JP2013251515A - プリント基板 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】純アルミニウム又はアルミニウム合金からなるベース板2の少なくとも一部の表面に、有孔率5%を超え30%以下の微孔質陽極酸化皮膜3が0.03〜2.0μmの厚さに形成され、この微孔質陽極酸化皮膜3の上に、無機系フィラーを50〜95質量%含有する熱伝導性接着層4を介して銅又は銅合金からなる回路層5が形成されている。
【選択図】 図1
Description
しかしながら、アルミニウムと銅箔を接着している接着剤は、熱伝導性が低い。このため、熱伝導性を高めるために、接着層に無機系のフィラーが添加されるようになったが、このフィラーの添加により、接着剤の接着力が低下し、アルミニウム材料との界面で剥離する不具合が増えてきた。
更に、自動車で使用されるプリント基板では、車内やエンジンルームの高温や高湿の環境により、アルミニウムと接着剤が剥離するトラブルが増えた。
これらのトラブルを防止するために、アルミニウムにはクロメート処理、あるいは硫酸やリン酸により陽極酸化処理等の表面処理が施された表面処理材が使用されるようになった。
特許文献1には、アルミニウム板にリン酸により陽極酸化処理することが開示されており、その酸化皮膜に対して、150〜300℃の温度で0.5時間以上加熱して乾燥させている。
微孔質陽極酸化皮膜とは、皮膜が均一に形成された部位の断面観察において、皮膜表面からアルミニウム素地に向けて、規則的に形成される孔(通常開口部は1〜10nmで皮膜厚さに対して60%以上の深さを有する)が5%を超え30%以下(表面から見た孔の総面積の比率)の皮膜である。
一般的な陽極酸化皮膜(多孔質皮膜)では数%〜十数%の水分や電解質を含んで形成されるため、接着剤の乾燥工程やリフロー炉での加熱時に、これらの水分等が放出されて密着性低下の原因になる。また、リン酸による陽極酸化皮膜は立体網目構造を呈しており、形状効果で密着性が良好であるが、皮膜中に水分が含まれるため、特許文献1のように後処理として加熱乾燥工程が必要となる。
有孔率5%を超え30%以下の微孔質陽極酸化皮膜は、一般的な多孔質陽極酸化皮膜あるいはリン酸陽極酸化皮膜と比べ、含有水分が少ないため密着性の低下がなく、加熱乾燥工程も不要である。また、湿潤環境においても十分な耐久性を有している。
有孔率5%以下の無孔質皮膜に比べ、微孔質皮膜は表面が粗面化しているため、接着表面積が増加し、形状効果により密着性及び放熱性の両特性において優れている。特に無機系フィラーを高濃度で含有する熱伝導性接着層との密着性において有効である。
熱伝導性接着層は、無機系フィラーを含有していることにより、熱伝導性が高いものとなっている。この無機系フィラーの含有量が50質量%未満では熱伝導性が不十分であり、95質量%を超えると、密着性が損なわれるおそれがある。前述したように、微孔質陽極酸化皮膜は、無機系フィラーを高濃度(例えば70〜95質量%含有)に有する接着層との接着に有効である。
酸化アルミニウム(アルミナ)は、熱伝導性が高いので、回路層からベース板への放熱を促進するとともに、密着性も良好である。また、電気絶縁性にも優れており、回路層とベース板との間の電気絶縁性も良好となる。
シランカップリング剤にはアミノ系、エポキシ系、アクリル系等を用いることができ、本発明としては特定のものに限定されるものではない。
シランカップリング剤の塗布量は、その機能を良好にするため適量が望ましい。少ないと密着性向上の効果は認められない。0.1mg/m2以上が好ましく、1mg/m2がより好ましい。一方、シランカップリング剤をあまりに多く塗布すると、シランカップリング剤自体の凝集力が低下する場合があり、塗膜が剥離しやすくなる。このため、30mg/m2以下が好ましく、8mg/m2以下がより好ましい。
本実施形態のプリント基板1は、図1に示すように、純アルミニウム又はアルミニウム合金からなるベース板2の少なくとも一部の表面に、有孔率が5%を超え30%以下の微孔質陽極酸化皮膜3が0.03〜2.0μmの厚さに形成され、この微孔質陽極酸化皮膜3の上に、シランカップリング剤を介して熱伝導性接着層4が形成され、この熱伝導性接着層4の上に銅又は銅合金からなる回路層5が形成されている。
ベース板2を構成するアルミニウムとして、純度99.0%以上の純アルミニウム、1000系、3000系(Al−Mn系)、5000系(Al−Mg系)のアルミニウム合金が用いられる。このアルミニウム材は表面に微孔質陽極酸化皮膜3が形成される。
陽極酸化処理は、酸化皮膜の溶解力が低い電解液を用いて行い、電圧を調整することにより好適な厚さの微孔質陽極酸化皮膜3が形成される。
この微孔質陽極酸化処理に先立って前処理が行われる。前処理は特に限定されるものではない。例えば、アルカリ性の脱脂液で洗浄し、水酸化ナトリウム水溶液でアルカリエッチング、硝酸水溶液でデスマット処理を行う。
微孔質陽極酸化皮膜3を製造するには、皮膜が多孔質化する前の段階で電解を停止することで多孔質皮膜が成長する前の段階の無孔質に近い状態の皮膜を得ることにより行う方法が好ましい。
ここで用いる電解液として、硫酸、リン酸、クロム酸、シュウ酸の1種又は2種以上の溶液を用いることができる。
これらの電解液を用いてアルミニウムまたはアルミニウム合金からなるベース板2を陽極酸化すると、電解の初期段階において、無孔質のバリア層と称されている陽極酸化皮膜が成長し、この無孔質の陽極酸化皮膜の成長が所定の段階まで進むと、多孔質層が急激に成長して多孔質の陽極酸化皮膜が生成される。ただし、本明細書において多孔質陽極酸化皮膜と称するのは、無孔質の薄いバリア層の上に多孔質層が成長したものを意味する。
図2の横軸は陽極酸化皮膜の厚さ、縦軸は有孔率を示すが、通常、多孔質陽極酸化皮膜を製造すると、0.1〜0.2μm程度の膜厚の無孔質膜が生成した後、膜厚がほとんど増加しないまま急激な有孔率の上昇が起こり、有孔率が30%を越えるあたりから膜厚増加と有孔率増加の関係が比例関係に移るようになるような成長曲線を示す。図2に示す成長曲線は陽極酸化皮膜のモデル的な一例であるが、電解液の濃度や種類、印加電圧、印加電流密度を多少異なる条件としたとしても、ある膜厚の無孔質層が生成した後、有孔率が急激に上昇し、その後、有孔率30%を越えるあたりから膜厚増加と有孔率増加の関係が比例関係に移るようになって多孔質陽極酸化皮膜が生成する傾向は同様となる。
ここで用いる電解液として、硫酸、リン酸、クロム酸、シュウ酸の1種又は2種以上を選択する場合、一般に陽極酸化皮膜のバリア層の膜厚は電解電圧(V)×(0.0010〜0.0016)(μm)の値で決まり、陽極酸化皮膜の膜厚が0.15μmを越えると、多孔質化を開始することがわかっている。
さらに、硫酸を電解液とする場合においては、電解電圧を高く設定すると表面皮膜欠陥を多量に形成し、いわゆる「焼け」と呼ばれる不良を発生させる虞があるため、電解電圧を25V以下に設定することが望ましい。この電解電圧における処理において、陽極酸化皮膜の膜厚が0.15μm以下になるようにコントロールして電解を停止することで微孔質皮膜が得られる。
このような電解液中においてアルミニウム素材は、連続あるいは断続的であっても陽極となるように電源に接続されて陽極電解される。陰極には、不溶性の導電材料例えばカーボン電極などが用いられる。電解電流は、直流電流などが用いられ、直流電解では直流密度0.5〜2.5A/dm2程度、電解時間数秒〜10分程度で電解が行われる。
さらに、硫酸を電解液とする場合においては、前述の理由により、電解電圧を25V以下に設定して電解が行われる。
図3に示す多孔質陽極酸化皮膜10は無孔質のバリア層10aとその上に成長形成された多孔質層10bとからなり、図4に示す無孔質に近い微孔質の陽極酸化皮膜11は孔が成長しないまま表面に多少の凹凸部が存在している断面構造を示す。なお、微孔質の陽極酸化皮膜11においても5〜30%の孔は存在するので、この割合の孔を有することとなるが、図4では明確な形の孔は記載を略している。
なお、前述したように、微孔質陽極酸化皮膜を得るためには、膜厚が0.15μmまでが好適であるが、膜厚が0.15〜2.0μmの場合、電解処理によって多孔質化が進むので、2段階の電解処理を行って、有孔率5〜30%となるように制御するとよい。
2段階電解処理で実施する陽極酸化の電解液は、リン酸アンモニウム、リン酸水素アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸アンモニウムといったリン酸塩、もしくは珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸リチウムといった珪酸塩の水溶液であれば、酸化皮膜の溶解力が低く、有孔率低下が可能である。
微孔質陽極酸化皮膜3の表面に、アミノ系、エポキシ系、アクリル系等のシランカップリング剤を塗布することで、樹脂との密着性を向上させる。シランカップリング剤の塗布量は、好ましくは0.1mg/m2以上、より好ましくは1mg/m2以上とし、好ましくは30mg/m2以下、より好ましくは8mg/m2以下、とする。
シランカップリング剤を塗布した微孔質陽極酸化皮膜3の表面に熱伝導性接着層4が設けられる。この熱伝導性接着層4は、エポキシ樹脂等の接着剤に無機系フィラーを50〜95質量%含有させたものである。無機系フィラーとしては、Al2O3、MgO、BN、SiO2、Si3N4、AlN、カーボン等の熱伝導性を有する粉末を用いることができ、その中から一種又は二種以上を組み合わせて添加される。なかでも、Al2O3(酸化アルミニウム)を添加したものは接着性が良く、好ましい。電気絶縁性にも優れている。添加量は、50〜95質量%が好ましく、50質量%未満では熱伝導性が不十分であり、95質量%を超えると、密着性が損なわれるおそれがある。より好ましくは60〜85質量%である。
この熱伝導性接着層4の厚さは、特に限定されるものではないが、30〜50μmとされる。
熱伝導性接着層4の上には所定のパターンで回路層5が形成されている。この回路層5は、銅又は銅合金からなる箔を熱伝導性接着層4によりベース板2に貼り付けた後、所定のパターンにマスキングしてエッチング処理されるなどの方法で形成される。この回路層5の膜厚も特に限定されるものではなく、適宜の厚さに設定されるが、10〜100μmが適切である。
一般的な陽極酸化皮膜は、多孔質皮膜であるため、水分や電解質が数%から数十%と多く含まれており、接着層の乾燥工程やその後のリフロー炉での加熱時に、これら水分等が放出することにより、密着性を低下させる。また、クロメート処理では、その加熱により皮膜が変質して密着力が低下する。
これに対して、微孔質陽極酸化皮膜3は、水分を含まず、かつ、バリアー性が高いため、密着性の低下がなく、湿潤環境においても十分な耐久性を有している。
無機系フィラーは、前述した各種材料のうち、シリカ、カーボン、酸化アルミニウム(アルミナ)等が好適であるが、アルミナを用いた場合に接着性は特に優れている。
ベース板として、1.0mmまで圧延したAl−Mg系のJIS5052板を用いた。この素材を2%の界面活性剤を含む50℃の脱脂液に60秒間浸漬させた後、30秒間水洗した。次いで、10%NaOH水溶液で50℃で30秒間エッチングした後、30秒間水洗した。さらに引き続き、10%HNO3溶液で30秒間洗浄した後、30秒間水洗した。
このようにして得られたプリント基板(銅張り積層板)に対して、接着性、耐湿性、放熱性を評価した。
これらの評価結果を表1に示す。総合評価は、接着性、耐湿性、放熱性のすべての評価が◎であったものを◎、接着性が◎で他の評価が○又は◎であったものを○、接着性が○で他の評価が○又は◎であったものを△、いずれかの評価が×であったものを×とした。
上記実施形態では、ベース板の全面に微孔質陽極酸化皮膜を形成して、銅箔を接着する例としたが、回路層が部分的に設けられる場合には、少なくとも回路層が設けられる部分に微孔質陽極酸化皮膜が形成されていればよい。
2 ベース板
3 微孔質陽極酸化皮膜
4 熱伝導性接着層
5 回路層
Claims (3)
- 純アルミニウム又はアルミニウム合金からなるベース板の少なくとも一部の表面に、有孔率5%を超え30%以下の微孔質陽極酸化皮膜が0.03〜2.0μmの厚さに形成され、この微孔質陽極酸化皮膜の上に、無機系フィラーを50〜95質量%含有する熱伝導性接着層を介して銅又は銅合金からなる回路層が形成されていることを特徴とするプリント基板。
- 前記無機系フィラーは酸化アルミニウムであることを特徴とする請求項1記載のプリント基板。
- 前記微孔質陽極酸化皮膜の上に0.1〜30mg/m2の塗布量でシランカップリング剤が塗布されていることを特徴とする請求項1又は2記載のプリント基板。
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