本発明の一実施形態について、図1に示すトラックスケール10を例に挙げて説明する。
同図に示すように、本実施形態に係るトラックスケール10は、例えば屋外に設置される計量部30と、この計量部30を視認することができる屋内に設置されるデータプロセッサ50と、を備えている。このうちの計量部30は、被計量物としてのトラック100が載置される載置体としての計量台32と、この計量台32を支持する複数の荷重センサとしての互いに同一規格の4つのデジタル式ロードセル(以下、単に「ロードセル」と言う。)34,34,…と、を備えている。
具体的には、計量台32は、図2に示すように、概略矩形の板状体であり、厳密には図示しないリブ等の適当な補強部材によって剛性補強が成された概略矩形の金属製平板である。そして、この計量台32の上面および下面が水平を成すように、当該計量台32の4隅が各ロードセル34,34,…によって支持されている。それぞれのロードセル34は、その(柱状の起歪体の)両端が外方に向かって概略半球状に突出した構造のいわゆるダブルコンベックス型のものであり、当該両端の一方を計量台32の下面の当接させ、他方を地面等の基礎面36に当接させた状態にあり、言わば直立姿勢にある。
なお、トラック100は、計量台32の長手方向に沿ってゆっくり走行することで、当該計量台32に乗り込み、或いは、当該計量台32から降ろされる。また、各ロードセル34,34,…には、「LC1」,「LC2」,「LC3」および「LC4」という個別の識別符号が付されている。例えば、計量台32の乗り込み口側の左隅(図2(a)における左上隅)に配置されたロードセル34に「LC1」という識別符号が付されており、当該計量台32の降り口側の左隅(図2(a)における右上隅)に配置されたロードセル34に「LC2」という識別符号が付されている。そして、計量台32の乗り込み口側の右隅(図2(a)における左下隅)に配置されたロードセル34に「LC3」という識別符号が付されており、当該計量台32の降り口側の右隅(図2(a)における右下隅)に配置されたロードセル34に「LC4」という識別符号が付されている。これ以降、各ロードセル34,34,…については、これら「LC1」,「LC2」,「LC3」および「LC4」という識別符号を用いて表現することがある。また、不特定のロードセル34について、「LCn」(n=1,2,3および4)という符号を用いて表現することがある。
計量台32にトラック100が乗り込み、つまり載置されると、このトラック100の重量に応じた荷重が当該計量台32を介して各ロードセル34,34,…に分散印加される。それぞれのロードセル34(LCn)は、自身に印加された荷重の大きさに応じたデジタル荷重検出信号wa[n]を生成する。図3を参照して詳しく説明すると、それぞれのロードセルLCnは、図示しない起歪体に貼着された4つ、または、それ以上の数、の歪ゲージ36,36,…がブリッジ状に接続された構成のホイートストンブリッッジ回路38を有している。このホイートストンブリッッジ回路38は、これを駆動するための図示しない励磁電源回路から与えられる励磁電源電圧の電圧値と、起歪体の変形に伴って各歪ゲージ36,36,…に生じる歪みの大きさと、に応じた電圧値を示すアナログ荷重検出信号waを生成する。このアナログ荷重検出信号waは、増幅回路40によって適当に増幅された後、A/D変換回路42に入力される。なお、増幅回路40の入力側または出力側には、当該アナログ荷重検出信号waに含まれるノイズ成分、特に周波数が100Hz以上の主に電気的要因によるノイズ成分、を除去するための図示しないアナログフィルタ回路が設けられている。A/D変換回路42は、この増幅回路40による増幅後のアナログ荷重検出信号waをデジタル化し、言わばデジタル化信号wad[n]に変換する。さらに、このA/D変換回路42による変換後のデジタル化信号wad[n]は、個別演算手段としてのCPU(Central
Processing Unit)44に入力される。
CPU44は、A/D変換回路42から入力されたデジタル化信号wad[n]を後述する式1に代入することで、デジタル荷重検出信号wa[n]求める。このデジタル荷重検出信号wa[n]は、入出力インタフェース(I/O)回路46を介してデータプロセッサ50に送られ、厳密には当該データプロセッサ50からの要求に応答して送られる。なお、デジタル荷重検出信号wa[n]の算出を含むCPU44の動作は、当該CPU44に付随された個別記憶手段としてのメモリ回路48に記憶されている個別制御プログラムに従う。
図1に戻って、データプロセッサ50は、各ロードセルLC1,LC2,LC3およびLC4から送られてくる各デジタル荷重検出信号wa[1],wa[2],wa[3]およびwa[4]の入力を受け付ける入出力インタフェース(I/O)回路52を備えている。この入出力インタフェース回路52に入力された各デジタル荷重検出信号wa[1],wa[2],wa[3]およびwa[4]は、さらに総合演算手段としてのCPU54に入力される。CPU54は、入出力インタフェース回路52経由で入力された各デジタル荷重検出信号wa[1],wa[2],wa[3]およびwa[4]に基づいて、後述する如くトラック100の重量を表す表示用の重量値Wdを求める。この表示重量値Wdは、入出力インタフェース回路52を介してCPU54に接続された表示手段としてのデジタル表示器56に表示される。また、図示しないが、当該表示重量値Wdは、入出力インタフェース回路52を介して外部にも出力され、例えば印刷装置等の外部装置に送られる。
これと並行して、CPU54は、それぞれのデジタル荷重検出信号wa[1],wa[2],wa[3]およびwa[4]に基づいて、それぞれのロードセルLC1,LC2,LC3およびLC4に印加される荷重のうちトラック100の重量による成分、言わば負荷荷重成分、を表す個別荷重値wd[1],wd[2],wd[3]およびwd[4]、を求める。これらの個別荷重値wd[1],wd[2],wd[3]およびwd[4]もまた、デジタル表示器56に表示されると共に、外部に出力される。なお、これらの個別荷重値wd[1],wd[2],wd[3]およびwd[4]は、例えばそれぞれのロードセルLC1,LC2,LC3およびLC4が正常に動作しているかどうかの評価、言い換えれば当該それぞれのロードセルLC1,LC2,LC3およびLC4に故障等の異常が発生していないかどうかの診断、に利用される。ただし、このいわゆる異常診断については、後述する異常診断機能によっても実現される。
さらに並行して、CPU54は、計量台32の左側を支持する2つのロードセルLC1およびLC2からの各デジタル荷重検出信号wa[1]およびwa[2]に基づいて、当該左側の2つのロードセルLC1およびLC2に印加される荷重のうち負荷荷重による成分を表す言わば左側荷重値Wd12、を求める。これと同様に、CPU54は、計量台32の右側を支持する2つのロードセルLC3およびLC4からの各デジタル荷重検出信号wa[3]およびwa[4]に基づいて、当該右側の2つのロードセルLC3およびLC4に印加される荷重のうち負荷荷重による成分を表す言わば右側荷重値Wd34、を求める。これら左側荷重値Wd12および右側荷重値Wd34もまた、デジタル表示器56に表示されると共に、外部に出力される。なお、これら左側荷重値Wd12および右側荷重値Wd34は、特にトラック100の左右の重量バランス、いわゆる偏荷重、を求めるのに利用される。この偏荷重の算出要領については、公知であるので、ここでは、その詳しい説明を省略する。
CPU54の動作は、当該CPU54に付随された総合記憶手段としてのメモリ回路58に記憶されている総合制御プログラムによって制御される。また、CPU54には、これに後述する零点設定指令やリセット指令等の各種指令を入力するための指令入力手段としての例えば操作キー60が、入出力インタフェース回路52を介して接続されている。
一方、計量台32からトラック100が降りて、当該計量台32に何らの物体も載置されていない空掛け状態になると、表示重量値Wdは、理想的には零になる。また、各個別荷重値wd[1],wd[2],wd[3]およびwd[4]も、理想的には零になる。さらに、左側荷重値Wd12および右側荷重値Wd34も、理想的には零になる。ところが、いずれかのロードセルLCnのアナログ荷重検出信号waが温度ドリフト等のドリフトによって変動し、この変動がデジタル荷重検出信号wa[n]に現れると、当該ロードセルLCnに対応する個別荷重値wd[n]が零でなくなり、つまりその零点が変動する。そして、表示重量値Wdもまた零でなくなり、つまりその零点が変動する(なお、複数のロードセルLCnにドリフトが生じている場合には、これら複数のロードセルLCn間で当該ドリフトによる変動分が相殺されて、結果的に、表示重量値Wdが零を維持することがある)。さらに、当該ドリフトが生じているロードセルLCnが左側ロードセルLC1およびLC2の少なくともいずれかである場合には、左側荷重値Wd12の零点が変動する(なお、左側ロードセルLC1およびLC2の両方にドリフトが生じている場合には、これら両者LC1およびLC2間で当該ドリフトによる変動分が相殺されて、結果的に、左側荷重値Wd12が零を維持することがある)。これと同様に、当該ドリフトが生じているロードセルLCnが右側ロードセルLC3およびLC4の少なくともいずれかである場合には、右側荷重値Wd34の零点が変動する(なお、右側ロードセルLC3およびLC4の両方にドリフトが生じている場合には、これら両者LC3およびLC4間で当該ドリフトによる変動分が相殺されて、結果的に、右側荷重値Wd34が零を維持することがある)。
そこで、本実施形態に係るトラックスケール10は、表示重量値Wdの零点を自動的に補正するための総合零トラッキング機能を備えている。また、それぞれの個別荷重値wd[n]の零点を自動的に補正するための個別零トラッキング機能を備えている。さらに、左側荷重値Wd12の零点を自動的に補正するための左側零トラッキング機能と、右側荷重値Wd34の零点を自動的に補正するための右側零トラッキング機能と、をも備えている。これらの零トラッキング機能について、以下に詳しく説明する。なお、ここでは、トラックスケール10の秤量Mcが50t(=50×103kg)であり、目量(実目量)Sdが10kgであり、つまりこれらの比である言わば測定分解能Rs(=Sd/Mc)が1/5000である、とする。また、本実施形態に係るトラックスケール10は、日本工業規格で規定されている零点設定機能、特に初期零点設定機能(初期零点設定装置:電源投入後にはかりを使用する前に自動的に表示を零に設定するための装置)および半自動零点設定機能を備えている。併せて、当該日本工業規格で規定されている零点表示機能(零点表示装置:零点からの偏差が目量の1/4以内である場合に特別な信号を表示する装置)を備えている。加えて、それぞれのロードセルLCnに故障等の異常が発生していないかどうかを診断するための異常診断機能を備えている。これらの機能についても、適宜に説明する。
まず、総合零トラッキング機能について、説明する。この総合零トラッキング機能は、上述したように表示重量値Wdの零点を自動補正するものであるが、日本工業規格によれば、当該表示重量値Wdの零点の精度は、目量の1/4を超えてはならない、言い換えれば目量の1/4以下でなければならない、と規定されている。この規定に則って、本実施形態においては、例えば目量Sdの1/4の精度で、つまり2.5kg(=10kg/4)という言わば補正分解能Sbで、表示重量値Wdの零点補正が成されるものとする。
この前提の下、それぞれのロードセルLCn内において、詳しくは当該ロードセルLCn内のCPU44によって、次の式1に基づく演算が行われることで、デジタル荷重検出信号wa[n]が求められる。
《式1》
wa[n]=k[n]・(wad[n]−wis[n])
この式1において、wad[n]は、上述したA/D変換回路42による変換後のデジタル化信号である。そして、wis[n]は、ロードセルLCn自身が持つ初期荷重成分を表す当該ロードセルLCn単体の初期荷重値である。このロードセルLCn単体の初期荷重値wis[n]は、当該ロードセルLCnが計量部30の構成要素として組み込まれる前の単体の状態にあり、かつ、当該ロードセルLCnに対して何らの荷重も印加されていない無負荷状態にあるときの、デジタル化信号wad[n]の記憶値である。そして、k[n]は、ロードセルLCn単体のスパン係数(ゲイン)である。このロードセルLCn単体のスパン係数k[n]は、当該ロードセルLCnが単体の状態にあり、かつ、当該ロードセルLCnに対してその定格容量以下の(好ましくは当該定格容量と等価の)既知の基準荷重が印加された状態にあるときに、図4に示すように、デジタル荷重検出信号wa[n]の1カウント値(デジタル値)の幅saが0.625kg(=Sd/{N/(Sb/Sd)}=10kg/16)という重量値に相当するように設定される。なお、ここで言うNは、ロードセルLCnの数であり、つまりN=4である。このスパン係数k[n]は、初期荷重値wis[n]と共に、ロードセルLCn単体の調整時に求められ、メモリ回路48に記憶される。
この式1に基づく演算は、例えば図5に示すようなデジタル荷重検出信号生成回路200によって表現することができる。即ち、このデジタル荷重信号生成回路200は、A/D変換回路42による変換後のデジタル化信号wad[n]が入力される加算器202を有している。加算器202は、当該デジタル化信号wad[n]からメモリ回路48に記憶されているロードセルLCn単体の初期荷重値wis[n]を差し引く。そして、この加算器202による差し引き処理後の信号(=wad[n]−wis[n])は、乗算器204に入力される。乗算器204は、当該差し引き処理後の信号に対してメモリ回路48に記憶されているロードセルLCn単体のスパン係数k[n]を乗ずる。これによって、デジタル荷重検出信号wa[n]が生成され、つまり式1に基づく演算が実現される。
なお、式1(図5)においては、ロードセルLCn単体の初期荷重値wis[n]は考慮されているものの、計量台30の重量を含む計量部30全体の初期荷重成分については考慮されていない。従って、この式1に基づくデジタル荷重検出信号wa[n]においては、零点が定まっておらず、言わば不確定である。そして、この零点が不確定のまま、当該デジタル荷重検出信号wa[n]は、データプロセッサ50に入力され、ひいてはCPU54に入力される。
データプロセッサ50内のCPU54は、各ロードセルLC1,LC2,LC3およびLC4からの各デジタル荷重検出信号wa[1],wa[2],wa[3]およびwa[4]を合計することで、つまり次の式2に基づいて、総合デジタル荷重検出信号Waを求める。
《式2》
Wa=wa[1]+wa[2]+wa[3]+wa[4]
この総合デジタル荷重検出信号Waは、図6(a)に示すように、その1カウント値の幅Saが各デジタル荷重検出信号wa[1],wa[2],wa[3]およびwa[4]のそれぞれの1カウント値幅saと等価(Sa=sa)な信号であり、つまり当該1カウント値幅Saが0.625kgという重量値に相当する信号である。この総合デジタル荷重検出信号Waにおいても、その零点は不確定である。
さらに、CPU54は、この総合デジタル荷重検出信号WaをロードセルLCnの数N(=4)で除することによって、つまり次の式3に基づいて、当該総合デジタル荷重検出信号Waの1カウント値幅Saを変更し、言わばカウント値幅変更信号Wa’を求める。なお、この式3に基づく演算において、小数点以下は切り捨てられる。
《式3》
Wa’=Wa/N=Wa/4 ∵ N=4
この式3に基づくカウント値幅変更信号Wa’は、図6(b)に示すように、その1カウント値幅Sa’が総合デジタル荷重検出信号Waの1カウント値幅SaのN倍(Sa’=Sa・N)の信号である。即ち、当該1カウント値幅Sa’は、2.5kg(=0.625kg×4)に相当し、つまり上述した補正分解能Sbに相当する。そして、このカウント値幅変更信号Wa’においても、その零点は不確定である。このカウント値幅変更信号Wa’を求めた上で、CPU54は、当該カウント値幅変更信号Wa’の零点を確定するべく、言い換えればそのような内部信号Wbを求めるべく、次の式4に基づく演算を実行する。
《式4》
Wb=K・(Wa’−Wi)−Wf−Wz
この式4において、Wiは、計量部30全体の初期荷重値であり、詳しくは計量台32に何らの物体も載置されていない空掛け状態にあるときのカウント値幅変更信号Wa’の記憶値である。そして、Kは、計量部30全体のスパン係数である。このスパン係数Kは、計量台32に秤量Mc以下の(好ましくは秤量Mcと等価の)既知重量の基準分銅が載置されたときに、図6(c)に示すように、当該式4に基づく内部信号Wbの1カウント値幅Sbが2.5kgに相当するように設定される。ただし、上述の式1におけるそれぞれのロードセルLCn単体のスパン係数k[n]が精確に調整されていれば、この計量部30全体のスパン係数Kは基本的に1である。なお、この内部信号Wbの1カウント値幅Sbの符号から分かるように、当該内部信号Wbの1カウント値幅Sbが補正分解能Sbを決定付ける。さらに、Wfは、内部信号Wbの零点のドリフトによる変動量の累積値であり、言い換えれば総合零トラッキング機能による当該内部信号Wbの零点補正量の累積値である。この内部信号Wbの零点補正量累積値Wfについては、後で詳しく説明する。そして、Wzは、内部信号Wbの零点を強制的に設定するための零点調整値である。この零点調整値Wzについても、後で詳しく説明する。この式4における初期荷重値Wiおよびスパン係数Kは、本実施形態に係るトラックスケール10全体としての事前の調整時に求められ、メモリ回路58に記憶される。そして、零点補正量累積値Wfおよび零点調整値Wzもまた、メモリ回路58に記憶され、特に零点補正量累積値Wfについては、当該メモリ回路58を構成する図示しない不揮発性メモリに記憶される。そして、これら零点補正量累積値Wfおよび零点調整値Wzは、後述する如く適宜に更新される。
加えて、CPU54は、次の式5に基づいて、表示レベル信号Wcを求める。なお、この式5に基づく演算において、小数点以下は切り捨てられる。
《式5》
Wc={Wb・(Sb/Sd)}+0.5=(Wb/4)+0.5
∵ Sb/Sd=4
この式5に基づく表示レベル信号Wcは、図6(d)に示すように、その1カウント値幅Scが内部信号Wbの1カウント値幅SbのSd/Sb倍、つまり4倍(Sc=4・Sb)、の信号である。即ち、当該1カウント値幅Scは、目量Sdと同じ(Sc=Sd)10kgに相当する。
その上で、CPU54は、この式5に基づく表示レベル信号Wcに変換係数として目量Sd(=10kg)を乗ずることで、つまり次の式6に基づいて、当該表示レベル信号Wcを表示重量値Wdに変換する。
《式6》
Wd=Sd・Wc=10・Wc ∵ Sd=10[単位:kg]
この式6に基づく表示重量値Wdは、図6(e)に示すように、目量Sd(=10kg)を最小単位とする値である。ここで例えば、この表示重量値Wdの零点が精確である、とすると、当該表示重量値Wdは、これが0kgであるときには、計量台32に印加されている負荷荷重の大きさが−5kg超かつ5kg未満であることを表す。そして例えば、表示重量値Wdが10kgであるときには、計量台32への負荷荷重の大きさが5kg以上かつ15kg未満であることを表す。これよりも大きい(正の)表示重量値Wdについても同様に、目量Sd単位で計量台32への負荷荷重の大きさが表される。一方、表示重量値Wdが例えば−10kgであるときは、計量台32への負荷荷重の大きさが−15kg超かつ−5kg以下であることを表す。これよりも小さい(負の)表示重量値Wdについても同様に、目量Sd単位で計量台32への負荷荷重の大きさが表される。そして、この表示重量値Wdが、デジタル表示器56に表示されると共に、外部に出力される。
ここで説明が前後するが、例えば、本実施形態に係るトラックスケール10が電源オフの状態にあり、この電源オフの状態から電源オンの状態に遷移する、つまり起動される、とする。この起動時においては、計量台32に何らの物体も載置されていない空掛け状態にあることが確認された上で、当該起動が成される。
すると、CPU54は、上述の式4における零点調整値Wzを0とする。このとき、当該式4における零点補正量累積値Wfには、0または後述する如く適宜に更新された値が設定された状態にある。その上で、CPU54は、当該式4に基づいて内部信号Wbを求める。そして、この内部信号Wbの値を起動時の当該内部信号Wbの零点として認識し、これを式4における零点調整値Wzに代入する。そして改めて、式4に基づいて内部信号Wbを求め、ひいては式6に基づいて表示重量値Wdを求める。これにより、内部信号Wbの値が0となり、ひいては表示重量値Wdが0となる。このように、起動時の内部信号Wbの値(言わば零点のずれ)を吸収するべく、零点調整値Wzが適宜に更新されることで、当該内部信号Wbの初期零点設定が成され、ひいては表示重量値Wdの初期零点設定が成される。即ち、初期零点設定機能が実現される。
この初期零点設定後、CPU54は、1秒よりも遥かに短い時間間隔、例えば1秒の正数分の1の周期、より詳しくは数ms〜数十msの周期で、内部信号Wbを求め、ひいては表示重量値Wdを求める。併せて、CPU54は、内部信号Wbを逐一監視することで、空掛け状態にあるか否かを判定する。具体的には、1秒以上の所定期間にわたって内部信号Wbの値が−1以上かつ1以下(−1≦Wb≦1)であるか否か、つまり上述の図6(c)において符号Aで示される範囲内にあるか否か、を確認する。そして、内部信号Wbの値が当該範囲A内にあるとき、CPU54は、空掛け状態にある、と判定する。言い換えれば、1秒以上の所定期間にわたって内部信号Wbの値が−1以上かつ1以下の範囲A内にあることをもって、空掛け状態にある、と定義される。なお、ここで言う1秒以上の所定期間は、例えば1秒〜10秒であり、好ましくは1秒である。また、図示は省略するが、CPU54は、内部信号Wbに含まれるノイズ成分、特に周波数が100Hz以下の主に機械的要因(振動)によるノイズ成分、を除去するためのデジタルフィルタ回路を構成しており、このデジタルフィルタ回路によるフィルタリング処理後の当該内部信号Wbを監視する。
さらに、CPU54は、空掛け状態にあるときであって、とりわけ内部信号Wbの値が0であるとき、つまり図6(c)において符号Bで示される範囲内にあるとき、当該内部信号Wbの零点は精確である、換言すれば表示重量値Wdの零点は精確である、と認識する。そして、その旨を表す零点指示信号を生成する。この零点指示信号に応答して、デジタル表示器56が零点表示という特別な表示をする。即ち、零点表示機能が実現される。
また、空掛け状態にあるときであって、内部信号Wbの値が−1か1であるとき、つまり図6(c)において符号Cで示される範囲内にあるとき、CPU54は、ドリフトによって当該内部信号Wbの零点が変動したものと認識する。そして、この内部信号Wbの零点変動を補正するべく、当該内部信号Wbの値を式4における零点補正量累積値Wfに加減算する。例えば、内部信号Wbの値が−1であるときには、式4における零点補正量累積値Wfに1を加える。一方、内部信号Wbの値が1であるときには、式4における零点補正量累積値Wfから1を減ずる。そして改めて、式4に基づいて内部信号Wbを求め、ひいては式6に基づいて表示重量値Wdを求める。これにより、内部信号Wbの値が0となり、ひいては表示重量値Wdが0となる。このように、ドリフトによる内部信号Wbの零点の変動分を吸収するべく、零点補正量累積値Wfが適宜に更新されることで、当該ドリフトによる内部信号Wbの零点変動が補正され、ひいては表示重量値Wdの零点変動が補正される。即ち、総合零トラッキング機能が実現される。
なお、空掛け状態にないとき、つまり内部信号Wbの値が−1よりも小さいか若しくは1よりも大きいときには、CPU54は、当該内部信号Wbの変動が負荷荷重によるものである、と認識する。この場合、CPU54は、内部信号Wbの零点を補正することなく、表示重量値Wdを求める。
さらに、操作キー60によって表示重量値Wdを強制的に0にするための零点設定操作が成され、これに伴い、CPU54に上述した零点設定指令が入力されると、当該CPU54は、そのときの内部信号Wbの値を式4における零点調整値Wzに加減算する。例えば、内部信号Wbの値が負の値であるときには、式4における零点調整値Wzに当該内部信号Wbの値の絶対値|Wb|を加える。一方、内部信号Wbの値が正の値であるときには、式4における零点調整値Wzから当該内部信号Wbの値の絶対値|Wb|を減ずる。そして改めて、内部信号Wbを求め、ひいては表示重量値Wdを求める。これにより、内部信号Wbの値が0となり、ひいては表示重量値Wdが0となる。このように、零点設定操作が成されたときの内部信号Wbの値を吸収するべく、零点調整値Wzが適宜に更新されることで、当該内部信号Wbの零点が強制的に設定し直され、ひいては表示重量値Wdの零点が強制的に設定し直される。即ち、半自動零点設定機能が実現される。なお、零点設定操作は、基本的に、表示重量値Wdの零点が比較的に大きくずれているとき、つまり空掛け状態にあるにも拘らず表示重量値Wdが0から比較的に大きく離れているときに、成される。従って、零点設定操作が成されるときは、基本的に、空掛け状態であることが必須とされる。ただし、当該零点設定操作による半自動零点設定機能を利用して、いわゆる風袋引きをすることもできる。この場合は、風袋に相当するものが計量台32に載置された状態で、零点設定操作が成される。
加えて、操作キー60によってトラックスケール10を初期状態に戻すためのリセット操作が成され、これに伴い、CPU54に上述したリセット指令が入力されると、当該CPU54は、リセット動作をする。具体的には、CPU54は、式4における零点補正量累積値Wfおよび零点調整値Wzのそれぞれを0とする。その上で、CPU54は、式4に基づいて内部信号Wbを求め、この内部信号Wbの値を当該式4における零点調整値Wzに代入する。そして改めて、式4に基づいて内部信号Wbを求め、ひいては式6に基づいて表示重量値Wdを求める。これにより、内部信号Wbの値が0となり、ひいては表示重量値Wdが0となる。併せて、上述の如く零点補正量累積値Wfがその初期値である0に戻され、つまりリセットされる。なお、リセット操作は、基本的に、トラックスケール10の設置直後や、後述する異常診断機能によって異常であると診断されたロードセルLCnの修理または交換が行われた直後等のように、当該トラックスケール10を初期状態に戻す必要があるときにのみ、実行される。それゆえに、リセット操作は、トラックスケール10の設置業者等の特別な資格を有する者のみが実行可能であり、このために例えば、操作キー60による所定のパスワードの入力が要求される。また、このリセット操作が成されるときも、空掛け状態にあることが必須とされる。
上述の式2〜式6に基づく演算は、例えば図7に示すような総合演算回路300によって表現することができる。即ち、この総合演算回路300は、各ロードセルLC1,LC2,LC3およびLC4からの各デジタル荷重検出信号wa[1],wa[2],wa[3]およびwa[4]が入力される加算器302を有している。この加算器302は、これら各デジタル荷重検出信号wa[1],wa[2],wa[3]およびwa[4]を合計する。これによって、式2に基づく演算が実現され、つまり総合デジタル荷重検出信号Waが生成される。そして、この総合デジタル荷重検出信号Waは、乗算器304に入力される。
乗算器304は、加算器302から入力された総合デジタル荷重検出信号Waに対して、ロードセルLCnの数Nの逆数(1/N=1/4)を乗ずる。これにより、式3に基づく演算が実現され、つまりカウント値幅変更信号Wa’が生成される。なお、この乗算器304による乗算処理(式3に基づく演算)においては、上述の如く小数点以下は切り捨てられる。また、ロードセルLCnの数Nは、メモリ回路58に記憶されている。
さらに、カウント値幅変更信号Wa’は、別の加算器306に入力される。加算器306は、当該カウント値幅変更信号Wa’からメモリ回路58に記憶されている計量部30全体の初期荷重値Wiを差し引く。そして、この加算器306による差し引き処理後の信号(=Wa’−Wi)は、乗算器308に入力される。乗算器308は、当該差し引き処理後の信号に対してメモリ回路58に記憶されている計量部30全体のスパン係数Kを乗ずる。この乗算器308による乗算処理後の信号(=K・(Wa’−Wi))は、さらに別の加算器310に入力される。加算器310は、当該乗算処理後の信号からメモリ回路58に記憶されている零点補正量累積値Wfを差し引く。そして、この加算器310による差し引き処理後の信号(=K・(Wa’−Wi)−Wf)は、さらに別の加算器312に入力される。この加算器312は、前段の加算器310による差し引き処理後の信号からメモリ回路58に記憶されている零点調整値Wzを差し引く。これにより、つまり加算器306と乗算器308と別の加算器310とさらに別の加算器312とを含む内部信号生成回路314によって、式4に基づく演算が実現され、内部信号Wbが生成される。なお、上述したように、零点補正量累積値Wfは、ドリフトが生じたときに更新される。そして、この零点補正量累積値Wfは、操作キー60によってパスワードの入力を含むリセット操作が成されたときにのみリセット(Wf=0)され、それ以外のときは(起動時を含め)リセットされず、それまでの記憶値(0または適宜に更新された値)を維持する。言い換えれば、当該零点補正量累積値Wfについては、リセット操作が成されない限り、その更新が継続される。また、このリセット操作時に零点補正量累積値Wfがリセットされるのに伴い、当該リセット操作の直前の零点補正量累積値Wfが零点調整値Wzに加えられ、つまり零点調整値Wzが更新される。この零点調整値Wzは、操作キー60による零点設定操作時にも更新され、また、起動時にも更新される。
内部信号生成回路314によって生成された内部信号Wbは、さらに別の乗算器316に入力される。乗算器316は、内部信号Wbに対して当該内部信号Wbの1カウント値幅Sb(言い換えれば表示重量値Wdの零点補正分解能Sb)と目量Sdとの相互比率Sb/Sd(=1/4)を乗ずる。なお、当該相互比率Sb/Sdは、予めメモリ回路58に記憶されている。さらに、この乗算器316による乗算処理後の信号(=Wb・(Sb/Sd))は、加算器318に入力される。加算器318は、当該乗算処理後の信号に対して0.5という定数を加える。この0.5という定数もまた、予めメモリ回路58に記憶されている。これにより、つまり乗算器316と加算器318とを含む表示レベル信号生成回路320によって、上述の式5に基づく演算が実現され、つまり表示レベル信号Wcが生成される。この表示レベル信号生成回路320による演算処理(式5に基づく演算)においては、上述の如く小数点以下は切り捨てられる。
この表示レベル信号生成回路320によって生成された表示レベル信号Wcは、さらに別の乗算器322に入力される。この乗算器322は、表示レベル信号Wcに対して変換係数としての目量Sd(=10kg)を乗ずる。この目量Sdもまた、予めメモリ回路58に記憶されている。これにより、式6に基づく演算が実現され、つまり表示重量値Wdが求められる。
このように図7の総合演算回路300によって、つまり式2〜式6に基づく演算によって、被計量物としてのトラック10の重量を表す表示重量値Wdが求められる。そして、この表示重量値Wdの元となる内部信号Wb(図6(c)参照)の値が1秒以上の所定期間にわたって−1以上かつ1以下の範囲A内にあるときに、空掛け状態にある、と判定される。そして特に、当該内部信号Wbの値が0である範囲B内にあるときに、この内部信号Wbの零点が精確であり、換言すれば表示重量値Wdの零点が精確である、と見なされ、その旨を表す零点表示が成され、つまり零点表示機能が作動する。一方、内部信号Wbの値が−1か1である範囲C内にあるとき、当該内部信号Wbの零点が補正され、ひいては表示重量値Wdの零点が補正され、つまり総合零トラッキング機能が作動する。加えて、操作キー60によって零点設定操作が成されたときに、内部信号Wbの零点が強制的に設定し直され、ひいては表示重量値Wdの零点が強制的に設定し直され、つまり半自動零点設定機能が作動する。なお、起動時にも、内部信号Wbの零点が設定され、ひいては表示重量値Wdの零点が設定され、つまり初期零点設定機能が作動する。そして、操作キー60によってパスワードの入力を含むリセット操作が成されると、上述の式4における零点補正量累積値Wfがその初期値である0にリセットされることを含め、トラックスケール10が初期状態にリセットされる。
次に、個別零トラッキング機能について、説明する。この個別零トラッキング機能は、上述したようにそれぞれのロードセルLCnに対応する個別荷重値wd[n]の零点を自動補正するものである。この個別零トラッキング機能による零点補正対象である個別荷重値wd[n]は、上述の総合零トラッキング機能による零点補正対象である表示重量値Wdよりも小さく、おおよそ当該表示重量値WdをロードセルLCnの数N(=4)で除した値に近くなる。そこで、この個別零トラッキング機能においては、総合零トラッキング機能による表示重量値Wdの零点補正分解能Sbの1/Nの分解能sb(=2.5kg/4=0.625kg)で、個別荷重値wd[n]の零点補正が成される。また、個別荷重値wd[n]の目量(以下、「個別目量」と言う。)sdは、表示重量値Wdの目量Sdの1/N(=10kg/4=2.5kg)とされる。
この個別零トラッキング機能を実現するために、データプロセッサ50内のCPU54は、それぞれのロードセルLCnから得られるデジタル荷重検出信号wa[n]ごとに、その零点を確定するべく、言い換えればそのような個別内部信号wb[n]を求めるべく、次の式7に基づく演算を実行する。
《式7》
wb[n]=wa[n]−wi[n]−wf[n]−wz[n]
この式7において、wi[n]は、対応するロードセルLCnに対する初期荷重値であり、詳しくは空掛け状態にあるときのデジタル荷重検出信号wa[n]の記憶値である。そして、wf[n]は、この式7に基づく個別内部信号wb[n]の零点のドリフトによる変動量の累積値であり、言い換えれば個別零トラッキング機能による当該個別内部信号wb[n]の零点補正量の累積値である。この言わば個別零点補正量累積値wf[n]については、後で詳しく説明する。さらに、wz[n]は、個別内部信号wb[n]の零点を強制的に設定するための個別零点調整値である。この個別零点調整値wz[n]についても、後で詳しく説明する。なお、この式7における初期荷重値wi[n]は、上述したトラックスケール10全体としての事前の調整時に求められ、メモリ回路58に記憶される。また、個別零点補正量累積値wf[n]および個別零点調整値wz[n]も、メモリ回路58に記憶され、特に個別零点補正量累積値wf[n]については、メモリ回路58を構成する図示しない不揮発性メモリに記憶される。そして、これら個別零点補正量累積値wf[n]および個別零点調整値wz[n]は、後述する如く適宜に更新される。
この式7に基づく個別内部信号wb[n]は、図8(a)に示すように、その1カウント値幅sbが図4に示したデジタル荷重検出信号wa[n]の1カウント値幅saと同じ(sb=sa=0.625kg)信号である。
さらに、CPU54は、上述の式5に準拠する次の式8に基づいて、個別表示レベル信号wcを求める。なお、この式8に基づく演算においても、式5と同様に、小数点以下は切り捨てられる。
《式8》
wc[n]={wb[n]・(sb/sd)}+0.5=(wb[n]/4)+0.5
∵ sb/sd=4
この式8に基づく個別表示レベル信号wc[n]は、図8(b)に示すように、その1カウント値幅scが個別内部信号wb[n]の1カウント値幅sbのsd/sb倍、つまり4倍(sc=4・sb)、の信号である。即ち、当該1カウント値幅scは、個別目量sdと同じ(sc=sd)2.5kgに相当する。
その上で、CPU54は、上述の式6に準拠する次の式9に基づいて、個別表示レベル信号wc[n]を個別荷重値wd[n]に変換する。
《式9》
wd[n]=sd・wc[n]=2.5・wc[n]
∵ sa=2.5[単位:kg]
この式9に基づく個別荷重値wd[n]は、図8(c)に示すように、個別目量sd(=2.5kg)を最小単位とする値である。ここで例えば、この個別荷重値wd[n]の零点が精確である、とすると、当該個別荷重値wd[n]は、これが0kgであるときには、対応するロードセルLCnに印加されている負荷荷重の大きさが−1.25kg超かつ1.25kg未満であることを表す。そして例えば、個別荷重値wd[n]が2.5kgであるときには、当該ロードセルLCnへの負荷荷重の大きさが1.25kg以上かつ3.75kg未満であることを表す。これよりも大きい(正の)個別荷重値wd[n]についても同様に、個別目量sd単位でロードセルLCnへの負荷荷重の大きさが表される。一方、個別荷重値wd[n]が例えば−2.5kgであるときは、ロードセルLCnへの負荷荷重の大きさが−3.75kg超かつ−1.25kg以下であることを表す。これよりも小さい(負の)個別荷重値wd[n]についても同様に、個別目量sd単位でロードセルLCnへの負荷荷重の大きさが表される。この個別荷重値wd[n]が、デジタル表示器56に表示されると共に、外部に出力される。
ここで説明が前後するが、例えばトラックスケール10の起動時には、CPU54は、それぞれのロードセルLCnに対応するものごとに、上述の式7における個別零点調整値wz[n]を0とする。このとき、式7における個別零点補正量累積値wf[n]には、0または後述する如く適宜に更新された値が設定された状態にある。その上で、CPU54は、式7に基づいて個別内部信号wb[n]を求める。そして、この個別内部信号wb[n]の値を起動時(初期)の当該個別内部信号wb[n]の零点として認識し、これを式7における個別零点調整値wz[n]に代入する。そして改めて、式7に基づいて個別内部信号wb[n]を求め、ひいては式9に基づいて個別荷重値wd[n]を求める。これにより、個別内部信号wb[n]の値が0となり、ひいては個別荷重値wd[n]が0となる。このように、起動時の個別内部信号wb[n]の値を吸収するべく、個別零点調整値wz[n]が適宜に更新されることで、当該個別内部信号wb[n]の初期零点設定が成され、ひいては個別荷重値wd[n]の初期零点設定が成される。即ち、それぞれのロードセルLCnごとの初期零点設定機能、言わば個別初期零点設定機能、が実現される。
この個別初期零点設定後、CPU54は、図6(c)に示した内部信号Wbの算出周期(タイミング)に合わせて、それぞれのロードセルLCnに対応するものごとに、個別内部信号wb[n]を求め、ひいては個別荷重値wd[n]を求める。なお、個別内部信号wb[n]は、これに含まれる主に機械的要因によるノイズ成分を除去するべく、内部信号Wbについてのものと同様のデジタルフィルタ回路によってフィルタリング処理される。そして、CPU54は、例えば空掛け状態にあるとき、つまり内部信号Wbの値が1秒以上の所定期間にわたって−1以上かつ1以下の範囲A内にあるとき、さらに、個別内部信号wb[n]の値が0であるか否かを判定し、好ましくは当該個別内部信号wb[n]の値が1秒以上の所定期間にわたって0であるか否かを判定する。ここで例えば、個別内部信号wb[n]の値が0であるとき、つまり図8(a)において符号B’で示される範囲内にあるとき、CPU54は、当該個別内部信号wb[n]の零点は精確であり、換言すれば個別荷重値wd[n]の零点は精確である、と認識する。そして、その旨を表す個別零点指示信号を生成する。この個別零点指示信号に応答して、デジタル表示器56が個別零点表示をする。即ち、それぞれのロードセルLCnごとの零点表示機能、言わば個別零点表示機能、が実現される。
一方、空掛け状態にあるときであって、個別内部信号wb[n]の値が0という範囲B’内にないとき、言い換えれば当該個別内部信号wb[n]の値が−1以下または1以上であるとき、CPU54は、ドリフトによって当該個別内部信号wb[n]の零点が変動したものと認識する。そして、この個別内部信号wb[n]の零点変動を補正するべく、当該個別内部信号wb[n]の値を式7における個別零点補正量累積値wf[n]に加減算する。例えば、個別内部信号wb[n]の値が負の値であるときには、式7における個別零点補正量累積値wf[n]に当該個別内部信号wb[n]の値の絶対値|wb[n]|を加える。これとは逆に、個別内部信号wb[n]の値が正の値であるときには、式7における個別零点補正量累積値wf[n]から当該個別内部信号wb[n]の値の絶対値|wb[n]|を減ずる。そして改めて、式7に基づいて個別内部信号wb[n]を求め、ひいては式9に基づいて個別荷重値wd[n]を求める。これにより、個別内部信号wb[n]の値が0となり、ひいては個別荷重値wd[n]が0となる。このように、ドリフトによる個別内部信号wb[n]の零点の変動分を吸収するべく、個別零点補正量累積値wf[n]が適宜に更新されることで、当該ドリフトによる個別内部信号wb[n]の零点変動が補正され、ひいては個別重量値wd[n]の零点変動が補正される。即ち、個別零トラッキング機能が実現される。
ここで、この個別零トラッキング機能と上述の総合零トラッキング機能とを比較すると、例えば総合零トラッキング機能は、図6(c)に示した内部信号Wbに基づいて空掛け状態にあると判定されているときであって、その上で、当該内部信号Wbの値が−1か1の範囲C内にあるときにのみ、作動する。これは、上述の日本工業規格における零トラッキング機能に関する(目量の1/2を超える負荷荷重が印加された場合には作動してはならないという)規定に準拠するためである。
一方、個別零トラッキング機能は、空掛け状態にあるときであって、その上で、それぞれのロードセルLCnごとに、図8(a)に示した個別内部信号wb[n]の値が0以外のとき、つまり当該個別内部信号wb[n]の値に変動が見られれば、その変動の大きさに関係なく、作動する。即ち、個別零トラッキング機能に関しては、日本工業規格の制約を受けない。従って例えば、或るロードセルLCnに対応する個別内部信号wb[n]の零点がドリフトによって大きく変動したとしても、この零点の変動は適切に補正される。極端に言えば、或るロードセルLCnに故障等の異常が発生して、そのロードセルLCnに対応する個別内部信号wb[n]の零点が過度に変動したとしても、この過度な零点変動もまた補正される。そして、この個別内部信号wb[n]の零点補正量は、上述の式7における個別零点補正量累積値wf[n]として累積される。このことは、後述するように精確な異常診断機能の実現に大きく貢献する。
なお、空掛け状態にないとき、個別零トラッキング機能は作動しない。この場合、それぞれのロードセルLCnに対応するものごとに、上述した要領で個別内部信号wb[n]が求められ、ひいては個別荷重値wd[n]が求められる。
そして、操作キー60によって上述の零点設定操作が成されると、CPU54は、それぞれのロードセルLCnに対応するものごとに、そのときの個別内部信号wb[n]の値を式7における個別零点調整値wz[n]に加減算する。例えば、個別内部信号wb[n]の値が負の値であるときには、式7における個別零点調整値wz[n]に当該個別内部信号wb[n]の値の絶対値|wb[n]|を加える。一方、個別内部信号wb[n]の値が正の値であるときには、式7における個別零点調整値wz[n]から当該個別内部信号wb[n]の値の絶対値|wb[n]|を減ずる。そして、改めて個別内部信号wb[n]を求め、ひいては個別荷重値wd[n]を求める。これにより、個別内部信号wb[n]の値が0となり、ひいては個別荷重値wd[n]が0となる。このように、零点設定操作が成されたときの個別内部信号wb[n]の値を吸収するべく、個別零点調整値wz[n]が適宜に更新されることで、当該個別内部信号wb[n]の零点が強制的に設定し直され、ひいては個別荷重値wd[n]の零点が強制的に設定し直される。即ち、それぞれのロードセルLCnごとの半自動零点設定機能、言わば個別半自動零点設定機能、が実現される。なお、この個別半自動零点設定機能もまた、上述の風袋引きに利用可能である。
加えて、操作キー60によって上述のリセット操作が成されると、CPU54は、式7における個別零点調整値wz[n]および個別零点補正量累積値wf[n]のそれぞれを0とする。その上で、CPU54は、式7に基づいて個別内部信号wb[n]を求め、この個別内部信号wb[n]の値を当該式7における個別零点調整値wz[n]に代入する。そして改めて、式7に基づいて個別内部信号wb[n]を求め、ひいては式9に基づいて個別荷重値wd[n]を求める。これにより、個別内部信号wb[n]の値が0となり、ひいては個別荷重値wd[n]が0となる。併せて、上述の如く個別零点補正量累積値wf[n]がその初期値である0に戻され、つまりリセットされる。
上述の式7〜式9に基づく演算は、例えば図9に示すような個別演算回路400によって表現することができる。即ち、この個別演算回路400は、それぞれのロードセルLCnごとに対応して設けられており、つまり全部で4つ設けられている。そして、それぞれの個別演算回路400は、対応するロードセルLCnからのデジタル荷重検出信号wa[n]が入力される加算器402を有している。この加算器402は、当該デジタル荷重検出信号wa[n]からメモリ回路58に記憶されている初期荷重値wi[n]を差し引く。そして、この加算器402による差し引き処理後の信号(=wa[n]−wi[n])は、別の加算器404に入力される。加算器404は、前段の加算器402による差し引き処理後の信号からメモリ回路58に記憶されている個別零点補正量累積値wf[n]を差し引く。そして、この加算器404による差し引き処理後の信号(=wa[n]−wi[n]−wf[n])は、さらに別の加算器406に入力される。この加算器406は、前段の加算器404による差し引き処理後の信号からメモリ回路58に記憶されている個別零点調整値wz[n]をさらに差し引く。これにより、つまり3つの加算器402,404および406を含む個別内部信号生成回路408によって、式7に基づく演算が実現され、個別内部信号wb[n]が生成される。なお、上述したように、個別零点補正量累積値wf[n]は、ドリフトが生じたときに適宜に更新される。そして、この個別零点補正量累積値wf[n]は、操作キー60によるリセット操作時にのみリセット(wf[n]=0)され、それ以外のときは(起動時を含め)リセットされず、それまでの記憶値を維持する。言い換えれば、当該個別零点補正量累積値wf[n]については、リセット操作が成されない限り、その更新が継続される。これは、後述する異常診断機能の都合のためである。また、リセット操作によって個別零点補正量累積値wf[n]がリセットされると、これに伴い、当該リセット操作の直前の個別零点補正量累積値wf[n]が個別零点調整値wz[n]に加えられ、つまり当該個別零点調整値wz[n]が更新される。この個別零点調整値wz[n]は、操作キー60による零点設定操作時にも更新され、また、起動時にも更新される。
個別内部信号生成回路408によって生成された個別内部信号wb[n]は、さらに乗算器410に入力される。乗算器410は、個別内部信号wb[n]に対して当該個別内部信号wb[n]の1カウント値幅sb(言い換えれば個別荷重値wd[n]の零点補正分解能sb)と個別目量sdとの相互比率sb/sd(=1/4)を乗ずる。なお、当該相互比率sb/sdは、予めメモリ回路58に記憶されている。さらに、この乗算器410による乗算処理後の信号(=wb[n]・(sb/sd))は、加算器412に入力される。加算器412は、当該乗算処理後の信号に対して0.5という定数を加える。この0.5という定数もまた、予めメモリ回路58に記憶されている。これにより、つまり乗算器410と加算器412とを含む個別表示レベル信号生成回路414によって、上述の式8に基づく演算が実現され、つまり個別表示レベル信号wc[n]が生成される。この個別表示レベル信号生成回路412による演算処理(式8に基づく演算)においては、上述の如く小数点以下は切り捨てられる。
この個別表示レベル信号生成回路414によって生成された個別表示レベル信号wc[n]は、さらに別の乗算器416に入力される。この乗算器416は、個別表示レベル信号wc[n]に対して変換係数としての個別目量sd(=2.5kg)を乗ずる。この個別目量sdもまた、予めメモリ回路58に記憶されている。これにより、式9に基づく演算が実現され、つまり個別荷重値wd[n]が求められる。
このように、図9の個別演算回路400によって、つまり式7〜式9に基づく演算によって、それぞれのロードセルLCnに対応するものごとに、当該ロードセルLCnに印加されている負荷荷重を表す個別荷重値wd[n]が求められる。そして、図6(c)に示した内部信号Wbに基づく空掛け状態にあるか否かの判定において空掛け状態にあると判定されており、その上で、個別荷重値wd[n]の元となる個別内部信号wb[n]の値が0である範囲B’内にあるときに、この個別内部信号wb[n]の零点が精確であり、つまり個別荷重値wd[n]の零点が精確である、と見なされ、その旨を表す個別零点表示が成され、つまり個別零点表示機能が作動する。一方、個別内部信号wb[n]の値が0でないときには、当該個別内部信号wb[n]の零点が補正され、ひいては個別荷重値wd[n]の零点が補正され、つまり個別零トラッキング機能が作動する。加えて、操作キー60によって零点設定操作が成されたときに、個別内部信号wb[n]の零点が強制的に設定し直され、ひいては個別荷重値wd[n]の零点が強制的に設定し直され、つまり個別半自動零点設定機能が作動する。なお、起動時にも、個別内部信号wb[n]の零点が設定され、ひいては個別荷重値wd[n]の零点が設定され、つまり個別初期零点設定機能が作動する。そして、操作キー60によってリセット操作が成されると、上述の式7における個別零点補正量累積値wf[n]がその初期値である0にリセットされる。
さらに、個別零トラッキング機能を利用して、異常診断機能が実現される。即ち、CPU54は、それぞれのロードセルLCnに対応するものごとに、上述の式7における個別零点補正量累積値wf[n]を監視する。そして、この個別零点補正量累積値wf[n]に基づいて、対応するロードセルLCnに故障等の異常が発生していないかどうかを診断する。具体的には、個別零点補正量累積値wf[n]の絶対値|wf[n]|と予め定められた閾値αとを比較する。そして、個別零点補正量累積値wf[n]の絶対値|wf[n]|が閾値α以下(|wf[n]|≦α)であるとき、対応するロードセルLCnは正常である、と診断する。一方、個別零点補正量累積値wf[n]の絶対値|wf[n]|が閾値αよりも大きい(|wf[n]|>α)ときには、対応するロードセルLCnに故障等の異常が発生している、と診断する。この診断結果は、デジタル表示器56に表示されると共に、外部に出力される。特に、異常が発生した場合には、アラームが発せられる。このような個別零トラッキング機能を利用しての異常診断機能の実現には、特に精確な当該異常診断機能の実現には、上述の如く当該個別零トラッキング機能によってそれぞれのロードセルLCnに対応する個別内部信号wb[n](ひいては個別荷重値wd[n])の零点変動をその大きさに関係なく(つまり日本工業規格の制約を受けることなく)補正し得ることが、大きく貢献する。また、個別内部信号wb[n]の零点補正量が個別零点補正量累積値wf[n]として継続的に累積されること、つまり操作キー60によるリセット操作が成されない限り当該個別零点補正量累積値wf[n]がリセットされないことも、精確な異常診断機能の実現に大きく貢献する。
なお、閾値αは、メモリ回路58に記憶されており、必要に応じて適宜に変更可能とされてもよい。また、個別零点補正量累積値wf[n]は、デジタル表示器56に表示されてもよいし、外部装置に出力されてもよい。この個別零点補正量累積値wf[n]は、上述の如くリセット操作が成されない限り継続的に(つまり長期間にわたって)累積されるので、当該個別零点補正量累積値wf[n]を観測することによって、特にその履歴(記録)を観測することによって、対応するロードセルLCnの稼働状態を適切に把握することができる。翻って、個別零点補正量累積値wf[n]がリセットされると、それまでの当該個別零点補正量累積値wf[n]が式7における個別零点調整値wz[n]に移行されるので、この個別零点調整値wz[n]を観測することによっても、各ロードセルLCnの異常診断を行うことが可能であり、そのような構成が採用されてもよい。さらに、各ロードセルLCn間で互いの個別零点補正量累積値wf[n]の絶対値|wf[n]|を比較すること(つまり比較差の大小)によっても、当該各ロードセルLCnの異常診断を行うことが可能であり、そのような構成が採用されてもよい(ただし、この場合は、複数のロードセルLCnに異常が発生していないことが前提とされる)。因みに、いずれかのロードセルLCnに異常が発生したことが判明すると、そのロードセルLCnの修理または交換が行われる。その後、操作キー60によってリセット操作が成されることで、全てのロードセルLCnについての個別零点補正量累積値wf[n]をリセットすることを含め、トラックスケール10全体が初期状態にリセットされる。
続いて、左側零トラッキング機能について、説明する。この左側零トラッキング機能は、上述の如く左側荷重値Wd12の零点を自動的に補正するものである。この左側零トラッキング機能による零点補正対象である左側荷重値Wd12は、総合零トラッキング機能による零点補正対象である表示重量値Wdよりも小さく、おおよそは当該表示重量値WdをロードセルLCnの数Nの半数N/2(=2)で除した値に近くなる。そこで、この左側零トラッキング機能においては、総合零トラッキング機能による表示重量値Wdの零点補正分解能Sbの2/Nの分解能sb(=2.5kg/2=1.25kg)で、左側荷重値Wd12の零点補正が成される。また、左側荷重値Wd12の目量(以下、「左側目量」と言う。)Sd12は、表示重量値Wdの目量Sdの2/N(=10kg/2=5kg)とされる。
この左側零トラッキング機能を実現するために、データプロセッサ50内のCPU54は、左側の2つのロードセルLC1およびLC2nから得られる2つのデジタル荷重検出信号wa[1]およびwa[2]を合計することで、つまり次の式10に基づいて、左側デジタル荷重検出信号Wa12を求める。
《式10》
Wa12=wa[1]+wa[2]
この左側デジタル荷重検出信号Wa12は、図10(a)に示すように、その1カウント値の幅Sa12が左側ロードセルLC1およびLC2nからのデジタル荷重検出信号wa[1]およびwa[2]のそれぞれの1カウント値幅saと等価(Sa12=sa)な信号であり、言い換えれば図6(a)に示した(式7に基づく)総合デジタル荷重検出信号Waの1カウント値幅Sbと等価(Sa12=Sa)な信号であり、つまり当該1カウント値幅Sa12が0.625kgという重量値に相当する信号である。なお、この左側デジタル荷重検出信号Wa12においても、総合デジタル荷重検出信号Waと同様、その零点は不確定である。
さらに、CPU54は、この左側デジタル荷重検出信号Wa12をロードセルLCnの数Nの半数N/2(=2)で除することによって、つまり次の式11に基づいて、当該左側デジタル荷重検出信号Wa12の1カウント値幅Sa12を変更し、言わば左側カウント値幅変更信号Wa12’を求める。なお、この式11に基づく演算において、小数点以下は切り捨てられる。
《式11》
Wa12’=Wa12/(N/2)=Wa12/4 ∵ N/2=2
この式11に基づく左側カウント値幅変更信号Wa12’は、図10(b)に示すように、その1カウント値幅Sa12’が左側デジタル荷重検出信号Wa12の1カウント値幅Sa12のN/2倍(Sa12’=Sa12・N/2)の信号である。即ち、当該1カウント値幅Sa12’は、2.5kg(=0.625kg×2)に相当し、つまり左側荷重値Wd12についての零点補正分解能Sb12に相当する。そして、この左側カウント値幅変更信号Wa12’においても、その零点は不確定である。この左側カウント値幅変更信号Wa12’を求めた上で、CPU54は、当該左側カウント値幅変更信号Wa12’の零点を確定するべく、言い換えればそのような左側内部信号Wb12を求めるべく、次の式12に基づく演算を実行する。
《式12》
Wb12=Wa12’−Wi12−Wf12−Wz12
この式12において、Wi12は、左側ロードセルLC1およびLC2に対する初期荷重値であり、詳しくは空掛け状態にあるときの左側カウント値幅変更信号Wa12’の記憶値である。そして、Wf12は、この式12に基づく左側内部信号Wb12の零点のドリフトによる変動量の累積値であり、言い換えれば左側零トラッキング機能による当該左側内部信号Wb12の零点補正量の累積値である。この言わば左側零点補正量累積値Wf12については、後で詳しく説明する。さらに、Wz12は、左側内部信号Wb12の零点を強制的に設定するための個別零点調整値である。この個別零点調整値Wz12についても、後で詳しく説明する。なお、この式12における初期荷重値Wi12は、上述したトラックスケール10全体としての事前の調整時に求められ、メモリ回路58に記憶される。また、左側零点補正量累積値Wf12および左側零点調整値Wz12も、メモリ回路58に記憶され、特に左側零点補正量累積値Wf12については、上述の不揮発性メモリに記憶される。そして、これら左側零点補正量累積値Wf12および左側零点調整値Wzは、後述する如く適宜に更新される。
この式12に基づく左側内部信号Wb12は、図10(c)に示すように、その1カウント値幅Sb12が左側目量Sd12の1/4(Sb12=Sd12/4=1.25kg)の信号である。そして、この左側内部信号Wb12の1カウント値幅Sb12の符号から分かるように、当該左側内部信号Wb12の1カウント値幅Sb12が左側荷重値Wd12についての零点補正分解能Sb12を決定付ける。
加えて、CPU54は、上述の式5(および式8)に準拠する次の式13に基づいて、左側表示レベル信号Wc12を求める。なお、この式13に基づく演算においても、式5(および式8)と同様に、小数点以下は切り捨てられる。
《式13》
Wc12={Wb12・(Sb12/Sd12)}+0.5=(Wb12/4)+0.5
∵ Sb12/Sd12=4
この式13に基づく左側表示レベル信号Wc12は、図10(d)に示すように、その1カウント値幅Sc12が左側内部信号Wb12の1カウント値幅Sb12のSb12/Sd12倍、つまり4倍(Sc12=4・Sb12)、の信号である。即ち、当該1カウント値幅Sc12は、左側目量Sd12と同じ(Sc12=Sd12)5kgに相当する。
その上で、CPU54は、上述の式6(および式9)に準拠する次の式14に基づいて、左側表示レベル信号Wc12を左側荷重値Wd12に変換する。
《式14》
Wd12=Sd12・Wc12=5・Wc12
∵ Sa12=5[単位:kg]
この式14に基づく左側荷重値Wd12は、図10(e)に示すように、左側目量Sd12(=5kg)を最小単位とする値である。ここで例えば、この左側荷重値Wd12の零点が精確である、とすると、当該左側荷重値Wd12は、これが0kgであるときには、左側ロードセルLC1およびLC2に印加されている負荷荷重の大きさが−2.5kg超かつ2.5kg未満であることを表す。そして例えば、左側荷重値Wd12が5kgであるときには、当該左側ロードセルLC1およびLC2への負荷荷重の大きさが2.5kg以上かつ7.5kg未満であることを表す。これよりも大きい(正の)左側荷重値Wd12についても同様に、左側目量Sd12単位で左側ロードセルLC1およびLC2への負荷荷重の大きさが表される。一方、左側荷重値Wd12が例えば−5kgであるときは、左側ロードセルLC1およびLC2への負荷荷重の大きさが−7.5kg超かつ−2.5kg以下であることを表す。これよりも小さい(負の)左側荷重値Wd12についても同様に、左側目量Sd12単位で左側ロードセルLC1およびLC2への負荷荷重の大きさが表される。この左側荷重値Wd12が、デジタル表示器56に表示されると共に、外部に出力される。
ここで説明が前後するが、例えばトラックスケール10の起動時には、CPU54は、上述の式12における左側零点調整値Wz12を0とする。このとき、式12における左側零点補正量累積値Wf12には、0または後述する如く適宜に更新された値が設定された状態にある。その上で、CPU54は、当該式12に基づいて左側内部信号Wb12を求める。そして、この左側内部信号Wb12の値を起動時の当該左側内部信号Wb12の零点として認識し、これを式12における左側零点調整値Wz12に代入する。そして改めて、式12に基づいて左側内部信号Wb12を求め、ひいては式14に基づいて左側荷重値W12を求める。これにより、左側内部信号Wb12の値が0となり、ひいては左側荷重値Wd12が0となる。このように、起動時の左側内部信号Wb12の値を吸収するべく、左側零点調整値Wz12が適宜に更新されることで、当該左側内部信号Wb12の初期零点設定が成され、ひいては左側荷重値Wd12の初期零点設定が成される。即ち、左側ロードセルLC1およびLC2についての初期零点設定機能、言わば左側初期零点設定機能、が実現される。
この左側初期零点設定後、CPU54は、図6(c)に示した内部信号Wbの算出周期に合わせて、左側内部信号Wb12を求め、ひいては左側荷重値Wd12を求める。なお、左側内部信号Wb12は、これに含まれる主に機械的要因によるノイズ成分を除去するべく、内部信号Wb(および図6(a)に示したそれぞれの個別内部信号wb[n])についてのものと同様のデジタルフィルタ回路によってフィルタリング処理される。そして、CPU54は、例えば空掛け状態にあるとき、つまり内部信号Wbの値が1秒以上の所定期間にわたって−1以上かつ1以下の範囲A内にあるとき、さらに、左側内部信号Wb12の値が0であるか否かを判定し、好ましくは上述した1秒以上の所定期間にわたって当該左側内部信号Wb12の値が0であるか否かを判定する。ここで例えば、この左側内部信号Wb12の値が0であるとき、つまり図10(c)において符号B”で示される範囲内にあるとき、CPU54は、当該左側内部信号Wb12の零点は精確であり、換言すれば左側荷重値Wd12の零点は精確である、と認識する。そして、その旨を表す左側零点指示信号を生成する。この左側零点指示信号に応答して、デジタル表示器56が左側零点表示をする。即ち、左側ロードセルLC1およびLC2についての零点表示機能、言わば左側零点表示機能、が実現される。
一方、空掛け状態にあるときであって、左側内部信号Wb12の値が0という範囲B”内にないとき、言い換えれば当該左側内部信号Wb12の値が−1以下または1以上であるとき、CPU54は、ドリフトによって当該左側内部信号Wb12の零点が変動したものと認識する。そして、この左側内部信号Wb12の零点変動を補正するべく、当該左側内部信号W12の値を式12における左側零点補正量累積値Wf12に加減算する。例えば、左側内部信号Wb12の値が負の値であるときには、式12における左側零点補正量累積値Wf12に当該左側内部信号Wb12の値の絶対値|Wb12|を加える。これとは逆に、左側内部信号Wb12の値が正の値であるときには、式12における左側零点補正量累積値Wf12から当該左側内部信号Wb12の値の絶対値|W12|を減ずる。そして改めて、式12に基づいて左側内部信号Wb12を求め、ひいては式14に基づいて左側荷重値Wd12を求める。これにより、左側内部信号Wb12の値が0となり、ひいては左側荷重値Wd12が0となる。このように、ドリフトによる左側内部信号Wb12の零点の変動分を吸収するべく、左側零点補正量累積値Wf12が適宜に更新されることで、当該ドリフトによる左側内部信号Wb12の零点変動が補正され、ひいては左側重量値Wd12の零点変動が補正される。即ち、左側零トラッキング機能が実現される。
この左側零トラッキング機能もまた、上述の個別零トラッキング機能と同様、日本工業規格の制約を受けない。即ち、この左側零トラッキング機能は、空掛け状態にあるときであって、その上で、図10(c)に示した左側内部信号Wb12の値が0以外のとき、つまり当該左側内部信号Wbの値に変動が見られれば、その変動の大きさに関係なく、作動する。従って例えば、左側内部信号Wb12の零点がドリフトによって大きく変動したとしても、この大きく変動した零点は適切に補正される。
なお、空掛け状態にないとき、左側零トラッキング機能は作動しない。この場合、CPU54は、左側内部信号Wb12の零点補正をすることなく、左側荷重値Wd12を求める。
そして、操作キー60によって上述の零点設定操作が成されると、CPU54は、そのときの左側内部信号Wb12の値を式12における左側零点調整値Wz12に加減算する。例えば、左側内部信号Wb12の値が負の値であるときには、式12における左側零点調整値Wz12に当該左側内部信号Wb12の値の絶対値|Wb12|を加える。一方、左側内部信号Wb12の値が正の値であるときには、式12における左側零点調整値Wz12から当該左側内部信号Wb12の値の絶対値|Wb12|を減ずる。そして、改めて左側内部信号Wb12を求め、ひいては左側荷重値Wd12を求める。これにより、左側内部信号Wb12の値が0となり、ひいては左側荷重値Wd12が0となる。このように、零点設定操作が成されたときの左側内部信号Wb12の値を吸収するべく、左側零点調整値Wz12が適宜に更新されることで、当該左側内部信号Wb12の零点が強制的に設定し直され、ひいては左側荷重値Wd12の零点が強制的に設定し直される。即ち、左側ロードセルLC1およびLC2についての半自動零点設定機能、言わば左側半自動零点設定機能、が実現される。なお、この左側半自動零点設定機能もまた、上述の風袋引きに利用可能である。
加えて、操作キー60によって上述のリセット操作が成されると、CPU54は、式12における左側零点補正量累積値Wf12および左側零点調整値Wz12のそれぞれを0とする。その上で、CPU54は、式12に基づいて左側内部信号Wb12を求め、この左側内部信号Wb12の値を式12における左側零点調整値Wz12に代入する。そして改めて、式12に基づいて左側内部信号Wb12を求め、ひいては式14に基づいて左側荷重値Wd12を求める。これにより、左側内部信号Wb12の値が0となり、ひいては左側荷重値Wd12が0となる。併せて、上述の如く左側零点補正量累積値Wf12がその初期値である0に戻され、つまりリセットされる。
上述の式10〜式14に基づく演算は、例えば図11に示すような左側演算回路500によって表現することができる。即ち、この左側演算回路500は、左側ロードセルLC1およびLC2からの2つのデジタル荷重検出信号wa[1]およびwa[2]が入力される加算器502を有している。この加算器502は、これら2つのデジタル荷重検出信号wa[1]およびwa[2]を合計する。これによって、式10に基づく演算が実現され、つまり左側デジタル荷重検出信号Wa12が生成される。そして、この左側デジタル荷重検出信号Wa12は、乗算器504に入力される。
乗算器504は、加算器502から入力された左側デジタル荷重検出信号Wa12に対して、ロードセルLCnの数Nの半数N/2のさらに逆数(2/N=1/2)を乗ずる。これにより、式11に基づく演算が実現され、つまり左側カウント値幅変更信号Wa12’が生成される。なお、この乗算器504による乗算処理(式11に基づく演算)においては、上述の如く小数点以下は切り捨てられる。
さらに、左側カウント値幅変更信号Wa12’は、別の加算器506に入力される。加算器506は、当該左側カウント値幅変更信号Wa12’からメモリ回路58に記憶されている左側ロードセルLC1およびLC2に対する初期荷重値Wi12を差し引く。そして、この加算器506による差し引き処理後の信号(=Wa12’−Wi12)は、さらに別の加算器508に入力される。この加算器508は、前段の加算器506による差し引き処理後の信号からメモリ回路58に記憶されている左側零点補正量累積値Wf12を差し引く。そして、この加算器508による差し引き処理後の信号(=Wa12’−Wi12−Wf12)は、さらに別の加算器510に入力される。この加算器510は、前段の加算器508による差し引き処理後の信号からメモリ回路58に記憶されている左側零点調整値Wz12をさらに差し引く。これにより、つまり3つの加算器506,508および510を含む左側内部信号生成回路512によって、式12に基づく演算が実現され、左側内部信号Wb12が生成される。なお、上述したように、左側零点補正量累積値Wf12は、ドリフトが生じたときに適宜に更新される。そして、この左側零点補正量累積値Wf12は、操作キー60によるリセット操作時にのみリセット(Wf12=0)され、それ以外のときは(起動時を含め)リセットされず、それまでの記憶値を維持する。言い換えれば、当該左側零点補正量累積値Wf12については、リセット操作が成されない限り、その更新が継続される。また、このリセット操作時に左側零点補正量累積値Wf12がリセットされることに伴い、当該リセット操作の直前の左側零点補正量累積値Wf12が左側零点調整値Wz12に加えられ、つまり当該左側零点調整値Wz12が更新される。この左側零点調整値Wz12は、操作キー60による零点設定操作時にも更新され、また、起動時にも更新される。
左側内部信号生成回路512によって生成された左側内部信号Wb12は、さらに別の乗算器514に入力される。乗算器514は、左側内部信号Wb12に対して当該左側内部信号Wb12の1カウント値幅Sb12(言い換えれば左側荷重値Wd12の零点補正分解能Sb12)と左側目量Sd12との相互比率Sb12/Sd12(=1/4)を乗ずる。なお、当該相互比率Sb12/Sd12は、予めメモリ回路58に記憶されている。さらに、この乗算器514による乗算処理後の信号(=Wb12・(Sb12/Sd12))は、加算器516に入力される。加算器516は、当該乗算処理後の信号に対して0.5という定数を加える。この0.5という定数もまた、予めメモリ回路58に記憶されている。これにより、つまり乗算器514と加算器516とを含む左側表示レベル信号生成回路518によって、上述の式13に基づく演算が実現され、つまり左側表示レベル信号Wc12が生成される。この左側表示レベル信号生成回路518による演算処理(式13に基づく演算)においては、上述の如く小数点以下は切り捨てられる。
この左側表示レベル信号生成回路518によって生成された左側表示レベル信号Wc12は、さらに別の乗算器520に入力される。この乗算器520は、左側表示レベル信号Wc12に対して変換係数としての左側目量Sd(=5kg)を乗ずる。この左側目量Sdもまた、予めメモリ回路58に記憶されている。これにより、式14に基づく演算が実現され、つまり左側荷重値Wd12が求められる。
このように、図11の左側演算回路500によって、つまり式10〜式14に基づく演算によって、左側荷重値Wd12が求められる。そして、図6(c)に示した内部信号Wbに基づく空掛け状態にあるか否かの判定において空掛け状態にあると判定されており、その上で、左側荷重値Wd12の元となる左側内部信号Wb12の値が0である範囲B”内にあるときに、この左側内部信号Wb12の零点が精確であり、つまり左側荷重値Wd12の零点が精確である、と見なされ、その旨を表す左側零点表示が成され、つまり左側零点表示機能が作動する。一方、左側内部信号Wb12の値が0でないときには、当該左側内部信号Wb12の零点が補正され、ひいては左側荷重値Wd12の零点が補正され、つまり左側零トラッキング機能が作動する。加えて、操作キー60によって零点設定操作が成されたときに、左側内部信号Wb12の零点が強制的に設定し直され、ひいては左側荷重値Wd12の零点が強制的に設定し直され、つまり左側半自動零点設定機能が作動する。なお、起動時にも、左側内部信号Wb12の零点が設定され、ひいては左側荷重値Wd12の零点が設定され、つまり左側初期零点設定機能が作動する。そして、操作キー60によってリセット操作が成されると、上述の式12における左側零点補正量累積値Wf12がその初期値である0にリセットされる。
右側零トラッキング機能についても、左側零トラッキング機能と同様であるので、その説明を省略する。また、右側零点表示機能、右側半自動零点設定機能および右側初期零点設定機能についても、左側のそれぞれと同様であるので、それらの説明を省略する。
以上のように、本実施形態によれば、総合零トラッキング機能,個別零トラッキング機能,左側零トラッキング機能および右側零トラッキング機能という4種類の零トラッキング機能が備えられている。そして、これらの零トラッキング機能は、互いに異なる対象を互いに独立して補正するので、言い換えれば図7,図9および図11に示した互いに別個の回路300,400および500によって実現されるので、互いに影響することはない。従って特に、総合零トラッキング機能は、他の零トラッキング機能の影響を何ら受けることなく、被計量物としてのトラック100の重量を表す表示重量値Wdの零点を適切に補正することができ、ひいては常に精確な当該表示重量値Wdを得ることができる。また、当該他の零トラッキング機能である個別零トラッキング機能,左側零トラッキング機能および右側零トラッキング機能は、言わば一部のロードセルLCn用の零トラッキング機能である点で、共通する。即ち、本実施形態によれば、一部のロードセルLCn用の零トラッキング機能を備えつつ、これとは別の総合零トラッキング機能によって表示重量値Wdの零点を適切に補正することができ、ひいては常に精確な当該表示重量値Wdを得ることができる。
なお、本実施形態で説明した内容は、本発明を実現するための一具体例であり、本発明の範囲を限定するものではない。
特に、個別零トラッキング機能に注目すると、本実施形態における当該個別零トラッキング機能は、図6(a)に示した内部信号Wbに基づいて空掛け状態にあると判定されており、その上で、図8(a)に示した個別内部信号wb[n]の値が0でないときに、作動する。言い換えれば、本実施形態における個別零トラッキング機能は、総合零トラッキング機能によって当該空掛け状態にあると判定されていることを条件として、作動可能となる。しかし、この構成に限定されない。例えば、それぞれのロードセルLCnごとに、空掛け状態にあるか否か、厳密には負荷荷重が印加されていない状態にあるか否か、の判定が成され、当該負荷荷重が印加されていないと判定されたときに、対応する個別内部信号wb[n]の零点補正が成され、ひいては個別荷重値wd[n]の零点補正が成されるように、構成されてもよい。具体的には、それぞれのロードセルLCnごとに、対応する個別内部信号wb[n]の値が1秒以上の所定期間にわたって−1以上かつ1以下(−1≦wb[n]≦1)であるか否か、つまり図8(a)に代わる図12(a)において符号A’で示される範囲内にあるか否か、が確認される。そして、個別内部信号wb[n]の値が当該範囲A’内にあるときに、対応するロードセルLCnに負荷荷重が印加されていない状態にある、と判定される。その上で、当該ロードセルLCnに対応する個別内部信号wb[n]の値が−1か1であるとき、つまり図12(a)において符号C’で示される範囲内にあるときに、これを補正するべく、個別零トラッキング機能が作動するものとしてもよい。
ただし、この構成では、計量台32にトラック(厳密にはトラック以外の比較的に小型軽量の被計量物)100が載置されているにも拘らず、一部のロードセルLCnについて、個別零トラッキング機能が作動することがある。例えば、計量台32における被計量物100の載置位置が極端に偏っている場合に、その可能性がある。即ち、計量台32における被計量物100の載置位置が極端に偏っている場合には、一部のロードセル(ここでは暫定的に「LCn’」という符号を用いて表す。)に対してのみ、負荷荷重が印加され、それ以外のロードセル(ここでは暫定的に「LCn”」という符号を用いて表す。)に対しては、殆ど当該負荷荷重が印加されない、という状況が起こり得る。このような状況においては、負荷荷重が印加されているロードセルLCn’については、これに対応する個別内部信号wb[n]’が比較的に大きく変動するため、つまり当該個別内部信号wb[n]’の値が範囲A’を外れるため、負荷荷重が印加されている、と判定される。一方、殆ど負荷荷重が印加されていないロードセルLCn”については、これに対応する個別内部信号wb[n]”が変動しないか若しくはごく僅かしか変動せず、特に当該個別内部信号wb[n]”の値が範囲A’内にあることがあり、そうなると、負荷荷重が印加されていない、と判定される。その上で、当該個別内部信号wb[n]”の値が−1か1の範囲C’内にあれば、これを補正するべく、個別零トラッキング機能が作動する。
これに対して、本実施形態で説明した個別零トラッキング機能によれば、上述の如く総合零トラッキング機能によって空掛け状態にあると判定されていることを条件として、つまり図6(a)に示した内部信号Wbの値が1秒以上の所定期間にわたって−1以上かつ1以下の範囲A内にあることを条件として、作動可能となるので、計量台32に被計量物100が載置されているときに、当該個別零トラッキング機能が作動することはない。即ち、内部信号Wbは、全てのロードセルLCnからのデジタル荷重検出信号wa[n]の合計である総合デジタル荷重検出信号Waに基づく信号であるので、例えば空掛け状態にあるときには基本的に(ドリフトによる変動を除いて)変動せず、当該空掛け状態にないときには、つまり計量台32に被計量物100が載置されると、必ず当該被計量物100の重量に応じた変動を示す。従って、このような内部信号Wbに基づくことで、総合零トラッキング機能は、空掛け状態にあるか否かを正確に判定することができる。そして、この総合零トラッキング機能によって空掛け状態にあると判定されていることを条件として、個別零トラッキング機能が作動可能となることで、計量台32に被計量物100が載置されているときの当該個別零トラッキング機能の作動が確実に制限される。
その一方で、図12を参照しながら説明した構成が採用されることによって、たとえ、計量台32に被計量物100が載置されているときに、一部のロードセルLCnについて、個別零トラッキング機能が作動したとしても、特段な不都合はない。即ち、上述したように、個別零トラッキング機能は、他の零トラッキング機能、特に総合零トラッキング機能に、何らの影響も及ぼさない。従って、総合零トラッキング機能は、個別零トラッキング機能の影響を何ら受けることなく、表示重量値Wdの零点を適切に補正することができ、ひいては常に精確な当該表示重量値Wdを得ることができる。勿論、左側零トラッキング機能もまた、個別零トラッキング機能の影響を何ら受けることなく、左側荷重値Wd12の零点を適切に補正することができ、ひいては精確な当該左側荷重値Wd12を得ることができる。そして、右側零トラッキング機能もまた、個別零トラッキング機能の影響を何ら受けることなく、右側荷重値Wd34の零点を適切に補正することができ、ひいては精確な当該右側荷重値Wd34を得ることができる。なお、計量台32から被計量物100が降ろされると、それまで個別零トラッキング機能が作動していた一部のロードセルLCnについて、改めて(引き続き)当該個別零トラッキング機能が作動する。従って、この個別零トラッキング機能を利用しての上述した異常診断機能においても、結果的に、何らの影響もない。
しかしながら、上述の如く計量台32に被計量物100が載置されているときに、一部のロードセルLCnについて、個別零トラッキング機能が作動した場合には、当該計量台32から被計量物100が降りるまでの間、一時的ではあるが、当該一部のロードセルLCnに対応する個別内部信号wb[n]の零点が補正されることで、最終的に求められる個別荷重値wd[n]が本来の値とは異なる値となり、詳しくは本来の値よりも小さくなる。従って、それぞれのロードセルLCnに対応する個別荷重値wd[n]を常に精確に得たい場合には、本実施形態で(図8を参照しながら)説明した構成の個別零トラッキング機能が採用されるのが、望ましい。
これと同様に、例えば左側零トラッキング機能についても、左側ロードセルLC1およびLC2に負荷荷重が印加されていない状態にあるか否かの判定が成され、当該負荷荷重が印加されていないと判定されたときに、左側内部信号Wb12の零点補正が成され、ひいては左側荷重値Wd12の零点補正が成されるように、構成されてもよい。具体的には、左側内部信号Wb12の値が1秒以上の所定期間にわたって−1以上かつ1以下(−1≦Wb12≦1)であるか否か、つまり上述の図10(c)に代わる図13(c)において符号A”で示される範囲内にあるか否か、が確認される。そして、左側内部信号wb[n]の値が当該範囲A”内にあるときに、左側ロードセルLC1およびLC2に負荷荷重が印加されていない状態にある、と判定される。その上で、当該左側内部信号Wb12の値が−1か1であるとき、つまり図13(c)において符号C”で示される範囲内にあるときに、これを補正するべく、左側零トラッキング機能が作動するものとしてもよい。
ただし、この構成では、上述の図12を参照しながら説明した個別零トラッキング機能と同様、計量台32に被計量物100が載置されているにも拘らず、左側零トラッキング機能が作動し、ひいては(一時的ではあるが)左側荷重値Wd12が本来の値とは異なる値になることがある。従って、常に精確な左側荷重値Wd12を得たい場合には、本実施形態で(図10を参照しながら)説明した構成の左側零トラッキング機能が採用されるのが、望ましい。このことは、右側零トラッキング機能についても、同様である。
上述したように、本実施形態における個別零トラッキング機能,左側零トラッキング機能および右側零トラッキング機能は、一部のロードセルLCn用の零トラッキング機能である点で、共通するが、このような一部のロードセルLCn用の言わば特定零トラッキング機能として、他の態様のものが採用されてもよい。例えば、計量台32の前部側を支持する言わば前部側ロードセルLC2およびLC4用の零トラッキング機能や、当該計量台32の後部側を支持する後部側ロードセルLC1およびLC2用の零トラッキング機能が、設けられてもよい。
さらに、本実施形態においては、トラックスケール10を例に挙げて説明したが、台はかりや料金はかり等の当該トラックスケール10以外の非自動はかりにも、本発明を適用することができきる。勿論、秤量Mcや目量Sd、零点補正分解能Sd等も、上述の値に限らない。
そして、ロードセルLCnの数Nが4とされたが、4以外でもよく、つまり複数であればよい。
加えて、ロードセルLCnとして、いわゆる歪ゲージ式のものを例に挙げたが、磁歪式や静電容量式等の当該歪ゲージ式以外のものが採用されてよい。
また特に、個別零トラッキング機能による零点補正対象であるそれぞれの個別荷重値wd[n]については、データプロセッサ50内で(CPU54によって)求められることとしたが、対応するロードセルLCn内で(CPU44によって)求められてもよい。この場合、それぞれのロードセルLCn内で当該個別荷重値wd[n]の零点補正が成され、つまり個別零トラッキング機能が実現されるのが適当である。
併せて、いずれかのロードセルLCnが親機とされ、この親機に全てのロードセルLCnのデジタル荷重検出信号wa[n]が集められると共に、この親機によってデータプロセッサ50による上述の演算の全てまたは一部が行われてもよい。