JP5991663B2 - 酵素処理カツオエキスの製造方法 - Google Patents
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Description
カツオエキスの代表的な製造方法としては、原料のカツオを熱水抽出した後、固液分離する方法が知られている。
しかし、これらの乳酸菌発酵による方法では、発酵・熟成という目的は達成できるものの、発酵副産物である乳酸によって過剰な酸味が付与されることにより、エキスの風味バランスを損なうという問題がある。また、乳酸菌発酵や酵母発酵による独特の発酵臭が発生し、エキス本来の持ち得る風味を損なうという問題がある。さらに、このような一般的な乳酸菌発酵や酵母発酵では、通常、12時間以上の時間を必要とするため、これらの発酵を伴わないエキスの製造方法に比べて相当の手間と時間を要するという問題がある。また、これら発酵処理においては、加温により原料に由来する糖類やアミノ酸等が反応することで色調が褐変し着色が起こることで、得られたエキスの汎用性が低下するという問題がある。
また、発酵処理や酵素処理を行うことによりグルコン酸を生成せしめたカツオエキスについては、事例がない。
ヤーコン芋を破砕して得た搾汁に、グルコン酸生成能を有する微生物または酵素を添加してなることを特徴とするグルコン酸含有ヤーコン発酵飲料(特許文献3)が知られているが、カツオエキスの生臭さやコク味に関する記載はなく、発酵時間も3日以上を必要とするものである。さらに、色調については、褐変防止剤の添加をしなければ褐変を抑制できないものである。
また、本発明は、該製造方法により得られる酵素処理カツオエキス及び該エキスを含有する飲食品又は飼料を提供するものである。
項(1)
カツオエキスを原料として、グリコーゲン分解活性能を有する酵素を用いて酵素処理した後又は該酵素処理と同時に、好気条件下でグルコース酸化酵素を用いて酵素処理を行うことを特徴とする酵素処理カツオエキスの製造方法。
項(2)
グルコース酸化酵素が、Penicillium属、Aspergillus属、Gluconobacter属、Acetobacter属又はGluconacetobacter属に属する微生物から選ばれるいずれか1種以上に由来する酵素である項(1)に記載の製造方法。
項(3)
グリコーゲン分解活性能を有する酵素が、グルコアミラーゼである項(1)又は項(2)に記載の製造方法。
項(4)
項(1)乃至項(3)のいずれか1項に記載の製造方法により得られる酵素処理カツオエキス。
項(5)
項(4)に記載の酵素処理カツオエキスを含有する飲食品又は飼料。
カツオエキスの原料として用いるカツオは、その抽出の際に、そのままの形状で用いてもよいが、細切処理又は粉砕処理して用いてもよい。カツオエキスの原料として用いるカツオを細切処理又は粉砕処理する方法は、特に限定されず、食材の加工に一般に用いられる方法であればよい。例えば、切断、粉砕、摩擦、空気圧、水圧等を利用して加工する各種の裁断機、粉砕機等が挙げられ、具体的には、カッター、スライサー、ダイサー、チョッパー、グラインダー、ミキサー、ミル等を用いることができる。
これらカツオエキスは、抽出後、そのままの形態で用いることもできるが、固液分離した液部を用いることができる。固液分離の方法は特に限定されず、濾過、遠心分離等の公知の方法で行うことができる。また、該カツオエキスは、抽出後、そのままの形態又は固液分離した液部を常法により濃縮機等で処理して濃縮したものを用いることができる。
グルコース酸化酵素を用いた酵素処理は、グリコーゲン分解活性能を有する酵素を用いた酵素処理の後、又はグリコーゲン分解活性能を有する酵素を用いた酵素処理と同時に行われる。
また、本発明における好気条件下とは、該酵素処理において処理液中に酸素が供給されている状態を維持していればよいものであり、公知の手段を用いることができ、その手段は特に限定されないが、例えば、エアレーションの利用が挙げられる。エアレーションの方法は、特に限定されないが、例えば、該酵素処理液中への酸素を含有する気体の通気(バブリング)や、酸素を含有する気体との接触下での該酵素処理液の振盪(シェイキング)、シャワーリングによる該酵素処理液の循環、又は撹拌等の手段により行うことができ、好ましくは該酵素処理液中への酸素を含有する気体の通気処理である。
さらに、本発明におけるグルコース酸化酵素を用いた酵素処理は、グルコース酸化酵素産生能を有する微生物菌体を用いた酵素処理を行ってもよく、この場合、当該微生物は休止菌体であってもよい。
カツオを熱水抽出した後、固液分離工程及び濃縮工程を経て得られたカツオエキス(Brix72°)56gに、水344gを加えてBrix10°に調整した後、グルコアミラーゼ製剤(グルターゼAN:エイチビィアイ株式会社製)を650U/100gとなるように添加して、50℃で1時間酵素処理を行った。40℃まで冷却した後、グルコース酸化酵素製剤(スミチームPGO:新日本化学工業株式会社製)400U/100gとなるように添加して、通気量20mL/分で通気及び撹拌を行いながら40℃で1時間酵素処理を行った。グルコース酸化酵素による酵素処理後、90℃で10分間酵素失活処理を行うことで、本発明の酵素処理カツオエキス(実施例1)380g(Brix10°)を得た。
グルコース酸化酵素製剤をスミチームGOP(新日本化学工業株式会社製)とした以外は、実施例1と同様にして、本発明の酵素処理カツオエキス(実施例2)380g(Brix10°)を得た。
グルコアミラーゼ製剤を用いた酵素処理を行わない以外は、実施例1と同様にして、グリコーゲン分解活性能を有する酵素未処理のカツオエキス(比較例1)380g(Brix10°)を得た。
グルコース酸化酵素製剤を用いた酵素処理を行わない以外は、実施例1と同様にして、グルコース酸化酵素未処理のカツオエキス(比較例2)380g(Brix10°)を得た。
比較例2と同様にして得られたグルコース酸化酵素未処理カツオエキスに、グルコン酸濃度が固形物換算で2.8%となるように50%グルコン酸(扶桑化学工業株式会社製)を添加して、グルコース酸化酵素未処理のグルコン酸添加カツオエキス(比較例3)380g(Brix10°)を得た。
実施例1及び実施例2の本発明により得られた酵素処理カツオエキス、比較例1のグリコーゲン分解活性能を有する酵素未処理のカツオエキス、比較例2のグルコース酸化酵素未処理のカツオエキス、比較例3のグルコース酸化酵素未処理のグルコン酸添加カツオエキス、及び、原料のカツオエキスについて、pH及びグルコン酸含量を測定した。グルコン酸含量は、食品分析用テストコンビネーションであるF−キットグルコン酸(ロシュ・ダイアグノスティクス社製)を用いて測定した。
さらに、各エキスを水で希釈してBrix5°に調整した試料を用いて、10人のパネラーにより官能試験を実施した。評価は、生臭さ、エグ味、コク味、酸味について、原料のカツオエキスの評点を0点としたときの評価を−2〜+2点の内から採点することで評価し、その平均点を算出した。各試料のpH及びグルコン酸含量の測定値と共に、結果を表1に示す。
官能試験において、実施例1及び実施例2の本発明により得られた酵素処理カツオエキスは、原料のカツオエキスと比較して、酸味やコク味が増強され、生臭さやエグ味が格段に抑制された、風味良好なエキスであった。しかし、比較例1のグリコーゲン分解活性能を有する酵素未処理のカツオエキス及び比較例2のグルコース酸化酵素未処理のカツオエキスについては、生臭さやエグ味は原料のカツオエキスと同程度であり低減されておらず、酸味やコク味についても原料のカツオエキスと大きな差がなかった。さらに、比較例3のグルコース酸化酵素未処理のグルコン酸添加カツオエキスは、実施例1及び実施例2の本発明により得られた酵素処理カツオエキスと同程度のグルコン酸を含有しているにもかかわらず、生臭さ、エグ味において、原料のカツオエキスと同程度か、それよりも増強されており、風味良好なものとはならなかった。
実施例1の本発明により得られた酵素処理カツオエキス及び比較例2のグルコース酸化酵素未処理のカツオエキスについて、その色度を比較した。色度は、各エキスのBrixが1°のときの水溶液の吸光度(OD430〜570)を、分光光度計(UV−1200:株式会社島津製作所製)を用いて、光路長1cm、波長430nm、500nm及び570nmの条件で測定した。各波長の吸光度値をその合計値と共に表2に示す。
カツオを熱水抽出した後、固液分離工程及び濃縮工程を経て得られたカツオエキス(Brix60°)16gに、水184gを加えてBrix5°に調整した後、グルコアミラーゼ製剤(グルターゼAN:エイチビィアイ株式会社製)を260U/100gとなるように添加し、さらに、グルコース酸化酵素産生能を有する微生物であるGluconobacter frateurii NBRC3264株を、産生するグルコース酸化酵素が酵素単位で100U/100gとなるよう添加して、振盪(130rpm)を行いながら40℃で2時間酵素処理を行った。酵素処理後、90℃で10分間酵素失活処理を行うことで、本発明の酵素処理カツオエキス(実施例3)180g(Brix5°)を得た。グルコン酸含量は、固形物換算で2.5%であった。なお、グルコース酸化酵素活性の測定は、分光光度計を用いた活性測定法(Journal of Bacteriology 1986,166(1):269−274)により実施した。
実施例3の本発明により得られた酵素処理カツオエキス及び原料のカツオエキスを水でBrix5°に調整したものをそれぞれ用いて、下記表3の配合比で混合し、麺つゆ各300gを調製した。得られた各麺つゆについて、目視により外観色を比較した。さらに、得られた各麺つゆを用いて、10人のパネラーにより官能試験を実施した。評価は、生臭さ、エグ味、コク味、酸味について、原料のカツオエキスを水でBrix5°に調整したものを用いた麺つゆの評点を0点としたときの評価を−2〜+2点の内から採点することで評価し、その平均点を算出した。結果を表4に示す。
また、表4に示した通り、実施例3の本発明により得られた酵素処理カツオエキスを用いた麺つゆは、原料のカツオエキスを用いた麺つゆと比較して、生臭さ、エグ味共に抑制されており、コク味が増強されており、風味良好な麺つゆであった。
カツオを熱水抽出した後、固液分離工程及び濃縮工程を経て得られたカツオエキス(Brix60°)25gに、水75gを加えてBrix15°に調整した後、グルコアミラーゼ製剤(グルターゼAN:エイチビィアイ株式会社製)を390U/100gとなるように添加して、50℃で1時間酵素処理を行った。40℃まで冷却した後、グルコース酸化酵素製剤(スミチームGOP:新日本化学工業株式会社製)を75U/100gとなるように添加して、通気量20mL/分で通気及び撹拌を行いながら40℃で2時間酵素処理を行った。酵素処理後、90℃で10分間酵素失活処理した後、デキストリン(パインデックス(登録商標)#2:松谷化学工業株式会社製)15g、食塩10g、くん液(スモークEZ−A:レッドアロー社製)1gを添加して完全に溶解させ、フリーズドライにて乾燥させることで、本発明の酵素処理カツオエキス粉末(実施例4)35gを得た。グルコン酸含量は、固形物換算で1.1%であった。
さらに、得られた本発明の酵素処理カツオエキス粉末(実施例4)1gを、熱水100mlに溶解させて官能評価した結果、生臭さやエグ味を感じず、適度な酸味を有しており、コク味が強く、カツオだし特有の風味と同等の風味を有するものであった。
Claims (2)
- 水で抽出したカツオエキスを原料として、グルコアミラーゼを用いて酵素処理した後又は該酵素処理と同時に、好気条件下で微生物由来のグルコース酸化酵素を用いて酵素処理を行うことを特徴とするグルコン酸含有酵素処理カツオエキスの製造方法。
- グルコース酸化酵素が、Penicillium属、Aspergillus属、Gluconobacter属、Acetobacter属又はGluconacetobacter属に属する微生物から選ばれるいずれか1種以上に由来する酵素である請求項1に記載の製造方法。
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