JP2013228859A - プラント制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】マルチコアプロセッサの有効活用によってプラントモデルの精度を高め、制約に抵触しないぎりぎりの範囲までプラントの制御範囲を広げられるようにする。
【解決手段】プラントの状態量等に課せられた制約が満たされるようにリファレンスガバナを用いて目標値を修正する。リファレンスガバナではプラントの制御量の目標値に基づいて複数の修正目標値候補を定め、修正目標値候補ごとにプラントの特定状態量等の将来値をプラントモデルを用いて予測する。リファレンスガバナによる特定状態量の将来予測のための演算(将来予測タスク)と、プラントモデルのパラメータの学習のための演算(パラメータ学習タスク)とは、マルチコアプロセッサの別々のコアに割り当てる。そして、プラントモデルに係る予測誤差の大きさに応じて将来予測タスクを割り当てるコアの数とパラメータ学習タスクを割り当てるコアの数とを調整する。
【選択図】図5

Description

本発明は、プラントの制御装置に関し、詳しくは、プラントの特定の状態量に課せられる制約が満足されるようにリファレンスガバナを用いてプラントの制御量の目標値を修正する制御装置に関する。
プラントの制御においては、プラントの状態量や操作量に関してハード上の或いは制御上の様々な制約が存在している。それらの制約が満たされない場合、ハードの破損や制御性能の低下が生じるおそれがある。このため、プラントの制御装置を設計する際には、所望の応答性能を得ることに加えて上記制約を満たすことが同時に求められている。リファレンスガバナはそのような要求を満たすための1つの手段である。リファレンスガバナによれば、制御システムに入力される目標値を修正することによって制約を満足させることができる。
リファレンスガバナは、制御対象であるプラント及びその制御系をモデル化したプラントモデルを使用して制約が課せられている状態量や操作量の将来値を予測し、予測した将来値が制約に抵触していないかどうか判断する。このとき制約抵触の有無の判断を厳しく行えることができるならば、制約に抵触しないぎりぎりの範囲までプラントの制御範囲を広げ、制御対象プラントが持っている制御性能のポテンシャルを十分に引き出すことが可能となる。
ところが、プラントモデルにはモデル化誤差があり、プラントモデルを用いて予測された状態量や操作量の将来値にも予測誤差が含まれている。一般的なプラントモデルはある標準プラントに対して適合されたものであるので、実際のプラントと標準プラントとの差によっては大きな予測誤差が生じる場合がある。このような予測誤差について考慮するならば、ある程度の余裕度を持って制約抵触の有無を判断せざるを得ない。つまり、判断を保守的にせざるを得ない。その結果、ばらつきの中央品では制約に対してまだまだ余裕があるにも関わらず、ばらつきの上限品であったら制約に抵触する可能性がある場合には、たとえ実際のプラントが中央品であったとしてもその制御範囲は狭い範囲に限定されてしまうことになる。
以上述べた問題はプラントモデルを実際のプラントの状態に近づけることによって、より具体的には、プラントモデルのパラメータを学習することによって解決できる可能性がある。ただし、パラメータの学習のためには多大な量の演算をプロセッサに行わせなければならない。リファレンスガバナでは将来予測のための演算が必要であるため、パラメータの学習のための演算がさらに加わる場合には、従来のプラント制御装置が有するプロセッサではその処理能力に不足が生じるおそれがある。
従来のプラント制御装置が有する一般的なプロセッサは、CPUコアが1つのシングルコアプロセッサである。一方、近年、1つの半導体チップ上に複数のCPUコアを搭載したマルチコアプロセッサの使用が様々な分野で提案されている。マルチコアプロセッサは、例えば特開2010−126012号公報に開示されているように、車載動力プラントであるエンジンの制御の分野においてもその使用が検討されている。マルチコアプロセッサを使用する利点の一つが、その処理能力の高さである。CPUコアが1つのシングルコアプロセッサと比較した場合、マルチコアプロセッサのほうがより高い処理能力を得ることができる。上述の問題に鑑みた場合、処理能力の高さはマルチコアプロセッサをプラント制御装置に使用することの1つの理由となる。
特開2010−126012号公報 特開2010−510469号公報 特開2008−269487号公報
しかしながら、マルチコアプロセッサといえどもその処理能力は有限である。しかも、プラント制御装置のプロセッサが行う演算は、リファレンスガバナによるフィードフォワード制御に関係する演算だけではない。さらに、自動車のエンジンに関して言えば、エンジンに搭載されるアクチュエータの数と種類は近年益々増えており、アクチュエータの数と種類が増えた分だけ必要な演算の量も増えている。このことは自動車用エンジン以外のプラントにおいても共通であり、プラントを操作するアクチュエータの数や種類が多くなるほどプロセッサにかかる演算負荷は大きくなる。このため、単にマルチコアプロセッサを使用するだけでは、プラントモデルのパラメータの学習に伴う処理能力の不足は依然として解決されないおそれがある。
マルチコアプロセッサの有効活用によりプラントモデルの精度を高めるためには、プラント制御装置が処理する様々なタスクに対して有限個のコアを如何に効率的に利用するかが重要であると言える。
本発明は、上述のような課題に鑑みてなされたもので、マルチコアプロセッサの有効活用によってプラントモデルの精度を高め、制約に抵触しないぎりぎりの範囲までプラントの制御範囲を広げられるようにすることを目的とする。
上記の課題を達成するために、本発明に係るプラント制御装置、より詳しくは、マルチコアプロセッサを有するプラント制御装置は、以下の動作を行うように構成される。
本発明に係るプラント制御装置は、リファレンスガバナとフィードバックコントローラとを用いてプラントを制御する。リファレンスガバナは、プラントの制御量の目標値に基づいて複数の修正目標値候補を定め、複数の修正目標値候補のそれぞれについてプラントの特定状態量或いは特定操作量の将来値をプラントモデルを用いて予測する。そして、リファレンスガバナは、予測した将来値が特定状態量或いは特定操作量に課せられる制約を満たす範囲で本来の目標値に最も近い修正目標値候補を修正目標値として選択する。フィードバックコントローラは、プラントの制御量の実値を修正目標値に近づけるようにフィードバック制御によってプラントの操作量を決定する。
本発明に係るプラント制御装置は、リファレンスガバナ及びフィードバックコントローラによるプラント制御と並行して、プラントモデルのパラメータを学習するとともに、プラントモデルに係る予測誤差を推定する。パラメータの学習は、フィードバック制御システム内の信号や外部からの入力信号及び外部への出力信号を用いて行うことができる。予測誤差の推定は、例えば、外乱オブザーバを用いて行うことができる。
本発明に係るプラント制御装置は、マルチコアプロセッサが有する複数のコアに対するタスクの割り当てを管理するコア管理プログラムを有する。そのコア管理プログラムによれば、将来予測タスクとパラメータ学習タスクとがマルチコアプロセッサが有する複数のコアに別々に割り当てられる。将来予測タスクとは、複数の修正目標値候補のそれぞれに対する特定状態量或いは特定操作量の将来値を予測するための演算を意味し、パラメータ学習タスクとは、パラメータを学習するための演算を意味する。コア管理プログラムは、プラントモデルに係る予測誤差の大きさに応じて将来予測タスクを割り当てるコアの数とパラメータ学習タスクを割り当てるコアの数とを調整する。好ましくは、予め定められた一定数のコアに対してコア毎に将来予測タスクとパラメータ学習タスクの何れか一方を割り当てる。
コア管理プログラムは、より具体的には、プラントモデルに係る予測誤差が大きくなれば、将来予測タスクを割り当てるコアの数を減らし、その一方では、パラメータ学習タスクを割り当てるコアの数を増やす。プラントモデルの精度を高めることを優先するためである。そして、プラントモデルに係る予測誤差が小さくなれば、コア管理プログラムは、パラメータ学習タスクを割り当てるコアの数を減らし、その一方では、将来予測タスクを割り当てるコアの数を増やす。よりよい修正目標値を探索して制約に抵触しないぎりぎりの範囲までプラントの制御範囲を広げるためである。
リファレンスガバナでは、好ましくは、コア管理プログラムにより将来予測タスクを割り当てられるコアの数だけ修正目標値候補を定める。つまり、将来予測タスクを割り当てられたコアごとに修正目標値候補を定め、その修正目標値候補に対する特定状態量或いは特定操作量の将来値を予測するための演算を同コアに実行させる。
パラメータの学習においては、好ましくは、パラメータ学習タスクにより将来予測タスクを割り当てられるコアの数に応じて学習対象とするパラメータの数を増減させるか、或いは、学習対象とするパラメータの1コア当たりの数を増減させる。つまり、将来予測タスクを割り当てられたコアが増えた場合、学習対象とするパラメータの数を増やすか、或いは、学習対象とするパラメータの数は一定のまま1コア当たりの学習パラメータ数を減らすようにする。前者によれば学習されるパラメータの数が増えることでプラントモデルの精度が高まり、後者によればパラメータの学習精度が高まることでプラントモデルの精度も高まる。
コア管理プログラムは、より好ましくは、プラントモデルに係る予測誤差を推定するための演算を割り当てるコアとは別のコアに対して将来予測タスク及びパラメータ学習タスクを割り当てる。タスクを分散させて特定のコアに高い演算負荷が掛かることを避けるためである。
本発明に係るプラント制御装置によれば、プラントモデルに係る予測誤差が大きい場合には、パラメータの学習によってプラントモデルの精度を高めることに演算資源が優先的に用いられ、プラントモデルに係る予測誤差が小さくなってから、リファレンスガバナによる将来予測のために演算資源があてがわれる。このように有限個の演算資源であるコアを効率的に利用することによって、プロセッサに負担を掛けることなくプラントモデルの精度を高めることができ、それにより制約に抵触しないぎりぎりの範囲までプラントの制御範囲を広げることができる。
本発明の実施の形態に係るマルチコアプロセッサのソフトウェアアーキテクチャの概略を示す図である。 本発明の実施の形態としてのディーゼルエンジンの目標値追従制御構造を示す図である。 図2に示す目標値追従制御構造を等価変形した図である。 本発明の実施の形態に係るプラント制御装置の機能を示す図である。 本発明の実施の形態に係るプラント制御装置による、プラントモデルに係る予測誤差が大きい場合の各コアへのタスクの割り当てのイメージを示す図である。 本発明の実施の形態に係るプラント制御装置による、プラントモデルに係る予測誤差が小さい場合の各コアへのタスクの割り当てのイメージを示す図である。 図2に示す目標値追従制御構造を適用可能なディーゼルエンジンの入出力の例を示す図である。
以下、本発明の実施の形態について図を用いて説明する。
本実施の形態に係るプラント制御装置はマルチコアプロセッサを有している。図1は、本実施の形態に係るマルチコアプロセッサのソフトウェアアーキテクチャの概略を示す図である。本実施の形態に係るマルチコアプロセッサ2では、多数のコア10が1つのオペレーティングシステム20によって管理される。そして、オペレーティングシステム20上で複数のアプリケーション30が動作する。本実施の形態に係るプラント制御装置が有する種々の機能は、これらオペレーティングシステム20やアプリケーション30によって実現される。
本実施の形態に係るプラント制御装置は、車載動力プラントであるディーゼルエンジンの制御装置である。制御対象であるディーゼルエンジンは、詳しくは、可変容量ターボチャージャーとEGR装置とを備えるディーゼルエンジンである。可変容量ターボチャージャーには可変ノズルが備えられ、EGR装置にはEGR弁が備えられている。本実施の形態に係るプラント制御装置は、可変ノズルを操作することによって過給圧を制御し、EGR弁を操作することによってEGR率を制御する。
図2は本実施の形態に係るプラント制御装置が有するディーゼルエンジンの目標値追従制御構造を示す図である。本実施の形態に係る目標値追従制御構造は、目標値マップ(MAP)、リファレンスガバナ(RG)、及び、フィードバックコントローラ(FBC)を備える。目標値マップ(MAP)は、ディーゼルエンジン(DE)の運転状態を示す情報w=[回転数;噴射量]が与えられるとディーゼルエンジン(DE)の制御量の目標値r=[EGR率目標値;過給圧目標値]を出力する。リファレンスガバナ(RG)は、制御量の目標値rが与えられるとハード上及び制御上の制約を満たすように目標値rを修正し、修正目標値g=[EGR率修正目標値;過給圧修正目標値]を出力する。本実施の形態に係る目標値追従制御構造では、ディーゼルエンジン(DE)の特定操作量及び特定状態量が制約信号zとして取り出される。フィードバックコントローラ(FBC)は、リファレンスガバナ(RG)から修正目標値gが与えられると、ディーゼルエンジン(DE)の各制御量の実値x=[EGR率;過給圧]を修正目標値gに近づけるように、フィードバック制御によってディーゼルエンジン(DE)の操作量u=[ディーゼルスロットル開度;EGR弁開度;可変ノズル開度]を決定する。フィードバックコントローラ(FBC)の仕様に限定はなく、公知のコントローラを用いることができる。一方、本実施の形態に係るリファレンスガバナ(RG)の仕様には以下に説明する特徴がある。
図3は図2に示す目標値追従制御構造を等価変形して得られたフィードフォワード構造である。図2において破線で囲まれた閉ループ系は既に設計済みであるとして、図3に示すフィードフォワード構造では1つのモデル(P)とされている。この閉ループ系のモデル(P)がプラントモデルであり次のモデル式によって表される。このモデル式において、f,hはモデル式の関数、θはプラントモデル(P)のパラメータ、Nf,Nhはそれぞれのパラメータの個数を表している。
Figure 2013228859
リファレンスガバナ(RG)は、与えられた制御量目標値rに基づいて修正目標値gの候補を複数用意する。具体的には、EGR率と過給圧とを軸とする2次元平面上に格子状に探索点を配列し、各探索点を修正目標値候補(g1,g2,...,gNg)として設定する。Ngは修正目標値候補の個数を表している。リファレンスガバナ(RG)は、修正目標値候補のそれぞれをプラントモデル(P)に入力して制約信号zの将来値を予測し、予測した制約信号zの将来値が制約に抵触するかどうか修正目標値候補ごとに判定する。そして、予測した制約信号zの将来値が制約信号zに課せられる制約を満たす範囲で目標値rに最も近い修正目標値候補を最終的な修正目標値gとして選択する。
以上のように、リファレンスガバナには、プラントモデルを用いて制約信号zの将来値を予測し、制約信号zの将来値が制約を満たす修正目標値候補を探索する機能(以下、将来予測機能)が備えられている。将来予測はNg個の修正目標値候補のそれぞれに対して行われるが、それらは互いに干渉することがない。よって、全ての修正目標値候補に対する将来予測を同時に行うことができる。本実施の形態に係るプラント制御装置はマルチコアプロセッサを有していることから、各修正目標値候補に対する制約信号zの将来値を予測するための演算(将来予測タスク)はそれぞれ別々のコアに割り当てることができる。
リファレンスガバナが有する将来予測機能に関連して、本実施の形態に係るプラント制御装置はさらに図4に示す3つの機能を有している。その3つの機能とはパラメータ学習機能、予測誤差推定機能及びコア管理機能であり、何れの機能もマルチコアプロセッサに実装されたオペレーティングシステム及びアプリケーションによって実現される。
パラメータ学習機能はプラントモデルのパラメータ(θf1,...,θfNf,θh1,...,θhNh )を学習する機能である。プラントモデルはモデル化誤差を伴うが、それが大きい場合にはプラントモデルによる予測値と実際値との誤差、すなわち、予測誤差も大きくなる。予測誤差が大きい場合には、制約抵触の有無を判定するにあたってマージンを大きく取らねばならず、制約に抵触しないぎりぎりの範囲までディーゼルエンジンの制御範囲を広げることはできない。そこで、プラントモデルのモデル化誤差を小さくして予測誤差を小さくすべく、プラントモデルが有するNf+Nh個のパラメータを個々に学習してプラントモデルを常に最新の状況に合わせたものにする。これらのパラメータの実値は、閉ループ系内の信号x,uや外部からの入力信号wから、例えば逐次最小二乗法によって逐次推定することができる。各パラメータは独立に推定することができることから、全てのパラメータの学習を同時に行うことができる。本実施の形態に係るプラント制御装置はマルチコアプロセッサを有していることから、各パラメータの学習のための演算(パラメータ学習タスク)はそれぞれ別々のコアに割り当てることができる。
予測誤差推定機能はプラントモデルに係る予測誤差を推定する機能である。予測誤差の推定には外乱オブザーバが用いられる。外乱オブザーバにはプラントモデルと同内容の予測用モデルが備えられている。外乱オブザーバは現在の状態変数等に基づき予測用モデルを用いて常に予測誤差を演算し続けている。外乱オブザーバによる予測誤差の推定のための演算(予測誤差推定タスク)は1つのコアに割り当てられている。なお、外乱オブザーバに用いられる予測用モデルでは、プラントモデルとは異なりパラメータの学習は頻繁には行われない。コアの演算負荷を抑えるため、予測誤差が閾値を超えて大きくなった場合にのみパラメータの学習が行われる。
コア管理機能は上述の将来予測機能、パラメータ学習機能及び予測誤差推定機能に係る各タスクをマルチコアプロセッサの各コアに割り当てる機能である。将来予測機能ではNg個の修正目標値候補について将来予測が行われ、パラメータ学習機能ではNf+Nh個のパラメータについて学習が行われる。しかし、それらの全てのタスクをコアに割り当てるとなると、マルチコアプロセッサといえどもコアの数が不足してしまう。このため、コア管理機能では、将来予測機能とパラメータ学習機能のどちらを優先するか判断し、優先すべき機能に係るタスクを優先的にコアに割り当てる。以下、コア管理機能により行われる各コアへのタスクの割り当てのロジックについて説明する。
図5及び図6はコア管理機能による各コア10へのタスクの割り当てのイメージを示す図である。図5及び図6に示すように、コア管理機能は、マルチコアプロセッサが有する複数のコア10に対して第1のコアグループ102と第2のコアグループ104とを設定する。第1のコアグループ102は将来予測タスクが割り当てられるコアのグループであり、第2のコアグループ104はパラメータ学習タスクが割り当てられるコアのグループである。図5と図6とでは各コアグループ102,104に含まれるコアの数に違いがあるが、2つのコアグループ102,104を合わせたコアの総数は一定とされている。また、コア管理機能は、2つのコアグループ102,104とは独立して、予測誤差推定タスク専用のコア106を設定している。
コア管理機能は、予測誤差推定機能によって推定された予測誤差の大きさを判断材料として、将来予測機能とパラメータ学習機能のどちらを優先するか判断する。そして、その判断結果にしたがってコアグループ102,104のコア数を調整する。
(推定された予測誤差が所定の閾値よりも大きい場合)
予測誤差はプラントモデルのモデル化誤差が十分に小さくなっていないために大きくなる。よって、この場合は、プラントモデルのモデル化誤差を小さくすることに演算資源を活用するべきである。そこで、コア管理機能は、図5に示すように、パラメータ学習タスクを割り当てるコアグループ104を拡大し、その分、将来予測タスクを割り当てるコアグループ102を縮小する。
この場合、コアグループ104にはNf+Nh個のコア10が確保され、Nf+Nh個のパラメータの全てについてそれぞれ専用のコア10があてがわれる。つまり、Nf+Nh個のパラメータの全てについて学習が行われる。このように学習対象とするパラメータの個数を最大限まで増やすことで、プラントモデルの精度を速やかに高めていくことができる。なお、どのパラメータに係るタスクをどのコアに割り当てるかは、コア毎の負荷状況等に鑑みてその都度決めてもよいし予め定めておいてもよい。
一方、コアグループ102のコア数は修正目標値候補の最大数に対して足りなくなる。このため、Ng個の修正目標値候補のうち制約に対する余裕度の高い修正目標値候補のみにコア10があてがわれる。そして、コア10をあてがわれた修正目標値候補についてのみ将来予測が行われる。プラントモデルの精度が低い状況では制約抵触の有無を厳密に判断することはできないことから、修正目標値候補を制約に対する余裕度の高いもののみに限定したとしても何ら問題は無い。
[推定された予測誤差が所定の閾値以下の場合]
プラントモデルのモデル化誤差が十分に小さくなっていれば予測誤差も小さくなる。よって、この場合は、プラントモデルのパラメータの学習に演算資源を消費するのではなく、よりよい修正目標値の探索に演算資源を活用するべきである。そこで、コア管理機能は、図6に示すように、将来予測タスクを割り当てるコアグループ102を拡大し、その分、パラメータ学習タスクを割り当てるコアグループ104を縮小する。
この場合、コアグループ102にはNg個のコア10が確保され、Ng個の修正目標値候補の全てについてそれぞれ専用のコア10があてがわれる。つまり、Ng個の修正目標値候補の全てについて将来予測が行われる。このように修正目標値候補の個数を最大まで増やすことで、よりよい修正目標値を探索して制約に抵触しないぎりぎりの範囲までディーゼルエンジンの制御範囲を広げることが可能となる。
一方、コアグループ104のコア数はプラントモデルのパラメータ数に対して足りなくなる。このため、Nf+Nh個のパラメータのうち重要度の高いパラメータのみにコア10があてがわれる。そして、コア10をあてがわれたパラメータについてのみ学習が行われ、その他のパラメータについては現在値に固定される。プラントモデルのモデル化誤差は十分に小さくなっていることから、このように学習対象とされるパラメータの数が減らされたとしても何ら問題は無い。
以上述べたように、本実施の形態に係るプラント制御装置によれば、プラントモデルに係る予測誤差が大きい場合には、パラメータの学習によってプラントモデルの精度を高めることに多数のコアが用いられ、プラントモデルに係る予測誤差が小さくなってから、リファレンスガバナによる将来予測のために多数のコアが使用される。このように有限個の演算資源であるコアを効率的に利用にすることによって、プロセッサに負担を掛けることなくプラントモデルの精度を高めることができ、それにより制約に抵触しないぎりぎりの範囲までディーゼルエンジンの制御範囲を広げることができる。
なお、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば以下のように変形して実施してもよい。
上述の実施の形態では予測誤差が閾値よりも大きいか小さいかで2つのコアグループの大きさを切り替えているが、予測誤差の大きさに応じて2つのコアグループの大きさを連続的に変化させてもよい。つまり、予測誤差が小さくなるほど第1のコアグループのコア数を増やし、予測誤差が大きくなるほど第2のコアグループのコア数を増やしていくのでもよい。
また、上述の実施の形態では2つのコアグループのコア数の合計値を一定としているが、それは必ずしも一定でなくともよい。例えば、予測誤差が閾値よりも小さくなった場合、第2のコアグループのコア数をゼロにして全てのパラメータの学習を停止してもよい。これにより空いたコアは他のアプリケーションに利用することができる。
また、上述の実施の形態では、第2のコアグループのコア数を減らした場合、学習対象とするパラメータの数も減らしているが、学習対象とするパラメータの数は一定のまま1つのコアに割り当てるパラメータの数を増やすようにしてもよい。つまり、プラントモデルの精度が高い場合には学習対象とするパラメータの1コア当たりの数を増やし、プラントモデルの精度が低い場合には学習対象とするパラメータの1コア当たりの数を減らすようにしてもよい。
また、上述の実施の形態では、図7の(a)に示すようにディーゼルエンジン(DE)の操作量が可変ノズル開度(VN開度)、EGR弁開度、及びディーゼルスロットル開度(Dスロ開度)であり、ディーゼルエンジンの制御量は過給圧とEGR率になっている。しかし、図2に示す目標値追従制御構造は、図7の(b)〜(e)に示すような操作量と制御量との組み合わせにも適用することができる。
さらに、本発明に係るプラント制御装置が適用されるプラントはディーゼルエンジンのみに限定されない。例えば、ガソリンエンジンやハイブリッドシステム等の他の車載動力プラントの他、燃料電池システムにも適用することができる。さらに、リファレンスガバナとフィードバックコントローラを用いて制御を行うことができるプラントであれば、定置型プラントも含めて広い範囲のプラントに適用することができる。
2 マルチコアプロセッサ
10 コア
102 将来予測用のコアグループ
104 パラメータ学習用の第1要求トルク調停部
106 予測誤差推定用のコア

Claims (7)

  1. マルチコアプロセッサを有するプラント制御装置において、
    プラントの制御量の目標値に基づいて複数の修正目標値候補を定め、前記複数の修正目標値候補のそれぞれについて前記プラントの特定状態量或いは特定操作量の将来値をプラントモデルを用いて予測し、予測した将来値が前記特定状態量或いは前記特定操作量に課せられる制約を満たす範囲で前記目標値に最も近い修正目標値候補を修正目標値として選択する目標値修正手段と、
    プラントの制御量の実値を前記修正目標値に近づけるようにフィードバック制御によって前記プラントの操作量を決定するフィードバック制御手段と、
    前記プラントモデルのパラメータを学習するパラメータ学習手段と、
    前記プラントモデルに係る予測誤差を推定する予測誤差推定手段と、
    前記複数の修正目標値候補のそれぞれに対する前記特定状態量或いは前記特定操作量の将来値を予測するための演算(以下、将来予測タスク)と、前記パラメータを学習するための演算(以下、パラメータ学習タスク)とを前記マルチコアプロセッサが有する複数のコアに別々に割り当て、前記予測誤差の大きさに応じて前記将来予測タスクを割り当てるコアの数と前記パラメータ学習タスクを割り当てるコアの数とを調整するコア管理手段と、を備え、
    前記コア管理手段は、
    前記予測誤差が大きくなれば、前記将来予測タスクを割り当てるコアの数を減らす一方で前記パラメータ学習タスクを割り当てるコアの数を増やし、
    前記予測誤差が小さくなれば、前記パラメータ学習タスクを割り当てるコアの数を減らす一方で前記将来予測タスクを割り当てるコアの数を増やすことを特徴とするプラント制御装置。
  2. 前記コア管理手段は、予め定められた一定数のコアに対してコア毎に前記将来予測タスクと前記パラメータ学習タスクの何れか一方を割り当てることを特徴とする請求項1に記載のプラント制御装置。
  3. 前記目標値修正手段は、前記コア管理手段により前記将来予測タスクを割り当てられるコアの数だけ修正目標値候補を定めることを特徴とする請求項1又は2に記載のプラント制御装置。
  4. 前記パラメータ学習手段は、前記コア管理手段により前記パラメータ学習タスクを割り当てられるコアの数に応じて学習対象とするパラメータの数を増減させることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のプラント制御装置。
  5. 前記パラメータ学習手段は、前記コア管理手段により前記パラメータ学習タスクを割り当てられるコアの数に応じて学習対象とするパラメータの1コア当たりの数を増減させることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のプラント制御装置。
  6. 前記コア管理手段は、前記予測誤差を推定するための演算を割り当てるコアとは別のコアに対して前記将来予測タスク及び前記パラメータ学習タスクを割り当てることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載のプラント制御装置。
  7. 前記プラントはディーゼルエンジンであり、前記制御量は過給率及びEGR率を含み、前記操作量は可変ノズル開度及びEGR弁開度を含むことを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載のプラント制御装置。
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