JP2013242336A - 被検物質検知センサー - Google Patents
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Abstract
【解決手段】作用電極1と対電極2とが絶縁体3を介して一体化されてなり、作用電極1に被検物質が接触することで出力電圧が変化する被検物質検知センサーであって、作用電極1は、対電極2及び絶縁体3よりも小さく形成されて絶縁体3の表面の一部に設けられ、絶縁体3には作用電極1を囲う周壁4が形成されていて、周壁4が被検物質を収容する溜り部として機能し、作用電極1とは別に参照電極6が設けられており、参照電極6は周壁4に埋設されている。
【選択図】図3
Description
具体的には、作用電極と対電極とが絶縁体を介して一対化されてなり、作用電極に被検物質が接触することで出力電圧が変化する被検物質検知センサーにおいて、対電極は板状に形成され、絶縁体は対電極の上面を覆っており、作用電極は絶縁体の表面の一部に設けられ、絶縁体には作用電極を囲う周壁が形成され、作用電極と絶縁体との接触面積が対電極と絶縁体との接触面積より小さく設定され、作用電極と対電極とに電源が接続されて構成されている。
また、第1の構成において、周壁は作用電極上に形成されてもよい。具体的には、作用電極と対電極とが絶縁体を介して一体化されてなり、作用電極に被検物質が接触することで出力電圧が変化する被検物質検知センサーであって、作用電極上に形成された壁部を有し、壁部は被検物質を保持するための開口部を有し、作用電極は絶縁体の表面を露出させるための開口部を有し、壁部の開口部内に保持される被検物質は、作用電極の開口部を介して絶縁体の表面に接することを特徴とする。
本発明による第3の構成の被検物質検知センサーは、第2の被検物質検知センサーにおいて、参照電極を前記溜り部の外側に配置したことを特徴とする。
本発明による第4の構成の被検物質検知センサーは、第2の被検物質検知センサーにおいて、参照電極を、前記溜り部を形成する周壁内に埋没して設けたことを特徴とする。
本発明による第5の構成の被検物質検知センサーは、第2の被検物質検知センサーにおいて、参照電極を、溜り部内に配置したことを特徴とする。
本発明による第7の構成の被検物質検知センサーは、第1から第6の構成の被検物質検知センサーの何れかにおいて、一つの溜り部内に複数の作用電極を配置したことを特徴とする。
本発明による第8の構成の被検物質検知センサーは、第1から第7の構成の被検物質検知センサーの何れかにおいて、溜り部を、作用電極の安定作用を補償する所定量の被検物質を貯留することができる。
本発明による第9の構成の被検物質検知センサーは、第1から第8の構成の被検物質検知センサーの何れかにおいて、前記溜り部を形成する周壁に対して撥水性を付与したことを特徴とする。
本発明による第10の被検物質検知センサーは、第1から第8の構成の被検物質検知センサーの何れかにおいて、前記溜り部を形成する周壁に対して撥油性を付与したことを特徴とする。
このことは、本センサーの新たな可能性を開くものであり、従来では分析不可能であった物質の相違も電気化学的に分析可能になるものと期待される。
また、第2の構成の被検物質検知センサーから第5の構成の被検物質検知センサーでは、電極上に分子が付着し、それぞれの電位がずれてしまえば、真の電位を決定することができないことを防止するために、基準としてアースの役割をする、つまり電位が変化しない参照電極を設けている。これにより、両電極の電位を安定して決定できる。
また、この参照電極は、抗原抗体反応の経時的変化を観測するために作用電極に一定の電位を与えた場合、表面の抗体に抗原が反応し始め、表面の電界が変化したときなどにも有用である。
その中でも、第4の構成の被検物質検知センサーに示すように、溜り部を構成する周壁内に埋没してすることで参照電極の汚れを完全に回避することができる。
さらに、第9の構成の被検物質検知センサーでは親水性の被検物質が周壁を伝って上昇することがなくなり、第10の構成の被検物質検知センサーでは親油性の被検物質が周壁を伝って上昇することがなくなるので、溜り部からの漏れ出しを阻止することとなる。特に、溜り部の容量が小さいほど、この漏れ出し阻止の効果は安定した検知データを得る上で有用となる。
図1(a)は本発明の第1実施形態に係る被検物質検知センサー100を示す平面図、図1(b)はその断面図である。また、図2は図1で示した単セル被検物質検知センサー100に配線と、電流計と、電圧計と、電源と、を配した接続例を示す図である。
被検物質検知センサー100は、作用電極1と、対電極2と、絶縁体3と、周壁4と、を備えている。以下、これらの構成で成るものを、被検物質検知センサー本体部と呼ぶ場合がある。
絶縁体3の表面には、水酸基、アミノ基、カルボキシル基等の官能基が導入されていてもよい。
絶縁体膜表面に抗体などを固定化するとき、予め官能基を表面に結合させておくことにより、これら官能基に抗体を結合させ、より安定な固定化を実現したり、あるいは抗体を配向させたりすることが可能となる。
絶縁体3の厚さは、通常10〜1000nmが好ましく、20〜500nmが更に好ましい。絶縁体3が薄すぎるとトンネル電流が流れる恐れがあり、絶縁体3が厚すぎると感度が低下する恐れがある。
本実施形態では、図1(b)に示すように、絶縁体3は対電極2の上面全体を覆うように、本例では略同じ面積で形成されている。
作用電極1の形状は、サンプル液の単位体積あたりの接触面積が大きくなるようにすることが好ましい。そうすれば、作用電極がサンプル液の誘電率等の影響を受けやすくなり、サンプル液に含まれる被検物質の濃度を感度良く検知できるからである。
また、サンプル液の単位体積あたりの接触面積を大きくするためには、例えば、作用電極1の形状を多数の開口部を有する形状とすればよい。多数の開口部を有する形状の例には、図9に示すスダレ形、図10に示す同心円形もしくはドーナツ形、図11に示す格子形等がある。
溜り部11の収容量は、被検物質の電気的な特性により定められるものであるが、下記の実施例のような生体材料の検知に当たっては、0.001〜25μL(マイクロリットル)が好ましく、更には0.1μL〜2.0μLが好ましい。
前記溜り部11の平面視形状は特に制限されないが、製造の容易性からすれば、通常は、方形(長方形を含む)又は円形(楕円形を含む)が好ましい。方形の場合の一辺長さ又は円形の場合の直径は、取扱いの容易さ、反応場の広さ、必要なサンプル液量等を考えると、2〜4mm程度が好ましい。
作用電極1上に形成される壁部4Aや作用電極1まわりに形成される周壁4は、開口全体を覆う形状の他、例えば壁の一部が切り欠かれて平面視C字型に形成されていてもよい。
具体的には、図13に示すパッケージ110では、ガラスエポキシ基板10上に対電極2が設けられている。この対電極2上には電極パッド8Aと絶縁体3とが形成されている。電極パッド8Aは電極パッド8Bにボンディングワイヤ9Aを介して接続されている。電極パッド8Bはガラスエポキシ基板10を貫通して取り付けられている。絶縁体3上には、作用電極1とそれを囲う周壁4とが形成されている。作用電極1は、絶縁体3上に形成された電極パッド8Cにボンディングワイヤ9Bを介して接続されている。電極パッド8Cは、ガラスエポキシ基板10を貫通して取り付けられた電極パッド8Dにボンディングワイヤ9Cを介して接続されている。
図14に示すユニット120では、図13に示すパッケージ110が固定台50の上面に固定されている。固定台50には、電極パッド8B及び8Dに対応した位置に固定台50を貫通する穴51が形成されている。この固定台50の下方には複数のばね13を介してベース14が取り付けられている。ばね13はベース14から固定台50を引き離すように付勢されている。ベース14には上面から上方へピン状電極12,12が突出している。これらのピン状電極12,12は固定台50の穴51に差し込まれており、ばね13の付勢力に抗して、固定台50をベース側へ押し付けるとピン状電極12,12が電極パッド8B,8Dに接触する。これにより、図示省略する電源装置からの電力が電極パッド8B,8Dを介して被検物質検知センサー100に供給される。
ここで、図17は本発明に係る被検物質検知センサー100の反応場Rの説明図であり、従来の二端子信号変換素子を有するセンサーの反応場Rが図18に示すように作用電極の上に限られていたのに対して、本発明に係る被検物質検知センサー100での反応場Rは、被検物質に接する作用電極側面から出た電気力線Aのほとんどが作用電極1まわりの絶縁体3を通して対電極2に入り込むように、広く構成される。このように、被検物質検知センサー100によれば、作用電極1まわりの絶縁体膜の広く平坦な領域に一様な電界を印加することができる。
これにより、被検物質検知センサー100によれば従来に比べ高精度で同様な被検物質に対しての電圧が得られるので、安定した電気化学計測データが得られることとなる。
本発明の被検物質検知センサー(T0005)と比較用センサー(T0020)の動作特性を調べた。それぞれのセンサーチップを図2に準じて接続して動作特性を調べた。ただし、電源は交流電源としてファンクションジェネレータを用い、電流計の代わりにオシロスコープを用いた。
それぞれのセンサーの反応場に超純水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)及び血清を各々、マイクロピペットで一定量、例えば1μLを滴下し、出力電圧の最大値を比較した。ファンクションジェネレータを用いて電圧50mV、周波数100Hzの正弦波を入力し、その出力電圧をオシロスコープを用いて計測した。オシロスコープの出力電圧は16周期の平均値で表示し、その最大値を自動測定モードで取得した。電圧値の最小単位は4mVである。得られたデータを表1にまとめた。ファンクションジェネレータとして岩通計測株式会社製ファンクションジェネレータSG−4104を用い、オシロスコープとして岩通計測株式会社製デジタルオシロスコープDS−5102を用いた。
出力電圧値のバラツキに大きな差がある要因の一つとして、溜り部11があるとサンプルがセル底部の反応場に接する面積が一定であり、溜り部11がない場合には反応場に接する面積が一定とならないことが考えられる。また、一方で、超純水の場合には、高い表面張力により、溶液が広がらず反応場に接する面積が一定に保たれやすいため、両センサーともに出力電圧値のバラツキが小さかったと推定している。また、溜り部をもたない比較センサーの場合、溜り部をもつ実施例1に比べて出力電圧の平均値が超純水滴下で2.5mV、PBS滴下で4mV及び血清滴下で5mVだけ増大していた。比較センサーの場合は、標準偏差の大きさに加えて、システマティックエラーが含まれていると考えられる。
なお、後述の実施例2では溶媒としてPBSを用いたが、セルを持たない比較例1では、PBSを用いた場合の標準偏差が5.8mVで、グラフ上の最小目盛、つまり2mVを大きく上回る(図19参照)ため、これを抗原抗体反応の高感度検出に使用することは難しい。
実施例1に示す被検物質検知センサーとして8セル集積型被検物質検知センサーを用い、特定のタンパク質であるα−fetoprotein(AFP)をホモジニアス法と交流計測とで検知と測定とを行った。手順は次の通り。
(1)濃度100ng/mLの抗AFP(α−fetoprotein)抗体のPBS希釈液を、4本の試験管にそれぞれ5μLずつ入れた。このようにして抗体含有の試験管を用意した。
(2)4本の試験管に、AFPを含まないPBSをそれぞれ5μLずつ入れた。このようにして抗体非含有の試験管を用意した。
(3)濃度0.0、1.6、6.25、25ng/mLのAFPのPBS希釈液5μLを上記各シリーズの試験管、つまり抗体含有の試験管と抗体非含有の試験管とに滴下し、攪拌した。その結果、次の8種類の反応液を含む試験管が得られる。
・サンプルA:AFP抗体(100ng/mL)5μL+AFP抗原(0ng/mL)(PBS)5μL
・サンプルB:AFP抗体(100ng/mL)5μL+AFP抗原(1.6ng/mL)5μL
・サンプルC:AFP抗体(100ng/mL)5μL+AFP抗原(6.25ng/mL)5μL
・サンプルD:AFP抗体(100ng/mL)5μL+AFP抗原(25ng/mL)5μL
・サンプルE:PBS 5μL+AFP抗原(0ng/mL)(PBS)5μL
・サンプルF:PBS 5μL+AFP抗原(1.6ng/mL)5μL
・サンプルG:PBS 5μL+AFP抗原(6.25ng/mL)5μL
・サンプルH:PBS 5μL+AFP抗原(25ng/mL)5μL
(4)上記各試験管を密閉し、室温で一昼夜保存した。
(5)上記8種類の反応液を1チップ上の8個のセルに各々0.85μLずつ滴下した。(6)電極間に振幅10V、周波数20Hzの正弦波の電圧を与え、濃度の異なるセルごとに出力電圧を継続的に計測した。
(7)同様の実験を、別の8セル集積型被検物質検知センサーを3つ用いて実行し、平均値を取った。
図3には、溜り部11の内部に作用電極1のほか参照電極6を設けた構造を示した。作用電極1と対電極2の二つの電極では両者の電位の差を決定することはできても、電極上に分子が付着し、それぞれの電位、特に基板上の電極電位がずれてしまえば、真の電位を決定することはできない。この為、基準としてアースの役割をする、つまり電位が変化しない参照電極6を用意すれば両電極の電位を決定することができる。
また、抗原抗体反応の経時的変化を観測したいとき、作用電極1に一定の電位を与える場合、表面の抗体に抗原が反応し始め、表面の電界が変化したときなどに有用である。なお、配線は図8と同様である。
電気化学セルにおける参照電極1の接地位置は作用電極1と対電極2と同じセル内とする。図4、5、7、8のような構造では通常の電気化学的意味の参照電極として役割を果たすことができない。しかし、被検物質検知センサーでは、基板上の作用電極1や参照電極6から出ている電気力線のほとんどは絶縁体膜を通して基板に入り込む。いわば作用電極1の洩れ電場が検出に寄与する。この為、外部に参照電極6を曝しても、対電極2−参照電極6間の電位差は一定に保たれ、参照電極6と作用電極1の電位差を計測することにより、参照電極6の電位を決定することができる。
図4と同様な理由で参照電極6として機能するが、図4では参照電極6を露出してあるのに比べて図5では参照電極6を埋設することにより、参照電極6を防護することができた。露出してある場合には、図16のように複数ある電極の内任意の電極を参照電極6として用いることが可能となるが、溜り部11のサンプルや埃により参照電極6が汚れる可能性がある。これを避ける為、予め参照電極6に特化した電極を埋設することにより、安定した電位計測が可能となる。
被検物質は主としてタンパク質になり、抗原抗体反応中の荷電状態は、通常問題視されない。しかし、発明者の経験から、イオン性が高く帯電しやすい被検物質、例えば、カルシウムを配位するカルモジュリンなどでは高感度が得られる傾向があるが、帯電している可能性がある。こうしたサンプルについては塩橋を用いてイオン濃度をコントロールすることにより、安定した反応が得られる可能性がある。将来、一検体他項目の検出をするときにイオン交換膜を反応場間に設けることにより、被検物質の交差をある程度回避できると考えられる。
カルモジュリンの場合にはカルシウムイオンの交換膜を設けることが効果的と考える。被検物質にしたがって交換膜を準備する必要がある。一検体他項目検出において、複数の被検物質の大きさが異なる場合には塩橋の大きさや直径を被検物質の大きさに合わせ、選択的に塩橋を通過させることが考えられる。
2:対電極
3:絶縁体
4、4’:周壁
5:試料液
6:参照電極
7:隔壁
8A〜8D:電極パッド
9A〜9C:ボンディングワイヤ
10:ガラスエポキシ基板
11:溜り部
12:ピン状電極
13:ばね
14:ソケット
15:囲い
16:カバー
17:開口部
18:ポテンシオスタット
21:作用電極
22:対電極
23:絶縁体
24:周壁
25:試料液
100:被検物質検知センサー
110:パッケージ
120:ユニット
130:被検物質検知センサー装置
R:反応場
Claims (7)
- 作用電極と対電極とが絶縁体を介して一体化されてなり、前記作用電極に被検物質が接触することで出力電圧が変化する被検物質検知センサーであって、
前記作用電極は、前記対電極及び前記絶縁体よりも小さく形成されて、前記絶縁体の表面の一部に設けられており、
前記絶縁体には前記作用電極を囲う周壁が形成されていて前記周壁が被検物質を収容する溜り部として機能し、
前記作用電極とは別に参照電極が設けられており、前記参照電極が前記周壁に埋設されていることを特徴とする被検物質検知センサー。 - 作用電極と対電極とが絶縁体を介して一体化されてなり、前記作用電極と前記対電極とには電源が接続されて前記作用電極に被検物質が接触することで出力電圧が変化する被検物質検知センサーであって、
前記対電極は板状に形成され、
前記絶縁体は前記対電極の上面を覆っており、
前記作用電極は前記絶縁体の表面の一部に設けられて前記作用電極と前記絶縁体との接触面積が前記対電極と前記絶縁体との接触面積より小さく設定されており、
前記絶縁体には前記作用電極を囲う周壁が形成されていて前記周壁が前記被検物質を収容する溜り部として機能し、
前記作用電極とは別に参照電極が設けられており、前記参照電極は、前記周壁に埋設されていることを特徴とする被検物質検知センサー。 - 前記作用電極が複数個設けられていて、個々の作用電極にそれぞれ前記溜り部が設けられている請求項1又は2に記載の被検物質検知センサー。
- 一つの前記溜り部内に複数の作用電極が配置されてなる請求項1又は2に記載の被検物質検知センサー。
- 前記溜り部は、前記作用電極の安定作用を補償する所定量の被検物質を貯留する請求項1又は2に記載の被検物質検知センサー。
- 前記溜り部を形成する周壁が撥水性を有する請求項1〜5の何れかに記載の被検物質検知センサー。
- 前記溜り部を形成する周壁が撥油性を有する請求項1〜5の何れかに記載の被検物質検知センサー。
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