JP2013251992A - 電磁サスペンション - Google Patents

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Abstract

【課題】固定子に対する可動子の絶対位置(リニアモータのストローク)の検出を非接触で行う。
【解決手段】可動子7の軸方向端部となるヨーク8の底部8Bに、磁界強度を検出する第1の磁気センサユニット12を設ける。この第1の磁気センサユニット12は、可動子7の永久磁石9から放出される磁束のうちヨーク8の底部8Bを回る磁束の強度を検出する。また、固定子2のロッド3には、電気角を検出する第2の磁気センサユニット13を設ける。そして、第1の磁気センサユニット12の出力から求められる大よそのストローク位置と第2の磁気センサユニット13の出力から求められる電気角とから、固定子2に対する可動子7の絶対位置となる機械角を求める。
【選択図】図1

Description

本発明は、例えば鉄道車両、自動車等の車両の振動を緩衝するのに好適に用いられる電磁サスペンションに関する。
一般に、鉄道車両、自動車等の車両には、車体側(ばね上)と各車軸側(ばね下)との間に緩衝器が設けられている。このような緩衝器として、互いに相対直線運動可能に支持された固定子と可動子とからなるリニアモータを用いた電磁サスペンションが知られている(例えば、特許文献1参照)。
この種の従来技術による電磁サスペンションでは、例えば3相リニア同期モータ等により構成されるリニアモータに通電する電流を、固定子と可動子との位置(ストローク位置)に応じて転流操作することで、電磁サスペンションの全可動域(全ストローク領域)で目標通りの推力(減衰力)を発生させるようにしている。
この場合、転流操作とは、3相リニア同期モータの磁石磁束に対して電気角で90度進んだ位相に通電することをいう。そして、電磁サスペンションの全可動域で、90度の電流位相を保つためには、磁石磁束の位置(磁極位置)を検出する必要がある。
従来技術による電磁サスペンションでは、ストローク位置を固定子に対する可動子の絶対位置(機械角)として検出することで、転流操作に合わせて、車体の異常動揺や電磁サスペンションの初期位置異常等の判定およびそれを抑制するための制御等を行っている。
例えば、特許文献2には、リニアモータによって駆動される移動部(走行テーブル)の位置検出を、ロータリエンコーダを用いて行う構成が開示されている。
アブソリュート式のロータリエンコーダを用いて絶対位置検出を行う場合、車体の異常動揺や電磁サスペンションの初期位置異常等の判定およびそれを抑制するための制御が可能である。
特開2010−127383号公報 特開平9−222318号公報 特表2011−503540号公報
特許文献2による従来技術では、移動部の移動に伴ってロータリエンコーダをワイヤによって回転させる構成となっているため、ロータリエンコーダとワイヤとの摺動面が摩耗する虞がある。このような技術を電磁サスペンションに用いると、摺動面の耐久性を十分に確保できない虞がある。また、ポテンショメータを用いて磁極位置の検出を行うことが考えられるが、この場合は、ポテンショメータの摺動面の耐久性を十分に確保できない虞がある。
一方、電磁サスペンションの磁極位置の検出を、例えばAMRセンサやホールセンサなどの磁気センサを用いて非接触で行うことが考えられる。例えば、可動子の移動に伴って磁気センサユニットがリニアモータの永久磁石に対して相対変位する構成とすることが考えられる。磁気センサユニットは例えば特許文献3に示されるような磁束の向きを検出するフルブリッジを2つ有するAMRセンサと、磁束の強度を検出するホールセンサを組み合せて構成される。この場合は、逆極性で隣合う永久磁石上を、磁気センサユニットが移動(相対変位)する毎に、磁気センサユニットの出力は、フルブリッジを2つ有するAMRセンサが出力する電気角180度を1周期とする正弦波及び余弦波状と、ホールセンサが出力する電気角360度を1周期とする正弦波状に出力される。この正弦波と余弦波の出力から、磁極位置として電気角(360度を1周期とする)を求めることができる。しかし、そのままでは(電気角だけでは)、電磁サスペンションの伸縮位置(ストローク)、即ち、固定子に対する可動子の絶対位置(機械角)を求めることができないため、車体の異常動揺や電磁サスペンションの初期位置異常等の判定およびそれを抑制するための制御が出来ない。
本発明は、上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、固定子に対する可動子の絶対位置(機械角、ストローク)の検出を非接触で行うことができる電磁サスペンションを提供することにある。
上述した課題を解決するため、本発明は、互いに相対直線運動可能に支持された第1部材と第2部材とのうちの一方の部材を固定子とし、前記第1部材と第2部材とのうちの他方の部材を可動子としてなるリニアモータを用いた電磁サスペンションに適用される。
そして、本発明が採用する構成の特徴は、前記第1部材は、電機子を含んで構成され、前記第2部材は、永久磁石を含んで構成され、前記第2部材の軸方向端部には、磁界強度を検出する磁気センサを設け、該磁気センサは、前記第2部材の永久磁石から放出される磁束のうち前記第2部材の軸方向端部を回る磁束の強度を検出する構成とし、前記第1部材には、電気角を検出する別の磁気センサを設ける構成としたことにある。
本発明によれば、従来の構成と同じ個数の磁気センサで、固定子に対する可動子の絶対位置(機械角、ストローク)の検出を非接触で行うことができる。
第1の実施の形態による電磁サスペンションを示す縦断面図である。 電磁サスペンションのストロークが伸び状態での磁束分布の一例を示す図1と同方向からみた縦断面図である。 電磁サスペンションのストロークが中間状態での磁束分布の一例を示す図1と同方向からみた縦断面図である。 電磁サスペンションのストロークが縮み状態での磁束分布の一例を示す図1と同方向からみた縦断面図である。 第1の磁気センサの出力および第2の磁気センサの出力と機械角(絶対位置)との関係の一例を示す特性線図である。 第1の磁気センサの出力と第2の磁気センサの出力とから機械角を算出する処理を示す流れ図である。 第2の実施の形態による電磁サスペンションを示す縦断面図である。 第1の磁気センサの出力および第2の磁気センサの出力と機械角(絶対位置)との関係の一例を示す特性線図である。 第3の実施の形態による電磁サスペンションを示す縦断面図である。 電磁サスペンションのストロークが中間状態での磁束分布の一例を示す図9と同方向からみた縦断面図である。
以下、本発明の実施の形態による電磁サスペンションを、添付図面に従って詳細に説明する。
図1ないし図6は本発明の第1の実施の形態を示している。図において、電磁サスペンション1は、リニアモータ(リニアアクチュエータ)を用いた電磁サスペンションであり、固定子2と、可動子7と、第1の磁気センサユニット12と、第2の磁気センサユニット13とにより大略構成されている。そして、固定子2(の電機子4)と可動子7(の永久磁石9)とにより、3相リニア同期モータを構成している。
ここで、固定子2と可動子7とは、互いに相対直線運動可能に支持された第1部材と第2部材であって、本実施の形態の場合は、第1部材と第2部材とのうちの第1部材を固定子2とし、第2部材を可動子7とした場合を例示している。しかし、これに限らず、第1部材を可動子とし、第2部材を固定子としてもよい。
本実施の形態で第1部材に相当する固定子2は、ロッド3と電機子4とにより大略構成されている。ここで、ロッド3は、例えば有底円筒状に形成され、ストローク方向となる軸方向(図1の左、右方向)に延びる筒部3Aと、該筒部3Aの一端側(図1の左端側)を閉塞する底部3Bとにより構成されている。底部3Bには、例えば鉄道車両のばね上部材(例えば車体)に対してピン付きゴムブッシュ3Cを介して取付けられる取付アイ3Dが設けられている。一方、筒部3Aの開口端側(図1の右端側)には、電機子4が固定されている。さらに、ロッド3には、電機子4の近傍に位置して後述する第2の磁気センサユニット13が支持部材3Eを介して取付けられている。
電機子4は、例えば圧粉磁心や積層された電磁鋼板、磁性体片より切削加工等によって形成された略筒状のコア5と、所定の方向に巻かれてコア5内に収納された複数のコイル6A、6B、6Cとによって構成されている。各コイル6A、6B、6Cは、後述の可動子7(の永久磁石9)の内周面と対向して配置されている。
この場合、コイル6A、6B、6Cは、略筒状のコア5の外周面側に位置して該コア5の周方向に配置されると共に、略筒状のコア5の軸方向の3箇所位置に軸方向に離間して配置されている。なお、コイル6A、6B、6Cの個数は、図示したものに限らず、設計仕様等に応じて適宜設定することができる。
ここで、軸方向に隣合う3個のコイル6A、6B、6Cは、例えば電気角で120度ずつの位相差をもつように配置される。配線方法は、駆動電源側の電圧や電流仕様に応じて適宜選択することができる。
本実施の形態で第2部材に相当する可動子7は、ストローク方向となる軸方向の変位を可能に固定子2に組み付けられている。ここで、可動子7は、ヨーク8と、複数の永久磁石9とにより大略構成されている。
ヨーク8は、例えば磁性体を用いて有底円筒状に形成され、ストローク方向となる軸方向に延びる筒部8Aと、筒部8Aの他端側(図1の右端側)を閉塞する底部8Bとにより構成されている。筒部8Aの開口側には、固定子2のロッド3側に向けて径方向内側に突出する鍔部8Cが全周にわたって設けられている。
一方、底部8Bには、筒部8Aの内側に位置して底部8Bから電機子4の内側に延びる案内筒部8Dが設けられている。また、底部8Bのうち案内筒部8Dの反対側には、例えば鉄道車両のばね下部材(例えば台車)に対してピン付きゴムブッシュ8Eを介して取付けられる取付アイ8Fが設けられている。
ヨーク8の筒部8Aの内周面側には、複数の円環状の永久磁石9が軸方向に沿って並んで配置されている。この場合、軸方向に隣合う各永久磁石9は、例えば互いに逆極性になっている。図2に示すように、例えば、右側から数えて奇数個目(1個目、3個目、5個目、7個目、9個目、11個目)の永久磁石9は、内周面側がN極、外周面側がS極となり、右側から数えて偶数個目(2個目、4個目、6個目、8個目、10個目)の永久磁石9は、内周面側がS極となり、外周面側がN極となっている。
なお、10はヨーク8の鍔部8Cの内周面とロッド3の筒部3Aの外周面との間に設けられた摺動部材(軸受、スリーブ)を示し、11は電機子4の一端側(右端側)の内周面とヨーク8の案内筒部8Dの外周面との間に設けられた摺動部材(軸受、スリーブ)を示している。
ところで、固定子2の各コイル6A、6B、6Cに電流を流すと、これら各コイル6A、6B、6Cに流れる電流と、可動子7の永久磁石9との間に電磁力が生じ、この電磁力によって電磁サスペンション1は推力(減衰力)を発生する。この電磁力を制御し、目標通りの推力を発生させるためには、コイル6A、6B、6Cが発生する電流磁束が永久磁石9の1/2個分、即ち、電気角で90度分だけ、永久磁石9の磁束に対してずれるように、U相コイル6A、V相コイル6B、W相コイル6Cに流れる電流値を制御する。
各相に流す電流値の制御方法としては、可動子7が電気角で360度移動する間にU相コイル6A、V相コイル6B、W相コイル6Cに流れる電流の向きを12通りで切換えることで、電流磁束と各永久磁石9の磁束の位相差を、90±15度に保つ、120度通電方式と呼ばれる制御方法や、U相コイル6A、V相コイル6B、W相コイル6Cそれぞれの電流の向きと大きさからなるベクトルを合成し、合成したベクトルが各永久磁石9の磁束と位相差を90度に保つように各層の電流を制御するベクトル制御方式と呼ばれる制御方法が一般に知られている。
このような120度通電方式やベクトル制御方式で電流値の制御(転流制御)を行う場合、電流磁束と各永久磁石9との位相差を90度に保つためには、永久磁石9の磁極位置を検出する必要がある。さらに、車体の異常動揺や電磁サスペンションの初期位置異常等の判定およびそれを抑制するための制御等を行うためには、電磁サスペンション1の伸縮位置(ストローク)、即ち、固定子2に対する可動子7の絶対位置(機械角)を求める必要がある。
ここで、磁気センサを用いて磁極位置の検出を非接触で行うことが考えられる。例えば、可動子7の移動に伴って磁気センサユニットが永久磁石9に対して相対変位する構成とすることが考えられる。具体的には、第2の磁気センサユニット13として、磁束の向きを検出するフルブリッジを2つ有するAMRセンサと、磁束の強度を検出するホールセンサとから構成することが考えられる。この場合は、逆極性で隣合う永久磁石9上を、磁気センサユニット13が移動(相対変位)する毎に、磁気センサユニット13からは、フルブリッジを2つ有するAMRセンサが出力する電気角180度を1周期とする正弦波及び余弦波と、ホールセンサが出力する360度を1周期とする波形が出力される。これらの出力から、磁極位置として電気角(360度を1周期とする)を求めることができる。
磁気センサユニット13による電気角検出の具体的方法は、例えば特許文献3などに示される。フルブリッジを2つ有するAMRセンサの位相差45度の出力信号2本の逆正接をとることで180度を1周期とする電気角信号を得、そして、ホールセンサで検出される磁束向きをもとに、前記の電気信号が0〜180度ないしは180〜360度のどちらであるかを判定することで、結果として360度周期で電気角を求めることができる。
しかし、そのままでは(電気角だけでは)、電磁サスペンションの伸縮位置(ストローク)、即ち、固定子に対する可動子の絶対位置(機械角)を求めることができない。
そこで、本実施の形態では、第2部材に相当する可動子7の軸方向端部、より具体的には、可動子7の一端部(右端部)となるヨーク8の底部8Bに、磁界強度を検出する磁気センサとしての第1の磁気センサユニット12を設けている。ここで、第1の磁気センサユニット12は、例えばホール効果やGMR効果を利用した(ホール素子やGMR素子を用いた)磁気検出センサとして構成することができる。そして、第1の磁気センサユニット12は、可動子7の永久磁石9から放出される磁束のうち可動子7の軸方向一端部(底部8B)を回る磁束の強度を検出する。
即ち、永久磁石9のN極から放出される磁束は、近くの永久磁石9のS極、または、自身の磁石のS極(裏側)に戻ってくるような磁束線を描く。この磁束線は、磁気抵抗の低い径路を選んで通過する。例えば、図2で右から7個目の永久磁石9(9A)から放出され該永久磁石9(9A)の左隣り(右から8個目の)永久磁石9(9B)に戻る磁束Aは、最短経路となる空気中を通ってS極に戻るよりも、強磁性体のコア5を通過してS極に戻る方が磁気抵抗が低くなるため、磁束の廻る径路が長くなっても磁気抵抗の低い径路となるコア5を通過してS極に戻る径路を優先的に通過する。
ここで、可動子7の軸方向一端部となるヨーク8の底部8Bの磁束について、図2ないし図4を用いて説明する。なお、図2は、電磁サスペンション1のストロークが伸び状態での磁束線の分布の概略を示し、図3は、電磁サスペンション1のストロークが中間状態での磁束線の分布の概略を示し、図4は、電磁サスペンション1のストロークが縮み状態での磁束線の分布の概略を示している。
図2の状態では、最も底部8Bに近い(右から1個目の)永久磁石9(9C)の端部は、永久磁石9(9C)の表(内周面側)から裏(外周面側)に直接回り込む磁束B以外に、永久磁石9(9C)の表からヨーク8の案内筒部8Dと底部8Bと筒部8Aとを経由して永久磁石9(9C)の裏に回り込む磁束Cと、永久磁石9(9C)の表から底部8Bと筒部8Aとを経由して永久磁石9(9C)の裏に回り込む磁束Dがある。
図3の状態では、最も底部8Bに近い永久磁石9(9C)の端部は、図2の状態と同様に、永久磁石9(9C)の表から裏に直接回り込む磁束B以外に、永久磁石9(9C)の表からヨーク8の案内筒部8Dと底部8Bと筒部8Aとを経由して永久磁石9(9C)の裏に回り込む磁束Cと、永久磁石9(9C)の表から底部8Bと筒部8Aとを経由して永久磁石9(9C)の裏に回り込む磁束Dがある。
さらに、図3の状態では、電機子4が底部8B側に近付いたことにより、右から5個目の永久磁石9(9D)の表(内周面側)から電機子4のコア5とヨーク8の案内筒部8Dと底部8Bと筒部8Aとを経由して永久磁石9(9D)の裏(外周面側)に回り込む磁束Eが生まれる。右から5個目の永久磁石9(9D)の表から出る磁束の大部分は、磁気抵抗の小さいコア5内でループするため、底部8Bを通過する磁束はわずかであるが、底部8Bには、磁束C、Dに加えて磁束Eが通過するため、底部8Bの磁界は、図2の状態と比較して強くなる。
図4の状態では、電機子4が底部8Bの近傍まで近付いたことにより、最も底部8Bに近い永久磁石9(9C)の磁気抵抗値が大きく下がることから、永久磁石9(9C)の表から電機子4のコア5とヨーク8の案内筒部8Dと底部8Bと筒部8Aとを経由して永久磁石9(9C)の裏に回り込む磁束Fが増加する。これにより、底部8Bの磁界は、図2の状態および図3の状態と比較して強くなる。
これにより、可動子7の軸方向一端部となるヨーク8の底部8Bに設けられた第1の磁気センサユニット12の出力は、電磁サスペンション1の伸縮位置(ストローク)、即ち、固定子2に対する可動子7の絶対位置(機械角)に応じて変化する。例えば、磁気センサユニット12の出力は、図5の特性線14で示すように変化する。ここで、該特性線14を用いて磁気センサユニット12の出力から絶対位置を求めることができる。
本実施の形態の場合は、可動子7の軸方向一端部に第1の磁気センサである第1の磁気センサユニット12を設けることに加え、第1の磁気センサとは別の磁気センサである第2の磁気センサユニット13を固定子2に設けている。そして、第1の磁気センサユニット12の出力と第2の磁気センサユニット13の出力との2つの出力を用いて絶対位置を精度良く求めることができるように構成している。
第2の磁気センサユニット13は、電気角を検出するためのもので、固定子2のロッド3に支持部材3Eを介して取付けられている。第2の磁気センサユニット13は、例えばフルブリッジを2つ有するAMRセンサである。電気角が検出できるのであれば、ホール効果やGMR効果を利用した磁気センサでもよい。
従来の方式では、第2の磁気センサユニット13には電気角を0〜360度で検出するためにAMRセンサとホールセンサなどの2つの磁気センサが必要であったが、本発明では、第1の磁気センサユニット12を設けることで、第2の磁気センサユニット13の電気角検出が0〜180度周期であったとしても、それが0〜180、180〜360、360〜540、540〜720の、どの0〜180度にいるかを、第1の磁気センサユニット12の出力を元に識別することができる。そのため、第2の磁気センサユニット13にはAMRセンサが1つあればよい。つまり、従来の方式と同じ磁気センサの数で、絶対位置検出が出来るようになる。
第2の磁気センサユニット13は、固定子2に設けられているため、可動子7の移動に伴って永久磁石9が変位すると、第2の磁気センサユニット13のAMRセンサの出力の逆正接は、図5の特性線15で示すように、電気角180度を1周期とする鋸波状に変化する。
ここで、図1および図5に示す電気角は、逆極性で隣合う永久磁石9の2個ごとに、0度〜360度を繰り返す角度の数え方であるのに対して、絶対位置に対応する機械角は、電磁サスペンション1の全ストローク領域中の位置を考慮して、0度〜360度〜720度〜1080度と増大していく角度の数え方である。なお、このような本明細書で用いる機械角は、回転モータの機械角とは若干異なるものである。即ち、回転モータでの機械角は、モータ1回転を360度と数える数え方であるが、本明細書で用いる機械角は、リニアモータの機械角であり、回転モータの機械角の定義とは若干異なる。
何れにしても、リニアモータの機械角が分かれば、電磁サスペンション1の絶対位置、例えば、ストロークが伸びた状態、中間の状態、縮んだ状態の何れかであるかを判断できるのに対し、電気角だけでは、電磁サスペンション1のストロークは判断できない。この場合、コイル6A、6B、6Cに流れる電流値の制御(転流制御)は、電気角を用いて行うことができるが、車体の異常動揺や電磁サスペンション1の初期位置異常等の判定を行う場合は、絶対位置が必要になる。
図5に示すように、第2の磁気センサユニット13の出力の逆正接は、180度を1周期とする鋸波形状となるのに対して、第1の磁気センサユニット12の出力は、機械角が増大する程振幅が大きくなる正弦波状の出力である。上述の図2ないし図4に示すように、可動子7の位置に応じて磁束の流れが変化する影響で、第1の磁気センサユニット12の出力は360周期でゆらぐ。このとき、第2の磁気センサユニット13の出力と、第1の磁気センサユニット12の出力の関係から、モータの絶対位置を一意に求めることが出来る。例えば図5において、第2の磁気センサユニット13の出力が0.25で第1の磁気センサユニット12の出力が約0.54の時は絶対位置で45度、第2の磁気センサユニット13の出力が0.25で第1の磁気センサユニット12の出力が約0.45のときは225度、同様に0.25と0.57のときは405度、0.25と0.39のときは585度である。
そこで、本実施の形態では、第2の磁気センサユニット13の出力から電気角を把握すると共に、第1の磁気センサユニット12の出力から大よそのストローク位置を把握することにより、精度良く絶対位置(機械角)を求めることができるように構成している。具体的には、第1の磁気センサユニット12および第2の磁気センサユニット13が接続されたコントローラ(図示せず)は、図6に示す処理を実行することにより、第1の磁気センサユニット12の出力と第2の磁気センサユニット13の出力とから絶対位置となる機械角を求める構成としている。なお、図6に示す処理は、可動子7の移動(リニアモータの移動)よりも十分速い周期で連続的に(繰り返し)実行されるものである。
車両の給電開始ないしエンジン始動等に伴う電力供給を受けて図6の処理動作がスタートすると、ステップ1では、第1の磁気センサユニット12の出力を読込む。続くステップ2では、第2の磁気センサユニット13の出力を読込む。ステップ1で第1の磁気センサユニット12の出力を読込むと共に、ステップ2で第2の磁気センサユニット13の出力を読込んだならば、ステップ3で、第2の磁気センサユニット13の値から逆正接により電気角を演算する。
ステップ4では第1の磁気センサユニット12の出力値とステップ3で求めた第2の磁気センサユニット13の出力値を、あらかじめ設けたマップに入力することで、出力としてストロークの領域番号(縮み、中間、伸び等を表す数字)を得る。なお、マップの一例を下記の表1に示す。
Figure 2013251992
ステップ5では、下記の数1式を用いて現在の機械角を求める(算出する)。なお、この式中、電気角は、ステップ3で演算した電気角情報を用い、領域は、ステップ4で求めた領域番号を用いる。
Figure 2013251992
このように、ステップ5では、第1の磁気センサユニット12で検出される大よそのストローク位置と、第2の磁気センサユニット13で検出される精度の高い電気角とを用いて機械角を求める。このため、電磁サスペンション1の伸縮位置(ストローク)、即ち、固定子2に対する可動子7の絶対位置(機械角)を精度良く求めることができる。なお、ステップ5で、機械角を求めたならば、リターンを介してスタートに戻り、ステップ1以降の処理を繰り返す。
本実施の形態による電磁サスペンション1は、上述のような構成を有するもので、次にその作動について説明する。
例えば、電磁サスペンション1を、例えば鉄道車両のばね下部材(台車)とばね上部材(車体)との間に左、右方向に横置き状態で介在させた場合は、車体が左、右方向に振動すると、電磁サスペンション1にはストローク方向(軸方向)に力が作用する。この力に応じて、可動子7と固定子2とが相対移動する。このとき、コイル6A、6B、6Cには、第1の磁気センサユニット12の出力と第2の磁気センサユニット13の出力とから求められる電気角と機械角とに応じて所定の電流を流すことにより、電磁サスペンション1の減衰力を調整することができ、車両の乗り心地や走行安定性を向上させることができる。
この場合、車体が台車に対して左、右方向に変位すると(電磁サスペンション1の縮み方向または伸び方向に変位すると)、第1の磁気センサユニット12の出力と第2の磁気センサユニット13の出力とから求められる機械角も、その変位に応じて変化する。そして、この機械角から、例えば、車体の左、右方向の変位が限界位置(縮み方向または伸び方向の限界位置)に近付いていると判定されたときに、電磁サスペンション1の減衰力を大きくする制御を行うことにより、車体が変位限界に達する(例えば台車のストッパに当接する)ときの衝撃を緩和することができる。これにより、乗り心地や走行安定性を向上することができる。
本実施の形態によれば、電磁サスペンション1のストローク位置、即ち、固定子2に対する可動子7の絶対位置(機械角)の検出を非接触で行うことができる。
即ち、第2部材に相当する可動子7の軸方向一端部、即ち、ヨーク8の底部8Bを回る磁束の強度は、固定子2に対する可動子7の絶対位置に対応する機械角に応じて変化する。このため、ヨーク8の底部8Bに設けた第1の磁気センサユニット12の出力と機械角との相関関係に基づいて、第1の磁気センサユニット12の出力から機械角を求めることができる。この場合、第1の磁気センサユニット12は、可動子7に対して相対直線運動する固定子2に対して非接触で検出を行うため、摺接に伴う耐久性の低下を招くことはない。このため、機械角の検出を長期間にわたり安定して行うことができる。しかも、リニアモータの基本構造の変更等の大きな設計変更を必要とすることなく機械角の検出を行うことができるため、機械角の検出に要するコストの増大を抑制することができる。
さらに、本実施の形態によれば、第1の磁気センサユニット12に加え、電気角を検出する第2の磁気センサユニット13を設ける構成としているので、第1の磁気センサユニット12の出力と第2の磁気センサユニット13の出力とから機械角を高精度で求めることができる。即ち、第1の磁気センサユニット12の出力から大よそのストロークを求め、該大よそのストロークに第2の磁気センサユニット13から検出される電気角を加算することで、機械角を精度良く求めることができる。
そして、求めた機械角は、車体の異常動揺や電磁サスペンション1の初期位置異常等の判定およびそれを抑制するための制御等に用いることができる。これにより、電磁サスペンションが取付けられた鉄道車両、自動車等の車両の安定性、信頼性の向上を図ることができる。
次に、図7および図8は本発明の第2の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、第1の磁気センサを第2部材の軸方向他端部となる可動子の他端部(左端部)に設ける構成としたことにある。なお、本実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
第1の磁気センサユニット21は、上述した第1の実施の形態の磁気センサである第1の磁気センサユニット12と同様に、第2部材に相当する可動子7の軸方向端部の磁界強度を検出するものである。この場合、第1の実施の形態では、第1の磁気センサユニット12を、可動子7の一端部(右端部)となるヨーク8の底部8Bに設ける構成としているのに対して、本実施の形態では、第1の磁気センサユニット21を、可動子7の他端部(左端部)となるヨーク8の鍔部8Cに設ける構成としている。そして、第1の磁気センサユニット21は、可動子7の永久磁石9から放出される磁束のうち可動子7の軸方向他端部(鍔部8C)を回る磁束の強度を検出する。
ここで、ヨーク8の鍔部8Cの磁束について、上述の図2ないし図4を用いて説明する。まず、図4の状態では、最も鍔部8Cに近い(左から1個目の)永久磁石9(9E)の端部は、永久磁石9(9E)の表(内周面側)から裏(外周面側)に直接回り込む磁束G以外に、永久磁石9(9E)の表からロッド3の筒部3Aを経由して永久磁石9(9E)の裏に回り込む磁束Hと、永久磁石9(9E)の表からロッド3の筒部3Aとヨーク8の鍔部8Cと筒部8Aとを経由して永久磁石9(9E)の裏に回り込む磁束Jがある。
図3の状態では、最も鍔部8Cに近い永久磁石9(9E)の端部は、図4の状態と同様に、永久磁石9(9E)の表(内周面側)から裏(外周面側)に直接回り込む磁束G以外に、永久磁石9(9E)の表からロッド3の筒部3Aを経由して永久磁石9(9E)の裏に回り込む磁束Hと、永久磁石9(9E)の表からロッド3の筒部3Aとヨーク8の鍔部8Cと筒部8Aとを経由して永久磁石9(9E)の裏に回り込む磁束Jがある。さらに、図3の状態では、電機子4が鍔部8C側に近付いたことにより、左から3個目の永久磁石9(9F)の表(内周面側)から電機子4のコア5とロッド3の筒部3Aとヨーク8の鍔部8Cと筒部8Aとを経由して永久磁石9(9F)の裏(外周面側)に回り込む磁束Kが生まれる。これにより、鍔部8Cには、磁束Jに加えて磁束Kが通過するため、鍔部8Cの磁界は、図4の状態と比較して強くなる。
図2の状態では、電機子4が鍔部8Cの近傍まで近付いたことにより、最も鍔部8Cに近い永久磁石9(9E)の磁気抵抗値が大きく下がることから、永久磁石9(9E)の表から電機子4のコア5とロッド3の筒部3Aとヨーク8の鍔部8Cと筒部8Aとを経由して永久磁石9(9E)の裏に回り込む磁束Lが増加する。これにより、鍔部8Cの磁界は、図4の状態および図3の状態と比較して強くなる。
これにより、可動子7の軸方向他端部となるヨーク8の鍔部8Cに設けられた第1の磁気センサユニット21の出力は、電磁サスペンション1の伸縮位置(ストローク)、即ち、固定子2に対する可動子7の絶対位置(機械角)に応じて変化する。例えば、磁気センサユニット21の出力は、図8の特性線22で示すように変化するため、該特性線22を用いて磁気センサユニット21の出力から絶対位置を求めることができる。
かくして、このように構成される第2の実施の形態においても、上述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。即ち、第1の磁気センサユニット21の出力と第2の磁気センサユニット13の出力とから機械角を高精度で求めることができる。
次に、図9および図10は、本発明の第3の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、第1の磁気センサにより該第1の磁気センサの近傍を漏れる磁束の強度を検出する構成としたことにある。なお、本実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
第2部材に相当する可動子7の軸方向端部、より具体的には、可動子7の一端部(右端部)となるヨーク8の底部8Bには、磁気的なギャップとなる非磁性体製のギャップ部材31が設けられている。そして、第1の磁気センサユニット12、即ち、可動子7の永久磁石9から放出される磁束のうち可動子7の軸方向一端部(底部8B)を回る磁束の強度を検出する第1の磁気センサユニット12は、ギャップ部材31に取付けられている(貼り付けられている)。
この場合、図10に示すように、ヨーク8の底部8Bでは、ギャップ部材31を設けたことに伴って、ループする磁束が底部8Bの外部に漏れる(ないしは、外部に漏れる磁束の量がギャップ部材31を設けない場合よりも大きくなる)。本実施の形態では、第1の磁気センサユニット12は、ヨーク8の底部8Bで外部に漏れる磁束の強度を検出する構成となっている。なお、第1の磁気センサユニット12は、ギャップ部材31に直接取付ける構成に限らず、ヨーク8の底部8Bのうちギャップ部材31から外れた部位に取付ける(貼り付ける)構成としてもよい。
また、漏れ磁束が十分大きいのであれば、軸方向一端部(底部8B)にギャップ部材31を設けなくとも同様の効果を得られる。
かくして、このように構成される第3の実施の形態においても、上述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。即ち、第1の磁気センサユニット12の出力と第2の磁気センサユニット13の出力とから機械角を高精度で求めることができる。
なお、上述した各実施の形態では、別の磁気センサである第2の磁気センサユニット13を第1部材に相当する固定子2に1個設ける構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、2個の別の磁気センサを90度の位相をずらして第1部材に設ける構成としてもよい。
上述した各実施の形態では、互いに相対直線運動可能に支持された第1部材と第2部材とのうちの第1部材を固定子2とし、第2部材を可動子7とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、第1部材と第2部材とのうちの第1部材を可動子とし、第2部材を固定子としてもよい。
上述した各実施の形態では、固定子2を車両のばね上部材(例えば車体側)に取付けると共に、可動子7を車両のばね下部材(例えば台車側、車軸側)に取付ける構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、固定子を車両のばね下部材に取付けると共に、可動子を車両のばね上部材に取付ける構成としてもよい。
上述した各実施の形態では、電磁サスペンション1を横置き状態で鉄道車両等の車両に取付ける構成とした場合を例に挙げて説明したが、これに限らず、例えば、電磁サスペンションを縦置き状態で自動車等の車両に取付ける構成としてもよい。
上述した各実施の形態では、電磁サスペンション1を車両に取付ける構成とした場合を例に挙げて説明したが、これに限らず、例えば、振動源となる種々の機械、建築物等に用いる電磁サスペンションに用いてもよい。
さらに、上述した各実施の形態では、横断面形状が円形のリニアモータ、即ち、固定子2および可動子7を円筒状に形成した場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、横断面形状がI字状(平板状)や矩形状、H字状のリニアモータ等、横断面形状が円形以外のリニアモータにより構成してもよい。
以上の実施の形態によれば、固定子に対する可動子の絶対位置(機械角、リニアモータのストローク)の検出を非接触で行うことができる。
即ち、第2部材の軸方向端部を回る磁束の強度は、固定子に対する可動子の絶対位置に応じて変化する。このため、第2部材の軸方向端部に設けた磁気センサの出力と絶対位置との相関関係を予め求めておくことにより、磁気センサの出力から絶対位置を求めることができる。この場合、磁気センサは、相対直線運動する部材に対して非接触で検出を行うため、摺接に伴う耐久性の低下を招くことはない。このため、固定子に対する可動子の絶対位置の検出を長期間にわたり安定して行うことができる。しかも、リニアモータの基本構造の変更等の大きな設計変更を必要とすることなく絶対位置の検出を行うことができるため、絶対位置の検出に要するコストの増大を抑制することができる。
そして、検出された絶対位置は、車体の異常動揺や電磁サスペンションの初期位置異常等の判定およびそれを抑制するための制御等に用いることができる。これにより、電磁サスペンションが取付けられた鉄道車両、自動車等の車両の安定性、信頼性の向上を図ることができる。
実施の形態によれば、電気角を検出する別の磁気センサを設ける構成としているので、第2部材の軸方向端部に設けた磁気センサの出力と電気角を検出する別の磁気センサの出力とから固定子に対する可動子の絶対位置を高精度で求めることができる。即ち、第2部材の軸方向端部に設けた磁気センサの出力から大よその絶対位置を求め、該大よその絶対位置と別の磁気センサから検出される電気角とを対応させることで、絶対位置を精度良く求めることができる。これにより、鉄道車両、自動車等の車両の安定性、信頼性の更なる向上を図ることができる。
1 電磁サスペンション
2 固定子
3 ロッド
4 電機子
7 可動子
8 ヨーク
8B 底部(軸方向端部)
8C 鍔部(軸方向端部)
9 永久磁石
12、21 第1の磁気センサユニット(磁気センサ)
13 第2の磁気センサユニット(別の磁気センサ)

Claims (1)

  1. 互いに相対直線運動可能に支持された第1部材と第2部材とのうちの一方の部材を固定子とし、前記第1部材と第2部材とのうちの他方の部材を可動子としてなるリニアモータを用いた電磁サスペンションにおいて、
    前記第1部材は、電機子を含んで構成され、
    前記第2部材は、永久磁石を含んで構成され、
    前記第2部材の軸方向端部には、磁界強度を検出する磁気センサを設け、
    該磁気センサは、前記第2部材の永久磁石から放出される磁束のうち前記第2部材の軸方向端部を回る磁束の強度を検出する構成とし、
    前記第1部材には、電気角を検出する別の磁気センサを設ける構成としたことを特徴とする電磁サスペンション。
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