JP2013226108A - 新規ntrk2活性化変異の検出法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 癌の原因である新たな遺伝子変異を解明し、これにより、当該遺伝子変異又は当該変異に基づくタンパク質を検出することによる、被験者における癌の存在を検出する方法、被験者における癌を診断する方法、当該変異陽性の癌患者を同定する方法、並びにそのためのプライマーセット、プローブ及び検出用キットを提供することを課題とする。
【解決手段】 被験者における癌の存在を検出する方法であって、被験者から得た試料中の、神経栄養因子受容体2(NTRK2)チロシンキナーゼドメインの138番目のアルギニンからシステインへの変異の存在を検出する工程を包含する、方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、NTRK2における活性化変異の存在を検出することによる、被験者における癌の存在を検出する方法に関する。
神経栄養因子受容体(Neurotrophic Tyrosine Receptor Kinase;NTRK)は受容体型チロシンキナーゼの1種であり、NTRKのリガンドとしては、ニューロトロフィンが知られている。NTRKファミリーには、3つの受容体NTRK1、NTRK2、及びNTRK3の存在が知られている。これらの受容体は、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン及び細胞内ドメインを有する膜貫通タンパク質である。細胞外ドメインはリガンド結合部、ロイシンリッチ領域、システインリッチ領域及び2つの免疫グロブリン(Ig)ドメインを含む。NTRKは、NTRKとニューロトロフィンの結合によって、細胞表面で起こる二量体化によって活性化される、単量体チロシンキナーゼ受容体である。ニューロトロフィンについては、4種の既知の因子が存在し、それぞれが1つ又は複数のNTRKと結合する能力を有する。ニューロトロフィンがNTRKに結合することで受容体チロシンキナーゼが活性化され、下流にシグナル伝達が行われる。NTRKの発現部位や時期の差異によって、細胞分化や細胞増殖、生存などの複雑な生体機能を制御している。
NTRKファミリーのうち、ヒトのNTRK2遺伝子については現在までに5つのスプライシングバリアント(NTRK2遺伝子バリアントa(GenBank登録番号:NM_006180.3)、バリアントb(GenBank登録番号:NM_001007097.1)、バリアントc(GenBank登録番号:NM_001018064.1)、バリアントd(GenBank登録番号:NM_001018065.2)、バリアントe(GenBank登録番号:NM_001018066.2))の存在が知られている。バリアントa、b、c、d及びeはNTRK2アイソフォーム1、2、3、4及び5をそれぞれコードする。NTRK2アイソフォーム1は全長838アミノ酸、アイソフォーム2は全長477アミノ酸、アイソフォーム3は全長822アミノ酸、アイソフォーム4は全長553アミノ酸、アイソフォーム5は全長537アミノ酸からなり、アイソフォーム1とアイソフォーム3は膜貫通ドメイン近傍の領域において異なるものの、細胞外ドメイン及び細胞内のキナーゼドメインにおいては同一のアミノ酸配列を有する。
受容体型チロシンキナーゼのキナーゼドメインは細胞内ドメインに存在し、種々の癌においてチロシンキナーゼドメインにおける点変異がチロシンキナーゼの恒常的な活性化を引き起こし、癌化に関与していることが確認されている。NTRK2については、肺癌や大腸癌、皮膚癌、卵巣癌において19カ所の点変異が認められることが報告されている(非特許文献1、2、3)。
しかし、これまでに癌化の原因となるNTRK2の恒常的活性化の要因となる点変異(活性化変異)は見出されていない。
「クリニカル キャンサー リサーチ(Clinical Cancer Research)、(米国)、2011年、17巻、p.2638−2645)」 「プロス ワン(PLoS ONE)、(米国)、2011年、Volume 6、Issue 2、e16871」 「ネイチャー(Nature)、(英国)、2011年、Vol 474、p.609−615)」
癌の原因である新たな遺伝子変異を解明し、これにより、当該遺伝子変異又は当該変異を有するタンパク質を検出することによる、被験者における癌の存在を検出する方法、被験者における癌を診断する方法、当該変異陽性の癌患者を同定する方法、並びにそのためのプライマーセット、プローブ及び検出用キットを提供することを課題とする。
本発明者らは、癌の原因となる受容体型チロシンキナーゼにおける活性化変異を同定すべく創意検討を行った結果、神経栄養因子受容体2(NTRK2)のチロシンキナーゼドメインの138番目のアルギニンからシステインへの変異がNTRK2の活性化変異であることを同定した。当該変異は卵巣癌の臨床検体から網羅的に同定された変異の1つ(NTRK2_R691C:非特許文献3)であるが、これまでに本変異が活性化変異であることは確認されていない。当該変異は、NTRK2において初めて同定された活性化変異である。本発明者は、この知見から、当該NTRK2遺伝子の活性化変異の存在を検出することによる癌の検出法を構築し、そのためのプライマーセット、プローブ及び検出用キットを提供し、当該活性化変異を検出することにより、NTRK2阻害薬物治療の対象となる癌患者を選別することを可能とした。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[13]に関する。
[1]被験者における癌の存在を検出する方法であって、被験者から得た試料中の、神経栄養因子受容体2(NTRK2)チロシンキナーゼドメインの138番目のアルギニンからシステインへの変異の存在を検出する工程を包含する、方法。
[2]前記変異が下記(1)乃至(2)に記載のNTRK2における変異である、[1]に記載の方法。
(1)NTRK2アイソフォーム1の691番目のアルギニンからシステインへの変異;又は
(2)NTRK2アイソフォーム3の675番目のアルギニンからシステインへの変異。
[3]前記変異が下記(1)乃至(2)に記載のNTRK2における変異である、[1]又は[2]に記載の方法。
(1)配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるNTRK2の691番目のアルギニンからシステインへの変異;又は
(2)配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるNTRK2の675番目のアルギニンからシステインへの変異。
[4]下記(1)乃至(2)に記載のNTRK2遺伝子における変異の存在を検出する工程を包含する、[1]又は[2]に記載の方法。
(1)NTRK2アイソフォーム1遺伝子の2071番目のシトシンからチミンへの変異;又は
(2)NTRK2アイソフォーム3遺伝子の2023番目のシトシンからチミンへの変異。
[5]下記(1)乃至(2)に記載のNTRK2遺伝子における変異の存在を検出する工程を包含する、[1]〜[4]のいずれかに記載の方法。
(1)配列番号1に示される塩基配列からなるNTRK2遺伝子の2071番目のシトシンからチミンへの変異;又は
(2)配列番号3に示される塩基配列からなるNTRK2遺伝子の2023番目のシトシンからチミンへの変異。
[6]前記変異がNTRK2アイソフォーム3の675番目のアルギニンからシステインへの変異である、[2]に記載の方法。
[7]前記変異が配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるNTRK2の675番目のアルギニンからシステインへの変異である、[6]に記載の方法。
[8]NTRK2アイソフォーム3遺伝子の2023番目のシトシンからチミンへの変異の存在を検出する工程を包含する、[6]に記載の方法。
[9]配列番号3に示される塩基配列からなるNTRK2遺伝子の2023番目のシトシンからチミンへの変異の存在を検出する工程を包含する、[6]〜[8]のいずれかに記載の方法。
[10]下記(1)乃至(2)に記載のNTRK2遺伝子における領域を増幅できるように設計したプライマーセットを用いて、前記被験者から得た試料中の核酸を増幅させる工程を包含する、[1]〜[9]のいずれかに記載の方法。
(1)配列番号1に示される塩基配列からなるNTRK2遺伝子の2071番目の塩基を含む領域;又は
(2)配列番号3に示される塩基配列からなるNTRK2遺伝子の2023番目の塩基を含む領域。
[11]下記(1)乃至(2)に記載のNTRK2遺伝子における変異を含む領域にストリンジェント条件下でハイブリダイズすることができるように設計したプローブを、前記被験者から得た試料中の核酸にハイブリダイズさせる工程を包含する、[1]〜[9]のいずれかに記載の方法。
(1)配列番号1に示される塩基配列からなるNTRK2遺伝子の2071番目のシトシンからチミンへの変異;又は
(2)配列番号3に示される塩基配列からなるNTRK2遺伝子の2023番目のシトシンからチミンへの変異。
[12]前記被験者から試料を得る工程を包含する、[1]〜[11]のいずれかに記載の方法。
[13]前記癌が卵巣癌である、[1]〜[12]のいずれかにに記載の方法。
また、本発明は、以下の[14]〜[18]に関する。
[14]被験者における癌を診断する方法であって、前記[1]〜[11]のいずれかに記載の検出工程を包含する、方法。
[15]前記被験者から試料を得る工程を包含する、[14]に記載の方法。
[16]前記変異が前記被験者から得た試料から検出された場合に、該被験者が癌に罹患している可能性が高いと判定する工程をさらに包含する、[14]又は[15]に記載の方法。
[17]前記癌が卵巣癌である、[14]又は[15]に記載の方法。
[18]前記変異が前記被験者から得た試料から検出された場合に、該被験者が卵巣癌に罹患している可能性が高いと判定する工程をさらに包含する、[17]に記載の方法。
また、本発明は、以下の[19]〜[22]に関する。
[19]NTRK2阻害剤による治療の適応対象となる被験者を同定する方法であって、該被験者は癌患者であり、前記[1]〜[11]のいずれかに記載の検出工程を包含する、方法。
[20]前記被験者から試料を得る工程を包含する、[19]に記載の方法。
[21]前記変異が前記被験者から得た試料から検出された場合に、該被験者がNTRK2阻害剤による治療の適応対象であると判定する工程をさらに包含する、[19]又は[20]に記載の方法。
[22]前記癌が卵巣癌である、[19]〜[21]のいずれかに記載の方法。
また、本発明は、以下の[23]〜[25]に関する。
[23]被験者における癌の存在を検出するためのプライマーセットであって、下記(1)乃至(2)に記載のNTRK2遺伝子における領域を増幅できるように設計した、プライマーセット。
(1)配列番号1に示される塩基配列からなるNTRK2遺伝子の2071番目の塩基を含む領域;又は
(2)配列番号3に示される塩基配列からなるNTRK2遺伝子の2023番目の塩基を含む領域。
[24]以下の(1)及び(2)からなる群より選択される、[23]に記載のプライマーセット。
(1)配列番号1の塩基番号1から2070間の任意の連続する少なくとも16塩基のオリゴヌクレオチドからなるセンスプライマー及び配列番号1の塩基番号2072から2517間の任意の連続する少なくとも16塩基のオリゴヌクレオチドに対して相補的であるオリゴヌクレオチドからなるアンチセンスプライマーのプライマーセット;並びに
(2)配列番号3の塩基番号1から2022間の任意の連続する少なくとも16塩基のオリゴヌクレオチドからなるセンスプライマー及び配列番号3の塩基番号2024から2469間の任意の連続する少なくとも16塩基のオリゴヌクレオチドに対して相補的であるオリゴヌクレオチドからなるアンチセンスプライマーのプライマーセット。
[25]前記癌が卵巣癌である、[23]又は[24]に記載のプライマーセット。
また、本発明は、以下の[26]〜[27]に関する。
[26]被験者における癌の存在を検出するためのプローブであって、下記(1)乃至(2)に記載のNTRK2遺伝子における変異を含む領域にストリンジェント条件下でハイブリダイズすることができるように設計した、プローブ。
(1)配列番号1に示される塩基配列からなるNTRK2遺伝子の2071番目のシトシンからチミンへの変異;又は
(2)配列番号3に示される塩基配列からなるNTRK2遺伝子の2023番目のシトシンからチミンへの変異。
[27]前記癌が卵巣癌である、[26]に記載のプローブ。
また、本発明は、以下の[28]〜[29]に関する。
[28]被験者における癌の存在を検出するための検出用キットであって、前記[23]又は[24]に記載のプライマーセット或いは前記[26]に記載のプローブの少なくとも1つを含む、検出用キット。
[29]前記癌が卵巣癌である、[28]に記載の検出用キット。
また、本発明は、以下の[30]〜[37]に関する。
[30]被験者における癌の存在を検出する方法であって、前記[23]又は[24]に記載のプライマーセットを用いて、被験者から得た試料中の核酸を増幅させる工程を包含する、方法。
[31]前記プライマーセットを用いて、下記(1)乃至(2)に記載のNTRK2遺伝子における領域を増幅させる工程を包含する、[30]に記載の方法。
(1)NTRK2アイソフォーム1遺伝子の2071番目の塩基を含む領域;又は
(2)NTRK2アイソフォーム3遺伝子の2023番目の塩基を含む領域。
[32]前記プライマーセットを用いて、下記(1)乃至(2)に記載のNTRK2遺伝子における領域を増幅させる工程を包含する、[30]又は[31]に記載の方法。
(1)配列番号1に示される塩基配列からなるNTRK2遺伝子の2071番目の塩基を含む領域;又は
(2)配列番号3に示される塩基配列からなるNTRK2遺伝子の2023番目の塩基を含む領域。
[33]被験者における癌の存在を検出する方法であって、前記[26]に記載のプローブを、被験者から得た試料中の核酸にハイブリダイズさせる工程を包含する、方法。
[34]前記プローブを、下記(1)乃至(2)に記載のNTRK2遺伝子における変異を含む領域にハイブリダイズさせる工程を包含する、[33]に記載の方法。
(1)NTRK2アイソフォーム1遺伝子の2071番目のシトシンからチミンへの変異;又は
(2)NTRK2アイソフォーム3遺伝子の2023番目のシトシンからチミンへの変異。
[35]前記プローブを、下記(1)乃至(2)に記載のNTRK2遺伝子における変異を含む領域にハイブリダイズさせる工程を包含する、[33]又は[34]に記載の方法。
(1)配列番号1に示される塩基配列からなるNTRK2遺伝子の2071番目のシトシンからチミンへの変異;又は
(2)配列番号3に示される塩基配列からなるNTRK2遺伝子の2023番目のシトシンからチミンへの変異。
[36]前記被験者から試料を得る工程を包含する、[30]〜[35]のいずれかに記載の方法。
[37]前記癌が卵巣癌である、[30]〜[36]のいずれかに記載の方法。
また、本発明は、以下の[38]〜[42]に関する。
[38]被験者における癌を診断する方法であって、前記[30]〜[35]のいずれかに記載の工程を包含する、方法。
[39]前記被験者から試料を得る工程を包含する、[38]に記載の方法。
[40]前記変異が前記被験者から得た試料から検出された場合に、該被験者が癌に罹患している可能性が高いと判定する工程をさらに包含する、[38]又は[39]に記載の方法。
[41]前記癌が卵巣癌である、[38]又は[39]に記載の方法。
[42]前記変異が前記被験者から得た試料から検出された場合に、該被験者が卵巣癌に罹患している可能性が高いと判定する工程をさらに包含する、[41]に記載の方法。
また、本発明は、以下の[43]〜[46]に関する。
[43]NTRK2阻害剤による治療の適応対象となる被験者を同定する方法であって、該被験者は癌患者であり、前記[30]〜[35]のいずれかに記載の工程を包含する、方法。
[44]前記被験者から試料を得る工程を包含する、[43]に記載の方法。
[45]前記変異が前記被験者から得た試料から検出された場合に、該被験者がNTRK2阻害剤による治療の適応対象であると判定する工程をさらに包含する、[43]又は[44]に記載の方法。
[46]前記癌が卵巣癌である、[43]〜[45]のいずれかに記載の方法。
また、本発明は、以下の[47]〜[48]に関する。
[47]試験物質が、NTRK2チロシンキナーゼドメインにおける138番目のアルギニンからシステインへの変異を有するNTRK2変異体ポリペプチド又は該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの活性又は発現を阻害するか否かを評価する工程を包含する、癌治療剤のスクリーニング方法。
[48]前記癌が卵巣癌である、[47]に記載の方法。
本発明の方法は、被験者における癌(特には卵巣癌)を検出する方法として利用できる。また、本発明の方法によれば、癌患者(特には卵巣癌患者)に対してNTRK2阻害剤による治療の適応対象であるか否かを鑑別することができる。本発明のプライマーセット、プローブ及び検出用キットは、本発明の方法に用いることができる。
《本発明の検出方法》
本発明の方法の1つは、被験者における癌の存在を検出する方法であり、該方法は、被験者から得た試料中の、神経栄養因子受容体2(NTRK2)のチロシンキナーゼドメインにおける138番目のアルギニンからシステインへの変異の存在を検出する工程を含む。
被験者から得た試料としては、被験者からの採取物(生体から分離した試料)、具体的には、任意の採取された細胞組織、体液(血液、口腔粘液、循環腫瘍細胞(Circulating tumor cell)、エキソソーム等)、生検された試料等を用いるが、好適には生検された試料を用いる。採取した試料からゲノムDNAもしくはRNAを抽出して用いることができ、またその転写産物(ゲノムが転写及び翻訳される結果生じる産物;例えば、mRNA、cDNA、蛋白質)を用いることができる。特には、mRNA又はcDNAを調製して用いることが好ましい。
現在まで、NTRK2には5つのアイソフォーム、アイソフォーム1、2、3、4及び5が存在することが知られている。NTRK2アイソフォーム1は全長838アミノ酸からなるNTRK2であり、例えば、野生型のNTRK2アイソフォーム1は、配列番号2に示されるアミノ酸配列からなり、配列番号1に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドにコードされる。NTRK2アイソフォーム3は全長822アミノ酸からなるNTRK2であり、例えば、野生型のNTRK2アイソフォーム3は、配列番号4に示されるアミノ酸配列からなり、配列番号3に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドにコードされる。NTRK2のアイソフォーム1及び3は、その細胞内領域において共通のチロシンキナーゼドメインを有する。本明細書中で使用される場合、NTRK2のチロシンキナーゼドメインとは、NTRK2アイソフォーム1のアミノ酸第554〜823位、アイソフォーム3のアミノ酸第538〜807位にそれぞれ対応する、270アミノ酸からなる領域を意味する。野生型のNTRK2アイソフォーム1及び3のチロシンキナーゼドメインは、どちらも同じく配列番号10に示されるアミノ酸配列からなり、配列番号9に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドにコードされる。
本発明の方法における検出対象となる変異(「検出対象変異」とも称する)は、NTRK2のチロシンキナーゼドメイン内の変異であり、具体的には、NTRK2のチロシンキナーゼドメインの138番目のアルギニン(R)からシステイン(C)への変異(本明細書中、本変異をRC−NTRK2とも称する)である。本検出対象変異の代表的な例としては、配列番号10に示されるアミノ酸配列からなるNTRK2チロシンキナーゼドメインの138番目のアルギニンからシステインへの変異が挙げられる。本検出対象変異は、NTRK2遺伝子のチロシンキナーゼドメインコード領域における変異に起因し、従って、本発明の方法において遺伝子変異の存在を検出してもよい。このような遺伝子変異の代表的な例としては、配列番号9に示される塩基配列からなるNTRK2遺伝子のチロシンキナーゼドメインコード領域の412番目のシトシンからチミンへの変異が挙げられる。
前述の検出対象変異は、NTRK2アイソフォーム1においては691番目のアルギニンからシステインへの変異に対応し、NTRK2アイソフォーム3においては675番目のアルギニンからシステインへの変異に対応する。また、これらの変異にそれぞれ対応するNTRK2遺伝子における変異としては、NTRK2アイソフォーム1遺伝子の2071番目のシトシンからチミンへの変異、NTRK2アイソフォーム3遺伝子の2023番目のシトシンからチミンへの変異が挙げられる。
本発明の方法における検出対象変異のより具体的な例としては、配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるNTRK2の691番目のアルギニンからシステインへの変異、配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるNTRK2の675番目のアルギニンからシステインへの変異が挙げられる。また、これらに対応するNTRK2遺伝子における変異の例としては、配列番号1に示される塩基配列からなるNTRK2遺伝子の2071番目のシトシンからチミンへの変異、配列番号3に示される塩基配列からなるNTRK2遺伝子の2023番目のシトシンからチミンへの変異が挙げられる。
本発明の方法においては、検出対象変異を有するタンパク質(「変異型タンパク質」とも称する)又は検出対象変異を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド(「変異型ポリヌクレオチド」とも称する)のいずれを検出対象としてもよい。変異型タンパク質の例としては、配列番号6又は配列番号8に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質が挙げられる。また、変異型ポリヌクレオチドの例としては、配列番号5又は配列番号7に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドが挙げられる。
本発明の検出方法において変異型ポリヌクレオチドの存在を検出する場合、本検出工程は、被験者から得た試料のゲノムDNA中の変異型ポリヌクレオチドの存在を検出すること、あるいは、被験者から得た試料から抽出したゲノムDNAの転写産物(例えば、mRNA又はcDNA)を調製し、変異型ポリヌクレオチドに対応するmRNA又はcDNAの存在を検出することにより実施できる。ゲノムDNAの抽出、mRNA及びcDNAの調製は当該分野で公知の方法で行うことができ、市販のキットを用いて簡便に行うことができる。
本検出工程は、当該分野で公知の遺伝子変異解析方法を使用することができる。例えば、本検出工程は、被験者から得た試料由来の核酸(例えば、mRNAやcDNA等)に対して公知の核酸増幅方法(PCR法、RT−PCR法、LCR法(Ligase chain Reaction)、SDA法(Strand displacement amplification)、NASBA法(Nucleic acid sequence−based amplification)、ICAN法(Isothermal and chimeric primer−initiated amplification of nucleic acids)、LAMP法(Loop−mediated isothermal amplification)、TMA法(Gen−Probe’s TMA system)等)を用いて、変異型ポリヌクレオチド中の検出対象変異に対応する部分を含む領域(「検出対象変異領域」とも称する)を増幅させる工程を含み、増幅後、この増幅産物について配列決定を行うことによって変異の有無を確認することができる。このような配列決定法としては、ダイレクトシーケンス法等の当該分野で公知の方法を使用することができる。
前述の核酸増幅方法に用いられるプライマーは、変異型ポリヌクレオチド中の検出対象変異領域を増幅できるものであれば、特には限定されず、変異型ポリヌクレオチドの塩基配列に基づいて設計する。プライマー設計は、プライマー設計ソフトウェア(例えば、Primer Express;PE Biosystems)等を利用してできる。また、増幅産物のサイズが大きくなると増幅効率が悪くなるため、センスプライマーとアンチセンスプライマーは、mRNA又はcDNAを対象に増幅したときの増幅産物の大きさが1kb以下になるように設定するのが適切である。
核酸増幅方法を用いる別の公知の遺伝子変異解析方法として、RFLP法(制限酵素断片長多型解析法)、TaqMan法、アレル特異的プライマーPCR(ASP−PCR)法、SSCP法等のPCRに基づく方法も使用可能である。RFLP法は、PCRにより検出対象変異領域を増幅した後、変異に基づき制限酵素認識部位に変化が生じる場合に、その制限酵素処理後の核酸断片の差異を電気泳動により解析する。TaqMan法は、5’末端に蛍光物質(FAM、VIC等)、3’末端にクエンチャー(消光)物質で修飾したプローブ(TaqManプローブ)をPCR反応系に添加する方法である。本方法では、検出対象変異領域に対してTaqManプローブをハイブリダイズさせ、プライマーからのPCR反応を行うと、伸長反応におけるDNAポリメラーゼの5’→3’エキソヌクレアーゼ活性によりTaqManプローブが分解され、それにより蛍光物質がプローブより遊離し、クエンチャーによる抑制が解除されて蛍光物質から蛍光が発し、これにより目的の変異が検出される。ASP−PCR法は、3’末端に検出対象変異部位を有するようにプライマーを設計し、PCRによる核酸増幅の有無を検出する方法である。SSCP法では、検出対象変異領域をPCR増幅した後、一本鎖DNAに分離し、これを非変性ゲルでの電気泳動により分離する。変異によりDNAの高次構造が変化し、これがゲル上の移動度の差異を反映する。
また別の公知の遺伝子変異解析方法として、プローブハイブリダイゼーションに基づく方法も使用可能であり、例えば、DNAチップ法、Invader法、融解曲線解析法等が挙げられる。DNAチップ法では、検出対象変異領域を含むDNAを基板上に配置し、被験者由来の核酸をDNAチップにハイブリダイズさせ、ハイブリダイズの有無を確認する。Invader法では、検出対象変異部位の前後にハイブリダイズする2種の核酸(Invaderオリゴ及びシグナルプローブ)を被験者由来の核酸に反応させた後、形成されるDNAの三重鎖構造を認識するClevase酵素を作用させ、シグナルプローブ中のFlapを遊離させる。次いで、Flapが検出用FRET Probeとハイブリダイズし、これに同酵素が再度作用し、FRET Probeから遊離された蛍光物質の蛍光を検出する。融解曲線解析法は、検出対象変異領域に蛍光標識プローブをハイブリダイズさせた後、徐々に温度を上昇させ、温度上昇に伴う蛍光の変化を測定して融解曲線を作成する。これにより、変異の有無に伴う融解温度の変化を確認する。
また別の公知の遺伝子変異解析方法として、プライマーエクステンションに基づく方法も使用可能であり、例えば、SNaPshot法、Pyrosequencing法が挙げられる。SNaPshot法では、検出対象変異部位に隣接するプライマーと蛍光標識したddNTPを用い、プライマーから一塩基のみを伸長させて取り込まれた塩基を検出する。Pyrosequencing法では、プライマー伸長反応において、1種類ずつdNTPを添加し、ポリメラーゼの反応によりdNTPが取り込まれるとピロリン酸が生じる。生じたピロリン酸をルシフェラーゼによる蛍光反応で検出し、発光ピークパターンから塩基配列を決定する。
当業者であれば、使用する遺伝子変異解析方法に基づいて、使用されるプライマー及びプローブを適宜設計することができ、特に限定されることはないが、例えば、化学合成法によって製造することができる。
本発明の検出方法においては、被験者から得た試料中の変異型タンパク質の存在を検出してもよく、例えば、変異型タンパク質を特異的に認識する抗体を用いて実施できる。このような抗体の作製及び抗体を用いたタンパク質の検出は、当該分野で公知の方法を用いて行うことができる。
本発明の検出方法において、検出対象変異が被験者から得た試料から検出された場合、当該被験者が癌(特には卵巣癌)に罹患している可能性が高いと判定できる。
本発明の方法における検出工程は、被験者における癌(特には卵巣癌)の診断方法にも使用することができる。本発明の診断方法は、当該検出工程に加えて、当該変異が被験者から得た試料から検出された場合に、被験者が癌(特には卵巣癌)に罹患している可能性が高いと判定する工程を含んでもよい。また、当該検出工程は、NTRK2阻害剤による治療の適応対象となる被験者(卵巣癌などの癌患者)を同定する方法にも使用することができる。本発明の同定方法は、当該検出工程に加えて、当該変異が被験者から得た試料から検出された場合に、被験者がNTRK2阻害剤による治療の適応対象であると判定する工程を含んでもよい。
《本発明のプライマーセット、プローブ、検出用キット》
本発明のプライマーセットは、被験者における癌の存在を検出するためのプライマーセットであって、本発明の検出工程における変異型ポリヌクレオチド中の検出対象変異領域を増幅できるように設計したセンスプライマー及びアンチセンスプライマーを含む。アンチセンスプライマーは、変異型ポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下(好ましくは、よりストリンジェントな条件下)でハイブリダイズする核酸分子(好ましくは、少なくとも16塩基の核酸分子)からなり、センスプライマーは、変異型ポリヌクレオチドの相補鎖にストリンジェントな条件(好ましくは、よりストリンジェントな条件下)でハイブリダイズする核酸分子(好ましくは、少なくとも16塩基の核酸分子)からなる。
好ましくは、本発明のプライマーセットは、配列番号1に示される塩基配列からなるNTRK2遺伝子の2071番目の塩基を含む領域、あるいは配列番号3に示される塩基配列からなるNTRK2遺伝子の2023番目の塩基を含む領域を増幅できるように設計したセンスプライマー及びアンチセンスプライマーを含む。
本発明のプライマーセットの具体的な態様としては、以下(1)及び(2)から選択されるプライマーセットが挙げられる:
(1)配列番号1の塩基番号1から2070間の任意の連続する少なくとも16塩基のオリゴヌクレオチドからなるセンスプライマー及び配列番号1の塩基番号2072から2517間の任意の連続する少なくとも16塩基のオリゴヌクレオチドに対して相補的であるオリゴヌクレオチドからなるアンチセンスプライマーのプライマーセット;並びに
(2)配列番号3の塩基番号1から2022間の任意の連続する少なくとも16塩基のオリゴヌクレオチドからなるセンスプライマー及び配列番号3の塩基番号2024から2469間の任意の連続する少なくとも16塩基のオリゴヌクレオチドに対して相補的であるオリゴヌクレオチドからなるアンチセンスプライマーのプライマーセット。
より好ましくは、本発明のプライマーセットは、配列番号9に示される塩基配列からなるNTRK2遺伝子のチロシンキナーゼドメインコード領域の412番目の塩基を含む領域を増幅できるように設計したセンスプライマー及びアンチセンスプライマーを含み、具体的な態様としては、以下に示すプライマーセットが挙げられる:
配列番号9の塩基番号1から411間の任意の連続する少なくとも16塩基のオリゴヌクレオチドからなるセンスプライマー及び配列番号9の塩基番号413から810間の任意の連続する少なくとも16塩基のオリゴヌクレオチドに対して相補的であるオリゴヌクレオチドからなるアンチセンスプライマーのプライマーセット。
本発明のプライマーセットは、本発明の方法において使用することができ、例えば、本発明の方法において、本発明のプライマーセットを用いて、被験者から得た試料中の核酸を増幅させる工程を含んでもよい。
本発明のプローブは、被験者における癌の存在を検出するためのプローブであって、本発明の検出工程における変異型ポリヌクレオチド中の検出対象変異領域にハイブリダイズすることができるように設計したプローブである。本発明のプローブは、変異型ポリヌクレオチド又はその相補鎖中の検出対象変異領域にストリンジェントな条件下(好ましくは、よりストリンジェントな条件下)でハイブリダイズする核酸分子(好ましくは、少なくとも16塩基の核酸分子)からなる。
好ましくは、本発明のプローブは、配列番号1に示される塩基配列からなるNTRK2遺伝子の2071番目のシトシンからチミンへの変異、あるいは配列番号3に示される塩基配列からなるNTRK2遺伝子の2023番目のシトシンからチミンへの変異を含む領域にハイブリダイズするように設計される。
本発明のプローブは、本発明の方法において使用することができ、例えば、本発明の方法において、被験者から得た試料中の核酸に本発明のプローブをハイブリダイズさせる工程を含んでもよい。
前記「ストリンジェントな条件」とは、ハイブリダイゼーションのための条件として、「5×SSPE、5×Denhardt’s液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、200μg/mL鮭精子DNA、42℃オーバーナイト」、洗浄のための条件として、「0.5×SSC、0.1%SDS、42℃」の条件である。「よりストリンジェントな条件」とは、ハイブリダイゼーションのための条件として、「5×SSPE、5×Denhardt’s液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、200μg/mL鮭精子DNA、42℃オーバーナイト」、洗浄のための条件として、「0.2×SSC、0.1%SDS、65℃」の条件である。
前記プライマーセットにおいては、センスプライマーとアンチセンスセンスプライマーの選択位置の間隔が1kb以下であるか、あるいは、センスプライマーとアンチセンスセンスプライマーにより増幅される増幅産物の大きさが1kb以下であることが好ましい。また、本発明のプライマー及びプローブは、通常、15〜40塩基、好ましくは16〜24塩基、更に好ましくは18〜24塩基、特に好ましくは20〜24塩基の鎖長を有する。
本発明のプライマーセット及びプローブは、例えば、化学合成法によって当業者に容易に製造することができ、また、検出方法に応じて、蛍光標識等で標識化してもよい。
本発明の検出用キットは、被験者における癌の存在を検出するためのキットであり、好ましくは、本発明のプライマーセット又は本発明のプローブの少なくとも1つを含む。本発明のプライマーセット、プローブ及び検出用キットは、前述の本発明の方法において使用することもできる。例えば、本発明の検出方法は、本発明のプライマーセットを用いて検出対象変異領域を増幅する工程を含んでもよく、本発明のプローブを検出対象変異領域にハイブリダイズさせる工程を含んでよい。
《本発明のスクリーニング方法》
本発明はまた、前記NTRK2変異体を使用する癌(例えば卵巣癌)治療剤をスクリーニングする方法を提供する。
例えば、本発明のスクリーニング方法は、前記NTRK2変異体(ポリペプチド又はポリヌクレオチド)に試験物質を接触させ、その活性が阻害されるか否かを分析するか、又は前記NTRK2変異体を発現する細胞に試験物質を接触させ、その活性又は発現が阻害されるか否かを分析することによって実施することができる。前記NTRK2変異体の活性(即ち自己リン酸化活性)が阻害されたか否かは、試験物質を接触させたNTRK2変異体のチロシンリン酸化レベルの変化を分析することにより判定でき、これは、当該分野で公知のアッセイ方法を用いて実施可能である。また、NTRK2変異体の発現が阻害されたか否かは、試験物質を接触させたNTRK2変異体を発現する細胞におけるmRNA又は蛋白質の発現を抑制するか否かにより分析することにより判定でき、これは、定量的PCR法やELISA法などの当該分野で公知の方法を用いて実施可能である。あるいは、前記NTRK2変異体を発現する細胞をヌードマウスに接種し、該マウスに試験物質を投与した場合の、腫瘍増殖に対する阻害作用を確認してもよい。
以下、実施例によって本発明を詳述するが、本発明は該実施例によって限定されるものではない。なお、特に断りがない場合は、公知の方法に従って実施可能である。また、市販の試薬やキット等を用いる場合には市販品の指示書に従って実施可能である。
[実施例1] 野生型及び変異体NTRK2のクローニング
RC−NTRK2変異を含むNTRK2変異体のORF全長をタンパク質として発現するため、野生型NTRK2(アイソフォーム3)をクローニングした。配列番号11(制限酵素サイトとして、BamHIを含む)及び配列番号12(制限酵素サイトとして、XhoIを含む)のプライマーにて、全長NTRK2を鋳型として、DNAポリメラーゼ(Phusion High−Fidelity DNA Polymerase;New England Biolabs社)を用いてPCR(98℃15秒、55℃15秒、72℃2分を18サイクル)を行った。本PCR産物をBamHI、XhoIで消化し、核酸断片をBamHI、XhoI消化した発現ベクター(pcDNA3;Invitrogen社)のマルチクローニングサイトに存在するBamHI−XhoIサイトにクローニングした(NTRK2/pcDNA3と命名)。
次に、NTRK2/pcDNA3を鋳型に、配列番号13及び配列番号14のプライマーを用いてMutagenesis法(PrimeSTAR(登録商標)Mutagenesis Basal Kit;タカラバイオ株式会社)にて、RC変異(R675C)を導入した(R675C−NTRK2/pcDNA3と命名)。作製したNTRK2変異体(R675C−NTRK2)の塩基配列及びアミノ酸配列を、配列番号7及び配列番号8にそれぞれ示す。
[実施例2] RC−NTRK2が活性化変異体であることの確認
上記NTRK2/pcDNA3及びR675C−NTRK2/pcDNA3をそれぞれ100ng、トランスフェクション試薬(Lipofectamin2000;Invitrogen社)を用いて、HEK293細胞に導入した。翌日、SDSサンプルバッファーにて溶解し、ウエズタンブロッティングを行った。抗リン酸化NTRK2(Cell Signaling Technologly社)及び抗リン酸化ERK1/2抗体(Cell Signaling Technologly社)にて検出した結果、NTRK2/pcDNA3に比べてR675C−NTRK2/pcDNA3を導入したHEK293細胞では、NTRK2の自己リン酸化の亢進及びERK1/2のリン酸化亢進が認められた。また、下記で樹立したR675C−NTRK2/NIH3T3においても野生型NTRK2と比べ、NTRK2の自己リン酸化の亢進が認められた。以上よりR675C−NTRK2が活性化変異であることが示された。
[実施例3] 野生型及び変異体NTRK2のレトロウイルス発現ベクターの作製及び安定発現細胞株の樹立
NTRK2/pcDNA3をBamHI、XhoIで消化し、核酸断片をBamHI、XhoI消化したレトロウイルス発現ベクター(pMXs−puro;コスモバイオ社)のマルチクローニングサイトに存在するBamHI−XhoIサイトにクローニングした(NTRK2/pMXs−puroと命名)。同様の手法にて、R675C−NTRK2/pcDNA3からレトロウイルス発現ベクター(R675C−NTRK2/pMXs−puroと命名)を構築した。
上記NTRK2/pMXs−puro及びR675C−NTRK2/pMXs−puroをそれぞれ9μg、トランスフェクション試薬(FuGENE(登録商標)HD;Roche社)を用いて、platinum E細胞パッケージング細胞(ライフテクノロジーズ社)に導入した。導入3日後の培養上清を、レトロウイルスとして回収し、ポリブレン(polybrene;Sigma社)を6μg/mlの濃度で添加した後、マウスNIH3T3細胞に添加した。2日後にNIH3T3細胞の培養上清をDMEM培地(インビトロジェン社)に10%牛血清(インビトロジェン社)及びPuromycin(ナカライテスク社)1.5μg/mlを添加したものに交換し、さらに1週間培養を続け、野生型NTRK2及びR675C−NTRK2をそれぞれ安定発現するNIH3T3細胞(それぞれ、NTRK2/NIH3T3及びR675C−NTRK2/NIH3T3と命名)を取得した。
[実施例4] RC−NTRK2の足場非依存的増殖亢進作用の検討
96ウェルスフェロイドプレート(スミロンセルタイトスフェロイド96U;住友ベークライト)に、親株NIH3T3、NTRK2/NIH3T3及びR675C−NTRK2/NIH3T3をそれぞれ1ウェル当り1×103個となるように10%牛胎児血清を含む培地で播種した。5%CO2存在下、37℃にて培養後、翌日(Day1)、3日後(Day3)、7日後(Day7)の細胞数を細胞数測定試薬(CellTiter−GloTM Luminescent Cell Viability Assay;Promega社)をマニュアルの方法に従って測定した。検出には発光測定装置(Microplate luminometer;Dynatech labolatories社)を用いた。足場非依存性増殖アッセイを行った結果、Day3及びDay7においてR675C−NTRK2/NIH3T3は親株NIH3T3及びNTRK2/NIH3T3細胞に比べて足場非依存性増殖能の亢進が確認された。以上から、R675C−NTRK2は足場非依存的細胞増殖を亢進させる作用を有することが明らかとなり、R675C−NTRK2は癌の原因遺伝子であることが示された。
本発明の方法は、被験者における癌(特には卵巣癌)の検出に有用である。本発明のプライマーセット、プローブ及び検出用キットは、本発明の方法に用いることができる。

Claims (11)

  1. 被験者における癌の存在を検出する方法であって、被験者から得た試料中の、神経栄養因子受容体2(NTRK2)チロシンキナーゼドメインの138番目のアルギニンからシステインへの変異の存在を検出する工程を包含する、方法。
  2. 前記変異がNTRK2アイソフォーム3の675番目のアルギニンからシステインへの変異である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記変異が配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるNTRK2の675番目のアルギニンからシステインへの変異である、請求項1に記載の方法。
  4. NTRK2アイソフォーム3遺伝子の2023番目のシトシンからチミンへの変異の存在を検出する工程を包含する、請求項1に記載の方法。
  5. 配列番号3に示される塩基配列からなるNTRK2遺伝子の2023番目のシトシンからチミンへの変異の存在を検出する工程を包含する、請求項1に記載の方法。
  6. 配列番号3に示される塩基配列からなるNTRK2遺伝子の2023番目の塩基を含む領域を増幅できるように設計したプライマーセットを用いて、前記被験者から得た試料中の核酸を増幅させる工程を包含する、請求項1に記載の方法。
  7. 配列番号3に示される塩基配列からなるNTRK2遺伝子の2023番目のシトシンからチミンへの変異を含む領域にストリンジェント条件下でハイブリダイズすることができるように設計したプローブを、前記被験者から得た試料中の核酸にハイブリダイズさせる工程を包含する、請求項1に記載の方法。
  8. 前記被験者から試料を得る工程を包含する、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
  9. 前記癌が卵巣癌である、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
  10. 被験者における癌を診断する方法であって、請求項1〜7のいずれかに記載の検出工程を包含する、方法。
  11. NTRK2阻害剤による治療の適応対象となる被験者を同定する方法であって、該被験者は癌患者であり、請求項1〜7のいずれかに記載の検出工程を包含する、方法。
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