塩、例えばメタケイ酸リチウム、メタケイ酸カルシウム/マグネシウム、メタケイ酸カルシウム、メタケイ酸マグネシウム、メタケイ酸亜鉛、層状ケイ酸塩、例えばケイ酸ナトリウムアルミニウム及びケイ酸ナトリウムマグネシウム、特に自発的に離層する形での、例えばOptigel(登録商標) SH、Saponit(登録商標) SKS-20及びHektorit(登録商標) SKS 21並びにLaponite(登録商標) RD及びLaponite(登録商標) GS、酸化鉄(II)、酸化鉄(III)、酸化鉄(II/III)、二酸化チタン、ヒドロキシアパタイト、酸化亜鉛及び硫化亜鉛を含む群から選択されている化合物である。特に好ましいのは、含ケイ素化合物、例えば熱分解シリカ及び/又はコロイドシリカ、二酸化ケイ素ゾル及び/又は層状ケイ酸塩である。頻繁に、これらの含ケイ素化合物は、負の符号を有する電気泳動移動度を有する。
有利に、Aerosil(登録商標)銘柄、Levasil(登録商標)銘柄、Ludox(登録商標)銘柄、Nyacol(登録商標)銘柄及びBindzil(登録商標)銘柄(二酸化ケイ素)、Disperal(登録商標)銘柄(ヒドロキシアルミニウムオキシド)、Nyacol(登録商標) AL銘柄(酸化アルミニウム)、Hombitec(登録商標)銘柄(二酸化チタン)、Nyacol(登録商標) SN銘柄(酸化スズ(IV))、Nyacol(登録商標) YTTRIA銘柄(酸化イットリウム(III))、Nyacol(登録商標) CEO2銘柄(酸化セリウム(IV)及びSachtotec(登録商標)銘柄(酸化亜鉛)の商業的に入手可能な化合物も前記の方法において並びに一般的に複合化粒子の水性分散液の製造に使用することができる。
前記複合化粒子の製造に使用可能な微粒状無機固体は、水性反応媒体中に分散された固体粒子が、≦100nmの粒子直径を有するような状態のものである。成功のうちに、分散された粒子が、>0nm、しかし≦90nm、≦80nm、≦70nm、≦60nm、≦50nm、≦40nm、≦30nm、≦20nm又は≦10nmの粒子直径及びその間の全ての値を有する微粒状無機固体が使用される。有利には、≦50nmの粒子直径を有する微粒状無機固体が使用される。粒子直径の決定は、分析用超遠心機の方法を用いて行われる。
微粒状固体の手に入れやすさは、当業者に原則的に知られており、かつ例えば沈殿反応又は気相中での化学反応により行われる(これについてはE. Matijevic, Chem. Mater. 1993, 5, pp.412-426;Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, Vol. A 23, pp.583-660, Verlag Chemie, Weinheim, 1992;D.F. Evans, H. Wennerstroem, The Colloidal Domain, pp.363-405, Verlag Chemie, Weinheim, 1994及びR.J. Hunter, Foundations of Colloid Science, Vol. I, pp.10-17, Clarendon Press, Oxford, 1991を参照)。
安定な前記固体分散液の製造は頻繁に、水性媒体中での前記微粒状無機固体の合成の際に直接、又は選択的に前記水性媒体中への前記微粒状無機固体の分散導入により行われる。前記微粒状無機固体の製造経路に依存して、これは、例えば沈降又は熱分解の二酸化ケイ素、酸化アルミニウム等の場合に直接、又は適した補助装置、例えば分散機又は超音波ホーン(Ultraschallsonotroden)の助けをかりて、うまくいく。
前記の明示的に開示された双方の方法による前記複合化粒子の水性分散液の製造のために有利には、水性固体分散液が≧1質量%の初期固体濃度で、前記微粒状無機固体の水性分散液を基準として、その製造1時間後になお、もしくは沈降された固体の撹拌又は振とうにより、さらに撹拌又は振とうせずに当初に分散された固体の90質量%超を分散された形で含有し、かつ分散された固体粒子が≦100nmの直径を有する、微粒状無機固体が適している。通常、初期固体濃度は≦60質量%である。しかしながら、有利に、前記微粒状無機固体の水性分散液を基準として、それぞれ、≦55質量%、≦50質量%、≦45質量%、≦40質量%、≦35質量%、≦30質量%、≦25質量%、≦20質量%、≦15質量%、≦10質量%並びに≧2質量%、≧3質量%、≧4質量%又は≧5質量%の初期固体濃度及びその間の全ての値を使用することもできる。少なくとも1種の前記エチレン系不飽和モノマー100質量部を基準として、複合化粒子の水性分散液の製造の際に、頻繁に1〜1000質量部、通例5〜300質量部及びしばしば10〜200質量部の少なくとも1種の前記微粒状無機固体が使用される。
前記の明示的に開示された双方の複合化粒子の水性分散液の製造の際に、前記微粒状無機固体粒子並びに前記モノマー小滴及び形成された複合化粒子を前記水相中に分散分布して保持し、こうして生成された複合化粒子の水性分散液の安定性を保証する、分散剤が併用される。分散剤として、ラジカル水性乳化重合の実施に通常使用される保護コロイド並びに乳化剤が考慮に値する。
適した保護コロイドの詳細な説明はHouben-Weyl, Methoden der organischen Chemie, XIV/1巻, Makromolekulare Stoffe, Georg-Thieme-Verlag, Stuttgart, 1961, pp.411-420に見出される。
適した中性の保護コロイドは、例えばポリビニルアルコール、ポリアルキレングリコール、セルロース誘導体、デンプン誘導体及びゼラチン誘導体である。
アニオン性の保護コロイド、すなわち分散作用のある成分が少なくとも1つの負の電荷を有する保護コロイドとして、例えばポリアクリル酸及びポリメタクリル酸及びそれらのアルカリ金属塩、アクリル酸、メタクリル酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、4−スチレンスルホン酸及び/又は無水マレイン酸を含有するコポリマー及びそれらのアルカリ金属塩並びに高分子化合物、例えばポリスチレンのスルホン酸のアルカリ金属塩が考慮に値する。
適したカチオン性の保護コロイド、すなわち分散作用のある成分が少なくとも1つの正の電荷を有する保護コロイドは、例えばN−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルカルバゾール、1−ビニルイミダゾール、2−ビニルイミダゾール、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、アクリルアミド、メタクリルアミドの窒素上でプロトン化された及び/又はアルキル化された誘導体、アミン基を有するアクリラート、メタクリラート、アクリルアミド及び/又はメタクリルアミドを含有するホモポリマー及びコポリマーである。
もちろん、乳化剤及び/又は保護コロイドの混合物を使用することもできる。頻繁に、分散剤として専ら、相対分子量が前記保護コロイドとは異なって通常1500未満である乳化剤が使用される。もちろん、界面活性物質の混合物の使用の場合に個々の成分が互いに相溶性でなければならず、このことは疑わしい場合には若干の予備試験を用いて調べることができる。適した乳化剤の概要は、Houben-Weyl, Methoden der organischen Chemie, XIV/1巻, Makromolekulare Stoffe, Georg-Thieme-Verlag, Stuttgart, 1961, pp.192-208に見出される。
一般に使われている非イオン乳化剤は、例えばエトキシル化されたモノアルキルフェノール類、ジアルキルフェノール類及びトリアルキルフェノール類(EO度:3〜50、アルキル基:C4〜C12)並びにエトキシル化脂肪アルコール(EO度:3〜80;アルキル基:C8〜C36)である。これらの例は、BASF AGのLutensol(登録商標) A銘柄(C12C14−脂肪アルコールエトキシラート、EO度:3〜8)、Lutensol(登録商標) AO銘柄(C13C15−オキソアルコールエトキシラート、EO度:3〜30)、Lutensol(登録商標) AT銘柄(C16C18−脂肪アルコールエトキシラート、EO度:11〜80)、Lutensol(登録商標) ON銘柄(C10−オキソアルコールエトキシラート、EO度:3〜11)及びLutensol(登録商標) TO銘柄(C13−オキソアルコールエトキシラート、EO度:3〜20)である。
常用のアニオン乳化剤は、例えばアルキル硫酸の(アルキル基:C8〜C12)の、エトキシル化アルカノール(EO度:4〜30、アルキル基:C12〜C18)及びエトキシル化アルキルフェノール類(EO度:3〜50、アルキル基:C4〜C12)の硫酸ハーフエステルの、アルキルスルホン酸(アルキル基:C12〜C18)の及びアルキルアリールスルホン酸(アルキル基:C9〜C18)の、アルカリ金属塩及びアンモニウム塩である。
別のアニオン乳化剤として、更に、一般式II
[式中、R
a及びR
bは、水素原子又はC
4〜C
24−アルキルを意味し、かつ同時に水素原子ではなく、かつA及びBは、アルカリ金属イオン及び/又はアンモニウムイオンであってよい]の化合物が判明している。一般式II中で、R
a及びR
bは好ましくは、炭素原子6〜18個、特に炭素原子6、12及び16個を有する線状又は分枝鎖状のアルキル基又は−Hを表し、その際にR
a及びR
bは双方とも同時に水素原子ではない。A及びBは、好ましくはナトリウム、カリウム又はアンモニウムであり、その際にナトリウムが特に好ましい。特に有利であるのは、A及びBがナトリウムであり、R
aが炭素原子12個を有する分枝鎖状アルキル基であり、かつR
bが水素原子又はR
aである、化合物IIである。頻繁に、そのモノアルキル化産物50〜90質量%の割合を有する工業用混合物、例えばDowfax
(登録商標) 2A1(Dow Chemical Companyの商品名)が使用される。化合物IIは、一般的に、例えば米国特許(US-A)第4269749号明細書から、知られており、かつ商業的に入手可能である。
適したカチオン活性乳化剤は、通例C6〜C18−アルキル基、C6〜C18−アラルキル基又はヘテロ環式基を有する第一級、第二級、第三級又は第四級のアンモニウム塩、アルカノールアンモニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩、オキサゾリニウム塩、モルホリニウム塩、チアゾリニウム塩並びにアミンオキシドの塩、キノリニウム塩、イソキノリニウム塩、トロピリウム塩、スルホニウム塩及びホスホニウム塩である。例示的に挙げられるのは、ドデシルアンモニウムアセタート又は相応する塩酸塩、多様な2−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)エチルパラフィン酸エステルの塩化物又は酢酸塩、N−セチルピリジニウムクロリド、N−ラウリルピリジニウムスルファート並びにN−セチル−N,N,N−トリメチルアンモニウムブロミド、N−ドデシル−N,N,N−トリメチルアンモニウムブロミド、N−オクチル−N,N,N−トリメチルアンモニウムブロミド、N,N−ジステアリル−N,N−ジメチルアンモニウムクロリド並びにジェミニ界面活性剤N,N′−(ラウリルジメチル)エチレンジアミンジブロミドである。多数の別の例は、H. Stache, Tensid-Taschenbuch, Carl-Hanser-Verlag, Muenchen, Wien, 1981及びMcCutcheon's, Emulsifiers & Detergents, MC Publishing Company, Glen Rock, 1989に見出される。
頻繁に、前記複合化粒子の水性分散液の製造のために、複合化粒子の水性分散液の全量を基準として、それぞれ、0.1〜10質量%、しばしば0.5〜7.0質量%及び頻繁に1.0〜5.0質量%の分散剤が使用される。好ましくは乳化剤が使用される。
前記複合化粒子の製造には、エチレン系不飽和モノマーとして、とりわけ特に単純にはラジカル重合可能なモノマー、例えばエチレン、ビニル芳香族モノマー、例えばスチレン、α−メチルスチレン、o−クロロスチレン又はビニルトルエン、ビニルアルコールと炭素原子1〜18個を有するモノカルボン酸とのエステル、例えばビニルアセタート、ビニルプロピオナート、ビニルn−ブチラート、ビニルラウラート及びビニルステアラート、好ましくは炭素原子3〜6個を有するα,β−モノエチレン系不飽和のモノカルボン酸及びジカルボン酸、例えば特にアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸及びイタコン酸と、一般的に炭素原子1〜12個、好ましくは1〜8個及び特に1〜4個を有するアルカノールとのエステル、例えば特にアクリル酸及びメタクリル酸のメチルエステル、エチルエステル、n−ブチルエステル、イソブチルエステル及び2−エチルヘキシルエステル、マレイン酸ジメチルエステル又はマレイン酸−ジ−n−ブチルエステル、α,β−モノエチレン系不飽和カルボン酸のニトリル、例えばアクリロニトリル並びにC4〜8−共役ジエン、例えば1,3−ブタジエン及びイソプレンが考慮に値する。前記のモノマーは、通例、本発明による方法により重合すべきモノマーの全量を基準として、一緒になって通常≧50質量%、≧80質量%又は≧90質量%の割合を有する、主モノマーを形成する。通例、これらのモノマーは、標準状態[20℃、1atm=1.013bar絶対]で水への単に中程度ないし僅かな溶解度を有する。
通常、前記ポリマーマトリックスの皮膜形成の内部強さを高めるモノマーは、通常、少なくとも1個のエポキシ基、ヒドロキシ基、N−メチロール基又はカルボニル基、又は少なくとも2個の非共役エチレン系不飽和二重結合を有する。これらの例は、ビニル基を2個有するモノマー、ビニリデン基を2個有するモノマー並びにアルケニル基を2個有するモノマーである。特に有利であるのは、その際に2価アルコールとα,β−モノエチレン系不飽和モノカルボン酸とのジエステルであり、それらのモノカルボン酸の中でアクリル酸及びメタクリル酸が好ましい。この種の非共役エチレン系不飽和二重結合を2個有するモノマーの例は、アルキレングリコールジアクリラート及びアルキレングリコールジメタクリラート、例えばエチレングリコールジアクリラート、1,2−プロピレングリコールジアクリラート、1,3−プロピレングリコールジアクリラート、1,3−ブチレングリコールジアクリラート、1,4−ブチレングリコールジアクリラート及びエチレングリコールジメタクリラート、1,2−プロピレングリコールジメタクリラート、1,3−プロピレングリコールジメタクリラート、1,3−ブチレングリコールジメタクリラート、1,4−ブチレングリコールジメタクリラート並びにジビニルベンゼン、ビニルメタクリラート、ビニルアクリラート、アリルメタクリラート、アリルアクリラート、ジアリルマレアート、ジアリルフマラート、メチレンビスアクリルアミド、シクロペンタジエニルアクリラート、トリアリルシアヌラート又はトリアリルイソシアヌラートである。これに関連して特に重要であるのは、メタクリル酸C1〜C8−ヒドロキシアルキルエステル及びアクリル酸C1〜C8−ヒドロキシアルキルエステル、例えばn−ヒドロキシエチルアクリラート、n−ヒドロキシプロピルアクリラート又はn−ヒドロキシブチルアクリラート及びn−ヒドロキシエチルメタクリラート、n−ヒドロキシプロピルメタクリラート及びn−ヒドロキシブチルメタクリラート並びに化合物、例えばジアセトンアクリルアミド及びアセチルアセトキシエチルアクリラートもしくはアセチルアセトキシエチルメタクリラートでもある。エポキシド基含有モノマーの例は、グリシジルアクリラート及びグリシジルメタクリラートである。本発明によれば、前記のモノマーは、重合すべきモノマーの全量を基準として、5質量%までの量で重合導入される。
頻繁に、前記のモノマーに加え、付加的に少なくとも1種のケイ素含有官能基を有するエチレン系不飽和モノマー(シランモノマー)、例えばビニルアルコキシシラン、例えば特にビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、ビニルトリス(ジメチルシロキシ)シラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリス(3−メトキシプロポキシ)シラン及び/又はビニルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、アクリルオキシシラン、例えば特に2−(アクリルオキシエトキシ)トリメチルシラン、アクリルオキシメチルトリメチルシラン、(3−アクリルオキシプロピル)ジメチルメトキシシラン、(3−アクリルオキシプロピル)−メチルビス(トリメチルシロキシ)シラン、(3−アクリルオキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(3−アクリルオキシプロピル)トリメトキシシラン及び/又は(3−アクリルオキシプロピル)トリス(トリメチルシロキシ)シラン、メタクリルオキシシラン、例えば特に(3−メタクリルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(3−メタクリルオキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(3−メタクリルオキシプロピル)ジメチルメトキシシラン、(3−メタクリルオキシプロピル)トリエトキシシラン(メタクリルオキシメチル)メチルジエトキシシラン及び/又は(3−メタクリルオキシプロピル)メチルジエチルオキシシランを使用することが有利でありうる。本発明によれば特に有利であるのは、アクリルオキシシラン及び/又はメタクリルオキシシラン、特にメタクリルオキシシラン、例えば好ましくは(3−メタクリルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(3−メタクリルオキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(3−メタクリルオキシプロピル)ジメチルメトキシシラン、(3−メタクリルオキシプロピル)トリエトキシシラン、(メタクリルオキシメチル)メチルジエトキシシラン及び/又は(3−メタクリルオキシプロピル)メチルジエトキシシランである。シランモノマーの量は、全モノマー量を基準として、それぞれ、≧0.01かつ≦10質量%、有利に≧0.1かつ≦5質量%及び特に有利に≧0.1及び≦2質量%である。
それに加えて、モノマーとして、付加的に、少なくとも1個の酸基及び/又はそれらの相応するアニオンを有するエチレン系不飽和モノマーX(国際公開(WO)第03000760号におけるモノマーAに相当)又は少なくとも1個のアミノ基、アミド基、ウレイド基又はN−ヘテロ環式基及び/又は窒素上でプロトン化された又はアルキル化されたアンモニウム誘導体を有するエチレン系不飽和モノマーY(国際公開(WO)第03000760号におけるモノマーBに相当)を使用することができる。全モノマー量を基準として、モノマーXもしくはモノマーYの量は、10質量%まで、しばしば0.1〜7質量%及び頻繁に0.2〜5質量%である。
モノマーXとして、酸基を少なくとも1個有するエチレン系不飽和モノマーが使用される。その際に、前記酸基は例えばカルボン酸基、スルホン酸基、硫酸基、リン酸基及び/又はホスホン酸基であってよい。モノマーXの例は、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、4−スチレンスルホン酸、2−メタクリルオキシエチルスルホン酸、ビニルスルホン酸及びビニルホスホン酸並びにn−ヒドロキシアルキルアクリラート及びn−ヒドロキシアルキルメタクリラートのリン酸モノエステル、例えばヒドロキシエチルアクリラート、n−ヒドロキシプロピルアクリラート、n−ヒドロキシブチルアクリラート及びヒドロキシエチルメタクリラート、n−ヒドロキシプロピルメタクリラート又はn−ヒドロキシブチルメタクリラートのリン酸モノエステルである。しかし、本発明によれば、前記の酸基を少なくとも1個有するエチレン系不飽和モノマーのアンモニウム塩及びアルカリ金属塩も使用することができる。アルカリ金属として特に好ましいのは、ナトリウム及びカリウムである。これらの例は、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、4−スチレンスルホン酸、2−メタクリルオキシエチルスルホン酸、ビニルスルホン酸及びビニルホスホン酸のアンモニウム塩、ナトリウム塩及びカリウム塩並びにヒドロキシエチルアクリラート、n−ヒドロキシプロピルアクリラート、n−ヒドロキシブチルアクリラート及びヒドロキシエチルメタクリラート、n−ヒドロキシプロピルメタクリラート又はn−ヒドロキシブチルメタクリラートのリン酸モノエステルのモノアンモニウム塩及びジアンモニウム塩、モノナトリウム塩及びジナトリウム塩及びモノカリウム塩及びジカリウム塩である。
好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、4−スチレンスルホン酸、2−メタクリルオキシエチルスルホン酸、ビニルスルホン酸及びビニルホスホン酸が使用される。
モノマーYとして、少なくとも1個のアミノ基、アミド基、ウレイド基又はN−ヘテロ環式基及び/又は窒素上でプロトン化された又はアルキル化されたアンモニウム誘導体を有するエチレン系不飽和モノマーが使用される。
アミノ基を少なくとも1個有するモノマーYの例は、2−アミノエチルアクリラート、2−アミノエチルメタクリラート、3−アミノプロピルアクリラート、3−アミノプロピルメタクリラート、4−アミノ−n−ブチルアクリラート、4−アミノ−n−ブチルメタクリラート、2−(N−メチルアミノ)エチルアクリラート、2−(N−メチルアミノ)−エチルメタクリラート、2−(N−エチルアミノ)エチルアクリラート、2−(N−エチルアミノ)エチルメタクリラート、2−(N−n−プロピルアミノ)エチルアクリラート、2−(N−n−プロピルアミノ)エチルメタクリラート、2−(N−イソプロピルアミノ)エチルアクリラート、2−(N−イソプロピルアミノ)エチルメタクリラート、2−(N−t−ブチルアミノ)エチルアクリラート、2−(N−t−ブチルアミノ)エチルメタクリラート(例えばArkema Inc.社のNorsocryl(登録商標) TBAEMAとして商業的に入手可能)、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルアクリラート(例えばArkema Inc.社のNorsocryl(登録商標) ADAMEとして商業的に入手可能)、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルメタクリラート(例えばArkema Inc.社のNorsocryl(登録商標) MADAMEとして商業的に入手可能)、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチルアクリラート、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチルメタクリラート、2−(N,N−ジ−n−プロピルアミノ)エチルアクリラート、2−(N,N−ジ−n−プロピルアミノ)エチルメタクリラート、2−(N,N−ジ−イソプロピルアミノ)エチルアクリラート、2−(N,N−ジ−イソプロピルアミノ)エチルメタクリラート、3−(N−メチルアミノ)プロピルアクリラート、3−(N−メチルアミノ)プロピルメタクリラート、3−(N−エチルアミノ)プロピルアクリラート、3−(N−エチルアミノ)プロピルメタクリラート、3−(N−n−プロピルアミノ)プロピルアクリラート、3−(N−n−プロピルアミノ)プロピルメタクリラート、3−(N−イソプロピルアミノ)プロピルアクリラート、3−(N−イソプロピルアミノ)プロピルメタクリラート、3−(N−t−ブチルアミノ)プロピルアクリラート、3−(N−t−ブチルアミノ)プロピルメタクリラート、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルアクリラート、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルメタクリラート、3−(N,N−ジエチルアミノ)プロピルアクリラート、3−(N,N−ジエチルアミノ)プロピルメタクリラート、3−(N,N−ジ−n−プロピルアミノ)プロピルアクリラート、3−(N,N−ジ−n−プロピルアミノ)プロピルメタクリラート、3−(N,N−ジ−イソプロピルアミノ)プロピルアクリラート及び3−(N,N−ジ−イソプロピルアミノ)プロピルメタクリラートである。
アミド基を少なくとも1個有するモノマーYの例は、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−n−プロピルアクリルアミド、N−n−プロピルメタクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、N−t−ブチルアクリルアミド、N−t−ブチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、N,N−ジ−n−プロピルアクリルアミド、N,N−ジ−n−プロピルメタクリルアミド、N,N−ジ−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジ−イソプロピルメタクリルアミド、N,N−ジ−n−ブチルアクリルアミド、N,N−ジ−n−ブチルメタクリルアミド、N−(3−N′,N′−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N,N′−メチレンビスアクリルアミド、N−(ジフェニルメチル)アクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、しかしまたN−ビニルピロリドン及びN−ビニルカプロラクタムである。
ウレイド基を少なくとも1個有するモノマーYの例は、N,N′−ジビニルエチレン尿素及び2−(1−イミダゾリン−2−オニル)エチルメタクリラート(例えばArkema Inc.社のNorsocryl(登録商標) 100として商業的に入手可能)。
N−ヘテロ環式基を少なくとも1個有するモノマーYの例は、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、1−ビニルイミダゾール、2−ビニルイミダゾール及びN−ビニルカルバゾールである。
好ましくは、次の化合物が使用される:2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、2−ビニルイミダゾール、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルアクリラート、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルメタクリラート、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチルアクリラート、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチルメタクリラート、2−(N−t−ブチルアミノ)−エチルメタクリラート、N−(3−N′,N′−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド及び2−(1−イミダゾリン−2−オニル)−エチルメタクリラート。
前記水性反応媒体のpH値に応じて、前記の窒素含有モノマーYの一部又は全量が、窒素上でプロトン化された第四級アンモニウム型で存在していてよい。
窒素上に第四級アルキルアンモニウム構造を有するモノマーYとして、例示的に次のものが挙げられる:2−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)エチルアクリラートクロリド(例えばArkema Inc.社のNorsocryl(登録商標) ADAMQUAT MC 80として商業的に入手可能)、2−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)エチルメタクリラートクロリド(例えばArkema Inc.社のNorsocryl(登録商標) MADQUAT MC 75として商業的に入手可能)、2−(N−メチル−N,N−ジエチルアンモニウム)エチルアクリラートクロリド、2−(N−メチル−N,N−ジエチルアンモニウム)エチルメタクリラートクロリド、2−(N−メチル−N,N−ジプロピルアンモニウム)エチルアクリラートクロリド、2−(N−メチル−N,N−ジプロピルアンモニウム)エチルメタクリラート、2−(N−ベンジル−N,N−ジメチルアンモニウム)エチルアクリラートクロリド(例えばArkema Inc.社のNorsocryl(登録商標) ADAMQUAT BZ 80として商業的に入手可能)、2−(N−ベンジル−N,N−ジメチルアンモニウム)エチルメタクリラートクロリド(例えばArkema Inc.社のNorsocryl(登録商標) MADQUAT BZ 75として商業的に入手可能)、2−(N−ベンジル−N,N−ジエチルアンモニウム)エチルアクリラートクロリド、2−(N−ベンジル−N,N−ジエチルアンモニウム)エチルメタクリラートクロリド、2−(N−ベンジル−N,N−ジプロピルアンモニウム)エチルアクリラートクロリド、2−(N−ベンジル−N,N−ジプロピルアンモニウム)エチルメタクリラートクロリド、3−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)プロピルアクリラートクロリド、3−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)プロピルメタクリラートクロリド、3−(N−メチル−N,N−ジエチルアンモニウム)プロピルアクリラートクロリド、3−(N−メチル−N,N−ジエチルアンモニウム)プロピルメタクリラートクロリド、3−(N−メチル−N,N−ジプロピルアンモニウム)プロピルアクリラートクロリド、3−(N−メチル−N,N−ジプロピルアンモニウム)プロピルメタクリラートクロリド、3−(N−ベンジル−N,N−ジメチルアンモニウム)プロピルアクリラートクロリド、3−(N−ベンジル−N,N−ジメチルアンモニウム)プロピルメタクリラートクロリド、3−(N−ベンジル−N,N−ジエチルアンモニウム)プロピルアクリラートクロリド、3−(N−ベンジル−N,N−ジエチルアンモニウム)プロピルメタクリラートクロリド、3−(N−ベンジル−N,N−ジプロピルアンモニウム)プロピルアクリラートクロリド及び3−(N−ベンジル−N,N−ジプロピルアンモニウム)プロピルメタクリラートクロリド。もちろん、前記のクロリドの代わりに、相応するブロミド及びスルファートも使用することができる。
好ましくは、2−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)エチルアクリラートクロリド、2−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)エチルメタクリラートクロリド、2−(N−ベンジル−N,N−ジメチルアンモニウム)エチルアクリラートクロリド及び2−(N−ベンジル−N,N−ジメチルアンモニウム)エチルメタクリラートクロリドが使用される。
もちろん、前記のエチレン系不飽和モノマーの混合物も使用することができる。
前記ラジカル重合を開始するために、ラジカル水性乳化重合を開始することができる全てのラジカル重合開始剤(ラジカル開始剤)が考慮に値する。それらは原則的に、過酸化物並びにアゾ化合物であってよい。もちろん、レドックス開始剤系も考慮に値する。過酸化物として、原則的に無機過酸化物、例えば過酸化水素又はペルオキソ二硫酸塩、例えばペルオキソ二硫酸のモノアルカリ金属塩又はジアルカリ金属塩又はアンモニウム塩、例えばそれらの一ナトリウム塩及び二ナトリウム塩、一カリウム塩及び二カリウム塩又はアンモニウム塩又は有機過酸化物、例えばアルキルヒドロペルオキシド、例えばt−ブチルヒドロペルオキシド、p−メンチルヒドロペルオキシド又はクミルヒドロペルオキシド、並びにジアルキルペルオキシド又はジアリールペルオキシド、例えばジ−t−ブチルペルオキシド又はジクミルペルオキシドを使用することができる。アゾ化合物として、本質的には2,2′−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)及び2,2′−アゾビス(アミジノプロピル)ジヒドロクロリド(AIBA、Wako ChemicalsのV-50に相当する)が使用される。レドックス開始剤系のための酸化剤として、本質的には、前記の過酸化物が考慮に値する。相応する還元剤として、低い酸化状態を有する硫黄化合物、例えばアルカリ金属亜硫酸塩、例えば亜硫酸カリウム及び/又は亜硫酸ナトリウム、アルカリ金属亜硫酸水素塩、例えば亜硫酸水素カリウム及び/又は亜硫酸水素ナトリウム、アルカリ金属メタ重亜硫酸塩、例えばメタ重亜硫酸カリウム及び/又はメタ重亜硫酸ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシラート、例えばカリウムホルムアルデヒドスルホキシラート及び/又はナトリウムホルムアルデヒドスルホキシラート、脂肪族スルフィン酸のアルカリ金属塩、特別にカリウム塩及び/又はナトリウム塩及び硫化水素アルカリ金属、例えば硫化水素カリウム及び/又は硫化水素ナトリウム、多価の金属の塩、例えば硫酸鉄(II)、硫酸鉄(II)アンモニウム、リン酸鉄(II)、エンジオール、例えばジヒドロキシマレイン酸、ベンゾイン及び/又はアスコルビン酸並びに還元糖類、例えばソルボース、グルコース、フルクトース及び/又はジヒドロキシアセトンを使用することができる。本発明によりレドックス開始剤系が使用される場合には、頻繁に前記酸化剤及び前記還元剤を並行して計量供給するか、又は好ましくは相応する前記酸化剤の全量を装入し、かつ前記還元剤のみを計量供給する。ラジカル開始剤の全量は、レドックス開始剤系の場合に酸化剤及び還元剤の全量から形成される。しかしながら、ラジカル開始剤として好ましくは、無機及び有機の過酸化物及び特に無機過酸化物が頻繁に水溶液の形で使用される。特にラジカル開始剤として好ましいのは、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、ペルオキソ二硫酸カリウム、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、過酸化水素及び/又はt−ブチルヒドロペルオキシドである。
優先権の基礎となる欧州特許出願番号09157984.7に基づくまだ公開されていない特許出願PCT/EP2010/054332によれば、全部で使用されるラジカル開始剤の量は、全モノマー量を基準として、それぞれ、0.05〜2質量%、有利に0.1〜1.5質量%及び特に有利に0.3〜1.0質量%である。他の製造方法によれば、ラジカル開始剤の量は、全モノマー量を基準として、5質量%までであってよい。
発明に本質的であるのは、優先権の基礎となる欧州特許出願番号09157984.7に基づくまだ公開されていない特許出願PCT/EP2010/054332の教示による前記水性固体分散液に、処理段階c)において、全モノマー量のうち全部で≧0.01かつ≦20質量%及びラジカル重合開始剤の全量のうち≧60質量%、好ましくは≧70質量%並びに≦90質量%又は≦100質量%及び特に好ましくは≧75かつ≦85質量%を計量供給し、計量供給されたエチレン系不飽和モノマーを、重合条件下で≧80質量%、好ましくは≧85質量%、特に好ましくは≧90質量%のモノマー転化率まで重合させることである。
その際に、水性重合媒体への前記ラジカル開始剤の添加は、優先権の基礎となる欧州特許出願番号09157984.7に基づくまだ公開されていない特許出願PCT/EP2010/054332の処理段階c)において、重合条件下で行うことができる。しかし、前記ラジカル開始剤の部分量又は全量が、装入されたモノマーを含有する水性重合媒体に、重合反応を開始させるのに適していない条件下で、例えば低温で、添加し、その後水性重合混合物中で重合条件に調節することも可能である。
処理段階c)において、前記ラジカル開始剤又はその成分の添加は、不連続に1つ以上の部分で又は連続的に一定の又は変わる流量で行うことができる。
モノマー転化率の測定は、当業者に原則的によく知られており、かつ例えば反応熱量測定により行われる。
優先権の基礎となる欧州特許出願番号09157984.7に基づくまだ公開されていない特許出願PCT/EP2010/054332の処理工程c)において、使用されたモノマーの量を≧80質量%の転化率まで重合させた後で(重合段階1)、次の処理工程d)において、前記無機固体の場合により残っている残量、すなわち≦90、≦80、≦70、≦60質量%及び有利に≦50、≦40、≦30、≦20質量%又は≦10質量%、前記ラジカル重合開始剤の場合により残っている残量、すなわち≦40、≦30又は好ましくは≧15かつ≦25質量%及び前記エチレン系不飽和モノマーの残っている残量、すなわち≧80かつ≦99.99質量%、好ましくは≧85かつ≦99質量%及び特に好ましくは≧85かつ≦95質量%を重合条件下で計量供給し、かつ≧90質量%のモノマー転化率まで重合させる(重合段階2)。その際に、処理工程c)及びd)において、それぞれの成分の計量供給を別個の単独流として又は混合物で不連続に1つ以上の部分で又は連続的に一定の又は変わる流量で計量供給することができる。もちろん、前記ラジカル開始剤又はエチレン系不飽和モノマーが処理工程c)及びd)において異なることも可能である。重合条件は、本明細書の範囲内でその際に一般的に、ラジカルにより開始される水性乳化重合が十分な重合速度で進行する温度及び圧力であると理解されるべきである。これらは特に、使用されるラジカル開始剤に依存している。有利に、処理工程c)及びd)における前記ラジカル開始剤の種類及び量、重合温度及び重合圧力は、前記重合反応を開始するかもしくは維持するために、使用されるラジカル開始剤が、十分な半減期を有し、かつその際に常に十分に開始ラジカルを提供するように、選択される。
前記微粒状無機固体の存在下での前記ラジカル水性重合反応のための反応温度として、一般的に0〜170℃の全範囲が考慮に値する。その際に、通例≧50かつ≦120℃、頻繁に≧60かつ≦110℃及びしばしば≧70かつ≦100℃の温度が使用される。前記ラジカル水性乳化重合は、1atm(絶対)よりも小さい、1atm(絶対)であるか又は1atm(絶対)よりも大きい圧力で実施することができ、その際に前記重合温度が100℃を超えてよく、かつ170℃までであってよい。好ましくは、易揮発性モノマー、例えばエチレン、ブタジエン又は塩化ビニルは高められた圧力下で重合される。その際に、前記圧力は1.2、1.5、2、5、10、15bar又はよりいっそう高い値を取ることができる。乳化重合が減圧中で実施される場合には、950mbar、頻繁に900mbar及びしばしば850mbar(絶対)の圧力に調節される。有利に、前記ラジカル水性重合は1atm(絶対)で不活性ガス雰囲気、例えば窒素又はアルゴン下で実施される。
前記水性反応媒体は、原則的に副次的な量で(通例≦5質量%、しばしば≦3質量%及び頻繁に≦1質量%)、水溶性有機溶剤、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール類、ペンタノール類、しかしアセトン等も含んでいてよい。しかしながら、好ましくは、前記重合反応はそのような溶剤の不在下で行われる。
前記の成分に加えて、前記複合化粒子の水性分散液の製造方法において、前記重合により入手可能なポリマーの分子量を低下させるもしくは制御するために、任意にラジカル連鎖移動化合物も使用することができる。その際に、本質的には脂肪族及び/又は芳香脂肪族のハロゲン化合物、例えば塩化n−ブチル、臭化n−ブチル、ヨウ化n−ブチル、塩化メチレン、二塩化エチレン、クロロホルム、ブロモホルム、ブロモトリクロロメタン、ジブロモジクロロメタン、四塩化炭素、四臭化炭素、塩化ベンジル、臭化ベンジル、有機チオ化合物、例えば第一級、第二級又は第三級の脂肪族チオール、例えばエタンチオール、n−プロパンチオール、2−プロパンチオール、n−ブタンチオール、2−ブタンチオール、2−メチル−2−プロパンチオール、n−ペンタンチオール、2−ペンタンチオール、3−ペンタンチオール、2−メチル−2−ブタンチオール、3−メチル−2−ブタンチオール、n−ヘキサンチオール、2−ヘキサンチオール、3−ヘキサンチオール、2−メチル−2−ペンタンチオール、3−メチル−2−ペンタンチオール、4−メチル−2−ペンタンチオール、2−メチル−3−ペンタンチオール、3−メチル−3−ペンタンチオール、2−エチルブタンチオール、2−エチル−2−ブタンチオール、n−ヘプタンチオール及びその異性体化合物、n−オクタンチオール及びその異性体化合物、n−ノナンチオール及びその異性体化合物、n−デカンチオール及びその異性体化合物、n−ウンデカンチオール及びその異性体化合物、n−ドデカンチオール及びその異性体化合物、n−トリデカンチオール及びその異性体化合物、置換チオール、例えば2−ヒドロキシエタンチオール、芳香族チオール、例えばベンゼンチオール、o−、m−、又はp−メチルベンゼンチオール、並びにPolymerhandbook, 第3版, 1989, J. Brandrup及びE.H. Immergut, John Wiley & Sons, II節, pp.133-141に記載された更に全ての硫黄化合物、しかしまた脂肪族及び/又は芳香族のアルデヒド、例えばアセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド及び/又はベンズアルデヒド、不飽和脂肪酸、例えばオレイン酸、非共役二重結合を有するジエン、例えばジビニルメタン又はビニルシクロヘキサン又は容易に引抜き可能な水素原子を有する炭化水素、例えばトルエンが使用される。しかし、妨げにならない前記のラジカル連鎖移動化合物の混合物を使用することも可能である。前記ラジカル連鎖移動化合物の任意に使用される全量は、重合すべきモノマーの全量を基準として、通例≦5質量%、しばしば≦3質量%及び頻繁に≦1質量%である。
本発明により使用される複合化粒子の水性分散液は、通常1〜70質量%、頻繁に5〜65質量%及びしばしば10〜60質量%の全固体含量を有する。
本発明により水性分散液の形で使用される複合化粒子は通例、≧10かつ≦1000nm、頻繁に≧50かつ≦500nm並びにしばしば≧100かつ≦250nmの平均粒子直径を有する。前記複合化粒子の平均粒度の決定は、準弾性光散乱の方法(DIN-ISO 13321)により行われる。
本発明により使用可能な複合化粒子は、多様な構造を有していてよい。その際に、前記複合化粒子は1種以上の前記微粒状固体粒子を含有していてよい。前記微粒状固体粒子は、完全に前記ポリマーマトリックスにより包まれていてよい。しかし、前記微粒状固体粒子の一方の部分が前記ポリマーマトリックスにより包まれているのに対し、他の部分が前記ポリマーマトリックスの表面上に配置されていることも可能である。もちろん、前記微粒状固体粒子の大部分が前記ポリマーマトリックスの表面上に結合されていることも可能である。
頻繁に、特に、複合化粒子が、皮膜形成可能であり、かつそれらの最低造膜温度が≦150℃、好ましくは≦100℃及び特に好ましくは≦50℃であるポリマーから構成されている、複合化粒子分散液が使用される。0℃未満の最低造膜温度はもはや測定可能でないので、前記最低造膜温度の下限は、そのガラス転移温度によってのみ示されることができる。頻繁に、前記最低造膜温度もしくはガラス転移温度は、≧−50℃又は≧−30℃及びしばしば≧−10℃である。有利に、前記最低造膜温度もしくはガラス転移温度は、≧−40℃かつ≦100℃の範囲内、好ましくは≧−30℃かつ≦50℃の範囲内及び特に好ましくは≧−30℃かつ≦20℃の範囲内である。前記最低造膜温度の決定はDIN 53787もしくはISO 2115により、かつ前記ガラス転移温度の決定はDIN 53765(示差走査熱量測定法、20K/分、中点測定)により、行われる。
本発明による方法により入手可能な複合化粒子の水性分散液は、シラン化合物Iを含有しない複合化粒子の水性分散液に比べて、明らかにより高い貯蔵安定性を有する。
本発明による複合化粒子分散液は、特に水性配合物を製造するため、並びに接着剤、例えば感圧接着剤、建築用接着剤又は工業接着剤、バインダー、例えば紙塗工用、エマルションペイント用又はプラスチックフィルムの印刷用の印刷インキ及び印刷ワニス用のバインダーを製造するための原料として、不織布を製造するため並びに保護層及び水蒸気バリアを、例えば下塗りの際に、製造するために、適している。更に、本発明による方法に利用可能な複合化粒子分散液は、セメント配合物及びモルタル配合物の改質にも利用することができる。本発明による方法により入手可能な複合化粒子の水性分散液は、原則的に医療診断学並びに他の医療用途にも使用することができる(例えばK. Mosbach及びL. Andersson, Nature, 1977, 270, pp.259-261;P.L. Kronick, Science 1978, 200, pp.1074-1076;米国特許(US-A)第4157323号明細書を参照)。有利には、本発明による複合化粒子分散液は、水性コーティング材料、例えばエマルションペイント、エナメル(Lackfarben)又はプライマーの製造に適している。
その際に重要であるのは、複合化粒子の水性分散液並びに少なくとも1種のシラン化合物Iに加え、更に別の配合物成分、例えば分散剤、殺生物剤、増粘剤、消泡剤、顔料及び/又は充填剤を含有する水性配合物も、明らかに高められた貯蔵安定性を有し、こうしてより長期間の後にも確実に加工することができ、そのためにシラン化合物Iを、複合化粒子の水性分散液を含有する水性配合物の貯蔵安定性の改善のためにも、使用することができることである。
それに応じて、本発明の有利な実施態様は、前記水性配合物媒体に、前記複合化粒子の水性分散液の添加前、添加中又は添加後に、シラン化合物Iを添加することにより特徴付けられている、複合化粒子の水性分散液を含有する水性配合物の貯蔵安定性を改善する方法でもある。その際に、本明細書の範囲内で"前記複合化粒子の水性分散液の添加の前"は、前記水性配合物が製造される混合装置中への前記複合化粒子の水性分散液の添加前の各々任意の時点を、"前記複合化粒子の水性分散液の添加中"は、混合装置中への前記複合化粒子の水性分散液の添加中の各々任意の時点を、かつ"前記複合化粒子の水性分散液の添加後"は、混合装置中への前記複合化粒子の水性分散液の添加後の各々任意の時点を、意味するものとする。
実施例
I.複合化粒子分散液の製造
a)複合化粒子の水性分散液Aの製造
還流冷却器、温度計、機械式撹拌機並びに計量供給装置を備えた2l四つ口フラスコ中に、20〜25℃(室温)及び大気圧(1atm、1.013bar絶対に相当)で窒素雰囲気下及び撹拌しながら(200の毎分回転数)、Nalco(登録商標) 1144(14nmの平均粒子直径を有する40質量%コロイド状二酸化ケイ素;Nalco Chemical Company社の商品名)416.6gを、それに引き続き平均18個のエチレンオキシド単位を有するC16C18−脂肪アルコールエトキシラートの20質量%水溶液(Lutensol(登録商標) AT18;BASF SE社の商品名)10.8g、それに引き続き脱イオン水315.0gを5分かけて添加した。引き続き、装入混合物を70℃に加熱した。
並行して、フィード流1としてメチルメタクリラート12.6g及びn−ブチルアクリラート18.8gからなるモノマー混合物、フィード流2として(3−メタクリルオキシプロピル)トリメトキシシラン2.9g、フィード流3としてペルオキソ二硫酸ナトリウム2.1g、水酸化ナトリウムの10質量%水溶液5.4g及び脱イオン水193.0gからなる開始剤溶液並びにフィード流4としてメチルメタクリラート87.3g、n−ブチルアクリラート130.9g及びヒドロキシエチルメタクリラート2.5gからなるモノマー混合物を製造した。
引き続き、撹拌される装入混合物に70℃で90分かけて、別個のフィード流路を経てフィード流2 0.9gを連続的に一定の流量で添加した。その際に、反応混合物を、フィード流2の開始45分後に85℃の反応温度に加熱した。フィード流2の開始1時間後に、反応混合物に120分の時間をかけて、2個の別個のフィード流路を経て同時に始めて、フィード流1の全量及びフィード流3 158.8gを連続的に同じ流量で計量供給した。それに引き続き、反応混合物に120分の時間をかけて、別個のフィード流路を経て同時に始めて、フィード流4の全量及びフィード流2の残っている残量を、並びに135分の時間をかけてフィード流3の残っている残量を連続的に一定の流量で計量供給した。引き続き、得られた複合化粒子の水性分散液を更に1時間、反応温度で撹拌し、その後室温に冷却した。
こうして得られた複合化粒子の水性分散液は半透明で低粘稠であり、かつ前記複合化粒子の水性分散液の全量を基準として、それぞれ、35.5質量%の固体含量及び凝固分を<0.05質量%を有していた。前記複合化粒子分散液のpH値は9.1であった。前記複合化粒子の平均粒子直径は117nmと決定された。
分析用超遠心機の方法(これについてはS.E. Harding et al., Analytical Ultracentrifugation in Biochemistry and Polymer Science, Royal Society of Chemistry, Cambridge, Great Britain 1992, 10章, Analysis of Polymer Dispersions with an Eight-Cell-AUC-Multiplexer: High Reslution Particle Size Distribution and Density Gradient Techniques, W. Maechtle, pp.147-175を参照)により、遊離二酸化ケイ素粒子は検出することができなかった。
その固体含量を、一般的に、前記複合化粒子分散液約1gを、約3cmの内径を有するふたをしないアルミニウムるつぼ中で、乾燥器中で150℃で恒量まで乾燥させることによって測定した。その固体含量の測定のために、それぞれ2個の別個の測定を実施し、相応する平均値を形成した。
その凝固分の測定のために、一般的に、室温で前記複合化粒子の水性分散液約300gを、ろ過前に秤量した45μmナイロンふるいを通してろ過した。前記ろ過後に、前記ふるいを少量の脱イオン水(約50ml)ですすぎ、次いで乾燥器中で100℃及び大気圧で恒量まで(約1時間)乾燥させた。室温に冷却した後に、前記ふるいを改めて秤量した。凝集物の含量は、複合化粒子の水性分散液のろ過に使用される量を基準として、それぞれ、双方の秤量値の差として明らかになる。その凝固分のそれぞれ2個の測定を実施した。それぞれの例に示される値は、これら双方の測定の平均値に相当する。
前記複合化粒子の平均粒子直径の測定を、一般的に、準弾性光散乱の方法(DIN-ISO 13321)によりMalvern Instruments Ltd.社のHigh Performance Particle Sizer (HPPS)を用いて行った。
そのpH値を、一般的に、Wissenschaftlich-Technische-Werkstaetten (WTW) GmbH社のMicropal pH538装置を用いて、室温で測定した。
b)複合化粒子の水性分散液Bの製造
還流冷却器、温度計、機械式撹拌機並びに計量供給装置を備えた1l四つ口フラスコ中で、室温及び大気圧で窒素雰囲気下及び撹拌しながら(200の毎分回転数)、Nyacol(登録商標) SN 15(10〜15nmの平均粒子直径を有する15質量%コロイド状二酸化スズ;Nyacol NanoTechnologies Inc.社の商品名)271.5gを、それに引き続き平均18個のエチレンオキシド単位を有するC16C18−脂肪アルコールエトキシラートの20質量%水溶液(Lutensol(登録商標) AT18)3.9gを、それに引き続き脱イオン水132.6gを5分かけて添加した。引き続き、装入混合物を70℃に加熱した。
並行して、フィード流1としてメチルメタクリラート5.9g及びn−ブチルアクリラート8.8gからなるモノマー混合物、フィード流2として(3−メタクリルオキシプロピル)トリメトキシシラン1.4g、フィード流3としてペルオキソ二硫酸ナトリウム1.0g、水酸化ナトリウムの10質量%の水溶液2.5g及び脱イオン水90.8gからなる開始剤溶液、並びにフィード流4としてメチルメタクリラート41.1g、n−ブチルアクリラート61.6g及びヒドロキシエチルメタクリラート1.2gからなるモノマー混合物を製造した。
引き続き、撹拌される装入混合物に70℃で90分かけて、別個のフィード流路を経てフィード流2 0.4gを連続的に一定の流量で添加した。その際に、反応混合物をフィード流2の開始45分後に85℃の反応温度に加熱した。フィード流2の開始1時間後に、反応混合物に、120分の時間をかけて、2個の別個のフィード流路を経て同時に始めて、フィード流1の全量及びフィード流3 74.7gを連続的に一定の流量で計量供給した。それに引き続き、反応混合物に、120分の時間をかけて、別個のフィード流路を経て同時に始めて、フィード流4の全量及びフィード流2の残っている残量を、並びに135分の時間をかけてフィード流3の残っている残量を連続的に一定の流量で計量供給した。引き続き、得られた複合化粒子の水性分散液を更に1時間、反応温度で撹拌し、その後室温に冷却した。
こうして得られた複合化粒子の水性分散液は半透明で低粘稠であり、かつ前記複合化粒子の水性分散液の全量を基準として、それぞれ、20.1質量%の固体含量及び<0.05質量%の凝固分を有していた。前記複合化粒子分散液のpH値は8.7であった。前記複合化粒子の平均粒子直径は89nmと決定された。
II.前記複合化粒子の水性分散液の貯蔵安定性
その貯蔵安定性を調べるために、前記の複合化粒子分散液A及びBを脱イオン水で20質量%の固体含量に希釈した。こうして得られた複合化粒子分散液A及びBのうち、それぞれ100gを、(3−グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシランの50質量%水溶液0.12g、0.24g、0.48g及び1.00gと混合し、均質に混合し、引き続き密閉した100mlサンプル容器中で70℃で貯蔵し、毎日、目視でゲル化(著しい粘度上昇に相当、"ハチミツのように"ねっとりする)を調べた。第1表には、多様な量の(3−グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシランについて得られたゲル化時間[単位:日]が列挙されている。60日後に実験を中断した。
第1表:(3−グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシランで安定化された複合化粒子の水性分散液のゲル化時間[単位:日]
III.バインダーとして複合化粒子分散液Aを有するコーティング材料の貯蔵安定性
以下の表に示された成分(量[単位:g])から、上から下へ示された順序で、室温で、ディスク撹拌機で1000の毎分回転数で撹拌しながら、複合化粒子分散液Aをベースとする2種の塗料配合物を製造した。その際に、塗料配合物A及びV中で、45μmナイロンふるいを通したろ過後に得られた複合化粒子分散液Aを使用した。
最後の成分を添加した後に、なお15分更に撹拌し、引き続き、塗料配合物A及びVを1時間撹拌せずに静置した。その後、双方の塗料配合物A及びVの粘度を、ICIコーン/プレート粘度計(ASTM D4287に準拠して測定ヘッドCを用いる)を用いて測定した。相応する値は第2表に示されている。それに引き続き、双方の塗料配合物A及びVを、密閉した500mlガラスびん中で全部で49日間、50℃で貯蔵した。14、28及び49日の貯蔵時間後に、前記びんから試料を取り出し、それぞれ双方の塗料配合物の粘度を、前に記載したように23℃で求めた。その際に得られた結果は第2表に列挙されている。
第2表:50℃での貯蔵時間に依存した塗料配合物A及びVの粘度
第1及び2表に記載された結果からは、本発明によるシラン化合物Iを用いて添加剤の添加された複合化粒子分散液A及びB並びに複合化粒子分散液Aをベースとする添加剤の添加された塗料配合物Aが、相応する添加剤の添加されていない複合化粒子分散液もしくは塗料配合物よりも、明らかにより僅かな、時間に依存した粘度上昇を有することが明瞭に分かる。