JP2013227514A - ペースト用樹脂組成物、並びにペースト組成物及びその製造方法 - Google Patents

ペースト用樹脂組成物、並びにペースト組成物及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】チキソトロピー性に優れ、焼成残渣の少ないペースト用樹脂組成物を提供する。
【解決手段】有機溶媒と、メタクリレート単量体に由来の構成単位を含み、有機溶媒に不溶であると共に、少なくとも1つの前記メタクリレート単量体の単独重合体の溶解度パラメータから有機溶媒の溶解度パラメータを差し引いた値が0.1(cal/cm0.5以上である不溶ポリマーAと、メタクリレート単量体に由来の構成単位を含み、有機溶媒に可溶であると共に、少なくとも1つの前記メタクリレート単量体の単独重合体の溶解度パラメータから有機溶媒の溶解度パラメータを差し引いた値が0.1(cal/cm0.5未満である可溶ポリマーBとを含有し、前記値が0.1(cal/cm0.5以上であるメタクリレート単量体に由来の構成単位の合計比率は、前記可溶ポリマーBより前記不溶ポリマーAの方が大きい。
【選択図】なし

Description

本発明は、ペースト用樹脂組成物、並びにペースト組成物及びその製造方法に関する。
ガラス粉末、導電性粉末等の無機微粒子などの無機材料と、有機材料(バインダ樹脂を有機溶媒に溶かしたもの)と、を混合して調製された無機ペーストは、様々な形状の焼成体を得るために、広く用いられている。
無機ペーストを用いて焼成体を作製するにあたっては、スクリーン印刷、ドクターブレード等を用いた塗工法、シート状に加工するためのキャスティング法等により所定の形状に加工した後、乾燥、焼成を行なうことで、所望とする焼成体を得ることが可能である。中でも、スクリーン印刷による方法は、特に大量生産に適した方法であり、各種電子部品等の部材形成に適用されている。
例えば、PDP(プラズマディスプレイ)の背面ガラス基板上に設けられる隔壁(リブ)は、無機ペーストを用いて形成することができる。具体的な例として、ガラス粉末と白色無機粉末と有機材料とを混合してチキソトロピー指数とずり速度を所定の範囲に調整したガラスペーストを、スクリーン印刷によりガラス基板上に印刷し、乾燥、焼成することで隔壁を形成することが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
また、無機ペーストは、例えば太陽電池の受光面電極の形成にも用いられている。例えば、銀粉末とガラス粉末と所定のエチルセルロースを含むビヒクルとを混合した太陽電池電極用ペースト組成物を用い、スクリーン印刷法で塗布し、乾燥、焼成処理して電極を形成する技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
スクリーン印刷法は、無機ペーストを付与するための方法として広く利用されているが、一般に、この方法では1回の塗布厚みが数十μm程度に留まる。そのため、例えばPDP等の隔壁をより高さの高いものにしようとするには、印刷及びその後の乾燥を多数回にわたって繰り返し行なう必要があり、生産性が極めて悪いばかりか、重ね合わせて1つの構造物とするため、良好な形状が得られ難いという問題がある。また、エチルセルロースを用いた組成では、焼成しても残炭が生じやすく、焼成性に劣る。
無機ペースト、特にスクリーン印刷に用いられるペーストに求められる特性としては、特に印刷性、保形性、焼成性が重要である。
印刷性については、スクリーン印刷を良好に行なうために、無機ペーストには、塗工の際は粘度が低く印刷が容易である一方、版を離す際や印刷後に静置して乾燥させる際は粘度が高く流涎しないという、いわゆるチキソトロピー性が求められる。
また、無機ペーストには、高不揮発分(固形分)を有し、かつ低粘度である性質が求められる。これにより、保形性が発現する。ペーストが低不揮発分であると、焼成時の収縮が大きいため、ある程度の厚さで印刷する必要がある。また、ペーストをただ単に高不揮発分にすると、粘度が高くなり過ぎてしまい、印刷性が悪化する。
さらに、無機ペーストには、バインダーが低温で良好な熱分解性を有し、焼成した後に残渣が残らないという性質(焼成性)が求められる。燃焼性の悪い組成では、不純物として有機成分(炭素)が残ってしまい、より高温で加熱する必要が生じる。
上記のような状況に鑑みて、低粘度に抑えながら、チキソトロピー性と焼成性を高めるための検討が種々行なわれている。例えば、架橋(メタ)アクリル樹脂からなるゲル微粒子、無機微粒子、及び有機溶剤を含有することで、チキソ性に優れ、従ってスクリーン印刷性を有し、低温焼成が可能な無機微粒子分散ペースト組成物が開示されている(例えば、特許文献3参照)。また、所定の(メタ)アクリル樹脂や有機溶剤を含み、スクリーン印刷性に優れるとされる無機微粒子分散ペーストや、少量で高粘度を付与できて焼成性に優れるとされる焼成型ペースト用アクリル系バインダー樹脂組成物などが開示されている(例えば、特許文献4〜5参照)。
また、塗料用途のビヒクル用組成物として、脂肪族炭化水素系溶媒などが主成分である有機溶媒、有機溶媒に可溶な共重合体、及び有機溶媒に不溶の微粒子等を含有する非水系樹脂組成物に関する開示があり、塗膜の耐候性、耐溶剤性及び付着性が改善されるとされている(例えば、特許文献6参照)。
特開2000−327371号公報 特開2009−246277号公報 特開2008−63457号公報 特開2009−227731号公報 特開2002−80675号公報 特開2000−95917号公報
上記した従来技術のうち、架橋(メタ)アクリル樹脂からなるゲル微粒子を用いた無機微粒子分散ペースト組成物では、チキソトロピー性は得られても樹脂が架橋構造を有しているために焼成後に残渣が生じやすい。一方、特許文献4〜5のように、樹脂成分に(メタ)アクリル樹脂を用いた組成では焼成性の向上が期待されるが、熱収縮を抑えて所望形状が得られるような高不揮発組成としたときの増粘が大きく、チキソトロピー性に劣る傾向がある。また、有機溶媒に可溶の共重合体と有機溶媒に不溶の重合体等の微粒子を有機溶媒中に含有する非水系樹脂組成物は、塗料用途であり、スクリーン印刷に用いられるペーストとしての適性は考慮されていない。
上記のように、PDP用の隔壁(リブ)や太陽電池用の電極等をスクリーン印刷により形成する方法については、従来から種々検討がされてはいる。しかしながら、保形性をそなえつつ、隔壁や電極等の構造物に求められる厚みや高さ、精細さを発現し得るチキソトロピー性(印刷性)を発揮し、焼成時には残渣の発生が少ない焼成性が得られる技術は、未だ提案されるに至っていないのが実情である。
このように、所望形状の形成に有利なチキソトロピー性をそなえ、焼成時には、熱収縮が少ないのみならず残渣の懸念がないペースト材料が求められている。
本発明は、上記に鑑みなされたものである。本発明の課題は、チキソトロピー性に優れ、焼成残渣の少ないペースト用樹脂組成物、並びにペースト組成物及びその製造方法を提供することにある。
本発明は、下記の知見に基づいて達成されたものである。すなわち、
隔壁や電極等の構造物に求められる厚みや高さ、精細さを実現するために、使用する有機溶剤に対して可溶なポリマー成分と不溶なポリマー成分とを存在させておく。そのうち、一方の有機溶剤に不溶なポリマー成分における溶解度パラメータが高く、他方の有機溶媒に可溶なポリマー成分における溶解度パラメータが低くなるように、各ポリマー成分の構成モノマーの種類、溶解度パラメータを調節する。これにより、焼成時の熱収縮が抑えられる高不揮発分濃度としながらも、低粘度を保ち、例えばスクリーン印刷等で形成する構造物に求められる厚みや高さ、精細さを実現するチキソトロピー性と焼成性とを成り立たせることができる。
前記課題を達成するための具体的な手段は、以下の通りである。
<1> 有機溶媒と、メタクリレート単量体に由来の構成単位を含み、前記有機溶媒に不溶であると共に、少なくとも1つの前記メタクリレート単量体の単独重合体の溶解度パラメータ(SP値;以下、SP値と略記することがある。)から前記有機溶媒のSP値を差し引いた値が0.1(cal/cm0.5以上である不溶ポリマーAと、メタクリレート単量体に由来の構成単位を含み、前記有機溶媒に可溶であると共に、少なくとも1つの前記メタクリレート単量体の単独重合体のSP値から前記有機溶媒のSP値を差し引いた値が0.1(cal/cm0.5未満である可溶ポリマーBとを含有し、前記値(少なくとも1つのメタクリレート単量体の単独重合体のSP値から有機溶媒のSP値を差し引いた値)が0.1(cal/cm0.5以上であるメタクリレート単量体に由来の構成単位の合計比率は、前記不溶ポリマーAが前記可溶ポリマーBに比べて大きいペースト用樹脂組成物である。
<2> 前記不溶ポリマーA及び前記可溶ポリマーBは、前記不溶ポリマーAが集合したポリマー構造部分SAと該ポリマー構造部分SAに結合又は吸着した前記可溶ポリマーBとを含む前記有機溶媒中に分散された分散樹脂として、含有されている前記<1>に記載のペースト用樹脂組成物である。
<3> 前記可溶ポリマーBは、前記値が0.1(cal/cm0.5未満であるメタクリレート単量体に由来の構成単位の合計比率が、可溶ポリマーB中の全構成単位の合計量に対して、質量基準で50%以上である前記<1>又は前記<2>に記載のペースト用樹脂組成物である。
<4> 前記不溶ポリマーAは、前記値が0.1(cal/cm0.5以上であるメタクリレート単量体に由来の構成単位の合計比率が、不溶ポリマーA中の全構成単位の合計量に対して、質量基準で25%以上である前記<1>〜前記<3>のいずれか1つに記載のペースト用樹脂組成物である。
<5> 前記有機溶媒は、沸点が180℃以上280℃以下である前記<1>〜前記<4>のいずれか1つに記載のペースト用樹脂組成物である。
<6> 前記有機溶媒は、SP値が8.0(cal/cm0.5以上11.0(cal/cm0.5以下である前記<1>〜前記<5>のいずれか1つに記載のペースト用樹脂組成物である。
<7> 前記<1>〜前記<6>のいずれか1つに記載のペースト用樹脂組成物と、無機粒子と、を含有するペースト組成物である。
<8> 前記<1>〜前記<6>のいずれか1つに記載のペースト用樹脂組成物と無機粒子とを混合することでペースト組成物を調製する工程を有するペースト組成物の製造方法である。
<9> 更に、有機溶媒及び可溶ポリマーBの存在下で、不溶ポリマーAを合成し、ペースト用樹脂組成物を調製する工程を有する前記<8>に記載のペースト組成物の製造方法である。
本発明によれば、チキソトロピー性に優れ、焼成残渣の少ないペースト用樹脂組成物、並びにペースト組成物及びその製造方法が提供される。
以下、本発明のペースト用樹脂組成物、並びにこれを用いたペースト組成物及びその製造方法について詳細に説明する。
本発明のペースト用樹脂組成物は、有機溶媒と、メタクリレート単量体に由来の構成単位を含み、有機溶媒に不溶であると共に、少なくとも1つのメタクリレート単量体の単独重合体の溶解度パラメータ(SP値)から有機溶媒の溶解度パラメータ(SP値)を差し引いた値が0.1(cal/cm0.5以上である不溶ポリマーAと、メタクリレート単量体に由来の構成単位を含み、有機溶媒に可溶であると共に、少なくとも1つのメタクリレート単量体の単独重合体のSP値から有機溶媒のSP値を差し引いた値が0.1(cal/cm0.5未満である可溶ポリマーBとを、前記値が0.1(cal/cm0.5以上であるメタクリレート単量体に由来の構成単位の合計比率について可溶ポリマーBに比べて不溶ポリマーAの方が大きくなるように、用いて構成されたものである。このペースト用樹脂組成物は、必要に応じて、更に重合開始剤やその他添加剤等の他の成分を用いて構成することができる。
従来、例えばスクリーン印刷などで構造物を形成しようとする場合、1回の印刷作業で所望の厚みや高さを実現し得るような、不揮発分を高濃度に含有しながら、低粘度でかつ良好なチキソトロピー性を持つ組成は提案されていなかった。そのため、所望の形状、精細さが得られず、しかも焼成で不溶なポリマー成分が除去され難いために、得られた構造物(隔壁や電極等)の電気的特性が残渣(特に残炭)により低下しやすい状況であった。
このような状況に鑑み、本発明においては、有機溶媒中に含有される樹脂として、ポリマーを構成するメタクリレート単量体のうちその少なくとも1つのメタクリレート単量体の単独重合体のSP値から有機溶媒のSP値を差し引いた値が0.1(cal/cm0.5以上である不溶ポリマーAと、ポリマーを構成するメタクリレート単量体のうちその少なくとも1つのメタクリレート単量体の単独重合体のSP値から有機溶媒のSP値を差し引いた値が0.1(cal/cm0.5未満である可溶ポリマーBとを、各ポリマーに含まれるメタクリレート単量体の単独重合体のSP値から有機溶媒のSP値を差し引いた値が0.1(cal/cm0.5以上となるメタクリレート単量体由来の構成単位の合計比率について可溶ポリマーBより不溶ポリマーAが多くなるように存在させることで、特に可溶ポリマーBの有機溶媒との親和性が高められると同時に、不溶ポリマーAと可溶ポリマーBとのSP値の差を大きく確保できるようになる。これにより、1回のスクリーン印刷で所望の高さ(厚み)が得られ精細な形状を有する構造物を作製するのに適したチキソトロピー性と、残渣の生じ難い焼成性とが得られる。
また、焼成で熱収縮し難いように不揮発分を高濃度に含有する組成でも、ペーストに適した低粘度を保つことができる。
このように、本発明のペースト用樹脂組成物は、例えばスクリーン印刷に適している。
チキソトロピー性とは、剪断力などの外部応力を加えると結合が破壊されて粘性が低下し、流動性が発現し、静止すると流動性が低下し、再び粘性が回復する性質をいう。
本発明において、有機溶媒の溶解度パラメータ(SP値、単位:(cal/cm0.5)は、分子凝集エネルギーの平方根で表される値であり、Hildebrandの方法により算出されるものである。
また、本発明において、メタクリレート単量体の単独重合体の溶解度パラメータ(SP値、単位:(cal/cm0.5)とは、該単独重合体を構成している構成単位の分子引力定数Gに基づいた下記の計算式により算出されるものである。
単独重合体のSP値=dΣG/M
ここで、dは、単独重合体の密度(g/l)を表し、ΣGは、構成単位の分子中の分子引力定数の総和を表し、Mは、構成単位の分子量(g/mol)を表す。
さらに、共重合体の溶解度パラメータ(SP値、単位:(cal/cm0.5)は、上記式により、その共重合体を構成する各構成単位のそれぞれの単独重合体のSP値を算出し、それらのSP値のそれぞれに各構成単位のモル分率を乗じたものを合算して算出されるものである。
前記不揮発分とは、ペースト用樹脂組成物中に含まれる有機溶剤以外の成分の合計をさす。
以下、本発明のペースト用樹脂組成物を構成する各成分について詳述する。
(有機溶媒)
本発明のペースト用樹脂組成物は、有機溶媒の少なくとも一種を含有する。有機溶媒は、その中に分散される樹脂成分の親疎水性の程度、樹脂成分を分散含有したときのチキソトロピー性、揮発性などを考慮して選択される。
有機溶媒の具体例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、n−ヘキシルアルコール、n−オクチルアルコール、i−オクチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、2−(4−メチルシクロヘキサ−3−エニル)プロパン−2−オール(ターピネオール(別名:テルピネオール))などのアルコール系有機溶媒;
メチルカルビトール、エチルカルビトール、n−プロピルカルビトール、i−プロピルカルビトール、n−ブチルカルビトール、i−ブチルカルビトール、i−アミルカルビトール、フェニルカルビトール、ベンジルカルビトールジエチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート(BCA)、酢酸カルビトールエステルなどのカルビトール系有機溶媒;
炭酸プロピレン、酢酸2−エチルヘキシル、2−エチルヘキサン酸−エチルヘキシル等のエステル系有機溶媒;
アセトン、メチルエチルケトン、メチル−i−ブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコールなどのケトン系有機溶媒;
イソパラフィン等の炭化水素系有機溶媒;
n−メチルピロリドン等のアミン系有機溶媒;
などを挙げることができる。
有機溶媒の溶解度パラメータ(SP値)は、後述する不溶ポリマーAと可溶ポリマーBのSP値との関係などから決定されるが、好ましくは、8.0(cal/cm0.5以上11.0(cal/cm0.5以下である。SP値が前記範囲内であることで、不揮発分を高濃度に含む組成に調製したときの粘度を低く維持し、チキソトロピー性に優れる。中でも、有機溶媒のSP値は、上記同様の理由から、8.5(cal/cm0.5以上9.5(cal/cm0.5以下の範囲がより好ましい。
また、有機溶媒としては、沸点が180℃以上280℃以下の範囲にある有機溶媒が好ましい。沸点が180℃以上であることで、スクリーン印刷に適し、スクリーン印刷に用いられたときの塗工時の塗工作業性が軽減される。また、沸点が280℃以下であることで、レべリング性の点で有利である。
中でも、上記同様の理由から、沸点は200℃以上260℃以下がより好ましい。
上記した有機溶媒の中でも、本発明における有機溶媒としては、比較的高沸点で大気中に揮発し難く、チキソトロピー性を良好に維持しやすい点から、アルコール系有機溶媒、カルビトール系有機溶媒が好ましく、更には、より良好なチキソトロピー性が得られる点で、ターピネオール、ブチルカルビトールアセテート(BCA)、テキサノールがより好ましい。その中でも、沸点247℃のブチルカルビトールアセテートが特に好ましい。
本発明のペースト用樹脂組成物中における有機溶媒の含有量としては、後述する不溶ポリマーA及び可溶ポリマーBの総量に対して、30〜60質量%が好ましい。有機溶媒の含有量が前記範囲内であることで、高不揮発分でチキソトロピー性を有する組成物が得られやすく、スクリーン印刷した際に高さ、形状の良好な構造物を形成することができる。
(不溶ポリマーA)
本発明のペースト用樹脂組成物は、メタクリレート単量体の単独重合体のSP値から有機溶媒のSP値(溶解度パラメータ)を差し引いたときの値が0.1(cal/cm0.5以上となる不溶ポリマーAの少なくとも一種を含有する。この不溶ポリマーAは、メタクリレート単量体に由来の構成単位を(好ましくは25質量%以上)含み、有機溶媒に不溶なポリマーである。
有機溶媒に不溶とは、有機溶媒に対してポリマーAの極性が異なるために、ポリマーAは有機溶媒に溶解せずに有機溶媒中に分散していることをいう。
不溶ポリマーAは、単独重合体としたときのSP値が有機溶媒のSP値から離れていて比較的高い単量体を用いて構成される。これにより、不溶ポリマーA自体のSP値が高くなり、後述する可溶ポリマーBのSP値との差が大きくなることで、チキソトロピー性に優れたものとなる。しかも、その単量体としてメタクリレート単量体が用いられることで、同時に焼成性が向上し、例えばアクリレート系等に比べて、焼成後の残渣がより抑えられる。
有機溶媒とのSP値の差が0.1(cal/cm0.5以上であることは、メタクリレート単量体の単独重合体のSP値から使用する有機溶媒のSP値を減算した値〔=(メタクリレート単量体の単独重合体のSP値)−(有機溶媒のSP値)〕が0.1(cal/cm0.5以上であり、有機溶媒と不溶ポリマーAとのSP値の差が確保されていることをいう。
不溶ポリマーAは、少なくとも、メタクリレート単量体の単独重合体のSP値と有機溶媒のSP値との差が0.1(cal/cm0.5以上となるメタクリレート単量体に由来する構成単位を含む重合体であれば、前記メタクリレート単量体の単独重合体、又は前記メタクリレート単量体と他の少なくとも一種の単量体との共重合体のいずれであってもよい。
メタクリレート単量体の単独重合体のSP値と有機溶媒とのSP値の差が0.1(cal/cm0.5以上となるメタクリレート単量体としては、例えば、メチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタアクリレート、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ベンジルメタクリレート、及び2−ヒドロキシエチルメタクリレートなどの単量体が好適に挙げられる。不溶ポリマーAを構成するメタクリレート単量体は、これらの単量体を含む群(群a)より選ばれる一種又は二種以上を重合させることで得られる。
不溶ポリマーAを構成するメタクリレート単量体の単独重合体のSP値と有機溶媒とのSP値との差は、好ましくは0.4以上2.5以下である。不溶ポリマーAでは、メタクリレート単量体の単独重合体のSP値が有機溶媒のSP値と離れていることで、より優れたチキソトロピー性が得られる。
前記メタクリレート単量体以外の他の単量体としては、例えば、アクリル系モノマー、上記以外のメタクリル系モノマー、スチレン系モノマー、ビニル系モノマー、ニトリル系モノマー等から適宜選択することができる。不溶ポリマーAを形成するモノマーは、有機溶媒への溶解性、組成物としたときの粘度、チキソトロピー性、及び焼成性を考慮して、その種類及びポリマーに占める割合が選択される。
前記他の単量体の具体例として、アクリル酸のアルキル又はアリールエステル(例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、i−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、i−オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、i−ノニルアクリレート、ステアリルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレートなど、好ましくは、アルキル部位(シクロアルキルを含む)の炭素数=1〜18、アリール部位の炭素数=6〜8)、芳香族ビニル(例えば、スチレン、ビニルトルエン、エチルビニルベンゼンなど)などのラジカル重合性不飽和モノマーが挙げられる。
また、前記ラジカル重合性不飽和モノマーと共に、下記の官能基モノマーを共重合してもよい。官能基モノマーの例としては、カルボキシル基含有単量体(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、シトラコン酸など、好ましくはアクリル酸、メタクリル酸)、アミド基もしくは置換アミド基含有単量体(例えば、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−n−ブトキシメチルアクリルアミドなど、好ましくはアクリルアミド)、水酸基含有単量体(例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、アリルアルコール、メタリルアルコールなど、好ましくはヒドロキシ低級アルキル(メタ)アクリレート(例:2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等、好ましくは低級アルキルの炭素数=1〜4)、アミノ基もしくは置換アミノ基含有単量体(例えば、アミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレートなど、好ましくはN,N−ジ低級アルキルアミノ低級アルキル(メタ)アクリレート(例:N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート等、好ましくは2つの低級アルキルの炭素数=1〜4)、エポキシ基含有単量体(例えば、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルアリルエーテル、グリシジルメタリルエーテル、グリシジルビニルエーテルなど)、メルカプト基含有単量体(例えば、ビニルメルカプタン、アリルメルカプタンなど)、1分子中に2個以上のラジカル重合性不飽和基を有する単量体(例えば、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルフタレート、ジビニルベンゼンなど)である。
また、不溶ポリマーAは、メタクリレート単量体の単独重合体のSP値と有機溶媒のSP値との差が0.1(cal/cm0.5以上となるメタクリレート単量体と、アクリル酸のアルキル又はアリールエステルと、の共重合体でもよい。不溶ポリマーAは、メタクリレート単量体の単独重合体のSP値と有機溶媒のSP値との差が0.1(cal/cm0.5以上であってアルキル部位(シクロアルキルを含む)の炭素数1〜18のメタクリレート単量体と、アクリル酸のアルキルエステル(好ましいアルキル部位の炭素数=1〜4)との共重合体でもよい。
本発明では、メタクリレート単量体を用いたポリマーであることで、スクリーン印刷後に焼成して構造物(焼成体)を得る場合の焼成性が向上し、焼成残渣の軽減が図れる。これは、メタクリレート単量体である2−ヒドロキシエチルメタクリレートとアクリル酸のアルキルエステルとを少なくとも共重合した共重合体である場合にも同様の効果が得られる。
不溶ポリマーAの平均分子量は、重量平均分子量で10,000〜300,000が好ましく、より好ましくは150,000〜250,000である。
不溶ポリマーAのSP値は、有機溶媒のSP値との差が絶対値で0.5以上となる範囲にあることが好ましい。組成物中に分散含有される樹脂成分自体のSP値が有機溶媒のSP値と離れていることで、後述する可溶ポリマーBとのSP値の差が大きくなり、より優れたチキソトロピー性が得られる。不溶ポリマーAの溶解度パラメータ(SP値、単位:(cal/cm0.5);以下、SPAと略記することがある。)は、有機溶媒のSP値や可溶ポリマーBのSP値との関係などから決定されるが、上記の点から、好ましくは9.3(cal/cm0.5以上であり、9.5(cal/cm0.5以上がより好ましく、9.7(cal/cm0.5以上が特に好ましい。該SP値の上限値は、11.0(cal/cm0.5である。
SP値の求め方については、既述した通りである。
不溶ポリマーAを構成しているメタクリレート単量体のうち、その少なくとも1つのメタクリレート単量体の単独重合体の溶解度パラメータから使用している有機溶媒の溶解度パラメータを差し引いた値が0.1(cal/cm0.5以上となるメタクリレート単量体に由来の構成単位の合計比率は、不溶ポリマーAの全構成単位の合計量に対して、質量基準で25%以上であることで、後述する可溶ポリマーBとの間のSP値の差を大きく確保することができ、チキソトロピー性及び焼成性に優れる。中でも、好ましくは、前記群aより選ばれる単量体由来の構成単位の不溶ポリマーA中に占める比率が、不溶ポリマーA中の全構成単位の合計量に対して、質量基準で25%以上であり、より好ましくは40%以上である。
(可溶ポリマーB)
本発明のペースト用樹脂組成物は、メタクリレート単量体の単独重合体のSP値から有機溶媒のSP値(溶解度パラメータ)を差し引いたときの値が0.1(cal/cm0.5未満となる可溶ポリマーBの少なくとも一種を含有する。この可溶ポリマーBは、メタクリレート単量体に由来の構成単位を(好ましくは50質量%以上)含み、有機溶媒に可溶なポリマーである。
有機溶媒に可溶とは、有機溶媒に対してポリマーBの極性が近いために、ポリマーBが有機溶媒に溶解していることをいう。
可溶ポリマーBは、前記不溶ポリマーAに比べ、単独重合体としたときのSP値が有機溶媒のSP値に近くて比較的低い単量体を用いて構成される。これにより、可溶ポリマーB自体のSP値が低くなり、既述の不溶ポリマーAのSP値との差が大きくなることで、チキソトロピー性に優れたものとなる。しかも、その単量体としてメタクリレート単量体が用いられることで、同時に焼成性が向上し、焼成後の残渣の発生も抑えられる。
有機溶媒とのSP値の差が0.1(cal/cm0.5未満であることは、メタクリレート単量体の単独重合体のSP値から有機溶媒のSP値を減算した値〔=(メタクリレート単量体の単独重合体のSP値)−(有機溶媒のSP値)〕が0.1(cal/cm0.5未満と小さく、有機溶媒と可溶ポリマーBとの親和性を有していることをいう。
可溶ポリマーBは、少なくとも、メタクリレート単量体の単独重合体のSP値と有機溶媒のSP値との差が0.1(cal/cm0.5未満となるメタクリレート単量体に由来する構成単位を含む重合体であれば、前記メタクリレート単量体の単独重合体、又は前記メタクリレート単量体と他の少なくとも一種の単量体との共重合体のいずれであってもよい。
既述の不溶ポリマーAと可溶ポリマーBとが互いに結合又は吸着することで後述するような分散樹脂として分散含有される場合は、不溶ポリマーAとの結合又は吸着に有利な性質と、有機溶媒への溶解性とを兼ねそなえる観点から、二種以上のモノマーの共重合体であるのが好ましい。
メタクリレート単量体の単独重合体のSP値と有機溶媒とのSP値の差が0.1(cal/cm0.5未満となるメタクリレート単量体としては、例えば、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、i−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、プロピルメタクリレート、n-ステアリルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、トリデシルメタクリレート及びグリシジルメタクリレートなどの単量体が好適に挙げられる。可溶ポリマーBを構成するメタクリレート単量体は、これらの単量体を含む群(群b)より選ばれる一種又は二種以上を重合させることで得られる。
可溶ポリマーBを構成するメタクリレート単量体の単独重合体のSP値と有機溶媒とのSP値の差は、好ましくは−0.5(cal/cm0.5以上0.01(cal/cm0.5以下である。可溶ポリマーBでは、メタクリレート単量体の単独重合体のSP値が有機溶媒のSP値に近いことで、有機溶媒への溶解性を示すポリマーの有機溶媒との親和性が向上し、より優れたチキソトロピー性が得られる。
前記メタクリレート単量体以外の他の単量体としては、既述の不溶ポリマーAを形成するモノマーと同様のモノマーが挙げられる。可溶ポリマーBを形成するモノマーは、有機溶媒への溶解性、組成物としたときの粘度、チキソトロピー性、及び焼成性を考慮して、その種類及びポリマーに占める割合が選択される。
前記他の単量体の具体例として、アクリル酸のアルキル又はアリールエステル、芳香族ビニル等のラジカル重合性不飽和モノマーのほか、カルボキシル基含有単量体、アミド基もしくは置換アミド基含有単量体、水酸基含有単量体、アミノ基もしくは置換アミノ基含有単量体、及びエポキシ基含有単量体などの官能基モノマーが好適に挙げられる。
これらモノマーの詳細については、既述の不溶ポリマーAで説明した通りであり、各々の好ましい態様も同様である。
また、可溶ポリマーBは、メタクリレート単量体の単独重合体のSP値と有機溶媒のSP値との差が0.1(cal/cm0.5未満となるメタクリレート単量体と、アクリル酸のアルキル又はアリールエステルと、の共重合体でもよい。可溶ポリマーBは、メタクリレート単量体の単独重合体のSP値と有機溶媒のSP値との差が0.1(cal/cm0.5未満であってアルキル部位(シクロアルキルを含む)の炭素数1〜18のメタクリレート単量体と、アクリル酸のアルキルエステル(好ましいアルキル部位の炭素数=1〜8)との共重合体でもよい。
本発明では、メタクリレート単量体を用いたポリマーであることで、スクリーン印刷後に焼成して構造物(焼成体)を得る場合の焼成性が向上し、焼成残渣の軽減が図れる。これは、メタクリレート単量体である2−ヒドロキシエチルメタクリレートとアクリル酸のアルキルエステルとを少なくとも共重合した共重合体である場合にも同様な効果が得られる。
可溶ポリマーBの平均分子量は、重量平均分子量で10,000以上〜300,000が好ましく、より好ましくは150,000〜250,000である。
可溶ポリマーBのSP値は、有機溶媒のSP値との差が絶対値で0.5未満となる範囲にあることが好ましい。組成物中に分散含有される樹脂成分自体のSP値が有機溶媒のSP値に近いことで、既述の不溶ポリマーAとのSP値の差が大きくなり、より優れたチキソトロピー性が得られる。可溶ポリマーBの溶解度パラメータ(SP値、単位:(cal/cm0.5);以下、SPBと略記することがある。)は、有機溶媒のSP値や不溶ポリマーAのSP値との関係などから決定されるが、上記の点から、好ましくは9.3(cal/cm0.5未満であり、9.2(cal/cm0.5以下がより好ましく、9.0(cal/cm0.5以下が特に好ましい。該SP値の下限値は、8.0(cal/cm0.5である。
SP値の求め方については、既述した通りである。
可溶ポリマーBを構成しているメタクリレート単量体のうち、その少なくとも1つのメタクリレート単量体の単独重合体の溶解度パラメータから使用している有機溶媒の溶解度パラメータを差し引いた値が0.1(cal/cm0.5未満となるメタクリレート単量体に由来の構成単位の合計比率は、可溶ポリマーBの全構成単位の合計量に対して、質量基準で50%以上であることが好ましい。該メタクリレート単量体由来の構成単位の比率が50質量%以上であることは、主成分であることを意味する。すなわち、不溶ポリマーAが主としてメタクリレート単量体で構成されることで、既述の不溶ポリマーAとの間のSP値の差を大きく確保することができ、チキソトロピー性及び焼成性に優れる。中でも、好ましくは、前記群bより選ばれる単量体由来の構成単位の有機溶媒可溶性ポリマーB中に占める比率が、有機溶媒可溶性ポリマーB中の全構成単位の合計量に対して、質量基準で50%以上であり、より好ましくは85%以上である。
上記のうち、不溶ポリマーAと可溶ポリマーBとのSP値の差を大きくとる観点から、不溶ポリマーAを構成する構成単位を形成するメタクリレート単量体の少なくとも1つの単独重合体のSP値から有機溶媒のSP値を差し引いた値が、0.4(cal/cm0.5以上であり、可溶ポリマーBを構成する構成単位を形成するメタクリレート単量体の少なくとも1つの単独重合体のSP値から有機溶媒のSP値を差し引いた値が、0.01(cal/cm0.5以下であるように構成されている場合が好ましい。
本発明においては、不溶ポリマーA及び可溶ポリマーBを、不溶ポリマーAが集合したポリマー構造部分SAと、該ポリマー構造部分SAに結合又は吸着した可溶ポリマーBとを含む分散樹脂として、有機溶媒中に分散含有することができる。
この分散樹脂は、少なくとも、不溶ポリマーAが集合したポリマー構造部分SAと、このポリマー構造部分に結合又は吸着した可溶ポリマーBとをそなえており、ポリマー構造部分SAは有機溶媒中に溶解せず、これに結合又は吸着している可溶ポリマーBが有機溶媒に溶解した状態となって分散状態を保つことができる。つまり、分散樹脂を構成するポリマー構造部分SAは、不溶ポリマーAが集合して形成された粒子状の核を形成しており、この粒子核に可溶ポリマーBが結合又は吸着した構造となることで、粒子核(不溶ポリマーA)の一部に有機溶媒に溶解する部分ができ、有機溶媒中で分散安定性を保つことができる。
また、不溶ポリマーAのSP値(SPA)が可溶ポリマーBのSP値(SPB)より大きいことが好ましい。SPAがSPBより大きいと、SPAと前記有機溶媒のSP値との差がある程度得られ、有機溶媒中での分散安定性がより高められる点で有利である。より好ましくは、SPA及びSPBは、下記式1を満たす。
SPA−SPB<1.5(cal/cm0.5 ・・・(式1)
SPAからSPBを減算した差が1.5(cal/cm0.5未満であることは、SPAとSPBの値が比較的近いことを示す。したがって、不溶ポリマーAと可溶ポリマーBとの親和性が高くなり、有機溶媒中に可溶ポリマーBの一部が溶解しているときにも、可溶ポリマーBが不溶ポリマーA(例えばポリマー構造部分SA)に強固に繋がった状態が保たれる。これにより、安定した分散性及びチキソトロピー性が得られ、安定性の高い非水分散樹脂が得られる。中でも、「SPA−SPB」の値は、0.2(cal/cm0.5以上1.35(cal/cm0.5以下の範囲がより好ましい。
有機溶媒中における、可溶ポリマーBに対する不溶ポリマーAの比率(A/B;質量比)としては、0.5/1以上5/1以下の範囲であることが好ましい。比率A/Bが0.5/1以上であると、レベリング性の点で有利であり、5/1以下であると、分散安定性の点で有利である。比率A/Bは、1/1以上3/1以下の範囲がより好ましい。可溶ポリマーBに対する不溶ポリマーAの比率が大きいことで、より良好なチキソトロピー性が確保できる。
本発明のペースト用樹脂組成物は、少なくとも一部の可溶ポリマーBがポリマー構造部分SAに結合又は吸着した分散樹脂を分散含有する態様である場合、ポリマー構造部分SAに結合又は吸着する可溶ポリマーBとは別に、更に、ポリマー構造部分SAと結合又は吸着していない、有機溶媒に可溶な可溶ポリマーBが有機溶媒中に浮遊して存在している態様がより好ましい。このような可溶ポリマーBが有機溶媒中に存在することで、分散樹脂の分散状態がより安定化し、より低粘度の組成物が得られ、より良好なチキソトロピー性が発現される。
可溶ポリマーB及び不溶ポリマーAを、前記分散樹脂の態様で含有する場合、分散樹脂が有機溶媒中に分散されて非水分散樹脂を形成する。
この非水分散樹脂は、あらかじめ有機溶媒中に有機溶媒に可溶なポリマーを形成しておき、このポリマーの存在下、有機溶媒に不溶なポリマーを形成するモノマーを重合させたものであってもよいし、あらかじめ有機溶媒に可溶なポリマー部分と有機溶媒に不溶性のポリマー部分とがブロック又はグラフトされた重合体を形成しておき、この重合体の存在下、有機溶媒に不溶なポリマーを形成するモノマーを重合させたものでもよい。
これらの重合方法のうち、あらかじめ有機溶媒中に有機溶媒に可溶なポリマーを形成しておき、このポリマーの存在下、有機溶媒に不溶なポリマーを形成するモノマーを重合させる方法が、簡易に非水分散樹脂を得られる点から、好ましい。
有機溶媒に可溶なポリマー存在下、有機溶媒に不溶なポリマーを形成するモノマーを重合させることにより非水分散樹脂を得る方法において、前記有機溶媒に可溶なポリマーは、有機溶剤中で溶液重合により合成することができる。この可溶ポリマーは、ペースト用樹脂組成物を構成する有機溶媒と同じ有機溶媒中に、モノマー及び必要に応じて重合開始剤や連鎖移動剤を仕込み、窒素気流中又は有機溶媒の還流温度で攪拌しながら数時間加熱反応させることにより好適に合成することができる。このとき、有機溶媒、モノマー、重合開始剤及び/又は連鎖移動剤は、その少なくとも一部を逐次添加してもよい。重合温度は、一般に30〜180℃(好ましくは60〜150℃)が好ましい。
続いて、有機溶媒に可溶なポリマーが存在した有機溶媒中で、有機溶媒に不溶性のポリマー部分を与えるモノマーを重合開始剤及び必要に応じて連鎖移動剤とともに窒素気流中又は有機溶媒の還流温度で攪拌しながら数時間加熱して重合させることにより、有機溶媒に不溶性の不溶ポリマーと、可溶ポリマー部分に不溶ポリマー部分が結合した共重合体が生成する。生成した有機溶媒に不溶性の不溶ポリマーが、前記共重合体の不溶ポリマー部分とともに粒子核を形成し、有機溶媒に不溶性の不溶ポリマーが集合したポリマー構造部分SA、及び少なくとも一部がポリマー構造部分SAに結合又は吸着した可溶ポリマーBを有する分散樹脂粒子を得ることができる。
重合に用いる重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、カプロイルパーオキシド、ジ−i−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルペロキシ−2−エチルヘキサネートなどの有機過酸化物;2,2’−アゾビス−i−ブチルニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリルなどのアゾ化合物などを、各々単独で又は組み合わせて用いることができる。
前記重合開始剤のうち、有機溶媒に可溶なポリマーが存在した有機溶媒中で、有機溶媒に不溶性のポリマー部分を与えるモノマーを重合する際は、水素引き抜き能の高い有機過酸化物を使用することが好ましい。水素引き抜き能の高い重合開始剤を使用することで、効率的に可溶ポリマー中の不安定な水素原子が引き抜かれ、ここに不溶性のポリマー部分を与えるモノマーが付加する。これにより、可溶ポリマー部分と不溶ポリマー部分とが結合したグラフト又はブロック共重合体が生成し、生成した有機溶媒に不溶性の重合体が前記グラフト又はブロック共重合体の不溶ポリマー部分とともに粒子核を形成することができる。
重合開始剤の使用量は、モノマーの合計100質量部に対して、通常は0.01〜5質量部の範囲であり、好ましくは0.02〜2質量部である。
また、連鎖移動剤の例としては、特開2000−095917号公報の段落番号[0051]に記載の化合物を用いることができる。連鎖移動剤を用いる場合、その使用量は、モノマーの合計100質量部に対して、0.005〜3質量部が好ましい。
本発明のペースト用樹脂組成物において、前記非水分散樹脂の割合は、前記有機溶媒100質量部に対して、30質量部以上が好ましく、30〜60質量部がより好ましい。換言すれば、本発明のペースト用樹脂組成物中の不揮発分量は、30質量%以上が好ましく、30〜60質量%がより好ましい。
有機溶媒に対する非水分散樹脂の割合が30質量部以上、つまり非水分散樹脂が有機溶媒に対して少な過ぎない範囲であることで、不揮発分量の高い組成物が得られ、これを用いて焼成したときには熱収縮が抑えられる。また、非水分散樹脂の割合が60質量部以下、つまり非水分散樹脂が有機溶媒に対して多過ぎない範囲であることで、低粘度が維持され、良好なチキソトロピー性が発揮される。
本発明のペースト組成物は、既述の本発明のペースト用樹脂組成物と、無機粒子とを用いて構成されており、必要に応じて他の成分を含有していてもよい。ペースト用樹脂組成物の詳細については、既述の通りであり、好ましい態様も同様である。本発明のペースト組成物は、既述の本発明のペースト用樹脂組成物が用いられるので、所望形状の形成に有利なチキソトロピー性を備え、焼成時の残差が少ない。
ペースト組成物に含有される無機粒子としては、例えば、金属、ガラス、珪素化合物(シリカ、ケイ砂、二酸化珪素等)、カーボンブラック等の顔料、炭酸カルシウム、クレー、タルクなどの粒子が挙げられる。
無機粒子のペースト組成物中における含有量は、ペースト組成物の全質量に対して、50〜95質量%が好ましい。
本発明のペースト組成物の製造方法は、ペースト用樹脂組成物と無機粒子とを少なくとも混合することによりペースト組成物を調製する工程を設けて構成されている。さらに、他の工程が設けられてもよい。具体的には、更に、有機溶媒及び可溶ポリマーBの存在下で、不溶ポリマーAを合成し、ペースト用樹脂組成物を調製する工程を設けて好適に構成される。この場合、既述のように、不溶ポリマーAが集合したポリマー構造部分SAと少なくとも一部がポリマー構造部分SAに結合又は吸着した可溶ポリマーBとを含む樹脂を含有するペースト用樹脂組成物が調製され、このペースト用樹脂組成物を無機粒子と混合したペースト組成物が得られる。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
<共重合体(B)溶液の調製>
以下に示すようにして、本発明における可溶ポリマーBとして、共重合体(B)を調製した。
(製造例1−1)
攪拌機、還流冷却器、逐次滴下装置、及び温度計を備えた反応器に、ブチルカルビトールアセテート(BCA;沸点=247℃)630.0質量部、メタノール(MeOH)170.0質量部を仕込んだ。次いで、別の容器に2−エチルヘキシルメタクリレート(2EHMA)1531.3質量部を用意し、このうち525質量部を反応器に仕込み、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(ABN−E)0.40質量部を添加した。添加後、加熱し、還流温度で30分間保った。この中にさらに、残りの2EHMA1006.3質量部、BCA236.8質量部、MeOH26.3質量部、及びABN−E1.30質量部からなる混合物を90分間かけて逐次滴下した。更に60分間同温度で保ってから、BCA472.5質量部、MeOH52.5質量部、及びABN−E2.63質量部を30分間かけて逐次滴下した。更に180分間同温度で保ってから、BCAで希釈後冷却し、2EHMA単独重合体B1溶液を得た。
2EHMAの単独重合体のSP値、有機溶媒のSP値、得られた重合体B1溶液の不揮発分、並びに、重合体B1のガラス転移温度(Tg)、SP値、及び重量平均分子量(Mw)を下記表1に示す。
なお、Mwは、ゲル透過クロマトグラフ(GPC)により、TSK−GEL GMHXL(東ソー製 スチレン系ポリマー充填剤)をカラムとして測定し、ポリスチレン換算して得られた値である。
(製造例1−2)
攪拌機、還流冷却器、逐次滴下装置、及び温度計を備えた反応器に、ブチルカルビトールアセテート(BCA;沸点=247℃)630.0質量部、メタノール(MeOH)170.0質量部を仕込んだ。次いで、別の容器に2−エチルヘキシルメタクリレート(2EHMA)97.0質量%、及び2−ヒドロキシメチルアクリレート(2HEMA)3.0質量%からなる単量体混合物1531.3質量部を用意し、このうち525質量部を反応器に仕込み、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(ABN−E)0.40質量部を添加した。添加後、加熱し、還流温度で30分間保った。この中にさらに、残りの2EHMA1006.3質量部、BCA236.8質量部、MeOH26.3質量部、及びABN−E1.30質量部からなる混合物を90分間かけて逐次滴下した。更に60分間同温度で保ってから、BCA472.5質量部、MeOH52.5質量部、及びABN−E2.63質量部を30分間かけて逐次滴下した。更に180分間同温度で保ってから、BCAで希釈後冷却し、2EHMA/2HEMA(=97/3[質量比])共重合体を含む共重合体B2溶液を得た。
なお、ここで用いた単量体の組成、及び単量体の単独重合体のSP値、得られた共重合体B2溶液の不揮発分、並びに共重合体B2のTg、SP値、及びMwを下記表1に示す。
(製造例1−3〜1−12)
前記製造例1−2において、単量体の組成を下記表1に示すように変更したこと以外は、製造例1−2と同様にして、共重合体B3〜B12溶液を得た。
(製造例1−13)
前記製造例1−2において、ブチルカルビトールアセテート(BCA)をターピネオール(沸点=217〜218℃)に変更すると共に、単量体の組成を下記表1に示すように変更したこと以外は、製造例1−2と同様にして、共重合体B13溶液を得た。
(製造例1−14)
前記製造例1−2において、ブチルカルビトールアセテート(BCA)をテキサノール(沸点=255℃)に変更すると共に、単量体の組成を下記表1に示すように変更したこと以外は、製造例1−2と同様にして、共重合体B14溶液を得た。
(製造例1−15〜1−17)
前記製造例1−2において、単量体の組成を下記表1に示すように変更したこと以外は、製造例1−2と同様にして、共重合体B15〜B17溶液を得た。
(製造例1−18)
ブチルカルビトールアセテート(BCA)100.0質量部中に、エチルセルロース20.0質量部を溶解し、EC溶液を得た。
(実施例1):非水分散樹脂の調製
攪拌機、還流冷却器、逐次滴下装置、及び温度計を備えた反応器に、ブチルカルビトールアセテート(BCA)158.6質量部、メタノール(MeOH)99.8質量部、及び前記製造例1−1で得られた「重合体B1溶液」1218.0質量部を仕込み、還流温度に昇温した。昇温後、これにn−ブチルメタクリレート(nBMA)60.0質量%及び2−ヒドロキシメチルアクリレート(2HEMA)40.0質量%からなる単量体混合物974.4質量部と、BCA280.1質量部と、MeOH136.1質量部と、t−ブチルペロキシ2−エチルヘキサネート(PB−O)7.62質量部とを90分間かけて逐次滴下した。滴下終了後、同温度で60分間保持した。その後、さらにBCA203.1質量部及びPB−O20.31質量部を90分間かけて逐次滴下し、更に90分間同温度で保った。その後、これをBCAで希釈し、MeOHを抽出し、冷却した。
以上のようにして、重合体B1(可溶ポリマーB)溶液中に、nBMA/2HEMA共重合体(不溶ポリマーA)が分散した非水樹脂分散溶液(ペースト用樹脂組成物)を得た。この樹脂分散溶液中では、重合体B1の一部は不溶ポリマーAのポリマー構造部分に結合又は吸着して存在し、不溶ポリマーA(nBMA/2HEMA共重合体)に結合されていない重合体B1の存在も認められた。得られた樹脂分散溶液の不揮発分濃度は、45.2質量%であった。
ここで用いた単量体の組成、単量体の単独重合体のSP値、得られた樹脂分散溶液の不揮発分、nBMA/2HEMA共重合体のSP値、Tg及びMwを下記表1に示す。なお、Mwは、上記同様の方法にて測定した。
(実施例2〜14)
実施例1において、重合体B1溶液を、下記表1に記載の単量体組成を有する共重合体B2〜B14に代えると共に、有機溶媒の種類、可溶ポリマーAの単量体組成を下記表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂分散溶液(ペースト用樹脂組成物)を得た。各樹脂分散溶液の不揮発分濃度は、下記表1に記載の通りである。
(比較例1〜3)
実施例1において、重合体B1溶液を、下記表1に記載の単量体組成を有する共重合体B15〜B17に代えると共に、可溶ポリマーAの単量体組成を下記表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂分散溶液(ペースト用樹脂組成物)を得た。各樹脂分散溶液の不揮発分濃度は、下記表1に記載の通りである。
(比較例4)
前記製造例1−18のEC溶液を樹脂分散溶液(ペースト用樹脂組成物)として用いた。不揮発分濃度は、下記表1に記載の通りである。
(評価)
上記の実施例1〜14及び比較例1〜4で調製した樹脂分散溶液(ペースト用樹脂組成物)並びにこれを用いたペースト組成物について、下記の評価を行なった。評価結果は、下記表2に示す。
−1.樹脂分散溶液のチキソトロピー性−
樹脂分散溶液を25℃の恒温水槽に入れて25℃に温調後、BH型粘度計(東機産業社製)を用い、回転数4rpm、20rpmにて粘度を測定した。得られた粘度から「4rpmでの粘度/20rpmでの粘度」で表される粘度比を求め、チキソトロピー性を評価する指標とした。評価は、下記の評価基準にしたがって行なった。なお、粘度比は、高いほどチキソトロピー性が高く、スクリーン印刷性に優れていることを示す。
<評価基準>
A:粘度比が1.3以上であり、1回のスクリーン印刷で高さ、形状の良好な構造物が得られ、優れたスクリーン印刷性を示した。
B:粘度比が1.2以上1.3未満であり、比較的良好な高さ、形状を有する構造物が得られ、良好なスクリーン印刷性を示した。
C:粘度比が1.2未満であり、スクリーン印刷性に劣っていた。
−2.樹脂分散溶液の焼成性−
樹脂分散溶液を200℃で約10分間減圧乾燥し、乾燥後に得られた樹脂の約10mgをアルミ皿にのせ、熱重量/分析装置(SIIナノテクノロジー社製、EXSTAR6000)を用いて窒素雰囲気下、昇温温度10℃/minで常温から600℃まで昇温した。その後、室温まで冷却し、目視にて残渣の状態を観察し、以下の評価基準にしたがって評価した。
<評価基準>
A:アルミ皿に残渣がない。
B:アルミ皿に残渣がほとんどない。
C:アルミ皿に残渣が多い。
−3.樹脂分散溶液の粘度−
各樹脂分散溶液について、BH型粘度計(東機産業社製)を用い、回転数4rpm、20rpmにて25℃での粘度を測定した。
−4.ペースト組成物の製造・評価−
(4−1)ペーストの製造
上記の実施例1〜14及び比較例1〜3で調製した樹脂分散溶液をガラス粉末75質量部に対して11.1質量部添加し、ブチルカルビトールアセテート(BCA)にて不揮発分が80質量%になるように調整した。その後、三本ロールミル(N−R42A、ノリタケカンパニーリミテド製)を用いて、以下の分散条件にしたがってガラスペーストを作製した。また、比較例4で調製したEC溶液をガラス粉末75質量部に対して25.0質量部添加し、BCAにて不揮発分80質量%になるように調製後、同様の操作にてガラスペーストを作製した。
<分散条件>
・ロールギャップ:F/C間 50μm
C/A間 50μm
・ロール速度:F/C/A=50rpm/100rpm/200rpm
・ロール通過回数:3回
(4−2)ペーストのチキソトロピー性
作製したガラスペーストを動的粘弾性測定機(Anton Paar社製 Physica MCR301)を用いて、評価温度:25℃、使用コーン:25mmφ、2°、測定ギャップ:103μm、剪断速度:0.01〜60(1/s)の剪断速度領域における剪断粘度を測定した。剪断速度1(1/s)の粘度[η]と剪断速度10(1/s)の粘度[η10]との粘度比(η10/η)を求め、チキソトロピー性を評価する指標とした。評価は、下記の評価基準にしたがって行なった。
なお、粘度比は、高いほどチキソトロピー性が高く、スクリーン印刷性に優れていることを示す。
<評価基準>
A:粘度比が2.0以上であり、1回のスクリーン印刷で高さ、形状の良好な構造物が得られ、優れたスクリーン印刷性を示した。
B:粘度比が1.5以上2.0未満であり、比較的良好な高さ、形状を有する構造物が得られ、良好なスクリーン印刷性を示した。
C:粘度比が1.5未満であり、スクリーン印刷性に劣っていた。
(4−3)ペーストの焼成性
作製したガラスペースト約10mgをアルミ皿にのせ、熱重量/分析装置(SIIナノテクノロジー社製、EXSTAR6000)を用いて窒素雰囲気下、昇温温度10℃/minで常温から600℃まで昇温した。その後、室温まで冷却し、目視にて残渣の状態を観察し、以下の評価基準にしたがって評価した。
<評価基準>
A:アルミ皿に黒色又は灰色の樹脂残渣がない。
B:アルミ皿に黒色又は灰色の樹脂の残渣がほとんどない。
C:アルミ皿に黒色又は灰色の樹脂の残渣が多く、分解不良物が観察された。

前記表2に示すように、実施例では、得られた樹脂分散溶液(ペースト用樹脂組成物)は、高不揮発分に調製されているにも関わらず、粘度比が高く良好なチキソトロピー性を示した。そして、実施例の樹脂分散溶液を用いたペーストも良好なチキソトピー性を示した。また、焼成後の炭素成分の残存が著しく軽減されている。
このように、実施例の樹脂分散溶液は、スクリーン印刷に適しており、スクリーン印刷した場合に、従来に比べて、PDP用の隔壁(リブ)や太陽電池用の電極等を、より高さや厚みがあって精細な構造物として形成することが可能である。
これに対し、比較例では、焼成性に劣るかあるいはチキソトロピー性に劣る結果となっており、比較例の樹脂分散溶液を用いたペーストでは、焼成性及びチキソトピー性に劣る結果となった。そのため、スクリーン印刷によっては、所望とする高さや厚み、形状を有する構造物を得ることはできなかった。PDP用の隔壁(リブ)や太陽電池用の電極等を形成する場合に所望の高さや厚みを実現するために印刷量を増そうとすると、ダレが生じやすくなり、結果として、例えば電極パターンを形成した際にファインピッチが得られない等、精細なパターンを得ることは困難であった。
本発明のペースト用樹脂組成物は、不揮発分を高濃度に含みつつも低粘度で優れたチキソトロピー性をそなえるため、スクリーン印刷に用いる塗布液として好適である。また、焼成後の残留炭素等の残渣が少ない点から、焼成用ペースト等の用途に好適であり、例えばプラズマディスプレイ(PDP)のリブ(隔壁)形成や太陽電池(PV)の電極形成の用途に好適である。

Claims (9)

  1. 有機溶媒と、
    メタクリレート単量体に由来の構成単位を含み、前記有機溶媒に不溶であると共に、少なくとも1つの前記メタクリレート単量体の単独重合体の溶解度パラメータから有機溶媒の溶解度パラメータを差し引いた値が0.1(cal/cm0.5以上である不溶ポリマーAと、
    メタクリレート単量体に由来の構成単位を含み、前記有機溶媒に可溶であると共に、少なくとも1つの前記メタクリレート単量体の単独重合体の溶解度パラメータから有機溶媒の溶解度パラメータを差し引いた値が0.1(cal/cm0.5未満である可溶ポリマーBと、
    を含有し、前記値が0.1(cal/cm0.5以上であるメタクリレート単量体に由来の構成単位の合計比率は、前記不溶ポリマーAが前記可溶ポリマーBに比べて大きいペースト用樹脂組成物。
  2. 前記不溶ポリマーA及び前記可溶ポリマーBは、前記不溶ポリマーAが集合したポリマー構造部分SAと該ポリマー構造部分SAに結合又は吸着した前記可溶ポリマーBとを含む前記有機溶媒中に分散された分散樹脂として、含有されている請求項1に記載のペースト用樹脂組成物。
  3. 前記可溶ポリマーBは、前記値が0.1(cal/cm0.5未満であるメタクリレート単量体に由来の構成単位の合計比率が、可溶ポリマーB中の全構成単位の合計量に対して、質量基準で50%以上である請求項1又は請求項2に記載のペースト用樹脂組成物。
  4. 前記不溶ポリマーAは、前記値が0.1(cal/cm0.5以上であるメタクリレート単量体に由来の構成単位の合計比率が、不溶ポリマーA中の全構成単位の合計量に対して、質量基準で25%以上である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のペースト用樹脂組成物。
  5. 前記有機溶媒は、沸点が180℃以上280℃以下である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のペースト用樹脂組成物。
  6. 前記有機溶媒は、溶解度パラメータが8.0(cal/cm0.5以上11.0(cal/cm0.5以下である請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のペースト用樹脂組成物。
  7. 請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のペースト用樹脂組成物と、無機粒子と、を含有するペースト組成物。
  8. 請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のペースト用樹脂組成物と無機粒子とを混合することでペースト組成物を調製する工程を有するペースト組成物の製造方法。
  9. 更に、有機溶媒及び可溶ポリマーBの存在下で、不溶ポリマーAを合成し、ペースト用樹脂組成物を調製する工程を有する請求項8に記載のペースト組成物の製造方法。
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