JP2013241656A - クロムめっき物及びクロムめっき皮膜 - Google Patents

クロムめっき物及びクロムめっき皮膜 Download PDF

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Abstract

【課題】三価のクロムをクロム源として用いて製造された、耐摩耗性の向上したクロムめっき物及びクロムめっき皮膜を提供すること。
【解決手段】本発明のクロムめっき物は、母材の表面にクロムめっき皮膜が設けられてなる。クロムめっき皮膜中に、窒化物、炭化物又は酸化物からなる粒子が均一に分散されている。前記粒子は、クロムめっき皮膜中に10〜30質量%含有されており、かつ単分散状態でクロムめっき皮膜中に存在している。
【選択図】図1

Description

本発明は、クロムめっき浴を用いて製造されたクロムめっき物及びクロムめっき皮膜に関する。
クロムめっきは、大気中で腐食せず光沢を失わないので、装飾めっきとして広く用いられている。また高い硬度と低い摩擦係数を有するので、耐摩耗性を要する機械部品等に広く用いられている。しかしこのめっきに用いられるめっき液には多量の六価クロムが用いられている。六価クロムは環境負荷が高いことが懸念されるので、その懸念の少ない三価クロムのめっき液を用いたクロムめっきの開発が種々検討されている。
例えば特許文献1においては、三価クロムめっき皮膜中に、耐摩耗性の硬質粒子や自己潤滑粒子を含有させることが記載されている。同文献に記載の技術によれば、クロム源として三価のクロムを用いているので六価のクロムを用いた場合に比べて環境負荷は小さくなる。また、めっき皮膜中に硬質粒子等を含有しているので、めっき皮膜の耐摩耗性が向上する。
特開平6−316789号公報
しかし、めっき皮膜中に硬質粒子等を分散含有させる技術は、六価クロムのめっき液を用いた場合でも従来から行われており、単に硬質粒子等をめっき皮膜中に含有させるだけでは、該皮膜の耐摩耗性を高めることに限界があった。
本発明の課題は、前述した従来技術が有する種々の欠点を解消し得るクロムめっき物及びクロムめっき皮膜を提供することにある。
本発明は、母材の表面にクロムめっき皮膜が設けられてなるクロムめっき物において、
前記クロムめっき皮膜中に、窒化物、炭化物又は酸化物からなる複数の粒子が均一に分散されており、
前記粒子は、前記クロムめっき皮膜中に10〜30容量%含有されており、かつ単分散状態で前記クロムめっき皮膜中に存在している、ことを特徴とするクロムめっき物を提供することにより、前記課題を解決したものである。
更に本発明は、複数のセラミックス粒子が均一に分散されてなるクロムめっき皮膜であって、
前記セラミックス粒子は、前記クロムめっき皮膜中に10〜30容量%含有されており、かつ単分散状態で前記クロムめっき皮膜中に存在している、ことを特徴とするクロムめっき皮膜を提供することにより、前記課題を解決したものである。
本発明によれば、三価のクロムをクロム源として用いて製造された、耐摩耗性の向上したクロムめっき物及びクロムめっき皮膜が提供される。
図1(a)及び(b)は、実施例1で得られたクロムめっき物におけるめっき皮膜の縦断面及び表面の走査型電子顕微鏡像である。 図2(a)及び(b)は、実施例1で得られたクロムめっき物におけるめっき皮膜の縦断面及び表面の走査型電子顕微鏡像である。 図3は、実施例4で得られたクロムめっき物におけるめっき皮膜の表面の走査型電子顕微鏡像である。 図4は、実施例5で得られたクロムめっき物におけるめっき皮膜の表面の走査型電子顕微鏡像である。
本発明のクロムめっき物は、母材の表面にクロムめっき皮膜が設けられてなるものである。このクロムめっき皮膜は、三価のクロムを含有し、かつ六価のクロムを実質的に含有しないめっき液を用いて製造されたものである。クロム源として三価のクロムを用いることで、緻密なめっき皮膜を製造することができる。これに対して六価のクロムを用いると、皮膜は緻密とはならず、表面に多数のクラックが生じためっき皮膜が形成されてしまう。
クロムめっき物の母材を構成する材料としては、前記めっき液を用いたクロムめっきが可能な材料を用いることができる。そのような材料としては、一般に金属材料が挙げられるが、非金属材料であってもよい。金属材料としては、例えば鉄若しくはアルミニウム又はそれらを含む合金の鋳造品や鍛造品が挙げられる。また、クロムめっき物におけるクロムめっき皮膜は、クロムめっき物の具体的な用途に応じ、母材の表面全域に形成されていてもよく、あるいは母材の表面の一部にのみ形成されていてもよい。
クロムめっき皮膜は、粒子を除く部位は実質的にクロム(金属クロム)から構成されているが、クロム以外の元素を更に含んでいてもよい。例えばクロムの炭化物を含んでいてもよい。クロムめっき皮膜が、金属クロムに加えて、クロムの炭化物を含んでいると、該めっき皮膜の耐摩耗性を向上させることができる。この観点から、クロムめっき皮膜は、前記粒子を除き、クロムを93〜99.5質量%含み、更に炭素を0.5〜7質量%含んでいることが好ましく、クロムを99.3〜99.5質量%含み、更に炭素を0.5〜0.7質量%含んでいることが好ましい。クロムめっき皮膜中に含まれるクロム及び炭素の量は、クロムめっき皮膜をEPMAで元素分析することで測定される。
クロムめっき皮膜中には粒子が含有されている。この粒子は、クロムめっき皮膜の耐摩耗性を高める目的で含有されている(この意味で、以下、この粒子のことを「硬質粒子」とも言う。)。硬質粒子は、めっきによって析出したクロムをマトリックスにして、該マトリックス中に分散している。硬質粒子は、主として粒界や欠陥に存在し、それによってクラックの伝播が抑えられ、疲労や破壊、剥離が効果的に緩和される。また、表面に露出した硬質粒子は相手摺動面との摩擦や摩耗作用において硬質粒子自身が摺動面として相手摺動面と接触作用し、耐摩耗及び耐焼付けの向上や油膜形成の助けとなる。
本発明は、クロムめっき皮膜における硬質粒子の分散状態に特徴の一つを有している。詳細には、硬質粒子は、めっき皮膜中に均一に分散されている。均一に分散とは、めっき皮膜の任意の断面を観察したときに、そこに存在する硬質粒子の数が略一定になっていることを言う。例えば、めっき皮膜の任意の断面を1000倍の倍率で、100μm×100μmの視野5箇所を電子顕微鏡観察したときに、そこに存在する硬質粒子の分布状態が不均一であったり、偏在していることが観察されない場合、硬質粒子は均一に分散されていると言える。めっき皮膜中に硬質粒子が均一に分散していることによって、めっき皮膜の耐摩耗性が向上する。これに対して、例えば六価のクロムのめっき液を用いてめっき皮膜を形成すると、該めっき皮膜の厚み方向に延びるクラック(亀裂)が形成され、該クラック中に硬質粒子が偏在することが知られている。その結果、六価のクロムのめっき液を用いて形成されためっき皮膜は、硬質粒子を含んでいたとしても、耐摩耗性の向上に限界がある。
めっき皮膜中に含有される硬質粒子は、該皮膜中に均一に分散していることに加えて、単分散状態で存在している。単分散状態とは、一次硬質粒子が実質的に凝集せずに存在している状態のことである。例えばめっき皮膜の任意の断面をレーザー顕微鏡で観察し、1000倍の倍率で100μm×100μmの視野5箇所を電子顕微鏡観察したときに、そこに存在する硬質粒子の総数(一次粒子の総数と二次粒子の総数との総和)に対する、二次粒子の総数の割合が5%以下である場合には、硬質粒子は単分散状態で存在していると言える。
更に、めっき皮膜中に含有される硬質粒子は、該めっき皮膜中における含有量が10〜30容量%と高い割合になっている。このような高割合で硬質粒子を含有させることで、該硬質粒子を均一にかつ単分散状態で分散させることとの相乗効果で、めっき皮膜の耐摩耗性を向上させることができる。硬質粒子の含有量が10容量%未満である場合には、硬質粒子を含有させたことの効果が不十分であり、めっき皮膜の耐摩耗性を十分に高めることができない。逆に、硬質粒子の含有量が30容量%超である場合には、クロムと硬質粒子との割合のバランスが崩れてしまい、結果的に耐摩耗性の向上を望めない。めっき皮膜の耐摩耗性の一層の向上の観点からは、めっき皮膜中の硬質粒子の含有量を15〜30容量%とすることが好ましい。めっき皮膜中に含有される硬質粒子の割合は、レーザー顕微鏡を用いて、1000倍の倍率で観察する。そして30μm四方の枠内に存在するセラミックス粒子が占有する面積の比率を算出する。なお、この方法で測定された値は厳密にはセラミックス粒子が占有する面積%であるが、本発明ではこれを便宜上「容積%」と呼んでいる(以下同じ。)。
めっき皮膜中に含有される硬質粒子の割合やその分散状態を、上述したとおりとするためには、例えば後述するめっき液を用いてクロムめっきを行えばよい。
めっき皮膜の厚みは、クロムめっき物の具体的な用途に応じて適切に設定すればよい。本発明のクロムめっき物は、硬質めっき及び装飾めっきのいずれにも適用されるものであるところ、硬質めっき及び装飾めっきの双方を含めためっき皮膜の厚みは1〜500μm、特に3〜300μmとすることが好ましい。特に硬質めっきの場合、厚みは10〜500μm、特に5〜300μmとすることが好ましく、装飾めっきの場合、厚みは1〜5μm、特に2〜4μmとすることが好ましい。めっき皮膜の厚みは、その縦断面を、レーザー顕微鏡(OLYMPUS社製 LEXTO OLS1100)を用いて400倍の倍率に拡大して測定することができる。
めっき皮膜中に含有される硬質粒子としては、該皮膜の耐摩耗性を向上させ得るものを用いることができる。そのような硬質粒子としては、例えば窒化物、炭化物又は酸化物からなるものを用いることができる。これらの硬質粒子は一種単独で、又は二種以上を組み合わせて用いることができる。特に、硬質粒子はセラミックス粒子であることが、めっき皮膜の耐摩耗性の向上の点から好ましい。そのようなセラミックス粒子としては、例えばAlN、Si34やBNなどの金属又は半金属の窒化物、TiC、SiC、Cr32、B4C、WCなどの金属又は半金属の炭化物、Al23、Fe34及びTiO2などの金属酸化物が挙げられる。
硬質粒子の大きさは、クロムめっき物の具体的な用途や、めっき皮膜の厚み等に応じて適切に選択できる。特に粒径を、好ましくは0.1〜10μm、更に好ましくは0.3〜5μmとすることで、先に述べた疲労や破壊、剥離が効果的に緩和される等の効果が一層顕著となる。めっき皮膜中の硬質粒子の平均粒径は、レーザー顕微鏡(OLYMPUS社製 OLS1100)によって測定される。
硬質粒子の形状も、クロムめっき物の具体的な用途や、めっき皮膜の厚み等に応じて適切に選択できる。例えば球状、多面体状、紡錘状、針状又はそれらの組み合わせなどを用いることができる。相手摺動面との摩擦の低減や摩耗作用の向上の点からは、球状粒子を用いることが好ましい。
めっき皮膜には、上述した耐摩耗性の向上に寄与する硬質粒子に加え、必要に応じ自己潤滑性を有する粒子を併用して含有させてもよい。これによって、めっき皮膜の耐摩耗性を一層向上させることができる。自己潤滑性を有する粒子としては、例えばグラファイト、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、フッ素樹脂、窒化ボロンなどが挙げられる。これらの粒子は、めっき皮膜中に好ましくは10〜30容量%、更に好ましくは15〜30容量%含有される。これらの粒子は、先に述べた硬質粒子と同様に、めっき皮膜中に均一に分散されていてもよく、また、後述する微小亀裂内(A1)に含有されていてもよい。めっき皮膜中に均一に分散させる場合は単分散状態で分散していることが好ましい。更に、これらの粒子の形状は、例えば球状、多面体状、紡錘状、針状又はそれらの組み合わせなどとすることができる。特に球状であることが好ましい。
めっき皮膜中に自己潤滑性を有する粒子を含有させる方法としては、前記以外に、本めっき皮膜の表面に溝幅が好ましくは0.1〜6.0μm、更に好ましくは0.2〜6.0μm、一層好ましくは0.2〜2.0μmの複数の微小亀裂(A1)を積極的に生成させ、この微少亀裂(A1)中に自己潤滑性を有する粒子を含有させる方法がある。複数の前記微少亀裂(A1)は、クロムめっき物表面における表面占有率が好ましくは2〜12面積%であり、更に好ましくは4〜10面積%である。分布密度は好ましくは200〜2000本/cm、更に好ましくは250〜1500本/cmである。表面占有率や分布密度がこの範囲内であると、クロムめっき皮膜の強度等の諸物性を低下させることなくクロムめっき物の耐摩耗性を一層向上させることができるので好ましい。
前記微小亀裂(A1)の溝幅は、めっき皮膜の表面を1000の倍率で顕微鏡観察し、100μm×100μmの視野で任意に5個の亀裂を抽出して、それらの溝幅を測定し、それらの平均値とする。
前記微少亀裂(A1)の表面占有率は、めっき皮膜表面の走査型電子顕微鏡写真から画像解析によって求める。具体的には、露出した面の走査型電子顕微鏡写真を撮影し、得られた写真を画像処理解析装置に取り込み、画像ソフトウェアを用いて画像処理する。写真中のめっき皮膜表面の面積(128μm×16μm)から微小亀裂の無い部分の合計面積を差し引いたものを微小亀裂の面積とする。そしてめっき皮膜表面の面積(128μm×16μm)を100面積%として、微小亀裂の面積の割合を求める。めっき皮膜に形成された前記微小亀裂(A1)の分布密度(本/cm)は、露出した面を10×10倍の面積倍率で写真撮影し、得られた写真の皮膜表面に長さ10cmの直線を任意に5〜10本引き、直線と微小亀裂の交点を数え、平均することにより求める。
微小亀裂(A1)内に含まれる自己潤滑性を有する粒子は、(i)該微小亀裂(A1)内に完全に位置していて、めっき皮膜の表面よりも外方に露出していなくてもよい。あるいはこの逆に、(ii)自己潤滑性を有する粒子は、めっき皮膜の表面よりも外方に露出していてもよい。(i)の場合、本発明のクロムめっき物の使用によってめっき皮膜が減耗してくることによって、微小亀裂(A1)内に存在している自己潤滑性を有する粒子が、めっき皮膜の表面よりも外方に露出し始め、潤滑効果が発揮される。
クロムめっき皮膜中に自己潤滑性を有する粒子を含有させる具体的な方法は、以下の(イ)及び(ロ)の工程を有する。
(イ)微少亀裂(A1)生成工程。
(ロ)自己潤滑性を有する粒子を含有させる工程。
(イ)工程は、クロムめっき皮膜を熱処理(P1)して、溝幅が好ましくは0.1〜6.0μm、更に好ましくは0.2〜6.0μm、一層好ましくは0.2〜4.0μmの微少亀裂を生成させる工程である。
クロムめっき皮膜を熱処理(P1)する条件としては、大気下に200℃以上、特に200〜400℃とすることが好ましい。加熱時間は、温度がこの範囲であることを条件として、30〜120分することが好ましい。
次いで(ロ)工程で、微少亀裂(A1)内に、自己潤滑性を有する粒子を含有させる。(ロ)工程では、自己潤滑性を有する粒子を溶解させた溶液に、該微少亀裂(A1)を有するクロムめっき物を減圧下又は真空雰囲気下に浸漬させる。これにより、微少亀裂(A1)内へ自己潤滑性を有する粒子を溶解させた溶解を浸透させることができる。浸漬後、乾燥を行い溶媒を除去することにより、微少亀裂(A1)内に自己潤滑性を有する粒子を析出・含有させることができる。なお、自己潤滑性を有する粒子を溶解させた溶液の濃度は、特に制限なく、自己潤滑性を有する粒子の飽和溶解度以下であればよい。
また、本発明のクロムめっき皮膜は、前記(イ)微少亀裂(A1)生成工程で得られるものの中、溝幅が好ましくは0.2〜2.0μm、更に好ましくは0.2〜0.5μmの微少亀裂(A1)を有するクロムめっき皮膜を有するものは、クロムめっき物としてそのまま用いことができる。このような微少亀裂(A1)を有するものは油膜が微少亀裂(A1)内に浸透し安定した油膜が維持される。複数の前記微少亀裂(A1)は、クロムめっき物表面において、その表面占有率が好ましくは2〜15面積%、更に好ましくは4〜12面積%であり、その分布密度が好ましくは150〜2000本/cm、更に好ましくは200〜1500本/cmであると、安定した油膜形成が可能になる。
また本発明のクロムめっき皮膜は、溝幅が好ましくは0.1〜2.0μm、更に好ましくは0.2〜2.0μm、一層好ましくは0.2〜0.5μmの複数の網目状の微小亀裂(A2)を有し、またその微小亀裂(A2)の表面占有率が好ましくは2〜12面積%、更に好ましくは5〜10面積%であるクロムめっき皮膜であってもよい。網目状の微少亀裂(A2)を有するめっき皮膜は、該めっき皮膜の厚み方向に亀裂が延びて亀裂が母材に到達することや、微小亀裂(A2)の溝幅が広がることによるめっき皮膜の物性の劣化現象を抑制することができるので優れた耐食性を有したものになる。
網目状の微少亀裂(A2)は、その分布密度が好ましくは150〜1500本/cm、更に好ましくは200〜1500本/cmであると、クロムめっき物の耐食性を一層向上させることができる。網目状の微少亀裂(A2)における溝幅、表面占有率及び分布密度の測定は、前述した微少亀裂(A1)についての測定に準じて行うことができる。
クロムめっき物の具体的な用途によっては、母材の表面とめっき皮膜との間に1層又は2層以上の下地膜を設けてもよい。これに加えて、又はこれに代えて、めっき皮膜の上に1層又は2層以上の上層膜を設けてもよい。下地膜としては、例えばアルミナ粒子による硬質粒子複合分散めっき皮膜や、窒化物層から構成されるものを用いることができる。一方、上層膜としては、例えば二硫化モリブデン粒子による固体潤滑粒子複合分散めっき皮膜や、窒化珪素粒子を含有するニッケル−コバルト−リン合金複合めっき皮膜から構成されるものを用いることができる。
めっき皮膜は、先に述べたとおり、三価のクロムを含有し、かつ六価のクロムを実質的に含有しないめっき液を用いて製造される。六価のクロムを実質的に含有しないとは、めっき液の製造過程において不可避的に混入及び/又は残留する微量の六価のクロム、例えば2ppm以下で存在する六価クロムは許容するが、意図的に添加及び/又は残留させた六価のクロムを排除する趣旨である。このめっき液は、三価クロム化合物、pH緩衝剤、アミノカルボン酸化合物、スルファミン酸塩化合物、アミノカルボニル化合物及び硬質粒子を含有するものであることが好ましい。
めっき液に含まれる三価クロム化合物としては、クロムの価数が三価である水溶性化合物を特に制限なく用いることができる。そのような化合物としては、例えば塩化クロム、硝酸クロム、硫酸クロム及びリン酸クロムなどの無機酸クロム、乳酸クロム、グルコン酸クロム、グリコール酸クロム、シュウ酸クロム、リンゴ酸クロム、マレイン酸クロム、マロン酸クロム、クエン酸クロム、酢酸クロム及び酒石酸クロムなどの有機酸クロムが挙げられる。これらの三価クロム化合物は、一種又は二種以上を組み合わせて用いることができる。めっき液中における三価のクロムの濃度は、目的とする構造のクロムめっき皮膜を首尾よく形成し得る点から、好ましくは0.2〜1.4mol/リットル、更に好ましくは0.4〜1.2mol/リットルとする。
めっき液に含まれるpH緩衝剤は、クロムめっきを行うときのpHを適切なものにして、目的とする構造のクロムめっき皮膜を首尾よく形成する目的で配合される。この目的に適したpH緩衝剤としては例えばホウ酸、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、硫酸アンモニウム、リン酸、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、炭酸ナトリウム、及び炭酸水素ナトリウムなどが挙げられる。特にホウ酸、ホウ酸ナトリウム又はホウ酸カリウムを用いることが好ましい。これらの化合物は単独で用いることもでき、あるいは二種以上を組み合わせた緩衝系として用いることもできる。pH緩衝剤の配合量は、めっき液のpHを好ましくは0.5〜2.0、更に好ましくは0.8〜1.5に維持し得る量とすることができる。特にpH緩衝剤としてホウ酸を用いると、pH緩衝作用のほかに、還元によって生成する金属クロムの結晶が微細化するという利点がある。
めっき液に含まれるアミノカルボン酸化合物は、めっき液中において三価のクロムと錯体を形成し、めっき液の安定化を図る目的や、目的とする構造のクロムめっき皮膜を首尾よく形成する目的で配合される。アミノカルボン酸化合物は、分子中に少なくとも1個のアミノ基と、少なくとも1個のカルボキシル基とを有する化合物である。アミノカルボン酸化合物の例としては、グリシン、アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、及びアルギニンなどが挙げられる。特にグリシン又はアラニンを用いることが好ましい。これらの化合物は一種又は二種以上を組み合わせて用いることができる。アミノカルボン酸化合物は、めっき液中の三価のクロム1molに対して、0.3〜2mol、特に0.5〜1.7mol配合されることが、安定したクロム錯体のめっき液が得られ、適正な電解めっきを行うことができる点から好ましい。同様の理由により、めっき液中のアミノカルボン酸化合物の濃度は、0.4〜1.7mol/リットル、特に0.5〜0.9mol/リットルとすることが好ましい。
めっき液に含まれるスルファミン酸塩化合物は、めっき液において主として支持電解質としての役割を有し、めっき液の電気伝導度を所定のレベルに高める目的で配合される。またスルファミン酸塩化合物は、めっき液のpH緩衝作用も有しているので、先に述べたpH緩衝剤との併用でめっき液のpHが一層安定化する。更にスルファミン酸塩化合物は、三価のクロムが還元するときの触媒作用も有し、それによって金属クロムの結晶の微細化作用や、クロム皮膜の光沢作用が発現する。スルファミン酸塩としては、例えばスルファミン酸アンモニウム、スルファミン酸ナトリウム又はスルファミン酸カリウムを用いることができる。これらの化合物は一種又は二種以上を組み合わせて用いることができる。スルファミン酸塩は、めっき液中の三価のクロム1molに対して、0.3〜2.5mol、特に0.5〜2mol配合されることが好ましい。このような配合量にすることで、電解めっき時の電圧が下がり、めっき液の液温の上昇が抑制されて、めっき皮膜の特性に影響を及ぼす水酸化クロムの生成が抑制されるからである。またクロムめっきの表面調整作用の安定化及びめっき皮膜の析出の安定化を図ることができるからである。同様の理由により、めっき液中のスルファミン酸塩の濃度は、0.4〜2.1mol/リットル、特に0.8〜1.9mol/リットルとすることが好ましい。
めっき液に含まれるアミノカルボニル化合物は、分子中に少なくとも1個のカルボニル基と、少なくとも1個のアミノ基とを有する化合物である。アミノカルボニル化合物は、三価のクロムの還元速度を高める作用を有する。この理由は次のとおりであると考えられる。すなわち、三価のクロムが金属クロムに還元される過程では二価のクロムが生成する。二価のクロムは陰極上や電気二重層の中に吸着された状態で存在していると考えられる。三価のクロムから金属クロムへの還元は、二価のクロムの還元が律速段階になっている。本発明者の検討の結果、アミノカルボニル化合物は、二価のクロムが金属クロムに還元する速度を高める働きを有することが判明した。その結果、三価のクロムが金属クロムに還元する速度が高まったものと本発明者は考えている。
また、アミノカルボニル化合物は、三価のクロムのオール化を抑制する作用も有する。三価のクロムが金属クロムに還元される過程では、加水分解とオール化の反応が陰極付近で生じ、金属クロムの電析が阻害されることがある。めっき液中にアミノカルボニル化合物が存在すると、該化合物が三価のクロムと錯体を形成する。この錯形成反応は、三価のクロムのオール化との競争反応になるので、三価のクロムのオール化を最小限に抑えることができる。このことによっても三価のクロムの還元速度が高まる。
これらの有利な作用に加えて、アミノカルボニル化合物は、該化合物に含まれる窒素原子をめっき皮膜に供給して該めっき皮膜を硬質化したり、めっき液のpHを維持したりするpH緩衝剤としての作用も有する。
特にアミノカルボニル化合物は、先に説明したスルファミン酸塩化合物と組み合わせて使用することによって顕著な効果を奏する。詳細には次のとおりである。めっき液においてスルファミン酸塩化合物を配合することの利点は上述したとおりであるところ、スルファミン酸塩化合物を用いることに起因してめっき皮膜の電着応力が増大する傾向にある。電着応力の増大はめっき皮膜にクラックを生じさせる原因となる。これに対して、スルファミン酸塩化合物とアミノカルボニル化合物とを共存させると、アミノカルボニル化合物によってクロムの結晶成長速度が速まるので、磁場の発達が阻害され、その結果、電着応力が低下する。これによってめっき皮膜にクラックが発生することが効果的に抑制され、緻密なめっき皮膜を得ることができる。かかる観点から、アミノカルボニル化合物に対するスルファミン酸塩の配合量はモル比で0.4〜1.5の範囲であることが好ましい。
硬質粒子は、めっき液中に、10〜100g/リットル、特に20〜60g/リットルとなるように配合されることが、めっき液の流動性が好適になるので、めっき皮膜への硬質粒子の取り込み量が適正量となる観点から好ましい。
硬質粒子は一般に比重が大きいことから、めっき液中において沈降しやすいことがある。また、粒径によっては硬質粒子どうしがめっき液中において凝集することもある。これらのことを防止する観点から、めっき液中に硬質粒子とともに、凝集防止剤として塩化アルミニウムを配合することが好ましい。また、各種の界面活性剤を配合することも好ましい。界面活性剤としては、モノアルキル硫酸塩及びアルキルポリオキシエチレン硫酸塩等のアニオン性界面活性剤、アルキルトリメチルアンモニウム塩及びジアルキルジメチルアンモニウム塩等のカチオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル及び脂肪酸ソルビタンエステル等のノニオン性界面活性剤等が挙げられる。
これらの凝集防止剤のうち塩化アルミニウムは、硬質粒子のゼータ電位をコントロールして粒子の分散性を向上させたり、硬質粒子どうしの凝集を防止したりする有利な効果を発現する。また、硬質粒子がめっき皮膜中へ均一に取り込まれやすくもなる。これらの効果を一層顕著なものとする観点から、塩化アルミニウムは、めっき液中の三価のクロム1molに対して、0.005〜0.5mol、特に0.01〜0.3mol配合されることが好ましい。同様の理由により、めっき液中の塩化アルミニウムの濃度は、0.02〜0.5mol/リットル、特に0.05〜0.3mol/リットルとすることが好ましい。なお、硬質粒子として、そのゼータ電位が20〜100mV、特に40〜70mVであるものを用いることが、該粒子の均一かつ単分散状態での分散の点から好ましい。硬質粒子のゼータ電位は例えば、Zetasizer Nano Series(Malvern Instruments Ltd.社製)によって測定される。
めっき液には水溶性有機溶剤を配合することもできる。水溶性有機溶剤の配合によって、めっきわたりを効果的に防止できる。また、硬質粒子の分散性が向上する。これらの観点から、水溶性有機溶剤は、めっき液中の三価のクロム1molに対して、0.4〜2.1mol、特に0.6〜1.3mol配合されることが好ましい。水溶性有機溶剤としては、例えばグリセリン、ポリエチレングリコール、エタノール、メタノール、及びn−プロパノールなどが挙げられる。
上述のとおり、めっき液にはpH緩衝剤が含まれており、液のpHが好ましくは0.5〜2.0、更に好ましくは0.8〜1.5の範囲に保たれている。
めっき液の媒体となる水としては、純水、イオン交換水、工業用水、水道水、蒸留水等が挙げられる。これらのうち、めっき液の保存安定性、皮膜特性に影響を及ぼさないことを前提として、経済性の面から、工業用水、水道水を使用することが好ましい。
めっき液に、更にスルホン酸基含有化合物又はその塩を含有させることにより前述した複数の網目状の微小亀裂(A2)を有したクロムめっき皮膜を形成させることができる。スルホン酸基含有化合物又はその塩は、皮膜の微小亀裂(A2)の密度を増大させる作用を有し、クロムめっき皮膜に優れた耐食性を付与する。
使用できるスルホン酸基含有化合物又はその塩としては、スルホン酸及びジスルホン酸並びにこれらの塩が好ましい。スルホン酸及びジスルホン酸の具体例としては、脂肪族スルホン酸(例えばメタンスルホン酸、エタンスルホン酸等)、脂肪族ジスルホン酸(例えばメタンジスルホン酸、エタンジスルホン酸等)、芳香族スルホン酸(例えばベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等)、芳香族ジスルホン酸(例えばベンゼンジスルホン酸等)等が挙げられる。これらの化合物は一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。めっき液中におけるスルホン酸基含有化合物又はその塩の濃度は、スルホン酸基基準で0.02〜0.1mol/Lが好ましく、0.04〜0.07mol/Lがより好ましい。
以上の各成分を含むめっき液を用いて、母材の表面にクロムめっきを行う条件としては、めっき浴の温度を好ましくは30〜60℃、更に好ましくは40〜60℃に設定する。電流密度は好ましくは15〜60A/dm2、更に好ましくは20〜40A/dm2に設定する。陽極としては、黒鉛や各種の寸法安定化陽極(DSA)、例えばTi−Pt電極などを用い、陰極としては、めっきの対象物を用いることができる。めっき皮膜の厚みは、めっき時間によって制御することができる。硬質粒子は、金属クロムの電析過程においてめっき皮膜中に取り込まれる。
上述の条件下に電解めっきによって形成されためっき皮膜においては、クロムは一般に非晶質となっている。非晶質のクロムのめっき皮膜はその硬度が結晶質のものに比較して低い傾向にある。そこで、電解めっきによって形成されためっき皮膜を熱処理(P2)することによって結晶化して、結晶質のクロムの皮膜とすることもできる。熱処理の条件としては、大気下に150〜300℃とすることが好ましい。加熱時間は、温度がこの範囲であることを条件として、30〜60分とすることが好ましい。
なお、クロムめっき皮膜は、加熱処理温度が200℃以上になると微少亀裂(A1)が生成されることから、前記熱処理(P2)は、前述した熱処理(P1)を兼ねてもよい。
電解めっきによって形成されためっき皮膜中には、一般に、めっき液中に含まれる含炭素化合物に由来する炭素成分が含まれている。めっき皮膜中に炭素成分が含まれている状態下に前記の熱処理を行うと、炭素成分とクロムとが反応して、めっき皮膜中にクロムの炭化物が生成する。この炭化物は、めっき皮膜の硬度を高めることに寄与するので好ましい。この炭化物の生成の程度は、電解めっきによって形成されためっき皮膜の有機錯体の形成の程度によって、該めっき皮膜中に残留する含炭素化合物の量をコントロールすることで制御できる。
母材の表面に電解めっきを行うのに先立ち、及び/又は電解めっき後に、付加的な工程を行うこともできる。例えば、母材の表面に電解めっきを行うのに先立ち、母材の表面とめっき皮膜との間に1層又は2層以上の追加の下地膜を形成する工程を行うことができる。あるいは、電解めっきを行い、めっき皮膜を形成した後に、該めっき皮膜の上に、1層又は2層以上の追加の上層膜を形成する工程を行うことができる。これら追加の膜の形成工程としては、当該技術分野において公知の方法を適宜採用することができる。また、付加工程として、前述した微少亀裂内(A1)を形成さるため(イ)工程を行ってもよいし、更に微少亀裂内(A1)内に自己潤滑性を有する粒子を含有させるため、(イ)工程に引き続き(ロ)工程を行ってもよい。
このようにして製造されたクロムめっき物は、例えばレシプロ方式の内燃機関のピストンリング、各種のロール、ショックアブソーバ等の摺動部材として特に好適なものとなる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「%」は「質量%」を意味する。
〔実施例1及び2並びに比較例1〕
以下の表1に示す成分を水に添加して、同表に示す組成を有する三価のクロムのめっき液を調製した。得られためっき液を用い、同表に示す条件で電解めっきを行った。陽極としては高密度黒鉛板を用いた。陰極としてはS45Cみがき鋼板を用いた。実施例1及び2で得られたクロムめっき物におけるめっき皮膜の縦断面及び表面の走査型電子顕微鏡像を図1及び2に示す。
〔比較例2〕
特許文献1(特開平6−316789号公報)の実施例1の追試験を行った。すなわち、三価クロムめっき浴組成として、100g/lのCrCl36H2O、80g/lのHCOOK、10g/lのNH3Br、50g/lのNH4Clを含み、pH3.0に調節した浴を用い、陽極フェライト電極、陰極を黄銅板とし、硬質粒子としてα−SiC(平均粒径0.5μm)を5g/l添加し、8A/dm2で120分間電着した。
〔評価〕
得られためっき物におけるクロムめっき皮膜中に含まれるクロム及び炭素の量を以下の方法で測定した。また、めっき皮膜の厚みを、先に述べた方法で測定した。更に、めっき皮膜の表面の外観を目視観察して光沢の程度及びクラックの発生の有無を評価した。更にめっき皮膜中の硬質粒子の含有量を以下の方法で測定し、また硬質粒子の分散性を以下の方法で評価した。更に以下の方法で、めっき皮膜のビッカース硬度を測定し、耐摩耗性を以下の方法で評価した。それらの結果を以下の表2に示す。
〔めっき皮膜中に含まれるクロム及び炭素の量〕
EPMAにより元素分析を行って測定した。なお、表中の数値は硬質粒子を除いて算出した値である。
〔硬質粒子の含有量、二次粒子の含有量及び分散性の評価〕
めっき皮膜の断面を観察したときに、単位面積あたりの観察視野に占めるセラミックス粒子の面積率(容量%)を求めた。この面積率は次の方法で測定される。すなわち、めっき皮膜の縦断面を、レーザー顕微鏡(OLYMPUS社製 LEXTO OLS1100)を用いて、1000倍の倍率で観察する。そして、30μm四方の枠内に存在するセラミックス粒子が占有する面積の比率及び硬質粒子の総数に対する、二次粒子の総数の割合を、同レーザー顕微鏡を用いて処理計測する。
また、硬質粒子の分散性の評価は、前記30μm四方の枠内に硬質粒子が均一に存在するかどうかをレーザー顕微鏡(OLYMPUS社製 LEXTO OLS1100)を用いて観察して評価した。均一の場合は「○」と評価し、不均一の場合は「×」と評価した。
〔めっき皮膜のビッカース硬度〕
めっき皮膜の皮膜断面を、微小硬さ試験機(ミツトヨ製 HM−103)を用いて、荷重200gf×15secで測定した。
〔めっき皮膜の耐摩耗性〕
科研式腐食摩耗試験機を用いてめっき皮膜の耐摩耗性を評価した。摩擦の相手となるライナー材として鋳鉄(JIS G 5501−1995に準拠したFC250)を用いた。摩擦試験機における接触荷重は39Nとした。摩擦速度は0.25m/sec、摩擦距離は5400m(=6時間)とした。腐食液として硫酸水溶液(pH=2.0)を用い、1.5ml/minで滴下した。腐食液温度は常温とした。めっき皮膜の摩耗量を測定し、その値を耐摩耗性の指標とした。
表2に示す結果から明らかなように、各実施例のめっき物は、各比較例のめっき物に比べて硬度や耐摩耗性が高いものであることが判る。また、各実施例のめっき物では、硬質粒子がめっき被膜中に、均一かつ単分散状態で分散している。これに対して比較例2のめっき物では、クラックが発生し、硬質粒子の分散は不均一であり、しかも粒子の凝集が観察される。
〔実施例3〕
実施例2で得られたクロムめっき物を大気下に400℃で1時間加熱処理を行った。熱処理後のクロムめっき物について、実施例1と同様にしてビッカース硬度を測定したところ1550であり、加熱処理前に比べて高い硬度のめっき皮膜が形成されていることが分かった。
〔実施例4〕
(イ)工程;
実施例2で得られたクロムめっき物(T1)を200℃で1時間加熱処理を行って微少亀裂(A1)を有するクロムめっき物(T2)を得た。
先に述べた方法により、クロムめっき物(T2)の物性評価を行い、このクロムめっき物(T2)におけるめっき被膜は、溝幅が0.2μmで、表面占有率が5面積%、分布密度が400本/cmである微少亀裂(A1)を有することを確認した。クロムめっき物(T2)におけるめっき皮膜の表面の走査型電子顕微鏡像を図3に示す。
(ロ)工程;
自己潤滑性を有する粒子として(二硫化モリブデン)を用い、これをエタノールに溶解して10%溶液を調製した。
次いでフラスコに、(イ)工程で得られた微少亀裂(A1)を有するクロムめっき物50gと、前記で調製した10%溶液を仕込んだ。次に徐々にフラスコ内を真空にし、攪拌下に20℃で1時間そのまま放置した。
次いで、微少亀裂(A1)を有するクロムめっき物をろ過により回収し、200℃で乾燥を行って自己潤滑性を有する粒子を微少亀裂(A1)内に含有したクロムめっき物(T3)を得た。
クロムめっき物(T3)を螢光X線分析して、微小亀裂(A1)内に含有された自己潤滑性を有する粒子の量を測定したところ3%であった。
〔実施例5〕
実施例1で得られたクロムめっき物を200℃で1時間加熱処理を行って微少亀裂(A1)を有するクロムめっき物(T4)を得た。クロムめっき物(T4)におけるめっき皮膜の表面の走査型電子顕微鏡像を図4に示す。
先に述べた方法により、クロムめっき物(T4)の物性評価を行い、このクロムめっき物(T4)におけるめっき被膜は、溝幅が3.5μmで、表面占有率が12面積%、分布密度が350本/cmである微少亀裂(A1)を有することを確認した。その後は実施例4と同様にして、自己潤滑性を有する粒子(二硫化モリブデン)を微少亀裂(A1)内に含有したクロムめっき物を得た。このクロムめっき物を螢光X線分析して、微小亀裂(A1)内に含有された自己潤滑性を有する粒子の量を測定したところ11.5面積%であった。
〔実施例6〕
以下に示す成分を水に添加して、以下の表3に示す組成を有する三価のクロムのめっき液を調製した。得られためっき液を用い、同表に示す条件で電解めっきを行いクロムめっき物(T5)を得た。陽極としては高密度黒鉛板を用い、陰極としてはS45Cみがき鋼板を用いた。
<めっき物の評価>
得られたクロムめっき物(T5)について、先に述べた方法で物性評価を行ったところ、めっき被膜の表面に、溝幅が0.3μmで、表面占有率が5面積%、分布密度が500本/cmである微少亀裂(A2)が形成されていることが確認された。次いで、このクロムめっき物(T4)を300℃で1時間加熱処理し、クロムめっき物(T6)を得た。得られたクロムめっき物(T6)の微少亀裂の状態を確認した結果、溝幅が0.5μmで、表面占有率が6.0面積%、分布密度が650本/cmであり、加熱処理前のクロムめっき物(T5)とほとんど変化がないことが確認された。

Claims (13)

  1. 母材の表面にクロムめっき皮膜が設けられてなるクロムめっき物において、
    前記クロムめっき皮膜中に、窒化物、炭化物又は酸化物からなる複数の粒子が均一に分散されており、
    前記粒子は、前記クロムめっき皮膜中に10〜30容量%含有されており、かつ単分散状態で前記クロムめっき皮膜中に存在している、ことを特徴とするクロムめっき物。
  2. 前記クロムめっき皮膜が、前記粒子を除き、クロムを93〜99.5質量%含み、更に炭素を0.5〜7質量%含んでいる請求項1に記載のクロムめっき物。
  3. 前記粒子が、セラミックス粒子からなる請求項1又は2に記載のクロムめっき物。
  4. 前記セラミックス粒子が、Si34、BN、TiC、SiC、Cr32、Al23、TiO2又はCr23からなる請求項3に記載のクロムめっき物。
  5. 前記母材の表面と前記クロムめっき皮膜との間に下地膜を有するか、又は前記クロムめっき皮膜の上に上層膜を有する請求項1ないし4のいずれか一項に記載のクロムめっき物。
  6. 前記クロムめっき皮膜が、その表面に溝幅が0.1〜6.0μmの複数の微小亀裂を有する請求項1ないし4のいずれか一項に記載のクロムめっき物。
  7. 複数の前記微少亀裂内に自己潤滑性のある粒子を含有する請求項6に記載のクロムめっき物。
  8. 前記クロムめっき皮膜が、その表面に溝幅が0.1〜2.0μmの複数の網目状の微小亀裂を有し、その微小亀裂の表面占有率が0.2〜12.0面積%である請求項1ないし4のいずれか一項に記載のクロムめっき物。
  9. 前記めっき物が摺動部材である請求項1ないし8のいずれか一項に記載のクロムめっき物。
  10. 複数のセラミックス粒子が均一に分散されてなるクロムめっき皮膜であって、
    前記セラミックス粒子は、前記クロムめっき皮膜中に10〜30容量%含有されており、かつ単分散状態で前記クロムめっき皮膜中に存在している、ことを特徴とするクロムめっき皮膜。
  11. 前記クロムめっき皮膜が、その表面に溝幅が0.1〜6.0μmの複数の微小亀裂を有する請求項10に記載のクロムめっき皮膜。
  12. 微小亀裂内に自己潤滑性を有する粒子を含有する請求項11に記載のクロムめっき皮膜。
  13. 前記クロムめっき皮膜が、その表面に溝幅が0.1〜2.0μmの複数の網目状の微小亀裂を有し、その微小亀裂の表面占有率が2.0〜12.0面積%である請求項10に記載のクロムめっき皮膜。
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