以下、本発明の一実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る押圧型スイッチ装置(以下、単に「スイッチ装置」という)1の外観を示す斜視図である。図2は、本実施の形態に係るスイッチ装置1の分解斜視図である。なお、以下においては、説明の便宜上、図1及び図2に示す上方側を「スイッチ装置1の上方側」又は単に「上方側」と呼び、図1及び図2に示す下方側を「スイッチ装置1の下方側」又は単に「下方側」と呼ぶものとする。
図1に示すように、本実施の形態に係るスイッチ装置1は、箱状のハウジング2の天面部の一部から後述する操作部材4の一部を突出させ、当該突出部分で操作者等からの押圧操作を受け付けるように構成されている。ハウジング2から突出した操作部材4の一部には、ハウジング2内への埃や水等の異物の侵入を防止するための不図示のカバーが取り付け可能に構成されている。
図2に示すように、スイッチ装置1は、例えば、絶縁性の樹脂材料を成形して形成されるハウジング2を備えている。ハウジング2は、下方側に開口した箱状を有するケース21と、ケース21の開口に対応する形状を有し、スイッチ装置1の内底面を構成する固定基台22とから構成されている。これらのケース21と固定基台22とを組み合わせることで、ハウジング2の内部にはスイッチ装置1の構成部材を収納する収納部が形成されている。
ケース21の上面には、後述する操作部材4の軸部42の上端部が貫通可能な開口部211が形成されている。固定基台22は、上面視にて長方形状を有しており、その上面にケース21の開口に応じた形状を有する突出面221が設けられている。ケース21は、この突出面221を開口で収容することで適切に位置決めされる。また、ケース21は、突出面221の側面に形成されたクラッシュリブ221aを押し潰しながら圧入されることで固定基台22と一体化される。突出面221の一端部(図2に示す右方側端部)には、上方側に突出して突出片222が設けられている。
ハウジング2内に形成された収納部には、固定基台22に固定される固定接点端子3の一部が配置されると共に、操作者等による押圧操作を受け付ける操作部材4の一部及び操作部材4に対する押圧操作に応じて作動するスナップアクション機構5が収納される。スナップアクション機構5は、詳細について後述するように、可動接点6を有する導体板7と、操作部材4により一端が押圧される駆動板8と、これらの導体板7及び駆動板8に取り付けられ、これらを一体化する板ばねからなる圧縮ばね9とで構成される。
固定接点端子3は、固定基台22にインサート成形される金属製のコモン接点端子31及び金属製の切替接点端子32を有している。コモン接点端子31は、固定基台22の上方側で上下方向に延在して設けられるコモン接点部311と、このコモン接点部311の下端部から切替接点端子32と反対側に屈曲し、その端部から下方側に延出する端子部312とを有している。コモン接点部311の中央近傍には、切替接点端子32側に僅かに突出する突出部313が設けられている。一方、切替接点端子32は、固定基台22の上方側に突出する切替接点部321と、この切替接点部321からコモン接点端子31と反対側に屈曲し、その端部から下方側に延出する端子部322とを有している。
操作部材4は、例えば、絶縁性の樹脂材料を成形して形成され、上面視にて概して長方形状を有する基部41と、この基部41の上面に立設された円柱状の軸部42と、基部41の長手方向の外縁部の一部から垂下して設けられる一対の側面部43と、基部41の下面から突出して設けられる押圧片44とを有している(押圧片44について図2に不図示、図8A参照)。
基部41には、軸部42の左方側部分に矩形状の開口部411が形成されている。開口部411は、操作部材4の下方移動の際にコモン接点端子31(コモン接点部311)の上端部が通過可能に構成されている。軸部42は、ケース21の開口部211からその上端部を突出して配置され、操作者等からの押圧操作を受け付ける。一対の側面部43は、互いに対向配置されており、その外壁面でケース21の内壁面に形成されるガイド溝で案内される。押圧片44は、基部41における開口部411よりも外側(図2に示す左方側)の下面に設けられている(図8A参照)。
ここで、本実施の形態に係るスイッチ装置1が有する固定基台22及びスナップアクション機構5の構成について説明する。図3は、本実施の形態に係るスイッチ装置1が有する固定基台22の斜視図である。図4は、本実施の形態に係るスイッチ装置1が有するスナップアクション機構5の分解斜視図である。なお、図3においては、固定接点端子3を一体化した状態の固定基台22について示している。
図3に示すように、固定基台22において、固定接点端子3は、固定基台22の長辺方向に沿ってその一部を突出面221から突出した状態で埋設されている。コモン接点端子31は、コモン接点部311を突出面221の上面から延出させる一方、端子部312を固定基台22の下面から延出させるように配置される。同様に、切替接点端子32は、切替接点部321を突出面221の上面から延出させる一方、端子部322を固定基台22の下面から延出させるように配置される。すなわち、コモン接点端子31(コモン接点部311)及び切替接点端子32(切替接点部321)は、固定基台22に立設された状態で、ハウジング2によって形成される収納部内に設けられている。なお、コモン接点部311と切替接点部321は、固定基台22の短手方向の中央部における同一直線上に一定距離離間して配置されている。
切替接点部321は、突出片222の内側(コモン接点端子31側)に配置されている。切替接点部321は、固定基台22にインサート成形された状態で突出片222を構成する板状部222aと一体化される。切替接点部321の上端部には、傾斜部321aが設けられている。板状部222aの上端面の一端部(図3に示す右方側端部)には、段差部222bが設けられており、上端面よりも高さ寸法が低く構成されている。一方、板状部222aの他端部(図3に示す左方側端部)には、上方側に突出して突出片222cが設けられている。
図4に示すように、スナップアクション機構5は、導電性を有する金属板材にブランク加工及び折り曲げ加工を施して形成される導体板7及び駆動板8と、弾性を有する金属板材にブランク加工及び折り曲げ加工を施して形成される圧縮ばね9とを組み合わせて構成される。なお、駆動板8は、必ずしも導電性を有する金属板材で構成しなくても良い。以下、これらの導体板7、駆動板8及び圧縮ばね9の構成について説明する。
導体板7は、操作部材4の移動方向と交差する方向に延在する基部701と、この基部701の両端部から上方側に延出する一対の延出部702、703とを備え、側面視にて概してU字形状を有する(図7参照)。導体板7には、基部701の延在方向に沿って配置された一対の長孔704、705が形成されている。長孔704は、基部701の中央近傍から延出部702の中央近傍に亘って形成されている。一方、長孔705は、基部701の中央近傍から延出部703の中央近傍に亘って形成されている。
延出部702の内面であって、長孔704の上方には、突出部706が設けられている。また、延出部702の外面には、この突出部706に対応して凹部707が設けられている(凹部707について図4に不図示、図9参照)。延出部703の上端部の中央には、舌片部708が設けられている。この舌片部708は、先端部が折り曲げられており、僅かに外側に向けて延出している。なお、この舌片部708は、後述する駆動板8の凹部805と係合する役割を果たす。
基部701には、可動接点6が取り付けられている。この可動接点6は、可動接点61、62を有する。例えば、可動接点61は、折り曲げ部611を有する一端部が長孔704に挿通されると共に、基部701の上面に溶接等で接合することにより基部701に固定される。同様に、可動接点62は、折り曲げ部621を有する一端部が長孔705に挿通されると共に、基部701の上面に溶接することにより基部701に固定される。なお、導体板7に対する可動接点6の固定方法については適宜変更することが可能である。
可動接点61、62は、他端部が下方側に延出すると共に、延出部703が設けられた基部701の下面側に屈曲した形状を有する。可動接点61、62の他端部には、互いに一定距離を挟んで対向配置される挟持部612、622が設けられている。これらの挟持部612、622は、切替接点端子32の切替接点部321を挟持可能に構成されている。そして、操作部材4に対する押圧操作に伴う導体板7の移動に応じて、切替接点部321の表面を摺動可能に構成されている。すなわち、可動接点6は、切替接点部321を摺動する摺動接点を構成する。このように可動接点6が摺動接点で構成されることから、スナップアクション機構5による可動接点6の駆動時に切替接点端子32の表面の埃等を除去できるので、可動接点6と切替接点端子32との間の接触安定性を確保して、固定接点端子3間(コモン接点端子31と切替接点端子32との間)の導通接続の信頼性を向上できるものとなっている。
駆動板8は、長尺の金属板材に対してブランク加工を施して環状(より具体的には、矩形枠状)に形成された後、折り曲げ加工が施される。駆動板8は、操作部材4の移動方向と交差する方向に平行に延在する一対の長辺部801と、この長辺部801の両端部を連結するように配置される一対の短辺部802(802a、802b)とを有する。長辺部801の一端部(図4に示す右方側端部)の近傍には、長辺部801の延在方向と交差(直交)して上方側に延出する延出部803が設けられている。
長辺部801及び短辺部802の中央には、上面視して概して長方形状の開口部804が形成されている。この開口部804は、スナップアクション機構5が組み立てられた状態において、導体板7が通過可能な寸法に構成されている。長辺部801の一端部(図4に示す右方側端部)側に配置される短辺部802aは、その先端部(図4に示す右方側端部)が長辺部801と平行な平面よりも僅かに下方側に延出している。短辺部802aには、開口部804と連続して凹部805が形成されている。この凹部805は、導体板7の舌片部708と係合する役割を果たす。
圧縮ばね9は、弾性を有する長尺の金属板材に対してブランク加工を施して環状(より具体的には、矩形枠状)に形成された後、折り曲げ加工が施される。圧縮ばね9は、操作部材4の移動方向と交差する方向に延在する一対の長辺部901と、この長辺部901の両端部を連結するように設けられる一対の短辺部902(902a、902b)とを有する。短辺部902の近傍の長辺部901の一部は、長辺部801の延在方向と交差(直交)して上方側(操作部材4側)に折り曲げられている。これらの長辺部901と短辺部902とを有し、圧縮ばね9は、側面視にて概してU字形状を有する(図7参照)。
詳細について後述するように、圧縮ばね9は、操作部材4側に折り曲げられた部分の一部で駆動板8又は固定基台22の突出片222の一部に係止される。本実施の形態に係るスナップアクション機構5においては、このように短辺部902a、902b近傍の長辺部901の一部が操作部材4側に折り曲げられると共に、駆動板8又は固定基台22の突出片222の一部に係止されることから、圧縮ばね9のばね長を長く設計できるので、圧縮ばね9に掛かる負荷を分散して圧縮ばね9をより長寿命化できるものとなっている。
長辺部901の一端部(図4に示す右方側端部)に配置される短辺部902aの上端部の中央には、上方側に突出して突出部903が設けられている。この突出部903は、短辺部902aと同一平面上に配置されている。また、突出部903の側方には、一対の肩部904(904a、904b)が設けられている。これらの肩部904a、904bは、スナップアクション機構5がハウジング2内に収納された状態において、後述するケース21の規制片214と当接可能に構成されている。
一方、長辺部901の他端部(図4に示す左方側端部)に配置される短辺部902bの上端部の中央には、突出板部905が設けられている。この突出板部905は、長辺部901の延在方向と平行に配置され、その先端部が外側(図4に示す左方側)に向けて延出している。なお、この突出板部905は、スナップアクション機構5が組み立てられた状態において、駆動板8の短辺部802bを係止する役割を果たす。
圧縮ばね9には、上面視して概して長方形状の開口部906が形成されている。この開口部906は、スナップアクション機構5が組み立てられた状態において、導体板7が通過可能な寸法に構成されている。短辺部902aには、開口部906に連続して凹部907が形成されている。この凹部907は、下方側に開口した形状を有している。凹部907は、固定基台22の突出片222が有する板状部222a(より具体的には、段差部222b)を収容可能な寸法に形成されている。
図5及び図6は、それぞれ本実施の形態に係るスイッチ装置1が有する固定基台22にスナップアクション機構5を取り付けた場合の斜視図及び上面図である。なお、図5及び図6においては、本実施の形態に係るスイッチ装置1に対して押圧操作が行われていない初期状態のスナップアクション機構5について示している。
スナップアクション機構5は、導体板7、駆動板8及び圧縮ばね9が組み合わされた状態で、その一部を固定基台22及び固定基台22に一体化された固定接点端子3に支持されて図5に示す初期状態の位置(初期位置)に配置される。図5に示すようにスナップアクション機構5が配置された固定基台22に対してケース21及び操作部材4が取り付けられる。スナップアクション機構5は、ケース21及び操作部材4の一部と接触し、ハウジング2の収納部内において初期位置を維持した状態で安定して保持される。
導体板7は、一端側(図5に示す左端側)に設けられた延出部702の凹部707で固定接点端子3(コモン接点端子31)の突出部313を収容している(図5に不図示、図9参照)。一方、導体板7は、他端側(図5に示す右端側)に設けられた舌片部708で駆動板8の短辺部802aに形成された凹部805と係合している。圧縮ばね9は、一端側(図5に示す左端側)に設けられた突出板部905で駆動板8の短辺部802bを係止している。一方、圧縮ばね9は、他端側(図5に示す右端側)に設けられた短辺部902aの凹部907で突出片222の板状部222a(段差部222b)を収容している。すなわち、圧縮ばね9の凹部907は、突出片222の板状部222a(段差部222b)に係止されている。上述したように、駆動板8及び圧縮ばね9は、環状に形成されており、固定接点端子3を構成するコモン接点端子31は、これらの開口部804、906を貫通して配置されている。
スナップアクション機構5において、導体板7と圧縮ばね9とは駆動板8を介して連結されている。このように連結された状態において、スナップアクション機構5は、導体板7の凹部707でコモン接点端子31に支持される一方、圧縮ばね9の凹部907で突出片222に支持されている。この場合において、導体板7に取り付けられた可動接点6は、挟持部612、622で切替接点端子32(切替接点部321)の近傍の板状部222aの一部を挟持した状態となっている。このため、コモン接点端子31と切替接点端子32との間は、非導通状態となっている。
圧縮ばね9においては、他端側(図5に示す右端側)の移動がケース21の内壁面等で制限される一方、一端側(図5に示す左端側)が圧縮された状態で駆動板8により保持されている。このため、圧縮ばね9には、初期状態において短辺部902a、902bを開く力(以下、適宜「弾性復帰力」という)が付与された状態となっている。スナップアクション機構5においては、この圧縮ばね9の弾性復帰力を利用して、操作部材4が一定位置まで押圧された場合に反転する一方、その押圧操作が解除された場合に初期状態に復帰可能に構成されている。
圧縮ばね9の一端側(図5に示す左端側)に設けられた短辺部902bは、コモン接点端子31の外側(図5に示す左方側)に配置されている。一方、圧縮ばね9の他端側(図5に示す右端側)に設けられた短辺部902aは、切替接点端子32(切替接点部321)の外側(図5に示す右方側)に配置されている。このため、ハウジング2の収納部内の限られた空間においても、圧縮ばね9のばね長を長く設計できるので、圧縮ばね9に掛かる負荷を分散して長寿命化することができるものとなっている。
導体板7は、図6に示すように、駆動板8の開口部804及び圧縮ばね9の開口部906に対応し、これらを通過可能な位置に配置されている。このため、操作部材4に対する押圧操作に伴って駆動板8及び圧縮ばね9の回動動作を行う場合でも導体板7が駆動板8及び圧縮ばね9と接触することが防止されるので、圧縮ばね9及び駆動板8をスムーズに回動させることができるものとなっている。また、導体板7の長孔705は、突出片222の板状部222aの上端部に対応する位置に配置されている。このため、導体板7の回動動作が突出片222の上端部との接触により制限されることはない。
ここで、本実施の形態に係るスイッチ装置1が有するスナップアクション機構5の各構成部材の回動支点及び各構成部材に対して作用する力について説明する。図7は、本実施の形態に係るスイッチ装置1が有するスナップアクション機構5の各構成部材の回動支点及び各構成部材に対して作用する力の説明図である。なお、図7においては、初期状態におけるスナップアクション機構5について示し、説明の便宜上、ケース21及び操作部材4を省略している。
図7に示すように、導体板7は、延出部702に設けられた凹部707でコモン接点端子31の突出部313を収容しており、この突出部313の頂点を第1の回動支点Aとして回動可能に構成されている。一方、駆動板8は、短辺部802aの凹部805で導体板7の舌片部708と係合しており、この凹部805と接触する舌片部708の一部を第2の回動支点Bとして回動可能に構成されている。
圧縮ばね9は、短辺部902bに設けられた突出板部905で駆動板8の短辺部802bと係合しており、この突出板部905と接触する短辺部802bの一部を第3の回動支点Cとして回動可能に構成されている。なお、この第3の回動支点Cは、スナップアクション機構5が反転する際に駆動板8の回動支点としても機能する。一方、圧縮ばね9は、短辺部902aの凹部907で固定基台22に設けられた突出片222の段差部222bを収容しており、この凹部907と接触する段差部222bの一部を第4の回動支点Dとして回動可能に構成されている。
第1の回動支点Aは、切替接点端子32側のコモン接点端子31の端面の一部に形成されている。このようにコモン接点端子31の端面の一部に、導体板7の回動支点である第1の回動支点Aが形成されることから、簡単な構成でコモン接点端子31と導体板7との導通を可能としつつ、導体板7を回動させることが可能となっている。また、第4の回動支点Dは、切替接点端子32を挟んで第1の回動支点Aと反対側に配置されている。このように切替接点端子32を基準として第1の回動支点Aの反対側の位置に圧縮ばね9の回動支点を構成する第4の回動支点Dが配置されることから、圧縮ばね9のばね長を長く設計できるので、圧縮ばね9に掛かる負荷を分散することが可能となっている。
初期状態において、第1の回動支点Aは、第2の回動支点B及び第3の回動支点Cよりも下方側に配置され、第4の回動支点Dよりも上方側に配置されている。すなわち、第1の回動支点Aは、第2の回動支点Bと第3の回動支点Cとを結んだ直線よりも下方側に配置されている。また、第2の回動支点Bは、4つの回動支点の中で最も上方側に配置されている。さらに、第3の回動支点Cは、第2の回動支点Bよりも下方側に配置され、第1の回動支点A及び第4の回動支点Dよりも上方側に配置されている。さらに、第4の回動支点Dは、4つの回動支点の中で最も下方側に配置されている。
このように第1〜第4の回動支点A〜Dが配置される場合において、圧縮ばね9には短辺部902a、902bを開こうとする力(弾性復帰力)が付与されている。このため、第3の回動支点Cと第4の回動支点Dとの間に作用する力(すなわち、圧縮ばね9に作用する力)F1は、図7に示す左上方側を向いている。そして、第2の回動支点Bと第3の回動支点Cとの間に作用する力(すなわち、駆動板8に作用する力)F2は、僅かに左下方側に向いている。ここで、力F1と力F2との間の角度がθ1である場合、力F2は、以下の(式1)により求められる。
F2=F1cosθ1 (式1)
第1の回動支点Aと第2の回動支点Bとの間に作用する力をFdとし、力F2の方向と力Fdの方向との間の角度がθ2であるものとすると、導体板7に作用する力F3は、以下の(式2)により求められる。すなわち、角度θ2が少なくとも0°より大きい場合、力F3は、上方側に向いた状態となっている。
F3=F2sinθ2 (式2)
また、第3の回動支点Cに作用する力をF4とすると、この力F4は、以下の(式3)により求められる。すなわち、角度θ1が少なくとも0°より大きい場合、力F4は、上方側に向いた状態となっている。このとき、第3の回動支点Cを上方側に移動させる力F5は、この力F5の方向と力F4との方向との間の角度がθ3であるものとすると、以下の(式4)により求められる。
F4=F1sinθ1 (式3)
F5=(F1sinθ1)×cosθ3 (式4)
ここで、スナップアクション機構5においては、力F1は、常に力F2よりも上方側に配置されている。このため、力F1と力F2との間の角度θ1は、常に0°より大きい。角度θ1が0°より大きい場合、第3の回動支点Cには、(式3)及び(式4)から上方側に移動する力F5が作用する。この結果、操作部材4は、スナップアクション機構5により常に上方側に付勢された状態となっている。
ここで、本実施の形態に係るスイッチ装置1が有するスナップアクション機構5と、その周辺の構成部材との位置関係について図8及び図9を参照しながら説明する。図8は、本実施の形態に係るスイッチ装置1のケース21を取り外した状態の説明図である。図8Aにおいては、スイッチ装置1の側面を示し、図8Bにおいては、スイッチ装置1を固定基台22の突出片222側から示している。図9は、本実施の形態に係るスイッチ装置1の側断面図である。図9においては、操作部材4の移動方向(上下方向)の中心線を通る断面を示している。なお、図8及び図9のいずれも初期状態におけるスイッチ装置1を示している。
図8に示すように、スナップアクション機構5の上方側には操作部材4が配置される。操作部材4は、基部41の下面に設けられた押圧片44を圧縮ばね9の突出板部905に載置した状態で配置される(図8A参照)。この場合、操作部材4は、スナップアクション機構5(より具体的には、第3の回動支点C)に作用する上方側向きの力(上述した力F5)により上方側に付勢された状態となっている。この操作部材4の上方側への移動は、ケース21の天面部の下面で規制されている。このため、操作部材4は、初期状態で一定位置に配置されている。
操作部材4の側面部43は、図8Bに示すように、軸部42よりも外側の位置で上下方向に延在している。スイッチ装置1が組み立てられた状態において、これらの側面部43は、ケース21の内壁面に形成された不図示のガイド溝に収容される。これらのガイド溝は、ケース21の内壁面の中央で上下方向に延在して設けられている。押圧操作に伴って上下移動する際、操作部材4は、これらのガイド溝で側面部43を案内されながら、一定位置を上下移動可能に構成されている。
ケース21の天面部の下面には、図9に示すように、コモン接点端子31の支持する支持片212が下方側に突出して設けられている。この支持片212は、コモン接点端子31の上端部を囲繞するように設けられており、コモン接点端子31を支持している。操作部材4に対する押圧操作に伴い、スナップアクション機構5を介してコモン接点端子31に押圧力が作用する場合においても、支持片212によりコモン接点端子31が支持されているので、コモン接点端子31の位置がずれる事態を抑制することができるものとなっている。
また、ケース21の天面部の下面には、駆動板8の上方側への移動を規制する規制片213と、圧縮ばね9の上方側及び右方側への移動を規制する一対の規制片214とが下方側に突出して設けられている。規制片213は、ケース21内にスナップアクション機構5が収容された状態において、駆動板8の延出部803の上端部に当接する位置に配置されている。一方、規制片214は、ケース21内にスナップアクション機構5が収容された状態において、圧縮ばね9の短辺部902aの肩部904a、904bの上端部に当接する位置に配置されている。規制片214が圧縮ばね9の肩部904a、904bに当接することにより、例えば、図12に示すように、スナップアクション機構5がスナップアクション動作した場合においても、短辺部902aの凹部907が、突出片222の板状部222a(段差部222b)を収容した状態が維持される。
以下、本実施の形態に係るスイッチ装置1が有するスナップアクション機構5のスナップアクション動作について図10〜図14を参照しながら説明する。本実施の形態に係るスイッチ装置1が有するスナップアクション機構5においては、操作部材4に対する押圧操作に伴って、上述した複数の回動支点(第1〜第4の回動支点A〜D)で各構成部材が回動しながらスナップアクション動作を行う。特に、操作部材4が一定位置以上に押し込まれると、スナップアクション機構5が反転して固定接点端子3間(コモン接点端子31と切替接点端子32との間)が導通状態に切り替えられる。
図7に示す初期状態から操作部材4がハウジング2内に押圧されると、ケース21内においては、押圧片44により圧縮ばね9の突出板部905が下方側に押圧される。押圧片44における突出板部905と接触する位置は、操作部材4からの押圧力の作用点を構成する。圧縮ばね9は、第4の回動支点Dを回動支点として左方側端部側が反時計回り方向に回動する。この圧縮ばね9の回動に伴い、スナップアクション機構5においては、駆動板8が第2の回動支点Bを回動支点として左方側端部側が反時計回り方向に回動して図10に示す状態となる。図10においては、本実施の形態に係るスイッチ装置1において、反転する直前の状態のスナップアクション機構5について示している。なお、図10においては、説明の便宜上、ケース21及び操作部材4を省略している。以下に示す図11〜図14においても同様である。
図10に示すように、スナップアクション機構5が反転する直前の状態に移行した場合において、第1の回動支点Aは、第2の回動支点Bと第3の回動支点Cとを結んだ直線よりも上方側に配置されている。すなわち、力F2の方向と力Fdの方向との間の角度θ2が0°以下となり、導体板7に作用する力F3の向きは、下方側に向いた状態に変化する。しかしながら、スナップアクション機構5においては、導体板7に摺動接点型の可動接点6が固定されており、その先端に設けられた挟持部612、622は、突出片222の板状部222aを挟持している。この挟持部612、622の摩擦抵抗により発生する力Fμは、力F3と反対方向に作用する。図10に示すスナップアクション機構5においては、この力Fμの大きさが力F3の大きさと同等である場合について示している。このように力Fμの大きさが力F3の大きさと同等である場合、或いは、力F3の大きさが力Fμの大きさを下回る場合には、スナップアクション機構5が反転することはない。
図10に示す状態から操作部材4が僅かにハウジング2内に押圧されると、力F2の方向と力Fdの方向との間の角度θ2が更に大きくなっていく。これに伴い、導体板7に作用する力F3の大きさが、挟持部612、622の摩擦抵抗により発生する力Fμの大きさを上回ると、スナップアクション機構5が反転する。すなわち、スナップアクション機構5においては、導体板7の右方側端部が第1の回動支点Aを回動支点として時計回り方向に一気に回動して図11に示す状態となる。図11においては、本実施の形態に係るイッチ装置1において、反転した直後の状態のスナップアクション機構5について示している。
図11に示すように、導体板7が回動すると、これに伴って導体板7に固定された可動接点6も時計回り方向に回動する。これにより、可動接点6においては、挟持部612、622が、突出片222の板状部222aから摺動して、切替接点端子32の切替接点部321に接触した状態となる。この結果、可動接点6を介してコモン接点端子31と切替接点端子32とが導通状態に切り替えられ、スイッチ装置1がオン状態となる。なお、このようにスナップアクション機構5が反転した状態において、導体板7は、開口部705を規定する延出部703の下端部が突出片222の上端部に当接しており、右方側端部はそれ以上の回動が制限された状態となっている。
図11に示す状態から操作部材4が更にハウジング2内の最下位置まで押圧されると、圧縮ばね9及び駆動板8は、それぞれ第4の回動支点D及び第2の回動支点Bを回動支点として左方側端部が回動して図12に示す状態となる。図12においては、本実施の形態に係るスイッチ装置1において、操作部材4が最下位置まで押圧された状態(フルストローク状態)のスナップアクション機構5について示している。なお、図12においても、スナップアクション機構5においては反転した状態であり、スイッチ装置1がオン状態を維持している。
スナップアクション機構5を構成する圧縮ばね9においては、上述したように、短辺部902a、902bを開こうとする弾性復帰力が働いている。このため、図12に示すように、操作部材4がハウジング2内の最下位置まで押圧された状態から、その押圧操作が解除されると、スナップアクション機構5は、圧縮ばね9のこの弾性復帰力により図7に示す初期状態に復帰しようとする。以下、初期状態への復帰時のスナップアクション機構5の動作について説明する。
図12に示すフルストローク状態においても、力F1と力F2との間の角度θ1は、0°より大きい。したがって、第3の回動支点Cには、上方側に移動する力F5が作用した状態となっている。このため、図12に示す状態から操作部材4に対する押圧操作が解除されると、ケース21内においては、圧縮ばね9の弾性復帰力により、圧縮ばね9の左方側端部側が第4の回動支点Dを回動支点として時計回り方向に回動する。この圧縮ばね9の回動に伴い、スナップアクション機構5においては、駆動板8が第2の回動支点Bを回動支点として左方側端部側が時計回り方向に回動して図13に示す状態となる。図13においては、本実施の形態に係るスイッチ装置1において、復帰時に反転する直前の状態のスナップアクション機構5について示している。
図13に示すように、スナップアクション機構5が復帰時に反転する直前の状態に移行した場合において、第1の回動支点Aは、第2の回動支点Bと第3の回動支点Cとを結んだ直線よりも下方側に配置されている。すなわち、力F2と力Fdとの間の角度θ2が0°より大きくなり、導体板7に作用する力F3の向きは、上方側に向いた状態に変化する。しかしながら、スナップアクション機構5において、可動接点6の挟持部612、622の摩擦抵抗により発生する力Fμは、上述のように力F3と反対方向に作用する。図13に示すスナップアクション機構5においては、この力Fμの大きさが力F3の大きさと同等である場合について示している。このように力Fμの大きさが力F3の大きさと同等である場合、或いは、力F3の大きさが力Fμの大きさを下回る場合には、スナップアクション機構5が反転することはない。
図13に示す状態から操作部材4が僅かに上方側に押し戻されると、力F2の方向と力Fdの方向との間の角度θ2が更に大きくなっていく。これに伴い、導体板7に作用する力F3の大きさが、挟持部612、622の摩擦抵抗により発生する力Fμの大きさを上回ると、スナップアクション機構5が反転する。すなわち、スナップアクション機構5においては、導体板7の右方側端部が第1の回動支点Aを回動支点として反時計回り方向に一気に回動して図14に示す状態となる。図14においては、本実施の形態に係るスイッチ装置1において、反転した直後の状態のスナップアクション機構5について示している。
図14に示すように、導体板7が回動すると、これに伴って導体板7に固定された可動接点6も反時計回り方向に回動する。これにより、可動接点6においては、挟持部612、622が、切替接点部321から摺動して、突出片222の板状部222aに接触した状態となる。この結果、コモン接点端子31と切替接点端子32とが非導通状態に切り替えられ、スイッチ装置1がオフ状態となる。その後、スナップアクション機構5においては、圧縮ばね9の弾性復帰力により、更に操作部材4を上方側に押し戻し、図7に示す初期状態に復帰する。
このように本実施の形態に係るスイッチ装置1においては、操作部材4が所定位置まで押圧された場合に導体板7に固定された可動接点6を駆動するスナップアクション機構5を備え、このスナップアクション機構5を構成する駆動板8及び圧縮ばね9を環状に形成すると共に、これらの開口部804及び開口部906内にコモン接点端子31を貫通させている。これにより、コモン接点端子31を圧縮ばね9及び駆動板8の内側に配置できるので、コモン接点端子31の設置領域を別途設ける必要がなく、スイッチ装置1を小型化することできる。また、コモン接点端子31が圧縮ばね9の内側に配置されることから、収納部内の空間を最大限活用しながら圧縮ばね9を配置できるので、圧縮ばね9のばね長を確保でき、圧縮ばね9に掛かる負荷を分散して圧縮ばね9の長寿命化を図ることができる。この結果、圧縮ばね9の長寿命化を図りつつ、スイッチ装置1を小型化することが可能となる。
特に、本実施の形態に係るスイッチ装置1において、スナップアクション機構5は、コモン接点端子31を挟んで第2の回動支点B及び第4の回動支点Dと反対側に配置される圧縮ばね9の突出板部905で操作部材4の押圧力を受ける。これにより、コモン接点端子31を基準として駆動板8の回動支点を構成する第2の回動支点B及び圧縮ばね9の回動支点を構成する第4の回動支点Dと反対側の位置で操作部材4から押圧力を受けることができるから、操作部材4からの押圧力の作用点と、第2の回動支点B又は第4の回動支点Dとの長さを確保できるので、操作部材4における押圧操作のストロークを長くすることが可能となる。
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、適宜変更して実施可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更が可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施可能である。
例えば、上記実施の形態に係るスナップアクション機構5においては、操作部材4の押圧片44を介して、押圧操作に伴う押圧力を圧縮ばね9の突出部905で受ける構成について説明している。しかしながら、スナップアクション機構5における押圧力を受ける構成については圧縮ばね9に限定されるものではなく、コモン接点端子31の外側(左方側)に配置される駆動板8の一部で構成するようにしてもよい。このように変更する場合においても、上記実施の形態と同様の効果を得ることができる。さらに、コモン接点端子31の外側に配置される圧縮ばね9と駆動板8のそれぞれの一部で、押圧操作に伴う押圧力を受ける構成としてもよい。
また、上記実施の形態においては、可動接点6が切替接点端子32(切替接点部321)の表面を摺動する摺動接点型の接点構成について説明しているが、接点構成は、これに限定されるものではない。例えば、可動接点が、切替接点端子の切替接点部と当接する形態の接点構成であってもよい。なお、この場合には、可動接点6の挟持部612、622と板状部222a(または切替接点部321)との間の摩擦抵抗による力を考慮する必要はない。