JP2013255868A - 濾過処理用濾材、および濾過処理用濾材の製造方法 - Google Patents

濾過処理用濾材、および濾過処理用濾材の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】独立気泡が破損され難く、独立気泡内に水が浸入し難い濾材および、濾材の製造方法を提供する。
【解決手段】独立気泡構造のポリオレフィン系発泡体によって十字柱型に成形された濾材12において、表面の少なくとも一部にスキン層を有するように構成する。また、押出発泡法またはモールド発泡法により両面にスキン層を有する独立気泡構造のポリオレフィン系発泡体シートを成形し、その発泡体シートを十字型に打ち抜くことで、濾材を製造する。また、断面形状が十字型とされた長尺状のポリオレフィン系発泡体であって、端面を除く表面にスキン層を有する独立気泡構造のポリオレフィン系発泡体を押出発泡法により成形し、その発泡体を裁断することで、濾材を製造する。これにより、比較的強固なスキン層によって濾材の表面の少なくとも一部を覆うことで、独立気泡の破損を抑制するとともに、独立気泡内への水の浸入を抑制することが可能となる。
【選択図】図2

Description

本発明は、独立気泡構造のポリオレフィン系発泡体によって十字柱型に成形された濾過処理用濾材、および、濾過処理用濾材の製造方法に関する。
下水処理施設等では、排水等の被処理水中に懸濁している固形物(Suspended Solids:以下、「SS」と略す場合がある)を除去するべく、被処理水の濾過処理が行われている。濾過処理が行われる濾過槽としては、図1に示すように、被処理水を下方から上方に向かって流し、濾過槽10内に収容された浮揚性のある濾過処理用の濾材12によってSSを捕捉する構造のものが多く採用されている。
詳しくは、濾過槽10には、被処理水を濾過槽10内に導く被処理水経路14が形成されており、その被処理水経路14は、濾過槽10の下方において開口している。また、濾過槽10の上部には、濾過処理が施された濾過水を濾過槽10から排出させるための排出管16が接続されている。その排出管16の下方には、多数の連通穴が形成されたスクリーン18が配設されており、そのスクリーン18の下方に多数の浮揚性を有する濾材12が収容されている。なお、スクリーン18に形成された連通穴は、濾材12より小さくされており、濾材12がスクリーン18の上方へ浮上しないようにされている。
上記構造とされた濾過槽10内に被処理水経路14から被処理水が流入すると、被処理水は、濾過槽10内を下方から上方に向かって流れ、多数の濾材12の間を通過し、スクリーン18の上方へ流れる。この際に、SSが濾材12に捕捉され、SSが除去された濾過水が排出管16から排出されるのである。また、多くのSSが濾材12に捕捉されると、SSの除去効果が低下することから、濾過槽10では、濾材12を洗浄することが可能となっている。詳しくは、濾過槽10の下部には、排水管20が接続されており、濾材12の洗浄時に、濾過槽10内にスクリーン18の上方から洗浄水が投入される。これにより、洗浄水が、多数の濾材12の間を通過し、濾過槽10内を上方から下方に向かって流れ、排水管20から排水される。この際、洗浄水の流れにより、濾材12に捕捉されていたSSが、濾材12から離脱し、洗浄水と共に、排水管20から排出されるのである。なお、濾材12の下方にスクリーン等は配設されていないが、濾材12の浮力により、濾材12は排水管20から排出されないようになっている。
また、濾過槽10内に収容される濾材12には、図2に示すように、十字柱型のものが多く採用されている。これは、多数の濾材12が濾過槽10内に収容された場合に、濾材相互間に適度の隙間が形成され、その隙間を被処理水が流れることで、効率良くSSを除去することが可能となるためである。なお、下記特許文献には、濾過槽10と同様の構造の濾過槽、十字柱型の濾材12の一例が記載されている。
特開2003−136088号公報 特開2009−226332号公報 特開2005−270931号公報 特開2005−21842号公報 特開2007−38092号公報 特開2006−55749号公報
上記構造の濾過槽において、十字柱型の濾材を採用することで、効果的なSSの除去を行うことが可能となり、さらに、濾材の洗浄を行うことで、SSの除去効果の低下を防止することが可能となっている。しかしながら、濾材の浮揚性が経時的に低下し、濾材の洗浄時において、濾材が、洗浄水と共に排水管から排出されることがある。これは、浮揚性のある濾材として、独立気泡構造のポリオレフィン系発泡体が採用されることが多く、独立気泡内に水が浸入することで、濾材の浮揚性が低下するためと考えられる。
特に、十字柱型の濾材では、濾材の製造時に独立気泡が破損される傾向にあるため、濾材の浮揚性の経時的な低下が顕著となっている。詳しく説明すれば、従来、十字柱型の濾材を製造する際には、加圧一段発泡法または加圧二段発泡法等により肉厚のポリオレフィン系発泡体を成形し、その成型品をシート状にスライスする。そして、シート状にスライスされた発泡体を十字型に打ち抜くことで、十字柱型の濾材が製造されるのである。ただし、シート状にスライスされた発泡体の表面は、独立気泡を区画するセル膜がむき出しとなり、硬度が低いため、シート状の発泡体から十字柱型の濾材が打ち抜かれる際に、発泡体の表面にかかるせん断力および発泡体への圧縮作用によって独立気泡が破損され易くなっている。このため、十字柱型の濾材では、経時的に浮揚性が低下し易くなっている。
さらに、スライスされたシート状の発泡体から打ち抜かれた十字柱型の濾材では、殆ど全ての表面にむき出しとなったセル膜は比較的薄く、経時的に劣化し易いため、独立気泡内に水が浸入し易くなっている。本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、独立気泡が破損され難く、独立気泡内に水が浸入し難い濾過処理用濾材および、そのような濾過処理用濾材の製造方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明の濾過処理用濾材は、独立気泡構造のポリオレフィン系発泡体によって十字柱型に成形され、表面の少なくとも一部にスキン層を有することを特徴とする。
また、上記課題を解決するために、本発明の濾過処理用濾材の製造方法は、独立気泡構造のポリオレフィン系発泡体によって十字柱型に成形された濾過処理用濾材の製造方法において、押出発泡法またはモールド発泡法により両面にスキン層を有する独立気泡構造のポリオレフィン系発泡体シートを成形する発泡体シート成形工程と、そのシート成形工程において成形されたポリオレフィン系発泡体シートを十字型に打ち抜く発泡体打抜工程とを含むことを特徴とする。
また、上記課題を解決するために、本発明の濾過処理用濾材の製造方法は、独立気泡構造のポリオレフィン系発泡体によって十字柱型に成形された濾過処理用濾材の製造方法において、断面形状が十字型とされた長尺状のポリオレフィン系発泡体であって、端面を除く表面にスキン層を有する独立気泡構造のポリオレフィン系発泡体を押出発泡法により成形する長尺状発泡体成形工程と、その長尺状発泡体成形工程において成形されたポリオレフィン系発泡体を裁断する発泡体裁断工程とを含むことを特徴とする。
本発明の濾過処理用濾材および、本発明の製造方法により製造される濾過処理用濾材は、十字柱型に成形されており、表面の少なくとも一部にスキン層が形成されている。スキン層は、セル膜より厚く、強固であることから、発泡体の表面硬度を高くすることが可能となり、十字柱型の濾材の切り出し時において、独立気泡の破損を抑制することが可能となる。また、強固なスキン層により、濾過処理用濾材の表面の劣化を抑制することが可能となり、独立気泡内への水の侵入を抑制することが可能となる。したがって、本発明の濾過処理用濾材および、本発明の製造方法により製造される濾過処理用濾材によれば、独立気泡の破損を抑制するとともに、独立気泡内への水の浸入を抑制することが可能となる。
濾過処理用濾材によって濾過処理を施すための濾過槽を概略的に示す図である。 十字柱型に成形された濾過処理用濾材を概略的に示す斜視図である。 シート状に成形された発泡体を概略的に示す斜視図である。 長尺状に成形された発泡体を概略的に示す斜視図である。 実施例の濾過処理用濾材を製造するための原料の配合量および物性評価を示す表である。 比較例の濾過処理用濾材を製造するための原料の配合量および物性評価を示す表である。
本発明に記載の「濾過処理用濾材」は、独立気泡構造のポリオレフィン系発泡体によって十字柱型に成形されている。ポリオレフィン系発泡体の原料としては、ポリオレフィン,発泡剤,架橋剤等が用いられており、それらの原料が混合され、その混合された原料内での発泡により独立気泡が形成される。ポリオレフィンとしては、ポリエチレン,ポリプロピレン,エチレン−プロピレン共重合体,エチレン−酢酸ビニル共重合体,エチレン−アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。発泡剤としては、アゾジカルボンアミド,クエン酸ナトリウム,炭酸水素ナトリウム,低沸点炭化水素等が挙げられる。架橋剤としては、ジクミルパーオキサイド,2,5−ジメチル−2,5−ビスタ−シャリ−ブチルパーオキシヘキサン,1,3−ビスタ−シャリ−パーオキシイソプロピルベンゼン等が挙げられる。
また、十字柱型に成形される濾過処理用濾材は、平面視において十字形状、つまり、2本の線が交わる形状であればよく、2本の線が直角以外の角度に交わる形状であってもよい。また、2本の線は、直線であってもよく、曲線であってもよい。十字柱型に成形された濾過処理用濾材の寸法は、具体的に限定されるものではないが、SSの除去効率を考慮すると、縦横の長さが、3〜15mm程度が望ましく、厚さは、1〜10mm程度が望ましい。また、十字状に突出する部分の長さは、縦横の長さの10〜40%程度の長さであることが望ましい。詳しくは、図2に示す濾材12は、概して四角柱型の中央部30と、その中央部30の4つの側面から突出する4本の突出部32とに区分けすることが可能であり、突出部32の長さLが、濾材12の縦横の長さLの10〜40%程度であることが望ましい。
また、本発明に記載の「濾過処理用濾材」は、表面の少なくとも一部にスキン層を有している。ポリオレフィン系発泡体が成形される際には、表層にスキン層が形成され、そのスキン層の内部での発泡によって独立気泡が形成されていく。しかし、ポリオレフィン系発泡体の成型品から、十字柱型の濾材が成形される際に、通常は、スキン層が全て切り取られ、濾材の表面には、気泡を区画するセル膜が露出した状態となる。しかしながら、本発明に記載の「濾過処理用濾材」では、濾材の表面の少なくとも一部に、スキン層を残存、若しくは、形成することで、濾材の硬度を高くしている。これにより、独立気泡の破損を抑制するとともに、独立気泡内への水の浸入を抑制することが可能となるのである。
表面の少なくとも一部にスキン層を有する濾過処理用濾材の硬度は、65(アスカーC)以上であることが望ましく、特に、75(アスカーC)以上であることが望ましい。さらに言えば、85(アスカーC)以上であることが望ましい。ここで、アスカーCとは、日本ゴム協会標準規格(SRIS0101)に規定されたデュロメータ(スプリング式硬度計)の一つであり、硬さを測定するための測定器である。つまり、例えば、65(アスカーC)とは、アスカーC硬度計で測定した値が65であることを示している。
また、濾材を成形するためのポリオレフィン系発泡体の発泡倍率が高くなると、濾材の硬度は低下する傾向にある。一方、発泡倍率が低くなると、見掛け密度が上昇し、濾材の浮揚性が低下する。このため、発泡体の発泡倍率は、2〜5倍であることが望ましく、特に、2〜3倍であることが望ましい。なお、発泡倍率は、発泡体の発泡後の体積/発泡前の材料の体積であり、樹脂材料の比重/発泡後の見掛け密度(g/cm)で計算される。このため、同様の観点から見掛けコア密度により発泡体の物性を限定してもよい。具体的には、発泡体の見掛けコア密度は、200〜500kg/mであることが望ましく、特に、200〜330kg/mであることが望ましい。
また、濾材の表面がスキン層によって覆われているほど、独立気泡内に水は進入し難くなることから、スキン層の占有比率は高いことが望ましい。このため、濾材の全表面に対するスキン層の比率は、10%以上であることが望ましく、特に、15%以上であることが望ましい。さらに言えば、25%以上であることが望ましい。
また、本発明の「濾過処理用濾材」は、表面の少なくとも一部にスキン層を有していれば如何なる製造方法によって製造されてもよいが、ポリオレフィン系発泡体の成形品の表面に形成されたスキン層が残存するように、濾過処理用濾材を製造することが望ましい。詳しくは、ポリオレフィン系発泡体を、目的とする十字柱型の濾材の寸法、詳しくは、縦寸法,横寸法,厚さの少なくとも1つのものと同寸法となるように、成形し、その成型品から十字柱型の濾材を切り出すことで、濾材の表面に、発泡体成形品の表面に形成されたスキン層を残存させることが可能となる。
具体的には、例えば、図3に示すように、目的とする十字柱型の濾材の厚さtとなるように、押出発泡法、またはモールド発泡法によって、ポリオレフィン系の発泡体をシート状に成形する。このように成形された発泡体シート40の表面には、スキン層が形成されている。そして、その発泡体シート40を十字型に打ち抜く。この打ち抜き時にせん断力のかかる発泡体シート40の表面には、スキン層が形成されており、裁断刃が最初に相対的に硬度の高いスキン層に当接するため、せん断および圧縮による独立気泡の破損が抑制される。さらに、発泡体シート40の両面のスキン層が、十字柱型に打ち抜かれた濾材12の両面に残存する。これにより、独立気泡の破損を抑制するとともに、独立気泡内への水の浸入を抑制することが可能な十字柱型の濾材12が製造される。
また、例えば、図4に示すように、目的とする十字柱型の濾材12の縦横の長さLとなるように、押出発泡法によって、ポリオレフィン系の発泡体を長尺状に成形する。このように成形された長尺状発泡体50の表面には、両端面を除いて、スキン層が形成されている。そして、その長尺状発泡体50を、目的とする十字柱型の濾材の厚さtとなるように裁断する。裁断時にせん断力のかかる長尺状発泡体50の側面には、スキン層が形成されており、裁断刃が最初に相対的に硬度の高いスキン層に当接するため、せん断および圧縮による独立気泡の破損が抑制される。さらに、長尺状発泡体50の側面のスキン層が、十字柱型に裁断された濾材12の側面に残存する。これにより、独立気泡の破損を抑制するとともに、独立気泡内への水の浸入を抑制することが可能な十字柱型の濾材12が製造される。
また、発泡体成形品の表面に形成されたスキン層が残存するように、その成型品から濾過処理用濾材を切り出す方法だけでなく、スキン層のない十字柱型の濾材の表面に熱プレス処理等によりスキン層を形成する方法を採用することも可能である。しかしながら、熱プレス処理等によりスキン層を形成すると、熱プレス処理の際に、独立気泡が圧縮され、損傷する恐れがある。このため、熱プレス処理等により濾過処理用濾材の表面にスキン層を形成する方法は、推奨できる方法ではない。また、スキン層を残存させる方法であれば、発泡体シート40を成形する工程と発泡体シート40を打ち抜く工程、若しくは、長尺状発泡体50を成形する工程と長尺状発泡体50を裁断する工程により、十字柱型の濾材12を製造することが可能であるが、熱プレス処理等によりスキン層を形成する方法では、熱プレス処理工程を行う必要があり、生産性が低くなる。このことからも、熱プレス処理等によりスキン層を形成する方法は、推奨できる方法とは言い難い。
上述したように製造された濾過処理用濾材では、表面を覆うスキン層によって、独立気泡が破損し難くされており、独立気泡内への水の浸入が抑制されている。これにより、濾過処理用濾材の吸水率(%)は、比較的低い値となっている。吸水率とは、濾過処理用濾材の重量に対する濾過処理用濾材に吸収可能な水の重量の比率であり、濾過処理用濾材に吸収可能な水の重量として、濾過処理用濾材を10日間以上水に浸漬した際に吸水される水の重量が採用されている。具体的には、常温下において水に21日間浸漬させた濾過処理用濾材の重量Wを測定し、その浸漬後の濾過処理用濾材を80℃で168時間乾燥させ、乾燥後の濾過処理用濾材の重量Wを測定する。そして、以下の式に従って、吸水率A(%)を演算する。
A=〔(W−W)/W〕×100
このようにして演算された吸水率A(%)は、120%以下であることが望ましく、特に、60%未満であることが望ましい。さらに言えば、50%以下であることが望ましい。
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明は、この実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。
図5および図6に示す配合の原料から、実施例および比較例の濾過処理用濾材を製造した。それら図5および図6における原料の詳細を以下に示す。
・LDPE;低密度ポリエチレン、商品名:サンテックLD、旭化成社製、比重:924kg/m
・EVA1;エチレン酢酸ビニル重合体、商品名:ウルトラセン540F、東ソー社製、酢酸ビニル含有率:10%
・EVA2;エチレン酢酸ビニル重合体、商品名:ウルトラセン630、東ソー社製、酢酸ビニル含有率:15%
・ADCA;アゾジカルボンアミド、商品名:ビニホールAC#3、永和化成社製
・ブタン;イソブタン、岩谷瓦斯社製
・DCP;ジクミルパーオキサイド、化薬アクゾ社製
・酸化亜鉛;酸化亜鉛2種、ハクスイテック社製
・ステアリン酸塩;商品名:ジンクステアレート、淡南化学工業社製
図5の実施例1〜9および図6の比較例1〜6の各々の配合に従って、濾過処理用濾材を製造した。各実施例および各比較例の濾過処理用濾材は、図中の「製造方法」の欄に記載された製造方法に従って製造される。具体的には、「発泡体シート」と記載されている実施例1〜4,7,8および比較例2〜5では、上述した発泡体シート成形工程と発泡体打抜工程とにより、濾過処理用濾材が製造される。実施例5では、上述した発泡体シート成形工程後に一面(下面)のスキン層をスライスして排除した後、上述の発泡体打抜工程をスキン層側の面に施すことにより、濾過処理用濾材が製造される。また、「長尺状発泡体」と記載されている実施例6では、上述した長尺状発泡体成形工程と発泡体裁断工程とにより、濾過処理用濾材が製造される。また、「従来」と記載されている比較例1では、加圧一段発泡法または加圧二段発泡法等により肉厚の発泡体を成形し、その成型品をシート状にスライスする。そして、シート状にスライスされた発泡体を十字型に打ち抜くことで、濾過処理用濾材が製造される。また、「熱プレス」と記載されている実施例9では、加圧一段発泡法または加圧二段発泡法等により肉厚の発泡体を成形し、その成型品をシート状にスライスする。そして、シート状にスライスされた発泡体の両面に熱プレス処理を施し、その熱プレス処理の施された発泡体を十字型に打ち抜くことで、濾過処理用濾材が製造される。また、「四角型」と記載されている比較例6では、加圧一段発泡法または加圧二段発泡法等により肉厚の発泡体を成形し、その成型品をシート状にスライスする。そして、シート状にスライスされた発泡体を四角型に打ち抜くことで、濾過処理用濾材が製造される。つまり、実施例1〜9および比較例1〜5の濾過処理用濾材は十字柱型とされ、比較例6の濾過処理用濾材のみが、四角柱型とされている。
上記方法に従って製造された実施例1〜9および比較例1〜6の濾過処理用濾材に対して、以下の方法によって物性評価を行なった。
アスカーC硬度計によって、各実施例および各比較例の濾過処理用濾材の硬さを測定した。その測定値は高いほど、硬度が高いことを示しており、発泡体の成形体から濾過処理用濾材を切り出す際に独立気泡が損傷し難いことを示している。なお、図5および図6の「硬さ(アスカーC)」の欄にその値を示しておく。
また、硬度が高い濾過処理用濾材は、密度も高い傾向にあることから、JIS K 6767に基づく方法に準拠して濾過処理用濾材の見掛けコア密度(kg/m)を測定した。さらに、樹脂材料の比重/発泡後の見掛けコア密度(g/cm)により、発泡倍率(倍)を演算した。なお、図5および図6の「コア密度(kg/m)」および「発泡倍率(倍)」の欄に各々の値を示しておく。
また、スキン層の占有比率、つまり、濾過処理用濾材の全表面積に対するスキン層の面積の比率を演算した。濾過処理用濾材の全表面積は、図5および図6の「最外形寸法」の欄に記載の数値および、以下に示す数値に基づいて演算される。詳しくは、「最外形寸法」の欄には、濾過処理用濾材の縦寸法L×横寸法L×厚さt(図2ないし図4参照)が記載されている。また、以下に、各実施例および各比較例の濾過処理用濾材の突出部32の長さL(図2参照)を示す。
実施例1〜9および比較例1〜5:L=3mm
これにより、濾過処理用濾材の全表面積Sが演算される。さらに、図5および図6の「スキン層位置」の欄の記載から、スキン層が形成された面を把握し、そのスキン層が形成された面の面積Sを、上記数値に基づいて演算する。そして、以下の式に従って、スキン層の占有比率B(%)を演算する。
B=(S/S)×100
なお、演算値を、図5および図6の「スキン層率(%)」の欄に示しておく。
また、独立気泡内へ水が浸入し難くなっていることを評価するべく、濾過処理用濾材の吸水率を測定する。具体的には、上述したように、常温下において水に21日間浸漬させた濾過処理用濾材の重量Wを測定し、その浸漬後の濾過処理用濾材を80℃で168時間乾燥させ、乾燥後の濾過処理用濾材の重量Wを測定する。そして、上述した式に従って、吸水率A(%)を演算する。また、吸水率(%)のデータを補完するべく、水を吸収した際の濾過処理用濾材の見掛け密度(kg/m)も演算した。これは、吸水率(%)が高くなれば、当然、水を吸収した際の濾過処理用濾材の見掛け密度(kg/m)も高くなるためである。水を吸収した際の濾過処理用濾材の見掛け密度C(kg/m)は、水に浸漬前の濾過処理用濾材の体積Vに対する浸漬後の濾過処理用濾材の重量Wの比率であるが、便宜上、以下の式に従って演算した。
C=見掛けコア密度×(1+吸水率/100)
なお、図5および図6の「吸水率(%)」および「吸水時密度(kg/m)」の欄に、各々の演算値を示しておく。
以上の結果から、十字柱型の濾過処理用濾材の表面の一部がスキン層によって覆われることで、水に長期間浸漬しても独立気泡内に水が浸入し難くなっていることが解る。具体的には、表面にスキン層を有する実施例2,4〜9の濾過処理用濾材と、表面にスキン層を有していない比較例1の濾過処理用濾材とは、コア密度および発泡倍率が同じであるにも関わらず、表面にスキン層を有する濾過処理用濾材の吸水率(%)は、表面にスキン層を有していない濾過処理用濾材の吸水率(%)より低くなっている。そして、そのことを裏付けるように、表面にスキン層を有する濾過処理用濾材の吸水時密度(kg/m)は、表面にスキン層を有していない濾過処理用濾材の吸水時密度(kg/m)より低くなっている。
また、ポリオレフィンとしてポリエチレンを採用することで、濾過処理用濾材の硬度が高くなることが解る。具体的には、ポリオレフィンとしてポリエチレンを採用した実施例1〜6の濾過処理用濾材の硬さ(アスカーC)は、ポリオレフィンとしてエチレン酢酸ビニル重合体を採用した実施例7,8の濾過処理用濾材の硬さ(アスカーC)以上となっている。このことから、ポリオレフィンとしてポリエチレンを採用することが好ましい。ただし、ポリオレフィンとしてエチレン酢酸ビニル重合体を採用する場合には、実施例7と実施例8とを比較して分かるように、酢酸ビニルの含有量を低くすることで、濾過処理用濾材の硬さ(アスカーC)を高くし、吸水率(%)を低下させることが可能となる。
また、濾過処理用濾材の表面を覆うスキン層の比率が高いほど、吸水率(%)が低くなることが解る。具体的には、実施例2,4,5では、原料が同じであり、コア密度および発泡倍率が同じであるにも関わらず、スキン層率(%)が高いほど、吸水率(%)が低くなっている。したがって、濾過処理用濾材の表面を覆うスキン層の比率は高いことが好ましい。
また、濾過処理用濾材を製造する際に、熱プレス処理により濾過処理用濾材の表面にスキン層を形成するよりも、発泡体成形品の表面に形成されたスキン層を濾過処理用濾材の表面に残存させた方が、吸水率(%)が低くなることが解る。具体的には、実施例2,4〜9では、コア密度および発泡倍率が同じであるにも関わらず、発泡体成形品のスキン層を残存させた実施例2,4〜8の濾過処理用濾材の吸水率(%)は、熱プレス処理によりスキン層を形成した実施例9の濾過処理用濾材の吸水率(%)より低くなっている。従って、発泡体成形品の表面に形成されたスキン層を残存させるように、濾過処理用濾材を製造することが好ましい。
また、実施例1〜3から解るように、コア密度(kg/m)が低下すると、言い換えれば、発泡倍率(倍)が高くなると、硬さ(アスカーC)が低下し、吸水率(%)が高くなる傾向にある。特に、比較例1,3,5から解るように、コア密度(kg/m)が低くなりすぎると、言い換えれば、発泡倍率(倍)が高くなりすぎると、スキン層を有する比較例3,5の濾過処理用濾材の吸水率(%)は、スキン層の無い比較例1の濾過処理用濾材の吸水率(%)以上になってしまう。このことから、コア密度(kg/m)は200kg/m以上であり、発泡倍率(倍)は5倍以下であることが好ましい。ただし、コア密度(kg/m)が高くなりすぎると、言い換えれば、発泡倍率(倍)が低くなりすぎると、濾過処理用濾材の浮揚性が損なわれることから、コア密度(kg/m)は500kg/m以下であり、発泡倍率(倍)は2倍以上であることが好ましい。
なお、比較例6の濾過処理用濾材では、四角柱形状であることから、裁断時に、コア部分に対してせん断力や圧縮力がかかりにくいため、吸水率(%)は、好適な値となっているが、形状が四角柱状とされているため、濾材周囲に適正な空間が成形されずSSの除去効率が悪い。このため、濾過処理用濾材の形状は、SSの除去効率の高い十字柱型であることが好ましい。
以下、本発明の諸態様について列記する。
(1)独立気泡構造のポリオレフィン系発泡体によって十字柱型に成形され、表面の少なくとも一部にスキン層を有することを特徴とする濾過処理用濾材。
(2)全表面に対するスキン層の比率が、10%以上であることを特徴とする(1)項に記載の濾過処理用濾材。
(3)当該濾過処理用濾材の重量に対する、当該濾過処理用濾材を10日間以上水に浸漬した際に吸水される水の重量の比率が、60%未満であることを特徴とする(1)項または(2)項に記載の濾過処理用濾材。
(4)見掛けコア密度(JIS K 6767)が、200〜500kg/mであることを特徴とする(1)項ないし(3)項のいずれか1つに記載の濾過処理用濾材。
(5)硬さ(アスカーC)が、65以上であることを特徴とする(1)項ないし(4)項のいずれか1つに記載の濾過処理用濾材。
(6)(1)項ないし(5)項のいずれか1つに記載の濾過処理用濾材において、
押出発泡法またはモールド発泡法により両面にスキン層を有する独立気泡構造のポリオレフィン系発泡体シートを成形し、そのポリオレフィン系発泡体シートを十字型に打ち抜いて成形されることを特徴とする濾過処理用濾材。
(7)(1)項ないし(5)項のいずれか1つに記載の濾過処理用濾材において、
断面形状が十字型とされた長尺状のポリオレフィン系発泡体であって、端面を除く表面にスキン層を有する独立気泡構造のポリオレフィン系発泡体を押出発泡法により成形し、その長尺状のポリオレフィン系発泡体を裁断して成形されることを特徴とする濾過処理用濾材。
(8)独立気泡構造のポリオレフィン系発泡体によって十字柱型に成形された濾過処理用濾材の製造方法において、
押出発泡法またはモールド発泡法により両面にスキン層を有する独立気泡構造のポリオレフィン系発泡体シートを成形する発泡体シート成形工程と、
そのシート成形工程において成形されたポリオレフィン系発泡体シートを十字型に打ち抜く発泡体打抜工程と
を含むことを特徴とする濾過処理用濾材の製造方法。
(9)独立気泡構造のポリオレフィン系発泡体によって十字柱型に成形された濾過処理用濾材の製造方法において、
断面形状が十字型とされた長尺状のポリオレフィン系発泡体であって、端面を除く表面にスキン層を有する独立気泡構造のポリオレフィン系発泡体を押出発泡法により成形する長尺状発泡体成形工程と、
その長尺状発泡体成形工程において成形されたポリオレフィン系発泡体を裁断する発泡体裁断工程と
を含むことを特徴とする濾過処理用濾材の製造方法。
12:濾過処理用濾材
40:発泡体シート
50:長尺状発泡体

Claims (6)

  1. 独立気泡構造のポリオレフィン系発泡体によって十字柱型に成形され、表面の少なくとも一部にスキン層を有することを特徴とする濾過処理用濾材。
  2. 全表面に対するスキン層の比率が、10%以上であることを特徴とする請求項1に記載の濾過処理用濾材。
  3. 請求項1または請求項2に記載の濾過処理用濾材において、
    押出発泡法またはモールド発泡法により両面にスキン層を有する独立気泡構造のポリオレフィン系発泡体シートを成形し、そのポリオレフィン系発泡体シートを十字型に打ち抜いて成形されることを特徴とする濾過処理用濾材。
  4. 請求項1または請求項2に記載の濾過処理用濾材において、
    断面形状が十字型とされた長尺状のポリオレフィン系発泡体であって、端面を除く表面にスキン層を有する独立気泡構造のポリオレフィン系発泡体を押出発泡法により成形し、その長尺状のポリオレフィン系発泡体を裁断して成形されることを特徴とする濾過処理用濾材。
  5. 独立気泡構造のポリオレフィン系発泡体によって十字柱型に成形された濾過処理用濾材の製造方法において、
    押出発泡法またはモールド発泡法により両面にスキン層を有する独立気泡構造のポリオレフィン系発泡体シートを成形する発泡体シート成形工程と、
    そのシート成形工程において成形されたポリオレフィン系発泡体シートを十字型に打ち抜く発泡体打抜工程と
    を含むことを特徴とする濾過処理用濾材の製造方法。
  6. 独立気泡構造のポリオレフィン系発泡体によって十字柱型に成形された濾過処理用濾材の製造方法において、
    断面形状が十字型とされた長尺状のポリオレフィン系発泡体であって、端面を除く表面にスキン層を有する独立気泡構造のポリオレフィン系発泡体を押出発泡法により成形する長尺状発泡体成形工程と、
    その長尺状発泡体成形工程において成形されたポリオレフィン系発泡体を裁断する発泡体裁断工程と
    を含むことを特徴とする濾過処理用濾材の製造方法。
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