JP2013244424A - 高分子水処理膜の製造方法 - Google Patents

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俊洋 玉井
Yu Fukui
佑 福井
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Abstract

【課題】均質で、機械的強度及び透水性等に優れた高分子水処理膜を、簡便かつ容易な方法によって製造することができる高分子水処理膜の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】略単一素材の樹脂溶液を調製し、前記樹脂溶液を、吐出口を備えた金型から空気中に吐出し、その後、前記樹脂溶液を、前記非溶媒の水面に対して30°〜60°の範囲内で吐出し、外径が3.6〜10mm、SDR値が5.8〜34の自立構造であって、かつ100L/m2・hr・atm以上の純水透水量を有する中空糸膜を形成することを特徴とする高分子水処理膜の製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、高分子水処理膜の製造方法に関する。
従来から、例えば、河川水及び地下水の除濁、工業用水の清澄、排水及び汚水処理、海水淡水化の前処理等の水の精製のために、高分子水処理膜が利用されている。
このような高分子水処理膜は、通常、水処理装置において分離膜として利用されており、例えば、ポリスルホン(PS)系、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)系、ポリエチレン(PE)系、酢酸セルロース(CA)系、ポリアクリロニトリル(PAN)系、ポリビニルアルコール(PVA)系、ポリイミド(PI)系等の種々の高分子材料によって形成された、中空糸状の多孔質膜が利用されている。
このような種々の材料からなる中空糸状の多孔質膜を製造するために、二重管状の金型を利用して、中空部となる内側に非溶媒による凝固水を送り、かつ、外側に樹脂と溶媒とからなる樹脂溶液を送り、これら凝固水及び樹脂溶液とを凝固槽に浸漬させて相分離を行なう非溶媒誘起相分離法(NIPS法)が利用されている(例えば、特許文献1等)。
この方法では、樹脂溶液を空気中に吐出して、一旦空気に接触させ、樹脂溶液中の溶媒を蒸発させることによってスキン層を形成し、その後、重力により鉛直方向に落下させて凝固槽へ浸漬させ、樹脂成分を凝固させて成膜している。そして、得られた膜を、ローラーなどのガイドに沿わせることにより、異なる引き取り方向に移送し、最終的に引き取り方向を水平にし、切断している。
しかし、中空糸状の多孔質膜の口径が大きくなるにつれて、上記製膜方法における屈曲等によって、折れ、うねり、そり、偏肉等が発生する。また、巻き取りが困難となり、膜形状が扁平化するなど、均質な中空糸膜を製造することが極めて困難であり、その結果、上述した特性を十分に満足させる高分子水処理膜が得られないという課題もある。さらに、鉛直方向への吐出は水槽中で大きな曲げ半径をとって引き取らねばならないという制約が生じるという課題もある。
また、例えば、ポリフッ化ビニリデンを湿式紡糸するために、水平型の凝固槽を用い、樹脂溶液を横方向に吐出させる方法なども提案されている(特許文献2)。
しかし、樹脂溶液の横方向の吐出は、樹脂溶液の吐出直後の自重による垂れ下がりのために、硬化が開始した溶液と金型とが干渉することにより、高分子水処理膜の外表面または内面に傷が発生する可能性がある。
さらに、多孔質膜は緻密層を有するため分離特性は高いが、その純水透水性能を高くするためには、相分離を早める必要がある。そして、相分離を早めるためには、成膜原液の樹脂濃度を低くする必要がある。
一方、多孔質膜の成膜時の樹脂濃度が低くなると、得られる多孔質膜に十分な強度が得られないというトレードオフの関係がある。
特開2010−82509号公報 特開平4−343707号公報
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、均質で、機械的強度及び透水性等に優れた高分子水処理膜を、簡便かつ容易な方法によって製造することができる高分子水処理膜の製造方法を提供することを目的とする。
本発明を以下に示す。
〔1〕略単一素材の樹脂溶液を調製し、
前記樹脂溶液を、吐出口を備えた金型から空気中に吐出し、
その後、前記樹脂溶液を、前記非溶媒の水面に対して30°〜60°の範囲内で吐出し、
外径が3.6〜10mm、SDR値が5.8〜34の自立構造であって、かつ100L/m2・hr・atm以上の純水透水量を有する中空糸膜を形成することを特徴とする高分子水処理膜の製造方法。
〔2〕前記樹脂溶液の空気中への吐出を鉛直方向に行う〔2〕に記載の高分子水処理膜の製造方法。
〔3〕前記樹脂溶液を空気中で吐出した状態から、前記吐出口を、前記非溶媒を含む凝固槽内に浸漬して、前記樹脂溶液を、該凝固槽内で、前記非溶媒の水面に対して30°〜60°の範囲内で吐出して凝固させる〔1〕に記載の高分子水処理膜。
〔4〕前記樹脂溶液を、前記非溶媒を含む凝固槽の水面に対して伏角30°〜60°の範囲内で前記吐出口から空気中で吐出し、空気中を通過させて前記凝固槽に進入させて凝固させる〔1〕又は〔2〕に記載の高分子水処理膜の製造方法。
〔5〕前記樹脂溶液は、15重量%以上の塩化ビニル系樹脂を含有する〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載の高分子水処理膜の製造方法。
〔6〕前記塩化ビニル系樹脂の重合度が250〜3000である〔5〕に記載の高分子水処理膜の製造方法。
〔7〕前記塩化ビニル系樹脂が、56.7〜73.2%塩素含有率の塩化ビニル系樹脂である〔5〕又は〔6〕に記載の高分子水処理膜の製造方法。
〔8〕前記塩化ビニル系樹脂における塩化ビニル系モノマー単位の質量比が50〜99質量%である〔5〕〜〔7〕のいずれか1項に記載の高分子水処理膜の製造方法。
本発明の高分子水処理膜の製造方法によれば、均質で、機械的強度及び透水性等に優れた高分子水処理膜を、簡便かつ容易な方法によって製造することが可能となる。
本発明の高分子水処理膜の製造方法における樹脂溶液の吐出状態を説明するための凝固槽付近の概略断面図である。 本発明の高分子水処理膜の製造方法における別の樹脂溶液の吐出状態を説明するための凝固槽付近の概略断面図である。
本発明の高分子水処理膜の製造方法は、相分離法、特に非溶媒誘起相分離法を利用する方法である。
本発明における高分子水処理膜の製造方法は、(a)樹脂溶液を調製し、(b)樹脂溶液を非溶媒中に吐出して凝固させる工程を含む。
(a)樹脂溶液の調製
本発明で使用される樹脂溶液は、略単一素材の樹脂を含むものであればどのような材料を用いてもよい。
ここで、略単一とは、実質的に単一、つまり、主要構成素材が1種であることを意味する。例えば、高分子水処理膜を形成する樹脂として、1種の樹脂が50質量%以上(好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上)を占めていることを意味し、その1種の樹脂の性質が構成素材の性質を支配していることをも意味する。具体的には、1種の樹脂が50〜99質量%を有する素材を意味する。
なお、単一の素材及び単一の主要構成素材には、樹脂の製造の際又は後述する中空糸膜の製造の際に通常用いられる添加剤は含まれないことを意図している。
略単一素材としては、当該分野において一般的に使用される材料/素材を用いることができ、例えば、ポリスルホン(PS)系、ポリエーテルサルホン(PES)系、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)系、ポリエチレン(PE)系、酢酸セルロース(CA)系、ポリアクリロニトリル(PAN)系、ポリビニルアルコール(PVA)系、ポリイミド(PI)系、ポリ塩化ビニル系、セルロース系(セルロースアセテート(CA)、セルロースアセテートプチレート等)等の種々の高分子材料が挙げられる。なかでも、塩化ビニル系樹脂であることが好ましい。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
塩化ビニル系樹脂としては、塩化ビニル単独重合体(塩化ビニルホモポリマー)、共重合可能な不飽和結合を有するモノマーと塩化ビニルモノマーとの共重合体、重合体に塩化ビニルモノマーをグラフト共重合したグラフト共重合体、これらの塩化ビニルモノマー単位が塩素化されたものからなる(共)重合体等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。特に、耐汚染性を向上するために、親水性モノマーが共重合されていることが適している。
塩化ビニルモノマー単位の塩素化は、重合前に行われていてもよいし、重合した後に行われていてもよい。
また、塩化ビニル(塩素化塩化ビニルを含む)の共重合体とする場合には、塩化ビニルモノマー(塩素化塩化ビニルを含む)単位以外のモノマー単位の含有率は、本来の性能を阻害しない範囲とし、塩化ビニルモノマー由来の単位(塩素化塩化ビニルモノマー由来の単位を含む)を50質量%以上、例えば、50〜99質量%含むことが好ましい(ここでの質量計算では、塩化ビニル系樹脂中には、可塑剤、当該共重合体樹脂にブレンドされるその他の重合体を含まない)。
塩化ビニル系樹脂には、別のモノマー又はポリマーがブレンドされていてもよい。特に、耐汚染性を向上するために、親水性モノマー含有共重合体又は親水化ポリマーをブレンドすることが好ましい。この場合、塩化ビニル系樹脂が、膜を構成する全樹脂に対して50質量%以上(好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上)で含有され、ブレンドされるモノマー又はポリマーは、全樹脂の50質量%未満であるが、40質量%未満であるか、30質量%未満であることが好ましく、実質的に含まれないものがより好ましい。
塩化ビニルモノマーと共重合可能な不飽和結合を有するモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、トルイル(メタ)アクリレート、キシリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシ(メタ)アクリレート、2−フェノキシ(メタ)アクリレート、3−メトキシプロピル(メタ)アクリレート、3−エトキシプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸誘導体;エチレン、プロピレン、ブチレン等のα−オレフィン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;ブチルビニルエーテル、セチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル類;塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニルビニル類;N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のN−置換マレイミド類、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、アクリロニトリル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。例えば、さらなる柔軟性や対汚染性、耐薬品性を付与するため、酢酸ビニル、アクリル酸エステル、エチレン、プロピレン、フッ化ビニリデンを共重合又はブレンドすることが適している。
塩化ビニルにグラフト共重合する重合体としては、塩化ビニルにグラフト重合させることができるものであれば特に限定されず、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−一酸化炭素共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−ブチルアクリレート−一酸化炭素共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリウレタン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
さらに、高分子膜を構成するモノマー材料として、架橋性モノマーを用いてもよい。架橋性モノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,2−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル類;
N−メチルアリルアクリルアミド、N−ビニルアクリルアミド、N,N'−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、ビスアクリルアミド酢酸等のアクリルアミド類;
ジビニルベンゼン、ジビニルエーテル、ジビニルエチレン尿素等のジビニル化合物;
ジアリルフタレート、ジアリルマレート、ジアリルアミン、トリアリルアミン、トリアリルアンモニウム塩、ペンタエリスリトールのアリルエーテル化体、分子中に少なくとも2個のアリルエーテル単位を有するスクローゼのアリルエーテル化体等のポリアリル化合物;
ビニル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート等の不飽和アルコールの(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
親水性モノマーとしては、例えば、
(1)アミノ基、アンモニウム基、ピリジル基、イミノ基、ベタイン構造等のカチオン性基含有ビニルモノマー及び/又はその塩(以下、「カチオン性モノマー」と記載することがある)、
(2)水酸基、アミド基、エステル構造、エーテル構造等の親水性の非イオン性基含有ビニルモノマー(以下、「非イオン性モノマー」と記載することがある)、
(3)カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等のアニオン性基含有ビニルモノマー及び/又はその塩(以下、「アニオン性モノマー」と記載することがある)
(4)その他のモノマー等が挙げられる。
具体的には、
(1)カチオン性モノマーとしては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジイソプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジイソブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジt−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジプロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジイソプロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジブチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジイソブチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジt−ブチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等の炭素数2〜44のジアルキルアミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル又は(メタ)アクリルアミド;
ジメチルアミノスチレン、ジメチルアミノメチルスチレン等の総炭素数2〜44ジアルキルアミノ基を有するスチレン;
2−又は4−ビニルピリジン等のビニルピリジン;
N−ビニルイミダゾール等のN−ビニル複素環化合物類;
アミノエチルビニルエーテル、ジメチルアミノエチルビニル等のビニルエーテル類;等のアミノ基を有するモノマーの酸中和物又はこれらのモノマーをハロゲン化アルキル(炭素数1〜22)、ハロゲン化ベンジル、アルキル(炭素数1〜18)もしくはアリール(炭素数6〜24)スルホン酸又は硫酸ジアルキル(総炭素数2〜8)等により4級化したもの;
ジメチルジアリルアンモニウムクロライド、ジエチルジアリルアンモニウムクロライド等のジアリル型4級アンモニウム塩、N−(3−スルホプロピル)−N−(メタ)アクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウムベタイン、N−(3−スルホプロピル)−N−(メタ)アクリロイルアミドプロピル−N,N−ジメチルアンモニウムベタイン、N−(3−カルボキシメチル)−N−(メタ)アクリロイルアミドプロピル−N,N−ジメチルアンモニウムベタイン、N−カルボキシメチル−N−(メタ)アクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウムベタイン等のベタイン構造を有するビニルモノマー等のモノマーが挙げられる。
これらのカチオン性基の中でも、アミノ基及びアンモニウム基含有モノマーが好ましい。
(2)非イオン性モノマーとしては、ビニルアルコール;
N−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド等のヒドロキシアルキル(炭素数1〜8)基を有する(メタ)アクリル酸エステル又は(メタ)アクリルアミド;
ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート(エチレングリコールの重合度が1〜30)等の多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリルアミド;
N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−イソブチル(メタ)アクリルアミド等のアルキル(炭素数1〜8)(メタ)アクリルアミド;
N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド等のジアルキル(総炭素数2〜8)(メタ)アクリルアミド;
ジアセトン(メタ)アクリルアミド;N−ビニルピロリドン等のN−ビニル環状アミド;
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート等のアルキル(炭素数1〜8)基を有する(メタ)アクリル酸エステル;
N−(メタ)アクロイルモルホリン等の環状アミド基を有する(メタ)アクリルアミドが例示される。
なかでも、ビニルアルコール、(メタ)アクリルアミド系モノマー及び上記のヒドロキシアルキル(炭素数1〜8)基を有する(メタ)アクリル酸エステル、上記の多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。
(3)アニオン性モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等の重合性の不飽和基を有するカルボン酸モノマー及び/又はその酸無水物(1つのモノマー中に2つ以上のカルボキシル基を有する場合);
スチレンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−アルキル(炭素数1〜4)プロパンスルホン酸等の重合性の不飽和基を有するスルホン酸モノマー;
ビニルホスホン酸、(メタ)アクリロイロキシアルキル(炭素数1〜4)リン酸等の重合性の不飽和基を有するリン酸モノマー等が例示される。
アニオン性基は、塩基性物質により任意の中和度に中和されてもよい。この場合、ポリマー中の全てのアニオン性基又はその一部のアニオン性基は、塩を生成する。ここで、塩における陽イオンとしては、アンモニウムイオン、総炭素数3〜54のトリアルキルアンモニウムイオン(例えば、トリメチルアンモニウムイオン、トリエチルアンモニウムイオン)、炭素数2〜4のヒドロキシアルキルアンモニウムイオン、総炭素数4〜8のジヒドロキシアルキルアンモニウムイオン、総炭素数6〜12のトリヒドロキシアルキルアンモニウムイオン、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン等が例示される。
中和は、モノマーを中和しても、ポリマーにしてから中和してもよい。
(4)上述したビニルモノマー以外、N−ビニル−2−ピロリドン、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート等の水素結合可能な活性部位を有するモノマーであってもよい。
上記塩化ビニル系樹脂の製造方法は、特に限定されず、従来公知の任意の重合方法を利用することができる。例えば、塊状重合方法、溶液重合方法、乳化重合方法、懸濁重合方法等が挙げられる。
塩素化の方法としては、特に限定されるものではなく、当該分野で公知の方法、例えば、特開平9−278826号公報、特開2006−328165号公報、国際公開WO/2008/62526号等に記載の方法を使用することができる。なお、塩化ビニル系樹脂の塩素含有率は、56.7〜73.2%であることが好ましい。また、塩素化塩化ビニル系樹脂としての塩素含有率は、58〜73.2%であるものが適しており、60〜73.2%であるものが好ましく、67〜71%であるものがより好ましい。
塩化ビニル系樹脂は、重合度が250〜3000程度であることが好ましく、500〜1300であることがより好ましい。重合度が低すぎると、紡糸する際の溶液粘度が低下し、製膜作業が困難となり、また、作成した水処理膜の強度が乏しくなる傾向がある。一方、重合度が高すぎると、粘度が高くなりすぎることに起因して、製膜された水処理膜に気泡の残留をもたらす傾向がある。ここでの重合度はJIS K 6720−2に準拠して測定した値を意味する。
重合度を上記の範囲に調整するためには、反応時間、反応温度等の当該分野において公知の条件を適宜調節することが好ましい。
樹脂溶液は、なかでも、ポリ塩化ビニル(ホモポリマー)、ポリ塩素化塩化ビニル(ホモポリマー)又は塩化ビニルと塩素化塩化ビニルとのコポリマーを単一素材として含有することが好ましい。
樹脂溶液には、成膜時における成形性、熱安定性等を向上させる目的で、添加剤、例えば、滑剤、熱安定剤、成膜助剤等がブレンドされていてもよい。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
滑剤としては、ステアリン酸、パラフィンワックス等が挙げられる。
熱安定剤としては、一般に塩化ビニル系樹脂の成形に用いられる錫系、鉛系、Ca/Zn系の各安定剤が挙げられる。
製膜助剤としては、各種重合度のポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン等の親水性高分子が挙げられる。
樹脂溶液とするために用いられる溶媒は、樹脂に対する良溶媒であれば特に限定されるものではなく、通常、樹脂を合成する際に利用した溶媒をそのまま利用することができる。
樹脂として塩化ビニル系樹脂を用いる場合には、例えば、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。これらは単独又は2種以上を混合して使用することができる。
樹脂溶液は、例えば、樹脂溶液の全重量に対して15重量%以上であることが好ましく、20〜40重量%が拠り好ましく、20〜30重量%がさらに好ましい。この範囲とすることにより、相分離を適度に早めることができるとともに、得られる高分子水処理膜において十分な強度を確保することができる。また、後述するような比較的大口径の中空糸膜を利用する高分子水処理膜として成膜する場合に、特に短期強度をも確保することができ、疲労強度を著しく向上させることができる。
また、別の観点から、例えば、500〜4000mPa・s程度の粘度とすることが適しており、1000〜3000mPa・s程度が好ましい。これにより、紡糸ライン中で水処理膜の外形の真円度を確保することができ、均一な太さ・膜厚の膜を製造することができる。
粘度は、例えば、樹脂溶液をサンプル管に直接導入し、振動式粘度計(セコニック(株)製、VM-100A-M)を使って測定した値とすることができる。
さらに別の観点から、後述する非溶媒との比重差を1.0以内に調製することが適しており、0.8以内が好ましく、さらに0.2以内がより好ましい。これにより、膜の引き取り中に、凝固槽内で膜自体が浮いたり又は沈んだり、扁平することを有効に防止することができる。
(b)樹脂溶液の凝固
樹脂溶液は、非溶媒中に吐出して凝固させることにより、高分子水処理膜として成形することができる。
樹脂溶液の非溶媒中への吐出は、通常、紡糸金型が利用される。紡糸金型には、吐出口が形成されており、その吐出口から樹脂溶液を吐出する。この紡糸金型は、通常、樹脂溶液を紡糸するために同心円状の2重ノズル形状となった吐出口を備えている。
また、非溶媒は、通常、凝固槽中に充填されており、樹脂溶液を非溶媒が充填された凝固槽中に吐出することにより、樹脂溶液が凝固し、高分子水処理膜を成形することができる。例えば、樹脂溶液を凝固させるために、図1及び図2に示すような凝固槽30が用いられる。
凝固槽30には、凝固槽30内に紡糸できるように、凝固槽の内又は外に、あるいは外から内に移動可能に、紡糸金型31の吐出口が配置されている。
例えば、吐出口(図示せず)を備えた紡糸金型31が、凝固槽30外部に、つまり、非溶媒の上方に配置されているものが挙げられる。
空気中での樹脂溶液の吐出は、特に限定されないが、例えば、鉛直方向(非溶媒の水面に対して90°(吐出後の膜の引取り方向))から非溶媒の水面に対して90°までの範囲で適宜調整することができる。なかでも、吐出開始時においては、鉛直方向に樹脂溶液を吐出することが好ましい。自重によって、樹脂溶液の全てが垂れ下がるため、硬化が開始した樹脂溶液が吐出口へ干渉することを防止することができる。
空気中に樹脂溶液を吐出した後、そのまま樹脂溶液を吐出した状態で、図1に示すように、金型の吐出口を非溶媒中に導入するとともに、その吐出角度を、吐出方向32aから32bの間、つまり、非溶媒の水面に対して30〜60°(α)に調節することが好ましい。
これにより、樹脂溶液は、非溶媒中で、所定角度で吐出及び凝固することとなる。よって、鉛直方向への吐出のように、凝固水槽中で大きなアールを取って引き取らねばならない制約を回避することができる。また、吐出溶液の吐出直後の自重による垂れ下がりを緩和することができるために、硬化開始した溶液による金型への干渉を有効に防止することができ、得られた中空糸膜の内面に傷が発生することを防止することができる。その結果、傷や歪がなく、均一な内外部の形状を有する中空糸膜を得ることができる。
あるいは、空気中に樹脂溶液を吐出した後、そのまま樹脂溶液を吐出した状態で、図2に示すように、空気中で、金型の吐出口の吐出角度(β)を、吐出方向32aから32bの間、つまり、非溶媒の水面に対して伏角30〜60°に調節してもよい。これにより、樹脂溶液は一旦空気中に吐出する。よって、吐出口から吐出された樹脂溶液は一旦空気中を通過し、次いで、凝固槽内に進入することになる。つまり、樹脂溶液は、まず、空気中で、その表面から溶媒が揮発することによりスキン層を適切に形成する。次いで、非溶媒中で、速やかに液−液相分離を開始させることができ、得られる中空糸膜は、多孔質で均一な表面を得ることができる。その結果、ろ過抵抗が低下することに起因してすぐれた透水量、向上した分画性能を発現させることができる。
このように、紡糸金型31からの樹脂溶液の吐出方向、つまり、吐出口から排出される樹脂溶液方向は、例えば、凝固槽30の水面に対して30°〜60°の間(図1中α、図2中β)となるように調整することにより、吐出直後の自重による樹脂溶液の過度の垂れ下がりが緩和され、硬化が開始した溶液と防止金型との干渉することによる硬化した膜の外表面または内面における傷の発生等を有効に防止することができる。
また、凝固槽中に金型を沈めた状態から樹脂溶液の吐出を開始することに比較して、吐出口先端に非溶媒に起因する吐出抵抗が付加されることがなく樹脂溶液の詰まりを回避することができ、その結果、得られる膜の変形を防止し、分画性能に優れたスキン層を得ることが可能となる。
このように、本発明では、高分子水処理膜の製造において、重要な要件である分画性能のコントロールと、形状安定化とを両立させることができる。
凝固槽に充填されている非溶媒としては、上述した樹脂溶液の種類により適宜選択することができるが、例えば、主成分が水であるものが好ましい。
凝固槽中の非溶媒は、樹脂溶液に直接接触するものであることから、吐出口から吐出される樹脂溶液の温度(又は紡糸金型)と、非溶媒の温度との差を、100℃程度以内とすることが好ましい。これにより、樹脂溶液の急激な温度低下およびそれに伴う樹脂溶液の粘度の急上昇による紡糸金型の吐出口近傍での詰まりを防止することができる。また、非溶媒の温度を一定に保つことにより、樹脂溶液の相分離挙動を安定に維持することができ、透水性能・強度などの性能を安定的に発現させることが可能となる。
成膜の際の膜の引き取りは、一般に直線方向に行うことが好ましいが、上述したように、吐出口が凝固槽内の非溶媒の水面に対して30°〜60°の範囲内であれば、樹脂溶液の吐出後に膜の引き取り方向を変化させてもよい。この引き取り方向の変化は、緩やかであることが好ましい。これにより、一定の速度及び均一な荷重を維持した引き取りが容易となり、膜構造の変形を最小限に留めることが可能となる。
膜の引き取り後の切断は、凝固槽内で行なっても、槽外で行なってもよい。特に、凝固槽外で膜を切断する場合には、切断は、凝固槽内の紡糸金型の吐出口の位置よりも高い切断位置で行うことが好ましい。これによって、サイフォン効果による吐出された膜の先端からの内部凝固液の流出を防止し、膜内部の内部凝固液の圧力変化を最小限に留めることができる。その結果、膜形状の扁平化、膜形状のバラつきを防止することができ、膜形状のより一層の安定化を発揮させることができる。この観点から、凝固槽内で切断する場合には、その切断する位置は特に限定されない。
本発明の製造方法によって得られる高分子水処理膜は、略単一素材による自立構造を有する中空糸膜からなる膜とすることができる。
ここで単層構造とは、単一の素材から形成されている一層構造であることを意味する。通常、強度が弱い素材は、より強度の強い素材(セラミック、不織布等)から形成される支持体との複合材料にしないと所望の形状、例えば、円筒形状、チューブ形状等を維持することができない。従って、従来の比較的大口径の水処理膜は、膜を形成する素材以外に、水処理膜としての使用時に、所望の形状を保持できるよう、膜を支持する構造体として、筒状のセラミック又は筒状に成形した不織布等を伴っていた。
一方、本発明の製造方法によって得られた高分子水処理膜は、中空糸膜のみから形成されており、筒状などの所望の形状を変化させないような、異なる材料/素材(例えば、不織布、紙、金属、セラミック等)から形成される支持体を伴わない。言い換えると、本発明の高分子水処理膜は、単層構造で形成されており、異なる材料/素材による積層構造を採らない。にもかかわらず、このような構造であっても、水処理膜としての使用時に円筒、チューブ形状等の所望の形状が保持されるほどに十分な強度を有し、すなわち「自立構造」を有している。従って、支持体レスで大口径膜を実現することができる。このため、逆洗時においても、ろ過機能を担当する膜部分が支持体から剥離することもなく、また、セラミック等の支持体を用いたチューブ形状膜等とは異なり、優れた透水性能を確保することができる。
本発明の製造方法で得られる高分子水処理膜は、例えば、その外径が3.6〜10mm程度、SDR値が5.8〜34程度の中空糸状の膜とすることができる。中空糸膜の強度は、通常、材料、内径、肉厚、真円度、内部構造等の種々の要因によって決定されるが、なかでも、SDR値(外径/肉厚の比)を用いることが有効である。従って、例えば、得られた高分子水処理膜への耐圧性0.3MPa以上を実現するためには、SDR34程度以下とするものが好ましい。一方、SDR値を低減させる設計にすることは、水処理モジュールにおける膜ろ過面積の低下につながる。よって、これらのバランスを図る観点から、SDRは3.6程度以上であることが好ましい。なかでも、4.0程度以上であることが好ましく、20程度以下であることが好ましく、16程度以下、11程度以下であることがより好ましい。特に、外径が5〜7mm程度の場合には、SDR値は4〜16程度とすることが好ましく、6.5〜11程度に設定することがより好ましい。
なお、内径は、その外径及び肉厚によって決定されるが、例えば、1.6〜9.4mm程度が挙げられ、4mm〜8mm程度が適しており、この場合、肉厚0.1mm〜2.4mm程度が適している。
膜の内外径、肉厚等は、電子顕微鏡写真等を用いた実測などによって測定することができる。
高分子水処理膜は、通常、その表面に多数の微細孔を有する多孔質膜である。その微細孔の平均孔径は、例えば、0.001〜10μm程度、好ましくは0.01〜1μm程度が挙げられる。膜表面の細孔の大きさ及び密度は、上述した内径、肉厚、得ようとする特性等によって適宜調整することができ、例えば、後述する透過水量を実現することができる程度であることが適している。よって、このような微細孔の多孔によって、水処理膜としての機能を果たすとともに、この微細孔の大きさ及び密度等によって、例えば、限外ろ過膜又は精密ろ過膜の分画性を調整することができる。なお、一般に、限外ろ過膜は、孔の大きさが2〜200nm程度の膜、精密ろ過膜は、50nm〜10μm程度の膜であることが知られている。
空孔率は、例えば、10〜90%程度、好ましくは20〜80%程度が挙げられる。ここでの空孔率は、任意の横断面(中空糸膜の径方向の断面、以下同じ)における高分子水処理膜の全面積に対する空孔の全面積の割合を意味し、例えば、膜横断面の顕微鏡写真から各面積を算出して求める方法が挙げられる。
例えば、中空糸膜の径方向の断面において、
前記中空糸膜の断面積に対する空孔率が30〜85%程度であることが好ましく、50〜85%程度、40〜75%程度又は50〜75%程度であることがより好ましい。
また、中心から半径方向にわたって、最内層、内層、外層及び最外層を構成する空孔が層状に分布しているものが好ましい。これにより、透水性能を保ちながら中空糸膜に内圧・外圧を印加した場合の応力集中を分散して膜全体の強度を保つことが可能となる。
本発明の製造方法で得られた高分子水処理膜は、純水の透過水量が100L/m2・hr・atm程度以上、200L/m2・hr・atm程度以上であることが適しており、600L/m2・hr・atm程度以上、800L/m2・hr・atm程度以上、あるいは1000L/m2・hr・atm程度以上を実現することができる。
また、膜の耐内圧強度が0.3MPa程度以上、0.35MPa程度以上又は0.4MPa程度以上を実現することができる。
さらに、膜の耐外圧強度が0.1MPa程度以上、0.15MPa程度以上又は0.2MPa程度以上を実現することができる。
特に、純水の透過水量が100L/m2・hr・atm程度以上、膜の耐内圧強度が0.3MPa程度以上かつ耐外圧強度が0.1MPa程度以上を実現することができる。
なお、耐圧強度は、膜の両端に金属製のチューブを介して各種配管継ぎ手を接続し、それらを用いて実際に内圧・外圧を印加し、破壊した際の圧力値を測定することで評価することができる。
本発明の製造方法によって得られる高分子水処理膜は、上述した方法を実現することによって、特に、上述したように、透過水量と物理的強度とのバランスに優れている。従って、分離膜として既存の水処理装置に好適に利用することができ、水の精製を目的とする好適な水処理、特に、高濃度排水の水処理が可能となる。このような特性を有する本発明の高分子水処理膜は、限外濾過(UF)膜及び精密濾過(MF)膜として好適に利用することができる。
また、本発明の製造方法によって得られる高分子水処理膜は、十分な強度を保ちながら従来中空糸形状の水処理膜に比べて大きな内径をもつことができるため、生物処理された排水のような、比較的大きなフロックが含まれた排水を内圧ろ過する際にも、膜の端面、すなわち排水が導入される入り口で膜が詰まることがない。
さらに、排水処理用途に適した、大きな内径を持った中空糸膜を形状を損なうことなく作製することができる。
このように、中空糸膜の製造において重要な要素である分画性能のコントロールと形状安定化を両立させることができる。
以下、本発明の高分子水処理膜の製造方法を、実施例に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は、これら実施例のみに限定されるものではない。また、実施例における配合量は、特に断りのない限り重量基準で示す。
実施例1
塩素化塩化ビニル18%(積水化学工業製、HA31K)、ポリビニルピロリドン15%、N’N−ジメチルアセトアミド67%の溶液を40℃に調整し、二重管構造の金型へ20g/minで供給し、内部凝固液として純水を20g/minで供給した。
空気中で溶液を鉛直方向に吐出させた後、金型を凝固水槽中に沈め、膜の紡糸方向を凝固槽水面下方、45°となるように金型の向きを調整した。凝固水槽中で樹脂溶液を凝固させて中空糸膜を得、凝固水槽の下流側に設置した引取機で連続的に引き取った。
この際、凝固水槽内において、紡糸された中空糸膜が過剰に垂れ下がるか、あるいは強いテンションがかかって切れないよう、適宜引取線速を調整した。この時の線速は約2m/minであった。
得られた中空糸膜は、内径4.6mm、肉厚0.5mmで、折れ、曲がり、うねり、そり及び偏肉のない均一な形状であった。
耐圧性能は、内圧0.85MPa、外圧0.5MPaであり、純水の透水性能は350L/m2・hr・atmであった。
なお、耐圧性能は、膜の両端に、直径4.6mm金属製のチューブを挿入し、そのチューブが挿入されている場所を加締継手で接続し、広く知られている配管の耐圧試験用テストポンプによって内圧・外圧を印加し、破壊した際の圧力値を測定した値である。
実施例2
塩素化塩化ビニル22%(積水化学工業製、HA58K)、ポリエチレングリコール400を22%、N’N−ジメチルアセトアミド56%の溶液を40℃に調整し、二重管構造の金型へ180g/minで供給し、内部凝固液として純水を150g/minで供給した。
空気中で溶液を鉛直方向に吐出させた後、金型を凝固水槽中に沈め、膜の紡糸方向を凝固槽水面下方、32°となるように金型の向きを調製した。凝固水槽中で樹脂溶液を凝固させて中空糸膜を得、凝固水槽の下流側に設置した引取機で連続的に引き取った。
この際、凝固水槽内において、紡糸された中空糸膜が過剰に垂れ下がるか、あるいは強いテンションがかかって切れないよう、適宜引取線速を調整した。この時の線速は約10m/minであった。
得られた中空糸膜は、内径4.3mm、肉厚0.7mmで、折れ、曲がり、うねり、そり及び偏肉のない均一な形状であった。
耐圧性能は、内圧1.3MPa、外圧1.0MPaであり、純水の透水性能は480L/m2・hr・atmであった。
また、分画分子量は150000以下であることを確認した。
実施例3
塩素化塩化ビニル22%(積水化学工業製、HA58K)、ポリエチレングリコール400を22%、N’N−ジメチルアセトアミド56%の溶液を40℃に調整し、二重管構造の金型へ150g/minで供給し、内部凝固液として純水を120g/minで供給した。
空気中で溶液を鉛直方向に吐出させた後、紡糸方向を凝固槽水面に対して伏角40°となるように金型の向きを調整した。これにより、吐出溶液は、一旦空気中を通過(約30mm)した後、凝固水槽中に進入した。その後、凝固水槽中で樹脂溶液を凝固させて中空糸膜を得、凝固水槽の下流側に設置した引取機で連続的に引き取った。
この際、凝固水槽内において、紡糸された中空糸膜が過剰に垂れ下がるか、あるいは強いテンションがかかって切れないよう、適宜引取線速を調整した。この時の線速は約8m/minであった。
得られた膜は、内径4.3mm、肉厚0.7mmで、折れ、曲がり、うねり、そり及び偏肉のない均一な形状であった。
耐圧性能は、内圧1.3MPa、外圧1.0MPaであり、純水の透水性能は300L/m2・hr・atmであった。
また、分画分子量は65000以下であることを確認した。
実施例4
ポリエーテルスルフォン22%、ポリビニルピロリドン5%、N−メチル−2−ピロリドン73%の溶液を45℃に調整し、二重管構造の金型へ180g/minで供給し、内部凝固液として純水を160g/minで供給した。
空気中で溶液を鉛直方向に吐出させた後、金型を凝固水槽中に沈め、膜の紡糸方向を凝固槽水面下方、45°となるように金型の向きを調製した。凝固水槽中で樹脂溶液を凝固させて中空糸膜を得、凝固水槽の下流側に設置した引取機で連続的に引き取った。
この際、凝固水槽内において、紡糸された中空糸膜が過剰に垂れ下がるか、あるいは強いテンションがかかって切れないよう、適宜引取線速を調整した。この時の線速は約11m/minであった。
得られた膜は、内径4.6mm、肉厚0.5mmで、折れ、曲がり、うねり、そり及び偏肉のない均一な形状であった。
耐圧性能は、内圧1.2MPa、外圧0.5MPaであり、純水の透水性能は380L/m2・hr・atmであった。
実施例5
セルロースアセテート24%、トリエチレングリコール15.4%、N−メチル−2−ピロリドン61.6%の溶液を70℃に調整し、二重管構造の金型へ20g/minで供給し、内部凝固液として純水を20g/minで供給した。
空気中で溶液を鉛直方向に吐出させた後、金型を凝固水槽中に沈め、膜の紡糸方向を凝固槽水面下方、55°となるように金型の向きを調製した。凝固水槽中で樹脂溶液を凝固させて中空糸膜を得、凝固水槽の下流側に設置した引取機で連続的に引き取った。
この際、凝固水槽内において、紡糸された中空糸膜が過剰に垂れ下がるか、あるいは強いテンションがかかって切れないよう、適宜引取線速を調整した。この時の線速は約1.5m/minであった。
得られた膜は、内径4.6mm、肉厚0.6mmで、折れ、曲がり、うねり、そり及び偏肉のない均一な形状であった。
耐圧性能は、内圧0.6MPa、外圧0.4MPaであり、純水の透水性能は400L/m2・hr・atmであった。
比較例1
塩素化塩化ビニル18%(積水化学工業製、HA53K)、ポリビニルピロリドン15%、N’N−ジメチルアセトアミド67%の溶液を40℃に調整した。二重管構造の金型へ20g/minで供給し、内部凝固液として純水を20g/minで供給した。
空気中で溶液を鉛直方向に吐出させた後、金型を凝固水槽中に沈め、膜の紡糸方向を地面に対してほぼ平行となるように金型の向きを調整した。凝固水槽中で樹脂溶液を凝固させて中空糸膜を得、凝固水槽の下流側に設置した引取機で連続的に引き取った。
この際、凝固水槽内において、紡糸された中空糸膜が過剰に垂れ下がるか、あるいは強いテンションがかかって切れないよう、適宜引取線速を調整した。この時の線速は約2m/minであった。
得られた膜は、内径4.6mm、肉厚0.5mmであったが、金型の上方に対応する部分の肉厚がところどころ薄くなっている部分が見受けられた。
耐圧性能は、内圧0.6MPa、外圧0.2MPaであり、純水の透水性能は350L/m2・hr・atmであった。
本発明は、水処理装置の態様等にかかわらず、河川水及び地下水の除濁、工業用水の清澄、排水及び汚水処理、海水淡水化の前処理等の水の精製等のために使用される水処理膜、精密濾過膜等として、広範に利用することができ、特に、MBRに有利に使用することができる。
30 凝固槽
31 紡糸金型
32a、32b 吐出方向

Claims (8)

  1. 略単一素材の樹脂溶液を調製し、
    前記樹脂溶液を、吐出口を備えた金型から空気中に吐出し、
    その後、前記樹脂溶液を、前記非溶媒の水面に対して30°〜60°の範囲内で吐出し、
    外径が3.6〜10mm、SDR値が5.8〜34の自立構造であって、かつ100L/m2・hr・atm以上の純水透水量を有する中空糸膜を形成することを特徴とする高分子水処理膜の製造方法。
  2. 前記樹脂溶液の空気中への吐出を鉛直方向に行う請求項1に記載の高分子水処理膜の製造方法。
  3. 前記樹脂溶液を空気中で吐出した状態から、前記吐出口を、前記非溶媒を含む凝固槽内に浸漬して、前記樹脂溶液を、該凝固槽内で、前記非溶媒の水面に対して30°〜60°の範囲内で吐出して凝固させる請求項1に記載の高分子水処理膜。
  4. 前記樹脂溶液を、前記非溶媒を含む凝固槽の水面に対して伏角30°〜60°の範囲内で前記吐出口から空気中で吐出し、空気中を通過させて前記凝固槽に進入させて凝固させる請求項1又は2に記載の高分子水処理膜の製造方法。
  5. 前記樹脂溶液は、15重量%以上の塩化ビニル系樹脂を含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の高分子水処理膜の製造方法。
  6. 前記塩化ビニル系樹脂の重合度が250〜3000である請求項5に記載の高分子水処理膜の製造方法。
  7. 前記塩化ビニル系樹脂が、56.7〜73.2%塩素含有率の塩化ビニル系樹脂である請求項5又は6に記載の高分子水処理膜の製造方法。
  8. 前記塩化ビニル系樹脂における塩化ビニル系モノマー単位の質量比が50〜99質量%である請求項5〜7のいずれか1項に記載の高分子水処理膜の製造方法。
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