JP2013248555A - セシウム吸着材及びその製造方法 - Google Patents

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文夫 磯
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Abstract

【課題】簡略な方法で製造可能であり、セシウム吸着能が高く、廃棄物処理の問題を軽減することができるセシウム吸着材及びその製造方法を提供する。
【解決手段】アロフェンを含む原料と、水酸化カリウム及び水酸化リチウムから選ばれる1種以上のアルカリ源とを用いた水熱反応により製造されるゼオライトを主成分とするセシウム吸着材、及びその製造方法である。
【選択図】なし

Description

本発明は、セシウム吸着材及びその製造方法に関し、さらに詳しくは、簡略な方法で製造可能であり、セシウム吸着能が高く、廃棄物処理の問題を軽減することができるセシウム吸着材及びその製造方法に関する。
2011年3月11日に発生した東日本大震災では、地震とそれに伴う津波により、東京電力福島第一原子力発電所で大規模な放射性物質漏えい事故が起こり、環境中に多くの放射性物質が放出された。事故後、特に発電所に溜まる汚染水から半減期の長い放射性セシウムを除去することが急務となっている。汚染水中の放射性セシウムを除去する方法としては、ゼオライトに吸着させて除去する方法、プルシアンブルーにより共沈除去する方法等が採られている。ここで使われているセシウム処理材料は、天然ゼオライトなどの無機多孔体、及びプルシアンブルー(フェロシアン化鉄)である。これらの材料には、次のとおり問題点を有する。
まず、一般に天然ゼオライトの陽イオン交換容量は80〜180meq/100gと言われ、ゼオライト100gでは最大で11〜24gのセシウムしか吸着することができない。天然ゼオライトは価格が安く、量も豊富であるが、陽イオン交換容量が低いため、セシウム吸着量が低く、廃棄物減容の点で問題がある。放射性物質を吸着したゼオライトは放射性廃棄物であり、セシウム吸着材には除染後の廃棄物を減らすために、より少量で多くのセシウムを吸着できる高い吸着能が求められる。
また、プルシアンブルーは強アルカリ環境下では、分解してシアン化合物が遊離する。シアン化合物は毒性が非常に強いため、セシウム吸着後の廃棄物の保管及び処分に問題がある。
特許文献1には、りんモリブデン酸アンモニウムを担持した無機イオン交換体からなるセシウム吸着材が開示されている。前記セシウム吸着材の作製方法としては、天然あるいは合成の多孔性無機物(ゼオライト等)に対し、減圧下でりんモリブデン酸水和物溶液と接触させ、次に、アンモニウム塩溶液を含浸させることにより、りんモリブデン酸水和物をりんモリブデン酸アンモニウムに変換する方法が開示されている。
特許文献2には、セシウム吸着材として、プルシアンブルー型金属錯体の微粒子が開示され、フェロシアン化ナトリウム水溶液に硝酸鉄水溶液を混合、攪拌して、析出した青色の沈殿物(プルシアンブルー)を遠心分離、乾燥する工程によりプルシアンブルー型金属錯体ナノ粒子が製造されている。
特許第3020158号公報 特開2011−200856号公報
特許文献1で開示されたセシウム吸着材は、多孔体中にりんモリブデン酸アンモニウムを晶出させるのに、2段階の工程を経なければならならず、製造に手間とコストがかかり実用的ではない。
特許文献2で開示されたセシウム吸着材は、前記で述べたようにプルシアンブルーに由来する廃棄物の保管及び処分の点で課題がある。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、簡略な方法で製造可能であり、セシウム吸着能が高く、廃棄物処理の問題を軽減することができるセシウム吸着材及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、アロフェンを含む原料及びアルカリ源を水熱反応させて合成されたゼオライトを主成分とする材により、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち本発明は以下の[1]〜[7]を提供するものである。
[1]アロフェンを含む原料と、水酸化カリウム及び水酸化リチウムから選ばれる1種以上のアルカリ源とを用いた水熱反応により製造されるゼオライトを主成分とするセシウム吸着材。
[2]アルカリ源が水酸化カリウムであって、前記ゼオライトが、結晶構造がCHA型を有するカリウム含有ゼオライトである、前記[1]に記載のセシウム吸着材。
[3]前記ゼオライトのカリウム含有量が、K2O換算で10質量%以上である、前記[1]又は[2]に記載のセシウム吸着材。
[4]アルカリ源が水酸化リチウムであって、前記ゼオライトが、結晶構造がEDI型、又はEDI型とABW型の混晶構造を有するリチウム含有ゼオライトである、前記[1]に記載のセシウム吸着材。
[5]前記ゼオライトのリチウム含有量が、Li2O換算で5質量%以上である、前記[1]又は[4]に記載のセシウム吸着材。
[6]前記[2]又は[3]に記載されたセシウム吸着材を製造する方法であって、アロフェンを含む原料及び水酸化カリウムを水熱反応させて、前記セシウム吸着材の主成分であるゼオライトを製造する工程を有しており、水酸化カリウムの添加量が、アロフェンを含む原料中のアルミニウム(Al)に対するモル比(KOH/Al)で1以上であり、水熱反応における反応温度が60〜120℃、かつ反応時間が3〜72時間である、セシウム吸着材の製造方法。
[7]前記[4]又は[5]に記載されたセシウム吸着材を製造する方法であって、アロフェンを含む原料及び水酸化リチウムを水熱反応させて、前記セシウム吸着材の主成分であるゼオライトを製造する工程を有しており、水酸化リチウムの添加量が、アロフェンを含む原料中のアルミニウム(Al)に対するモル比(LiOH/Al)で1以上であり、水熱反応における反応温度が20〜90℃、かつ反応時間が4〜72時間である、セシウム吸着材の製造方法。
本発明によれば、簡略な方法で製造可能であり、セシウム吸着能が高く、廃棄物処理の問題を軽減することができるセシウム吸着材及びその製造方法を提供することができる。
合成例1及び合成例2で得られたゼオライトのX線回折(XRD)測定結果を示す図面である。 合成例3及び合成例4で得られたゼオライトのXRD測定結果を示す図面である。 合成例1で得られたゼオライトを用いた実施例1、合成例3で得られたゼオライトを用いた実施例8、及び天然ゼオライトを用いた比較例1のセシウム処理試験において、セシウム濃度の経時変化を示すグラフである。
本発明に係るセシウム吸着材は、アロフェンを含む原料と、水酸化カリウム及び水酸化リチウムから選ばれる1種以上のアルカリ源とを用いた水熱反応により製造されるゼオライトを主成分とする。
以下、各成分について詳しく説明する。
[アロフェンを含む原料]
本発明に用いるアロフェンを含む原料は、該原料中のアロフェン含有量が20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましい。アロフェン含有量の上限は100質量%であるが、入手容易性の観点から、70質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。アロフェン含有量が前記の範囲にあれば、セシウム吸着能の高いゼオライトを、安価で容易に入手可能な原料から製造することができる。ここで、アロフェン含有量は、実施例に記載の方法により求めることができる。
アロフェンは日本で産出される、シリカ(SiO2)とアルミナ(Al23)からなる非晶質構造を有する粘土鉱物である。アロフェンの一般組成式としては、1〜2SiO2・Al23・2.5〜3H2Oで表される水和ケイ酸アルミニウムであり、中空球状の形態を有する。アロフェンはアルカリ水溶液による水熱処理で容易にゼオライトへ変換できる。本発明においてアロフェンを含む原料を用いることにより、高いセシウム吸着能力を有するゼオライトを得ることができる。
該原料に含まれるアロフェンとしては、特に制限はなく、天然アロフェン、合成アロフェンを用いることができる。天然アロフェンは、火山灰及び軽石などの降下火山噴出物を母材とする土壌に広く分布しており、日本国内の主な産地として、栃木県、新潟県、大分県などが知られている。特に鹿沼土として知られている。本発明で用いるアロフェンを含む原料は、例えば、石灰採掘時に発生する栃木県葛生産の表土を主原料とすることにより容易に入手することができる。この表土は浅間山の噴火を起源とする関東ローム層で、石英などの夾雑物と共に、アロフェンが豊富に含まれており、該表土を水ひ分級することによりアロフェンを抽出することができる。また、天然の表土を主原料とすることにより、人体や環境中に与える影響が少ないと考えられる。本発明において、表土とは土壌における最上層部の層であり、地表から通常0.05〜3mの層に存在する土を指す。
合成アロフェンを得る方法としては従来公知の方法を採用することができ、例えば、モノケイ酸水溶液とアルミニウム塩水溶液とを混合し、アロフェンの前駆体を生成した後、加熱してアロフェンを沈殿させる方法等が挙げられる。
本発明に用いるアロフェンを含む原料としては、園芸用に市販されている鹿沼土、粉末状や粒状に加工されたアロフェン等の市販品等を用いることもできる。
これらの中で、アロフェンを含む原料としては、価格及び入手容易性の観点から、アロフェンを含む表土が好ましく、アロフェンを豊富に含有する、関東ローム層の土壌から産出される表土がより好ましい。
本発明に用いるアロフェンを含む原料のメジアン径は、反応速度の観点から、100μm以下が好ましく、80μm以下がより好ましく、50μm以下が更に好ましい。アロフェンを含む原料は、公知の粉砕処理や分級処理により所望の粒径に調整することができる。本発明におけるアロフェンを含む原料のメジアン径は、実施例に記載の方法により測定される。
[アルカリ源]
本発明に用いるアルカリ源は、水酸化カリウム、及び水酸化リチウムから選ばれる1種以上である。
ゼオライトの水熱反応において、アルカリ源の種類により、生成するゼオライトの結晶構造が異なる。アルカリ源として水酸化カリウムを用いることにより、結晶構造がチャバサイト(CHA)構造を有するカリウム含有ゼオライトが生成し、アルカリ源として水酸化リチウムを用いることにより、結晶構造がEDI型、又はEDI型及びABW型の混晶構造のリチウム含有ゼオライトが生成することが知られている。
アルカリ源は、アルカリ水溶液として添加することが好ましく、アルカリ水溶液の濃度は、好ましくは0.5〜5mol/L、より好ましくは1〜4mol/Lである。
アルカリ源の添加量は、アロフェンを含む原料中のアルミニウム(Al)に対するモル比(アルカリ源/Al)が1以上となる範囲であることが好ましく、1〜10となる範囲であることがより好ましい。前記モル比が1以上であれば、特にセシウムを選択的かつ効率的に吸着することが可能な陽イオン吸着能を有するゼオライトを良好に生成することができ、前記モル比が10以下であれば、アルカリ源の添加量に見合った、ゼオライト生成量の増加が期待できるので、経済的である。上記の観点から、アルカリ源の添加量は、アロフェンを含む原料中のアルミニウム(Al)に対するモル比(アルカリ源/Al)が、1〜4となる範囲であることが更に好ましい。
[水熱反応]
本発明における水熱反応では、アロフェンを含む原料とアルカリ源とを水中で反応させてゼオライトを合成することができる。水熱反応は攪拌操作を行いながら実施することが好ましい。攪拌操作は、特に限定されないが、攪拌機を用いた攪拌、振動機を用いた振とう、超音波などにより分散させる方法等が挙げられる。なお、攪拌操作は、連続して行ってもよいし、任意の間隔で一定時間だけ攪拌操作を行い、それ以外は静置していてもよい。
本発明における水熱反応では、SiO2/Al23モル比は、使用するアロフェンを含む原料に依存するため、特に限定するものではないが、通常、1.5〜5.0の範囲にある。
アルカリ源に水酸化カリウムを用いる場合の水熱反応における反応温度は好ましくは60〜120℃であり、反応時間は好ましくは3〜72時間である。前記の反応条件であれば、結晶構造がCHA型を有するカリウム含有ゼオライトを効率よく生成させることができる。以上の観点から、アルカリ源に水酸化カリウムを用いる場合の反応条件は、より好ましくは、反応温度が70〜120℃、反応時間が8〜72時間であり、更に好ましくは、反応温度が80〜120℃、反応時間が8〜60時間である。
である。
アルカリ源に水酸化カリウムを用いる水熱反応によって、CHA型カリウム含有ゼオライトを効率よく生成させることができる。
水熱反応後に得られたゼオライトのカリウム含有量は、特に限定されるものではないが、K2O換算で10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましい。カリウム含有量が10質量%以上であれば、選択的セシウム吸着能が向上し、十分なセシウム吸着効果が得られる。
アルカリ源に水酸化リチウムを用いる場合の水熱反応における反応温度は好ましくは20〜90℃であり、反応時間は好ましくは4〜72時間である。前記の反応条件であれば、結晶構造がEDI型、又はEDI型及びABW型の混晶構造のリチウム含有ゼオライトを効率よく生成させることができる。以上の観点から、アルカリ源に水酸化リチウムを用いる場合の反応条件は、より好ましくは、反応温度が40〜90℃、反応時間が、8〜48時間であり、更に好ましくは、反応温度が50〜70℃、反応時間が8〜24時間である。
アルカリ源に水酸化リチウムを用いる水熱反応によって、EDI型、又はEDI型及びABW型の混晶構造のリチウム含有ゼオライトを効率よく生成させることができる。
水熱反応で得られたゼオライトのリチウム含有量は、特に限定されるものではないが、Li2O換算で5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。リチウム含有量が5質量%以上であれば、選択的セシウム吸着能が向上し、十分なセシウム吸着効果が得られる。
水熱反応で得られたゼオライトは、固液分離後、水で洗浄することが好ましい。洗浄に用いる水の温度は特に限定されず、例えば常温水で洗浄する方法が挙げられる。
洗浄後、乾燥操作を行うことが好ましく、その温度は特に限定されるものではないが、通常、40〜100℃が好ましく、40〜90℃がより好ましい。
[セシウム吸着材]
本発明のセシウム吸着材は、前述した水熱反応で得られたゼオライトを主成分とする。前記ゼオライトを1種単独でも、2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。本発明のセシウム吸着材は、より少ない使用量で高レベル汚染水に含まれる放射性セシウムを選択的かつ効率的に吸着することができる。上記において、主成分とは、セシウム吸着材中に、前述した水熱反応で得られたゼオライトを50質量%超含むものであり、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上含むものである。
前述した水熱反応で得られるゼオライトは、結晶構造がCHA型、EDI型、又はEDI型及びABW型の混晶構造を有する。これらの結晶構造を有するゼオライトは、セシウム吸着能が天然のゼオライトと比べて高いものである。
本発明のセシウム吸着材は、セシウム含有汚染水と十分に接触させることにより、好ましくはセシウム吸着材と汚染水を混合攪拌することにより、セシウムとゼオライトとの陽イオン交換反応が進行し、セシウムがゼオライトに吸着される。
セシウム吸着材の汚染水に対する使用量としては、汚染水中のセシウム濃度に対して、最適な添加量を定める必要がある。汚染水中のセシウム濃度が数千mg/Lのような高濃度の汚染水に対しては、多段式で処理することによりセシウム吸着材の使用量を削減できる。以上の観点から、セシウム吸着材の使用量としては、好ましくは汚染水に対して0.05〜5質量%となる量である。セシウム吸着材の使用量が0.05質量%以上であると、セシウム吸着効果が十分に得られ、5質量%以下であると、セシウム吸着材の添加量に応じたセシウムの吸着効果が得られ、攪拌時の負荷や処理コストの増大を抑えることができる。この観点から、セシウム吸着材の使用量は、汚染水に対して、より好ましくは0.1〜1質量%であり、更に好ましくは0.2〜0.8質量%である。
処理時間としては、セシウムとゼオライトのイオン交換反応が平衡に達するまで処理すればよく、通常1〜24時間、好ましくは2〜10時間である。
吸着処理後のセシウム吸着材は、放射性廃棄物として処理される。放射性廃棄物の処理方法としては、焼成固化、ガラス溶融固化、セメント固化等が挙げられる。焼成温度としては、通常800℃以上であり、1000℃以上が好ましく、1200℃以上がより好ましい。前記の温度範囲で焼成処理することにより、ゼオライトを再結晶化させることができ、セシウムの浸出を抑えることができる。
本発明のセシウム吸着材は、従来のゼオライトと比べて使用量を少なくすることができるので、放射性廃棄物の減容が可能である。
次に、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれによって制限されるものではない。
合成例及び実施例においてアロフェンを含む原料の化学成分の組成分析及びアロフェン含有量の測定は以下の方法で行った。
(1)アロフェンを含む原料の化学成分
アロフェンを含む原料の化学成分は、JIS M8853に規定する分析法に従って測定した。
(2)アロフェン含有量
アロフェン含有量は、北川、「土壌中のアロフェンおよび非晶質無機成分の定量に関する研究」(農技研報 B、(1977)、第29号、p.1〜48)に報告された「8N HCl−0.5N NaOH交換溶解法」に従って、以下の方法で求めた。
(8N HCl−0.5N NaOH交換溶解法)
あらかじめ105℃で24時間乾燥したアロフェンを含む原料1gを重量既知のガラス製蓋付遠心管に入れ、8N 塩酸を100mL加えて、30分間振とうした後、2000rpmで5分間遠心分離後上澄みを捨てる。次に、沈殿を1度蒸留水によって洗浄した後、0.5N 水酸化ナトリウム水溶液を100ml加えて、煮沸した湯浴中に5分間遠心管ごと浸した後、2000rpmで5分間遠心分離後上澄みを捨てる。以上の操作を1〜5回繰返して最後の0.5N水酸化ナトリウム水溶液処理後の沈殿を蒸留水で洗浄した後、105℃で24時間乾燥し、秤量して処理に伴う減量を求める。処理回数に対する減量をそれぞれx軸とy軸にプロットして作成した溶解曲線から、その曲線の直線部分を延長して、y軸との交点を求めて、交点のy軸の値をアロフェンの含量とし、アロフェンを含む原料に対する割合からアロフェン含有量(質量%)を算出した。結果を表1に示す。
(3)アロフェンを含む原料のメジアン径
粒度分布測定装置(株式会社島津製作所製、SALD−2100)使用し、体積基準のメジアン径を測定した。
(原料等)
合成例1〜4、実施例1〜10で使用した原料は以下のとおりである。
・アロフェン試供品(品川化成株式会社製、メジアン径8.8μm)
・表土(栃木県葛生産表土を水ひ分級したもの、メジアン径11.4μm)
・水酸化リチウム一水和物(関東化学株式会社製、特級、純度98.0質量%)
・水酸化カリウム(関東化学株式会社製、特級、純度86.0質量%)
前記アロフェン試供品及び表土の化学成分の組成分析、シリカ/アルミナモル比(Si/Al)及びアロフェン含有量は、表1に示すとおりである。
Figure 2013248555
<合成例1〜4>
(ゼオライトの水熱反応)
表2に示すアロフェンを含む原料5g、及びアルカリ水溶液50mlを反応容器内に入れ、混合した。反応容器を加熱し、表2に示す温度、時間の条件で静置することにより、アロフェンとアルカリを水熱反応させ、ゼオライトを合成した。水熱反応におけるバッチ組成を表2に示す。次いで、デカンテーションを数回行った後、純水でろ過洗浄し、乾燥させてゼオライトを得た。得られたゼオライトの化学成分をJIS M8853に規定する分析法に従って測定した。結果を表3に示す。
Figure 2013248555
Figure 2013248555
(生成物の評価)
前記水熱反応により得られたゼオライトは、X線回折装置(株式会社リガク製、「MultiFlex」)を用いて、同定した。図1に、合成例1及び合成例2で得られた生成物のXRDパターンを示す。図2に合成例3、4で得られた生成物のXRDパターンを示す。
図1より、合成例1の生成物はCHA型結の晶構造を有するゼオライトであると同定された。また合成例2の結果から、夾雑物が存在する表土を原料としても、CHA型の結晶構造を有するゼオライトが合成されることが分かる。
図2より、合成例3の生成物はEDI型、合成例4の生成物はEDI型とABW型の混晶構造を有するゼオライトの混晶であると同定された。合成例4の結果から、石英などの夾雑物が存在する表土を原料としても、EDI型の結晶構造を有するゼオライト、EDI型とABW型の混晶構造を有するゼオライトが合成されることが分かる。
(ゼオライトの水熱反応条件の検討1)
水熱反応条件と結晶構造がCHA型であるゼオライトの生成量との関係を明らかにするために、反応温度と反応時間を表4に示すように変えた以外は、合成例2と同様に、表土及び水酸化カリウムを水熱反応させてゼオライトを合成した例を示す。得られたゼオライトのXRDパターンから、CHA型の結晶構造と一致するピークの強度を評価した。
評価基準は、CHA型の結晶構造のピークが、明瞭に現れているものをA、CHA型の結晶構造のピークがわずかに現れているものをC、AとCの中間をBの3段階とした。CHA型の結晶構造のピーク強度が強いと、CHA型の結晶構造のゼオライトを多く含んでいることを示す。結果を表4に示す。
Figure 2013248555
表4より、反応温度が80℃以上、又は反応時間が24時間以上の範囲でCHA型の結晶構造のピークが明瞭に現れることが分かる。評価がAとなる反応条件において、反応時間がそれ以上長くても、CHA型結晶構造のピーク強度は強くならず一定であった。
(ゼオライトの水熱反応条件の検討2)
水熱反応条件と結晶構造がEDI及びABW型であるゼオライトの生成量との関係を明らかにするために、反応温度と反応時間を表5に示すように変えた以外は、合成例4と同様に表土及び水酸化リチウムを水熱反応させてゼオライトを合成した。得られたゼオライトのXRDパターンから、EDI及びABW型の結晶構造と一致するピークの強度を評価した。
評価基準は、EDI型及びABW型の結晶構造のピークが、明瞭に現れているものをA、EDI型及びABW型の結晶構造のピークがわずかに現れているものをC、AとCの中間をBの3段階とした。結果を表5に示す。
Figure 2013248555
表5より、反応温度60℃以上、反応時間24時間以上の範囲でEDI型の結晶構造のピークが現れることが分かる。反応温度90℃以上、反応時間48時間以上の範囲での範囲でABW型の結晶構造のピークが現れることが分かる。
実施例1
(セシウム吸着処理試験)
合成例1で得られたゼオライトを予めメノー乳鉢で粉砕し、150μmの篩の下目をセシウム吸着材として用いた。ビーカーに粉末状のセシウム吸着材1gと、塩化セシウム水溶液〔セシウム濃度1000mg/l、塩化セシウム(関東化学株式会社製、純度98.0質量%)〕300mlを入れ、マグネチックスターラーで6時間撹拌混合した。混合液をシリンジで採取し、シリンジフィルター(孔径0.45μm)を用いて固形物を除いた液を抽出した。抽出した液のセシウム濃度を、原子吸光光度計(株式会社日立製作所製、「Z−2000」)により測定し、セシウム初期濃度に対するセシウムの減少率から、セシウム吸着率(%)を求めた。結果を表6に示す。
実施例2〜7
水熱反応条件を表6に示すとおりに変更して実施した以外は、合成例2と同様の方法で
ゼオライトを合成した。
前記で得られたゼオライトを用いた以外は、実施例1と同様の方法で、セシウム吸着処理試験を実施した。結果を表6に示す。
実施例8
合成例3で得られたゼオライトを用いた以外は、実施例1と同様の方法で、セシウム吸着処理試験を実施した。結果を表6に示す。
実施例9〜10
水熱反応条件を表6に示すとおりに変更して実施した以外は、合成例4と同様の方法でゼオライトを合成した。
前記で得られたゼオライトを用いた以外は、実施例1と同様の方法で、セシウム吸着処理試験を実施した。結果を表6に示す。
比較例1〜3
表6に示す天然ゼオライトを予めブラウンミルで粉砕し、150μmの篩の下目をセシウム吸着材として用いた以外は、実施例1と同様の方法で、セシウム吸着処理試験を実施した。結果を表6に示す。
比較例4
表6に示す合成ゼオライトを予めメノー乳鉢で粉砕し、150μmの篩の下目をセシウム吸着材として用いた以外は、実施例1と同様の方法で、セシウム吸着処理試験を実施した。結果を表6に示す。
Figure 2013248555
実施例1〜10及び比較例1〜4により、本発明のセシウム吸着材のセシウム吸着率は、従来の天然ゼオライト及び合成ゼオライトを用いた吸着材より1.2〜2.3倍高いことが分かる。
実施例2、3及び7では、表4に示すように明瞭なCHA型ゼオライトのXRDパターンが見られなかったにもかかわらず、セシウム吸着能力があった。これは回折に寄与しない微小なCHA型カリウム含有ゼオライトの結晶が生成しているためと考えられる。
合成例1で得られたゼオライトを用いた実施例1、合成例3で得られたゼオライトを用いた実施例8、及び天然ゼオライトを用いた比較例1のセシウム処理試験において、測定されたセシウム濃度の経時変化を示すグラフを図3に示す。図3によれば、処理開始後1時間でセシウムとゼオライトのイオン交換反応が平衡に達することが分かる。
以上より、本発明のセシウム吸着材は、少量の使用で多量の放射能汚染水を短時間で効率的に処理できることが分かる。
本発明に係るセシウム吸着材のセシウム吸着能力は天然ゼオライトより高いため、少量の使用で高いセシウム吸着効果が発揮され、多量の放射性セシウムを含む汚染水を効率的に処理できることが分かる。また、廃棄物の保管及び処分の問題が軽減されることが期待される。

Claims (7)

  1. アロフェンを含む原料と、水酸化カリウム及び水酸化リチウムから選ばれる1種以上のアルカリ源とを用いた水熱反応により製造されるゼオライトを主成分とするセシウム吸着材。
  2. アルカリ源が水酸化カリウムであって、前記ゼオライトが、結晶構造がCHA型を有するカリウム含有ゼオライトである、請求項1に記載のセシウム吸着材。
  3. 前記ゼオライトのカリウム含有量が、K2O換算で10質量%以上である、請求項1又は2に記載のセシウム吸着材。
  4. アルカリ源が水酸化リチウムであって、前記ゼオライトが、結晶構造がEDI型、又はEDI型とABW型の混晶構造を有するリチウム含有ゼオライトである、請求項1に記載のセシウム吸着材。
  5. 前記ゼオライトのリチウム含有量が、Li2O換算で5質量%以上である、請求項1又は4に記載のセシウム吸着材。
  6. 請求項2又は3に記載されたセシウム吸着材を製造する方法であって、アロフェンを含む原料及び水酸化カリウムを水熱反応させて、前記セシウム吸着材の主成分であるゼオライトを製造する工程を有しており、水酸化カリウムの添加量が、アロフェンを含む原料中のアルミニウム(Al)に対するモル比(KOH/Al)で1以上であり、水熱反応における反応温度が60〜120℃、かつ反応時間が3〜72時間である、セシウム吸着材の製造方法。
  7. 請求項4又は5に記載されたセシウム吸着材を製造する方法であって、アロフェンを含む原料及び水酸化リチウムを水熱反応させて、前記セシウム吸着材の主成分であるゼオライトを製造する工程を有しており、水酸化リチウムの添加量が、アロフェンを含む原料中のアルミニウム(Al)に対するモル比(LiOH/Al)で1以上であり、水熱反応における反応温度が20〜90℃、かつ反応時間が4〜72時間である、セシウム吸着材の製造方法。
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