JP2013244425A - 排ガス浄化用触媒及びその製造方法 - Google Patents

排ガス浄化用触媒及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】銅と鉄とを活性成分として利用しながら十分に高度な触媒活性を発揮することが可能な排ガス浄化用触媒を提供すること。
【解決手段】担体及び前記担体に担持された銅と鉄の複合体を備えており、且つ、
前記複合体のうちの少なくとも一部が、粒子径が0.5〜1.5nmのCuFe複合クラスターであることを特徴とする排ガス浄化用触媒。
【選択図】なし

Description

本発明は、排ガス浄化用触媒並びにその製造方法に関する。
従来から、自動車の内燃機関から排出されるガス中に含まれる一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)等の成分を浄化するために様々な触媒が用いられてきた。そして、このような排ガス浄化用触媒としては、活性成分として遷移金属を担体に担持した触媒が知られている。例えば、特開平7−171394号公報(特許文献1)には、アルミナ又はシリカアルミナからなる担体に、Cu、Co、Fe、Cr、Zn、Ni及びVの中から選ばれた少なくとも1種を担持した排ガス浄化用触媒が開示されている。更に、特開平9−276700号公報(特許文献2)には、その実施例1の欄において、排ガス中のアンモニアを除去するための触媒としてチタニア担体に銅と鉄とを担持した触媒が開示されている。
特開平7−171394号公報 特開平9−276700号公報
しかしながら、特許文献1においては、遷移金属として二種以上の金属種を具体的に組み合わせることまでは開示されていない。また、特許文献1に記載のような従来の排ガス浄化用触媒は、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)等の浄化性能の点において必ずしも十分なものではなかった。また、特許文献2においては、銅と鉄とを組み合わせて担持した触媒の例が開示されているものの、特許文献2に記載のような排ガス浄化用触媒は、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)等の浄化性能の点で必ずしも十分なものではなかった。
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、銅と鉄とを活性成分として利用しながら十分に高度な触媒活性を発揮することが可能な排ガス浄化用触媒並びにその触媒を効率よく確実に製造することが可能な排ガス浄化用触媒の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らが、先ず、上述のような従来技術において十分に高度な触媒活性が得られなかった理由について検討したところ、上記従来技術においては、遷移金属の塩を利用して含浸法等により担体に遷移金属(銅や鉄等)を担持していたため、十分に微細な状態で遷移金属を担持することができず、これに起因して十分に高度な触媒活性が得られなかったものと推察した。また、本発明者らは、含浸法等の従来の方法では、遷移金属の中から2種の金属を選択して組み合わせて利用した場合において、一方の金属が他方の金属を覆ってしまいコアシェル型の粒子として担持されたり、或いは、相分離して2種の金属の粒子がそれぞれ別々に担持されたりして、2種の金属の特性を十分に利用できないばかりか、その金属担持物(2種の金属の複合体)が粗大化して十分に微細な状態で各金属を担持することができず、これにより遷移金属として鉄と銅とを選択した場合においても触媒活性が必ずしも十分なものとはならなかったものと推察した。そして、このような検討結果を踏まえ、本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、排ガス浄化用触媒を担体及び前記担体に担持された銅と鉄の複合体を備える構成のものとしつつ、その複合体のうちの少なくとも一部を粒子径が0.5〜1.5nmのCuFe複合クラスターとすることにより、驚くべきことに、十分に高度な触媒活性を発揮することが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の排ガス浄化用触媒は、担体及び前記担体に担持された銅と鉄の複合体を備えており、且つ、
前記複合体のうちの少なくとも一部が、粒子径が0.5〜1.5nmのCuFe複合クラスターであることを特徴とするものである。
上記本発明の排ガス浄化用触媒においては、前記担体に前記複合体として担持されている銅と鉄の総原子数の50at%以上が、前記CuFe複合クラスターを形成していることが好ましい。
また、上記本発明にかかるCuFe複合クラスターとしては、錯体の核に銅原子と鉄原子とを含むCuFe多核錯体を用いることにより前記担体に担持されたものが好ましい。
また、本発明の排ガス浄化用触媒の製造方法は、錯体の核に銅原子と鉄原子とを含むCuFe多核錯体を含有する錯体含有液を担体に接触せしめ、前記担体に前記CuFe多核錯体を担持し、焼成することにより、上記本発明の排ガス浄化用触媒を得ることを特徴とする方法である。
上記本発明にかかるCuFe多核錯体としては、錯体の核にCuFe、CuFe及びCuFeからなる群から選択される1種を備えるCuFe多核錯体が好ましい。 また、上記本発明にかかるCuFe多核錯体としては、配位子としてカルボニル配位子を備え且つカウンターカチオンとしてテトラメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラプロピルアンモニウムイオン及びテトラブチルアンモニウムイオンからなる群から選択される少なくとも1種のイオンを備えるものであることが好ましい。
また、上記本発明の排ガス浄化用触媒の製造方法においては、前記錯体含有液の溶媒が極性を有する有機溶媒であることが好ましい。
なお、本発明の自動車排ガス浄化用触媒及びその製造方法によって上記目的が達成される理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、先ず、本発明の自動車排ガス浄化用触媒の製造方法においては、銅及び鉄は前記CuFe多核錯体を用いて前記担体に担持される。従来の触媒の製造方法において銅及び鉄を担持するために用いられてきた塩(例えば硝酸塩等)は、担体との接触により、担体との間で静電的な弱い相互作用により担体の表面上に付着し、焼成により塩が分解されて、金属が担体に担持される。このように、CuFe多核錯体以外の銅の塩と鉄の塩とを用いて銅と鉄とを担体に担持する場合には、焼成前の塩の状態が静電気力による弱い相互作用により担体に付着するか或いは付着すらしないことから、焼成により容易に塩の移動による凝集や飛散が生じる。また、銅の塩と鉄の塩とを用いて銅と鉄とを担体に担持する場合には、銅と鉄の間における結合(金属間の結合や配位子を介した結合)がない状態で、これらの金属が担持されるため、担持金属がコアシェル型の凝集物となったり或いは各金属ごとに相分離した状態のものとして担持されたりして、十分に微細な状態で担持することができなかった。これに対して、本発明に用いられるCuFe多核錯体は、担体上の金属原子或いは酸素原子と配位結合を形成し、担体に十分に安定した状態で担持される。このような錯体の担体上での担持状態を説明するために、本発明にかかるCuFe多核錯体の好適な一例として、CuFeを核とし且つカルボニル配位子を有するCuFe多核錯体(複核錯体)を例に挙げ、図1を参照しながら、錯体を用いて担体上に銅及び鉄を担持する工程を模式的に示す。ここで、図1(a)は、担体10にCuFe多核錯体11が担持された状態を概念的に示す図であり、図1(b)は、担体10に複合クラスター12が担持された状態を概念的に示す図である。なお、図1中、担体10は金属原子Mを含んでなるものであり、錯体11はその核に鉄原子11aを3原子と銅原子11bを3原子含むものであり、配位子Lはカルボニル配位子である。また、図1に記載する錯体11においては、鉄原子11aや銅原子11bに結合する配位子Lの一部を省略している。本発明においては、先ず、CuFe多核錯体11を含む錯体含有液を担体10に接触せしめる。このように、CuFe多核錯体11を含む錯体含有液を担体10に接触せしめると、図1(a)に記載のように、錯体11は、カルボニル配位子L中の酸素原子と担体金属Mとの間で配位結合を形成する(なお、場合により、配位子と担体表面に存在する水酸基とによる水素結合によっても吸着担持され得るとともに、担体の金属種によってはCuFe多核錯体の酸素原子と担体中の金属イオンとの間に結合を形成して吸着担持され得ることも考えられる。)。このようにして結合が形成されると、その強い結合力によって、安定性に優れた状態で錯体11が担体10に担持される(なお、配位子Lの種類を担体の金属Mの種類に応じて適宜選択することにより、担体と錯体とを十分に結合させることが可能である。)。そして、錯体11が担体10に担持された後に焼成すると、担体10と錯体11との結合の熱安定性が高いため、錯体の核(鉄原子11aと銅原子11bとにより形成される核)が移動することによる凝集や飛散が十分に防止されながら配位子が除去されることから、錯体の核を形成する金属クラスター分子(図1に示す例ではCuFe)は、その形態を十分に維持しながら、担体に担持される。そのため、錯体11が担体10に担持された後に焼成すると、鉄原子11aと銅原子11bは、錯体の核における形態(状態)を十分に維持して、銅と鉄の複合クラスターとして十分に分散された状態で担体に担持される。そして、前述のように、焼成時に錯体の核の移動や飛散が十分に抑制されることから、一つの錯体と他の錯体の核を形成する金属同士の凝集も十分に抑制され、十分に微細な状態の複合クラスター12を担体に担持できるものと本発明者らは推察する。また、図1に示す例のように、錯体11の核がCuとFeとにおいて金属間の結合を有する異種金属クラスター分子である場合には、その異種金属原子同士の金属間の結合によっても、焼成時に核を構成する金属原子が飛散することが抑制され、錯体の核の状態を十分に維持しながら担体に銅と鉄の複合クラスターが担持される。更に、このようにして錯体11を利用して担持される複合クラスターは、錯体以外の金属塩を利用する含浸法等で担持した粒子と比較して、クラスターの安定性に起因して、より凝集し難い性質を有していることから、焼成時や触媒としての使用時においても、十分に微細な粒子の状態を維持する傾向にある。このように、本発明の排ガス浄化用触媒の製造方法を好適に採用して製造することが可能な上記本発明の排ガス浄化用触媒においては、担体にCuFe複合クラスターが十分に微細な状態で担持され、一方の種類の金属が他方の種類の金属をコートして活性を低下させるような不都合が生じることもなく、また、凝集等が十分に防止されて触媒が十分な量の活性点を有するものとなるため、十分に高度な触媒活性を発揮できるものと本発明者らは推察する。
本発明によれば、銅と鉄とを活性成分として利用しながら十分に高度な触媒活性を発揮することが可能な排ガス浄化用触媒並びにその触媒を効率よく確実に製造することが可能な排ガス浄化用触媒の製造方法を提供することが可能となる。
錯体を用いて担体上に銅及び鉄を担持する連続した工程を模式的に示ず概念図であり、図1(a)は担体に多核錯体が担持された状態を示す概念図であり、図1(b)は担体に複合クラスターが担持された状態を示す概念図である。 調製例1で得られたCuFe錯体の分子構造を表すORTEP図である。 調製例1で得られたCuFe錯体の集積構造を表すパッキング図(Packing図)である。 調製例1で得られたCuFe錯体のマススペクトル(質量電荷比(m/z)が600〜1500の範囲のスペクトル)のグラフである。 図4に示すマススペクトルのグラフの質量電荷比(m/z)が1105〜1135の範囲の部分の拡大図である。 図4に示すマススペクトルのグラフの質量電荷比(m/z)が1300〜1325の範囲の部分の拡大図である。 式:CuFe(CO)12で表される錯体の理論上のマススペクトルのグラフである。 実施例1で得られた排ガス浄化用触媒の走査透過型電子顕微鏡(STEM)写真である。 実施例2で得られた排ガス浄化用触媒の走査透過型電子顕微鏡(STEM)写真である。 実施例2で得られた排ガス浄化用触媒の走査透過型電子顕微鏡(STEM)写真である。 比較例1で得られた排ガス浄化用触媒の走査透過型電子顕微鏡(STEM)写真である。 EDS分析を行った実施例2で得られた排ガス浄化用触媒の試料の走査透過型電子顕微鏡(STEM)写真である。 EDS分析による実施例2で得られた排ガス浄化用触媒のアルミニウム(Al)のマッピングデータを示すX線写真である。 EDS分析による実施例2で得られた排ガス浄化用触媒の鉄(Fe)のマッピングデータを示すX線写真である。 EDS分析による実施例2で得られた排ガス浄化用触媒の銅(Cu)のマッピングデータを示すX線写真である。 実施例2で得られた排ガス浄化用触媒のEDSスペクトルのグラフである。 実施例2で得られた排ガス浄化用触媒の走査透過型電子顕微鏡(STEM)写真である。 図17に示す実施例2で得られた排ガス浄化用触媒の任意の4点(001〜004)のEDSスペクトルのグラフである。 500℃の条件における実施例1及び比較例1〜3で得られた排ガス浄化用触媒のCO転化率のグラフである。 500℃の条件における実施例1及び比較例1〜3で得られた排ガス浄化用触媒のC転化率のグラフである。 500℃の条件における実施例1及び比較例1〜3で得られた排ガス浄化用触媒のNO転化率のグラフである。 200℃〜600℃の温度範囲における実施例1及び比較例1〜3で得られた排ガス浄化用触媒のNO転化率のグラフである。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
[排ガス浄化用触媒]
本発明の排ガス浄化用触媒は、担体及び前記担体に担持された銅と鉄の複合体を備えており、且つ、
前記複合体のうちの少なくとも一部が、粒子径が0.5〜1.5nmのCuFe複合クラスターであることを特徴とするものである。
本発明にかかる担体としては特に制限されず、排ガス浄化用の触媒に用いることが可能な公知の担体を適宜用いることができ、例えば、金属酸化物からなる担体を適宜用いることができる。このような担体に利用される金属酸化物としては、例えば、活性アルミナ、アルミナ−セリア−ジルコニア、セリア−ジルコニア、ジルコニア、ランタン安定化活性アルミナ等が挙げられ、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)及びバナジウム(V)の酸化物、これらの固溶体、並びにこれらの複合酸化物からなる群から選択される少なくとも一種が好ましい。また、このような金属酸化物の中でも、より高い触媒活性が得られるという観点から、CeO、ZrO、Y、TiO、Al、これらの固溶体、及びこれらの複合酸化物からなる群から選択される少なくとも一種を含有するものがより好ましい。
また、このような担体の形状は特に制限されないが、十分な比表面積が得られるという観点から粉末状であることが好ましい。また、このような担体が粉末状の場合には、より高い触媒活性を得るという観点からは、担体の平均一次粒子径は5〜200nmであることが好ましく、5〜100nmであることがより好ましい。更に、このような担体の比表面積は特に制限されないが、より高い触媒活性を得るという観点からは、30m/g以上であることがより好ましく、50〜200m/gであることが更に好ましい。
また、本発明の排ガス浄化用触媒においては、前記担体に、銅と鉄の複合体が担持されている。ここにいう「複合体」は、銅の原子と鉄の原子とを含有するものであって、銅と鉄の原子の集合体をいう(後述の「凝集物」や「銅と鉄の複合クラスター(CuFe複合クラスター)」を含む概念である。)。そして、本発明においては、前記複合体のうちの少なくとも一部が、粒子径が0.5〜1.5nmの鉄と銅の複合クラスター(CuFe複合クラスター:銅の原子と鉄の原子とが複合化したクラスター)となっている。
このように、本発明にかかるCuFe複合クラスターは、粒子径が0.5〜1.5nm(より好ましくは0.5〜1.3nm)という条件を満たすものである。このような粒子径が前記下限未満ではそのクラスターと担体との相互作用が強くなり過ぎて、十分な活性を発現できなくなり、他方、前記上限を超えると、活性成分である銅と鉄の複合粒子の粗大化により、触媒中の活性点の量が低下して十分な触媒活性を得ることができなくなる。なお、本明細書においては、以下において、本発明にかかるCuFe複合クラスターの条件(粒子径が0.5〜1.5nmであるという条件)を満たさないものであって粒子径が1.5nmを超える複合体の粒子を、便宜上、単に「凝集物」という。
また、このようなCuFe複合クラスターは、鉄と銅の原子の総数が100原子以下のクラスターであることが好ましく、鉄と銅の原子の総数が6〜50原子のクラスターであることがより好ましく、鉄と銅の原子の総数が6〜30原子のクラスターであることが更に好ましい。このようなCuFe複合クラスター中の原子の総数が上記上限を超える場合には、前記複合体の粒子径が1.5nmよりも大きくなって、上記CuFe複合クラスターの条件を満たさなくなってしまい、十分な触媒活性を示すことができなくなる傾向にあり、他方、前記下限未満では、前記クラスターと担体との相互作用が強くなり過ぎて、十分な活性を発現できなくなる傾向にある。このようなCuFe複合クラスターの粒子径やクラスター中の原子の数は、走査透過電子顕微鏡(Cs−STEM)により担体上に担持されている銅と鉄の複合体を測定して、粒子径や原子の数を測定することにより求めることができる。なお、ここにいう粒子径は、CuFe複合クラスターが球状でない場合には、その外接円の最大直径をいう。
さらに、このようなCuFe複合クラスターとしては、鉄の原子数が3〜50原子で且つ銅の原子数が3〜50原子である複合クラスターが好ましく、鉄の原子数が3〜20原子で且つ銅の原子数が3〜20原子である複合クラスターがより好ましく、鉄の原子数が3〜4原子で且つ銅の原子数が3〜6原子である複合クラスターが更に好ましく、鉄の原子数が3原子で且つ銅の原子数が3原子である複合クラスターが特に好ましい。このような鉄の原子数が前記下限未満では前記複合クラスターと担体との相互作用が強くなり過ぎて、十分な活性を発現できなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると活性点の数が低下する傾向にある。
また、このような担体に担持されている複合体(前記CuFe複合クラスター及び凝集物を含む。)の平均粒子径としては、0.5〜5.0nmであることが好ましく、0.5〜3.0nmであることがより好ましい。このような平均粒子径が前記下限未満では前記複合体と担体との相互作用が強くなり過ぎて、十分な活性を発現できなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると活性点の数が低下する傾向にある。なお、このような平均粒子径は、走査透過電子顕微鏡(Cs−STEM)により担体上に担持されている任意の10個以上の複合体について粒子径を測定し、求められた粒子径を平均化することにより算出することができる。
また、本発明においては、前記担体に複合体として担持されている銅と鉄の総原子数の50at%以上(更に好ましくは60at%以上、特に好ましくは70at%以上)が、粒子径が0.5〜1.5nmのCuFe複合クラスターを形成していることが好ましい。このようなCuFe複合クラスターの存在割合(at%)が前記下限未満では、触媒活性が低下する傾向にある。このようなCuFe複合クラスターの存在割合(at%)は、排ガス浄化用触媒の担体上の縦10nm、横10nmの任意の一点の領域を、収束レンズに球面収差補正装置を備えた走査透過電子顕微鏡(Cs−STEM)により測定し、得られたSTEM像に基づいてその領域中に存在する銅と鉄の全原子数と、粒子径が0.5〜1.5nmのCuFe複合クラスターとして存在する鉄と銅の原子の数とをそれぞれ求め、銅と鉄の全原子数に対するCuFe複合クラスターとして存在する銅と鉄の原子数の比を算出して、かかる原子数の比の値を触媒全体におけるCuFe複合クラスターの存在割合(at%)と擬制することにより求める。なお、このようなCuFe複合クラスターの粒子径や原子数、及び存在割合を測定する際に用いる走査透過電子顕微鏡(STEM)としては、例えば日本電子製の商品名「JEM−2100F」を用いることができる。
また、前記担体に担持される銅と鉄の総量(前記複合体(CuFe複合クラスターを含む。)として担持される銅と鉄の総担持量)は、前記担体と前記複合体の総量に対して0.05〜3.5質量%(より好ましくは0.10〜3.0質量%、更に好ましくは0.5〜2.5質量%、特に好ましくは1.0〜2.0質量%)であることが好ましい。このような銅と鉄の総量が前記下限未満では、十分な触媒活性が得られなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、シンタリングが起こり易くなり、十分に微細なCuFe複合クラスターを十分に分散して担持することが困難となり、十分な活性が得られなくなる傾向にある。なお、前記担体に担持される銅と鉄の割合としては、質量比(銅:鉄)で1:1〜2:1であることが好ましく、1.1:1〜1.9:1であることがより好ましい。このような鉄の含有比が前記下限未満では活性が低下する傾向にある。
また、本発明においては、前記CuFe複合クラスターの粒子と該CuFe複合クラスターに隣接する複合体(CuFe複合クラスターを含む。)の粒子との間の距離の平均値が0.2nm以上(より好ましくは0.2〜5nm)であることが好ましい。このような粒子間の距離の平均値が前記下限未満では、活性成分の分散性が低下し、十分に高度な触媒活性が得られなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、担体の比表面積が小さい場合には、活性点の数が減少して十分に高度な触媒活性が得られなくなる傾向にある。なお、本発明にいう「CuFe複合クラスターの粒子と該CuFe複合クラスターに隣接する複合体の粒子との間の距離(粒子間の距離)」は、前述のCuFe複合クラスターの存在割合(at%)を求める方法と同様にCs−STEM測定を行って、得られたSTEM像に基づいて求めることができる。すなわち、本発明において「CuFe複合クラスターと該CuFe複合クラスターに隣接する複合体の粒子との間の距離(粒子間の距離)」とは、各CuFe複合クラスターの粒子から見て、隣接する複合体の粒子との間の距離が最短となる粒子を選択して求められる線分の長さをいい、「CuFe複合クラスターと該CuFe複合クラスターに隣接する複合体の粒子との間の距離の平均値」とは、前記線分の長さの平均値をいう。なお、ここにいう「線分の長さ」とは、各粒子の最近接点間を結んだ場合の線分の長さをいう。このような距離の平均値は、少なくとも任意の5個以上のCuFe複合クラスターを測定用の粒子として選択し、各粒子に対して線分の長さが最短となる複合体の粒子を測定し、その線分の長さをそれぞれ求めて、その平均値を算出することにより求めることができる。なお、このような距離の平均値(前記線分の長さの平均値)は、例えば、縦10nm、横10nmの任意の領域のSTEM像を用いて、その像中の任意の5個以上のCuFe複合クラスターを前記測定用の粒子とすることにより求めることができる。
また、前記CuFe複合クラスターとしては、より高度な触媒活性が得られることから、錯体の核に銅原子と鉄原子とを含むCuFe多核錯体を用いることにより前記担体に担持されたものが好ましく、錯体の核にCuFe、CuFe及びCuFeからなる群から選択される1種を備えるCuFe多核錯体を用いることにより前記担体に担持されたものがより好ましい。なお、このようなCuFe多核錯体を用いてCuFe複合クラスターを担体に担持する方法としては、後述する本発明の排ガス浄化用触媒の製造方法を好適に採用することができる。
また、本発明の排ガス浄化用触媒においては、その形態は特に制限されず、例えば、担体及び前記担体に担持された銅と鉄の複合体を備える触媒を基材に担持したハニカム形状のモノリス触媒や、ペレット形状のペレット触媒の形態等としてもよい。ここで用いられる基材も特に制限されず、パティキュレートフィルタ基材(DPF基材)、モノリス状基材、ペレット状基材、プレート状基材等を好適に採用することができる。また、このような基材の材質も特に制限されないが、コーディエライト、炭化ケイ素、ムライト等のセラミックスからなる基材や、クロム及びアルミニウムを含むステンレススチール等の金属からなる基材を好適に採用することができる。
また、このような基材に前記触媒を担持する方法も特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができる。なお、このような排ガス浄化用触媒においては、本発明の効果を損なわない範囲で排ガス浄化用触媒に用いることが可能な他の成分(例えばNOx吸蔵材等)を適宜担持してもよい。また、本発明の排ガス浄化用触媒は、後述する本発明の排ガス浄化用触媒の製造方法を採用することにより効率よく製造することが可能となる。
[排ガス浄化用触媒の製造方法]
本発明の排ガス浄化用触媒の製造方法は、錯体の核に銅原子と鉄原子とを含むCuFe多核錯体を含有する錯体含有液を担体に接触せしめ、前記担体に前記CuFe多核錯体を担持し、焼成することにより、上記本発明の排ガス浄化用触媒を得ることを特徴とする方法である。
このような担体は、上記本発明の排ガス浄化用触媒に用いられる担体と同様のものである。
また、CuFe多核錯体は錯体の核に銅原子と鉄原子とを含むものであればよく、特に制限されるものではないが、鉄と銅の原子の総数が6〜50原子(より好ましくは6〜11原子、更に好ましくは6原子)であって且つ銅と鉄の金属原子間に結合を有する金属間化合物(銅と鉄の異種金属クラスター分子)が前記錯体の核を形成していることが好ましい。このような原子数が前記下限未満では活性点としての機能が低下し、十分な活性が得られない傾向にあり、他方、前記上限を超えると活性点の減少(活性点の表面積の低下)により、十分な活性が得られない傾向にある。また、このように銅と鉄の金属原子間に結合を有する異種金属クラスター分子を錯体の核とすることで、配位子を介して銅原子と鉄原子とが結合する錯体と比較した場合に、焼成時の配位子の熱分解の際に金属間の結合がより十分に維持されるため、配位子の熱分解により金属原子が飛散することをより高度な水準で抑制することができ、核を形成するクラスター分子の状態を、より十分に維持して担体に銅及び鉄を担持することができる。更に、前記CuFe多核錯体の核としては、鉄の原子数が3〜20原子(更に好ましくは3〜4原子、特に好ましくは3原子)であり、銅の原子数が3〜30原子(更に好ましくは3〜6原子、特に好ましくは3原子)であり且つ銅と鉄の金属原子間に結合を有する金属間化合物(銅と鉄の異種金属クラスター分子)がより好ましい。このような鉄の原子数が前記下限未満では活性点としての機能が低下し、十分な活性が得られない傾向にあり、他方、前記上限を超えると活性点の減少(活性点の表面積の低下)により、十分な活性が得られない傾向にある。
また、このようなCuFe多核錯体の核としては、得られる触媒の活性がより高度なものとなることから、CuFe、CuFe及びCuFeからなる群から選択される1種の金属間化合物(銅と鉄の異種金属クラスター分子)がより好ましく、CuFeであることが特に好ましい。
また、このようなCuFe多核錯体の配位子は、担体の金属の種類等に応じて、錯体を構成する遷移金属間に結合を有し、さらに担体に担持することが可能となるように適宜選択すればよく、特に制限されないが、カルボニル配位子が特に好ましい。なお、このような配位子は1種を単独で或いは2種以上を混合して含んでいてもよい。
さらに、このようなCuFe多核錯体としては、カウンターカチオンの存在により錯体同士が接触することを防止して、錯体間の距離をより十分に保持しながら錯体を担体に担持でき、核を形成する金属間化合物の形態を十分に維持しながら担体に銅と鉄とを担持できること(銅と鉄をCuFe複合クラスターとして効率よく担持できること)から、カウンターカチオンとしてテトラメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラプロピルアンモニウムイオン及びテトラブチルアンモニウムイオンからなる群から選択される少なくとも1種のイオンを備えるものが好ましく、より高い担持効率が得られることから、カウンターカチオンとしてテトラメチルアンモニウムイオンを備えるものが特に好ましい。
このようなCuFe多核錯体としては特に制限されないが、例えば、化学式CuFe(CO)12・[N(CH]、CuFe(CO)12・[N(C]、CuFe(CO)12・[N(C]、CuFe(CO)12・[N(C]等で表される錯体が挙げられる。また、このようなCuFe多核錯体の製造方法としては特に制限されず、銅と鉄とを核に含有する多核錯体(複核錯体)を製造することが可能な公知の方法を適宜採用することができる(例えば、J. Am. Chem. Soc., vol.108,No.3,1986年,P.445−451等の文献に記載されている方法等を適宜利用してもよい。)。
また、前記錯体含有液の溶媒としては特に制限されず、前記CuFe多核錯体を溶解させることが可能な水、有機溶媒等を適宜用いることができる。また、前記錯体含有液の溶媒としては、錯体の状態をより十分に維持しながら、より効率よくCuFe複合クラスターを担持できるという観点から、極性を有する有機溶媒であることが好ましい。また、このような極性を有する有機溶媒としては、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジクロロメタン、クロロホルム、酢酸エチル、プロパノール、アセトン等が挙げられる。また、このような溶媒としては1種を単独であるいは2種以上を組み合わせて利用してもよい。
また、前記溶媒として好適な極性を有する有機溶媒としては誘電率(単位:F/m)が20以下(より好ましくは15以下、更に好ましくは4〜9)のものが好ましい。このような誘電率が前記上限を超えると、錯体を効率よく溶媒に分散できない(溶解できない)傾向にある。また、前記錯体含有液の溶媒としては、誘電率が20以下で且つ極性を有する有機溶媒が好ましく、中でも、錯体の状態をより十分に維持しながら担持できるという観点から、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジクロロメタン、クロロホルム、酢酸エチルがより好ましい。なお、このような誘電率の値としては、例えば、「“Organic Solvents: Physical Properties and Methods of Purification”,4th ed.,Wiley,1986年」に記載されている値や、インターネット上のフリー百科事典「ウィキペディア(Wikipedia)」の「溶媒」のページに記載されている値等を利用することができる。
また、このような錯体含有液中のCuFe多核錯体の含有量としては、0.01〜0.5質量%であることが好ましく、0.02〜0.3質量%であることがより好ましい。このような含有量が前記下限未満では担持効率が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると錯体の溶媒への分散が不十分となる傾向にある。
さらに、このような錯体含有液中に含有されている銅と鉄の総量は特に制限されないが、金属換算で0.005〜0.5質量%であることが好ましく、0.01〜0.25質量%であることがより好ましい。このような銅と鉄の総量が前記下限未満では、担持溶液の量がかさむだけではなく、担体に錯体を効率よく担持することが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、錯体、担体ともに分散性が低下するため、CuFe多核錯体を均一に担持することが困難となる傾向にある。
また、このような錯体含有液中に含有されている銅と鉄の割合としては、質量比(銅:鉄)で1:1〜2:1であることが好ましく、1.1:1〜1.9:1であることがより好ましい。このような鉄の含有比が前記下限未満では活性が低下する傾向にある。
また、このような錯体含有液の調製方法は特に制限されず、前記錯体を前記溶媒中に溶解することが可能な方法を適宜採用すればよい。
さらに、前記錯体含有液を前記担体に接触せしめ、前記担体に前記CuFe多核錯体を担持する方法としては特に制限されず、前記担体の金属種の種類や前記錯体の配位子の種類等に応じて、前記担体に前記錯体を担持させることが可能な公知の方法を適宜採用することができ、例えば、前記錯体含有液中に前記担体を浸漬することにより前記担体に前記CuFe多核錯体を担持する方法等を採用してもよい。例えば、前記錯体の配位子がカルボニル配位子であり、担体がアルミナである場合等には、上述のような錯体含有液中に前記担体を浸漬する方法を採用することにより、カルボニル配位子の酸素原子を介してアルミニウムイオン(Al3+)の原子に錯体を配位結合させることができ、これによりCuFe多核錯体を前記担体上の金属原子に結合して担持させることができる。なお、本発明においては、焼成時においても錯体の凝集や飛散がより十分に抑制できることから、前記CuFe多核錯体を前記担体上の金属原子に結合(例えば配位結合)させて担持することが好ましい。
また、前記錯体含有液中に前記担体を浸漬することにより前記担体の表面に前記CuFe多核錯体を担持する場合には、1〜10atmの圧力、前記錯体含有液の溶媒の融点以上沸点以下(より好ましくは10〜100℃程度、特に好ましくは10〜30℃程度)の温度の条件下で0.5〜24時間程度撹拌することが好ましい。前記担体の表面に前記CuFe多核錯体を担持する際の圧力や温度の条件が前記下限未満では担持効率が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると余剰な撹拌を続けることにより製造コストが増加する傾向にある。
また、前記担体に前記CuFe多核錯体を担持した後に焼成する方法としては、200〜800℃(更に好ましくは300〜600℃)の温度条件で1〜5時間程度焼成する方法を採用することが好ましい。このような焼成温度及び時間が前記下限未満では、配位子を効率よく且つ十分に除去することが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、担体上で配位子を分解する際に隣接した錯体中の金属原子同士が凝集し易くなる傾向にある。
このような本発明の排ガス浄化用触媒の製造方法によれば、担体に、粒子径が0.5〜1.5nmのCuFe複合クラスターを効率よく担持することが可能となり、上記本発明の排ガス浄化用触媒を効率よく製造することが可能となる。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(調製例1:CuFe錯体の調製)
ブッヒグラスウスター社製のオートクレーブを用いて、以下のようにしてCuFe(CO)12・[N(CH]を形成した。すなわち、先ず、アルゴン(Ar)雰囲気下において、NaFe(CO)錯体(和光純薬工業株式会社製:NaFe(CO)・1.5−ジオキサン:0.99g)と、CuBr(ALDRICHの商品名「Copper(I) bromide」:0.41g)とをテトラヒドロフラン(THF:和光純薬工業株式会社製、誘電率:7.58)に溶かし、室温(25℃)で6時間撹拌を行って、CuとFeを3原子ずつ含むCuFe(CO)12錯体のNa塩を生成し、該塩を含有するTHF溶液を得た。このようなCuFe(CO)12錯体のNa塩を得る工程の化学反応式は、下記式(1):
3Na2Fe(CO)4+3CuBr→Na3Cu3Fe3(CO)12+3NaBr (1)
で表される。
次いで、このようにして得られたTHF溶液に塩化テトラメチルアンモニウム(和光純薬工業株式会社製:[N(CH]Cl)を加え、室温(25℃)で16時間撹拌して、THF中においてCuFe(CO)12錯体の[N(CH]塩を生成し、CuFe(CO)12の[N(CH]塩を含有するTHF溶液を得た。このようなCuFe(CO)12の[N(CH]塩を生成する工程の化学反応式は下記式(2):
Na3Cu3Fe3(CO)12+3[N(CH3)4]Cl→Cu3Fe3(CO)12・[N(CH3)4]3+3NaCl (2)
で表される。次に、このようにして得られたCuFe(CO)12の[N(CH]塩を含有するTHF溶液を、圧力:10Pa以下、室温(25℃)、12時間の条件で真空乾燥し、得られた乾燥物をアセトンにより抽出し、濃縮した後、再度、圧力:10Pa以下、室温(25℃)、12時間の条件で真空乾燥することにより、不純物を除去し、CuFe(CO)12・[N(CHを精製した。このようにしてCuFe錯体(CuFe(CO)12・[N(CH)の単結晶を得た。
[調製例1で得られた錯体の特性の評価]
〈単結晶X線構造解析〉
調製例1で得られたCuFe錯体の単結晶に対して、以下のようにして、単結晶X線構造解析の測定装置(リガク社製の商品名「Saturn CCD単結晶X線構造解析装置」)を用いて単結晶X線構造解析を行った。すなわち、先ず、保護媒体として流動パラフィンを用い、調製例1で得られたCuFe錯体の単結晶の表面を流動パラフィンで保護した試料を準備した後、前記試料を前記測定装置にマウントして、該装置を用いて−100℃において単結晶X線構造解析を行った。また、使用した単結晶は縦0.1mm、横0.1mm、厚み0.05mmのブロック形状のものであり、結晶の色は黄色であった。なお、このような単結晶X線構造解析には結晶構造の解析のソフトウェアとしてSHELX97を用い且つ直接法を採用した(SHELX97直接法)。このような解析により得られた結果として、調製例1で得られたCuFe錯体の結晶学的データを表1に示し、前記CuFe錯体の分子構造を表すORTEP図を図2に示し、前記CuFe錯体の集積構造を表すパッキング図(Packing図)を図3に示す。
表1及び図2に示す結果からも明らかなように、調製例1で得られたCuFe多核錯体は、錯体がCuとFeの原子間において結合を有する式:CuFeで表される6核構造を有するものであることが確認された。また、図2に示す結果からも明らかなように、調製例1で得られたCuFe錯体は、カウンターカチオンとして「N(CH」が3分子存在していることが確認され、溶媒分子は存在していないことが確認された。また、図3に示すPacking図からも明らかなように、CuFeを核に有する調製例1で得られたCuFe多核錯体の分子間には、カウンターカチオンが存在していることが分かった。また、図3に示す結果から、CuFe多核錯体の分子間にカウンターカチオンである「N(CH」の4分子がインターカレーションすることで電荷のバランスが保たれているものと本発明者らは推察する。また、このようにカウンターカチオンにより錯体分子間の電荷のバランスが保たれていることから、調製例1で得られたCuFe多核錯体の分子間には相互作用がほとんどないものと本発明者らは推察する。更に、図2及び図3に示す結果からも明らかなように、CuFe多核錯体のCuFe核の周りに、常にN(CH分子が存在するため、CuFe多核錯体を担体に担持する際においても錯体の周囲にカウンターカチオンが存在し、CuFe核の凝集が抑制されることも分かる。
〈質量分析(MALDI−MS)〉
調製例1で得られたCuFe錯体を用いて、質量分析(MALDI−MS:Matrix−Assisted Laser Desorption/Ionization Mass Spectrometry分析)を行った。なお、このような質量分析には、測定装置としてBruker Daltonics社製の質量分析装置(商品名「Autoflex」)を利用し、測定条件としてレーザー波長:337nm(窒素ガスレーザー)、加速電圧:19kVの条件を採用し、マトリックスとして2−[(E)−3−(4−tert−ブチルフェニル)−2−メチル−2−プロペニリデン]マロノニトリルを用いた。また、このような質量分析には、THF中に、調製例1で得られたCuFe錯体を極少量とマトリックス(DCTB)とを含有する溶液を測定用の試料として用いた。このような質量分析(MALDI−MS)の結果として得られたマススペクトルの実測データのグラフを図4〜6に示す。なお、図4は質量電荷比(m/zの値)が600〜1500の範囲のマススペクトルを示し、図5は、図4に示すマススペクトルの質量電荷比(m/zの値)が1105〜1135の範囲にあるスペクトルの拡大図を示し、図6は、図4に示すマススペクトルの質量電荷比(m/zの値)が1300〜1325の範囲にあるスペクトルの拡大図を示す。また、参照のために、式:CuFe(CO)12で表される錯体の理論上のマススペクトル(計算値)のグラフを図7に示す。
図4〜7に示すデータから明らかなように、図4〜6において得られた実測データ(スペクトル)と、図7に示すCuFe(CO)12で表される錯体の理論スペクトル(計算値)とを比較すると、実測データに示すスペクトルのパターンがCuが3原子、Feが3原子から成る構成される分子の理論スペクトルの同位体パターンとよく似ていることから、測定用の試料中においてもCuが3原子、Feが3原子から成る6核錯体として存在していることが分かった。すなわち、このような結果から、調製例1で得られたCuFe錯体は、THFを溶媒とした溶液中においても、核にCuFeで表される分子を有する6核錯体として存在することが確認された。そのため、THFのような有機溶媒中に調製例1で得られたCuFe多核錯体(CuFe(CO)12・[N(CH)を含有させた錯体含有液を用いて担体に錯体を担持する場合には、溶媒中において、核を形成する分子の構造(CuFeで表される分子の構造)が十分に維持された状態となっているため、その構造(CuFeの構造)を十分に維持したまま、担体に錯体を担持できることが分かる。
(実施例1)
先ず、調製例1で得られたCuFe多核錯体(CuFe(CO)12・[N(CH)を用いて、γ−Al(住友化学株式会社製の商品名「AKP−G015」、比表面積:150m/g、平均粒子径:>100nm)からなる担体に、銅と鉄の複合体を担持することにより、排ガス浄化用触媒を得た。すなわち、先ず、アルゴン雰囲気下において、調製例1で得られたCuFe多核錯体303mgをTHF(1000mL、誘電率:7.58)に溶解して錯体含有液を得た。次に、Ar雰囲気下において、前記錯体含有液に前記γ−Alを10g添加し、30℃の温度条件で12時間撹拌した。次いで、かかる撹拌後の錯体含有液から、固形分をろ過により取り出し、大気中、500℃の温度条件で3時間焼成することにより、排ガス浄化用触媒を得た。なお、得られた排ガス浄化用触媒は、冷間静水圧法(CIP:1000kg/cm)で成形した後に直径0.5〜1mmのペレットに粉砕して、ペレット状の触媒とした。
(実施例2)
錯体含有液を得る際にCuFe多核錯体の使用量を303mgから606mgに変更した以外は、実施例1と同様にして、排ガス浄化用触媒(ペレット状の触媒)を得た。
(比較例1)
硝酸銅(和光純薬工業社製の商品名「Copper(II) Nitrate Trihydrate」)220mg及び硝酸鉄(和光純薬工業社製の商品名「Iron(III) Nitrate Nonahydrate」)261mgをイオン交換水(1L)に溶解させて、銅及び鉄の塩の含有溶液を得た。次に、前記銅及び鉄の塩の含有溶液に、γ−Al(住友化学株式会社製の商品名「AKP−G015」、比表面積:150m/g、平均粒子径:>100nm)を10g添加し、大気中、100℃条件下において12時間加熱撹拌して蒸発乾固することにより固形分を得た。その後、前記固形分を、大気中、300℃の温度条件で3時間焼成することにより、γ−Alに鉄と銅を担持した比較のための排ガス浄化用触媒を得た。なお、このようにして得られた比較のための排ガス浄化用触媒は、冷間静水圧法(CIP:1000kg/cm)成形した後に直径0.5〜1mmのペレットに粉砕して、ペレット状の触媒とした。
(比較例2)
硝酸鉄を使用しなかった以外は比較例1と同様にして、γ−Alに銅を担持した比較のための排ガス浄化用触媒(ペレット状の触媒)を得た。
(比較例3)
硝酸銅を使用しなかった以外は比較例1と同様にして、γ−Alに鉄を担持した比較のための排ガス浄化用触媒(ペレット状の触媒)を得た。
(比較例4)
硝酸銅の使用量を220mgから525mgに変更し且つ硝酸鉄の使用量を261mgから557mgに変更した以外は比較例1と同様にして、γ−Alに鉄と銅を担持した比較のための排ガス浄化用触媒(ペレット状の触媒)を得た。
(比較例5)
硝酸鉄を使用せず且つ硝酸銅の使用量を220mgから525mgに変更した以外は比較例1と同様にして、γ−Alに銅を担持した比較のための排ガス浄化用触媒(ペレット状の触媒)を得た。
(比較例6)
硝酸銅を使用せず且つ硝酸鉄の使用量を261mgから557mgに変更した以外は比較例1と同様にして、γ−Alに銅を担持した比較のための排ガス浄化用触媒(ペレット状の触媒)を得た。
[実施例1〜2及び比較例1〜6で得られた触媒の特性の評価]
〈ICP分析〉
実施例1〜2及び比較例1〜6で得られた各排ガス浄化用触媒をそれぞれ用いて、ICP(Inductively Coupled Plasma)分析を行い、各触媒における銅と鉄の担持量をそれぞれ測定した。このようなICP分析には、ICP分析装置としてリガク社製の商品名「CIROS 120EOP」を用いた。また、測定試料としては、触媒0.2gを王水([HNO]:[HCl]=1:3(体積比))中に添加して分解した後、その分解液に更に硫酸水溶液を添加し、触媒を完全に溶解して得られた溶解液を用いた。また、銅と鉄の担持量の測定に際しては、先ず、前記ICP分析装置を用いて、アルゴンプラズマ中に前記測定試料を導入して、CuとFeの発光スペクトル強度を測定した。次いで、得られた発光スペクトルに基いて、検量線法によりCuとFeの定量を行い、CuとFeの濃度を求めて銅と鉄の担持量を算出した。なお、測定波長はCu:324.754nm、Fe:259.941nmとした。このようなICP分析結果に基いて求められた各触媒中の銅の担持量(wt%)と鉄の担持量(wt%)をそれぞれ表2に示す。なお、各実施例及び各比較例で得られた排ガス浄化用触媒の構成が明確となるように、各触媒を形成するために用いた担体の種類やその担体に銅と鉄と担持するために用いた溶液の種類等も併せて表2に示す。
このようなICP分析の結果から、各触媒中のCuとFeの担持量は、用いた金属錯体及び金属塩の種類に拘わらず、担持溶液中へのCuとFeの仕込み量に比例しており、担体にCuとFeを担持するために用いた金属錯体又は金属塩が担体にほぼ100%の割合で担持されて、担体にCuとFeが担持されたことが分かった。
〈実施例1〜2及び比較例4で得られた触媒の走査透過型電子顕微鏡(Cs−STEM)による測定〉
実施例1〜2及び比較例4で得られた排ガス浄化用触媒の粉末を、それぞれX線分析のために球面収差補正装置付走査透過型電子顕微鏡(日本電子製の商品名「JEM−2100F」)により測定し、担持物の担持状態を確認するとともに、上記装置に付属のEDS(エネルギー分散型X線分光分析:X線解析のために日本電子製の商品名「EX−24063JGT」を利用)を行った。なお、測定試料としては、各触媒をそれぞれ大気中、300℃で3時間焼成したものを利用した。測定条件を以下に示す。
〔測定条件〕
装置 :JEM−2100F(日本電子製)
加速電圧 :200kV
格子分解能(格子像) :0.1nm
点分解能(粒子像) :0.19nm
STEM分解能 :0.2nm
倍率(STEM) :〜150000000倍(適宜倍率を変更して測定)
電子銃 :熱陰極電界放出形
X線検出立体角 :0.24sr(単位:srはステラジアンを示す。球の半径の平方に等しい面積の球面上の部分の中心に対する立体角)。
このような測定により得られた実施例1で得られた排ガス浄化用触媒の走査透過型電子顕微鏡(STEM)写真を図8に示し、実施例2で得られた排ガス浄化用触媒の走査透過型電子顕微鏡(STEM)写真を図9〜10に示し、比較例1で得られた排ガス浄化用触媒の走査透過型電子顕微鏡(STEM)写真を図11に示す。なお、図中、白い線で囲った領域はCuFe複合クラスター又は凝集物が確認される領域である。
また、実施例2で得られた排ガス浄化用触媒のEDS分析結果を図12〜18に示す。すなわち、EDS分析に用いた実施例2で得られた排ガス浄化用触媒の試料の走査透過型電子顕微鏡(STEM)写真を図12に示し、前記試料のアルミニウム(Al)のマッピングデータを示すX線写真を図13に示し、前記試料の鉄(Fe)のマッピングデータを示すX線写真を図14に示し、前記試料の銅(Cu)のマッピングデータを示すX線写真を図15に示し、元素分析結果としてのEDSスペクトルのグラフを図16に示す。なお、図16にスペクトルのピークP1はFeのピーク(FeKa)を示し、ピークP2はCuのピーク(CuKa)を示す。更に、実施例2で得られた排ガス浄化用触媒の走査透過型電子顕微鏡(STEM)写真を図17に示し、図17に示す排ガス浄化用触媒上の任意の4点(001〜004)のEDSスペクトルのグラフをまとめて図18に示す。なお、図18(a)〜(d)がそれぞれ点001〜004のEDSスペクトルを示し、ピークP3はFeのピーク(FeKa)を示し、ピークP4はCuのピーク(CuKa)を示す。
図8に示す結果からも明らかなように、実施例1で得られた排ガス浄化用触媒においては、アルミナ(担体)に粒子径が0.5〜1.5nmの鉄と銅の複合クラスター(CuFe複合クラスター)が担持されていることが確認された(なお、図8中、CuFe複合クラスターとして確認された粒子は最大のもので粒子径が1nmのものであった。)。また、このような走査透過型電子顕微鏡において任意の縦10nm、横10nmの領域を測定して、粒子径が0.5〜1.5nmのCuFe複合クラスターとして担持されている銅の原子と鉄の原子の割合を求めたところ、実施例1で得られた排ガス浄化用触媒においては、前記領域中において担体に担持されている銅の原子と鉄の原子の総数に対して70at%が、粒子径が0.5〜1.5nmのCuFe複合クラスターとして担持されていることが確認された。また、このような走査透過型電子顕微鏡測定において任意の縦10nm、横10nmの領域を測定して、実施例1で得られた排ガス浄化用触媒の「CuFe複合クラスターと隣接する鉄と銅の複合体との間の平均距離(以下、各実施例及び比較例においては5個のクラスターから見た場合における、隣接する複合体(クラスターである場合も含む。)との間の距離の平均値とする。)」を確認したところ、かかる平均距離は0.5nmであった。更に、前記領域に存在する粒子径が0.5〜1.5nmの担持物(CuFe複合クラスター)はいずれも、金属原子の総数が6〜12個のクラスターであることが分かった。また、このような走査透過型電子顕微鏡測定より、任意の10個の担持物の粒子径のデータを求め、かかるデータに基づいて平均粒子径を求めたところ、担持物の平均粒子径は1.0nmであった。
また、図9〜10に示す結果からも明らかなように、実施例2で得られた排ガス浄化用触媒においては、アルミナ(担体)に粒子径が0.5〜1.5nmの鉄と銅の複合クラスター(CuFe複合クラスター)が担持されていることが確認された(図9及び図10中、CuFe複合クラスターとして確認された粒子は最大のもので粒子径が1.5nmであった。)。更に、このような走査透過型電子顕微鏡測定において任意の縦10nm、横10nmの領域を測定して、粒子径が0.5〜1.5nmのCuFe複合クラスターとして担持されている銅の原子と鉄の原子の割合を求めたところ、実施例2で得られた排ガス浄化用触媒においては、前記領域中において担体に担持されている銅の原子と鉄の原子の総数に対して70at%が、粒子径が0.5〜1.5nmのCuFe複合クラスターとして担持されていることが確認された。また、このような走査透過型電子顕微鏡測定において任意の縦10nm、横10nmの領域を測定して、実施例2で得られた排ガス浄化用触媒の「CuFe複合クラスターと隣接する鉄と銅の複合体との間の平均距離」を確認したところ、かかる平均距離は4nmであった。更に、前記領域に存在する粒子径が0.5〜1.5nmの担持物(CuFe複合クラスター)はいずれも、金属原子の総数が6〜24個のクラスターであることが分かった。また、このような走査透過型電子顕微鏡測定より、任意の10個の担持物の粒子径のデータを求め、かかるデータに基づいて平均粒子径を求めたところ、担持物の平均粒子径は1.3nmであった。
一方、図11に示す結果からも明らかなように、図11に示す担体への担持物(図中、白い線に囲まれた領域に存在する担持物)は粒子径が4nmとなっており、担体に多数の金属原子が凝集した凝集物が担持されていることが確認された。また、比較例4で得られた排ガス浄化用触媒においては、任意の縦10nm、横10nmの領域の測定において、担体上に担持されている担持物として粒子径が0.5〜1.5nmの粒子を確認することはできず、粒子径が0.5〜1.5nmのCuFe複合クラスターとして担持されている銅の原子と鉄の原子の割合は0at%であった。このような走査透過型電子顕微鏡測定より、任意の10個の担持物の粒子径のデータを求め、かかるデータに基づいて平均粒子径を求めたところ、比較例4で得られた排ガス浄化用触媒においては、担持物の平均粒子径は4nmであった。なお、このような走査透過型電子顕微鏡測定より、比較例4で得られた排ガス浄化用触媒においては担持物のサイズの均一性は低く(サイズがまちまちであり)、決まったサイズのクラスターは確認できなかった。
また、図12〜18に示す結果からも明らかなように、本発明の排ガス浄化用触媒の製造方法を採用して得られた本発明の排ガス浄化用触媒(実施例2)においては、銅の原子及び鉄の原子が、偏ることなく十分に分散してアルミナ担体状に担持されていることが確認されるとともに、任意の4点のEDSスペクトルにおいてもCuとFeの強度がほぼ等しく偏りがないことから、担体に担持されているクラスターがCuとFeの複合物であることが確認された。なお、実施例1で得られた排ガス浄化用触媒においても同様に任意の4点のEDSスペクトルを測定した結果、やはりもCuとFeの強度がほぼ等しく偏りが見られなかった。このようなEDS分析の結果から、走査透過型電子顕微鏡測定より確認された実施例1〜2で得られた排ガス浄化用触媒の担体に担持されているクラスターがCuとFeの複合物からなり、図8〜10のSTEM像に示すような担持物(クラスター)がCuFe複合クラスターであることが分かる。
このような走査透過型電子顕微鏡による測定の結果やEDS分析やICP分析の結果等からも明らかなように、本発明の排ガス浄化用触媒の製造方法(実施例1〜2)を採用して得られた触媒においては、いずれも、微細なクラスターの状態で銅と鉄とを担持できることが確認され、CuFe多核錯体を用いて担体上に銅と鉄を担持することにより、銅と鉄とを微細なCuFe複合クラスターとして均一に担持できることが分かる。一方、比較例4で採用している従来の塩を利用した担持方法では、担体上に銅と鉄を担持しても微細なクラスターの状態で銅と鉄を担持することはできないことが確認された。特に、銅と鉄の担持量が同じ量となっている実施例2で得られた触媒と比較例4で得られた触媒とを比較(特に図9〜10と図11とを比較)すれば、実施例2で得られた排ガス浄化用触媒においては担持物の凝集が十分に抑制されていることが明らかである。以上のような結果から、本発明の排ガス浄化用触媒の製造方法(実施例1〜2)によれば、用いたCuFe多核錯体の核を形成するクラスター分子の構造を十分に維持したまま、担体の銅と鉄を担持でき、焼成工程において凝集が十分に抑制されていることが分かる。なお、このような結果は、CuFe多核錯体を利用して銅と鉄を担持することにより、配位子を分解しても錯体の核を形成するクラスター分子の飛散等が抑制され、核を形成する分子の状態を十分に維持したまま、担体に銅と鉄を担持されるためであると本発明者らは推察する。
〈CO、C、NOの浄化性能の評価試験(I)〉
実施例1及び比較例1〜3で得られた排ガス浄化用触媒(ペレット状の触媒)を用いて、空燃比(λ:A/F)が0.96〜1.04の範囲にある場合の実施例1及び比較例1〜3で得られた排ガス浄化用触媒のCO、C、NOの浄化性能を評価した。すなわち、先ず、触媒1.5gを常圧固定床流通型反応装置(ベスト測器製)に設置した。次に、前記触媒に対して、CO(0.45容量%)、H(0容量%)、NO(0.12容量%)、C(0.146容量%C(炭素換算による濃度))、O(1.213容量%)、CO(8.0容量%)、HO(5.0容量%)及びN(残部)からなる混合ガスを7L/minのガス流量で供給しながら、前記混合ガス中の一酸化炭素(CO)、プロピレン(C)及び酸素濃度(O)の濃度を変更していき、空燃比(λ)が0.96(ガス中のCO濃度:1.5容量%、C濃度:0.185容量%C、O濃度:0.406容量%)〜1.04(ガス中のCO濃度:0.45容量%、C濃度:0.146容量%C、O濃度:1.213容量%)の範囲の値となった時の触媒への入りガス(触媒に接触する前のガス)中のCO、C、NOの濃度と、触媒からの出ガス(触媒に接触した後のガス)中のCO、C、NOの濃度をそれぞれ測定して、入りガス温度:500℃の条件において、空燃比(λ:A/F)が0.96〜1.04の範囲にある場合の各触媒のCO、C、NOの転化率を測定した。なお、空燃比(λ)が1.00の時の前記ガス中のCO、C及びOの濃度は、CO濃度:0.6998容量%、C濃度:0.16容量%C、O濃度:0.646容量%であった。得られた結果を図19(CO転化率)、図20(C転化率)、図21(NO転化率)に示す。
図19〜21に示す結果からも明らかなように、実施例1で得られた排ガス浄化用触媒は、空燃比(λ)が0.96〜1.04の範囲にある場合、比較例1〜3で得られた排ガス浄化用触媒と比較してCOとCの転化率が常に高い値を示しており、COとCの浄化性能が十分に高いことが確認された。また、実施例1で得られた排ガス浄化用触媒はストイキからリッチよりの空燃比(λが0.98〜1の間にあるような空燃比)においてNOの浄化性能が十分に高度なものとなっていることが確認された。このように、ストイキ近傍の雰囲気においてNOの転化率が非常に高いものとなっていることから、実施例1で得られた排ガス浄化用触媒は比較例1〜3で得られた排ガス浄化用触媒と比較して、ストイキ条件で利用される、いわゆる三元触媒として性能が十分に高いものであることが分かった。このような結果から、実施例1で得られた排ガス浄化用触媒は、比較例1〜3で得られた排ガス浄化用触媒と比較して、COとCとNOとを十分に高い水準でバランスよく浄化でき、実用性の高い触媒であることが確認された。
〈NOの浄化性能の評価試験(II)〉
実施例1及び比較例1〜3で得られた排ガス浄化用触媒(ペレット状の触媒)をそれぞれ用いて、各触媒のNOの浄化性能を評価した。すなわち、先ず、触媒1.5gを常圧固定床流通型反応装置(ベスト測器製)に設置した。次に、前記触媒に対して、CO(0.6998容量%)、H(0容量%)、NO(0.12容量%)、C(0.16容量%C(炭素換算による濃度))、O(0.646容量%)、CO(8.0容量%)、HO(5.0容量%)及びN(残部)からなるストイキガスを7L/minのガス流量で供給し、触媒入りガス温度が200℃となるように調整した。その後、触媒入りガス温度を15℃/minの昇温速度で700℃まで昇温し、ガス温度200℃〜600℃の間において、触媒への入りガス及び触媒からの出ガス中のNO濃度をそれぞれ測定し、触媒入りガス及び触媒出ガスにおけるそれぞれの測定値の差から、各排ガス浄化用触媒のNO転化率を算出した。得られた結果として、NO転化率曲線を図22に示す。
図22に示す結果からも明らかなように、本発明の排ガス浄化用触媒(実施例1)においてはNOの30%転化温度(昇温過程においてNOの転化率が30%に到達する温度)が440℃であり、比較のための排ガス浄化用触媒(比較例1〜3)においてはそのうちの最も性能の高いものにおいても、NOの30%転化温度が490℃であった。また、本発明の排ガス浄化用触媒(実施例1)においては、460℃以上の温度領域において、比較のための排ガス浄化用触媒(比較例1〜3)と比較して、比較触媒では達成できないより高度な触媒活性が得られていることが分かった。このように、本発明の排ガス浄化用触媒(実施例1)は、NOに対する十分な触媒活性を有するものであることが確認された。
以上のような結果から、本発明の排ガス浄化用触媒(実施例1)は、比較のための排ガス浄化用触媒(比較例1〜3)と比較して、排ガス中のCO、NO、Cを、より高度な水準でバランスよく浄化できることが確認された。
以上説明したように、本発明によれば、銅と鉄とを活性成分として利用しながら十分に高度な触媒活性を発揮することが可能な排ガス浄化用触媒並びにその触媒を効率よく確実に製造することが可能な排ガス浄化用触媒の製造方法を提供することが可能となる。
したがって、本発明の排ガス浄化用触媒は、例えば、自動車からの排ガス中に含まれるCO、NO、Cを浄化するための触媒等として有用である。
10…担体、11…錯体、11a…鉄原子、11b…銅原子、12…複合クラスター、M…金属原子、L…配位子。

Claims (7)

  1. 担体及び前記担体に担持された銅と鉄の複合体を備えており、且つ、
    前記複合体のうちの少なくとも一部が、粒子径が0.5〜1.5nmのCuFe複合クラスターであることを特徴とする排ガス浄化用触媒。
  2. 前記担体に前記複合体として担持されている銅と鉄の総原子数の50at%以上が、前記CuFe複合クラスターを形成していることを特徴とする請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。
  3. 前記CuFe複合クラスターが、錯体の核に銅原子と鉄原子とを含むCuFe多核錯体を用いることにより前記担体に担持されたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の排ガス浄化用触媒。
  4. 錯体の核に銅原子と鉄原子とを含むCuFe多核錯体を含有する錯体含有液を担体に接触せしめ、前記担体に前記CuFe多核錯体を担持し、焼成することにより、請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒を得ることを特徴とする排ガス浄化用触媒の製造方法。
  5. 前記CuFe多核錯体が、錯体の核にCuFe、CuFe及びCuFeからなる群から選択される1種を備えるCuFe多核錯体であることを特徴とする請求項4に記載の排ガス浄化用触媒の製造方法。
  6. 前記CuFe多核錯体が、配位子としてカルボニル配位子を備え且つカウンターカチオンとしてテトラメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラプロピルアンモニウムイオン及びテトラブチルアンモニウムイオンからなる群から選択される少なくとも1種のイオンを備えるものであることを特徴とする請求項4又は5に記載の排ガス浄化用触媒の製造方法。
  7. 前記錯体含有液の溶媒が極性を有する有機溶媒であることを特徴とする請求項4〜6のうちのいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒の製造方法。

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