JP2013504043A - グリコシル化の分析のための糖ペプチドのes−msの方法 - Google Patents
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Abstract
免疫グロブリンの消化後かつ質量分析の前にクロマトグラフィーによる精製工程を必要としない、エレクトロスプレー質量分析による免疫グロブリンのグリコシル化の測定方法を報告する。
Description
本願は、クロマトグラフィーによる分離工程を必要としない、免疫グロブリンのグリコシル化の分析のための質量分析法を報告する。
発明の背景
組換え生産される多くの治療用ポリペプチドにとって、ポリペプチドのグリコシル化は重要な特徴である。グリコシル化ポリペプチドは、糖タンパク質とも呼ばれ、ヒトなどの真核生物、および一部の原核生物における、触媒作用、シグナル伝達、細胞間コミュニケーション、免疫系の活性、分子認識および会合を含む多くの必須機能を仲介する。糖タンパク質は、真核生物における非細胞質タンパク質の大部分を占める(Lis, H., et al., Eur. J. Biochem. 218 (1993) 1-27(非特許文献1))。グリコシル化の導入は、翻訳時修飾および翻訳後修飾であり、したがって、遺伝的には制御されない。オリゴ糖の生合成は、基質に対して互いに競合する数種の酵素が関わる多段階プロセスである。その結果、グリコシル化ポリペプチドはミクロ不均一性を有するオリゴ糖のアレイを含み、それによって同じアミノ酸骨格を含む異なるグリコフォームの集団が形成される。グリコシル化ポリペプチドの末端シアル酸付加は、例えば、治療薬の血清半減期を延長することが報告されており、末端にガラクトース残基を有するオリゴ糖構造を含有するグリコシル化ポリペプチドは、循環からの高いクリアランスを示す(Smith, P. L., et al., J. Biol. Chem. 268 (1993) 795-802(非特許文献2))。したがって、バイオ技術による治療用ポリペプチド、例えば免疫グロブリンの生産において、オリゴ糖のミクロ不均一性およびそのバッチ間統一性を評価するのは重要な作業である。
組換え生産される多くの治療用ポリペプチドにとって、ポリペプチドのグリコシル化は重要な特徴である。グリコシル化ポリペプチドは、糖タンパク質とも呼ばれ、ヒトなどの真核生物、および一部の原核生物における、触媒作用、シグナル伝達、細胞間コミュニケーション、免疫系の活性、分子認識および会合を含む多くの必須機能を仲介する。糖タンパク質は、真核生物における非細胞質タンパク質の大部分を占める(Lis, H., et al., Eur. J. Biochem. 218 (1993) 1-27(非特許文献1))。グリコシル化の導入は、翻訳時修飾および翻訳後修飾であり、したがって、遺伝的には制御されない。オリゴ糖の生合成は、基質に対して互いに競合する数種の酵素が関わる多段階プロセスである。その結果、グリコシル化ポリペプチドはミクロ不均一性を有するオリゴ糖のアレイを含み、それによって同じアミノ酸骨格を含む異なるグリコフォームの集団が形成される。グリコシル化ポリペプチドの末端シアル酸付加は、例えば、治療薬の血清半減期を延長することが報告されており、末端にガラクトース残基を有するオリゴ糖構造を含有するグリコシル化ポリペプチドは、循環からの高いクリアランスを示す(Smith, P. L., et al., J. Biol. Chem. 268 (1993) 795-802(非特許文献2))。したがって、バイオ技術による治療用ポリペプチド、例えば免疫グロブリンの生産において、オリゴ糖のミクロ不均一性およびそのバッチ間統一性を評価するのは重要な作業である。
免疫グロブリンは、そのグリコシル化に関して、他の組換えポリペプチドと大きく異なる。例えば、免疫グロブリンG(IgG)は、分子量約150kDaの左右対称で多機能性のグリコシル化ポリペプチドである。IgGは、抗原結合を担う2つの同一のFab部分およびエフェクター機能を担うFc部分からなる。グリコシル化は、IgG分子内の、重鎖のCH2ドメイン間に埋め込まれているAsn-297において高度に保存されており、それによってCH2ドメイン内のアミノ酸残基との広範囲の接触点が形成される(Sutton, B. J. and Phillips, D. C., Biochem. Soc. Trans. 11 (1983) 130-132(非特許文献3))。Asn-297に結合したコアオリゴ糖構造は不均一なプロセシングを受けるため、ある特定種のIgGは複数のグリコフォームで存在することになる。バリエーションは、Asn-297部位の部位占有率(マクロ不均一性)またはグリコシル化部位のオリゴ糖構造のバリエーション(ミクロ不均一性)として存在する。例えば、Jenkins, N., et al., Nature Biotechnol. 14 (1996) 975-981(非特許文献4)を参照のこと。一般に、IgG mAbに豊富に存在するオリゴ糖基は、アシアロ二分枝複合型グリカンであり、主として非ガラクトシル化(G0)、一ガラクトシル化(G1)または二ガラクトシル化(G2)型である(Ghirlandaio, R., et al., Immunol. Lett. 68 (1999) 47-52(非特許文献5))。
組換えグリコシル化ポリペプチドの機能的特性に対するグリコシル化の重要性および明確かつ統一性のある生産物の生産プロセスの必要性に鑑み、組換え生産されたグリコシル化ポリペプチドのグリコシル化プロフィールの発酵プロセス内でのオンラインまたはアドライン(ad-line)分析が強く望まれている。
Kuhlmann(Kuhlmann, F. E., et al., J. Am. Soc. Mass Spec. 6 (1995) 1221-1225(非特許文献6))は、75%プロピオン酸および25% 2-プロパノールの1:2比の溶液のカラムフローへのポスト逆相高速液体クロマトグラフィーカラム添加を報告している。高速液体クロマトグラフィー・エレクトロスプレーイオン化質量分析(LCIMS)および液体クロマトグラフィー・タンデム質量分析(LC/MS/MS)が、エリスロポエチン(EPO)における部位特異的な糖質不均一性の分析に使用された(Kawasaki, N., et al., Anal. Biochem. 285 (2000) 82-91(非特許文献7))。
US 2006/0269979(特許文献1)では、関節リウマチおよびその他の自己免疫疾患を診断およびモニタリングするための高スループットのグリカン分析が報告されている。糖タンパク質の同定方法はWO2009/048196(特許文献2)に報告されている。US 7,351,540(特許文献3)では、タンパク質の単離および分析が報告されている。ヒトカリクレイン15の免疫蛍光アッセイの開発は、Shaw et al.(Clin. Biochem. 40 (2007) 104-110(非特許文献8))によって報告されている。
Lis, H., et al., Eur. J. Biochem. 218 (1993) 1-27
Smith, P. L., et al., J. Biol. Chem. 268 (1993) 795-802
Sutton, B. J. and Phillips, D. C., Biochem. Soc. Trans. 11 (1983) 130-132
Jenkins, N., et al., Nature Biotechnol. 14 (1996) 975-981
Ghirlandaio, R., et al., Immunol. Lett. 68 (1999) 47-52
Kuhlmann, F. E., et al., J. Am. Soc. Mass Spec. 6 (1995) 1221-1225
Kawasaki, N., et al., Anal. Biochem. 285 (2000) 82-91
Shaw et al.(Clin. Biochem. 40 (2007) 104-110
本願は、一つの局面として、免疫グロブリンのグリコシル化を測定する方法であって、
- 免疫グロブリンを酵素消化する工程、
- 免疫グロブリンフラグメントをセファロースビーズに吸着させる工程、
- 免疫グロブリンフラグメントを吸着させた前記セファロースビーズをトリフルオロ酢酸を含有する溶液で洗浄する工程、
- 前記セファロースビーズから免疫グロブリンフラグメントを回収する工程、
- 回収した免疫グロブリンフラグメントのエレクトロスプレー質量分析を実施する工程、および
- 質量分析データから免疫グロブリンのグリコシル化を測定する工程、
を含む方法を報告する。
- 免疫グロブリンを酵素消化する工程、
- 免疫グロブリンフラグメントをセファロースビーズに吸着させる工程、
- 免疫グロブリンフラグメントを吸着させた前記セファロースビーズをトリフルオロ酢酸を含有する溶液で洗浄する工程、
- 前記セファロースビーズから免疫グロブリンフラグメントを回収する工程、
- 回収した免疫グロブリンフラグメントのエレクトロスプレー質量分析を実施する工程、および
- 質量分析データから免疫グロブリンのグリコシル化を測定する工程、
を含む方法を報告する。
発明の詳細な説明
本発明は、免疫グロブリンの酵素消化後かつ質量分析前にクロマトグラフィーによる精製工程を必要とせずに、免疫グロブリンのグリコシル化をES-MSで測定する方法に関する。
本発明は、免疫グロブリンの酵素消化後かつ質量分析前にクロマトグラフィーによる精製工程を必要とせずに、免疫グロブリンのグリコシル化をES-MSで測定する方法に関する。
ヒト免疫グロブリンは主に、297位のアスパラギン残基(Asn 297)において、コアフコシル化二分枝複合オリゴ糖によりグリコシル化されている(位置番号はKabatによる)。Asn297は、免疫グロブリンのFc領域の297位(Fc領域の残基のEu番号)付近に位置するアスパラギン残基を表す。しかし、Asn297は、免疫グロブリンにおける軽微な配列バリエーションの存在により、297位のおよそ±3アミノ酸残基上流または下流、すなわち294位〜300位の間に位置することもある。
哺乳動物細胞により産生される免疫グロブリンは、典型的には、枝分かれした二分枝オリゴ糖を含み、これは概ねFc領域のCH2ドメインのAsn297へのN結合により結合されている(例えば、Wright, A. and Morrison, S. L., Trend. Biotechnol. 15 (1997) 26-32を参照のこと)。オリゴ糖には、様々な糖質、例えばマンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトースおよびシアル酸、ならびに二分枝オリゴ糖構造の「幹」にあるGlcNAcに結合するフコースが含まれ得る。二分枝糖構造、すなわち、二分枝オリゴ糖では、その各アームにおいて、最大2つのガラクトース残基が末端をなす。これらのアームはその中心マンノース残基への結合に基づき(1,6)および(1,3)と表示される。G0で表される糖構造は、末端ガラクトース残基を含まないものである。G1で表される糖構造は、一つのアームに一つまたはそれ以上のガラクトース残基を含む。G2で表される糖構造は、各アームに一つまたはそれ以上のガラクトース残基を含む(Raju, T. S., Bioprocess Int. 1 (2003) 44-53)。ヒト定常重鎖領域は、Kabat, E. A., et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991)により;Brueggemann, M., et al., J. Exp. Med. 166 (1987) 1351-1361により;およびLove, T. W., et al., Methods Enzymol. 158 (1989) 515-527により詳細に報告されている。抗体Fc部分のCHO型グリコシル化は、例えば、Routier, F. H., Glycoconjugate J. 14 (1997) 201-207に記載されている。
用語「免疫グロブリン」には、様々な形の免疫グロブリン、例えば、ヒト免疫グロブリン、ヒト化免疫グロブリン、キメラ免疫グロブリンまたはT細胞抗原欠失免疫グロブリンが包含される(例えば、WO98/33523、WO98/52976およびWO00/34317を参照のこと)。免疫グロブリンの遺伝子操作は、例えば、Morrison, S. L., et al., Proc. Natl. Acad Sci. USA 81 (1984) 6851-6855;US 5,202,238およびUS 5,204,244;Riechmann, L., et al., Nature 332 (1988) 323-327;Neuberger, M. S., et al., Nature 314 (1985) 268-270;Lonberg, N., Nat. Biotechnol. 23 (2005) 1117-1125に記載されている。
免疫グロブリンは一般に、2つのいわゆる全長軽鎖ポリペプチド(軽鎖)および2つのいわゆる全長重鎖ポリペプチド(重鎖)を含む。全長重鎖および軽鎖ポリペプチドは各々、抗原と相互作用することができる結合領域を含む可変ドメイン(可変領域)(概ね全長ポリペプチド鎖のアミノ末端部分)を含む。全長重鎖および軽鎖ポリペプチドは各々、定常領域(概ねカルボキシル末端部分)を含む。全長重鎖の定常領域は、(i)Fcガンマ受容体(FcγR)を有する細胞、例えば食細胞への、または(ii)ブランベル受容体としても知られる新生児型Fc受容体(FcRn)を有する細胞への抗体の結合を仲介する。これは、古典的補体系の因子を含むいくつかの因子、例えば補体(C1q)への結合も仲介する。全長免疫グロブリン軽鎖または重鎖の可変ドメインは、また、異なるセグメントを含む、すなわち4つのフレームワーク領域(FR)および3つの超可変領域(CDR)を含む。「全長抗体重鎖」は、抗体のN末端からC末端に向かって、重鎖可変ドメイン(VH)、抗体定常ドメイン1(CH1)、抗体ヒンジ領域、抗体定常ドメイン2(CH2)、抗体定常ドメイン3(CH3)およびサブクラスIgEの抗体では場合により抗体定常ドメイン4(CH4)、からなるポリペプチドである。「全長抗体軽鎖」は、抗体のN末端からC末端に向かって、軽鎖可変ドメイン(VL)および抗体軽鎖定常ドメイン(CL)からなるポリペプチドである。これらの全長抗体鎖は、CLドメインとCH1ドメインの間および全長抗体重鎖のヒンジ領域間の鎖間ジスルフィド結合を通じてひとつに連結されている。
近年、免疫グロブリンのグリコシル化、すなわち、糖の組成および結合している多数の糖構造が、その生物学的特性に強い影響を有することが報告されている(例えば、Jefferis, R., Biotechnol. Prog. 21 (2005) 11-16を参照のこと)。哺乳動物細胞により産生される免疫グロブリンは、2〜3質量%のオリゴ糖を含有する(Taniguchi, T., et al., Biochem. 24 (1985) 5551-5557)。これは、例えばクラスGの免疫グロブリン(IgG)では、マウス起源のIgG一つあたり2.3個のオリゴ糖鎖(Mizuochi, T., et al., Arch. Biochem. Biophys. 257 (1987) 387-394)およびヒト起源のIgG一つあたり2.8個のオリゴ糖鎖(Parekh, R. B., et al., Nature 316 (1985) 452-457)に相当し、一般にそのうちの2つはFc領域のAsn297に位置し、残りが可変領域に位置する(Saba, J. A., et al., Anal. Biochem. 305 (2002) 16-31)。
用語「グリコシル化」は、免疫グロブリンの全アミノ酸残基に結合している全オリゴ糖の総和を表す。細胞のグリコシル化の不均一性に起因して、組換え産生された免疫グロブリンは、特定のアミノ酸残基に単一の明確なN結合型またはO結合型オリゴ糖を含むだけでなく、各々同じアミノ酸配列を有するが特定のアミノ酸位置のそれぞれに異なる組成のオリゴ糖を含むポリペプチドの混合物である。したがって、上記の用語は、組換え産生された免疫グロブリンの特定のアミノ酸位置に結合されているオリゴ糖のグループ、すなわち、結合しているオリゴ糖の不均一性を表すものである。本願において使用する場合、用語「オリゴ糖」は、共有結合により連結された2つまたはそれ以上の単糖単位を含む高分子性の糖を表す。
様々なN結合型またはO結合型オリゴ糖の表記に関して、個々の糖残基は、そのオリゴ糖残基の非還元末端から還元末端の方向に列挙される。表記上、最長の糖鎖が基本鎖として選択される。N結合型またはO結合型オリゴ糖の還元末端は、免疫グロブリンのアミノ酸骨格のアミノ酸に直接結合している単糖残基であり、基本鎖の還元末端の反対側の終端に位置するN結合型またはO結合型オリゴ糖の末端が、非還元末端と称される。
本願で報告する一つの局面は、免疫グロブリンのグリコシル化を測定する方法であって、
- 免疫グロブリンを酵素消化する工程、
- 免疫グロブリンフラグメントをセファロースビーズに吸着させる工程、
- 免疫グロブリンフラグメントを吸着させた前記セファロースビーズをトリフルオロ酢酸を含有する溶液で洗浄する工程、
- 前記セファロースビーズから免疫グロブリンフラグメントを回収する工程、
- 回収した免疫グロブリンフラグメントのエレクトロスプレー質量分析を実施する工程、および
- 質量分析データから免疫グロブリンのグリコシル化を測定する工程、
を含む方法である。
- 免疫グロブリンを酵素消化する工程、
- 免疫グロブリンフラグメントをセファロースビーズに吸着させる工程、
- 免疫グロブリンフラグメントを吸着させた前記セファロースビーズをトリフルオロ酢酸を含有する溶液で洗浄する工程、
- 前記セファロースビーズから免疫グロブリンフラグメントを回収する工程、
- 回収した免疫グロブリンフラグメントのエレクトロスプレー質量分析を実施する工程、および
- 質量分析データから免疫グロブリンのグリコシル化を測定する工程、
を含む方法である。
吸着した免疫グロブリンフラグメントをトリフルオロ酢酸を含有する溶液で洗浄することにより、その免疫グロブリンのグリコシル化のエレクトロスプレー質量分析測定の改善を達成できることが見出された。一つの態様において、トリフルオロ酢酸の濃度は、0.01%〜1%(v/v)である。別の態様において、トリフルオロ酢酸の濃度は、0.05%〜0.5%(v/v)である。さらに別の態様において、トリフルオロ酢酸の濃度は、約0.1%(v/v)である。さらに、クロマトグラフィーによる精製工程は、酵素消化の後に実施してもよいが、これは必須ではない。以下の表1に示されるように、トリフルオロ酢酸による洗浄は、定量的測定の精度を明らかに改善し、かつ分析結果の標準偏差(SD)および変動係数(VK)を同時に減少させる。
(表1)例示的抗CCR5抗体のグリコシル化の測定についての例示的結果の比較。測定は三連で実施した。参照値は、イオン交換クロマトグラフィーおよびパルスアンペロメトリック検出によって測定した(Fuc=フコース)。
用語「セファロース」は、架橋型のアガロースを表す。アガロースは、グリコシド結合したD-ガラクトースと3,6-アンヒドロ-L-ガラクトピラノースからなる二糖であるアガロビオースを単量体構成要素として含む直鎖状の多糖である。
一つの態様において、酵素消化は、トリプシン、キモトリプシン、パパイン、IdeSならびにエンドプロテアーゼArg C、Lys CおよびGlu Cから選択される酵素と共にインキュベートすることにより行われる。別の態様において、酵素消化は、トリプシンと共にインキュベートすることにより行われる。
78%〜88%(v/v)のアセトニトリル濃度を有する溶液を洗浄工程で使用するのが有利であることも見出された。一つの態様において、アセトニトリル濃度は、80%〜85%(v/v)である。別の態様において、アセトニトリル濃度は、約83%(v/v)である。用語「約」は、その後に続く値が、その値の±10%の範囲の中心であることを表す。その範囲を外れる値は、定量的測定に負の影響を及ぼす。したがって、一つの態様において、洗浄工程における溶液は、約0.1%(v/v)トリフルオロ酢酸および約83%(v/v)アセトニトリルを含有する。一つの態様において、本発明の方法は、78%〜88%(v/v)アセトニトリルおよび水からなる溶液でセファロースビーズを洗浄する工程を含む。一つの態様において、本発明の方法は、80%〜85%(v/v)アセトニトリルおよび水からなる溶液でセファロースビーズを洗浄する工程を含む。一つの態様において、洗浄は、約83%(v/v)アセトニトリルおよび水からなる溶液を用いる。さらなる態様において、本発明の方法は、酵素消化溶液を78%〜88%(v/v)アセトニトリルとなるよう調節する工程を含む。さらなる態様において、本発明の方法は、酵素消化溶液を80%〜85%(v/v)アセトニトリルとなるよう調節する工程を含む。一つの態様において、調節は、約83%(v/v)アセトニトリルへの調節である。別の態様において、本発明の方法は、78%〜88%(v/v)アセトニトリルを用いる第二の洗浄工程を含む。一つの態様において、本発明の方法は、80%〜85%(v/v)アセトニトリルを用いる第二の洗浄工程を含む。別の態様において、第二の洗浄は、約83%(v/v)アセトニトリルを用いるものである。
本願において体積比(v/v)に対する参照がなされる場合、以下が適用される:
- 意図する最終体積に基づき、アセトニトリル画分の相対体積、例えば83%を、その意図する最終体積から計算し、
- 算出したアセトニトリルの相対体積を提供し、そして意図する最終体積が得られるまで水を添加し、
- その後、意図する最終体積に基づき算出した相対体積のトリフルオロ酢酸画分を添加する。
- 意図する最終体積に基づき、アセトニトリル画分の相対体積、例えば83%を、その意図する最終体積から計算し、
- 算出したアセトニトリルの相対体積を提供し、そして意図する最終体積が得られるまで水を添加し、
- その後、意図する最終体積に基づき算出した相対体積のトリフルオロ酢酸画分を添加する。
例えば、0.1%(v/v)トリフルオロ酢酸、83%(v/v)アセトニトリルおよび水からなる1リットル(1000ml)の溶液は、830mlのアセトニトリル(1000mlの83%)を提供し、体積が1000mlに達するまで水を加え、その後1ml(1000mlの0.1%(v/v))のトリフルオロ酢酸を添加することで得られる。
一つの態様において、本発明の方法は、最初の工程として、免疫グロブリンを変性剤で変性させる工程を含む。別の態様において、変性はpH 8.5で行う。一つの態様において、溶液は、0.1%(v/v)トリフルオロ酢酸、83%(v/v)アセトニトリルおよび水からなる。別の態様において、セファロースビーズは、セファロースCL-4Bビーズである。一つの態様において、セファロースビーズへのアプライは5分間行う。
別の態様において、本発明の方法は、セファロースビーズを水で洗浄する工程を含む。この工程で、免疫グロブリンフラグメントがセファロースビーズから回収される。
精製された糖ペプチドのイオン化は、25%/75%(v/v)2-プロパノール/プロピオン酸を含有する溶液を添加しなければ非常に乏しくなることも見出された。したがって、本発明の方法は、そのような添加を行わずとも機能するものの、25%/75%(v/v)2-プロパノール/プロピオン酸を含有する溶液を追加的に添加することによってさらに改善できる。加えて、糖ペプチドの異なる糖ペプチド種の正確な定量に使用できる高荷電状態の糖ペプチドは、25%/75%(v/v)2-プロパノール/プロピオン酸を含有する溶液を添加した場合に増加する。このことは、表2のフコシル化G(2)型から分かる。したがって、一つの態様において、本発明の方法は、免疫グロブリンフラグメントを、25%(v/v)2-プロパノールおよび75%(v/v)プロピオン酸からなる溶液と混合する工程を含む。
(表2)例示的抗CCR5抗体のグリコシル化の測定についての例示的結果の比較。測定は三連で実施した。参照値は、イオン交換クロマトグラフィーおよびパルスアンペロメトリック検出によって測定した(Fuc=フコース)。
以下の実施例および図面は、本発明の理解を助ける目的で提供されるものであり、本発明の真の範囲は添付の特許請求の範囲に示されているものである。本発明の精神から逸脱することなく、示されている手順に変更を加えることができることが理解される。
材料
トリス(ヒドロキシアミノメタン)塩酸塩(TRIS-HCl)およびグアニジン塩酸塩は、Merckから購入した。アセトニトリル(ACN)、トリフルオロ酢酸(TFA)、塩酸、2-プロパノールおよびプロピオン酸はVWR International Bakerから購入した。
トリス(ヒドロキシアミノメタン)塩酸塩(TRIS-HCl)およびグアニジン塩酸塩は、Merckから購入した。アセトニトリル(ACN)、トリフルオロ酢酸(TFA)、塩酸、2-プロパノールおよびプロピオン酸はVWR International Bakerから購入した。
トリプシンは、Roche Diagnostics GmbH, Mannheim, Germanyから入手した。NAP5セファデックスカラムは、GE Healthcareから入手した。CL-4Bセファロースビーズは、Amersham Bioscienceから購入した。マルチスクリーンソルビナート 96ウェル 細孔径0.45μm 低結合性親水性PTFEフィルタープレートは、Milliporeから入手した。
本発明を、抗CCR5抗体を用いて実証する。その作製およびそのコード配列は、例えば、WO2006/103100およびWO2009/090032に報告されている。
実施例1
消化
300μgの精製された抗CCR5抗体を、グアニジン塩酸塩と共にpH8.5で数分間インキュベートした。セファデックスカラムを用いて緩衝液をTRIS-HCl pH8.5に交換した後、抗体を、事前に還元処理せずに、トリプシンを用いて37℃で一晩(16時間)消化した。
消化
300μgの精製された抗CCR5抗体を、グアニジン塩酸塩と共にpH8.5で数分間インキュベートした。セファデックスカラムを用いて緩衝液をTRIS-HCl pH8.5に交換した後、抗体を、事前に還元処理せずに、トリプシンを用いて37℃で一晩(16時間)消化した。
実施例2
精製
1mlのセファロースCL-4Bビーズを水で三回洗浄した。15μlの洗浄したセファロースビーズを200μlの水に分散させた後、96ウェルマルチスクリーンフィルタープレートのウェルに割り当てた。<0.1インチHgの真空状態のバキュームマニホールド上で、このビーズを200μlの水で各々二回洗浄し、200μlの83%アセトニトリル/水溶液で各々二回調整した。40μlのトリプシン消化物を、83%(v/v)アセトニトリルとなるよう調節した。その後、消化溶液を、調整済みのセファロースビーズにアプライし、穏やかに振盪させつつ5分間インキュベートした。96ウェルプレートを適切な蓋で覆うことで、アセトニトリルの蒸発を防いだ。このビーズを200μlの0.1% TFA - 83% ACN(v/v)を用いて各々二回、および200μlの83%(v/v)アセトニトリルを用いて各々二回、洗浄した。洗浄工程中、糖ペプチドの溶出を防ぐため、ビーズが常に濡れている状態にしなければならない。糖ペプチドは、96ウェルv底プレート中で30μlの水を三回用いてビーズから回収した。
精製
1mlのセファロースCL-4Bビーズを水で三回洗浄した。15μlの洗浄したセファロースビーズを200μlの水に分散させた後、96ウェルマルチスクリーンフィルタープレートのウェルに割り当てた。<0.1インチHgの真空状態のバキュームマニホールド上で、このビーズを200μlの水で各々二回洗浄し、200μlの83%アセトニトリル/水溶液で各々二回調整した。40μlのトリプシン消化物を、83%(v/v)アセトニトリルとなるよう調節した。その後、消化溶液を、調整済みのセファロースビーズにアプライし、穏やかに振盪させつつ5分間インキュベートした。96ウェルプレートを適切な蓋で覆うことで、アセトニトリルの蒸発を防いだ。このビーズを200μlの0.1% TFA - 83% ACN(v/v)を用いて各々二回、および200μlの83%(v/v)アセトニトリルを用いて各々二回、洗浄した。洗浄工程中、糖ペプチドの溶出を防ぐため、ビーズが常に濡れている状態にしなければならない。糖ペプチドは、96ウェルv底プレート中で30μlの水を三回用いてビーズから回収した。
実施例3
質量分析のためのサンプル調製
MSナノスプレー分析のために、糖ペプチドを、25%/75%(v/v)2-プロパノール/プロピオン酸を含有する30μlの溶液と混合した。調製したサンプルを、ナノスプレー(NanoMate)によって質量分析装置に直接注入した。
質量分析のためのサンプル調製
MSナノスプレー分析のために、糖ペプチドを、25%/75%(v/v)2-プロパノール/プロピオン酸を含有する30μlの溶液と混合した。調製したサンプルを、ナノスプレー(NanoMate)によって質量分析装置に直接注入した。
実施例4
質量分析
測定には、waters製の較正済みq-TOF Ultimaを、通常のultimaナノスプレー源に代えてAdvion製のNanoMate源を設置して使用した。96個のサンプルを、全自動で、288分以内に測定することができる。
質量分析
測定には、waters製の較正済みq-TOF Ultimaを、通常のultimaナノスプレー源に代えてAdvion製のNanoMate源を設置して使用した。96個のサンプルを、全自動で、288分以内に測定することができる。
Claims (10)
- 免疫グロブリンのグリコシル化を測定する方法であって、
- 免疫グロブリンを酵素消化する工程、
- 免疫グロブリンフラグメントをセファロースビーズに吸着させる工程、
- 免疫グロブリンフラグメントを吸着させた前記セファロースビーズをトリフルオロ酢酸を含有する溶液で洗浄する工程、
- 前記セファロースビーズから免疫グロブリンフラグメントを回収する工程、
- 回収した免疫グロブリンフラグメントのエレクトロスプレー質量分析を実施する工程、および
- 質量分析データから免疫グロブリンのグリコシル化を測定する工程、
を含む、方法。 - 洗浄工程におけるトリフルオロ酢酸の濃度が0.05%〜0.5%(v/v)である、請求項1記載の方法。
- 酵素消化が、トリプシン、キモトリプシン、パパイン、IdeS、Arg C、Lys CおよびGlu Cから選択される酵素を含有する溶液中で免疫グロブリンをインキュベートすることにより行われる、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
- 酵素消化溶液を78%〜88%(v/v)アセトニトリルとなるよう調節する工程を含む、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
- トリフルオロ酢酸、78%〜88%(v/v)アセトニトリルおよび水を含有する溶液中で免疫グロブリンフラグメントをセファロースビーズに吸着させる工程を含む、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
- 78%〜88%(v/v)アセトニトリルおよび水からなる溶液を用いるセファロースビーズの第二の洗浄工程を含む、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
- セファロースビーズを水で洗浄することにより免疫グロブリンフラグメントを回収する工程を含む、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
- 回収工程の後に、免疫グロブリンフラグメントを25%(v/v)2-プロパノールおよび75%(v/v)プロピオン酸を含有する溶液と混合する工程を含む、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
- 免疫グロブリンのグリコシル化の分析における、前記請求項のいずれか一項記載の方法の使用。
- 分析がアドライン(ad-line)分析または高スループット分析である、請求項9記載の方法。
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