JP2013237716A - 炭素繊維の再生処理方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】炭素繊維強化プラスチックから再生炭素繊維を効率的に回収し、かつ再生炭素繊維の取扱い性に優れた炭素繊維の再生処理方法を提供することを課題とする。
【解決手段】炭素繊維の再生処理方法1は、CFRPを加熱ケージの中に規定された嵩密度にして充填する嵩密度充填工程S3と、細長トンネル形状の再生処理空間が構築された再生処理部に、網状部材で構成されたメッシュ搬送部の搬送面にCFRPを充填した前記加熱ケージを載置し、導入口から再生処理空間に導入し、排出口から排出する加熱ケージ搬送工程S5と、加熱領域に設けられた加熱除去部によって、搬送されるCFRPを加熱し、マトリックス成分の一部を固定炭素として残して除去する加熱除去工程S6と、冷却領域に設けられた冷却部によって、固定炭素の付着した再生炭素繊維を搬送しながら冷却する冷却工程S7とを主に具備する。
【選択図】図3

Description

本発明は、炭素繊維の再生処理方法に関するものであり、特に炭素繊維強化プラスチックを高温で加熱し、マトリックス成分を除去することで不織布等の原料として再利用可能な再生炭素繊維を生成するための炭素繊維の再生処理方法に関するものである。
高強度及び高弾性率等の優れた力学的特性を備える材料として炭素繊維が知られ、これをフィラー成分として使用し、エポキシ樹脂やポリエステル樹脂等をマトリックス成分とした炭素繊維強化プラスチック(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastic)が製造され、航空・宇宙産業等を始めとする各種産業分野において広く用いられている。
炭素繊維強化プラスチックは、炭素繊維にマトリックス成分の樹脂を浸透させたプリプレグを生成し、これをオートクレーブ内で加圧しながら焼成することにより主に製造されている。この炭素繊維強化プラスチックの製造工程では、製品以外に多くの端材が発生している。特に、航空機の機体等の製品自体が大きなサイズの場合、上記端材が大量に発生し、その処分が問題となることがあった。炭素繊維強化プラスチックは、前述のように異なる性状のフィラー成分及びマトリックス成分が混在したものであり、これらをそれぞれ分離して再利用(リサイクル)若しくは再使用(リユース)することは技術的な困難性が高く、かつコストやエネルギー効率の点から有効でないことがあった。その結果、現状では製造時に発生した端材及び未使用のプリプレグの大部分が、埋立てや焼却等によって処分されることが多かった。さらに、製品としての機能を終えた後に回収された炭素繊維強化プラスチックも同様に埋立て等によって処分されていた。
そこで、本願発明の発明者等によって、炭素繊維強化プラスチックからマトリックス成分のみを熱分解によって加熱除去し、炭素繊維を力学的特性を低下させることなく選択的に回収する炭素繊維の再生処理装置及び再生処理方法(特許文献1及び特許文献2参照)に関する技術が既に開発されている。これによると、耐火性素材によって細長トンネル形状の再生処理空間が構築された再生処理部の中にメッシュ状のベルトコンベアを配設し、係るベルトコンベアを利用して炭素繊維強化プラスチックを再生処理空間に連続的に供給するとともに、再生処理空間内の加熱領域で炭素繊維強化プラスチックを加熱することにより、熱可塑性のエポキシ樹脂等のマトリックス成分のみを熱分解によってガス化し、炭素繊維(再生炭素繊維)を長繊維状の状態で回収することが可能となる。その結果、大量の炭素繊維強化プラスチックを効率的に熱分解することができ、再生炭素繊維を生成することができる。
しかしながら、上記の炭素繊維の再生処理装置及び再生処理方法は、下記に掲げる点において問題となる場合があった。すなわち、回収された炭素繊維強化プラスチックの端材等は、製品の使用部位等によって種々の形状をしていた。そのため、形状の差異により熱分解の際の熱の伝達に違いが生じ、加熱条件にバラツキが生じることがあった。その結果、連続炉を有する再生処理装置を用いて炭素繊維強化プラスチックから再生炭素繊維を生成する場合、上記熱的特性の違いにより、一部が再生処理空間で過熱状態となり燃焼したり、或いは熱が十分に伝達されずマトリックス成分の一部が残る等の不具合を生じ、得られた再生炭素繊維の性状及び品質に偏りが生じることがあった。特に、炭素繊維強化プラスチックの充填密度(嵩密度)の違いによる再生処理空間との接触面積の大きさにより、熱の伝達に違いが生じ、上述の不具合が発生しやすかった。
加えて、従来の炭素繊維の再生処理方法の場合、炭素繊維強化プラスチック中に含まれるマトリックス成分を熱分解によって完全に除去し、マトリックス成分の残存率が0%の状態の再生炭素繊維を生成することを目的としていた。再生処理空間の加熱領域では、必要以上の加熱温度及び/または加熱時間で炭素繊維強化プラスチックを処理するため、回収された再生炭素繊維の力学的特性が低下するおそれがあった。その結果、再使用及び再利用する際の用途が限定されることがあった。また、マトリックス成分が完全に除去された再生炭素繊維は、綿毛のような態様を示し、かつ密度も小さいため、僅かな風によっても容易に飛散する可能性があった。そのため、再生処理装置を用いて再生炭素繊維を生成する場合、再生処理空間の加熱領域及び冷却領域で飛散しないように慎重な取り扱いが必要となった。また、回収後に再使用等をする場合であっても再生炭素繊維の取り扱い性(ハンドリング性)が問題となることがあった。
そこで、本発明は、上記実情に鑑み、炭素繊維強化プラスチックから再生炭素繊維を安定した加熱条件で効率的に再生炭素繊維を回収可能な炭素繊維の再生処理方法の提供を課題とするものである。
上記の課題を解決するため、本発明の炭素繊維の再生処理方法は、「炭素繊維及びマトリックス成分を含有する炭素繊維強化プラスチックを通気性材料で各面が形成された筐体状の加熱ケージの中に予め規定された嵩密度となるように充填する嵩密度充填工程と、耐火性素材によって内部に細長トンネル形状の再生処理空間が構築され、前記再生処理空間に連通する導入口及び排出口がそれぞれ開口した再生処理部に前記炭素繊維強化プラスチックの充填された前記加熱ケージを搬送する加熱ケージ搬送工程と、前記再生処理空間の加熱領域に設けられた加熱除去部によって、搬送される前記加熱ケージ内の前記炭素繊維強化プラスチックを加熱し、前記マトリックス成分を除去する加熱除去工程と、前記再生処理空間の前記加熱領域の搬送下流側の冷却領域に設けられた冷却部によって、前記マトリックス成分の加熱除去された再生炭素繊維を搬送しながら冷却する冷却工程と」を主に具備している。
ここで、加熱ケージとは、網状(或いは孔状)等の通気性材料によって、各ケージ面が形成された略直方体形状の筐体であり、ケージ内部の充填空間に加熱対象の炭素繊維強化プラスチックを充填可能なものである。加熱ケージが通気性材料によって形成されているため、炭素繊維強化プラスチックに加熱時の熱を効率的に伝達することが可能となり、さらにケージ内部でマトリックス成分が熱分解して発生した分解ガスを加熱ケージの外に速やかに排出する機能を有している。なお、加熱ケージは、ステンレス等の金属材料を用いて構成される。さらに、筐体上部に網状等の通気性材料からなる蓋等を設け、充填完了後に炭素繊維強化プラスチックをケージ内部に閉塞することが可能となる。ここで、本発明における“嵩密度”とは、加熱ケージの充填空間に充填した炭素繊維強化プラスチックの内容積を体積とし、炭素繊維強化プラスチックの重量で割ったものとして定義する。このとき、炭素繊維強化プラスチックの内容積には、炭素繊維強化プラスチック同士の間隙の体積、炭素繊維強化プラスチックの表面の凹凸の空間の体積、及び炭素繊維強化プラスチックと加熱ケージの間隙の体積が含まれている。なお、加熱ケージに充填された炭素繊維強化プラスチックの内容積を正確に求めることは困難であるため、本発明では、加熱ケージのケージ底面の面積にケージ底面からの充填高さを掛けることにより、炭素繊維強化プラスチックの内容積を算出している。すなわち、嵩密度=充填した炭素繊維強化プラスチックの重量/(ケージ底面の底面積×充填高さ)としている。
一方、再生処理部とは、例えば、煉瓦のような耐火性素材を用いて、内部に細長トンネル形状の再生処理空間が構築されたものであり、再生処理空間の加熱領域で炭素繊維強化プラスチックを加熱し、再生炭素繊維を生成することが可能なものである。このとき、再生処理空間への加熱ケージの搬送は、複数のローラを並設した所謂「ローラハースキルン」等の搬送部や、或いはメッシュベルトを回転駆動させるメッシュ搬送部等を採用することが可能である。
また、加熱除去部とは、再生処理空間に加熱ケージに充填された状態で搬送された炭素繊維強化プラスチックを加熱し、マトリックス成分を熱分解させるためのものであり、加熱領域に設置された発熱体等によって主に構成されている。ここで、本発明の炭素繊維の再生処理方法において、処理対象となる炭素繊維強化プラスチックは、例えば、フィラー成分としてポリアクリロニトリル系炭素繊維(PAN系炭素繊維)を用い、マトリックス成分としてエポキシ樹脂等を用いたものを想定することができる。この場合、炭素繊維強化プラスチックに占めるマトリックス成分の重量比は、一般に約60重量%程度である。ここで、フィラー成分の炭素繊維の加熱分解温度(例えば、850℃前後)に対し、マトリックス成分のエポキシ樹脂等はそれよりも低い加熱温度(例えば、400℃〜600℃前後)でも熱分解し、ガス化する性質を備えている。そのため、徐々に再生処理空間の加熱領域(例えば、加熱温度=500℃に設定)に到達した炭素繊維強化プラスチックは、その到達の過程で含有するマトリックス成分のみが固体から液化(または気化)し、炭素繊維のみが再生処理部の排出口から排出され、再生炭素繊維として回収することが可能となる。
したがって、本発明の炭素繊維の再生処理方法によれば、再生処理空間の加熱領域に導入する炭素繊維強化プラスチックの嵩密度を、規定サイズの加熱ケージに充填することで一定にすることが可能となる。これにより、炭素繊維強化プラスチックの加熱条件を安定させることが可能となり、マトリックス成分の加熱除去を再生処理空間で偏りなく行うことができる。
さらに、本発明の炭素繊維の再生処理方法は、上記構成に加え、「前記加熱除去工程は、前記炭素繊維強化プラスチックの前記マトリックス成分の一部を加熱によって固定炭素に転換し、前記固定炭素が繊維表面に付着した前記再生炭素繊維を生成する」ものであっても構わない。
したがって、本発明の炭素繊維の再生処理方法によれば、加熱除去工程によって、炭素繊維のマトリックス成分を繊維表面から完全に除去するものではなく、マトリックス成分の一部を固定炭素に転換することが行われる。ここで、固定炭素とは、マトリックス成分が加熱によりガス化し、二酸化炭素等に分解する際、その一部が灰化し粉体等の態様で残存したものである。この固定炭素が炭素繊維の繊維表面に付着することにより、それぞれの再生炭素繊維同士の絡まり(凝集)の程度が高くなり、束のような塊になりやすい。そのため、風等によっても容易に飛散する可能性が抑えられ、取扱い性が良好となる。なお、固定炭素の残存炭素率が高くなると、再生炭素繊維同士を密着させる一種のバインダとして機能し、塊の程度がより大きくなることもある。
さらに、本発明の炭素繊維の再生処理方法は、上記構成に加え、「前記加熱除去工程は、前記固定炭素の残存炭素率を前記再生処理部に導入前の前記マトリックス成分の当初重量に対して、0.5重量%以上、11.0重量%以下に調整して前記マトリックス成分の加熱除去を行う」ものであっても構わない。
したがって、本発明の炭素繊維の再生処理方法によれば、固定炭素の残存炭素率が0.5重量%以上、11.0重量%以下に調整される。すなわち、0.5重量%よりも固定炭素の残存炭素率が低い場合には、上述した取り扱い性の向上が認められにくく、一方、11.0重量%を超える残存炭素率は、再生炭素繊維の繊維としての特性を損なうこととなり、再使用等に適さなくなる。そのため、0.5重量%以上、11.0重量%以下、さらに好ましくは、1.0重量%以上、5.0重量%以下に調整するものが特に好適である。
さらに、本発明の炭素繊維の再生処理方法は、上記構成に加え、「前記嵩密度充填工程の前に実施され、前記炭素繊維強化プラスチックを予め規定されたサイズに裁断加工する裁断工程」を具備するものであっても構わない。
したがって、本発明の炭素繊維再生処理方法によれば、予め炭素繊維強化プラスチックを所定の裁断サイズにカットすることで、嵩密度充填工程において、加熱ケージに炭素繊維強化プラスチックを充填する際の嵩密度の調整が行いやすくなる。ここで、嵩密度は特に限定されないものの、例えば、0.02グラム/立方センチメートル〜0.15グラム/立方センチメートルの間に設定するものであってもよい。係る嵩密度の範囲に設定することで、炭素繊維強化プラスチックの間に適度な空隙が形成され、加熱領域における熱の伝搬及び発生した分解ガスの流れも良好なものとなる。これにより、加熱条件が安定し、より効率的にマトリックス成分の熱分解処理が可能となる。なお、炭素繊維強化プラスチックを裁断するための裁断機(破砕機)が使用される。
さらに、本発明の炭素繊維の再生処理方法は、上記構成に加え、「前記嵩密度充填工程の前に実施され、前記炭素繊維強化プラスチックを予め乾留し、前記マトリックス成分を炭化する乾留工程をさらに具備し、前記加熱ケージに炭化済みの前記炭素繊維強化プラスチックが充填される」ものであっても構わない。
したがって、本発明の炭素繊維再生処理方法によれば、加熱ケージに充填される炭素繊維強化プラスチックを予め乾留処理したものが使用される。ここで、乾留工程とは、例えば、400℃以上の加熱温度に設定されたバッチ式の加熱炉内に炭素繊維強化プラスチックを投入し、無酸素状態で加熱(所謂「蒸し焼き」)するものであり、炭素繊維強化プラスチックに含まれる低沸点の物質及び水分等を加熱により、ガス化及び炭化するものである。これにより、事後に行われる再生炭素繊維の再生処理において、炭素繊維強化プラスチックに含まれるマトリックス成分の加熱除去時間を短縮化することが可能となる。さらに、予め乾留工程により、炭素繊維強化プラスチックの炭化分を一定にすることができ、加熱条件を安定させ、再生処理装置を用いた再生炭素繊維のエネルギー効率を良好なものとすることができる。なお、上述した裁断工程を乾留後の炭素繊維強化プラスチックに対して実施するものであってもよい。
本発明の効果として、炭素繊維強化プラスチックを加熱ケージに充填し、嵩密度を一定に調整した状態で再生処理部に導入し、再生炭素繊維を生成することができる。これにより、加熱領域における熱的特性を均一化し、安定した加熱条件で再生炭素繊維の生成及び回収を行うことができる。また、マトリックス成分の一部を固定炭素として残存させることにより、再生炭素繊維の取り扱い性を良好にすることができる。このとき、炭素繊維強化プラスチックの嵩密度を一定とすることにより、上記固定炭素の残存炭素率の調整を容易に行うことができる。
本実施形態の炭素繊維の再生処理方法に使用される再生処理装置の概略構成を示す説明図である。 再生処理装置に使用する(a)加熱ケージの構成を示す斜視図、(b)加熱ケージの構成を示す断面図、及び(c)加熱ケージに炭素繊維強化プラスチックを充填した状態を示す模式断面図である。 本実施形態の炭素繊維の再生処理方法の流れの一例を示すフローチャートである。
以下、本発明の一実施形態である炭素繊維の再生処理方法1(以下、単に「再生処理方法1」と称す)について、図1乃至図3に基づいて説明する。ここで、本実施形態の再生処理方法1は、図1に示すような炭素繊維強化プラスチック25(以下、単に「CFRP25」と称す)を連続的に加熱することが可能な再生処理装置26を用いて行うものについて示すものとする。
ここで、再生処理装置26について、説明すると、耐火性素材である耐火煉瓦を用いて、内部に細長トンネル形状の再生処理空間2が構築された再生処理部3と、再生処理部3のを貫通するように配された無端状のメッシュベルト4と、メッシュベルト4を支持するとともに、軸周りに回転可能な複数の回転ローラ5を有するメッシュ搬送部6と、再生処理空間2を三つの領域に分割し、その中央の領域の加熱領域HZに設置された加熱除去部7と、加熱領域HZの搬送下流側の冷却領域CZに設けられ、再生処理済みの再生炭素繊維8を室温近傍まで徐冷する冷却部9と、加熱領域HZの搬送上流側の予備加熱領域PZに設けられ、加熱領域HZに到達するまでに加熱ケージ10に充填されたCFRP25を所定の加熱温度まで予備的に加熱する予備加熱部11と、予備加熱領域PZに連通するように再生処理部3の一部を開口し、予備加熱領域PZで発生した煙や炭化水素ガス等を含む残ガス成分12を当該予備加熱領域PZから吸引し、回収する残ガス回収部13と、回収された残ガス成分12をバーナーBの炎に近接させ、燃焼炉14内で再燃焼させた後に外部に放出する残ガス燃焼部15とを主に具備している。係る構成によって、メッシュベルト4に載置された加熱ケージ10内のCFRP25は、搬送方向(図1における矢印A方向)に沿って搬送され、搬送上流側の再生処理部3に開口した導入口16から再生処理空間2に導入され、さらに搬送下流側に開口した排出口17から再生処理空間2の外に排出される。
ここで、導入口16及び排出口17の間の再生処理空間2は、前述したように三つの領域が設定されている。さらに、具体的に説明すると、加熱ケージ10内のCFRP25を室温近傍の温度から所定の加熱温度(例えば、550℃)に到達するように予め設定された温度勾配に沿って徐々に加熱するための予備加熱領域PZと、予備加熱領域PZの搬送下流側に設定され、予備加熱領域PZで到達した加熱温度をそのまま保持し、CFRP25を加熱し、マトリックス成分を熱分解させて再生炭素繊維8を生成するための加熱領域HZと、加熱領域HZの搬送下流側に設定され、再生処理後の再生炭素繊維8を室温近傍まで冷却するための冷却領域CZの三つの領域に分かれている。
網状部材から構成されたメッシュベルト4を有するメッシュ搬送部6は、既に示したメッシュベルト4及び複数の回転ローラ5等の構成に加え、回転ローラ5を回転させるための回転力を発生させる回転駆動用モータ及び当該回転力を回転ローラ5に伝達するための回転伝達機構等の周知の構成を含むものであり、その詳細についてはここでは説明を省略する。また、加熱除去部7及び予備加熱部11は、円環状のメッシュベルト4の上側に位置する上ベルト18及び下側に位置する下ベルト19の間に介設され、上ベルト18のベルト内面20に相対するように発熱体21がそれぞれ配置されたものである。これにより、発熱体21に電流を供給し抵抗熱を発生させることによって、上ベルト18のベルト面18aに載置され、予備加熱領域PZ及び加熱領域HZに搬送された加熱ケージ10に対して下方から熱を加えることができる。なお、発熱体21に電流を供給するための電流供給部、供給する電流値を調整し発生する抵抗熱を制御する電流調整機構、及び予備加熱領域PZ及び加熱領域HZのそれぞれの複数箇所に設置され、当該位置における温度を計測する温度計測センサ、酸素濃度センサ、及び一酸化炭素濃度センサ等の構成を備えているが、ここでは図示を省略している。
一方、冷却領域CZに設けられた冷却部9は、加熱領域HZによってマトリックス成分が熱分解して再生された再生炭素繊維8を徐冷し、排出口17から排出された段階で作業者が回収可能な程度の温度まで下げるためのものである。本実施形態の場合、排出口17付近から搬送上流側に向けて冷却領域CZ内に強制的に冷たいエアー(外気)を送気するエアー送気部22が設けられている。さらに、再生処理部3の冷却領域CZには、再生処理空間2と連通するように上方に開口した複数の連通口23が開設され、該連通口23と吸気ダクト24が接続されている。これにより、強制的に送気されたエアーは、冷却領域CZで高温の再生炭素繊維8と接することで熱交換によって温められ、一部のエアー(例えば、約60%程度)は、連通口23及び吸気ダクト24を通じて再生処理装置26の外部に放出され、残りのエアー(例えば、約40%程度)は搬送上流側の加熱領域HZに流れることになる。
さらに、再生処理装置26に使用される加熱ケージ10は、図2に示すように、略直方体形状の筐体として構成されている。具体的に説明すると、一辺が47cmの正方形の板からなるケージ底面部27及びケージ底面部27の各辺縁から垂設された高さ15cmの四枚の長方形の板からなるケージ側面部28を有するケージ本体29と、一辺が50cmの正方形の板からなり、ケージ本体29の上方から被せるようにして載置されるケージ蓋部30とから主に構成されている。ここで、ケージ本体29のケージ底面部27及びケージ側面部28と、ケージ蓋部30とは、それぞれ網目部材からなる通気性材料によって構成されている。
ここで、充填空間31に充填したCFRP25の重量及びそのケージ底面部27からの高さによってCFRP25の嵩密度を算出することができる。ここで、加熱ケージ10の充填空間31の体積は、47センチ×47センチ×15センチ=33,135立方センチメートルであり、これに基づいて、嵩密度=(充填したプラスチックの重量)÷33,135×(ケージ底面部からの高さcm/15cm)として算出することができる。このとき、CFRP25は、充填空間31に偏りなく充填され、充填空間31に占める高さも一定のものとして仮定して算出している。
次に、上記再生処理装置26を用いた本実施形態の再生処理方法1の一例について説明する。ここで、本実施形態の再生処理方法1において、再生処理の対象となるCFRP25は、炭素繊維強化プラスチックを用いた製品を製造する製造工場から出された端材等(焼成前のプリプレグを含む)を回収したものであり、主にシート状のものを想定している。また、回収された端材等には、紙やその他の夾雑物が含まれているため、これらを予め取り除く作業を行ったものが使用される。その後、CFRP25を炭化乾留装置(図示しない)の乾留炉内にセットし、CFRP25に含まれる低沸点の物質及びマトリックス成分の一部を乾留する(乾留工程S1)。ここで、本実施形態の再生処理方法1では炭化乾留装置による炭化温度を550℃にセットし、これを8時間継続する。これにより、CFRP25は乾留炉内の無酸素の状態で加熱されることにより、低沸点の物質が揮発し、さらにメタンやベンゼン等の炭化水素ガスが発生する。これにより、CFRP25が炭化される。なお、本実施形態では、乾留工程S1によって得られる炭化済みのCFRP25の残存炭素率が約12%になるように調整される。その結果、事後に行うマトリックス成分の加熱除去の加熱条件を安定させることが可能となる。なお、炭化乾留の際に乾留炉内に過熱水蒸気を添加し、乾留の効果を上げるものであっても構わない。
乾留工程S1によって得られた炭化済みのCFRP25は、上記炭化水素ガス等の発生により乾留前に比べて体積が小さくなっているものの、依然として乾留前の形状を維持している。そこで、加熱ケージ10の充填空間31に充填するため、所定のサイズにCFRP25をカットする(裁断工程S2)。本実施形態では、既存の裁断機を用いることにより、50mm長にカットしている。その後、充填空間31にカットされたCFRP25を充填する。このとき、CFRP25の総充填量を1000gとした場合、ケージ本体29のケージ底面部27からの高さが5.66cmになるように充填することで、CFRP25の嵩密度が0.08グラム/立方センチメートル(充填率=約38%)に調整される(嵩密度充填工程S3、図2(c)参照)。そして、ケージ蓋部30をケージ本体29の上方から被せ、充填空間31を閉塞する。これにより、メッシュベルト4による搬送の際の振動等で、CFRP25或いは再生炭素繊維8が再生処理空間2に飛散することを防ぐことができる。なお、加熱ケージ10を構成するケージ底面部27等の網目部材に対して、上述した裁断工程S2によって裁断されたチップ状のCFRP25が大きいため、加熱ケージ10からCFRP25がこぼれ出ることもない。
次に、CFRP25の充填された加熱ケージ10を導入口16の近傍のメッシュベルト4に載置する(図1参照)。なお、再生処理装置26の加熱除去部7及び予備加熱部11のそれぞれの発熱体21は、予め加熱され、加熱領域HZ及び予備加熱領域PZに設定された加熱温度及び温度勾配になるように調整されている。また、冷却部9のエアー送気部22からは、冷却領域CZに向かって外気が強制的に送気されている。
そして、メッシュ搬送部6を稼働させる。具体的には、メッシュベルト4を支持する回転ローラ5を回転させ、これに伴ってメッシュベルト4を従動させる。これにより、ベルトコンベアの搬送上流側の上流端4aから下流側の下流端4bに向けてメッシュベルト4の上側に位置する上ベルト18が移動し、一方、下流端4bで当該移動方向が逆転し、搬送下流側から搬送上流側に向けてメッシュベルト4の下側に位置する下ベルト19が移動する。これにより、メッシュベルト4の上ベルト18に載置された加熱ケージ10が水平方向に移動する(加熱ケージ搬送工程S4)。ここで、メッシュベルト4の移動速度、すなわち、加熱ケージ10の搬送速度は、12.2m/h(≒0.20m/min)に設定されている。なお、本実施形態において使用される再生処理装置26は、再生処理部3の導入口16から排出口17までの炉内距離が26.5mに設定され、一方、上流端4aから下流端4bまでの全体長さが35.0mになるように設定されている。そのため、導入口16から導入され、排出口17から排出されるまで、加熱ケージ10は130分間を掛けて再生処理空間2を搬送されることになる。ここで、一つの加熱ケージ10の載置されたメッシュベルト4の直後には別の加熱ケージ10が近接されるように載置されている。そのため、上記搬送速度では、単位時間当たり23.5ケースの加熱ケージ10を処理することができる。このとき、搬送速度を低く設定すると、一つの加熱ケージ10の再生処理空間2における滞留時間が長くなり、作業効率が著しく低下する。一方、搬送速度が速すぎると、加熱ケージ10に充填されたCFRP25のマトリックス成分が十分に熱分解しない状態で排出口17から排出されることがある。そのため、上記したように1時間あたり、12m程度進むように搬送速度をセットすることで、作業効率及び再生炭素繊維8の品質安定性の双方の問題を解消することができる。
なお、本実施形態において、導入口16の開口形状と加熱ケージ10の断面形状とが略一致するように形成されているため、導入口16の開口縁と加熱ケージ10のケージ表面10aの間には僅かな空隙しか形成されていない。そのため、導入口16側からは必要最低限の外気等しか再生処理空間2に侵入しないため、予備加熱領域PZにおける温度勾配の変化に大きな影響を及ぼすものでない。さらに、前述したように、一つの加熱ケージ10の直後に、別の加熱ケージ10をメッシュベルト4に載置することで、導入口16から流れ込む外気の量を制限するとともに、同じような熱的特性を有する加熱ケージ10及びCFRP25によって、予備加熱領域PZにおける温度勾配に影響を及ぼすことがない。その結果、目的とする加熱温度まで安定した加温が可能となる。
再生処理部3の導入口16から再生処理空間2の予備加熱領域PZに導入された加熱ケージ10は、予備加熱部11の発熱体21から発せられる熱によって加熱される(予備加熱工程S5)。ここで、前述したように、加熱ケージ10内のCFRP25は、予め乾留工程S1によってマトリックス成分の一部が炭化したものである。そのため、係る予備加熱工程S5は、加熱ケージ10内のCFRP25を加熱領域HZにおける加熱温度(=550℃)まで加熱するいわば「昇温工程」として機能している。しかしながら、マトリックス成分の一部からは、乾留工程S1では放出されなかった物質により、炭化水素ガスや煙等の残ガス成分12が発生することがある。そこで、予備加熱領域PZの上方に連結した残ガス回収部13によって、係る残ガス成分12を回収し、回収された残ガス成分12に十分な酸素を供給しながらバーナーBで完全燃焼させることにより、二酸化炭素及び水を生成することができ、自然環境への影響を小さくした状態でこれらを大気中に放出することができる。
その後、予備加熱領域PZを経て加熱領域HZに到達した加熱ケージ10及びCFRP25は、残存するマトリックス成分の炭化物を酸素雰囲気下の再生処理空間2で加熱除去するために加熱される(加熱除去工程S6)。ここで、加熱領域HZの加熱温度は、本実施形態では550℃に設定されている。このとき、CFRP25の炭素繊維自体は、800から850℃以上の加熱温度でなければ酸素雰囲気下でガス化することがない。その結果、マトリックス成分に由来する炭化物のみが酸化反応によって加熱除去され、再生炭素繊維8が生成される。このとき、加熱領域HZにおける加熱温度、加熱領域HZの距離(長さ)、及び搬送速度を調整することにより、マトリックス成分の炭化物が完全に除去されない間に冷却領域CZに到達するように設定されている。すなわち、再生炭素繊維8の繊維表面には、マトリックス成分の炭化物(固定炭素)が付着している。固定炭素の残存炭素率は3%前後になるように本実施形態では設定されている。
そして、冷却領域CZに到達した再生炭素繊維8は、加熱除去部7の発熱体21による熱を受けることがないため、メッシュベルト4に沿って搬送される間に徐々に熱を放出し、徐冷される(冷却工程S7)。このとき、搬送下流側から、外気がエアー送気部22によって送気されるため、該外気と接した再生炭素繊維8は、さらに温度低下の勾配が急激となり、冷却領域CZが短く設定されている場合であっても十分な冷却効果を得ることができる。なお、再生炭素繊維8には固定炭素が付着しているため、完全にマトリックス成分を除去したものと比べ、エアー送気部22による外気によって容易に飛散することがない。冷却領域CZに送気された外気は、未だ高温の再生炭素繊維8と接し、熱交換によって温められる。その結果、吸気ダクト24からその一部が吸引され再生処理装置26の外部に放出される。一方、残りの一部は加熱領域HZに到達する。このとき、外気は酸素を含むものであり、マトリックス成分の炭化物をガス化するための酸化反応のために費消される。
その後、再生処理空間2の終端に到達し、十分に冷却された再生炭素繊維8が排出口17から排出される(ステップS8)。ここで、前述したように、550℃程度の加熱温度では炭素繊維(再生炭素繊維8)自体を熱分解することがないため、加熱ケージ10内の再生炭素繊維8は、太さ等が変化することがない。さらに、繊維表面に固定炭素が付着しているため、密度が高くなり、完全にマトリックス成分を除去したものに比べて取扱い性に優れる利点を有している。なお、再使用に際して、係る固定炭素の存在は特に影響を及ぼさない。
以上説明したように、本実施形態の再生処理方法1によれば、再生対象のCFRP25を搬送上流側のメッシュベルトに載置して所定の搬送速度で搬送し、再生処理空間2でマトリックス成分の炭化物を一部残して加熱分解することにより、当該CFRP25からマトリックス成分のみを選択的に除去し、かつ風等によって容易に飛散することのない再生炭素繊維8の再生が可能である。さらに、再生処理空間2に導入する前に、加熱ケージ10に規定の嵩密度となるように充填することにより、再生処理空間2における加熱が安定する。その結果、固定炭素の残存率も安定させることができる。なお、本実施形態の再生処理方法1によるCFRP25の嵩密度をコントロールすることで、加熱除去部7におけるCFRP25と酸素(大気)との接触面積を調整することができる。ここで、高温時に酸素と接触することは、再生炭素繊維8のガス化による損失または再生炭素繊維8の力学的特性が低下する等の不具合が発生する可能性が高くなる。そのため、酸素との接触面積の調整を図ることで、再生炭素繊維8等の損失を最低限に抑えることができる。
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
例えば、本実施形態の再生処理方法1において、再生処理対象のCFRP25に対し、予め乾留工程S1を実施し、マトリックス成分を炭化させて12%前後の残存炭素率にしたものを示したが、これに限定されるものではなく、係る乾留工程S1を必要に応じて実施しないものであっても構わない。すなわち、予備加熱領域PZで加熱温度まで昇温する際にマトリクス成分をガス化し乾留と同じ作用を奏させることが可能であれば省略しても構わない。さらに、乾留工程S1後に充填するCFRP25のサイズを整えるため、裁断を行うものを示したが、これに限定するものではなく、乾留工程S1前に実施するものであっても構わない。
さらに、本実施形態の再生処理方法1において、再生処理空間2に加熱ケージ10を搬送するものとして、メッシュベルト4を有するメッシュ搬送部6を使用するものを示したがこれに限定されるものではなく、他のローラーハースキルン等を用いるものであっても構わない。しかしながら、本実施形態のように加熱ケージ10の下方に発熱体21を配し、加熱する場合、メッシュベルト4を用いることにより、熱の伝搬を良好にすることができ効率的な加熱を行うことができる。また、本実施形態の再生処理方法1において、50mm長にCFRP25をカットするものを示したが、これに限定されるものではなく、裁断機を用いて3.5mm〜150mmにカットするものであっても構わない。これにより、再利用の用途に応じた再生炭素繊維8に再生することが可能となる。なお、再利用の用途としては、不織布、断熱材、及び新規の炭素繊維強化プラスチックのフィラー成分等が想定される。さらに、係る裁断工程S2は、一回に限定されるものではなく、例えば、CFRP25に含まれる繊維がクロスするように編込まれている場合には、二回または複数回の裁断工程S2を実施するものであってもよい。
1 再生処理方法(炭素繊維の再生処理方法)
2 再生処理空間
3 再生処理部
7 加熱除去部
8 再生炭素繊維
9 冷却部
10 加熱ケージ
16 導入口
17 排出口
25 CFRP(炭素繊維強化プラスチック)
26 再生処理装置
31 充填空間
CZ 冷却領域
HZ 加熱領域
PZ 予備加熱領域
S1 乾留工程
S2 裁断工程
S3 嵩密度充填工程
S4 加熱ケージ搬送工程
S5 予備加熱工程
S6 加熱除去工程
S7 冷却工程
特開2008−285600号公報 特開2008−285601号公報 特開平7−33904号公報

Claims (5)

  1. 炭素繊維及びマトリックス成分を含有する炭素繊維強化プラスチックを通気性材料で各面が形成された筐体状の加熱ケージの中に予め規定された嵩密度となるように充填する嵩密度充填工程と、
    耐火性素材によって内部に細長トンネル形状の再生処理空間が構築され、前記再生処理空間に連通する導入口及び排出口がそれぞれ開口した再生処理部に前記炭素繊維強化プラスチックの充填された前記加熱ケージを搬送する加熱ケージ搬送工程と、
    前記再生処理空間の加熱領域に設けられた加熱除去部によって、搬送される前記加熱ケージ内の前記炭素繊維強化プラスチックを加熱し、前記マトリックス成分を除去する加熱除去工程と、
    前記再生処理空間の前記加熱領域の搬送下流側の冷却領域に設けられた冷却部によって、前記マトリックス成分の加熱除去された再生炭素繊維を搬送しながら冷却する冷却工程と
    を具備することを特徴とする炭素繊維の再生処理方法。
  2. 前記加熱除去工程は、
    前記炭素繊維強化プラスチックの前記マトリックス成分の一部を加熱によって固定炭素に転換し、前記固定炭素が繊維表面に付着した前記再生炭素繊維を生成することを特徴とする請求項1に記載の炭素繊維の再生処理方法。
  3. 前記加熱除去工程は、
    前記固定炭素の残存炭素率を前記再生処理部に導入前の前記マトリックス成分の当初重量に対して、0.5重量%以上、11.0重量%以下に調整して前記マトリックス成分の加熱除去を行うことを特徴とする請求項2に記載の炭素繊維の再生処理方法。
  4. 前記嵩密度充填工程の前に実施され、
    前記炭素繊維強化プラスチックを予め規定されたサイズに裁断加工する裁断工程をさらに具備することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載の炭素繊維の再生処理方法。
  5. 前記嵩密度充填工程の前に実施され、
    前記炭素繊維強化プラスチックを予め乾留し、前記マトリックス成分を炭化する乾留工程をさらに具備し、
    前記加熱ケージに炭化済みの前記炭素繊維強化プラスチックが充填されることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一つに記載の炭素繊維の再生処理方法。
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