JP2013237601A - 表面改質されたシリカ殻からなる中空粒子およびその製造方法 - Google Patents

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晃啓 矢野
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孝 白井
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Abstract

【課題】特定の溶液を選択的に吸着する機能を持つ表面が改質されたシリカ殻を有する中空粒子とその製造方法の提供する
【解決手段】殻内にガス吸着等温線から検出される細孔径2〜20nmの細孔を有するシリカ殻からなる中空粒子であって、殻外表面、あるいは殻内表面の少なくとも一部位が表面改質剤によって疎水化あるいは親水化されたシリカ殻からなる中空粒子。シリカ殻からなる中空粒子をシランカップリング剤あるいはアルコールが溶解した有機溶媒に分散させ、加熱することにより、殻外表面あるいは殻内表面の少なくとも一部位が表面改質剤によって疎水化あるいは親水化する、シリカ殻からなる中空粒子の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、シリカ殻からなる中空粒子およびその製造方法に関するものである。
近年、マイクロカプセルと称される中空体が注目されている。例えば、医薬や化粧品の分野では、中空体内部に有効成分を内包した徐放性医薬や徐放性化粧品のほか、外環境との接触により分解或いは劣化してしまう物質の保護、ドラッグデリバリーシステムのための担体等に、中空体(マイクロカプセル)を活用する研究が盛んに行われている。また、製紙分野では、内部に染料を内包した中空体(マイクロカプセル)が感圧紙に使われている。この他にも軽量充填材としての利用等、中空体は数多くの適用分野が見込まれ、多方面に亘る応用が期待されていることから、その製造に関して種々の検討がなされている。
そして、近年においては、ナノテクノロジー研究の一環として、数百nm以下の粒子径を有する粒子についての応用研究が盛んに行われており、中空粒子についても、ナノサイズのものが嘱望されている。
非特許文献1に記載の発明は、ポリスチレン(PS)粒子をコアとし、チタニア(TiO)を内層、シリカを外層とした二層からなる中空粒子について、チタニアとシリカの性質を利用して中空粒子の内表面のみ疎水化するものである。その結果、疎水性のモデル薬剤であるイブプロフェンのカプセル化率を向上させている。
特許文献1に記載の発明は、PS粒子をコアとし、シリコンアルコキシドのゾルゲル反応を利用してシリカコーティングを施し、その後疎水基を持つシリコンアルコキシドを用いてさらにシリカコーティングを施しコアシェル粒子とし、コアを有機溶媒で溶解除去することにより外表面に多く疎水基を持つ中空粒子を製造するものである。特許文献2に記載の発明は、界面活性剤のミセルを利用して、メソ細孔を有するシリカ殻からなる中空粒子を製造するものである。
これら先行文献のうち、非特許文献あるいは特許文献1に記載の技術においては、中空粒子の内表面のみ疎水化、あるいは外表面のみの疎水化には成功しているものの、中空粒子の径は1μm以上と大きく、ナノサイズ化することが困難である。さらに、PSコア粒子の特徴である真球度はよいが、球状以外の形態を得ることは困難であり、したがって中空粒子の形状も球状形態に限られたものとなる。一方、特許文献2に記載の技術においては、メソ細孔を有するシリカ殻からなるナノ中空粒子を製造することに成功し、用いた界面活性剤の種類や添加量を変えることで容易に細孔径、細孔容積を制御することが可能である。ところが、メソ細孔から侵入した成分を中空粒子内に保持する機能がないため、カプセル化率を上げることは困難である。
このような状況に鑑み、本発明者らは、ナノサイズの中空粒子の開発にあたり、ナノサイズの特色をより効果的に発現させるためには、凝集が制御され分散性のよいものが望まれるほか、中空粒子を構成する殻の性状、特に分子サイズでの細孔の制御技術も必要であることに注目し、鋭意研究を進めた結果、特許文献3に記載されるように、高分散シリカナノ中空粒子の開発に成功した。
特許文献3に記載の高分散シリカナノ中空粒子は、緻密なシリカ殻からなるナノ中空粒子であって、透過電子顕微鏡法による一次粒子径が30〜300nm、動的光散乱法による粒子径が30〜800nm、水銀圧入法またはガス吸着法により測定される細孔分布において2〜20nmの細孔が検出されないものである。そして、特許文献3に記載のシリカナノ中空粒子は、炭酸カルシウムを含水ケーキ状態に調製してこれをコアとして用い、この含水ケーキ状態の炭酸カルシウムコアをアルコール中に分散させ、それにシリコンアルコキシド等を添加することによってシリカコーティングし、その後、コアとしての炭酸カルシウムを酸処理によって溶解除去させることによって製造されるものである。ところが、特許文献3の発明においては、緻密なシリカ殻からなるナノ中空粒子の製造には成功しているものの、特定の成分をカプセル化する機能には優れていなかった。
特開2011−89018 特開2011−126761 特許第4654428号公報
Li−Feng、Yan Shi、Su−Rong Jin,Mei−Juan Li,Lian−Meng Zhang,Materials Research Bulletin,45、2010、1351−1356
本発明の課題は、かかる従来技術の不具合を解決すべくなされたものであって、特定の溶液を選択的に吸着する機能を持つ表面が改質されたシリカ殻を有する中空粒子とその製造方法の提供することである。
本発明者らは表面改質剤を検討することにより上記課題を解決しうることを見出した。すなわち、本発明によれば、以下の表面改質されたシリカ殻からなる中空粒子およびその製造方法が提供される。
[1]殻内にガス吸着等温線から検出される細孔を有するシリカ殻からなる中空粒子であって、殻外表面、あるいは殻内表面の少なくとも一部位が表面改質剤によって疎水化あるいは親水化されたシリカ殻からなる中空粒子。
[2]前記細孔の細孔径が2〜20nmである前記[1]に記載のシリカ殻からなる中空粒子。
[3]前記シリカ殻からなる中空粒子が、球状形態、回転楕円体状形態あるいは立方体状形態のいずれかである前記[1]または[2]に記載のシリカ殻からなる中空粒子
[4] 前記中空粒子の粒子径が30〜800nmであるシリカ殻からなる前記[1]〜[3]のいずれかに記載の中空粒子。
[5]シリカ殻の厚みが、2nm〜25nmである前記[1]〜[4]のいずれかに記載のシリカ殻からなる中空粒子。
[6]前記中空粒子を所定量の水を含む有機溶媒中に分散させると、改質剤の種類によって特定の溶液を選択的に吸着する機能を持つ前記[1]〜[5]のいずれかに記載のシリカ殻からなる中空粒子。
[7] 殻内にガス吸着等温線から検出される細孔を有するシリカ殻からなる中空粒子の製造方法であって、所定寸法形状を有する無機粒子を有機溶媒1に分散させ、シリコンアルコキシド及び塩基触媒を混合することによって、前記無機粒子の表面にシリカ殻を形成させたシリカコーティング粒子とし、その後、酸水溶液によって当該シリカコーティング粒子の内部の無機粒子を溶解させて中空粒子となし、当該中空粒子をシランカップリング剤あるいはアルコールが溶解した有機溶媒2に分散させ、加熱することにより、殻外表面あるいは殻内表面の少なくとも一部位が表面改質剤によって疎水化あるいは親水化されたシリカ殻からなる中空粒子の製造方法。
[8]前記表面改質剤が、下記一般式(1)で表わされるシランカップリング剤または一般式(2)で表わされるアルコール類から選ばれる1種以上の表面改質剤である前記[7]に記載のシリカ殻からなる中空粒子の製造方法。
(OR4−nSi(X)(R ・・・(1)
(式中、R及びRは、それぞれ独立に炭素数1〜22の直鎖状または分岐状アルキル基、Xはアミノ基、メルカプト基、(メタ)アクリル基、エポキシ基、イソシアネート基、カルボン酸基、ビニル基から選択されるいずれかの基が含まれてもよい総炭素数1〜24の炭化水素基を示す。)
−OH・・・(2)
(式中、Rは、炭素数1〜22の直鎖状または分岐状アルキル基を示す)
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。
ここで、中空粒子作製のためのコアとなる前記「無機粒子」としては、カルシウムイオンとリン酸イオンまたは二リン酸イオン炭酸イオンとからなる無機塩であればよく、たとえば、ハイドロキシアパタイト、オキシアパタイト、α−リン酸三カルシウム、β−リン酸三カルシウム、γ−リン酸三カルシウム等のリン酸カルシウム、炭酸カルシウム等が挙げられる。中でも、種々の外形形状を有する粒子の製造や入手が比較的容易であることから、更には、シリカ殻が被覆されやすく反応効率を高めてシリカ殻からなる中空粒子の生成効率を高くできることから、ハイドロキシアパタイト、炭酸カルシウムを用いることが好ましい。
前記「有機溶媒1」としては、シリコンアルコキシドと水に対して溶解性があり、更に、シリコンアルコキシドの加水分解反応を促進可能なものであればよく、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、グリコール類、グリコールエステル類、アセトン等のケトン類、n−ヘキサン等の脂肪族炭化水素、キシレン等の芳香族炭化水素等の単体溶媒もしくはこれら2種類以上の混合溶媒が挙げられる。特に、リン酸カルシウム粒子とシリコンアルコキシドとの相互作用を向上させて反応効率を高め、シリカ殻からなる中空粒子の生産効率を向上させることができることから、アルコール類を用いることが好ましい。
前記「シリコンアルコキシド」としては、その加水分解・縮重合によりシリカを生成させることができるものであればよく、例えば、テトラエトキシシラン、トリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリプロポキシシラン、テトラプロポキシシラン、トリブトキシシラン、トリブトキシシラン等を用いることができる。また、「塩基触媒」としては、例えば、アンモニア、アミン類等が挙げられる。
前記「酸水溶液」は、分散系の水素イオン濃度指数をリン酸カルシウム、炭酸カルシウムが溶解するpH4以下とすることが好ましく、例えば、塩酸、シュウ酸、硝酸、酢酸等の希薄水溶液が挙げられる。
前記「表面改質剤」は、下記一般式(1)で表わされるシランカップリング剤または一般式(2)で表わされるから選ばれる1種以上とし、例えばトリメチルエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
(OR4−nSi(X)(R ・・・(1)
(式中、R及びRは、それぞれ独立に炭素数1〜22の直鎖状または分岐状アルキル基、Xはアミノ基、メルカプト基、(メタ)アクリル基、エポキシ基、イソシアネート基、カルボン酸基、ビニル基から選択されるいずれかの基が含まれてもよい総炭素数1〜24の炭化水素基を示す。)
−OH・・・(2)
(式中、Rは、炭素数1〜22の直鎖状または分岐状アルキル基を示す)
前記「有機溶媒2」は、表面改質剤に対して溶解性があればよく、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、グリコール類、グリコールエステル類、アセトン等のケトン類、n−ヘキサン等の脂肪族炭化水素、キシレン等の芳香族炭化水素等の単体溶媒もしくはこれら2種類以上の混合溶媒が挙げられる。特に、粒子と表面改質剤との相互作用を向上させてシリカ中空粒子の表面改質を向上させることができることから、脂肪族または芳香族炭化水素類を用いることが好ましい。
本発明のシリカ殻からなる中空粒子は、その形状形態が、球状形態、回転楕円体状形態または立方体状形態のいずれかの形態をなすものである。ここで、「球状形態」とは、真球に限らず、球状に似た形状をいう。また、「回転楕円体状形態」とは、楕円面によって囲まれていて方向により長さに差異のある立体形状をいい、楕円をその長軸または短軸を回転軸として回転させた回転楕円体状のものも含まれる。更に、「立方体状形態」とは、正確な立方体に限らず面で囲まれた立方体に似た形状をいう。そして、このような球状形態、回転楕円体状形態、または立方体状形態をなすシリカ殻からなる中空粒子は、例えば、乾燥粉末状態で球状形態、回転楕円体状形態、または立方体状形態を有するリン酸カルシウム粒子をテンプレートとしてこれにシリカ殻を被覆することによって得られる。
本発明のシリカ殻からなる中空粒子の殻内にはガス吸着等温線から検出される細孔を有し、その細孔径は2〜20nmであることが好ましい。
本発明のシリカ殻からなる中空粒子はその粒子径が30〜800nmであることが好ましく、粒子径は粒子が回転楕円体状形態の場合は長径と短径の平均、立方体状形態の場合は一辺の長さを言う。
本発明のシリカ殻からなる中空粒子のシリカ殻の厚みは、2nm〜25nmの範囲内、より好ましくは、3nm〜20nmの範囲内であるものである。このシリカ殻の厚みは、顕微鏡法により測定したものであり、ここでいう「顕微鏡法」とは、走査型電子顕微鏡(SEM)または透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて粒子を実際に観察して、粒子の各部分の大きさを求める方法である。
コアとなる粒子をエタノール溶媒中に所定量分散させ、シリコンアルコキシド(TEOS)、蒸留水、各触媒を所定量添加し、室温で所定時間反応させ、シリカコーティング粒子を製造する。コア粒子としてポリスチレン(PS)を用いた場合は、加熱による熱分解によりコア粒子を除去し、た。コア粒子として炭酸カルシウム(CaCO3)を用いた場合は、希釈塩酸水溶液を用いてコア粒子を溶解除去し、残留物を洗浄除去してシリカ殻からなる中空粒子を得る。本実施例ではコア粒子として立方体形状の炭酸カルシウム1.63g、TEOS1.0g、エタノール12ml、および蒸留水2.92mlの混合溶液に触媒として25%NH4OHaqを1.0ml加えて25℃で90分反応させて、炭酸カルシウム外壁にシリカ殻を形成させた。そして、10%塩酸水溶液を用いてコア粒子を溶解除去し、シリカ殻からなる中空粒子を得た。
当該シリカ中空粒子5gをヘキサン200ml溶媒中に分散させ、シランカップリング剤を加え、オートクレーブ中でヘキサン溶媒の超臨界状態で一時間反応またはヘキサン溶媒の還流温度で反応させ、粒子表面を改質した。ここで、超臨界状態とは臨界点以上の圧力、温度下の状態のことを言う。シランカップリング剤の添加重量は、中空粒子の重量に対して1〜5となるように加えた。当該改質されたシリカ殻からなる中空粒子を所定量の有機溶媒と水との混合溶液中に10〜30分間分散させた後、改質中空粒子をろ過により除去し、炉液中の有機溶媒と水との混合溶液中の水分量をカールフィッシャー水分計(島津製作所製)にて測定した。
表1に改質剤の種類と水分計測定結果から計算した水吸着効果を示す。表中の水吸着効果は、水吸着量を◎(〜15%)、○(〜10%)、△(〜5%)、×(吸着しない)と表記する。これは、所定量の有機溶媒と水との混合溶液中から、水が選択的に改質中空粒子に吸着された割合を示す。
表2の結果より、水吸着効果は炭素鎖長が比較的長い実施例2、3、および4が特に優
れていた。

Claims (8)

  1. 殻内にガス吸着等温線から検出される細孔を有するシリカ殻からなる中空粒子であって、殻外表面、あるいは殻内表面の少なくとも一部位が表面改質剤によって疎水化あるいは親水化されたシリカ殻からなる中空粒子。
  2. 前記細孔の細孔径が2〜20nmである請求項1に記載のシリカ殻からなる中空粒子。
  3. 前記シリカ殻からなる中空粒子が、球状形態、回転楕円体状形態あるいは立方体状形態のいずれかである請求項1または2に記載のシリカ殻からなる中空粒子。
  4. 前記中空粒子の粒子径が30〜800nmである請求項1〜3のいずれかに記載のシリカ殻からなる中空粒子。
  5. シリカ殻の厚みが2nm〜25nmである請求項1〜4のいずれかに記載のシリカ殻からなる中空粒子。
  6. 前記中空粒子を所定量の水を含む有機溶媒中に分散させると、改質剤の種類によって特定の溶液を選択的に吸着する機能を持つ請求項1〜5のいずれかに記載のシリカ殻からなる中空粒子。
  7. 殻内にガス吸着等温線から検出される細孔を有するシリカ殻からなる中空粒子の製造方法であって、所定寸法形状を有する無機粒子を有機溶媒1に分散させ、シリコンアルコキシド及び塩基触媒を混合することによって、前記無機粒子の表面にシリカ殻を形成させたシリカコーティング粒子とし、その後、酸水溶液によって当該シリカコーティング粒子の内部の無機粒子を溶解させて中空粒子となし、当該中空粒子をシランカップリング剤あるいはアルコールが溶解した有機溶媒2に分散させ、加熱することにより、殻外表面あるいは殻内表面の少なくとも一部位が表面改質剤によって疎水化あるいは親水化されたシリカ殻からなる中空粒子の製造方法。
  8. 前記表面改質剤が、下記一般式(1)で表わされるシランカップリング剤または一般式(2)で表わされるアルコール類から選ばれる1種以上の表面改質剤である請求項7に記載のシリカ殻からなる中空粒子の製造方法。
    (OR4−nSi(X)(R ・・・(1)
    (式中、R及びRは、それぞれ独立に炭素数1〜22の直鎖状または分岐状アルキル基、Xはアミノ基、メルカプト基、(メタ)アクリル基、エポキシ基、イソシアネート基、カルボン酸基、ビニル基から選択されるいずれかの基が含まれてもよい総炭素数1〜24の炭化水素基を示す。)
    −OH・・・(2)
    (式中、Rは、炭素数1〜22の直鎖状または分岐状アルキル基を示す)
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