本発明による石炭火力プラントの制御装置は、計測信号データベースと、石炭情報管理データベースと、ミル特性情報データベースと、ミル特性評価部と、ミル操作計算部と、計算結果データベースと、制御ロジックデータベースと、制御信号生成部とを備え、石炭火力プラントからプラントの状態量である計測信号を取得し、この計測信号を用いて、石炭火力プラントを制御する制御信号を生成する。この際、ミル特性評価部及びミル操作計算部は、ミルの最適な操作条件をリアルタイムで算出し、制御信号生成部は、これを基に制御信号を生成する。
計測信号データベースは、計測信号に含まれており制御信号を生成する際に用いる計測データを保存する。石炭情報管理データベースは、燃料である石炭に関する情報(石炭情報)を保存する。ミル特性情報データベースは、運用炭性状(水分、燃料比、粉砕性指標であるHGIのそれぞれの推定値)及びプラントのミルの特性情報(ミルの基本性能情報であるC/A値、ミル容量、微粒化指標、及びミル動力と、ミルの運転効率)を保存する。ミル特性評価部は、計測信号データベース、石炭情報管理データベース、及びミル特性情報データベースに保存された情報を用いて、ミルの特性(ミルの基本性能情報と運転効率)を計算する。ミル操作計算部は、ミル特性評価部が計算したミルの特性を用いて、ミルの操作条件を計算する。計算結果データベースは、ミル操作計算部が計算したミルの操作条件を保存する。制御ロジックデータベースは、プラントに対する制御ロジックを保存する。この制御ロジックには、ミル操作計算部が計算したミルの操作条件の値を用いてミルを制御するためのロジックが含まれる。制御信号生成部は、計算結果データベース、及び制御ロジックデータベースに保存された情報を用いて、プラントの制御信号を生成する。
このような構成により、本発明による石炭火力プラントの制御装置は、ミルの計測情報を基にリアルタイムに推定する石炭情報(石炭の性状)及びミルの運転状態と、ボイラ内で微粉炭を燃焼させるバーナの配置及び燃焼バランスを考慮することにより、ミルの運転効率のみならずボイラ火炉での燃焼状態をも最適化する制御が可能である。この結果、石炭の性状やプラント運用条件が変動する場合でも、供給される石炭の性状やプラント運用条件に合わせて、プラント全体の運転効率を常に最大にすることができる。
計測信号は、ミルの分級機回転数、ミルローラ加圧油圧力、ミル出口空気温度(以下、「ミル出口温度」と称する)、ミルの入口と出口の差圧(以下、「ミル差圧」と称する)、ミルローラリフト量、ミルへ供給される給炭量(以下、「給炭機流量」と称する)、ボイラに供給される1次空気流量及び2次空気流量、ボイラの給水流量、ボイラの給水温度、ボイラの給水圧力、ボイラの蒸気温度、ボイラの蒸気圧力、ボイラの蒸気流量、ボイラの排ガス温度、ボイラの排ガスに含まれる環境負荷物質の濃度(例えば、窒素酸化物(NOx)の濃度や一酸化炭素の濃度など)、及びボイラの排ガス再循環流量のうち、少なくとも1つを表す信号を含む。
制御信号は、ミルの分級機回転数、ミルローラ加圧油圧力、ミルへの給炭量、ボイラの空気流量、ボイラの空気ダンパ開度、ボイラの排ガス再循環流量、ボイラの給水流量、及びタービンガバナ開度のうち、少なくとも1つを決定する信号を含む。
ミル特性評価部は、ミル基本性能計算機能とミル効率計算機能を備える。ミル基本性能計算機能は、計測信号データベース、石炭情報管理データベース、及びミル特性情報データベースに保存された情報を入力し、ミル基本性能情報を計算する。ミル基本性能情報には、ミルがボイラへ供給する微粉炭供給量であるミル容量、このミル容量を1次空気流量で除したC/A値、微粉炭の微粒化度合いを表す微粒化指標、及びミルで消費される動力であるミル動力が含まれる。ミル効率計算機能は、ミル基本性能情報を基にミル毎の運転効率を計算する。
ミル基本性能計算機能は、計測信号に含まれるミル出口温度と後述するデフォルト水分とを入力し、ミル出口温度と予め定めた基準設定温度との差分を求める。この差分が負値を取る場合は水分補正量を正値とし、この差分が正値を取る場合は水分補正量を負値とする演算を実施し、水分補正量をデフォルト水分へ加算する。このようにして、ミルが現在処理している石炭の水分を推定する。
更に、ミル基本性能計算機能は、C/A値の前回値(前回の計算結果でありミル特性情報データベースに保存されている値)、ミル容量の前回値(前回の計算結果でありミル特性情報データベースに保存されている値)、微粒化指標の前回値(前回の計算結果でありミル特性情報データベースに保存されている値)、石炭情報に含まれる後述するデフォルト燃料比、及び燃料比推定値の前回値(前回の計算結果であり石炭情報管理データベースに保存されている値)に対して、過去の実績データに基づく統計的手法を用いて、標準NOx濃度を計算する。そして、この標準NOx濃度と計測情報に含まれるNOx濃度との差分を求める。この差分が負値を取る場合は燃料比補正量を負値とし、この差分が正値を取る場合は燃料比補正量を正値とする演算を実施し、燃料比補正量を燃料比推定値の前回値へ加算する。このようにして、ミルが現在処理している石炭の燃料比を推定する。
更に、ミル基本性能計算機能は、計測信号に含まれる1次空気流量、給炭機流量、及びミルローラ加圧油圧力と、予め定めたこれらの量の基準量との差分を、それぞれの量について求める。これらの差分及び石炭の砕け易さを示す値であるHGI(Hardgrove Grindability Index:粉砕性指標)の推定値の前回値(前回の計算結果でありミル特性情報データベースに保存されている値)に対して、過去の実績データに基づく統計的手法を用いて、ミルローラリフト量補正量を計算する。そして、このミルローラリフト量補正量を計測信号に含まれるミルローラリフト量へ加算することで、標準運転状態におけるミルローラリフト量(基準ミルローラリフト量)を推定する。
更に、ミル基本性能計算機能は、計測信号に含まれる1次空気流量、給炭機流量、及びミル分級機回転数と、予め定めたこれらの量の基準量との差分を、それぞれの量について求める。これらの差分及びHGI推定値の前回値に対して、過去の実績データに基づく統計的手法を用いて、ミル差圧補正量を計算する。そして、このミル差圧補正量を計測信号に含まれるミル差圧へ加算することで、標準運転状態におけるミル差圧(基準ミル差圧)を推定する。
更に、ミル基本性能計算機能は、推定した石炭の水分、石炭の燃料比、基準ミルローラリフト量、及び基準ミル差圧に対して、過去の実績データに基づく統計的手法を用いて、ミルが現在処理している石炭のHGIを推定する。
更に、ミル基本性能計算機能は、推定したHGI、及び計測信号に含まれるミルローラ加圧油圧力とミル分級機回転数に対して、過去の実績データに基づく統計的手法を用いて、出炭率を推定する。出炭率は、ミルへの給炭量に対する、微粉炭供給量の比率を示す値である。
更に、ミル基本性能計算機能は、推定したHGI、及び計測信号に含まれるミルローラ加圧油圧力とミル分級機回転数に対して、過去の実績データに基づく統計的手法を用いて、ミルの微粒化指標を推定する。
ミル効率計算機能は、ミル基本性能計算機能が計算したC/A値、微粒化指標、及びミル容量に対して、過去の実績データに基づく統計的手法を用いて、ミルで生成した微粉炭の燃焼率を推定する。
更に、ミル効率計算機能は、計算した燃焼効率、及びミル基本性能計算機能が計算したミル容量及びミル動力から、ミル運転効率を計算する。ミル運転効率は、燃焼効率からミル動力による損失を差引いた値である。
ミル操作計算部は、ミルを複数のグループへ分類する。そして、分類したグループに対し、任意の1つのグループjに属するミルの運転効率から求めた指標と、このグループjと他の全てのグループk(≠j)との運転効率のバランスを考慮した指標との総和により評価関数を計算し、この評価関数の値を最大化するように、このグループjに属するミルの操作条件を、最適探索手法を用いて探索する。ミルを複数のグループへ分類する際には、ミルから供給される微粉炭を燃焼させるバーナの配置及び運用情報に基づいて、ミル相互間の運転効率のバランスを考慮することができる。
本制御装置は、入出力部を備え、入出力部を介して画像表示装置と接続することができる。入出力部は、画像表示装置と情報を送受信する。例えば、入出力部は、計測信号データベース、石炭情報管理データベース、ミル特性情報データベース、後述するミル操作計算情報データベース、及び計算結果データベースに保存された情報を画像表示装置に表示するための機能と、ミル特性評価部、及びミル操作計算部が計算した結果を画像表示装置に表示するための機能と、データベースに保存された情報の確認時に必要な実行条件を、画像表示装置を介して設定するための機能を備える。
上記の構成、機能、処理部、及び処理手段等は、これらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等により、ハードウェアで実現してもよい。また、上記の構成、機能、処理部、及び処理手段等は、これらの一部又は全部を、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し実行することにより、ソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル、測定情報、及び算出情報等の情報は、メモリ、ハードディスク、及びSSD(Solid State Drive)等の記録装置、又は、ICカード、SDカード、及びDVD等の記録媒体に記録することができる。従って、各処理と各構成は、処理部、処理ユニット、及びプログラムモジュールなどとして、各機能を実現可能である。
本発明の実施例による石炭火力プラントの制御装置について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施例による石炭火力プラントの制御装置の構成を示すブロック図である。図1に示すように、制御装置200は、石炭火力プラント100を制御する。
石炭火力プラント100の制御装置200は、入出力部800を備え、入出力部800を介して保守ツール910と接続されている。石炭火力プラント100の運転員は、保守ツール910に接続された外部入力装置900と画像表示装置920(例えばCRTディスプレイ)とを介して、制御装置200を制御することができる。
制御装置200は、演算装置として、ミル特性評価部300、ミル操作計算部400、及び制御信号生成部500を備える。ミル特性評価部300は、石炭火力プラント100に設置されるミルの台数に応じて、個別のミル特性評価部を有する。図1では、ミルA〜ミルXのそれぞれに対して、個別のミル特性評価部としてAミル特性評価部301a〜Xミル特性評価部301xを有する場合を示している。ミル操作計算部400は、グループに分類されたミルの操作条件をグループ毎に計算するグループ操作計算部を有する。図1では、グループ操作計算部として、グループ1〜グループNに対して、グループ1操作計算部401−1〜グループN操作計算部401−nをそれぞれ有する。ミルは、プラントの構成及び運転特性を考慮して、任意に組合せたグループに分類することができる。
制御装置200は、データベース(DB)として、計測信号データベース210、石炭情報管理データベース220、ミル特性情報データベース230、ミル操作計算情報データベース240、計算結果データベース250、及び制御ロジックデータベース260を備える。
また、制御装置200は、外部(石炭火力プラント100)とのインターフェースとして、外部入力インターフェース201、及び外部出力インターフェース202を備える。
制御装置200は、外部入力インターフェース201を介して、石炭火力プラント100の各種状態量を計測した計測信号1を取得し、計測信号2として計測信号データベース210に保存する。計測信号データベース210は、計測信号2に含まれ、制御信号14を生成する際に用いる計測データも保存する。
また、制御装置200は、制御信号生成部500が生成した制御信号14を、外部出力インターフェース202を介して、制御信号15として石炭火力プラント100へ出力する。制御信号15は、石炭火力プラント100を制御する信号であり、例えば、供給する石炭流量及び空気流量等を制御する信号である。
ミル特性評価部300は、計測信号データベース210に保存された計測データ4、石炭情報管理データベース220に保存された石炭情報5、ミル特性情報データベース230に保存されたミル特性情報6、及びミル操作計算部400が出力するミル操作条件9を入力し、出炭量や微粒化度、消費動力などの各ミルの特性を基に、各ミルに対してミル特性情報7及びミル運転効率情報8を計算する。ミル特性情報7は、ミル特性情報データベース230に保存される。ミル運転効率情報8は、ミル操作計算部400へ入力される。石炭情報管理データベース220に保存されている石炭情報5は、石炭の銘柄、組成及び発熱量に関する情報を含む。石炭情報5は、予め決定した燃料運用計画に従って、プラント100の運転員によって登録される。
ミル操作計算部400は、ミル特性評価部300から入力したミル運転効率情報8、及びミル操作計算情報データベース240に保存されたミル操作計算情報データ10を用いて、ミルのグループ毎にミル操作条件9、11を最適探索手法を用いて計算する。ミル操作計算情報データ10は、判定フラグθjkと、ミルグループの操作条件を探索する探索アルゴリズムを動作させるのに必要なパラメータを含む。判定フラグθjkと探索アルゴリズムについては、ミル操作計算部400の機能の詳細な説明と共に後述する。計算したミル操作条件9、11は、ミル特性評価部300へ出力すると共に、計算結果データベース250に保存する。
制御信号生成部500は、計測信号データベース210から計測データ3を、計算結果データベース250から計算結果データ12を、制御ロジックデータベース260から制御ロジックデータ13をそれぞれ入力し、プラント100の運転状態を所望の状態に制御するための制御信号14を生成する。
制御ロジックデータベース260は、制御ロジックデータ13を算出する制御回路を保存する。制御ロジックデータ13を算出する制御回路には、従来技術として公知のPI(比例・積分)制御を用いることができる。また、計算結果データベース250が保存する計算結果データ12には、制御ロジックに対する、ミル操作条件の補正値に関する情報が含まれる。
このように、ミル特性評価部300が計算したミル運転効率情報8を基に、ミル操作計算部400は、プラント100の構成や運転特性を基にミルを分類したグループ単位でミル操作条件11を計算する。そして、この計算結果を基に、制御信号生成部500は、プラント100の制御信号14を生成する。従って、制御装置200は、リアルタイムに推定したミル特性に応じて適切なミル制御を実行することが可能であり、プラント効率の向上及び燃料消費量の低減を達成できる。この結果、石炭の性状やプラント運用条件が変動する場合でも、プラント全体の運転効率を最大にすることができる。
なお、ミル特性評価部300、及びミル操作計算部400の機能については、後で詳細を説明する。
プラント100の運転員は、キーボード901とマウス902を備える外部入力装置900、制御装置200とデータを送受信できる保守ツール910、及び画像表示装置920を用いることにより、制御装置200が備える種々のデータベースに保存された情報にアクセスすることができる。制御装置200の入出力部800は、保守ツール910と入出力データ情報90を送受信する。
保守ツール910は、外部入力インターフェース911、データ送受信処理部912、及び外部出力インターフェース913を備え、データ送受信処理部912を介して制御装置200とデータを送受信できる。
外部入力装置900で生成した保守ツール入力信号91は、外部入力インターフェース911を介して保守ツール910に取り込まれる。保守ツール910のデータ送受信処理部912は、保守ツール入力信号92の情報に従って、制御装置200から入出力データ情報90を取得する。
また、データ送受信処理部912は、保守ツール入力信号92の情報に従って、制御装置200のプラント効率計算部300、ミル操作計算部400、及び制御信号生成部500で得られた演算結果の確認に必要な入出力データ情報90を出力する。
データ送受信処理部912は、入出力データ情報90を処理した結果得られる保守ツール出力信号93を、外部出力インターフェース913に送信する。外部出力インターフェース913は、保守ツール出力信号94を画像表示装置920に送信し、画像表示装置920は、送信された保守ツール出力信号94に従って画像を表示する。
なお、図1に示した制御装置200では、計測信号データベース210、石炭情報管理データベース220、ミル特性情報データベース230、ミル操作計算情報データベース240、計算結果データベース250、及び制御ロジックデータベース260は、制御装置200の内部に配置されているが、これらの全て又は一部を制御装置200の外部に配置することもできる。
図2及び図3を用いて、本発明の実施例による制御装置200が適用される石炭火力プラント100の構成を説明する。まず、石炭火力プラント100の発電の仕組みについて簡単に説明する。
図2は、本実施例による制御装置200が適用される石炭火力プラント100の概略を示す構成図である。石炭火力プラント100を構成するボイラ101は、複数のバーナ102を備える。バーナ102は、ミル134で石炭を細かく粉砕した燃料である微粉炭と、微粉炭搬送用の1次空気と、燃焼調整用の2次空気とをボイラ101に供給する。バーナ102により供給された微粉炭は、ボイラ101の内部で燃焼する。
複数のバーナ102は、図2に示すように、ボイラ101の上下方向に複数段(図2では2段)に分かれて1列に並べられ、ボイラ101の前面(以下、「缶前」と称する)と背面(以下、「缶後」と称する)に配置されている。このようなバーナ102の配置により、ボイラ101の内部では、缶前と缶後から微粉炭を燃焼させる。缶前と缶後、及び上下方向のバーナ102の燃焼バランスを改善することにより、微粉炭の燃焼効率を向上させ、微粉炭の単位重さ当たりに対してより多くの熱量を発生させることができる。
なお、微粉炭と1次空気は配管139から、2次空気は配管141から、それぞれバーナ102に導かれる。1次空気は、ファン120から配管130に導かれ、途中でボイラ101の下流側に設置されたエアーヒーター104を通過する配管132と、エアーヒーター104を通過せずにバイパスする配管131とに分岐し、エアーヒーター104の下流側に配設した配管133で再び合流し、バーナ102の上流側に設置されたミル134に導かれる。エアーヒーター104を通過する1次空気は、ボイラ101を流下する燃焼ガスと熱交換することにより加熱される。この加熱された1次空気と、エアーヒーター104をバイパスした1次空気は、ミル134が粉砕した微分炭をバーナ102に搬送する。
ミル134は、缶前と缶後のバーナ102の各段に対応するように配置され(図2では4台)、各段を構成するバーナ102へ微粉炭と1次空気を供給する。すなわち、発電出力低下時など石炭供給量を低下させる場合には、ミル134を停止して段単位でバーナ102を休止させることができる。ミル134では、ボイラ101の燃焼性を考慮し、使用する石炭の性状に応じて望ましい粒度の微粉炭が得られるよう、ミル134の分級機回転数を始めとするミル操作量を調整する。また、石炭バンカ136に貯蔵された石炭は、石炭コンベア137を経由して給炭機135へ導かれ、給炭機135によって供給量が調整される。その後、石炭は、石炭コンベア138を介してミル134に供給される。ミル134の構造及び特性の詳細については、後述する。
また、ボイラ101には、2段燃焼用の空気をボイラ101に投入するアフタエアポート103が設けられている。2段燃焼用の空気は、配管142からアフタエアポート103に導かれる。ファン121を用いて配管140へ送出された空気は、エアーヒーター104で燃焼ガスとの熱交換により加熱された後に、2次空気用の配管141とアフタエアポート用の配管142とに分岐して、それぞれボイラ101のバーナ102とアフタエアポート103とに導かれる。バーナ102とアフタエアポート103へ供給される空気の流量は、それぞれの配管141、142に設置された空気ダンパ(図示せず)の操作によって調整できる。
ボイラ101の内部で微粉炭を燃焼することによって発生した高温の燃焼ガスは、ボイラ101の内部の経路に沿って下流側に流下して、ボイラ101の内部に配置された熱交換器106で給水と熱交換して蒸気を発生させる。この後、燃焼ガスは、排ガスとなってボイラ101の下流側に設置されたエアーヒーター104に流入し、エアーヒーター104で熱交換してボイラ101に供給される空気を加熱する。そして、エアーヒーター104を通過した排ガスは、図示していない排ガス処理を施した後に、煙突から大気に放出される。
ボイラ101の熱交換器106を循環する給水は、給水ポンプ105を介して熱交換器106に供給され、熱交換器106においてボイラ101を流下する燃焼ガスによって加熱され、高温高圧の蒸気となる。なお、本実施例では熱交換器の数を1つとしているが、熱交換器を複数配置してもよい。
熱交換器106で発生した高温高圧の蒸気は、タービンガバナ107を介して蒸気タービン108に導かれ、蒸気の持つエネルギーによって蒸気タービン108を駆動する。蒸気タービン108が駆動されると、発電機109は発電する。
石炭火力プラント100には、石炭火力プラント100の運転状態を示す状態量を検出するための様々な計測器が配置されている。
石炭火力プラント100に配置された計測器で取得した石炭火力プラント100の計測信号1は、図1に示すように、制御装置200の外部入力インターフェース201に送信される。
石炭火力プラント100に配置される計測器としては、例えば図2に示すように、熱交換器106から蒸気タービン108に供給される高温高圧の蒸気の温度を計測する温度計測器151、蒸気の圧力を計測する圧力計測器152、発電機109が発電する電力量を計測する発電出力計測器153がある。
蒸気タービン108の復水器(図示せず)によって蒸気を冷却して生じた給水は、給水ポンプ105によってボイラ101の熱交換器106に供給される。この給水の流量は、流量計測器150によって計測される。
ボイラ101から排出する燃焼ガスである排ガス中に含まれている窒素酸化物(NOx)などの濃度に関する状態量の計測信号は、ボイラ101の下流側に設けた濃度計測器154によって計測される。
図3は、石炭火力プラント100が備えるミルの構成を示す図である。図3には、一例として、回転式分級機を備えるミル134を示している。ミル134のケーシング50内の下部には、駆動装置51により水平回転するテーブル52が配置される。テーブル52の上方には、流体圧シリンダ55により水平軸56を介して上下方向に回転し得るローラ57が配置されている。流体圧シリンダ55によってローラ57を水平回転しているテーブル52に押し付けることにより、ローラ57とテーブル52が協働し、テーブル52上に供給された石炭を粉砕することができる。
ケーシング50内には、テーブル52を包囲するよう環状体53が設置される。環状体53は、テーブル52よりも下方の位置からケーシング50内へ供給された1次空気54を、ケーシング50の上部へ吹き込み得る構造となっている。ケーシング50の上部には、微粉炭をボイラのバーナ102(図2参照)へ供給するための微粉炭供給管60が接続されている。
ケーシング50の上部には、ケーシング50の外部から内部へ上下方向に挿入される形で回転シュート58が設置されている。ケーシング50の外部の上方に設置した縦型の分級機モータ61は、出力軸がベルトを介して回転シュート58と接続される。回転シュート58の外周には、ケーシング50の内部の上部に位置するように、回転式分級機62が装着される。回転式分級機62は、円周方向に複数の回転翼を備える。分級機回転モータ61の動力により、回転シュート58及び回転式分級機62は回転する。
ケーシング50内には、回転式分級機62の下方に位置するよう、逆円錐状のホッパ63が設置されている。ホッパ63は、1次空気54により上昇する石炭が通過できるように、傾斜面に沿ってスリットを有する。回転シュート58の上方には、給炭機モータ74の駆動によって回転シュート58に石炭を供給する給炭機135が、回転シュート58に接続されて設置されている。
図3に示すミル134では、石炭バンカ136(図2参照)から給炭機135へ供給された石炭は、回転シュート58を介してケーシング50内に投入され、テーブル52上へ落下し、駆動装置51により駆動されたテーブル52とローラ57の協働作業により粉砕される。粉砕された石炭59は、1次空気54に搬送されて上昇し、ホッパ63上のスリットを通過してホッパ63の内部へ入り、分級機モータ61の駆動により回転シュート58と共に回転する回転式分級機62によって粗粒が分級される。分級された石炭59のうち微粉炭は、回転式分級機62を通過して微粉炭供給管60へ送出されてボイラ101のバーナ102(共に図2を参照)へ供給される。一方、分級された石炭59のうち粗粒64は、ホッパ63を滑落して、テーブル52上へ戻される。
ミル134に供給される1次空気54は、通常200〜240℃前後の温度を有して石炭を乾燥させる役割を有し、ミル出口温度(微粉炭供給管60の空気温度)を設定温度に保持するように、温度が調節される。
ミル134には、1次空気54の温度を計測する計測機器70を始めとする種々の計測機器が設置されており、これらの計測機器によって得られたミル134の計測情報は、制御装置200へ入力される。このような計測機器の例としては、図3に示す1次空気54の流量を計測する流量計65、回転式分級機62の回転数を計測する回転数計測器71、給炭機135からミル134へ供給される給炭量を計測する給炭量計72、ケーシング50内の1次空気供給部分の空気圧を計測する圧力計67、微粉炭供給管60における1次空気圧を計測する圧力計66、流体圧シリンダ55に充填されている加圧油圧力を計測する圧力計68、及びミルローラ57が石炭を粉砕する際に生じるローラ軸リフト量を計測する計測器69を挙げることができる。これらの計測機器の設置場所や計測機器の種類は、制御装置200が備える制御ロジック及び生成する制御信号の種類に応じて、変更してもよい。圧力計66、67が計測した1次空気供給部分と微粉炭供給管60の空気圧に関しては、これらの差圧が計測信号として制御装置200へ入力される。
制御装置200は、入力したミル134の計測情報を基に制御信号を決定し、これらを各ミルのアクチュエータ(操作端)へ出力する機能を有する。制御信号の一例として、図3には、給炭量指令73、分級機回転数指令75、1次空気流量を決定する1次空気流量指令76、及びミルローラ加圧油圧力指令77を示す。
給炭量指令73により、給炭機モータ74の回転数を変更し、給炭機135から供給される給炭量を調整することができる。回転数指令75により、回転式分級機62の回転数を調整し、回転式分級機62を通過する微粉炭の粒度及び微粉炭供給量(ミル容量)を調整することができる。一般に、分級機回転数を増加させると微粉炭粒度は下がり、ミル容量も下がる。1次空気流量指令76により、ミル134へ供給される1次空気54の流量を調整することができる。ミルローラ加圧油圧力指令77により、流体圧シリンダ55に充填されている加圧油の圧力を変更することで、テーブル52とローラ57の接触圧力を調整し、石炭性状に応じた粉砕方法を選択することができる。
即ち、本実施例による、石炭火力プラント100の制御装置200において、外部入力インターフェース201を介して入力されるプラントの計測信号1(図1参照)には、様々な計測器によって計測した石炭火力プラント100の各種の状態量のうち、少なくとも1つを表す信号が含まれる。このような状態量としては、ミル134の様々な計測情報、ボイラ101に供給される1次空気及び2次空気の流量、ボイラ101の熱交換器106に供給される給水の流量と温度と圧力、ボイラ101の熱交換器106で発生して蒸気タービン108に供給される蒸気の温度と圧力と流量、ボイラ101から排出される排ガスの温度、ボイラ101から排出される排ガスに含まれる環境負荷物質の濃度(例えば、窒素酸化物(NOx)の濃度や一酸化炭素の濃度など)、及びボイラ101から排出される排ガスのうちボイラ101に再循環させる排ガスの流量(排ガス再循環流量)等を挙げることができる。ミル134の計測情報としては、ミルの分級機回転数、ミルローラ加圧油圧力、ミル出口温度、ミルの入口と出口の差圧、ミルローラリフト量、ミルへ供給される給炭量等を挙げることができる。
また、図2及び図3に示した石炭火力プラント100を制御するために、制御装置200が備える制御信号生成部500(図1参照)によって生成され、外部出力インターフェース202を介して石炭火力プラント100に出力される制御信号14(図1参照)としては、ミル134の各操作端における操作量、ボイラ101に配管133、141、142を介して供給する空気の流量、ボイラ101に空気を供給する配管133、141、142に設置され空気の流量を調節する空気ダンパの開度、排ガス再循環流量、給水ポンプ105を介して熱交換器106に供給する給水の流量、及びタービン108に導かれる蒸気の流量を決定するタービンガバナ107の開度等のうち、少なくとも1つを表す信号が含まれる。ミル134の各操作端における操作量としては、ミルの分級機回転数、ミルローラ加圧油圧力、及びミルへの給炭量等を挙げることができる。
図4は、図1に示した本実施例による石炭火力プラントの制御装置200における制御の手順を示すフローチャートである。図4に示すように、制御装置200は、ステップ1000、1100、1200、1300、1400、及び1500を組合せて実行する。以下では、それぞれのステップについて説明する。
ステップ1000では、制御装置200の動作開始後、計測信号データを取得する。外部入力インターフェース201を介して石炭火力プラント100から計測信号1を取得し、計測信号2として計測信号データベース210に保存する。
ステップ1100では、各ミルについてミル特性を計算する。ミル特性評価部300は、計測信号データベース210に保存された計測データ4、石炭情報管理データベース220に保存された石炭情報5、及びミル特性情報データベース230に保存されたミル特性情報6を用いて、ミル操作計算部400が出力するミル操作条件9に対して、各ミルのミル特性情報7及びミル運転効率情報8を計算する。計算した情報のうち、ミル特性情報7はミル特性情報データベース230に保存され、ミル運転効率情報8はミル操作計算部400へ送信される。なお、ミル特性評価部300の詳細な機能及び動作については、後述する。
ステップ1200では、ミル操作条件を計算する。ミル操作計算部400は、ミル特性評価部300から送信されたミル運転効率情報8、及びミル操作計算情報データベース240に保存されたミル操作計算情報データ10を用いて、各ミルの操作条件を最適探索手法で求めて決定する。その際に、各ミルをプラントの構成や運転特性を考慮して複数のグループに分類し、分類したグループ間の相互作用によってプラント全体の運転効率化を目的とした最適なミル操作条件を決定する。決定したミル操作条件11は、計算結果データベース250に保存する。なお、ミル操作計算部400の詳細な機能及び動作については、後述する。
ステップ1300では、制御信号を生成する。制御信号生成部500は、計測信号データベース210に保存された計測データ3、計算結果データベース250に保存された計算結果データ12、及び制御ロジックデータベース260に保存された制御ロジックデータ13を用いて計算し、制御信号14を生成する。
ステップ1400では、プラントを制御する。ステップ1300にて生成した制御信号14を、外部出力インターフェース202を介して制御信号15として石炭火力プラント100へ出力し、プラント100を所望の運転状態へ制御する。
ステップ1500は、一連の処理動作の終了を判定する分岐である。外部入力装置900を介して制御装置200の動作を終了させる信号が入力された場合は、処理を終了させるステップに進む。制御装置200の動作を終了させない場合は、ステップ1000に戻る。
以上の動作によって、本実施例による制御装置200は、計測信号データの取得、ミル特性の計算、ミル操作条件の計算、制御信号の計算と生成、及びプラントの制御の実施に至る一連の処理を、自動的に獲得し実行できる。
次に、制御装置200のミル特性評価部300の動作について、図5〜図13を用いて詳細に説明する。
図5は、ミル特性評価部300の機能を示す構成図である。図1に示したようにミル特性評価部300は複数のミル特性評価部(Aミル特性評価部301a〜Xミル特性評価部301x)を有しているが、図5では、Aミル特性評価部301aの構成のみを示し、以降の説明では、Aミル特性評価部301aの機能と動作について説明する。その他のミル特性評価部の機能と動作は、Aミル特性評価部301aと同一である。
図5に示すように、Aミル特性評価部301aは、Aミル基本性能計算機能302a、及びAミル効率計算機能303aを備える。
Aミル基本性能計算機能302aは、計測信号データベース210に保存された計測データ4、石炭情報管理データベース220に保存された石炭情報5、ミル特性情報データベース230に保存されたミル特性情報6、及びミル操作計算部400より入力されるAミル操作条件9aを用いて、Aミル基本性能情報304aを計算し、Aミル効率計算機能303aへ出力する。
Aミル効率計算機能303aは、Aミル基本性能情報304a、石炭情報5、及びミル特性情報6を用いて、Aミル運転効率8aを計算し、ミル操作計算部400へ送信する。
Aミル基本性能計算機能302aで求めたAミル基本性能情報304aと、Aミル効率計算機能303aで求めたAミル運転効率8aは、ミル特性情報7aとして、ミル特性情報データベース230に保存される。
図6は、図5に示したAミル基本性能計算機能302aの機能を示す構成図である。Aミル基本性能計算機能302aは、機能モジュールF1(x)310、F2(x)311、F3(x)312、F4(x)313、F5(x)314、F6(x)315、F7(x)317、F8(x)318、F9(x)319、及び演算モジュール316を備える。ここで、xは入力項目(データ情報)を示す。入力項目には、1次空気流量320、給炭機流量321、ミル出口温度322、デフォルト水分323、NOx濃度324、デフォルト燃料比325、ミルローラリフト量326、ミルローラ加圧油圧力327、デフォルトHGI(Hardgrove Grindability Index:粉砕性指標)328、ミル差圧329、及びミル分級機回転数330が含まれる。
入力項目のうち、図5に示した計測データ4に該当するのは、ミル出口温度322、NOx濃度324、ミルローラリフト量326、及びミル差圧329である。図5に示した石炭情報5に該当するのは、デフォルト水分323、デフォルト燃料比325、及びデフォルトHGI328である。図5に示したミル操作条件9aに該当するのは、1次空気流量320、給炭機流量321、ミルローラ加圧油圧力327、及びミル分級機回転数330である。出力であるAミル基本性能情報304aを構成する項目には、C/A値(微粉炭供給量であるミル容量を1次空気流量で除した値)337、ミル容量338、生成された微粉炭の粒度を示す微粒化指標339、及びミルの分級機モータ61で消費される動力を表すミル動力340が含まれる。
なお、石炭情報5は、運用計画に基づいて、事前の石炭組成の分析結果を参考にして石炭情報管理データベース220に登録された情報である。このため、石炭情報5は、実際に使用されている石炭の真の組成情報を示しているとは限らない。そこで、石炭情報5に含まれる情報には、「デフォルト」という語句を付けて表記している。
ミル特性評価部300は、現在のプラント計測情報を基に、各ミルにおいて粉砕しボイラへ供給する微粉炭の組成、粒度等の情報をリアルタイムで同定する。このような情報は、ミルの最適制御へ利用することができる。
以下、Aミル基本性能計算機能302aの各機能モジュールについて、図7A、図7B、図8A、図8B、図9、図10、及び図11を用いて説明する。
図7Aは、機能モジュールF1(x)310の機能を示す図である。機能モジュールF1(x)310は、ミル出口温度322及びデフォルト水分323を用いて、当該ミル(ミルA)で現在処理されている石炭が含有する水分の推定値331を導出する。具体的には、図7Aに示すように、ミル出口温度322とミル出口基準設定温度341との差分343を、減算演算モジュール342が計算する。ミル出口基準設定温度341は、制御装置200に予め設定しておく。次に、ミル出口温度の差分343を、水分補正量計算モジュールF1a(x)344へ入力し、水分補正量345を出力する。
図7Bは、水分補正量計算モジュールF1a(x)344の関数特性354を示す図である。図7Bに示すように、F1a(x)は、ミル出口温度の差分343に対する関数で表される。ミル出口温度の差分343が正値の場合(ミル出口温度322がミル出口基準設定温度341よりも高い場合)は、水分補正量345が負値を取り、差分343が負値の場合(ミル出口温度322がミル出口基準設定温度341よりも低い場合)は、水分補正量345が正値を取るように設定される。
水分補正量計算モジュールF1a(x)344の関数特性354は、ミル特性情報データベース230に保存されるミル特性情報6を基に作成され、図示しているように1次関数に限定されるものではなく、非線形関数特性としてもよい。
図7Aに戻って説明を続ける。最後に、機能モジュールF1(x)310は、加算演算モジュール346を用いて、デフォルト水分323に水分補正量345を加算することで水分推定値331を求めて、これを出力する。
図8Aは、機能モジュールF2(x)311の機能を示す図である。機能モジュールF2(x)311は、NOx濃度324、デフォルト燃料比325、C/A値337(前回計算結果)、ミル容量338(前回計算結果)、微粒化指標339(前回計算結果)、及び燃料比推定値332(前回計算結果)を入力し、当該ミル(ミルA)で現在処理されている石炭の燃料比推定値332を導出する。ここで、「前回計算結果」というのは、それぞれの値が、前回の計算結果でありデータベースに保存されている値(前回値)であることを示している。
具体的な石炭の燃料比推定値332の導出方法を説明する。図8Aに示すように、機能モジュールF2a(x)347は、デフォルト燃料比325、C/A値337(前回計算結果)、ミル容量338(前回計算結果)、微粒化指標339(前回計算結果)、及び燃料比推定値332(前回計算結果)を入力し、最新のミル特性情報及び石炭情報から推定される標準NOx濃度348を求めて出力する。機能モジュールF2a(x)347には、ミル特性情報6に含まれる入出力項目情報のデータベースを重回帰分析やニューラルネットワークといった統計的手法を用いて学習させたモデルを用いることができる。
次に、機能モジュールF2a(x)347は、NOx濃度324と標準NOx濃度348との差分350を、減算演算モジュール349で計算する。標準NOx濃度348は、制御装置200に予め設定しておく。次に、NOx濃度の差分350を、燃料比補正モジュールF2b(x)351へ入力し、燃料比補正量352を出力する。
図8Bは、燃料比補正モジュールF2b(x)351の関数特性355を示す図である。図8Bに示すように、燃料比補正モジュールF2b(x)351は、NOx濃度の差分350に対する関数で表される。NOx濃度の差分350が正値の場合(NOx濃度324が標準NOx濃度348よりも高い場合)は、燃料比補正量352が正値を取り、差分350が負値の場合(NOx濃度324が標準NOx濃度348よりも低い場合)は、燃料比補正量352が負値を取るように設定される。
燃料比補正モジュールF2b(x)351の関数特性355は、水分補正量計算モジュールF1a(x)344の関数特性354と同様に、ミル特性情報データベース230に保存されるミル特性情報6を基に作成され、1次関数に限定されない。
図8Aに戻って説明を続ける。最後に、機能モジュールF2(x)311は、加算演算モジュール353を用いて、燃料比推定値332(前回計算結果)に燃料比補正量352を加算することで燃料比推定値332を求めて、これを出力する。
図9は、機能モジュールF3(x)312の機能を示す図である。機能モジュールF3(x)312は、1次空気流量320、給炭機流量321、ミルローラリフト量326、ミルローラ加圧油圧力327、及びHGI推定値333(前回計算結果)を入力し、基準ミルローラリフト量334を求めて出力する。
具体的には、機能モジュールF3(x)312は、図9に示すように、まず1次空気流量320、給炭機流量321、及びミルローラ加圧油圧力327と、これらのそれぞれの量に対する標準運転条件時の測定量である基準1次空気流量356、基準給炭機流量359、及び基準ミルローラ加圧油圧力362を入力する。減算演算モジュール357によって、1次空気流量320と基準1次空気流量356の差分である1次空気流量の差分358を計算する。減算演算モジュール360によって、給炭機流量321と基準給炭機流量359の差分である給炭機流量の差分361を計算する。減算演算モジュール363によって、ミルローラ加圧油圧力327と基準ミルローラ加圧油圧力362の差分であるミルローラ加圧油圧力の差分364を計算する。基準1次空気流量356、基準給炭機流量359、及び基準ミルローラ加圧油圧力362は、予め定めて制御装置200に設定しておく。
次に、求めたこれらの差分とHGI推定値333(前回計算結果)を機能モジュールF3a(x)365へ入力し、ミルローラリフト量補正量366を得る。機能モジュールF3a(x)365には、機能モジュールF2a(x)347と同様に、ミル特性情報6に含まれる入出力項目情報のデータベースを重回帰分析やニューラルネットワークといった統計的手法を用いて学習させたモデルを用いることができる。
最後に、機能モジュールF3(x)312は、加算演算モジュール367を用いて、求めたミルローラリフト量補正量366をミルローラリフト量326に加算することで基準ミルローラリフト量334を求めて、これを出力する。
図10は、機能モジュールF4(x)313の機能を示す図である。機能モジュールF4(x)313は、1次空気流量320、給炭機流量321、デフォルトHGI328、ミル差圧329、ミル分級機回転数330、及びHGI推定値333(前回計算結果)を入力し、基準ミル差圧335を求めて出力する。
具体的には、機能モジュールF4(x)313は、図10に示すように、まず1次空気流量320、給炭機流量321、及びミル分級機回転数330と、これらのそれぞれの量に対する標準運転条件時の測定量である基準1次空気流量356、基準給炭機流量359、及び基準ミル分級機回転数368を入力する。そして、これらの量の差分をそれぞれ減算演算モジュール357、360、及び369によって求め、1次空気流量の差分358、給炭機流量の差分361、及びミル分級機回転数の差分370をそれぞれ計算する。基準ミル分級機回転数368は、制御装置200に予め設定しておく。
次に、求めた各差分とHGI推定値333(前回計算結果)を機能モジュールF4a(x)371へ入力し、ミル差圧補正量372を得る。機能モジュールF4a(x)371には、機能モジュールF2a(x)347や機能モジュールF3a(x)365と同様に、ミル特性情報6に含まれる入出力項目情報のデータベースを重回帰分析やニューラルネットワークといった統計的手法を用いて学習させたモデルを用いることができる。
最後に、機能モジュールF4(x)313は、加算演算モジュール373を用いて、求めたミル差圧補正量372をミル差圧329へ加算することで基準ミル差圧335を求めて、これを出力する。
機能モジュールF3(x)312及びF4(x)313によって求めた基準ミルローラリフト量334及び基準ミル差圧335は、後述する機能モジュールF5(x)においてHGI推定値を求める際に、入力項目であるミルローラリフト量及びミル差圧の計測値に含まれるノイズ(現在のミル操作条件に起因するノイズ)の影響を排除し、標準運転条件をベースとした場合のミル状態量である。この基準ミルローラリフト量334及び基準ミル差圧335は、HGIの推定精度を向上させる効果もたらす。
図6に戻って説明を続ける。
機能モジュールF5(x)314は、機能モジュールF1(x)310、F2(x)311、F3(x)312、及びF4(x)313が求めた水分推定値331、燃料比推定値332、基準ミルローラリフト量334、及び基準ミル差圧335を入力し、HGI推定値333を出力する。機能モジュールF5(x)314には、F2a(x)347、F3a(x)365、及びF4a(x)371と同様に、ミル特性情報6に含まれる入出力項目情報のデータベースを重回帰分析やニューラルネットワークといった統計的手法を用いて学習させたモデルを用いることができる。また、水分推定値331、燃料比推定値332、基準ミルローラリフト量334、及び基準ミル差圧335が石炭のHGI特性と定性的に相関を持つことは公知の知見であり、これらの相関関係からHGIを高精度に推定できる。HGI推定値333は、ミル特性情報データベース230に保存される。
機能モジュールF6(x)315は、ミルローラ加圧油圧力327、ミル分級機回転数330、及びHGI推定値333を入力し、出炭率336を出力する。出炭率とは、給炭機からミルへ供給される石炭量に対して、ミルからボイラへ供給される微粉炭量の割合を示す指標である。出炭率336は、石炭の砕きやすさ、ミルの粉砕・分級条件に影響するため、ミルローラ加圧油圧力327、ミル分級機回転数330、及びHGI推定値333の相関関係から求める。機能モジュールF6(x)315も、機能モジュールF5(x)314と同様に、統計的手法によるモデルを用いることが望ましい。
機能モジュールF6(x)315は、乗算演算モジュール316を用いて、計算した出炭率336を給炭機流量321に乗じることによりミルの出炭量(ミル容量)338を求め、これをAミル効率計算機能303a(図5参照)に出力する。
機能モジュールF9(x)319は、1次空気流量320、及びミル容量338を入力し、C/A値337を計算し、これをAミル効率計算機能303a(図5参照)に出力する。F9(x)319は、ミル容量338を1次空気流量320で除してC/A値337を計算する。
機能モジュールF7(x)317は、ミルローラ加圧油圧力327、ミル分級機回転数330、及びHGI推定値333を入力し、微粒化指標339を計算し、これをAミル効率計算機能303a(図5参照)に出力する。微粒化指標339とは、ミルによって粉砕された微粉炭の粒度を定量的に示した指標であり、通常は200メッシュパス値(75μ間隔の篩を通過した微粉炭の割合)が用いられる。200メッシュパス値が大きいほど粒度が小さいことを表し、ボイラでの燃焼効率が高くなる。微粒化指標339も、出炭率336と同様に、石炭の砕きやすさ、ミルの粉砕・分級条件に影響するため、ミルローラ加圧油圧力327、ミル分級機回転数330、及びHGI推定値333の相関関係から求める。機能モジュールF7(x)317も、統計的手法によるモデルを用いることが望ましい。
機能モジュールF8(x)318は、ミル分級機回転数330に対するミル動力340を求め、これをAミル効率計算機能303a(図5参照)に出力する。ミル動力340は、ミル分級機回転数330と1次相関の関係にある。
図11は、機能モジュールF8(x)318の関数特性374を示す図である。図11に示すように、F8(x)318の関数特性374は、ミル分級機回転数330とミル動力340との1次関数によって与えられる。関数特性374は、ミル特性情報データベース230に保存されたミル特性情報6を基に作成される。
以上で、Aミル基本性能計算機能302aの機能の詳細な説明を終了する。
図12は、図5に示したAミル効率計算機能303aの機能を示す構成図である。Aミル効率計算機能303aは、機能モジュールF10(x)375、F11(x)377、及びF12(x)379を備える。
機能モジュールF10(x)375は、Aミル基本性能計算機能302aの計算結果として入力されたC/A値337、ミル容量338、及び微粒化指標339を入力し、燃焼率推定値376を求めて出力する。燃焼率推定値376とは、ミルAからボイラへ供給される微粉炭量に対する、微粉炭をボイラのバーナ部で燃焼させた場合に完全燃焼する微粉炭量の割合の推定値である。
燃焼率推定値376は、バーナ構造及び燃焼条件を一定とした場合、C/A値337、微粒化指標339、及びミル容量338によって決定される。具体的には、事前に実施した特性評価試験によってC/A値337、微粒化指標339、及びミル容量338の値と燃焼率との関係を求め、これをミル特性情報データベース230に保存しておく。そして、このデータを用いて燃焼率を推定するモデルを、重回帰分析やニューラルネットワークといった統計的手法により構築することで、任意の入力条件に対する燃焼率の推定が可能となる。
機能モジュールF11(x)377は、機能モジュールF10(x)375が計算した燃焼率推定値376、及び石炭情報管理データベース220に保存された石炭情報5を用いて、プラント燃焼効率378を計算する。プラント燃焼効率378は、石炭火力プラント100における微粉炭の燃焼効率であり、それぞれのミルに対して求めることができる。ミルAのプラント燃焼効率378をηc A[%]とすると、ηc Aは、以下の式(1)によって計算される。
ここで、αA[%]はミルAの燃焼率推定値、[C][%]は運用炭組成における炭素分比率、QCは炭素分の単位質量当たりの高位発熱量(=3.38×104[kJ/kg])、及びQcoal A[kJ/kg]は運用炭の単位質量当たりの高位発熱量である。[C]とQcoal Aは、石炭組成の分析情報であり、石炭情報5に含まれる。式(1)は、プラント燃焼効率378であるηc Aが、ミルAからボイラへ供給される石炭の高位発熱量(=ボイラへ投入される熱エネルギー)に対する、完全燃焼する微粉炭中に含まれる炭素分に相当する高位発熱量(=燃焼によって発生する熱エネルギー)の割合であることを意味する。ηc Aの値が大きいほど、燃焼によって効率良くエネルギーが発生していることを示す。
機能モジュールF12(x)379は、機能モジュールF11(x)377が計算したプラント燃焼効率378、ミル容量339、及びミル動力340を用いて、ミルAの運転効率であるAミル運転効率8aを計算し、これをミル操作計算部400(図1参照)へ出力する。ここで、Aミル運転効率8aをηm A[%]とすると、ηm Aは、以下の式(2)及び式(3)によって計算される。
ここで、PM A[kW]はミルAのミル動力340、PG A[kW]はミルAから供給される燃料に対するプラントの発電出力の推定値、GA[kg/s]はミル容量339、ηg[%]はプラントの発電端効率である。ηgは、プラントの機器構成及び運転方法によって決まる定数である。式(2)は、ミル運転効率ηm Aが、プラント燃焼効率ηc Aからミル動力PM Aに相当する効率分を差引いた値であることを意味する。
以上の説明から、ミル特性評価部300が出力するミル運転効率情報8は、ミルの計測情報、運用炭情報、ミル特性情報、及びミル操作条件に基づく燃焼効率とミル動力から計算されるミルの性能値であり、プラント全体の運転効率に対する各ミルの寄与度と考えることができる。
図13は、以上の説明に基づく、ミル特性評価部300の動作の手順を表すフローチャートである。図13に示したフローチャートは、図4に示した制御装置200の制御を示すフローチャートのステップ1100における動作を詳細に示したものであり、ステップ1110〜1123からなる。ミル特性評価部300は、ステップ1110〜1123を組合せて実行する。以下では、それぞれのステップについて説明する。
ステップ1110では、ミル特性評価部300の動作開始後、カウンタiを1に初期化する。カウンタiは、各ミルの番号を表す添字である。なお、本フローチャートでは、各ミルを番号で管理し、フローチャートの実行時にミルの番号を添字iとしてカウントする。
ステップ1111では、機能モジュールF1(x)310を動作させ、ミルiの運用炭(ミルiで現在処理されている石炭)が含有する水分の推定値331を計算する。
ステップ1112では、機能モジュールF2(x)311を動作させ、ミルiの運用炭の燃料比推定値332を計算する。
ステップ1113では、機能モジュールF3(x)312を動作させ、ミルiの基準ミルローラリフト量334を計算する。
ステップ1114では、機能モジュールF4(x)313を動作させ、ミルiの基準ミル差圧335を計算する。
ステップ1115では、機能モジュールF5(x)314を動作させ、ミルiのHGI推定値333を計算する。
ステップ1116では、機能モジュールF6(x)315、及び乗算演算モジュール316を動作させ、ミルiのミル容量338を計算して推定する。
ステップ1117では、機能モジュールF9(x)319を動作させ、ミルiのC/A値337を計算する。
ステップ1118では、機能モジュールF7(x)317を動作させ、ミルiの微粒化指標339を計算して推定する。
ステップ1119では、機能モジュールF8(x)318を動作させ、ミルiのミル動力340を計算する。
ステップ1120では、機能モジュールF10(x)375を動作させ、ミルiの燃焼率376を計算して推定する。
ステップ1121では、機能モジュールF11(x)377を動作させ、ミルiのプラント燃焼効率378を計算する。
ステップ1122では、機能モジュールF12(x)379を動作させ、ミルiの運転効率8を計算する。
ステップ1123は、カウンタiを判定する分岐である。カウンタiが運転しているミルの台数(運転ミル台数)に一致していない場合は、iに1を加算し、ステップ1111に戻る。カウンタiが運転ミル台数に一致する場合は、ミル特性評価部300の動作を終了させるステップに進む。
以上の説明から明らかなように、ミル特性評価部300では、プラントの計測データ及び事前の分析結果から得られた石炭情報を基に、運用炭性状(水分、燃料比、及びHGI)及びミルの特性(C/A値、ミル容量、微粒化指標、ミル動力、及びミル運転効率)をリアルタイムで推定する。本実施例によるミル特性評価部300は、現在のプラントの運転状態を反映させることが可能なため、事前に分析した石炭情報のみを基にする場合に比べて、より高精度なミルの特性の推定が可能となる。
以上で、制御装置200のミル特性評価部300の動作の詳細な説明を終了する。
次に、制御装置200のミル操作計算部400の動作について、図14及び図15を用いて詳細に説明する。
図14は、ミル操作計算部400の動作の手順を表すフローチャートである。図14に示したフローチャートは、図4に示した制御装置200の制御を示すフローチャートのステップ1200における動作を詳細に示したものであり、ステップ1210〜1218を組合せて実行する。以下では、それぞれのステップについて説明する。
ステップ1210では、ミル操作計算部400の動作開始後、ミルグループを設定する。すなわち、プラントの構成及び運用条件を基に、ミルを複数のグループ(ミルグループ)へ分類する。ここで、ミルのグルーピングについて、図15を用いて説明する。
図15は、ミルのグルーピングを示す概略図であり、ボイラとバーナを表示している。図15では、代表的な石炭燃焼ボイラの一例である対向燃焼型ボイラを、横から見た図を示している。ボイラには缶前と缶後に3段ずつ、合計6個のバーナが設置されている。各バーナには、図15に示すように、6台のミルA〜ミルFのうちそれぞれ1台が対応し、微粉炭を供給できるようになっている。
このようなバーナの配置情報は、画像表示装置920に表示される。石炭火力プラント100の運転員は、バーナの配置情報を見ながら、バーナの段単位でミルを組合せて、又は缶前や缶後毎にミルを組合せて、ミルのグルーピングを行う。図15では、グルーピングの一例として、ミルAとミルDがグループ1、ミルB、ミルC、ミルE、及びミルFがグループ2、ミルA、ミルB、及びミルCがグループ3、並びにミルD、ミルE、及びミルFがグループ4と分類されている。また、詳細な理由は後述するが、グルーピングはボイラ火炉内部の燃焼効率のバランスを念頭に入れて実施することが望ましい。
図14に戻って説明を続ける。ステップ1211では、ステップ1210で設定した各ミルグループについて、ミルの操作条件の探索時に使用するパラメータを初期化する。このパラメータについては、後述する。
ステップ1212では、ミルの操作条件の探索における繰返し回数であるカウンタnを1に初期化する。
ステップ1213では、カウンタjを1に初期化する。カウンタjは、各ミルグループの番号を表す添字である。なお、本フローチャートでは、各ミルグループを番号で管理し、フローチャートの実行時に各ミルグループの番号を添字jとしてカウントする。
ステップ1214では、ミルグループjについて、以下の式(4)、式(5)、及び式(6)で与えられる評価関数値Ej(xj)を計算する。ここで、xjはミルグループjに属するミルの操作条件の集合(ベクトル)であり、前述のように、各ミルの1次空気流量、給炭機流量、ミルローラ加圧油圧力、及びミル分級機回転数を含む。
式(4)において、右辺第1項(ηg j)は、ミルグループjの平均ミル運転効率を表し、第2項は、ミルグループjと他の全てのミルグループk(k≠j)との運転効率バランスの影響を表す。石炭ボイラでは、火炉内での燃焼状態に影響する因子として、バーナ相互の燃焼バランスがある。殆どの場合において、ボイラは、各バーナから均等に石炭を燃焼させた場合に火炉内での燃焼状態が最も良くなり、プラント全体として運転効率が最大となるように設計されている。従って、ミル単体の運転効率を最大化するだけでなく、バーナの配置を考慮したミル相互間の運転効率のバランスを最適にするようにして、ミルの操作条件を決定する必要がある。
式(4)の右辺第2項は、他のミルグループk(k≠j)とミルグループjの運転効率比の、均等バランス(運転効率比=1)に対する差分の2乗和であり、他グループとの運転効率のバランスが悪いほど計算される値が大きくなる。従って、式(4)で求めたEj(xj)を評価関数とし、この評価関数の値を最大化するような最適探索手法により、プラント全体の運転効率を最大化することができる。
ここで、式(4)におけるCjkは、運転効率のバランスの影響を考慮するミルグループの組合せ(添字j、k)を決定する係数であり、式(6)に示すように判定フラグθjkが真(=true)の場合は1を、偽(=false)の場合は0を取る。θjkは、ステップ1211において任意に設定される。また、式(4)、式(5)、及び式(6)の変数や添字の意味については、kが他のミルグループのカウンタ、Jがグループ数、lがミルのカウンタ、及びLjがグループjに属するミルの数を表す。判定フラグθjkは、前述したように、ミル操作計算情報データベース240に保存されたミル操作計算情報データ10に含まれている。
ステップ1215では、ミルグループjの操作条件を、最適探索手法を用いて求める。具体的には、ステップ1214で計算した評価関数値Ej(xj)を最大とするような、ミルグループjに属するミル操作条件xjの組合せを探索する。探索アルゴリズムとしては、勾配法、ランダムサーチ、遺伝的アルゴリズム、焼きなまし法、タブーサーチ、及び粒子群最適化等、任意の公知の手法を用いることができる。探索アルゴリズムを動作させるのに必要なパラメータは、前述したように、ミル操作計算情報データベース240に保存されたミル操作計算情報データ10に含まれている。
ステップ1216は、カウンタjを判定する分岐である。カウンタjがミルグループの数に一致していない場合は、jに1を加算し、ステップ1214に戻る。カウンタjがミルグループの数に一致する場合は、次のステップ1217に進む。
ステップ1217は、カウンタnを判定する分岐である。カウンタnが探索アルゴリズムの最大反復回数に一致していない場合は、nに1を加算し、ステップ1213に戻る。カウンタnが最大反復回数に一致する場合は、次のステップ1218に進む。最大反復回数は、本フローチャートの実行前に予め設定しておく。
ステップ1218では、本フローチャートにおける計算結果を、計算結果データベース250に保存し、ミル操作計算部400の動作を終了するステップに進む。
以上の説明から明らかなように、ミル操作計算部400では、式(4)、式(5)、及び式(6)で求まる評価関数Ej(xj)を用いることにより、ミル単体の運転効率の最大化に加え、バーナの配置を考慮したミル相互間の運転効率のバランスを最適にするようにミル操作条件を決定する。この結果、プラント全体の運転効率を最大化させることができる。
以上で、制御装置200のミル操作計算部400の動作の詳細な説明を終了する。
次に、本実施例による石炭火力プラントの制御装置200に接続される画像表示装置920(図1参照)にて表示される画面について、図16、図17及び図18を用いて説明する。画像表示装置920は、制御装置200とデータを送受信する保守ツール910に接続され、保守ツール910の外部出力インターフェース913から送信された保守ツール出力信号94に従って画像を表示する。
石炭火力プラント100の運転員は、図16、図17、又は図18に示す画面が画像表示装置920に表示された状態で、外部入力装置900のマウス902を操作して画面上のチェックボックスをクリックすることで、チェックボックスを選択(チェックを表示)することができる。また、マウス902を操作して画面上のボタンをクリックすることで、ボタンを選択する(押す)ことができる。また、マウス902を操作して画面上の数値ボックスにフォーカスを移し、キーボード901を用いることで数値を入力できる。
図16は、本実施例による石炭火力プラントの制御装置200において、ミル操作計算部400を実行する際に画像表示装置920に表示されるミルグループの設定画面の例である。この画面は、図14のフローチャートにおけるステップ1210とステップ1211に対応して表示される。
図16に示した画面では、ミル−バーナ配置図3000とミルグループリスト3005とが表示され、ステップ1210におけるミルグループの設定、及びステップ1211におけるミルグループのパラメータの初期化を実施することができる。ミル−バーナ配置図3000では、各ミルがバーナの配置と対応付けられて表示される。
画面上のミル−バーナ配置図3000に示された、各バーナに対応するチェックボックス3001に対し、マウス902を操作してチェックを入れることで、グルーピングするミルを選択することができる。ミル−バーナ配置図3000に示すように、実際のバーナの配置を参考にできるため、バーナ間の運転効率バランスを考慮したグルーピングが可能である。
グルーピングするミルを選択後、グループ追加ボタン3002を選択することで、選択したミルによるミルグループを新たにミルグループリスト3005に追加することができる。また、ミルグループリスト3005中の既存のミルグループに対して、チェックボックス3006によって任意のグループを選択した後、グループ削除ボタン3003を選択することで、選択したミルグループをリスト3005より削除することができる。
ミルグループリスト3005には、追加したミルグループ毎にグループNo.(グループ番号)3007、グループに属するミルの名称3008、及びグループ間の運転効率バランスの影響を考慮するか否かを選択するチェックボックス3009が存在する。ここで、チェックボックス3009の選択又は非選択は、式(6)における判定フラグθjkの真又は偽に対応する。即ち、マウス902を操作してチェックボックス3009にチェックを入れるとθjkは真(=true)に初期化され、チェックを外すとθjkは偽(=false)に初期化される。
以上の入力の終了後、グループ更新ボタン3004を選択することで、設定したミルグループの情報を更新することができる。
全てのミルグループの設定が終了後、終了ボタン3010を選択することで、ミルグループの設定画面を終了し、ミルのグルーピング及びミルグループへのパラメータの設定を終了させることができる。
図17は、本実施例による石炭火力プラントの制御装置200において、ミル特性評価部300を実行して得られるミル特性情報のトレンドを確認する際に、画像表示装置920に表示されるミル評価値トレンドの表示画面の例である。
図17に示した画面では、ミル−バーナ配置図3100とグラフ描画エリア3104とが表示される。グラフ描画エリア3104は、石炭火力プラント100が備える任意のミルについて、ミル特性評価部300が求めたミル特性情報7の時系列トレンドグラフ3105を表示する。
画面上のミル−バーナ配置図3100に示された、バーナの各段に対応するチェックボックス3101に対し、マウス902を操作してチェックを入れることで、トレンドグラフ3105を表示したいミルを選択することができる。複数のミルを選択することが可能であり、選択したミルの数だけ、ミル特性の値のトレンドグラフ3105がグラフ描画エリア3104に表示される。図17の例では、ミルAとミルDのトレンドグラフ3105が表示されている。
また、画面右側に設けられたプルダウンボタン3102をマウス902で選択すると、プルダウンメニュー3103が表示され、ミル特性評価部300において求めた種々のミル特性情報7の中から、グラフエリア3104に表示させたい項目をひとつ選択することができる。
また、終了ボタン3106を選択することで、ミル評価値トレンドの表示画面を終了し、ミル特性情報7のトレンドグラフの表示を終了させることができる。
以上のように、図17に示した画面から、プラント100の運転員は、各ミルの特性情報7をリアルタイムで把握することができる。即ち、制御装置200の動作に関わらず、既存の計測情報からは判断が困難なミルの運転状態の急激な変化についても把握が可能であり、ミルの予防保全にも資することができる。
図18は、本実施例による石炭火力プラントの制御装置200において、ミル操作計算部400を実行して得られる各ミルグループの平均運転効率(平均ミル運転効率ηg j)のトレンド及びプラント全体の運転効率のトレンドを確認する際に、画像表示装置920に表示される運転効率バランス・プラント効率のトレンドの表示画面の例である。図18に示すように、この画面の上半分には、各ミルグループの平均運転効率(グループ運転効率)のトレンドグラフが、運転効率バランストレンドとして表示される。画面の下半分には、プラント全体の運転効率(プラント効率)のトレンドグラフが、プラント効率トレンドとして表示される。
運転効率バランストレンドのグラフでは、図16のミルグループの設定画面において設定したグループ間の運転効率バランスの設定に基づき、選択した2種類のグループの運転効率のトレンドグラフを表示する。まず、プルダウンメニュー3203及び3204をマウス902で選択することにより、ミルグループの組合せを決定する。このとき、プルダウンメニュー3203及び3204から選択できるミルグループは、図16においてチェックボックス3009を選択したグループの組合せのみとなっている。ミルグループの組合せを決定すると、グラフエリア3200には、選択した2種類のミルグループの平均運転効率のトレンドグラフ3201及び3202が表示される。
プラント効率トレンドのグラフでは、プラント全体の運転効率のトレンドグラフを表示する。グラフエリア3205には、計測情報を基にリアルタイムに計算されるプラント運転効率のトレンドグラフ3206が表示される。ここで、プラント運転効率は、ミル特性評価部300のミル効率計算機能が導出するミル運転効率から求めず、実際のプラント運転の結果として計測される計測情報を基に算出する。この計測情報には、排ガス流量、排ガス温度、灰中未燃分、一酸化炭素濃度、熱交換器メタル温度、及び排ガス組成のうち少なくとも1つの情報が含まれる。
また、図18に示した運転効率バランス・プラント効率のトレンドの表示画面では、プラント効率の目標値を設定し、グラフエリア3205に表示させることもできる。数値ボックス3208にプラント効率の目標値を入力し、設定ボタン3209を選択することで、プラント効率の目標値3207がグラフエリア3205に追加表示される。
また、終了ボタン3210を選択することで、運転効率バランス・プラント効率のトレンドの表示画面を終了し、運転効率バランストレンドとプラント効率トレンドの表示を終了させることができる。
以上のように、図18に示した運転効率バランス・プラント効率のトレンドの表示画面から、プラントの運転員は、設定したグループ間の運転効率のバランスが、望ましい状態(平均運転効率比=1)となるように制御されているかをリアルタイムに確認することができる。また、プラント運転効率が設定した目標値を達成しているかどうかも、リアルタイムに確認可能である。
以上で、本実施例による石炭火力プラントの制御装置200に接続される画像表示装置920にて表示される画面についての説明を終了する。
なお、本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、様々な変形例を含む。例えば、上記の実施例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、本発明は、必ずしも説明した全ての構成を備える態様に限定されるものではない。
また、本発明による制御装置の各構成は、これらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等により、ハードウェアで実現してもよい。また、これらの一部又は全部は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し実行するようにして、ソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル、測定情報、及び算出情報等の情報は、メモリ、ハードディスク、及びSSD(Solid State Drive)等の記録装置、又は、ICカード、SDカード、及びDVD等の記録媒体に記録することができる。よって、本発明による制御装置の各構成は、処理部、処理ユニット、及びプログラムモジュールなどとして、各機能の実現が可能である。
また、各図面において、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを記載しており、必ずしも製品として必要な全ての制御線や情報線を記載しているとは限らない。実際の製品では、殆ど全ての構成要素が相互に接続されていると考えてもよい。
以上で、本発明による石炭火力プラントの制御装置の詳細な説明を終了する。