JP5960401B2 - 水処理装置及び水処理方法 - Google Patents
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Description
このような中空糸膜は、通常、水処理装置において分離膜として利用されており、例えば、ポリスルホン(PS)系、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)系、ポリエチレン(PE)系、酢酸セルロース(CA)系、ポリアクリロニトリル(PAN)系、ポリビニルアルコール(PVA)系、ポリイミド(PI)系等の種々の高分子材料によって形成されている。
特に、安全な水を定常的に大量に供給することが求められている状況下においては、より効率的かつより経済的に、被処理水に含有される種々の成分を膜によって分離して大量の水を供給することが必要である。
このために、例えば、所定間隔ごとに薬液による洗浄などが行なわれている(例えば、特許文献1)。
しかし、薬液による洗浄には、比較的長時間を要するとともに、薬液を高速で膜内に循環させるために、大量の薬液が必要となるとともに、その間の水処理運転の停止を余儀なくされるという欠点がある。また、用いる薬品のコスト、排薬品の処理コスト等が発生し、運転コストが増大する。
これらの内圧式MBRで用いられる水処理膜モジュールでは、大小さまざまな固形分を含む生物処理水に起因する膜モジュール端面での固形分の堆積による閉塞が発生しないよう、内径が5〜10mm程度のチューブラー状の水処理膜が用いられている。
しかし、チューブラー膜による処理は、水処理膜の内径大型化に従い、処理時の内圧への耐性が低下するため、強固な支持体もしくは膜厚の増大が必要となる。その一方、膜表面に濁度成分をはじめとした汚れが堆積した場合には、通常、処理量が低下した際に中空糸膜において逆圧洗浄(逆洗)されるが、支持体を用いたチューブラー膜では、支持体に貼り付けられているチューブラー膜そのものの剥がれによる破損が発生しやすい。特に、高浮遊物質を含有する水処理に適した内圧式全ろ過方式のチューブラー膜では、逆洗が実質的に不可能である。よって、逆洗以外の方法で透水量の低下を防ぐためにスポンジボールの使用、高い内部流速の維持など、システムの複雑化及び消費エネルギーの増大が余儀なくされることが現状である。
また、水処理膜の膜厚を増大させると、処理水量に対する設置面積効率が低下するという新たな課題を招く。
このような水処理装置では、
前記中空糸膜が、塩化ビニル系樹脂により形成されてなることが好ましい。
このような水処理方法では、
前記全ろ過による水処理及び逆洗の後又は間にドレン又はフラッシングを行なうことが好ましい。
前記水処理、逆洗又はフラッシングにおいて気泡又は超音波を導入することが好ましい。
前記水処理の前処理として、除濁を行なうことなく被処理水を全ろ過に付すことが好ましい。
前記逆洗時に薬液を用いることが好ましい。
本発明の水処理装置で用いられる中空糸膜は、自立構造を有する単一主要構成素材により形成されている膜である。
ここで、単一主要構成素材とは、その主要材料が単一材料であることを意味する。単一材料とは、主要素材が1種であることを意味する。つまり、中空糸膜を形成する素材(例えば、膜を構成する樹脂)において、1種の樹脂が50質量%以上(好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、80質量%以上、さらに好ましくは85質量%以上)を占めていることを意味し、あるいは、その1種の樹脂の性質が構成素材の性質を支配していることを意味する。具体的には、1種の樹脂が50〜99質量%を有する素材を意味する。ただし、単一材料には、後述する素材自体又は中空糸膜の製造の際に通常用いられる添加剤は含まれず、樹脂の加工性等を改善するための後述するような添加剤等は含有していてもよい。
塩化ビニルモノマー単位の塩素化は、重合前に行われていてもよいし、重合した後に行われていてもよい。また、塩化ビニルの共重合体とする場合には、塩化ビニルモノマー単位以外のモノマー単位の含有率は、本来の性能を阻害しない範囲とし、塩化ビニルモノマー由来の単位を50重量%以上、60重量%以上又は70重量%以上、例えば、50〜99質量%程度、60〜99質量%又は70〜99質量%含むことが好ましい(ここでの質量計算では、塩化ビニル系樹脂中には、可塑剤、当該共重合体樹脂にブレンドされるその他の重合体を含まない)。
N−メチルアリルアクリルアミド、N−ビニルアクリルアミド、N,N'−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、ビスアクリルアミド酢酸等のアクリルアミド類;
ジビニルベンゼン、ジビニルエーテル、ジビニルエチレン尿素等のジビニル化合物;
ジアリルフタレート、ジアリルマレート、ジアリルアミン、トリアリルアミン、トリアリルアンモニウム塩、ペンタエリスリトールのアリルエーテル化体、分子中に少なくとも2個のアリルエーテル単位を有するスクローゼのアリルエーテル化体等のポリアリル化合物;
ビニル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート等の不飽和アルコールの(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
(1)アミノ基、アンモニウム基、ピリジル基、イミノ基、ベタイン構造等のカチオン性基含有ビニルモノマー及び/又はその塩(以下、「カチオン性モノマー」と記載することがある)、
(2)水酸基、アミド基、エステル構造、エーテル構造等の親水性の非イオン性基含有ビニルモノマー(以下、「非イオン性モノマー」と記載することがある)、
(3)カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等のアニオン性基含有ビニルモノマー及び/又はその塩(以下、「アニオン性モノマー」と記載することがある)
(4)その他のモノマー等が挙げられる。
(1)カチオン性モノマーとしては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジイソプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジイソブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジt−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジプロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジイソプロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジブチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジイソブチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジt−ブチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等の炭素数2〜44のジアルキルアミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル又は(メタ)アクリルアミド;
ジメチルアミノスチレン、ジメチルアミノメチルスチレン等の総炭素数2〜44ジアルキルアミノ基を有するスチレン;
2−又は4−ビニルピリジン等のビニルピリジン;N−ビニルイミダゾール等のN−ビニル複素環化合物類;
等のアミノ基を有するモノマーの酸中和物又はこれらのモノマーをハロゲン化アルキル(炭素数1〜22)、ハロゲン化ベンジル、アルキル(炭素数1〜18)もしくはアリール(炭素数6〜24)スルホン酸又は硫酸ジアルキル(総炭素数2〜8)等により4級化したもの;
これらのカチオン性基の中でも、アミノ基及びアンモニウム基含有モノマーが好ましい。
N−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド等のヒドロキシアルキル(炭素数1〜8)基を有する(メタ)アクリル酸エステル又は(メタ)アクリルアミド;
ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート(エチレングリコールの重合度が1〜30)等の多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリルアミド;
N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−イソブチル(メタ)アクリルアミド等のアルキル(炭素数1〜8)(メタ)アクリルアミド;
N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド等のジアルキル(総炭素数2〜8)(メタ)アクリルアミド;
ジアセトン(メタ)アクリルアミド;N−ビニルピロリドン等のN−ビニル環状アミド;
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート等のアルキル(炭素数1〜8)基を有する(メタ)アクリル酸エステル;
N−(メタ)アクロイルモルホリン等の環状アミド基を有する(メタ)アクリルアミドが例示される。
なかでも、ビニルアルコール、(メタ)アクリルアミド系モノマー及び上記のヒドロキシアルキル(炭素数1〜8)基を有する(メタ)アクリル酸エステル、上記の多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。
スチレンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−アルキル(炭素数1〜4)プロパンスルホン酸等の重合性の不飽和基を有するスルホン酸モノマー;
ビニルホスホン酸、(メタ)アクリロイロキシアルキル(炭素数1〜4)リン酸等の重合性の不飽和基を有するリン酸モノマー等が例示される。
アニオン性基は、塩基性物質により任意の中和度に中和されてもよい。この場合、ポリマー中の全てのアニオン性基又はその一部のアニオン性基は、塩を生成する。ここで、塩における陽イオンとしては、アンモニウムイオン、総炭素数3〜54のトリアルキルアンモニウムイオン(例えば、トリメチルアンモニウムイオン、トリエチルアンモニウムイオン)、炭素数2〜4のヒドロキシアルキルアンモニウムイオン、総炭素数4〜8のジヒドロキシアルキルアンモニウムイオン、総炭素数6〜12のトリヒドロキシアルキルアンモニウムイオン、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン等が例示される。
中和は、モノマーを中和しても、ポリマーにしてから中和してもよい。
滑剤としては、ステアリン酸、パラフィンワックス等が挙げられる。
熱安定剤としては、一般に塩化ビニル系樹脂の成形に用いられる錫系、鉛系、Ca/Zn系の各安定剤が挙げられる。
製膜助剤としては、各種重合度のポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン等の親水性高分子が挙げられる。
塩素化の方法としては、特に限定されるものではなく、当該分野で公知の方法、例えば、特開平9−278826号公報、特開2006−328165号公報、国際公開WO/2008/62526号等に記載の方法を使用することができる。なお、塩化ビニル系樹脂の塩素含有率は、56.7〜73.2%であることが好ましい。また、塩素化塩化ビニル系樹脂としての塩素含有率は、58〜73.2%であるものが適しており、60〜73.2%であるものが好ましく、67〜71%であるものがより好ましい。
塩化ビニル系樹脂は、重合度が250〜3000程度であることが好ましく、500〜1300であることがより好ましい。重合度が低すぎると、紡糸する際の溶液粘度が低下し、製膜作業が困難となり、また、作成した水処理膜の強度が乏しくなる傾向がある。一方、重合度が高すぎると、粘度が高くなりすぎることに起因して、製膜された水処理膜に気泡の残留をもたらす傾向がある。ここでの重合度はJIS K 6720−2に準拠して測定した値を意味する。
重合度を上記の範囲に調整するためには、反応時間、反応温度等の当該分野において公知の条件を適宜調節することが好ましい。
この場合の樹脂溶液の濃度及び粘度等は特に限定されないが、例えば、500〜4000mPa・s程度の粘度とすることが適しており、1000〜3000mPa・s程度が好ましい。これにより、紡糸ライン中で中空糸膜の外形の真円度を確保することができ、均一な太さ・膜厚の膜を製造することができる。
また別の観点から、後述する非溶媒との比重差を1.0以内に調整することが適しており、0.8以内が好ましく、さらに0.2以内がより好ましい。これにより、膜の引き取り中に、凝固槽内で膜自体が浮いたり又は沈んだり、扁平することを有効に防止することができる。
樹脂溶液を紡糸するために、通常、同心円状の2重ノズル形状となった吐出口を備えた紡糸金型が用いられる。この紡糸金型は、凝固槽30に紡糸できるように凝固槽の内又は外あるいは外から内に及んで配置されていてもよい。例えば、吐出口(図示せず)を備えた紡糸金型31が、凝固槽30内部に、つまり、非溶媒に浸漬されて配置されているものが挙げられる。このように、凝固槽30内部に紡糸金型31が配置されている場合には、樹脂溶液が空気に触れることなく非溶媒中に直接吐出され、速やかに液−液相分離が開始されるため、表面に緻密なスキン層が形成されず、多孔質な表面となる。すなわち、ろ過抵抗が低下することに起因してすぐれた透水量を発現させることができる。また、後述する水平方向への紡糸においても、本発明による凝固槽中に金型を浸漬させる方式によれば、空気中であらかじめ樹脂溶液を吐出した状態から凝固槽中に金型を沈めることにより、常に吐出され続ける樹脂溶液のために、紡糸開始時にノズル先端で生じる吐出抵抗増大に伴う詰まりを回避することができる。
凝固槽中の非溶媒は、樹脂溶液に直接接触するものであることから、吐出口から吐出される樹脂溶液の温度(又は紡糸金型)と、非溶媒の温度との差を、100℃程度以内とすることが好ましい。これにより、樹脂溶液の急激な温度低下およびそれに伴う樹脂溶液の粘度の急上昇による紡糸金型の吐出口近傍での詰まりを防止することができる。また、非溶媒の温度を一定に保つことにより、樹脂溶液の相分離挙動を安定に維持することができ、透水性能・強度などの性能を安定的に発現させることが可能となる。
中空糸膜の強度は、材料、内径、肉厚、真円度、内部構造等の種々の要因によって決定されるが、なかでも、SDR値(外径/肉厚の比)を用いることが有効である。つまり、様々の実験を行なった結果、内外圧の耐圧性能として、例えば、0.3MPaを実現するためには、SDR値34程度以下に設計することが好ましいことが分かった。一方、SDR値を低減させる設計にすることは、膜モジュールにおける膜ろ過面積の低下につながる。よって、これらのバランスを図る観点から、SDRは5.8程度以上であることが好ましい。
なかでも、5.9程度以上、6.0程度以上、6.5程度以上、7程度以上、であることが好ましく、32程度以下、30程度以下、35程度以下、20程度以下であることが好ましく、16程度以下、11程度以下であることがより好ましい。特に、外径が5〜7mm程度の場合には、SDR値は4〜16程度とすることが好ましく、6.5〜11程度に設定することがより好ましい。
なお、内径は、その外径及び肉厚によって決定されるが、例えば、1.6〜9.4mm程度が挙げられ、4.0mm以上、4.5mm程度以上、5.0mm程度以上である。また、好ましくは20mm程度以下、さらに10mm程度以下又は8mm程度以下が挙げられる。特に内径は、2mm〜8mm程度が適しており、この場合、肉厚0.1mm〜2mm程度が適している。
(1)外径が3.6mm〜10mm及びSDR値が、5.8〜34である略単一の主要構成素材による自立構造を有する中空糸膜からなる膜が挙げられる。
なかでも、外径が5〜7mm程度、SDR値が6.5〜11程度であることが好ましい。これにより、中空糸膜に内圧、外圧を印加した場合の強度を保ちながら、高濃度の排水を通水させた場合にも中空糸内が閉塞しない程度の大きさの内径を確保することが可能となる。
なお、膜の内外径、肉厚等は、電子顕微鏡写真等を用いた実測などによって測定することができる。
(3)内径が1.6mm〜9.4mm及び肉厚が0.15mm〜2.4mmである略単一の主要構成素材による自立構造を有する中空糸膜からなる膜等が挙げられる。
このように、本発明で使用される中空糸膜は、自立構造を有する単一主要構成素材による中空糸膜でありながら、透過水量と物理的強度とのバランスに優れている。従って、分離膜として既存の水処理装置に好適に利用され、水の精製を目的とする好適な水処理、特に、高濃度排水の水処理が可能となる。また、効果的に逆洗を行なうことができ、デッドエンドろ過に適用することが可能となり、水処理装置における膜モジュールとして、長寿命化及び低コスト化を図ることができる。
本発明の水処理装置が備える膜モジュールは、例えば、図1に示すように、少なくとも、複数本の中空糸膜2と、筒状のケース10とを備えるものが挙げられる。
中空糸膜2としては、上述した中空糸膜を用いる以外は、中空糸膜外径、長さ、数等は、得ようとする膜モジュールの特性等に応じて、適宜調整することができる。
筒状のケース10は、複数本の中空糸膜2を収納する。筒状のケース10としては、金属、プラスチック類等の種々の材料のものを使用することができるが、一般的にケース成型が容易で、機械的強度を確保することができるプラスチックが用いられる。使用するプラスチック、例えば、アクリル系樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル系樹脂等が挙げられる。
この複数本の中空糸膜2は、ケース10内において、その両端面10a、10b側がシール材11を介してシールされている。このシールは、例えば、遠心成形によるポッティングなどによって形成することができる。また、シールの材料は、初期に粘性をもち、経時的に硬化し、最終的に所定硬度に到達する材質のものが好ましく、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。
なお、このような膜モジュール自体は従来から公知であり、例えば、特開昭62−140607号公報、特開平6−319961号公報、特開2009−183822号公報等に記載された種々のものを利用することができる。
本発明の水処理装置は、上述した膜モジュールに加えて、図2の概略図に示すような、被水処理槽3、原水供給ポンプ4、気体供給装置7、透過水槽6、逆洗ポンプ5、これらを任意に連結する管(図示せず)等の少なくとも1つを備えていることが好ましく、また、これらの各種槽等に加えて/の代わりに、生物処理槽、凝集剤処理槽及び/又は凝集剤注入手段、薬液槽及び/又は薬液注入手段、濃縮水槽、開閉弁、超音波発生装置等が設けられていてもよい。ただし、従来の海水淡水化等で必要としていた砂ろ過、糸巻きフィルター、ストレーナ等の除濁装置は必ずしも必要とせず、被処理水を直接上述した膜モジュールに導入して水処理に付すという観点からは、除濁装置及びこれに類する装置は設けられていないことが好ましい。つまり、従来の口径の比較的小さな中空糸膜を用いて海水処理を行なうと、すぐに中空糸膜の閉塞が起こるため、前処理としての除濁が必要であった。一方、本発明で使用するような大口径の中空糸膜では閉塞が起こりにくいため、除濁処理は必ずしも必要としない。
なお、原水供給ポンプ4及び/又は逆洗ポンプ5を用いずに、水位差や空気圧等を利用してろ過、逆流洗浄を行なえるような装置を用いてもよい。さらに、原水供給ポンプ4及び/又は逆洗ポンプ5を、薬液注入ポンプとして利用することもできる。
なかでも、エネルギー効率を考慮すると、直列配列が好ましく、モジュールが直列配置、直列ユニットの並列配置、並列ユニットの直列配置等のように、最終段で膜面流速があがるようにユニットを組むことがより好ましい。
膜モジュールの下流には、膜モジュールでろ過された水が収容される透過水槽が配置されている。
透過水槽には、透過水の一部を逆洗に利用することができるように、中空糸モジュールからの透過水が通る管とは全く又は一部別の経路において、逆洗ポンプ5を介して膜モジュールに連結される管が備えられている。
逆洗ポンプは、逆洗の際に透過水を膜モジュールに供給するために使用するポンプであり、上述した原水供給ポンプで例示したものと同様のものを利用することができる。
本発明の水処理方法は、特に限定されるものではなく、上述した本発明の膜モジュールを用いること以外、その対象、目的、用途等に応じて、当該分野で公知の方法を利用することができる。
例えば、図2に示した膜モジュールを備えた水処理装置を用いて、以下の処理フローに従って水処理を行なうことができる。
本発明の水処理方法では、膜モジュールにおける加圧方式は、内圧式又は外圧式のいずれの方式でもよいが、特に、内圧式、つまり、中空糸膜の内側に被処理水を供給し、中空糸膜の外側に透過水を取り出す方式が好ましい。この場合の内外の膜間差圧は、処理対象の種類によって、例えば、透過圧力で10〜300kPa程度が挙げられ、好ましくは、200kPa程度以下である。膜間差圧をこの範囲とすることにより、実用上要求される透水性能を維持することができるとともに、長期間、安定した透水速度を得ることができる。特に、本発明では、膜モジュールに使用される中空糸膜は大口径であるために、濁度の高い水を閉塞することなく、処理することができる。また、内圧ろ過によって加圧できることにより、平膜では真空までしかかけられなかった膜間差圧を超えて高圧ろ過で高処理運転ができる。
デッドエンドろ過は、例えば、膜モジュール1が濃縮液を排出せずに、透過水槽6への透過水Aの一方的な排出を、例えば、上述したように、膜間差圧の範囲内で、かつ略一定差圧(例えば、±20%程度)にして運転して行なうことが好ましい。
逆洗は、膜モジュール1において得られた透過水Aの一部を、逆洗ポンプ5によって、逆洗水Bとして膜モジュール1に送り込むことが好ましい。この際、通常、例えば、一定の外内膜間差圧を負荷し、逆洗を行なう。外内膜間差圧は、特に限定されるものではなく、ろ過運転時と同程度以上の高圧で短時間で行なうことが好ましく、ろ過運転時よりも高圧で行なうことがより好ましい。例えば、逆洗圧力は50〜300kPa程度が挙げられる。特に、100kPa程度以上、150kPa程度以上で行なうことが、短時間で有効にその性能を回復させることができるため、好ましい。
逆洗の継続時間及び間隔は、特に限定されるものではなく、被処理水の種類、濁度等によって適宜調整することができる。
フラッシングは、主に槽、配管内部及び/又は膜モジュールなどの浮遊/付着物、残留異物等を除去するために行なう工程であり、加圧せずに、例えば、膜面流速0.1m/s以上で行なうことが好ましい。フラッシングする際の水は、通常被処理水が用いられる。膜モジュール1を通した水は、フラッシング水Cとして、再度被処理水槽3に戻される。
なお、中空糸膜の内径よりも大きな粒子や繊維の塊、棒状の物質が膜モジュール端面でひっかかり、管路を塞ぐことがあるが、このモジュール端面での閉塞を、原水の供給向きと逆向きにフラッシングをすることで防止してもよい。
休憩工程は、水処理を一次停止することを意味する。
バブリングの時間は特に限定されるものではなく、1秒以上、1分以上、好ましくは数秒〜数分程度、かつ、水処理、逆洗、フラッシングが非効率的にならない範囲で調整することが好ましい。また、気泡の大きさによって、バブリングの時間を適宜調整することが好ましい。
気泡の導入は、例えば、原水比(膜モジュールに導入する際において、膜モジュールに導入する原水体積に対して)で5程度以下、4程度以下、2程度以下、さらに1/2程度以下の体積となるように、気泡の大きさ等を考慮して、適宜調整することが好ましい。
なお、気泡の導入は、ろ過時又は逆洗時、その他の時期等に問わず、常時行ってもよいし、間欠的に行ってもよい。
塩素化塩化ビニル樹脂として積水化学工業株式会社製、HA31K(塩素化度67%、重合度800)を25重量%と、製孔助剤としてポリエチレングリコール400を20重量%とを、ジメチルアセトアミドに溶解した。この溶液を、空気中であらかじめ吐出した状態から凝固槽中に金型を沈めて中空糸ノズルにより連続的に吐出させ、水浴槽にて相分離させることによって多孔質の中空糸膜を得た(図5及び図6参照)。
得られた中空糸膜の外径は5.4mm、内径は4.8mmであった。
また、引張破断強度は33N/本、引張破断伸び50%であった。
得られた中空糸膜単糸を用いて図1に示すような膜モジュールを作製した。
純水による透水試験を行った結果、処理時の内水圧0.5MPaで、膜構造が変形することなく水処理膜としての性能を発揮させることができた。
また、逆洗時の外水圧0.3MPaの条件においても膜構造が変形することなく、洗浄に支障のない性能を発揮させることができた。
さらに、純水透水性能は200L/m2・hr・atmであった。
また、3000ppm濃度の活性汚泥を用いて図2に示すような装置を用いて透水試験を行った結果、処理時の内水圧が0.5MPaで、汚泥の堆積による閉塞も発生することなく水処理膜としての性能を発揮させることができた。
さらに、次亜塩素酸ナトリウム溶液により、外水圧0.3MPaで逆洗を行ったが、膜構造が変形することなく、洗浄に支障のない性能を発揮させることができた。
上記方法と同様の方法により得られた種々のサイズの表1に示す塩素化塩化ビニル樹脂の単一主要素材による単層構造の中空糸膜を用いて膜モジュールを作製した。この膜モジュールの純水によるろ過性能LMH(L/m2・hr・atm)を、表1に併せて示す。
その結果を表2に示す。なお、実施例4における水処理は、全ろ過→フラッシング→全ろ過→フラッシング→…→逆洗→全ろ過の順序で行なった。
一方、比較例1から3においては、除濁なしではろ過を行なうことができなかった。また、比較例4では、逆洗を行なっていないために高エネルギー運転を余儀なくされ、その性能もエネルギーに対して相当に低かった。また、薬液コストかかった。比較例5は、NORIT製複合膜を用いたために、高圧逆洗(0.2MPa付近)で膜がつぶれて、結局、逆洗ができなかった。また、0.15MPaでの逆洗では、やはり短期間で膜が閉塞し、安定運転ができなかった。
セルローストリアセテート(CA)24重量%と、製孔助剤としてトリエチレングリコール15.4重量%とを、N−メチル2−ピロリドンに溶解した。上記と同様の方法で、この樹脂溶液を紡糸金型により連続的にほぼ水平に凝固槽内(水充填)に吐出させ、凝固槽にて相分離させることによって多孔質の中空糸膜を得た。
図3に示したように、膜34の紡糸方向を水平方向とし、凝固槽30内(水充填)において、紡糸金型31の吐出口から10m一直線に水平方向36)に引き取った。その下流1m程度の間で、膜34をローラー39により10cm程度持ち上げ、凝固槽30外であって、凝固槽30内の紡糸金型31の吐出口の位置37よりも高い切断位置38で、切断機によって切断35して、中空糸膜を得た(表3)。
図3に示したように、膜34の紡糸方向を水平方向とし、凝固槽30内(水充填)において、紡糸金型31の吐出口から10m一直線に水平方向36)に引き取った。その下流1m程度の間で、膜34をローラー39により10cm程度持ち上げ、凝固槽30外であって、凝固槽30内の紡糸金型31の吐出口の位置37よりも高い切断位置38で、切断機によって切断35し、中空糸膜を得た(表3)。
表3に示した単一主要素材による単層構造の中空糸膜を用いて図1に示す膜モジュールを作製した。
2 中空糸膜
3 被処理水槽
4 原水供給ポンプ
5 逆洗ポンプ
6 透過水槽
7 空気供給装置
10 ケース
10a、10b 端面
11 シール材
12 透過側管口
13 原液供給管口
30 凝固槽
30a 底面
31 紡糸金型
32 吐出方向
33 吐出角度
34 膜
35 切断
36 水平方向
37 吐出口の位置
38 切断位置
39 ローラー
Claims (8)
- 非溶媒が充填された凝固槽に紡糸金型に設けられた吐出口から樹脂溶液が吐出されることで成形され、前記紡糸金型の吐出口から吐出される樹脂溶液の温度と、前記非溶媒との温度差が100℃以内で樹脂溶液が吐出され、外径が3.6mm〜10mm及び外径と肉厚の比であるSDR値が5.8〜34である自立構造を有し、塩化ビニル樹脂、セルロースアセテート、ポリエーテルサルフォンのいずれかの単一主要構成素材により構成される中空糸膜を用いた膜モジュールを備えることを特徴とする水処理装置。
- 前記中空糸膜は、前記凝固槽の底面に対して±30°以内の角度で吐出口から樹脂溶液が吐出されてなる請求項1に記載の水処理装置。
- 請求項1又は2に記載の水処理装置を用い、全ろ過による水処理と、逆洗とを交互に行なうことを特徴とする水処理方法。
- 請求項1又は2に記載の水処理装置を用い、全ろ過による水処理と、フラッシングとを交互に行い、定期的又はランダムなタイミングで逆洗を行うことを特徴とする水処理方法。
- 前記全ろ過による水処理及び逆洗の後又は間にドレン又はフラッシングを行なう請求項3又は4に記載の水処理方法。
- 前記水処理、逆洗又はフラッシングにおいて気泡又は超音波を導入する請求項3〜5のいずれか1つに記載の水処理方法。
- 前記水処理の前処理として、除濁を行なうことなく被処理水を全ろ過に付す請求項3〜6のいずれか1つに記載の水処理方法。
- 前記逆洗時に薬液を用いる請求項3〜7のいずれか1つに記載の水処理方法。
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