JP2013252252A - 被検体情報取得装置および被検体情報取得方法 - Google Patents

被検体情報取得装置および被検体情報取得方法 Download PDF

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Abstract

【課題】アーティファクトが低減された、高コントラストな光音響画像を得る。
【解決手段】光を照射された被検体から発生する音響波を受信信号に変換して時系列に出力する複数の素子を含む受信部と、受信信号の強度を規格化して規格化信号を生成する規格化部と、規格化信号から被検体内部の特性情報の分布を示す第1の画像データを生成する処理部を有する被検体情報取得装置を用いる。
【選択図】図1

Description

本発明は、被検体情報取得装置および被検体情報取得方法に関する。
レーザなどの光源から生体に光を照射し、入射した光に基づいて得られる生体内の情報を画像化する光イメージング装置の研究が医療分野で積極的に進められている。この光イメージング技術の一つとして、Photo Acoustic Tomography(PAT:PAT)がある。PATでは、光源から発生したパルス光を生体に照射し、生体内で伝搬、拡散したパルス光のエネルギーを吸収した生体組織から発生した音響波を検出する。この光音響波発生の現象を光音響効果と呼び、光音響効果により発生した音響波を光音響波と呼ぶ。
腫瘍などの被検部位は、その周辺組織に対して光エネルギーの吸収率が高いことが多いため、周辺組織よりも多くの光を吸収して瞬間的に膨張する。この膨張の際に発生する光音響波を音響波検出器で検出し、受信信号を得る。この受信信号を数学的に解析処理することにより、被検体内の、光音響効果により発生した光音響波の音圧分布を画像化(以下、光音響画像と呼ぶ)することができる。
このようにして得られる光音響画像を基にして、生体内の光学特性分布、特に、吸収係数分布を得ることができる。これらの情報は、被検体内の特定物質、例えば血液中に含まれるグルコースやヘモグロビンなどの定量的計測にも利用できる。近年、PATを用いて小動物の血管像をイメージングすること、あるいは、乳がんなどの診断に応用することを目的とした光音響画像装置の研究が積極的に進められている。
光音響画像を得る装置において、被検体を保持するための保持板を備える場合がある。この目的は、測定中に被検体が動き、測定位置が変化することを防ぐこと、および、または、保持板による圧迫で被検体を薄くすることで被検体深部の画像化を可能とすること、等である。
保持板によって保持された被検体に光を照射した場合、被検体内部のみならず保持板の界面においても光音響効果による光音響波が発生する。保持板界面からの光音響波を界面光音響波と呼ぶ。この界面光音響波が音響波検出器によって検出されると、アーティファクトと呼ばれるノイズの原因となる。
具体的には、界面光音響波を含む受信信号を用いて光音響画像を取得すると、界面光音響波によるアーティファクトに腫瘍などの像が埋もれてしまう場合がある。また、この界面光音響波は保持板内部で多重反射された後に音響波検出器によって検出される場合もある。多重反射界面光音響波を含む受信信号を用いて光音響画像を取得すると、界面光音響波の場合と同様に、アーティファクトに腫瘍などの像が埋もれてしまう。
超音波診断装置においても、光音響画像装置における界面光音響波の課題に類似した課題がある。具体的には、送信した超音波が音響波検出器と被検体の間の介在物、例えば音響窓や被検体圧迫板等の内部で多重反射を繰り返し、多重エコーアーティファクトとして画像中に現れるという課題がある。
超音波診断装置を構成する音響窓により生じる多重エコーを除去する手法が、特許文献1において開示されている。特許文献1では、受信した複数の受信信号を平均化すること
により抽出した多重エコーを、受信信号から減算することにより多重エコーを除去する。
超音波診断画像を表示する医用撮影装置を構成する被検体を圧迫する板により生じる多重反射像を除去する手法が、特許文献2において開示されている。特許文献2では、複数の超音波画像を表す画像データを生成し、生成した画像データから多重反射像を抽出する。抽出した多重反射像を被検体の画像から差し引くことで多重反射像を除去する。
特開2000−107177号公報 特開2009−082450号公報
光音響画像装置においては、複数の異なる位置で光音響波を検出することが一般的である。すなわち、複数の素子を持つ音響波検出器アレイを用いて、複数の異なる位置で同時に光音響波を検出する。これにより測定時間を短縮できる。光の照射は、音響波検出器アレイの前面の被検体領域を照明するように行われる。このとき、照射される光は一般に空間強度分布を持つ。
光音響効果で生じる光音響波の振幅は、光の強度分布に比例する。このため、上記界面光音響波は、被検体の界面へ照射される光の空間強度分布に比例した空間音圧分布を持つ。同様に、多重反射界面光音響波も空間音圧分布を持つ。
音響波検出器アレイは、空間音圧分布を持つ界面光音響波を検出するので、構成する素子ごとに検出される界面光音響波の振幅が異なる。このため、特許文献1の手法を適用した場合、振幅が異なる複数の受信信号を平均化するため、抽出される多重エコーの振幅は受信信号中の多重エコーの振幅と必ずしも一致しない。このため、多重エコーを十分に減算することが難しいという課題がある。
特許文献2の手法は、複数の超音波画像を表す画像データが必要であるため、複数回の測定が必要となる。このため、測定時間が長くなるという課題がある。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、アーティファクトが低減された、高コントラストな光音響画像を得ることにある。
本発明は以下の構成を採用する。すなわち、
光を照射された被検体から発生する音響波を受信信号に変換して時系列に出力する複数の素子を含む受信部と、
前記受信信号の強度を規格化して規格化信号を生成する規格化部と、
前記規格化信号から前記被検体内部の特性情報の分布を示す第1の画像データを生成する処理部と、
を有することを特徴とする被検体情報取得装置である。
本発明はまた、以下の構成を採用する。すなわち、
受信部が、光を照射された被検体から発生する音響波を受信信号に変換して時系列に出力するステップと、
規格化部が、前記受信信号の強度を規格化して規格化信号を生成するステップと、
処理部が、前記規格化信号から前記被検体内部の特性情報の分布を示す第1の画像データを生成するステップと、
を有することを特徴とする被検体情報取得方法である。
本発明によれば、アーティファクトが低減された、高コントラストな光音響画像を得ることができる。
実施例1の装置構成を説明する概念図。 実施例1における被検体を説明する図。 実施例1の規格化信号を説明する図。 実施例1の画像信号を説明する図。 比較例を説明する図。 実施例2の装置構成を説明する概念図。 実施例2における補正マップを説明するフローチャート。 実施例2の画像信号を説明する図。 実施例3における補正マップを説明するフローチャート。 実施例3における補正マップを説明する図。 実施例3の画像信号を説明する図。
以下に図面を参照しつつ、本発明の好適な実施の形態について説明する。ただし、以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状およびそれらの相対配置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものであり、この発明の範囲を以下の記載に限定する趣旨のものではない。
本発明の光音響測定装置には、被検体に光(電磁波)を照射することにより被検体内で発生した音響波を受信して、被検体内の特性情報を画像データとして取得する光音響効果を利用した装置を含む。
被検体の特性情報は、光照射によって生じた音響波の発生源分布、被検体内の初期音圧分布、あるいは初期音圧分布から導かれる光エネルギー吸収密度分布や吸収係数分布、組織を構成する物質の濃度分布を含む。物質の濃度分布とは、例えば、酸素飽和度分布や酸化・還元ヘモグロビン濃度分布などである。このような特性情報を被検体情報とも呼ぶことから、本発明の光音響測定装置を、被検体情報取得装置と呼ぶこともできる。
本発明でいう音響波とは、典型的には超音波であり、音波、超音波、音響波と呼ばれる弾性波を含む。光音響効果により発生した音響波のことを、光音響波または光超音波と呼ぶ。音響波検出器(例えば探触子)は、被検体内で発生又は反射した音響波を受信する。
<光音響測定装置の構成>
以下に、本発明に係る光音響測定装置を構成する各部の好適な実施形態について説明する。
(パルス光源)
被検体が生体の場合、光源からは生体を構成する成分のうち特定の成分に吸収される波長の光を照射する。光源は光音響測定装置と一体として設けられていても良いし、別体として設けられていても良い。効率的に光音響波を発生させるため、パルス幅は10〜50nsec程度が好適である。光源としては大出力が得られるレーザが好ましいが、レーザの代わりに発光ダイオードやフラッシュランプ等を用いることもできる。レーザとしては、固体レーザ、ガスレーザ、色素レーザ、半導体レーザなど様々なレーザを使用できる。
照射のタイミング、波形、強度等は光源制御部によって制御される。なお、この光源制御部は、光源と一体化されていても良い。照射される光は、被検体内部まで光が伝搬する波長であることが望ましい。具体的には被検体が生体の場合、500nm以上1200nm以下である。
(光伝送手段)
パルス光源から発せられた光は光伝送手段によって光照射手段に到達する。光伝送手段は、例えば光ファイバや、光ファイバを複数束ねたバンドルファイバのような、光導波路構造を有するもので構成される。あるいは、ミラーやレンズなどの光学素子により空間中を伝搬させるタイプを用いることができる。
(光照射手段)
光伝送手段によって導かれた光は、光照射手段により生体などの被検体に照射される。照射光の強度や光分布、位置は、ミラー、レンズ、プリズムなどの光学素子によって調整されていることが望ましい。光照射手段を設ける位置は、被検体に対して音響波検出器と同じ側、被検体に対して音響波検出器と反対側、その両側などが考えられる。
(音響波検出器)
音響波検出器は、照射されたパルス光により被検体の表面および内部で発生する光音響波を受信し、アナログ信号である電気信号に変換するものである。この電気信号を受信信号と呼ぶ。音響波検出器は、受信信号を時系列に生成し、出力する。音響波検出器は、本発明の受信部に相当する。
なお、後述する規格化処理や画像化処理への前処理として、このアナログの受信信号に対して信号処理部でデジタル変換処理をした後の信号のことも、受信信号と言える。受信信号がこのような離散的なデジタル信号であっても、一定の期間継続的に出力されていれば、時系列に生成されると言える。
音響波検出器としては、圧電現象を用いたもの、光の共振を用いたもの、静電容量の変化を用いたもの等、音響波を受信できるものであれば、どのようなものを用いてもよい。典型的には複数の受信素子が1次元、あるいは2次元に配置されたものがよい。このような多次元配列素子を用いることで、同時に複数の位置で音響波を受信することができ、測定時間を短縮できる。受信素子が1つの場合には、受信素子を走査させて複数の位置で音響波を受信しても良い。
(信号処理部)
信号処理部は、音響波検出器により複数の位置で受信された受信信号から光音響画像を生成するものである。音響波検出器で得られた電気信号を効率よく処理するためにはアナログ信号からデジタル信号に変換するA/D変換部を有することが望ましい。また、画像を形成するまでの時間短縮の観点からは、複数の受信信号を同時に処理できることが望ましい。本実施形態において、信号処理部は以下に述べる規格化処理部および画像化処理部を有している。信号処理部は、受信信号の処理と画像化処理をする点において、本発明の処理部に相当する。
(規格化処理部)
規格化処理部は、各位置で受信された時系列の受信信号を規格化するものである。規格化処理部では、受信信号の波の形状(周波数成分の位相情報)は保存したままで波の振幅を1になるように信号強度を変換している。この処理を規格化処理と呼ぶ。規格化処理にはいくつかの方法があり、詳しくは後述する。規格化処理部は、本発明の規格化部に相当する。
(画像化処理部)
画像化処理部は、各位置で受信された時系列の受信信号あるいは、その受信信号を規格化処理した規格化信号から被検体内部の光音響画像を形成するものである。この光音響画像の形成に関しては、例えばディレイアンドサム(Delay and Sum)アルゴリズムを用いることができる。
(保持手段)
保持手段は、被検体を保持するために用いるものであり、例えば2枚の保持板で構成される。これにより、測定中に被検体が動き測定位置が変化することを防ぐことが可能となり、また、保持板による圧迫で被検体を薄くすることで被検体深部の画像化が可能となる。被検体と音響波検出器との間に位置する保持板は、光の吸収が小さく、音響波の吸収が小さく、かつ被検体との音響インピーダンス差が小さいことが望ましく、ポリメチルペンテン樹脂などが好適である。
以上が本発明における光音響測定装置の構成である。
<規格化処理>
以下、規格化処理部で行われる処理の概要と効果について、一例を挙げつつ説明する。
(規格化処理の概要)
受信信号がアナログ信号である場合を例にとり説明する。
まず、受信信号をヒルベルト変換する。これは、どの正周波成分も90度進ませ、どの負周波成分も90度遅らせるような変換である。元の時系列の信号f(t)(tは時間)に対して、ヒルベルト変換信号g(t)は、式(1)で与えられる。
Figure 2013252252
ここで、複素数信号h(t)を式(2)とする。
h(t)=f(t)+ig(t) …(2)
このとき、h(t)の絶対値はf(t)の包絡線信号となる。ここで、iは虚数単位である。
元の信号f(t)を包絡線信号|h(t)|で割れば、振幅を1に変換した規格化信号が得られる。すなわち、規格化信号f_normal(t)は、式(3)となる。
Figure 2013252252
受信信号がデジタル信号である場合も同様である。まず、受信信号f(n)(nはサンプリングされた信号列番号で時間に対応する)を離散ヒルベルト変換する。具体的には、f(n)を離散フーリエ変換し、その正周波数に対応する値に−iを掛け、その負周波数に対応する値にiを掛けた後に逆フーリエ変換を施す。これにより、ヒルベルト変換信号g(n)を得る。ここで複素数信号h(n)を式(4)とする。
h(n)=f(n)+ig(n) …(4)
このとき、h(n)の絶対値はf(n)の包絡線信号となる。元の信号f(n)を包絡線信号|h(n)|で割れば、振幅を1に変換した規格化信号が得られる。
規格化信号f_normal(n)は、式(5)となる。
Figure 2013252252
規格化処理の他の方法として、受信信号を、正負が逆転する時間ごとに複数の区間に分割し、各区間において振幅が1あるいは−1になるように線形に変換したのちに1つの時系列信号に統合することで規格化信号を得るような方法でもよい。
(規格化処理の効果)
以下に、規格化処理により、界面光音響波や多重反射光音響波に起因するアーティファクトを低減することが可能となる理由を説明する。
規格化処理を行った後の規格化信号は、信号の強度情報は失われるが、ある時間における波形の形状、すなわち周波数ごとの位相情報は保存されている。
一般に、ディレイアンドサムなどの画像形成アルゴリズムは点音響波源から球面波状に発散して音響波検出器に到達することを想定している。そして、受信可能な位置にある音響波検出器の時系列の信号を、音響波伝搬による時間遅れを考慮して加算(整相加算)して、あるボクセルでの光音響画像強度を算出している。ここでは3次元画像再構成を前提としてボクセルを単位領域としているが、2次元画像再構成を行う場合はピクセルが単位領域となる。
ここで、あるボクセルに点音響波源、線音響波源、あるいは面音響波源があると仮定して画像形成を行った場合を考える。
線音響波源からの音響波は円筒波状に発散して音響波検出器に到達するため、整相加算した際の相関度は点音響波源よりも小さい。また、面音響波源からの音響波は平面波状に発散して音響波検出器に到達するため、整相加算した際の相関度はさらに小さくなる。規格化処理を行った後の規格化信号は振幅が1になっているため、規格化信号を元に光音響画像を形成した際の画像強度の大小関係は、次式(6)のようになる。
F1>F2>F3 …(6)
ここで、F1は点音響波源の画像強度、F2は線音響波源の画像強度、F3は面音響波源の画像強度である。
界面光音響波や多重反射光音響波は面音響波源からの波と見なせるため、点音響波源や線音響波源による光音響画像の画像強度に比べ、界面光音響波や多重反射光音響波に起因するアーティファクトを低減することが可能となる。
より詳細な構成については、以下に述べる実施例の中で述べる。
<実施例1>
図1は本発明の光音響測定装置の実施例を説明する概念図である。図中、符号101は、波長800nm、パルス幅20nsec、繰り返し周波数10Hz、パルスエネルギー30mJのパルス光を発生させる、チタンサファイアレーザからなるパルス光源である。符号103はバンドルファイバで構成された光伝送手段であり、符号105は光照射手段である。
符号107は被検体、符号109および111は被検体を挟んで保持する保持板である。保持板109および111は、ここでは、厚さ10mmのポリメチルペンテン樹脂で構
成されている。
符号113は2次元アレイ状に配置されている音響波検出器である。符号106は光照射手段105より発せられた照射光である。音響波検出器113の前面で被検体107に照射光106が当たるように、光照射手段105の内部に設けられた不図示の光学系、例えばプリズムで角度が調整されている。また、音響波検出器113と保持板109の間には音響波を伝搬しやすくするため水が充填されている(不図示)。
本実施例では、音響波検出器113として、素子サイズ2mm角、素子ピッチ2mm、中心検出周波数1MHzの圧電素子(トランスデューサ)を横8個、縦23個の2次元アレイ状に並べたものを用いている。
音響波検出器113で受信された時系列の受信信号は、A/D変換部115(ADC)によってデジタル信号に変換されたのちに、規格化処理部117によって振幅が1に規格化され、規格化信号に変換される。規格化信号を元に画像化処理部119によって形成された第1の画像信号120(第1の画像データに相当)は、画像表示部121によって表示される。
図2は、本実施例の測定対象となる被検体を説明する図である。図2(a)は被検体であるファントムをz方向から、図2(b)はx方向から見た様子を示している。このような被検体を光音響測定装置により測定した結果について、以下に説明する。
図2中、符号151は、乳房に吸収係数や散乱係数を合わせたファントム(模擬生体)である。ファントム151のサイズは、幅120mm、高さ60mm、厚さ40mmとする。符号153、155、157はファントム151の厚さ方向約25mmの位置に10mm間隔で埋め込まれた直径約2mmのワイヤ状の光吸収体であり、153から157の順に吸収係数(ABS)が大きくなる様に調整されている。
音響波検出器は、図2(a)中のハッチング処理したエリア(音響波検出器エリア158)に配置されており、サイズは16mm×46mmである。パルス光の照射エリアは、音響波検出器エリア158に合わせておく。図2(b)中の画像化領域159は音響波検出器のサイズを考慮した領域であり、詳しくは後述する。
音響波検出器113中のある素子によって受信されたA/D変換後の受信信号を図3(a)に示す。図3(a)において、横軸はパルス光照射時間を0としたときの経過時間、縦軸は受信された音響波の強度である。図中、時間約25μsecに到達している信号(S)が、光吸収体からの信号である。時間0から20μsecに到達している信号(R)は、音響波検出器の表面や、ファントム−保持板界面で発生した界面光音響波、あるいは、保持板界面などで反射した多重反射光音響波である。
図3(a)の信号の包絡線信号を図3(b)に示す。規格化信号は、図3(a)の信号を包絡線信号で割ることで得られる。規格化信号を図3(c)に示す。図3(c)より、信号の振幅が1に規格化され、波の形状は保存されていることがわかる。
音響波検出器113中のすべての素子によって受信された受信信号から規格化信号を生成し、その規格化信号から画像信号(第1の画像信号)を生成した例を図4(a)に示す。ここで、素子の指向角を考慮して、あるボクセルからの音響波が素子に入射する角度が±25度以内となる素子を画像形成に用いている。また、各ボクセルの画像信号の最大値が1になるように規格化されており、各ボクセルの画像信号が負の場合は0に丸められている。
図4(a)に示したのは、音響波検出器のx方向中心でファントムを切り取った際のyz平面(断面図)である。保持板の厚さ10mmを考慮して、z方向(横軸)は10mmから50mmまでを表示している。また音響波検出器の大きさを考慮して、y方向(縦軸)は0mmから46mmまでを表示している(図2(b)中、点線で囲んだ画像化領域159に相当)。また、図4(a)において、y方向位置16mmで切り取った波形を図4(b)に示す。
比較のため、規格化処理を行わない受信信号から画像信号を生成した例を図5(a)および図5(b)に示す。表示した座標は図4と同じである。
図5では、z位置35mm付近に現れる光吸収体の像の大きさが、z位置10mmから30mmに現れている界面光音響波や多重反射光音響波による像(アーティファクト)と比較して小さいか同程度である。一方、図4より、本実施例による画像化では、界面光音響波や多重反射光音響波による像(アーティファクト)が抑圧され、光吸収体の像のコントラストが向上していることがわかる。以上により、本実施例の効果が実証された。
なお、y位置16mmに現れている像は光吸収体155に相当し、y位置6mmに現れている像は光吸収体157に相当する。この順序は、吸収係数の大小関係と対応していない。これは、光の照射が中央部に比べ周辺部が弱くなっていること、および、光吸収体157が画像化領域の端に位置しているため画像形成に用いる素子の数が少ないことに起因しており、本発明における本質的な課題ではない。
また、光吸収体の像がz方向に数mm離れて2重になっているが、これは音響波検出器の検出部に設けられている音響インピーダンス整合層内部での多重反射に起因しており、本発明における本質的な課題ではない。
本実施例において、測定可能な領域を広げるために、光照射手段および音響波検出器を一体化して2次元に走査させてもよい。この場合、音響波検出器のサイズより大きな被検体を測定するのに有効である。また、照射光を強めるために、被検体に対して超音波検出器の反対側の保持板(図1中、符号111に相当)側から光を照射できるように、別の光照射手段を設けてもよい。
<実施例2>
図6は本発明の光音響測定装置の実施例2を説明する概念図である。図中、図1と同じ部材には同一番号を付加しており、説明は省略する。
画像化処理部201は、実施例1と同様の方法で規格化した受信信号から第1の画像信号120を生成するとともに、規格化処理を行っていない受信信号から第2の画像信号207(第2の画像データに相当)を生成する。また、第1の画像信号120は、補正マップ生成部203によってボクセルごとの補正値をマップ化した補正マップ205に変換される。
さらに、画像補正部209において、第2の画像信号207の各ボクセルデータに、それと対応する位置の補正マップ205のボクセルデータを掛ける。これにより最終的な画像信号210(第3の画像データに相当)が得られる。すなわち、補正マップは、最終的な画像信号を得るための補正に用いる係数を、被検体内部の各単位領域で求めたものである。
図7のフローチャートを用いて、補正マップ生成部203および画像補正部209の処理について説明する。
ステップS701において、補正マップ生成部203は、画像化処理後のすべてのボク
セルデータから最大値を見つける。
ステップS702において、第1の画像信号120の各ボクセルデータを、S701で見つけた最大値で割る。そして、各ボクセルデータをそれぞれ、そのボクセルデータを最大値で割った値に置換する。
ステップS703において、置換後の値が0未満のボクセルデータを0に置換する。
ステップS704において、各ボクセルデータの値をn乗(nは0以上の実数)した値で各ボクセルデータを置換する。このような処理によって生成されたボクセルデータが補正マップ205である。nの値は、ピーク値を強調したい場合には大きめに設定し、弱い画像信号も残したい場合には小さめに設定すればよい。
ステップS711において、画像補正部209は、第2の画像信号207の各ボクセルデータに、それと対応する位置の補正マップ205のボクセルデータを掛ける。これにより、画像表示部に提供する、最終的な画像信号210を生成する。
本実施例の光音響測定装置により、図2に示すような被検体を測定した結果について以下に説明する。
第1の画像信号120をある平面で切りだした例が図4に示された画像であり、第2の画像信号207の例が、図5に示された画像である。図4はすでに最大値が1に、最小値が0に値が変換された結果である。nを1とした場合、補正マップ205は図4と同一になる。すなわち、この平面においては、図5の画像データに図4の画像データを掛けることになる。その結果を図8に示す。
図8(a)は、音響波検出器のx方向中心でファントムを切り取った際のyz平面(断面図)である。また、図8(a)において、y方向位置16mmで切り取った波形を図8(b)に示す。
図8では、実施例1と同様、界面光音響波や多重反射光音響波による像(アーティファクト)が抑圧され、光吸収体の像のコントラストが向上している。さらに、光吸収体の像の強度が図5とほぼ等しくなっている。これは、規格化していない受信信号から生成した画像信号の強度値を維持していることを意味する。よって、本実施例では、所望のターゲットの強度情報を失わずに、画像の高コントラスト化を行うことが可能になった。
本実施例において、係数nは所望のターゲットの強度情報とアーティファクトの強度情報から画像に合わせて設定すればよく、オペレータが作業中に入力、設定できるように装置が構成されていてもよい。
<実施例3>
本実施例では、実施例2と同様、強度情報を失わずに画像化することを可能にした構成である。実施例2との違いは、補正マップ生成方法であり、その他は図6の構成と同等である。
本実施例における補正マップ生成部301での処理を、図9のフローチャートを用いて説明する。
ステップS901において、補正マップ生成部301は、画像化処理後のすべてのボクセルデータから最大値を見つける。
ステップS902において、第1の画像信号120の各ボクセルデータを、S901で見つけた最大値で割る。そして、各ボクセルデータをそれぞれ、そのボクセルデータを最大値で割った値に置換する。
ステップS903において、ある所定の閾値をmとしたとき、置換後の値が、閾値以上(m以上)のボクセルデータを1に、閾値未満(m未満)のボクセルデータを0に置換する。ここで、mは0から1までの実数である。
このような処理によって生成されたボクセルデータが補正マップ303である。
実施例1と同様に、本実施例による光音響測定装置より、図2に示すような被検体を測定した結果について以下に説明する。
第1の画像信号120をある平面で切りだした例が図4に示された画像である。図4はすでに最大値が1に、最小値が0に値が変換された結果である。mを0.4とした場合の補正マップ303を同一平面で切りだした例が図10である。図10の画像データに図4の画像データを掛けた結果を図11に示す。
図11(a)は、音響波検出器のx方向中心でファントムを切り取った際のyz平面(断面図)である。また、図11(a)において、y方向位置16mmで切り取った波形を図11(b)に示す。
図11では、光吸収体の像の強度が図5と一致しており、画像信号の強度値が維持されている。さらに、界面光音響波や多重反射光音響波による像(アーティファクト)が十分抑圧されていることがわかる。よって、本実施例では、所望のターゲットの強度情報を失わずに画像の高コントラスト化を行うことが可能になった。
本実施例において、閾値mは所望のターゲットの強度情報とアーティファクトの強度情報から画像に合わせて設定すればよく、オペレータが作業中に入力、設定できるように装置が構成されていてもよい。
規格化した受信信号から生成された画像信号から補正マップを生成する方法は、実施例2や実施例3で示した方法に限定されるものではない。画像に合わせて適当な補正関数を採用しても良い。
101:パルス光源,105:光照射手段,106:照明光,113:音響波検出器,117:規格化処理部,119:画像化処理部,120:第1の画像信号

Claims (7)

  1. 光を照射された被検体から発生する音響波を受信信号に変換して時系列に出力する複数の素子を含む受信部と、
    前記受信信号の強度を規格化して規格化信号を生成する規格化部と、
    前記規格化信号から前記被検体内部の特性情報の分布を示す第1の画像データを生成する処理部と、
    を有することを特徴とする被検体情報取得装置。
  2. 前記規格化部は、前記受信信号の包絡線信号を求め、前記受信信号の強度を前記包絡線信号の強度で割ることにより、前記規格化信号を生成する
    ことを特徴とする請求項1に記載の被検体情報取得装置。
  3. 前記処理部は、前記規格化信号に画像形成アルゴリズムを適用することにより、前記第1の画像データを生成する
    ことを特徴とする請求項2に記載の被検体情報取得装置。
  4. 前記処理部は、
    前記受信信号に画像形成アルゴリズムを適用することにより、前記被検体内部の特性情報の分布を示す第2の画像データを生成し、
    前記第1の画像データに基づいて、前記被検体内部の各単位領域における画像データの補正に用いる係数を求め、
    前記第2の画像データを前記係数で補正することにより、第3の画像データを生成する
    ことを特徴とする請求項2または3に記載の被検体情報取得装置。
  5. 前記処理部は、前記第1の画像データの各単位領域における値を比較して最大値を求め、前記第1の画像データの単位領域それぞれにおける値を当該最大値により割った後にn乗(nは0以上の実数)することにより、単位領域それぞれにおける前記係数を求める
    ことを特徴とする請求項4に記載の被検体情報取得装置。
  6. 前記処理部は、前記第1の画像データの単位領域における値が所定の閾値以上である場合は、当該単位領域における前記係数を1とし、所定の閾値未満である場合には、前記係数を0とする
    ことを特徴とする請求項4に記載の被検体情報取得装置。
  7. 受信部が、光を照射された被検体から発生する音響波を受信信号に変換して時系列に出力するステップと、
    規格化部が、前記受信信号の強度を規格化して規格化信号を生成するステップと、
    処理部が、前記規格化信号から前記被検体内部の特性情報の分布を示す第1の画像データを生成するステップと、
    を有することを特徴とする被検体情報取得方法。
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