JP2013252068A - 酵素処理魚介類エキスの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 魚介類エキスを原料として、グルコースを含有する素材を添加する工程と、好気条件下でグルコース酸化酵素を用いて酵素処理する工程とを含むことを特徴とする酵素処理魚介類エキスの製造方法。
【選択図】 なし
Description
魚介類エキスの代表的な製造方法としては、原料の魚介類を熱水抽出した後、固液分離する方法が知られている。
しかし、これらの乳酸菌発酵による方法では、発酵・熟成という目的は達成できるものの、発酵副産物である乳酸によって過剰な酸味が付与されることにより、エキスの風味バランスを損なうという問題がある。また、乳酸菌発酵や酵母発酵による独特の発酵臭が発生し、エキス本来の持ち得る風味を損なうという問題がある。さらに、このような一般的な乳酸菌発酵や酵母発酵では、通常、12時間以上の時間を必要とするため、これらの発酵を伴わないエキスの製造方法に比べて相当の手間と時間を要するという問題がある。また、これら発酵処理においては、加温により原料に由来する糖類やアミノ酸等が反応することで褐変・着色が起こり、得られたエキスの汎用性が低下するという問題がある。また、これらの乳酸菌発酵による方法には、発酵処理や酵素処理を行うことによりグルコン酸を生成せしめた魚介類エキスについて記載されていない。
グルコン酸生成については、ヤーコン芋を破砕して得た搾汁に、グルコン酸生成能を有する微生物または酵素を添加してなることを特徴とするグルコン酸含有ヤーコン発酵飲料(特許文献3)が開示されている。しかし、これはヤーコンの発酵飲料に関する発明であり、発酵時間も3日以上を必要とするものである。さらに、色調については、褐変防止剤の添加をしなければ褐変を抑制できないものである。
また、本発明は、該製造方法により得られる酵素処理魚介類エキス及び該酵素処理魚介類エキスを含有する飲食品又は飼料を提供するものである。
項(1)
魚介類エキスを原料として、グルコースを含有する素材を添加する工程と、好気条件下でグルコース酸化酵素を用いて酵素処理する工程とを含むことを特徴とする酵素処理魚介類エキスの製造方法。
項(2)
グルコース酸化酵素が、Penicillium属、Aspergillus属、Gluconobacter属、Acetobacter属又はGluconacetobacter属に属する微生物から選ばれるいずれか1種以上に由来する酵素である項(1)に記載の製造方法。
項(3)
項(1)又は項(2)に記載の製造方法により得られる酵素処理魚介類エキス。
項(4)
項(3)に記載の酵素処理魚介類エキスを含有する飲食品又は飼料。
魚介類エキスの原料として用いる魚介類は、その抽出の際に、そのままの形状で用いてもよいが、細切処理又は粉砕処理して用いてもよい。魚介類エキスの原料として用いる魚介類を細切処理又は粉砕処理する方法は、特に限定されず、食材の加工に一般に用いられる方法であればよい。例えば、切断、粉砕、摩擦、空気圧、水圧等を利用して加工する各種の裁断機、粉砕機等が挙げられ、具体的には、カッター、スライサー、ダイサー、チョッパー、グラインダー、ミキサー、ミル等を用いることができる。
これら魚介類エキスは、抽出後、そのままの形態で用いることもできるが、固液分離した液部を用いることができる。固液分離の方法は特に限定されず、濾過、遠心分離等の公知の方法で行うことができる。また、該魚介類エキスは、抽出後、そのままの形態又は固液分離した液部を常法により濃縮機等で処理して濃縮したものを用いることができる。
添加するグルコースを含有する素材は、素材中にグルコースを含有するものであれば良く、例えば、糖類や果汁・野菜汁、麹の糖化作用を利用して得られる甘酒、味醂、灰持酒等が挙げられる。中でも、グルコースを含有する糖類が好ましく、例えば、転化糖、異性化糖、水飴、はちみつ、糖蜜等を挙げることができ、もちろん、グルコースそのものであってもよい。グルコースを含有する素材の添加量は、最終的に得られる酵素処理魚介類エキスにおいて目的の風味を得られる量であればよく、グルコース酸化酵素を用いた酵素処理によって生成するグルコン酸の濃度を指標とすることができる。原料である魚介類エキスに対するグルコースを含有する素材の添加量は、固形物換算で、通常0.1%〜200%、好ましくは0.5%〜100%であり、原料である魚介類エキスに対するグルコースとしての添加量は固形物換算で、通常0.1%〜25%、好ましくは0.5%〜15%である。
また、本発明における好気条件下とは、グルコース酸化酵素を用いた酵素処理において処理液中に酸素が供給されている状態を維持していればよいものであり、公知の手段を用いることができ、この手段は特に限定されないが、例えば、エアレーションの利用が挙げられる。エアレーションの方法は、特に限定されないが、例えば、該酵素処理液中への酸素を含有する気体の通気(バブリング)や、酸素を含有する気体との接触下での該酵素処理液の振盪(シェイキング)、シャワーリングによる該酵素処理液の循環、又は撹拌等の手段により行うことができ、好ましくは該酵素処理液中への酸素を含有する気体の通気処理である。
さらに、本発明におけるグルコース酸化酵素を用いた酵素処理は、グルコース酸化酵素産生能を有する微生物菌体を用いた酵素処理を行ってもよく、この場合、当該微生物は休止菌体であってもよい。
カツオを熱水抽出した後、固液分離工程及び濃縮工程を経て得られたカツオエキス(Brix66°)8gに、水45gを加えてBrix10°に調整した後、グルコース(結晶ぶどう糖:日本澱粉工業株式会社製)0.26gを添加して溶解させた後、グルコース酸化酵素製剤(スミチームPGO:新日本化学工業株式会社製)を200U/100gとなるよう添加して、振盪(130rpm)を行いながら30℃で3時間酵素処理を行った。グルコース酸化酵素による酵素処理後、90℃で10分間酵素失活処理を行うことにより、本発明の酵素処理カツオエキス(実施例1)50g(Brix10°)を得た。
グルコースを添加しない以外は、実施例1と同様にして、グルコース無添加のカツオエキス(比較例1)50g(Brix10°)を得た。
グルコース酸化酵素製剤を用いた酵素処理を行わない以外は、実施例1と同様にして、グルコース酸化酵素未処理のカツオエキス(比較例2)50g(Brix10°)を得た。
比較例2と同様にして得られたグルコース酸化酵素未処理カツオエキスに、グルコン酸濃度が固形物換算で4%となるように50%グルコン酸(扶桑化学工業株式会社製)を添加することにより、グルコース酸化酵素未処理のグルコン酸添加カツオエキス(比較例3)50g(Brix10゜)を得た。
実施例1の本発明により得られた酵素処理カツオエキス、比較例1のグルコース無添加のカツオエキス、比較例2のグルコース酸化酵素未処理のカツオエキス、比較例3のグルコース酸化酵素未処理のグルコン酸添加カツオエキス、及び、原料のカツオエキスについて、pH及びグルコン酸含量を測定した。グルコン酸含量は、食品分析用テストコンビネーションであるF−キットグルコン酸(ロシュ・ダイアグノスティクス社製)を用いて測定した。
さらに、各エキスを水で希釈してBrix5°に調整した試料を用いて、7人のパネラーにより官能評価を実施した。評価は、生臭さ、エグ味、コク味、酸味について、原料のカツオエキスの評点を0点としたときの評価を−2〜+2点の内から採点することにより評価し、その平均点を算出した。各試料のpH及びグルコン酸含量の測定値と共に、結果を表1に示す。
官能評価において、実施例1の本発明により得られた酵素処理カツオエキスは、原料のカツオエキスと比較して、酸味やコク味が増強され、生臭さやエグ味が格段に抑制された、風味良好なエキスであった。しかし、比較例1のグルコース無添加のカツオエキス及び比較例2のグルコース酸化酵素未処理のカツオエキスについては、生臭さやエグ味は原料のカツオエキスと同程度か、それよりも悪化しており、酸味やコク味についても原料のカツオエキスと大きな差がなかった。さらに、比較例3のグルコース酸化酵素未処理のグルコン酸添加カツオエキスは、実施例1の本発明により得られた酵素処理カツオエキスと同程度のグルコン酸を含有しているにもかかわらず、生臭さ、エグ味において、原料のカツオエキスと同程度であり、風味良好なものとはならなかった。
実施例1の本発明により得られた酵素処理カツオエキス及び比較例2のグルコース酸化酵素未処理のカツオエキスについて、その色度を比較した。色度は、各エキスのBrixが1°のときの水溶液の吸光度(OD430〜570)を、分光光度計(UV−1200:株式会社島津製作所製)を用いて、光路長1cm、波長430nm、500nm及び570nmの条件で測定した。各波長の吸光度値をその合計値と共に表2に示す。
サバを熱水抽出した後、固液分離工程及び濃縮工程を経て得られたサバエキス(Brix63°)16gに、水34gを加えてBrix20°に調整した後、グルコース(結晶ぶどう糖:日本澱粉工業株式会社製)0.25gを添加して溶解させた後、グルコース酸化酵素製剤(スミチームPGO:新日本化学工業株式会社製)を400U/100gとなるよう添加して、振盪(130rpm)を行いながら40℃で5時間酵素処理を行った。グルコース酸化酵素による酵素処理後、90℃で10分間酵素失活処理を行うことにより、本発明の酵素処理サバエキス(実施例2)45g(Brix20°)を得た。
実施例2の本発明により得られた酵素処理サバエキス及び原料のサバエキスについて、pH及びグルコン酸含量を測定した。グルコン酸含量は、食品分析用テストコンビネーションであるF−キットグルコン酸(ロシュ・ダイアグノスティクス社製)を用いて測定した。
さらに、各エキスを水で希釈してBrix10°に調整した試料を用いて、7人のパネラーにより官能評価を実施した。評価は、生臭さ、エグ味、コク味、酸味について、原料のサバエキスの評点を0点としたときの評価を−2〜+2点の内から採点することにより評価し、その平均点を算出した。各試料のpH及びグルコン酸含量の測定値と共に、結果を表3に示す。
官能評価において、実施例2の本発明により得られた酵素処理サバエキスは、原料のサバエキスと比較して、酸味やコク味が増強され、生臭さやエグ味が抑制された、風味良好なエキスであった。
煮干しを熱水抽出した後、固液分離工程及び濃縮工程を経て得られた煮干しエキス(Brix45°)10gに、水90gを加えてBrix4.5°に調整した後、グルコースを含有する原料として果糖ぶどう糖液糖(フジフラクトH−100:日本食品化工株式会社製)1gを添加して溶解させた後、グルコース酸化酵素産生能を有する微生物であるGluconobacter frateurii NBRC3264株を、産生するグルコース酸化酵素が酵素単位で100U/100gとなるよう添加して、通気量10mL/分で通気及び撹拌を行いながら35℃で2時間酵素処理を行った。酵素処理後、90℃で10分間酵素失活処理し、固液分離(No.2ろ紙ろ過)を行うことにより、本発明の酵素処理煮干しエキス(実施例3)90g(Brix5.2°)を得た。得られた本発明の酵素処理煮干しエキスのグルコン酸含量は、固形物換算で5.4%であった。なお、グルコース酸化酵素活性の測定は、分光光度計を用いた活性測定法(Journal of Bacteriology 1986,166(1):269−274)により実施した。
実施例3の本発明により得られた酵素処理煮干しエキス及び原料の煮干しエキスを水でBrix5°に調整したものをそれぞれ用いて、下記表4の配合比で混合し、麺つゆ各200gを調製した。得られた各麺つゆについて、目視により外観色を比較した。さらに、得られた各麺つゆを用いて、7人のパネラーにより官能評価を実施した。評価は、生臭さ、エグ味、コク味、酸味について、原料の煮干しエキスを水でBrix5°に調整したものを用いた麺つゆの評点を0点としたときの評価を−2〜+2点の内から採点することにより評価し、その平均点を算出した。結果を表5に示す。
また、表5に示した通り、実施例3の本発明により得られた酵素処理煮干しエキスを用いた麺つゆは、原料の煮干しエキスを用いた麺つゆと比較して、生臭さ、エグ味共に抑制されており、コク味が増強されており、風味良好な麺つゆであった。
マグロを熱水抽出した後、固液分離工程を経て得られたマグロエキス(Brix10°)100gに、グルコースを含有する原料として粉末水飴(粉末水飴クリームベース:日本澱粉工業株式会社製)5gを添加して溶解させた後、グルコース酸化酵素製剤(スミチームGOP:新日本化学工業株式会社製)を75U/100gとなるように添加して、通気量20mL/分で通気及び撹拌を行いながら30℃で2時間酵素処理を行った。酵素処理後、90℃で10分間酵素失活処理した後、デキストリン(パインデックス(登録商標)#2:松谷化学工業株式会社製)10g、食塩5gを添加して完全に溶解させ、フリーズドライにて乾燥させることにより、本発明の酵素処理マグロエキス粉末(実施例4)27gを得た。グルコン酸含量は、固形物換算で4.5%であった。
さらに、得られた本発明の酵素処理マグロエキス粉末(実施例4)2gを、熱水100mlに溶解させて官能評価した結果、生臭さやエグ味を感じず、適度な酸味を有しており、コク味が強く、かつ、魚介だし特有の風味を有するものであった。
Claims (4)
- 魚介類エキスを原料として、グルコースを含有する素材を添加する工程と、好気条件下でグルコース酸化酵素を用いて酵素処理する工程とを含むことを特徴とする酵素処理魚介類エキスの製造方法。
- グルコース酸化酵素が、Penicillium属、Aspergillus属、Gluconobacter属、Acetobacter属又はGluconacetobacter属に属する微生物から選ばれるいずれか1種以上に由来する酵素である請求項1に記載の製造方法。
- 請求項1又は請求項2に記載の製造方法により得られる酵素処理魚介類エキス。
- 請求項3に記載の酵素処理魚介類エキスを含有する飲食品又は飼料。
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