JP2013223958A - インクジェット画像形成方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ノズルプレートに設けられた撥液膜からのインク組成物の切れ性に優れ、かつ、耐ブロッキング性に優れた画像を形成できるインクジェット画像形成方法を提供する。
【解決手段】記録媒体上に、沖津法によって計算されたSP値が20.0MPa1/2以上である樹脂によってキナクリドン系顔料の表面の少なくとも一部が被覆されてなる樹脂被覆キナクリドン系顔料を含むインク組成物を、複数の吐出孔102が二次元に配列され該吐出孔形成面にフッ素化合物を含む撥液膜103が設けられたノズルプレート101から吐出して画像を形成する工程を有する。
【選択図】図1

Description

本発明は、インクジェット画像形成方法に関する。
カラー画像を記録する画像記録の方法として、インクジェット技術が知られている。インクジェット技術は、オフィスプリンタ、ホームプリンタ等の分野に適用されてきたが、近年では商業印刷分野での応用がなされつつある。
インクジェット技術に用いられるインク(インク組成物)としては、顔料を含むインク(顔料インク)が広く用いられている。
顔料インクとしては、樹脂によって被覆された顔料を含むインクが用いられることがある。
例えば、着弾ヨレの発生を、フェイス濡れを抑制することで低減できるインクジェット用インクとして、顔料、水溶性樹脂、包接化合物及び水を含むインクジェット用インクであって、前記水溶性樹脂は疎水基を有し、前記包接化合物はシクロデキストリンまたはシクロデキストリンの誘導体であり、前記水溶性樹脂のうち、顔料に吸着せずに存在している水溶性樹脂の量の前記包接化合物の量に対する質量比が0.30以上9.00以下であるインクジェット用インクが知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、白抜け等の画像故障の発生を抑制し、耐擦過性の良好な画像を記録できるインクジェット記録用インクセットとして、シアン色用顔料、有機溶媒、中和剤、及び水を含有するシアン色系の水性インク組成物と、マゼンタ色用顔料、有機溶媒、中和剤、及び水を含有するマゼンタ色系の水性インク組成物と、イエロー色用顔料、有機溶媒、中和剤、及び水を含有するイエロー色系の水性インク組成物と、を含み、前記シアン色用顔料、前記マゼンタ色用顔料、及び前記イエロー色用顔料が、側鎖に芳香環及びエチレンオキシ基を有する特定の構造単位を含む水不溶性樹脂によって被覆された顔料であるインクジェット記録用インクセットが知られている(例えば、特許文献2参照)。
特開2011−140630号公報 特開2009−221251号公報
ところで近年では、画像形成の高速化の観点から、インクジェット画像形成方法の方式として、複数の吐出孔が二次元に配列され該吐出孔形成面に撥液膜が設けられた構成のノズルプレートを用い、該ノズルプレートから記録媒体上にインクを吐出して画像を形成する方式(例えば、いわゆるシングルパス方式など)が採用される場合がある。
しかしながら、この方式のインクジェット画像形成方法では、ノズルプレートに設けられた撥液膜からのインクの切れ性が低下し、これによりインクの吐出曲がりが生じる場合がある。
また、上記の方式の画像形成方法では、複数の吐出孔から同時にインクが吐出されることにより高速で画像が形成されるので、画像が形成された記録媒体同士が積み重ねられる速度も速くなる傾向がある。画像が形成された記録媒体同士が積み重ねられる速度が速くなると、記録媒体上に形成された画像と該画像の上に積まれた別の記録媒体とが接着して画像が損傷を受ける、ブロッキングと呼ばれる現象が発生する場合がある。
ところで、顔料としてキナクリドン系顔料を含むインク組成物において、従来は、(例えば加熱下における)インク組成物の経時安定性の観点等から、SP値が比較的低い樹脂(例えば、エチルメタクリレートに由来する構造単位の含有比率が高い樹脂等)によってキナクリドン系顔料の表面の少なくとも一部が被覆されてなる樹脂被覆キナクリドン系顔料を用いることが一般的であった。
しかし、SP値が比較的低い樹脂を用いた樹脂被覆キナクリドン系顔料では、上述のノズルプレートを用い複数の吐出孔から同時にインクを吐出して高速で画像を形成する場合において、上述したインクの切れ性の低下やブロッキングの発生が特に起こりやすいことが判明した。
本発明は上記に鑑みなされたものであり、ノズルプレートに設けられた撥液膜からのインク組成物の切れ性に優れ、かつ、耐ブロッキング性に優れた画像を形成できるインクジェット画像形成方法を提供することを課題とする。
前記課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 記録媒体上に、沖津法によって計算されたSP値が20.00MPa1/2以上である樹脂によってキナクリドン系顔料の表面の少なくとも一部が被覆されてなる樹脂被覆キナクリドン系顔料を含むインク組成物を、複数の吐出孔が二次元に配列され該吐出孔形成面にフッ素化合物を含む撥液膜が設けられたノズルプレートから吐出するインク吐出工程を有するインクジェット画像形成方法である。
<2> 前記フッ素化合物がフッ化アルキル基を有する<1>に記載のインクジェット画像形成方法である。
<3> 前記撥液膜の沖津法によって計算されたSP値が、16.00MPa1/2以下である<1>又は<2>に記載のインクジェット画像形成方法である。
<4> 前記樹脂が、沖津法によって計算されたSP値が19.40MPa1/2以上である(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を20質量%〜90質量%含む<1>〜<3>のいずれか1つに記載のインクジェット画像形成方法である。
<5> 前記樹脂が、メチルメタクリレートに由来する構造単位、ベンジルメタクリレートに由来する構造単位、フェノキシエチルメタクリレートに由来する構造単位、ヒドロキシエチルメタクリレートに由来する構造単位、2−カルボキシエチルメタクリレートに由来する構造単位、N,N−ジメチルアミノエチルメタリレートに由来する構造単位、モルホリノエチルメタクリレートに由来する構造単位、テトラヒドロフルフリルメタクリレートに由来する構造単位、及び、グリシジルメタクリレートに由来する構造単位からなる群から選択される少なくとも1種を20質量%〜90質量%含む<1>〜<4>のいずれか1つに記載のインクジェット画像形成方法である。
<6> 前記樹脂が、メチルメタクリレートに由来する構造単位、ベンジルメタクリレートに由来する構造単位、フェノキシエチルメタクリレートに由来する構造単位、ヒドロキシエチルメタクリレートに由来する構造単位、2−カルボキシエチルメタクリレートに由来する構造単位、N,N−ジメチルアミノエチルメタリレートに由来する構造単位、モルホリノエチルメタクリレートに由来する構造単位、テトラヒドロフルフリルメタクリレートに由来する構造単位、及び、グリシジルメタクリレートに由来する構造単位からなる群から選択される少なくとも1種を30質量%〜60質量%含む<1>〜<5>のいずれか1つに記載のインクジェット画像形成方法である。
<7> 前記樹脂は、沖津法によって計算されたSP値が20.50MPa1/2以上である<1>〜<6>のいずれか1つに記載のインクジェット画像形成方法である。
<8> 前記インク組成物の全量に対する前記キナクリドン系顔料の含有量が、4.0質量%以上である<1>〜<7>のいずれか1つに記載のインクジェット画像形成方法である。
<9> 前記キナクリドン系顔料が、C.I.ピグメント・レッド122を含む<1>〜<8>のいずれか1つに記載のインクジェット画像形成方法である。
<10> 前記インク組成物が、更に、自己分散性樹脂粒子を含む<1>〜<9>のいずれか1つに記載のインクジェット画像形成方法である。
<11> 更に、前記記録媒体上に、前記インク組成物と接触することで凝集体を形成可能な凝集剤を含む処理液を付与する処理液付与工程を有する<1>〜<10>のいずれか1つに記載のインクジェット画像形成方法である。
<12> 前記キナクリドン系顔料が、2種以上のキナクリドン系化合物を含むキナクリドン固溶体顔料(及び、必要に応じ塩基性シナジスト)を含有する<1>〜<11>のいずれか1つに記載のインクジェット画像形成方法である。
<13> 前記インク組成物は、更に、カルナバワックス、パラフィンワックス及びその誘導体、並びにこれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1種の難水溶性のワックス粒子を含む<1>〜<12>のいずれか1つに記載のインクジェット画像形成方法である。
本発明によれば、ノズルプレートに設けられた撥液膜からのインク組成物の切れ性に優れ、かつ、耐ブロッキング性に優れた画像を形成できるインクジェット画像形成方法を提供することができる。
撥液膜からのインクの切れ性が良い場合のインクの吐出状態を示す概念図である。 撥液膜からのインクの切れ性が悪い場合のインクの吐出状態を示す概念図である。 インクジェットヘッドの内部構造の一例を示す概略断面図である。 ノズルプレートの吐出孔配列の一例を示す概略図である。 本発明の画像形成方法の実施に用いるインクジェット記録装置の構成例を示す概略図である。
以下、本発明のインクジェット画像形成方法について詳細に説明する。
本発明のインクジェット画像形成方法は、記録媒体上に、沖津法によって計算されたSP値が20.00MPa1/2以上である樹脂によってキナクリドン系顔料の表面の少なくとも一部が被覆されてなる樹脂被覆キナクリドン系顔料を含むインク組成物(以下、「インク」ともいう)を、複数の吐出孔が二次元に配列され該吐出孔形成面にフッ素化合物を含む撥液膜が設けられたノズルプレートから吐出するインク吐出工程を有する。本発明のインクジェット画像形成方法は、必要に応じその他の工程を有していてもよい。
インクジェット技術を用いた画像形成方法では、画像形成の高速化の観点から、インクジェット画像形成方法の方式として、複数の吐出孔が二次元に配列され該吐出孔形成面(記録媒体に対向する側の面)に撥液膜が設けられた構成のノズルプレートを用い、該ノズルプレートから記録媒体上にインクを吐出して画像を形成する方式が採用される場合がある。上記構成のノズルプレートを用いることにより、複数の吐出孔から同時にインクを吐出して画像を形成できるので、画像形成が高速化される。
しかしながら、この方式のインクジェット画像形成方法では、ノズルプレートに設けられた撥液膜からのインクの切れ性が低下し、これによりインクの吐出曲がりが生じる場合がある。
以下、インクの切れ性及びインクの吐出曲がりに関し、図1及び図2を参照しながら説明する。
図1は、撥液膜からのインクの切れ性が良い場合のインクの吐出状態を示す概念図であり、図2は、撥液膜からのインクの切れ性が悪い場合のインクの吐出状態を示す概念図である。
図1及び図2は、いずれも、複数の吐出孔102が設けられ、吐出孔102形成面(吐出面)に撥液膜103が設けられたノズルプレート101を用い、該ノズルプレート101からインク110を記録媒体200上に吐出して画像210を形成する様子を示している。
図1に示すように、撥液膜103からのインクの切れ性が良い場合は、撥液膜103上へのインクの付着(残留)が抑制されるので、インクの吐出曲がりも抑制されインク110が吐出孔102の真下に吐出される。これにより、記録媒体200上の所望の位置に画像210が形成される。
これに対し、図2に示すように、撥液膜103からのインクの切れ性が悪い場合には、撥液膜103上へインクが付着して付着インク111となり、付着インク111が撥液膜103上に残留する。この状態でインク110を吐出すると、吐出されたインク110は付着インク111の影響を受け、吐出孔からずれた位置に吐出される(吐出曲がり)。吐出曲がりが生じると、所望の位置とは異なる位置に画像210が形成される。
上述したノズルプレートを備えたインクジェットヘッドの具体例については後述する(図3及び図4参照)。
ところで、顔料としてキナクリドン系顔料を含むインクにおいて、従来は、(例えば加熱下における)インクの経時安定性の観点等から、SP値が低い樹脂(例えば、エチルメタクリレートの共重合比率が高い樹脂等)によってキナクリドン系顔料の表面の少なくとも一部が被覆されてなる樹脂被覆キナクリドン系顔料を用いることが一般的であった。
しかし、SP値が低い樹脂によりキナクリドン系顔料の表面の少なくとも一部が被覆されてなる樹脂被覆キナクリドン系顔料を含むインクを用いると、上述したノズルプレートを用い複数の吐出孔から同時にインクを吐出して高速で画像を形成する場合において、上述したインクの切れ性の低下が特に起こりやすいことが判明した。
本発明者は樹脂被覆キナクリドン系顔料を含むインクの切れ性向上について検討した結果、フッ素化合物を含む撥液膜を備えたノズルプレートを用いる場合において、前記インク中の樹脂被覆キナクリドン系顔料における樹脂として、沖津法によって計算されたSP値が20.00MPa1/2以上である樹脂を選択することにより、インクの切れ性が顕著に向上するとの知見を得た。
インクの切れ性が顕著に向上する理由は明らかではないが、以下のように推測される。
即ち、撥液膜へのインクの付着の主たる要因は、インク中の樹脂被覆キナクリドン系顔料の撥液膜への付着であると考えられる。
そこで、樹脂被覆キナクリドン系顔料においてキナクリドン系顔料を被覆する樹脂のSP値と、フッ素化合物を含む撥液膜のSP値(例えば、16.00MPa1/2以下)と、に差を設けること、具体的には該樹脂のSP値を20.00MPa1/2以上とすることにより、撥液膜と樹脂被覆キナクリドン系顔料との親和性が低下するので、撥液膜への樹脂被覆キナクリドン系顔料の付着が抑制され、ひいては撥液膜へのインクの付着が抑制されるものと推測される。
また、一般に、上述のノズルプレートを用いた画像形成(特に、シングルパス方式による画像形成)では、画像形成の速度が上がる結果、画像が形成された記録媒体同士が積み重ねられる速度も速くなる傾向がある。画像が形成された記録媒体同士が積み重ねられる速度が速くなると、記録媒体上に形成された画像と該画像の上に積まれた別の記録媒体とが接着して画像が損傷を受ける現象が生じやすくなる。この現象は、ブロッキングと呼ばれている。
ブロッキングは、インクの吐出精度が悪い場合(即ち、画像中に、意図しないインクドットの重なりが生じ、局所的にインク量が多い部位が生じている場合)に特に顕著に現れる傾向がある。
特に、SP値が低い樹脂によりキナクリドン系顔料の表面の少なくとも一部が被覆されてなる樹脂被覆キナクリドン系顔料を含むインクでは、上述したとおりインクの切れ性が低下し、吐出精度が低下しやすいため、ブロッキングが発生しやすい傾向がある。
これに対し、本発明の画像形成方法では、沖津法によって計算されたSP値が20.00MPa1/2以上である樹脂によってキナクリドン系顔料の表面の少なくとも一部が被覆されてなる樹脂被覆キナクリドン系顔料を含むインク組成物を用いることにより、上記ブロッキングが抑制される(即ち、耐ブロッキング性が向上する)。
樹脂のSP値が20.00MPa1/2以上であることによりブロッキングが抑制される理由は明らかではないが、樹脂のSP値が20.00MPa1/2以上であることにより、インクの吐出精度が向上し、意図しないインクドットの重なりが抑制されるためと推測される。
以上により、本発明のインクジェット画像形成方法によれば、ノズルプレートに設けられた撥液膜からのインク組成物の切れ性が向上し、かつ、耐ブロッキング性に優れた画像が形成される。
本発明におけるSP値は、沖津法により計算されたSP値(単位:MPa1/2)を指す。
ここで、沖津法とは、日本接着学会誌Vol.29,No.6(1993)249〜259項に記載された理論式(沖津俊直により提案されている溶解性パラメータ(SP値)の理論式)を用いたSP値の計算方法である。
本発明における樹脂のSP値は以下のようにして求められた値を指す。
まず、該樹脂を形成するための各重合性化合物(以下、重合性化合物を「モノマー」ともいう)のSP値を沖津法により求める。
次に、モノマー種毎に、モノマーのSP値と樹脂中における該モノマーの質量分率との積を求める。
次に、モノマー種毎に求められた上記の積を合算することにより、樹脂のSP値が求められる。
例えば、SP値15MPa1/2のモノマーA(10質量%)と、SP値18MPa1/2のモノマーB(20質量%)と、SP値20MPa1/2のモノマーC(70質量%)と、の共重合体である樹脂aのSP値は、下記式により求められる。
樹脂aのSP値(MPa1/2
=15(MPa1/2)×(10/100)+18(MPa1/2)×(20/100)+20(MPa1/2)×(70/100)
=19.1(MPa1/2
また、本発明におけるインク組成物は、25℃における電気伝導度が、200mS/m以下であることが好ましく、130mS/m以下であることがより好ましく、110mS/m以下であることが特に好ましい。
電気伝導度が上記範囲であることにより、撥液膜からのインクの切れ性がより向上する。
インク組成物における電気伝導度は、例えば、樹脂被覆キナクリドン系顔料における樹脂の選択により調整することができる。
以下、まず、本発明のインクジェット画像形成方法に用いられるインク組成物について説明し、引き続き、本発明におけるインク吐出工程、及び必要に応じ設けられるその他の工程(処理液付与工程等)について説明する。
<インク組成物>
本発明におけるインク組成物は、前記SP値が20.00MPa1/2以上である樹脂によってキナクリドン系顔料の表面の少なくとも一部が被覆されてなる樹脂被覆キナクリドン系顔料を含み、必要に応じその他の成分を含む。
前記樹脂被覆キナクリドン系顔料は、キナクリドン系顔料の表面の少なくとも一部が、樹脂によって被覆された構成となっている。キナクリドン系顔料を樹脂被覆キナクリドン系顔料の形成でインク組成物中に含有させることにより、インク組成物中におけるキナクリドン系顔料の分散安定性が向上する。
更に、前記樹脂のSP値が20.00MPa1/2以上であることにより、ノズルプレートに設けられたフッ素化合物を含む撥液膜からのインク組成物の切れ性が向上する効果、及び、画像の耐ブロッキング性が向上する効果が得られる。
これらの効果をより効果的に奏する観点より、前記樹脂のSP値は、20.50MPa1/2以上であることが好ましい。
前記樹脂のSP値の上限には特に限定はないが、分散安定性及びインクの経時安定性の観点からは、該上限は、21.50MPa1/2であることが好ましく、21.00MPa1/2であることがより好ましい。前記樹脂のSP値が21.50MPa1/2以下であると、樹脂の水中への溶解及び該溶解による分散安定性の低下をより抑制でき、該分散安定性の低下に伴うインクの経時安定性の低下をより抑制できる。
前記樹脂のSP値を20.00MPa1/2以上とするための具体的な方法としては、該樹脂を形成するための重合性化合物(以下、「モノマー」ともいう)として、比較的SP値が高い重合性化合物を用いる方法が好適である。
例えば、従来、樹脂を形成するための重合性化合物の一種として、一般にエチルメタクリレートが用いられることがあったが、エチルメタクリレートのSP値は18.98Pa1/2である。
本発明では、該樹脂を形成するための重合性化合物として、エチルメタクリレートの使用量を抑え、かつ、エチルメタクリレートよりもSP値が高い重合性化合物(例えば、SP値が19.40MPa1/2以上の重合性化合物(例えば、(メタ)アクリル酸エステル))を用いることで、樹脂全体のSP値を20.00MPa1/2以上に調整し易い。
以下では、SP値が19.40MPa1/2以上の重合性化合物を、「高SP値モノマー」と称することがある。
前記高SP値モノマーとしては、分散安定性及びインクの経時安定性をより良好に維持できる点で、(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。
なお、本発明において、「(メタ)アクリル酸」はアクリル酸又はメタクリル酸を表し、「(メタ)アクリル酸エステル」(「(メタ)アクリレート」)はアクリル酸エステル(アクリレート)又はメタクリル酸エステル(メタクリレート)を表す。
前記高SP値モノマーの具体例を以下に示すが、本発明は以下の具体例に限定されることはない。以下の具体例において、カッコ内の数値はSP値(単位:MPa1/2)を表す。
前記高SP値モノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸エステルとして、フェノキシエチルメタクリレート(20.68)、メチルメタクリレート(19.50)、ヒドロキシエチルメタクリレート(22.89)、ベンジルメタクリレート(20.21)、フェノキシエチルアクリレート(22.42)、メチルアクリレート(23.45)、ヒドロキシエチルアクリレート(27.34)、ベンジルアクリレート(22.15)、2−カルボキシエチルメタクリレート(23.04)、2−カルボキシエチルアクリレート(23.58)、N,N−ジメチルアミノエチルメタリレート(19.47)、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート(19.59)、モルホリノエチルメタクリレート(21.44)、モルホリノエチルアクリレート(21.68)、テトラヒドロフルフリルメタクリレート(20.03)、テトラヒドロフルフリルアクリレート(20.19)、グリシジルメタクリレート(21.82)、グリシジルアクリレート(22.23)等が挙げられる。
また、前記高SP値モノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸エステル以外の重合性化合物として、無水マレイン酸(30.93)、アクリルアミド(42.44)、メタクリルアミド(37.34)、が挙げられる。
前記高SP値モノマーとしては(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、より好ましくは、メチルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、2−カルボキシエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタリレート、モルホリノエチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、グリシジルメタクリレートであり、更に好ましくは、フェノキシエチルメタクリレート、メチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ベンジルメタクリレートである。
本発明において、樹脂全体のSP値を20.00MPa1/2以上に容易に調整する観点からは、前記樹脂の構成を、前記高SP値モノマーに由来する構造単位を含む構成とすることが好ましい。
この観点からみて、更に好ましくは、前記樹脂の構成を、前記高SP値モノマーに由来する構造単位を該樹脂の全量に対して20質量%〜90質量%(更に好ましくは30質量%〜90質量%、特に好ましくは30質量%〜80質量%)含む構成とすることである。
樹脂の全量に対する前記高SP値モノマーに由来する構造単位の含有量(以下、単に「高SP値モノマーに由来する構造単位の含有量」ともいう)が20質量%以上であると、樹脂全体のSP値を20.00MPa1/2以上により容易に調整できる。
前記高SP値モノマーに由来する構造単位として、好ましくは、メチルメタクリレートに由来する構造単位、ベンジルメタクリレートに由来する構造単位、フェノキシエチルメタクリレートに由来する構造単位、ヒドロキシエチルメタクリレートに由来する構造単位、2−カルボキシエチルメタクリレートに由来する構造単位、N,N−ジメチルアミノエチルメタリレートに由来する構造単位、モルホリノエチルメタクリレートに由来する構造単位、テトラヒドロフルフリルメタクリレートに由来する構造単位、及び、グリシジルメタクリレートに由来する構造単位からなる群から選択される少なくとも1種である。
前記高SP値モノマーに由来する構造単位として、更に好ましくは、メチルメタクリレートに由来する構造単位、ベンジルメタクリレートに由来する構造単位、フェノキシエチルメタクリレートに由来する構造単位、及びヒドロキシエチルメタクリレートに由来する構造単位からなる群から選択される少なくとも1種である。
一方、インク組成物の吐出安定性をより向上させるという観点からみると、前記高SP値モノマーに由来する構造単位の含有量は高すぎないことも好ましい。この観点からみると、前記高SP値モノマーに由来する構造単位の含有量は、60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。
前記高SP値モノマーに由来する構造単位の含有量が60質量%以下であれば、インク組成物の吐出安定性がより向上する。この理由は、該含有量が60質量%以下であることにより、前記ノズルプレートの吐出孔の目詰まりが抑制されるためと考えられる。インク組成物の吐出安定性が向上することにより、例えば、インク組成物を吐出した後のノズルプレートをそのまま放置し、再び、該ノズルプレートからのインク組成物の吐出を再開した場合においても、不吐出の吐出孔(以下、「ノズル」ともいう)の発生をより抑制しながら、より安定的にインク組成物を吐出できる。
前記高SP値モノマーに由来する構造単位の含有量は、樹脂全体のSP値を20.00MPa1/2以上に調整する際の調整容易性と、インク組成物の吐出安定性向上と、をより好適に両立させる観点からは、30質量%〜60質量%が好ましく、30質量%〜50質量%がより好ましい。このときの高SP値モノマーに由来する構造単位の好ましい種類についても前述のとおりである。
以下、本発明における樹脂、キナクリドン系顔料、及び樹脂被覆キナクリドン系顔料について説明し、引き続き、必要に応じ用いられるインク組成物中のその他の成分について説明する。
(樹脂)
前記樹脂としては特に限定はないが、分散安定性及びインクの経時安定性の観点からは、疎水性構造単位と親水性構造単位とを含む樹脂が好ましい。
また、前記樹脂としては、分散安定性及びインクの経時安定性の観点からは、水不溶性樹脂であることが好ましい。
ここで「水不溶性」とは、水100質量部(25℃)に対する溶解量が5.0質量部以下であることを指す。
前記疎水性構成単位を構成するモノマーとしては、芳香族基含有モノマー(例えば、スチレン系モノマー、芳香族基含有(メタ)アクリル酸エステル等)や芳香族基を含有しない(メタ)アクリル酸エステル(例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル)等を挙げることができる。
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、SP値の観点から、メチル(メタ)アクリレートが最も好ましい。
また前記親水性構成単位を構成するモノマーとしては、親水性基を含むモノマーであれば特に制限はない。前記親水性基としては、ノニオン性基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等を挙げることができる。尚、ノニオン性基は後述の自己分散性樹脂におけるノニオン性基と同義である。
前記親水性構成単位は、分散安定性の観点から、少なくともカルボキシル基を含むことが好ましく、ノニオン性基、とカルボキシル基を共に含む形態であることもまた好ましい。
本発明では、疎水性構造単位を形成するためのモノマーとして、前記高SP値モノマーを、好ましくは樹脂全量に対する共重合比として20質量%〜90質量%(より好ましくは30質量%〜60質量%、更に好ましくは30質量%〜50質量%)用いることが好ましい。
前記樹脂の好ましい形態としては、疎水性構成単位としての前記高SP値モノマーに由来する構造単位20質量%〜90質量%(より好ましくは30質量%〜60質量%、更に好ましくは30質量%〜50質量%)と、親水性構造単位2〜20質量%(より好ましくは5〜15質量%、特に好ましくは8〜12質量%)と、を含む形態が挙げられる。
また、本発明における樹脂は、本発明の効果を妨げない範囲であれば、SP値が19.40MPa1/2未満(更には19.20MPa1/2以下。以下同じ。)の重合性化合物(例えば、エチルメタクリレート)に由来する構造単位を含んでいてもよい。
本発明における樹脂において、インク組成物の切れ性及び画像の耐ブロッキング性向上の観点からは、SP値が19.40MPa1/2未満の重合性化合物に由来する構造単位の含有量は少ない方が好ましく、具体的には、樹脂全量に対し、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることが更に好ましく、20質量%以下であることが更に好ましい。
その一方で、インク組成物の吐出安定性をより向上させる観点からは、SP値が19.40MPa1/2未満の重合性化合物に由来する構造単位(例えば、エチルメタクリレート)の含有量は少なすぎないことも好ましく、具体的には、樹脂全量に対し、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましい。
インク組成物の切れ性向上、画像の耐ブロッキング性向上、及びインク組成物の吐出安定性向上のバランスの観点からみて、SP値が19.40MPa1/2未満の重合性化合物に由来する構造単位の含有量は、樹脂全量に対し、10質量%〜50質量%が好ましい。
本発明において、インク組成物の切れ性向上、画像の耐ブロッキング性向上、及びインク組成物の吐出安定性向上のバランスの観点からみた前記樹脂の特に好ましい形態は、高SP値モノマーに由来する構造単位としての芳香族基含有(メタ)アクリル酸エステル(例えば、フェノキシエチルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、特に好ましくはベンジルメタクリレート)に由来する構造単位20質量%〜80質量%(より好ましくは30質量%〜60質量%、更に好ましくは30質量%〜50質量%)と、SP値が19.40MPa1/2未満の重合性化合物に由来する構造単位(例えば、エチルメタクリレート)に由来する構造単位10〜50質量%と、親水性構造単位としてのカルボキシル基含有モノマー(例えば、メタクリル酸)に由来する構造単位2〜20質量%(より好ましくは5〜15質量%、特に好ましくは8〜12質量%)と、を含む形態である。
また、本発明における樹脂の酸価としては、顔料分散性、保存安定性の観点から、30mgKOH/g以上100mgKOH/g以下であることが好ましく、30mgKOH/g以上85mgKOH/g以下であることがより好ましく、50mgKOH/g以上85mgKOH/g以下であることが特に好ましい。
なお、酸価とは、樹脂の1gを完全に中和するのに要するKOHの質量(mg)で定義され、JIS規格(JISK0070、1992)記載の方法により測定されるものである。
また、本発明における樹脂の分子量としては、重量平均分子量(Mw)で20,000以上が好ましく、20,000〜150,000がより好ましく、更に好ましくは20,000〜100,000であり、特に好ましくは20,000〜80,000である。分子量が20,000以上であると、分散剤としての立体反発効果が良好になる傾向があり、立体効果によりキナクリドン系顔料へ吸着し易くなる。
前記分子量の下限として、より好ましくは25,000以上であり、更に好ましくは30,000以上である。
また、数平均分子量(Mn)では1,000〜100,000の範囲程度のものが好ましく、3,000〜50,000の範囲程度のものが特に好ましい。数平均分子量が前記範囲内であると、キナクリドン系顔料における被覆膜としての機能又はインク組成物の塗膜としての機能を発揮することができる。本発明における樹脂は、アルカリ金属や有機アミンの塩の形で使用されることが好ましい。
また、本発明における樹脂の分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)としては、1〜6の範囲が好ましく、1〜4の範囲がより好ましい。分子量分布が前記範囲内であると、インクの分散安定性、吐出安定性を高められる。
本発明において、数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で測定される。GPCは、HLC−8020GPC(東ソー(株)製)を用い、カラムとして、TSKgel、Super Multipore HZ−H(東ソー(株)製、4.6mmID×15cm)を3本用い、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いて溶媒THFにて検出し、標準物質としてポリスチレンを用いて換算することにより求められる分子量である。条件としては、試料濃度を0.35/min、流速を0.35ml/min、サンプル注入量を10μl、測定温度を40℃とし、IR検出器を用いて行なった。また、検量線は、東ソー(株)製「標準試料TSK standard,polystyrene」:「F−40」、「F−20」、「F−4」、「F−1」、「A−5000」、「A−2500」、「A−1000」、「n−プロピルベンゼン」の8サンプルから作製するものである。
本発明における樹脂は、種々の重合方法、例えば溶液重合、沈澱重合、懸濁重合、沈殿重合、塊状重合、乳化重合により合成することができる。重合反応は、回分式、半連続式、連続式等の公知の操作で行なうことができる。重合の開始方法は、ラジカル開始剤を用いる方法、光又は放射線を照射する方法等がある。これらの重合方法、重合の開始方法は、例えば、鶴田禎二「高分子合成方法」改定版(日刊工業新聞社刊、1971)や大津隆行、木下雅悦共著「高分子合成の実験法」化学同人、昭和47年刊、124〜154頁に記載されている。
前記重合方法のうち、特にラジカル開始剤を用いた溶液重合法が好ましい。溶液重合法で用いられる溶剤は、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ベンゼン、トルエン、アセトニトリル、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール等の種々の有機溶剤が挙げられる。溶剤は、1種単独で又は2種以上を併用してもよい。また、水との混合溶媒として用いてもよい。重合温度は、生成するポリマーの分子量、開始剤の種類などと関連して設定する必要があり、通常は0℃〜100℃程度であるが、50〜100℃の範囲で重合を行なうことが好ましい。反応圧力は、適宜選定可能であるが、通常は1〜100kg/cmであり、特に1〜30kg/cm程度が好ましい。反応時間は、5〜30時間程度である。得られた樹脂は、再沈殿などの精製を行なってもよい。
次に、前述の疎水性構造単位及び親水性構造単位について説明する。
−疎水性構造単位−
前記疎水性構造単位としては、芳香族基含有モノマーに由来する構造単位及び(メタ)アクリルエステルに由来する構造単位が挙げられる。
前記芳香族基含有モノマーに由来する構造単位としては、下記一般式(I)で表される構造単位が好ましい。
前記一般式(I)において、Rは、水素原子、メチル基、又はハロゲン原子を表す。
また、前記一般式(I)において、Lは、−COO−、−OCO−、−CONR−、−O−、又は置換もしくは無置換のフェニレン基を表し、Rは水素原子、炭素数1〜10のアルキル基を表す。なお、Lで表される基中の*印は、主鎖に連結する結合手を表す。フェニレン基が置換されている場合の置換基としては、特に限定されないが、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、水酸基等、シアノ基等が挙げられる。
前記Rとしては、分散安定性の観点から、水素原子又はメチル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
前記Lとしては、分散安定性の観点から、−COO−が特に好ましい。
また、前記一般式(I)において、Lは、単結合、又は炭素数1〜30の2価の連結基を表す。
前記2価の連結基として、好ましくは炭素数1〜25の連結基であり、より好ましくは炭素数1〜20の連結基であり、更に好ましくは炭素数1〜15の連結基である。中でも、特に好ましくは、炭素数1〜25(より好ましくは1〜10)のアルキレンオキシ基、イミノ基(−NH−)、スルファモイル基、及び、炭素数1〜20(より好ましくは1〜15)のアルキレン基やエチレンオキシド基[−(CHCHO)−,n=1〜6(好ましくは1又は2)]などの、アルキレン基を含む2価の連結基等、並びにこれらの2種以上を組み合わせた基などである。
前記Lとしては、分散安定性の観点から、単結合、又はエチレンオキシド基[−(CHCHO)−,n=1〜6(好ましくは1又は2)]が特に好ましい。
また、前記一般式(I)において、Arは、無置換又は置換の芳香族環を表す。芳香族環が置換されている場合の置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、水酸基、シアノ基などを挙げることができ、縮環を形成していてもよい。縮環を形成している場合、例えば、炭素数8以上の縮環型芳香環、又はヘテロ環が縮環した芳香環が挙げられる。
前記「炭素数8以上の縮環型芳香環」は、少なくとも2以上のベンゼン環が縮環した芳香環、少なくとも1種の芳香環と該芳香環に縮環して脂環式炭化水素で環が構成された炭素数8以上の芳香族化合物である。具体的な例としては、ナフタレン、アントラセン、フルオレン、フェナントレン、アセナフテンなどが挙げられる。
前記「ヘテロ環が縮環した芳香環」とは、ヘテロ原子を含まない芳香族化合物(好ましくはベンゼン環)と、ヘテロ原子を有する環状化合物とが縮環した化合物である。ここで、ヘテロ原子を有する環状化合物は、5員環又は6員環であることが好ましい。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子が好ましい。ヘテロ原子を有する環状化合物は、複数のヘテロ原子を有していてもよい。この場合、ヘテロ原子は互いに同じでも異なっていてもよい。ヘテロ環が縮環した芳香環の具体例としては、フタルイミド、アクリドン、カルバゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾールなどが挙げられる。
Arで表される芳香族環は、連結基を介して樹脂の主鎖に結合するので(即ち、芳香族環が主鎖に直接結合しないので)、疎水性の芳香族環と親水性構造単位との間に適切な距離が維持され、樹脂はキナクリドン系顔料との間で相互作用しやすく、強固に吸着して分散性が高められる。
前記Arとしては、無置換のベンゼン環、無置換のナフタレン環が好ましく、無置換のベンゼン環が特に好ましい。
以下、前記一般式(I)で表される構造単位を形成するためのモノマーの具体例を以下に示す。
疎水性構造単位としては、上述した構造単位以外にも、(メタ)アクリルアミド類、スチレン類、及びビニルエステル類などのビニルモノマー類に由来する構造単位を適宜選択することができる。
−親水性構造単位−
前記親水性構造単位としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸に由来の構造単位が好ましく、前記樹脂中にはアクリル酸に由来の構造単位もしくはメタクリル酸に由来の構造単位のいずれか又は両方を含むことが好ましい。
このほかの親水性構造単位としては、非イオン性の親水性基を有するモノマーに由来の構造単位が挙げられ、例えば、親水性の官能基を有する(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類、及びビニルエステル類等の、親水性の官能基を有するビニルモノマー類を挙げることができる。
「親水性の官能基」としては、水酸基、アミノ基、(窒素原子が無置換の)アミド基、及び後述のポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のアルキレンオキシドが挙げられる。
非イオン性の親水性基を有する親水性構造単位を形成するモノマーとしては、エチレン性不飽和結合等の重合体を形成しうる官能基と非イオン性の親水性の官能基とを有していれば、特に制限はなく、公知のモノマーから選択することができる。具体的な例としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、アミノエチルアクリレート、アミノプロピルアクリレート、アルキレンオキシド重合体を含有する(メタ)アクリレートを好適に挙げることができる。
非イオン性の親水性基を有する親水性構造単位は、対応するモノマーの重合により形成することができるが、重合後のポリマー鎖に親水性の官能基を導入してもよい。
非イオン性の親水性基を有する親水性構造単位は、アルキレンオキシド構造を有する親水性の構造単位がより好ましい。アルキレンオキシド構造のアルキレン部位としては、親水性の観点から、炭素数1〜6のアルキレン部位が好ましく、炭素数2〜6のアルキレン部位がより好ましく、炭素数2〜4のアルキレン部位が特に好ましい。また、アルキレンオキシド構造の重合度としては、1〜120が好ましく、1〜60がより好ましく、1〜30が特に好ましい。
また、非イオン性の親水性基を有する親水性構造単位は、水酸基を含む親水性の構造単位であることも好ましい態様である。構造単位中の水酸基数としては、特に制限はなく、樹脂の親水性、重合時の溶媒や他のモノマーとの相溶性の観点から、1〜4が好ましく、1〜3がより好ましく、1〜2が特に好ましい。
(キナクリドン系顔料)
本発明におけるキナクリドン系顔料としては、その種類に特に制限はなく、従来公知のキナクリドン系顔料を用いることができる
本発明におけるキナクリドン系顔料を構成するキナクリドン系化合物としては、例えば、下記一般式(A)で表される化合物が挙げられる。
−Q−Y ・・・(A)
前記一般式(A)において、Qは、キナクリドン残基又はキナクリドンキノン残基を表す。X及びYは、各々独立に、水素原子、メチル基、クロル基、又はメトキシ基を表し、m及びnは、各々独立に1〜4の整数を表す。
前記一般式(A)で表されるキナクリドン系化合物の具体例としては、無置換のキナクリドン、2,9−ジメチルキナクリドン、2,9−ジクロルキナクリドン、2,9−ジメトキシキナクリドン、3,10−ジメチルキナクリドン、3,10−ジクロルキナクリドン、3,10−ジメトキシキナクリドン、4,11−ジメチルキナクリドン、4,11−ジクロルキナクリドン、4,11−ジメトキシキナクリドン、キナクリドンキノン等が挙げられる。
また、前記キナクリドン系顔料としては、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド202、C.I.ピグメント・レッド206、C.I.ピグメント・レッド207、C.I.ピグメント・レッド209、及びC.I.ピグメント・バイオレット19を挙げることができる。
前記キナクリドン系顔料は、本発明の効果をより効果的に奏する観点より、2,9−ジメチルキナクリドンであるC.I.ピグメント・レッド122を含むことが好ましい。
本発明においてキナクリドン系顔料は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明におけるインク組成物中のキナクリドン系顔料の含有量(2種以上の場合には総含有量)は、インク組成物の全量に対し、1.0質量%以上であることが好ましく、2.0質量%以上であることがより好ましく、4.0質量%以上であることが特に好ましい。
該含有量が1.0質量%以上であると、画像の光学濃度がより向上する。また、該含有量が1.0質量%以上であると、キナクリドン系顔料を被覆するための樹脂の含有量も増大する傾向があるため、本発明によるインクの切れ性向上の効果及び耐ブロッキング性向上の効果がより顕著に奏される。
該含有量の上限については特に限定はないが、20.0質量%が好ましく、15.0質量%がより好ましく、8.0質量%が更に好ましく、7.0質量%が特に好ましい。
−キナクリドン固溶体顔料−
本発明におけるキナクリドン系顔料は、2種以上のキナクリドン系化合物を含むキナクリドン固溶体顔料を含有することも好ましい。
これにより、記録媒体への画像の密着性がより向上する。
前記キナクリドン固溶体顔料は、2種以上のキナクリドン系化合物を固溶体化して得られるものであり、色調に優れ、良好な色再現域を示すと共に、耐候性、耐溶剤性等の諸物性をも示す顔料である。
固溶体顔料は、2種又はそれ以上の異なる顔料あるいは顔料類似骨格を有する化合物が、物理的、化学的に安定な状態でその一方が他方の構造の中に入り込み、平衡状態では単一の相をなす固体混合物あるいは結晶体が他種の結晶体を溶かし込んだものが考えられる。具体的には、例えば複数の顔料分子の混晶として存在する顔料が挙げられ、したがって2種以上の顔料を単純に混合してなるものとは区別される。
前記キナクリドン固溶体顔料を構成するキナクリドン系化合物としては、前述の一般式(A)で表される化合物が挙げられる。一般式(A)で表される化合物の好ましい範囲も前述のとおりである。
キナクリドン固溶体顔料の好適な例としては、色相及び色再現域の観点から、無置換のキナクリドン、ジメチル置換キナクリドン、及びジクロル置換キナクリドンからなる群から選ばれる少なくとも2種を含む固溶体顔料が挙げられる。より具体的には、前記同様の理由から、(1)無置換のキナクリドンとジメチル置換キナクリドン(例:2,9−ジメチルキナクリドン等)との固溶体顔料、(2)無置換のキナクリドンとジクロル置換キナクリドン(例:2,9−ジクロルキナクリドン、3,10−ジクロルキナクリドン等)との固溶体顔料、(3)ジメチル置換キナクリドン(例:2,9−ジメチルキナクリドン等)とジクロル置換キナクリドン(例:2,9−ジクロルキナクリドン、3,10−ジクロルキナクリドン等)との固溶体顔料、等が挙げられる。
上記のうち、色相及び色再現域の観点から、(1)無置換のキナクリドンとジメチル置換キナクリドンとの固溶体顔料、及び(2)無置換のキナクリドンとジクロル置換キナクリドンとの固溶体顔料が好ましい。より具体的には、色相の観点から、無置換のキナクリドン(C.I.ピグメント・バイオレット19等)と2,9−ジメチルキナクリドン(C.I.ピグメント・レッド122等)との固溶体顔料、及び無置換キナクリドン(C.I.ピグメント・バイオレット19等)と2,9−ジクロル置換キナクリドン(C.I.ピグメント・レッド202等)との固溶体顔料が好ましい。更には、無置換のキナクリドン(C.I.ピグメント・バイオレット19等)と2,9−ジクロル置換キナクリドン(C.I.ピグメント・レッド202等)との固溶体顔料が好ましい。
なお、無置換のキナクリドンとしては、α型、β型、γ型のいずれも用いることができるが、保存安定性の観点から、β型又はγ型無置換キナクリドンが好ましい。例えば、特開平10−219166号公報に記載の固溶体マゼンタ顔料を用いることもできる。
キナクリドン固溶体顔料における、無置換のキナクリドン/ジメチル置換キナクリドンの質量比、無置換のキナクリドン/ジクロル置換キナクリドンの質量比、及びジメチル置換キナクリドン/ジクロル置換キナクリドンの質量比は、インク組成物の吐出信頼性、画像濃度、彩度等の観点から、5/95〜95/5が好ましく、より好ましくは10/90〜90/10である。
キナクリドン固溶体顔料は、公知の方法により製造することができる。
例えば、(i)粗製された無置換のキナクリドンとキナクリドン系化合物とを苛性アルカリの存在下、非プロトン系極性有機溶剤に溶解し、酸で中和再沈する方法(詳細は特開昭60−35055号公報の記載を参照できる。)、
(ii)可溶化量のアルコール及び塩基の存在下、粗又は補助顔料のキナクリドン化合物を粉砕し、得られる固体溶液を単離する方法(詳細は特開平2−38463号公報を参照できる。)、及び
(iii)2種以上の2,5−ジアリールアミノテレフタル酸誘導体を縮合環化させた後、顔料化処理(結晶形、大きさ、結晶型の制御)を施す方法(詳細は特開平10−219166号公報を参照できる。)、
等が挙げられる。
キナクリドン固溶体顔料の形態は、粉末状、顆粒状、塊状の乾燥顔料のいずれでもよく、ウェットケーキやスラリーでもよい。
また、キナクリドン固溶体顔料の平均粒径は、保存安定性の観点から、0.01〜0.3μmが好ましく、より好ましくは0.03〜0.2μmである。なお、平均粒径は、電子顕微鏡(TEM)による画像解析(2万倍)により、100個の顔料の長径の平均値より求められる値である。
キナクリドン固溶体顔料の含有比率としては、樹脂被覆キナクリドン系顔料の全質量に対して、質量基準で10%以上の範囲が好ましく、20%以上の範囲がより好ましい。
また、キナクリドン固溶体顔料のインク組成物中における含有量としては、インク組成物の全質量に対して、1〜15質量%が好ましく、より好ましくは2〜8質量%である。キナクリドン固溶体顔料の含有量が1質量%以上であることで、色相や色再現域がより良好になり、また該含有量が15質量%以下であることで、分散性及びその安定性を良好に維持する点で有利である。
固溶体顔料は、X線回折分析により確認することが可能である。すなわち、
固溶体顔料では、単なる顔料混合物のX線回折パターンとは異なる結晶独自の回折パターンを示すのに対し、単なる顔料混合物では、X線回折パターンが顔料それぞれのX線回折パターンの重ね合わせに相当するパターンとなり、そのピーク強度も複数の顔料の配合比率に比例する。このことから、固溶体顔料を単なる顔料混合物と区別できる。
−塩基性シナジスト−
本発明におけるキナクリドン系顔料が前記キナクリドン固溶体顔料を含有する場合、本発明におけるキナクリドン系顔料は、該キナクリドン固溶体顔料に加え、塩基性シナジストの少なくとも1種を含有することが好ましい。
これにより、樹脂被覆キナクリドン系顔料としたときに、キナクリドン固溶体顔料の表面を覆う前記樹脂の密着性がより向上し、分散性及び分散安定性がより向上する。更に、記録媒体への画像の密着性がより向上する。
一般に、シナジストとは、顔料を形成する色材の化学構造と類似する部分構造と少なくとも1種の親水性基とを有する顔料誘導体を意味する。
前記塩基性シナジストは、前記親水性基の少なくとも1種が塩基性基である形態のシナジストである。以下では、塩基性シナジストを、単に「シナジスト」と称することがある。
前記塩基性シナジストは、キナクリドン固溶体顔料に対して、例えば、疎水性相互作用やπ−π相互作用で吸着し、シナジストが有する塩基性基によって顔料表面を塩基性にすることができる。ここで、例えば、顔料分散剤としてアニオン性基を有する前記樹脂を用いる場合、顔料と顔料分散剤との親和性を大きくすることができ、顔料の分散安定性をより効果的に向上させることができる。
前記塩基性基は、塩基性化合物から少なくとも1つの原子を取り除いて形成される基を意味する。塩基性化合物としては、2級もしくは3級モノアミン、ジアミン、飽和環状アミン、不飽和環状アミン、カルボキシル基含有飽和環状アミン、カルボキシル基含有不飽和環状アミン、水酸基含有飽和環状アミン、水酸基含有不飽和環状アミン、あるいは環状ジアミンを挙げることができる。
前記塩基性化合物の具体例としては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N−ジメチルアミノエチルアミン、N−メチルピペラジン、1−アミノ−4−メチルピペラジン、1−シクロペンチルピペラジン、2,6−ルペチジン、3−ピペリジンメタノール、ピペコリン酸、イソニペコチン酸、イソニコペチン酸メチル、2−ピペリジンエタノール、ピペリジン、2−ピペコリン、ピロリジン、3−ヒドロキシピロリジン、N−アミノエチルピペリジン、N−アミノエチルモルホリン、N−アミノプロピルピペリジン、N−アミノプロピルモルホリン等が挙げられる。
前記塩基性基は、分散状態の経時安定性の観点から、ジアルキルアミノ基、モルホリノ基、ピペラジニル基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、ピリジル基、トリアジニル基から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
また、前記シナジストが有する塩基性基は、1種のみであっても2種以上であってもよい。
顔料を形成する色材の化学構造と類似する部分構造としては、顔料を形成し得る化合物に類似する部分構造であれば、特に制限はない。該部分構造を構成する化合物としては、顔料に対する吸着性の観点から、キナクリドン誘導体、トリアジン誘導体、アクリドン誘導体、及びアントラキノン誘導体から選ばれる1種又は2種以上であることが好ましく、キナクリドン誘導体、トリアジン誘導体がより好ましく、キナクリドン誘導体が更に好ましい。
前記塩基性シナジストは、顔料を形成する色材の化学構造に類似する部分構造と、少なくとも1種の塩基性基を有するが、前記塩基性基に加えてその他の置換基を有していてもよい。その他の置換基としては、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等)、水酸基、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、フェニル基等の置換基を挙げることができる。前記塩基性シナジストは、その他の置換基を単独または2種以上を組み合わせて有していてもよい。
前記塩基性シナジストは、例えば、特開2003−43680号公報、特開2007−131832号公報に記載の合成方法に準じて、種々のシナジストを容易に合成することができる。具体的な合成経路として、キナクリドン誘導体、トリアジン誘導体、アクリドン誘導体若しくはアントラキノン誘導体に、反応性置換基(例えば酸ハライド、アルキルハライド)を導入した後、該反応性置換基と塩基性置換基を有する化合物(例えば、N,N−ジメチルアミノエチルアミン等)とを反応させることにより得ることができる。
中でも、前記塩基性シナジストとしては、ジアルキルアミノ基、モルホリノ基、ピペラジニル基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、ピリジル基、及びトリアジニル基から選ばれる少なくとも1つの塩基性基と、キナクリドン誘導体、トリアジン誘導体、アクリドン誘導体、又はアントラキノン誘導体に由来する構造部分とを有するものが好ましい。
前記塩基性シナジストの含有比率は、分散安定性の観点から、本発明における樹脂に対して、質量基準で0.05%以上0.4%以下の範囲が好ましく、0.1%以上0.3%以下の範囲がより好ましい。
また、前記塩基性シナジストの含有比率は、分散安定性の観点から、キナクリドン固溶体顔料100質量部に対して、0.5〜20質量部が好ましく、より好ましくは1〜10質量部である。シナジストの含有量が0.5質量部以上であることで、固溶体顔料の水系媒体中における分散性及びその安定性がより向上する。また、シナジストの含有量が20質量部以下であることで、吐出性の点で有利となる。
(樹脂被覆キナクリドン系顔料)
本発明における樹脂被覆キナクリドン系顔料において、キナクリドン系顔料(p)と樹脂(r)との比率(p:r)は、質量比で100:25〜100:140が好ましく、より好ましくは100:25〜100:50である。比率(p:r)は、樹脂が100:25の割合以上であると分散安定性と耐擦性が良化する傾向にあり、樹脂が100:140の割合以下であると分散安定性が良化する傾向がある。
本発明における樹脂被覆キナクリドン系顔料は、樹脂及びキナクリドン系顔料等を用いて従来の物理的、化学的方法によって製造することができる。例えば、特開平9−151342号、特開平10−140065号、特開平11−209672号、特開平11−172180号、特開平10−25440号、又は特開平11−43636号の各公報に記載の方法により製造することができる。具体的には、特開平9−151342号及び特開平10−140065号の各公報に記載の転相乳化法と酸析法等が挙げられ、中でも、分散安定性の点で転相乳化法が好ましい。
a)転相乳化法
転相乳化法は、基本的には、自己分散能又は溶解能を有する樹脂と顔料との混合溶融物を水に分散させる自己分散(転相乳化)方法である。また、この混合溶融物には、硬化剤又は高分子化合物を含んでなるものであってもよい。ここで、混合溶融物とは、溶解せず混合した状態、溶解して混合した状態、又はこれら両者の状態のいずれの状態を含むものをいう。「転相乳化法」による具体的な方法は、特開平10−140065号公報に記載されている方法を参照できる。
b)酸析法
酸析法は、樹脂と顔料とからなる含水ケーキを用意し、その含水ケーキ中の、樹脂が有するアニオン性基の一部又は全部を、塩基性化合物を用いて中和することによって、樹脂被覆顔料(カプセル化顔料)を製造する方法である。
酸析法は、具体的には、(1)樹脂と顔料とをアルカリ性水性媒体中に分散し、必要に応じて加熱処理を行なって樹脂のゲル化を図る工程と、(2)pHを中性又は酸性にすることによって樹脂を疎水化して、樹脂を顔料に強く固着する工程と、(3)必要に応じて、濾過及び水洗を行なって含水ケーキを得る工程と、(4)含水ケーキを中の、樹脂が有するアニオン性基の一部または全部を、塩基性化合物を用いて中和し、その後、水性媒体中に再分散する工程と、(5)必要に応じて加熱処理を行ない、樹脂のゲル化を図る工程と、を含む方法がある。
上記の転相乳化法及び酸析法のより具体的な製造方法は、特開平9−151342号、特開平10−140065号の各公報に記載の方法が挙げられる。
本発明における樹脂被覆キナクリドン系顔料は、下記の工程(1)及び工程(2)を含む方法により樹脂被覆キナクリドン系顔料の分散物を調製することにより得ることができる。
また、本発明におけるインク組成物は、この調製工程を設け、得られた樹脂被覆キナクリドン系顔料の分散物を溶媒(例えば水、有機溶媒等)と共に用いてインクとする方法により調製することができる。
工程(1):水不溶性樹脂、有機溶媒、中和剤、キナクリドン系顔料、及び水を含有する混合物を攪拌等により分散して分散物を得る工程
工程(2):前記分散物から前記有機溶媒を除去する工程
攪拌方法には特に制限はなく、一般に用いられる混合攪拌装置や、必要に応じて超音波分散機や高圧ホモジナイザー、ビーズミル等の分散機を用いることができる。
ここで用いる有機溶媒としては、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、及びエーテル系溶媒が好ましく挙げられる。前記アルコール系溶媒としては、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、t−ブタノール、エタノール等が挙げられる。前記ケトン系溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。前記エーテル系溶媒としては、ジブチルエーテル、ジオキサン等が挙げられる。これらの溶媒の中では、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒とイソプロピルアルコール等のアルコール系溶媒が好ましく、メチルエチルケトンがさらに好ましい。
中和剤は、解離性基の一部又は全部が中和され、水不溶性樹脂が水中で安定した乳化又は分散状態を形成するために用いられる。中和剤の詳細については、後述する。
前記工程(2)では、前記工程(1)で得られた分散物から、減圧蒸留等の常法により有機溶剤を留去して水系へと転相することで、キナクリドン系顔料の粒子表面が水不溶性樹脂で被覆された樹脂被覆キナクリドン系顔料粒子の分散物を得ることができる。得られた分散物中の有機溶媒は実質的に除去されており、ここでの有機溶媒の量は、好ましくは0.2質量%以下であり、更に好ましくは0.1質量%以下である。
より具体的には、例えば、(1)アニオン性基を有する水不溶性樹脂又はそれを有機溶媒に溶解した溶液と塩基性化合物(中和剤)とを混合して中和する工程と、(2)得られた混合液にキナクリドン系顔料を混合して懸濁液とした後に、分散機等でキナクリドン系顔料を分散して顔料分散液を得る工程と、(3)有機溶剤を例えば蒸留して除くことによって、キナクリドン系顔料を、アニオン性基を有する特定水不溶性樹脂で被覆し、水性媒体中に分散させて水性分散体とする工程とを含む方法である。
なお、より具体的には、特開平11−209672号公報及び特開平11−172180号の記載を参照することができる。
本発明において、分散処理は、例えば、ボールミル、ロールミル、ビーズミル、高圧ホモジナイザー、高速攪拌型分散機、超音波ホモジナイザ−などを用いて行なうことができる。
本発明におけるインク組成物中における樹脂被覆キナクリドン系顔料の含有量は、インク組成物の分散安定性、濃度の観点から、インク組成物の全量に対し、1〜10質量%が好ましく、2〜8質量%がより好ましく、2〜6質量%が特に好ましい。
(水)
本発明におけるインク組成物は水を含むことが好ましい。
本発明における水としては、イオン交換水、蒸留水などのイオン性不純物を含まない水を用いることが好ましい。
また、インク組成物中における水の含有量は、目的に応じて適宜選択されるが、安定性および吐出信頼性確保の点から、インク組成物の全量に対し、好ましくは10質量%以上99質量%以下であり、より好ましくは30質量%以上80質量%以下であり、更に好ましくは、50質量%以上70質量%以下である。
(水溶性有機溶剤)
本発明におけるインク組成物は、水溶性有機溶剤の少なくとも1種を含むことができる。水溶性有機溶剤の例としては、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルカンジオール(多価アルコール類);糖アルコール類;エタノール、メタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロパノールなどの炭素数1〜4のアルキルアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、1−メチル−1−メトキシブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル類等が挙げられる。これらは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明におけるインク組成物は、前記水溶性有機溶剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上を含んでいてもよい。
前記水溶性有機溶剤のインク組成物中における含有率は、安定性と吐出性の観点から、インク組成物の全質量に対して、1質量%以上60質量%以下が好ましく、5質量%以上40質量%以下がより好ましく、10質量%以上30質量%以下が特に好ましい。
(樹脂粒子)
本発明におけるインク組成物は、定着性、耐擦性、凝集性の観点から、樹脂粒子の少なくとも1種を含むことが好ましい。
前記樹脂粒子は、親水性モノマーに由来する構成単位および疎水性モノマーに由来する構成単位を含む自己分散性樹脂粒子であることがより好ましい。
自己分散性樹脂粒子を含むインク組成物は撥液膜への付着が起こりやすい傾向があるため、本発明におけるインク組成物が自己分散性樹脂粒子を含む場合には、本発明によるインクの切れ性向上効果及び耐ブロッキング性向上の効果がより顕著に奏される。
本発明において自己分散性樹脂とは、界面活性剤の不存在下、転相乳化法により分散状態としたとき、ポリマー自身の官能基(特に酸性基又はその塩)によって、水性媒体中で分散状態となりうる水不溶性ポリマーをいう。
ここで分散状態とは、水性媒体中に水不溶性ポリマーが液体状態で分散された乳化状態(エマルション)、及び、水性媒体中に水不溶性ポリマーが固体状態で分散された分散状態(サスペンション)の両方の状態を含むものである。
本発明における自己分散性樹脂においては、インク組成物に含有されたときのインク定着性の観点から、水不溶性ポリマーが固体状態で分散された分散状態となりうる自己分散性樹脂であることが好ましい。
自己分散性樹脂の乳化又は分散状態、すなわち自己分散性樹脂の水性分散物の調製方法としては、転相乳化法が挙げられる。転相乳化法としては、例えば、自己分散性樹脂を溶媒(例えば、親水性有機溶剤等)中に溶解又は分散させた後、界面活性剤を添加せずにそのまま水中に投入し、自己分散性樹脂が有する塩生成基(例えば、酸性基)を中和した状態で、攪拌、混合し、前記溶媒を除去した後、乳化又は分散状態となった水性分散物を得る方法が挙げられる。
前記自己分散性樹脂粒子としては、特開2010−64480号公報の段落0090〜0121や、特開2011−068085号公報の段落0130〜0167に記載されている自己分散性樹脂粒子を用いることができる。
本発明における自己分散性樹脂の分子量範囲は、重量平均分子量で、3000〜20万であることが好ましく、10000〜20万であることがより好ましく、30000〜15万であることが更に好ましい。重量平均分子量を3000以上とすることで水溶性成分量を効果的に抑制することができる。また、重量平均分子量を20万以下とすることで、自己分散安定性を高めることができる。
本発明における自己分散性樹脂は、ポリマーの親疎水性制御の観点から、脂環式(メタ)アクリレートに由来する構造を共重合比率として20質量%以上90質量%以下と、解離性基(好ましくはアニオン性の解離性基、より好ましくはカルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基、特に好ましくはカルボキシル基)含有モノマーに由来する構造と、炭素数1〜8の鎖状アルキル基を含有する(メタ)アクリレートに由来する構造の少なくとも1種とを含み、酸価が20〜120であって、親水性構造単位の総含有率が25質量%以下であって、重量平均分子量が3000〜20万であるビニルポリマーであることが好ましい。
また、2環式または3環式以上の多環式(メタ)アクリレートに由来する構造を共重合比率として20質量%以上90質量%未満と、炭素数1〜4の鎖状アルキル基を含有する(メタ)アクリレートに由来する構造を共重合比率として10質量%以上80質量%未満と、カルボキシル基含有モノマーに由来する構造を酸価が25〜100の範囲で含み、親水性構造単位の総含有率が25質量%以下であって、重量平均分子量が10000〜20万であるビニルポリマーであることがより好ましい。
さらに、2環式または3環式以上の多環式(メタ)アクリレートに由来する構造を共重合比率として40質量%以上80質量%未満と、少なくともメチル(メタ)アクリレートまたはエチル(メタ)アクリレートに由来する構造を共重合比率として20質量%以上60質量%未満含み、アクリル酸又はメタクリル酸に由来する構造を酸価が30〜80の範囲で含み、親水性構造単位の総含有率が25質量%以下であって、重量平均分子量が30000〜15万であるビニルポリマーであることが特に好ましい。
以下に、自己分散性樹脂の具体例として、例示化合物を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、括弧内は共重合成分の質量比を表す。
・メチルメタクリレート/イソボルニルメタクリレート/メタクリル酸 共重合体(20/72/8)、ガラス転移温度:180℃
・メチルメタクリレート/イソボルニルメタクリレート/メタクリル酸 共重合体(40/52/8)、ガラス転移温度:160℃
・メチルメタクリレート/イソボルニルメタクリレート/メタクリル酸 共重合体(50/44/6)、ガラス転移温度:140℃
・メチルメタクリレート/イソボルニルメタクリレート/メタクリル酸 共重合体(85/7/8)、ガラス転移温度:120℃
・メチルメタクリレート/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸 共重合体(85/7/8)、ガラス転移温度:100℃
・メチルメタクリレート/ジシクロペンタニルメタクリレート/メタクリル酸 共重合体(20/72/8)、ガラス転移温度:160℃
・メチルメタクリレート/イソボルニルメタクリレート/ジシクロペンタニルメタクリレート/メタクリル酸 共重合体(20/62/10/8)、ガラス転移温度:170℃
前記樹脂粒子(例えば自己分散性樹脂粒子)の含有量は、インク組成物の全質量に対して、0.1〜20質量%が好ましく、0.1〜10質量%がより好ましい。
また、樹脂微子の粒径分布に関しては、特に制限は無く、広い粒径分布を持つもの、又は単分散の粒径分布を持つもの、いずれでもよい。また、単分散の粒径分布を持つ樹脂粒子を、2種以上混合して使用してもよい。
前記自己分散性樹脂の製造方法としては、特に制限はなく、公知の重合法によりモノマー混合物を共重合させることによって製造することができる。これらの重合法の中では、インク組成物としたときの打滴安定性の観点から、有機溶剤中で重合することがより好ましく、溶液重合法が特に好ましい。
本発明の自己分散性樹脂の製造方法においては、モノマー混合物と、必要に応じて、有機溶剤及びラジカル重合開始剤とを含んだ混合物を、不活性ガス雰囲気下で共重合反応させて前記水不溶性ポリマーを製造することができる。
本発明における自己分散性樹脂粒子の水性分散物の製造方法としては、特に制限はなく、公知の方法により自己分散性樹脂粒子の水性分散物とすることができる。自己分散性樹脂を水性分散物として得る工程は、次の工程(1)及び工程(2)を含む転相乳化法であることが好ましい。
工程(1):水不溶性ポリマー、有機溶剤、中和剤、及び水性媒体を含有する混合物を攪拌して分散体を得る工程。
工程(2):前記分散体から、前記有機溶剤の少なくとも一部を除去する工程。
前記工程(1)は、まず前記水不溶性ポリマーを有機溶剤に溶解させ、次に中和剤と水性媒体を徐々に加えて混合、攪拌して分散体を得る処理であることが好ましい。このように、有機溶剤中に溶解した水不溶性ポリマー溶液中に中和剤と水性媒体を添加することで、強いせん断力を必要とせずに、より保存安定性の高い粒径の自己分散性樹脂粒子を得ることができる。
該混合物の攪拌方法に特に制限はなく、一般に用いられる混合攪拌装置や、必要に応じて超音波分散機や高圧ホモジナイザー等の分散機を用いることができる。
有機溶剤としては、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤及びエーテル系溶剤が好ましく挙げられる。
アルコール系溶剤としては、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、t−ブタノール、エタノール等が挙げられる。ケトン系溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。エーテル系溶剤としては、ジブチルエーテル、ジオキサン等が挙げられる。これらの有機溶剤の中では、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤とイソプロピルアルコール等のアルコール系溶剤が好ましい。
また、イソプロピルアルコールとメチルエチルケトンを併用することも好ましい。該溶剤を併用することで、凝集沈降や粒子同士の融着が無く、分散安定性の高い微粒径の自己分散性樹脂粒子を得ることができる。これは、例えば、油系から水系への転相時への極性変化が穏和になるためと考えることができる。
中和剤は、解離性基の一部又は全部が中和され、自己分散性樹脂が水中で安定した乳化又は分散状態を形成するために用いられる。自己分散性樹脂が解離性基としてアニオン性の解離基を有する場合、用いられる中和剤としては有機アミン化合物、アンモニア、アルカリ金属の水酸化物等の塩基性化合物が挙げられる。有機アミン化合物の例としては、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノプロピルアミン、ジプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチル−エタノールアミン、N,N−ジエチル−エタノールアミン、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等が挙げられる。アルカリ金属の水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。中でも、本発明の自己分散性樹脂粒子の水中への分散安定化の観点から、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエチルアミン、トリエタノールアミンが好ましい。
これら塩基性化合物は、解離性基100モル%に対して、5〜120モル%使用することが好ましく20〜100モル%であることがより好ましく、30〜80モル%であることが更に好ましい。15モル%以上とすることで、水中での粒子の分散を安定化する効果が発現し、80モル%以下とすることで、水溶性成分を低下させる効果がある。
前記工程(2)では、前記工程(1)で得られた分散体から、減圧蒸留等の常法により有機溶剤を留去して水系へと転相することで自己分散性樹脂粒子の水性分散物を得ることができる。得られた水性分散物中の有機溶剤は実質的に除去されており、有機溶剤の量は、好ましくは0.2質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下である。
本発明における樹脂粒子(例えば自己分散性樹脂粒子)の平均粒径は、1〜100nmの範囲であることが好ましく、3〜80nmがより好ましく、5〜60nmがさらに好ましい。特に好ましくは5〜40nmである。1nm以上の平均粒径であることで製造適性が向上する。また、100nm以下の平均粒径とすることで保存安定性が向上する。
また、樹脂粒子の粒径分布に関しては、特に制限は無く、広い粒径分布を持つもの、又は単分散の粒径分布を持つもの、いずれでもよい。また、水不溶性ポリマーを、2種以上混合して使用してもよい。
尚、樹脂粒子の平均粒径及び粒径分布は、例えば、光散乱法を用いて測定することができる。
また、本発明におけるインク組成物において、樹脂粒子(例えば自己分散性樹脂粒子)は、実質的に顔料を含有しない形態で存在することが好ましい。
前記自己分散性樹脂粒子は自己分散性に優れており、ポリマー単独で分散させたときの安定性は非常に高いものである。しかし、例えば、顔料を安定に分散させる、所謂分散剤としての機能は高くないため、前記自己分散性樹脂が顔料を含有する形態でインク組成物中に存在すると、結果としてインク組成物全体の安定性が大きく低下する場合がある。
本発明におけるインク組成物に含まれる樹脂粒子(例えば自己分散性樹脂粒子)は、1種単独で用いられるほか、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
樹脂粒子(例えば自己分散性樹脂粒子)の本発明におけるインク組成物中の含有量としては、画像の光沢性などの観点から、インク組成物に対して、1〜30質量%であることが好ましく、2〜20質量%であることがより好ましく、2〜10質量%であることが特に好ましい。
本発明におけるインク組成物において、樹脂被覆キナクリドン系顔料と樹脂粒子との質量比(樹脂被覆キナクリドン系顔料/樹脂粒子)は、画像の耐擦過性などの観点から、1/0.5〜1/10が好ましく、1/1〜1/4がより好ましい。
前記自己分散性樹脂粒子は、遊離の乳化剤を含有しないため、インク中の疎水的な(HLB値の小さい)ノニオン系界面活性剤をより吸着しやすく、ドット径の小径化が起こりやすい傾向がある。本発明では、後述するようなHLB値の異なる少なくとも2種のノニオン系界面活性剤を含有することで、自己分散性樹脂粒子を含有する場合でも高温環境下での保存後のドット径の小径化を抑制することができる。
また、樹脂粒子のインク組成物の全固形分に対する含有量(質量基準)が多いほど、インク中の疎水的な(HLB値の小さい)ノニオン系界面活性剤の吸着は多くなると推測され、ドット径の小径化が起こりやすい。本発明では、後述するようにHLB値が異なる少なくとも2種のノニオン系界面活性剤を含有することにより、樹脂粒子のインク組成物中の全固形分質量に対する含有量が30質量%以上であっても、高温環境下での保存後のドット径の小径化を効果的に抑制することができる。
(ワックス)
本発明におけるインク組成物は、パラフィンワックス及びその誘導体、カルナバワックス、並びにこれらの混合物からなる群より選択される難水溶性のワックス粒子を含有することが好ましい。難水溶性のワックスを含有することにより、画像の耐擦過性がより向上する。
このワックス粒子を樹脂粒子と共に含有してもよい。樹脂粒子と共に含有する場合、インクの付着、堆積が起きやすくなるのを抑制する観点からは、後述のPVP、PVA又はPEGを併用することが好ましい。PVP、PVA及びPEGから選ばれるものを含有することで、吐出曲がりや不吐出の抑制が可能である。
ワックス粒子が「難水溶性」であるとは、樹脂を105℃で2時間乾燥させた後、25℃の水100g中に溶解させたときに、その溶解量が15g以下であることをいう。インクの連続吐出性及び吐出安定性が向上する観点から、前記溶解量は好ましくは5g以下であり、更に好ましくは1g以下である。
前記ワックスとしては、天然ワックス及び合成ワックスを挙げることができる。
天然ワックスとしては、石油系ワックス、植物系ワックス、動植物系ワックスが挙げられる。
石油系ワックスとして、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム等、また、植物系ワックスとしてはカルナバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス、木ロウ等、また、動物植物系ワックスとしてはラノリン、みつろう等を挙げることができる。
合成ワックスとしては、合成炭化水素系ワックス、変性ワックス系が挙げられる。
合成炭化水素系ワックスとしては、ポリエチレンワックス、フィッシャー・トロブシュワックス等が挙げられ、また、変性ワックス系としてはパラフィンワックス誘導体、モンタンワックス誘導体、マイクロクリスタリンワックス誘導体等、及びこれらの誘導体を挙げることができる。
前記ワックスの中でも、カルナバワックスは、画像の耐擦過性を向上させる観点から好ましく、画像サンプルの後加工(冊子への加工等)における画像強度を向上させる点で好ましい。また、パラフィンワックス及びその誘導体は、炭素数20〜40の炭化水素を主成分とするもので、画像光沢感や、ノズル先端から水分蒸発防止、水分保持効果が優れている点で好ましい。
また、樹脂との相溶性が優れるため均質で良好な画像を形成しやすい観点では、ポリエチレンワックスが好ましい。さらに、ポリエチレンワックスは変性し易いため、その変性されたグリコール変性ポリエチレンワックスは、グリコールに起因する湿潤性を付与することができ、ノズル先端でのインク組成物の湿潤性効果がみられ、よって吐出安定性が一層効果的に出来る点でより好ましい。
ワックスは、分散物の形で添加されることが好ましく、その溶媒としては水が好ましいがこれに限定されるものではない。例えば通常の有機溶媒を適宜選択し、分散時に使用することができる。有機溶媒については、特開2006−91780号公報の段落番号[0027]の記載を参照することができる。
ワックスのインク組成物中における含有量としては、インク全質量に対して、0.1〜5質量%が好ましく、0.5〜4質量%がより好ましく、0.5〜3質量%であることがさらに好ましい。ワックスの含有量は、0.1質量%以上であると、画像の耐擦過性がより向上し、5質量%以下であると、インクの長期保存安定性の点で有利である。長期における吐出安定性の観点から、0.5〜3質量%であることが好ましい。
(PVP、PVA及びPEG)
本発明におけるインク組成物は、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール、(PVA)、及びポリエチレングリコール(PEG)から選ばれる1つ又は2つ以上を含有することが好ましい。PVP等を含有することにより、樹脂粒子やワックス粒子(好ましくはこれらの両方)を含有するインク組成とした場合に、ノズル孔近傍にインクの固着物が堆積し難くなると共に、インクが付着してもワイピング等による除去が容易になる。したがって、インクの吐出と吐出休止とが繰り返される使用形態でのインクの吐出曲がり及び不吐出が抑制され、インク吐出性、ひいては所期の高精細画像の形成性を安定化させることができる。この効果は、ノズル孔の内部表面にケイ素原子を含む膜(例えばシリコン又はその酸化膜(例:SiO膜))を有する吐出ヘッドから吐出して、画像を形成する場合に特に優れる。
PVP、PVA及びPEGは、インク組成物の全質量に対して、0.01質量%以上1.00質量%未満の範囲で含有されることが好ましい。このように比較的少量のPVP等を含有することによって、インクの増粘を伴なわずに、インク吐出性及び画像形成性の向上が図れる。換言すると、PVP等の含有比率がインク組成物の全質量の0.01質量%以上であると、樹脂粒子やワックス粒子の析出、堆積の抑制に効果的である。PVP等の含有比率がインク組成物の全質量の1.00質量%以上であると、添加量が過多によるインク付着が生じ難く、増粘が抑えられ良好な吐出性が保て、色抜け等の故障の発生を抑えた画像形成が行なえる。
上記の中では、PVP等の含有比率は、吐出休止後に再吐出したときのインクの吐出曲がり及び不吐出の解消(具体的には、色抜け防止及び着弾位置精度の向上)の観点から、インク組成物の全質量に対して、0.01質量%以上0.5質量%以下が好ましく、長期に亘る吐出の安定性の確保の観点から、0.25質量%以上0.5質量%以下がより好ましく、0.05質量%以上0.2質量%以下が更に好ましく、0.05質量%以上0.1質量%以下が特に好ましい。
本発明におけるPVAには、アセトアセチル基やカルボキシル基、水酸基等のアニオン性基、シラノール基などの各種基で変性された変性ポリビニルアルコールも含まれる。
(コロイダルシリカ、ケイ酸アルカリ塩)
本発明におけるインク組成物は、コロイダルシリカ及びケイ酸アルカリ塩の少なくとも一方を含むことが好ましい。
これにより、ノズルプレートを用いたインク組成物の吐出を繰り返し行なったときの、該ノズルプレートに設けられた撥液膜の劣化(撥液性の低下)をより効果的に抑制できる。
この効果は、ノズルプレートとして、シリコンを含むノズルプレート(シリコンノズルプレート)を用いた場合により顕著である。
本発明におけるノズルプレート及び撥液膜については後述する。
−コロイダルシリカ−
コロイダルシリカは、平均粒子径が数100nm以下のケイ素を含む無機酸化物の微粒子からなるコロイドである。主成分として二酸化ケイ素(その水和物を含む)を含み、少量成分としてアルミン酸塩を含んでいてもよい。少量成分として含まれることがあるアルミン酸塩としては、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウムなどが挙げられる。
またコロイダルシリカには、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化アンモニウム等の無機塩類やテトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の有機塩類が含まれていてもよい。これらの無機塩類および有機塩類は、例えば、コロイドの安定化剤として作用する。
コロイダルシリカの分散媒としては特に制限はなく、水、有機溶剤、およびこれらの混合物のいずれであってもよい。前記有機溶剤は水溶性有機溶剤であっても非水溶性有機溶剤であってもよいが、水溶性有機溶剤であることが好ましい。具体的には例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロパノール等を挙げることができる。
コロイダルシリカの製造方法には特に制限はなく、通常用いられる方法で製造することができる。例えば、四塩化ケイ素の熱分解によるアエロジル合成や水ガラスから製造することができる。あるいは、アルコキシドの加水分解といった液相合成法(例えば、「繊維と工業」、Vol.60、No.7(2004)P376参照)などによっても製造することができる。
前記コロイダルシリカに含まれる粒子の平均粒子径としては特に制限はない。例えば、1nm〜200nmとすることができ、好ましくは1nm〜100nm、より好ましくは3nm〜50nmであり、さらに好ましくは3nm〜25nmであり、特に好ましくは5nm〜20nmである。
平均粒子径が200nm以下であることで、インク組成物によるノズルプレートや撥液膜等に対するダメージ(例えば、撥液性の低下等)をより効果的に抑制することができる。これは例えば、平均粒子径が小さいことで、粒子の総表面積が大きくなり、前記ダメージを、より効果的に抑制するためと考えることができる。またさらに、インク組成物の吐出性、粒子による研磨剤効果の観点からも、粒子の平均粒子径は200nm以下であることが好ましい。また、1nm以上の平均粒子径であることで、生産性が向上し、また性能のバラツキの少ないコロイダルシリカを得ることができる。
前記コロイダルシリカの平均粒子径は、体積平均粒子径で表される。体積平均粒子径は、分散粒子の一般的な測定である光散乱法、レーザ回折法などの手法により求めることができる。
またコロイダルシリカの形状は、インクの吐出性能を妨げない限り、特に限定されない。例えば、球状、長尺の形状、針状、数珠状のいずれであってもよい。中でも、インクの吐出性の観点から、球状であることが好ましい。
前記コロイダルシリカは、上記製造方法で製造されたものであっても、市販品であってもよい。市販品の具体例としては例えば、 Ludox AM、Ludox AS、Ludox LS、Ludox TM、Ludox HSなど(以上、E.I.Du Pont de Nemouvs & Co製);スノーテックスS、スノーテックスXS、スノーテックス20、スノーテックス30、スノーテックス40、スノーテックスN、スノーテックスC、スノーテックスOなど(以上、日産化学社製);Syton C−30、SytonZOO など(以上、Mons anto Co製);Nalcoag−1060 、Nalcoag−ID21〜64(以上、Nalco Chem Co製);メタノールゾル、IPAゾル、MEKゾル、およびトルエンゾル(以上、扶桑化学工業製);Cataloid−S、Cataloid−F120、Cataloid SI−350、Cataloid SI−500、Cataloid SI−30、Cataloid S−20L、Cataloid S−20H、CataloidS−30L、Cataloid S−30H、Cataloid SI−40、OSCAL−1432(イソプロピルアルコールゾル)など(以上、日揮触媒化成製);アデライト(旭電化社製);数珠状のコロイダルシリカとして、例えば、スノーテックスST−UP、同PS−S、同PS−M、同ST−OUP、同PS−SO、同PS−MO(以上、日産化学社製)などの商品名で市販されているものを挙げることができ、これらは容易に入手することが出来る。
上記市販のコロイダルシリカ分散液のpHは、酸性またはアルカリ性に調整されているものが多い。これは、コロイダルシリカの安定分散領域が酸性側またはアルカリ性側に存在するためであり、市販のコロイダルシリカ分散液をインク組成物中に添加する場合は、コロイダルシリカの安定分散領域のpHとインク組成物のpHとを考慮して添加することが好ましい。
前記コロイダルシリカは1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
本発明におけるインク組成物中におけるコロイダルシリカの含有量には特に制限はない。
コロイダルシリカの含有量は、例えば、インク組成物全量に対し、0.0001質量%〜10質量%とすることができ、0.01質量%〜3.0質量%であることが好ましく、より好ましくは0.02質量%〜0.5質量%であり、特に好ましくは0.03質量%〜0.2質量%である。インク組成物中の含有量が前記上限値以下であることで、インク組成物の吐出性がより向上し、またシリカ粒子の研磨剤効果によるインクジェットヘッドへの影響をより効果的に抑制できる。また前記下限値以上であることで、撥液膜の劣化(撥液性の低下)をより効果的に抑制できる。
さらに本発明におけるインク組成物は、インクジェットヘッド部材の撥液性低下抑制とインク吐出性の観点から、体積平均粒子径が3nm〜25nmのコロイダルシリカをインク組成物全量に対し0.01質量%〜3質量%含有することが好ましく、5nm〜20nmのコロイダルシリカをインク組成物全量に対し0.03質量%〜0.2質量%含有することがより好ましい。
−ケイ酸アルカリ金属塩−
前記ケイ酸アルカリ金属塩は、ケイ酸とアルカリ金属から構成され、メタケイ酸のアルカリ金属塩、オルトケイ酸のアルカリ金属塩等のいずれであってもよく、さらにこれらの混合物であってもよい。
前記ケイ酸アルカリ金属塩は、ケイ酸のアルカリ金属以外との塩、例えば、ケイ酸のアンモニウム塩(例えば、ケイ酸のテトラメチルアンモニウム塩)と比較して、インク組成物の分散安定性、臭気抑制の点で好ましい。
前記ケイ酸アルカリ金属塩は、具体的には下記一般式(a)で表される化合物の少なくとも1種であることが好ましい。
x(MO)・y(SiO) (a)
一般式(a)中、Mはナトリウムまたはカリウムを表し、xは1または2を、yは1〜4の整数を表す。前記一般式(a)で表されるケイ酸のアルカリ金属塩は、x=1、y=1の場合はメタケイ酸アルカリ金属塩と、x=2、y=1の場合はオルトケイ酸アルカリ金属塩とそれぞれ呼ばれ、いずれも水溶性を有するケイ酸アルカリ金属塩である。
一般にはこれらのケイ酸アルカリ金属塩は、前記一般式(a)で表される化合物の2種以上からなる混合物であることが多いが、本発明においては、前記一般式(a)で表される化合物の1種のみを用いても、前記一般式(a)で表される化合物の2種以上からなる混合物を用いてもよい。
本発明においては、ケイ酸アルカリ金属塩として、市販の化合物(例えば、水ガラス等)を用いてもよく、また、ケイ酸と、アルカリ金属の炭酸塩または水酸化物とを融解して得られるものを用いてもよいが、インク分散安定性の観点から、市販の化合物であるケイ酸ナトリウムまたはケイ酸カリウムを用いることが好ましい。
本発明におけるインク組成物中のケイ酸アルカリ金属塩の含有量としては特に制限はないが、撥液膜の劣化抑制(撥液性の低下抑制)の観点から、インク組成物全量に対して、0.0001〜0.5質量%であることが好ましく、0.001〜0.4質量%であることがより好ましく、0.01〜0.3質量%であることがさらに好ましい。
さらに本発明におけるインク組成物は、インクジェットヘッド部材の撥液性低下抑制とインク分散安定性の観点から、前記一般式(a)で表されるケイ酸アルカリ金属塩の少なくとも1種をインク組成物総量に対して0.0001質量%〜0.5質量%含有することが好ましく、ケイ酸ナトリウムまたはケイ酸カリウムから選ばれる少なくとも1種をインク組成物総量に対して0.001〜0.4質量%含有することがより好ましい。
(尿素)
本発明におけるインク組成物は尿素を含むことが好ましい。
尿素は、保湿機能が高いため、固体湿潤剤としてインクの望ましくない乾燥、凝固を効果的に抑制することができる。
さらに本発明におけるインク組成物は、前述のコロイダルシリカと尿素とを含むことでインクジェットヘッド等のメンテナンス性がより効果的に向上する。
本発明におけるインク組成物における尿素の含有量は、メンテナンス性(拭き取り性)を向上させる観点等からは、1質量%以上20質量%以下が好ましく、1質量%以上15質量%以下がより好ましく、3質量%以上10質量%以下が更に好ましい。
本発明におけるインク組成物が、尿素及びコロイダルシリカを含有する場合、尿素の含有量と、前記コロイダルシリカの含有量の比率としては特に制限はないが、前記コロイダルシリカに対する尿素の含有比率(尿素/コロイダルシリカ)が5〜1000であることが好ましく、10〜500であることがより好ましく、20〜200であることがさらに好ましい。
また、本発明におけるインク組成物が、尿素及びコロイダルシリカを含有する場合、尿素の含有量とコロイダルシリカの含有量との組み合わせとしては特に限定されないが、拭き取り性及び画像の定着性をより効果的に両立させる観点からは、下記の組み合わせが好ましい。
即ち、尿素の含有量が1.0質量%以上であって、コロイダルシリカの含有量が0.01質量%以上である組み合わせが好ましく、尿素の含有量が1.0質量%〜20質量%であって、コロイダルシリカの含有量が0.02質量%〜0.5質量%である組み合わせがより好ましく、尿素の含有量が3.0質量%〜10質量%であって、コロイダルシリカの含有量が0.03質量%〜0.2質量%である組み合わせが特に好ましい。
(固体湿潤剤)
本発明におけるインク組成物は、尿素以外の固体湿潤剤をさらに含有してもよい。本発明において固体湿潤剤とは、保水機能を有し、25℃で固体の水溶性化合物を意味する。
前記固体湿潤剤としては、一般に水性インク組成物に使用されるものをそのまま利用することが可能であり、より具体的には、尿素誘導体、糖類、糖アルコール類、ヒアルロン酸類、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール等の多価アルコール等である。
前記尿素誘導体の例としては、尿素の窒素上の水素原子をアルキル基、もしくはアルカノール基で置換した化合物、チオ尿素、チオ尿素の窒素上の水素原子をアルキル基、もしくはアルカノール基で置換した化合物等が挙げられる。前記尿素またはチオ尿素の窒素上のアルキル基は互いに連結して環を形成してもよい。
尿素誘導体の具体例としては、N,N−ジメチル尿素、チオ尿素、エチレン尿素、ヒドロキシエチル尿素、ヒドロキシブチル尿素、エチレンチオ尿素、ジエチルチオ尿素等が挙げられる。
前記糖類の例としては、単糖類、二糖類、オリゴ糖類(三糖類及び四糖類を含む)及び多糖類があげられ、具体的には、グルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、アルドン酸、グルシトール、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、マルトトリオース、などがあげられる。ここで、多糖類とは広義の糖を意味し、アルギン酸、α−シクロデキストリン、セルロースなど自然界に広く存在する物質を含む意味に用いることとする。また、これらの糖類の誘導体としては、前記した糖類の還元糖(例えば、糖アルコール)、酸化糖(例えば、アルドン酸、ウロン酸、アミノ酸、チオ糖など)があげられる。特に糖アルコールが好ましく、具体例としてはマルチトール、ソルビトール、キシリトールなどが挙げられる。またヒアルロン酸類は、例えばヒアルロン酸ナトリウム1%水溶液(分子量350000)として市販されているものを使用することができる。
(その他の添加剤)
本発明におけるインク組成物は、上記成分に加えて必要に応じてその他の添加剤を含むことができる。
本発明におけるその他の添加剤としては、例えば、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤等の公知の添加剤が挙げられる。これらの各種添加剤は、インク組成物を調製後に直接添加してもよく、インク組成物の調製時に添加してもよい。具体的には特開2007−100071号公報の段落番号[0153]〜[0162]に記載のその他の添加剤などが挙げられる。
表面張力調整剤としては、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、ベタイン界面活性剤等が挙げられる。
また、表面張力調整剤の添加量は、インクジェット方式で良好に打滴するために、インク組成物の表面張力を20〜60mN/mに調整する添加量が好ましく、20〜45mN/mに調整する添加量がより好ましく、25〜40mN/mに調整する添加量がさらに好ましい。
インク組成物の表面張力は、例えば、プレート法を用いて25℃で測定することができる。
界面活性剤の具体的な例としては、炭化水素系では脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等のアニオン系界面活性剤や、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー等のノニオン系界面活性剤が好ましい。また、アセチレン系ポリオキシエチレンオキシド界面活性剤であるSURFYNOLS(AirProducts&ChemicaLs社)やオルフィン(日信化学工業(株)製)も好ましく用いられる。また、N,N−ジメチル−N−アルキルアミンオキシドのようなアミンオキシド型の両性界面活性剤等も好ましい。
更に、特開昭59−157636号公報の第(37)〜(38)頁、リサーチディスクロージャーNo.308119(1989年)記載の界面活性剤として挙げたものも用いることができる。また、特開2003−322926号、特開2004−325707号、特開2004−309806号の各公報に記載されているようなフッ素(フッ化アルキル系)系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等を用いることにより、耐擦性を良化することもできる。
また、これら表面張力調整剤は、消泡剤としても使用することができ、フッ素系化合物、シリコーン系化合物、及びEDTAに代表されるキレート剤等、も使用することができる。
〜ノニオン系界面活性剤〜
本発明は、(a)HLBが15以上19以下であるノニオン系界面活性剤の少なくとも1種と、(b)HLBが10以上15未満であるノニオン系界面活性剤の少なくとも1種とを含む2種以上の界面活性剤を含有していることが好ましい。15≦HLB≦19を満たすノニオン系界面活性剤は、比較的親水性が高く、インク中の樹脂粒子の表面に吸着され難く、加熱に伴なうドット径変動の防止に効果がある。一方、この界面活性剤ではインクの動的表面張力が下がり難く、インクをノズルから吐出する際の吐出安定性が低下するおそれがあるため、10≦HLB<15の範囲のノニオン系界面活性剤を併用することが好ましい態様である。
本発明におけるHLB(Hydrophile-Lipophile Balance)は、グリフィン法(J.Soc.Cosmetic Chem.,5(1954),294)により以下の式で定義され、算術により求められる値である。
HLB値=20×親水部の式量の総和/分子量
なお、上記動的表面張力とは、界面が不安定な流動・攪拌状態での表面張力をいい、動的表面張力計を用いて例えばインク組成物の0.1%水溶液の1Hz及び10Hz時に測定されるものである。
(a)HLBが15以上19以下であるノニオン系界面活性剤としては、HLB値以外に特に制限はなく、従来公知の親水性を示すノニオン系の界面活性剤から適宜選択して使用することができる。中でも、エチレンオキシド鎖(好ましくはその付加モル数が15以上)を有するノニオン系の界面活性剤が好ましい。また、HLBの範囲は、15〜17.5の範囲がより好ましい。HLBが19より大きいと、インクが泡立ちやすく消えにくく、連続印字の際に吐出不良が発生したり、ミストの発生が多くなってしまう場合がある。
また、(b)HLBが10以上15未満であるノニオン系界面活性剤としては、HLB値以外に特に制限はなく、従来公知の比較的疎水的なノニオン系の界面活性剤から適宜選択して使用することができる。中でも、エチレンオキシド鎖(好ましくはその付加モル数が10以下)を有するノニオン系の界面活性剤が好ましい。また、HLBの範囲は、10〜14.5の範囲がより好ましい。HLBが10より小さいと、インク溶媒への溶解度が低下し、十分な分散性が得られなくなる場合がある。
本発明においては、吐出性を良好に保ちつつ、加熱経時によるドット径の小径化の防止効果に優れる点で、(a)HLBが15〜17.5のノニオン系界面活性剤と(b)HLBが10〜14.5のノニオン系界面活性剤とを含む態様が好ましい。
(a)HLBが15以上19以下であるノニオン系界面活性剤及び(b)HLBが10以上15未満であるノニオン系界面活性剤としては、下記一般式(1)で表されるアセチレングリコールのエチレンオキシド付加物から選ばれるものが好ましい。
前記一般式(1)において、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜5のアルキル基を表す。炭素数1〜5のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、ブチル基などが挙げられる。
m及びnは、エチレンオキシドの付加モル数を表し、それぞれ独立に0.5〜25の正数を表し、m+n≧1を満たす。m+n≧1を満たす範囲であれば、任意の値を選択することができる。中でも、1≦m+n≦40を満たすことが好ましく、室温より高い環境下での保存後のドット径の小径化の抑制の観点からより好ましくは10≦m+n≦40であり、さらに、放置回復性、及び連続吐出安定性を両立する観点から、10≦m+n≦30が特に好ましい。エチレンオキシドの付加モル数が40モル以下であると、動的表面張力をより低く保つのに有効である。
前記一般式(1)で表されるアセチレングリコールのエチレンオキシド付加物のうち、(a)HLBが15以上19以下である化合物と(b)HLBが10以上15未満である化合物とは、R〜Rで表される基、m及びnの値の選択により、親水/疎水性のバランスを加味して選択することができる。
前記一般式(1)で表されるアセチレングリコールのエチレンオキシド付加物の具体例としては、例えば、2,5,8,11−テトラメチル−6−ドデシン−5,8−ジオール、5,8−ジメチル−6−ドデシン−5,8−ジオール、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、4 ,7−ジメチル−5−デシン−4,7−ジオール
8−ヘキサデシン−7,10−ジオール、7−テトラデシン−6,9−ジオール、2,3,6,7−テトラメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,6−ジエチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール等のアセチレングリコールのエチレンオキサイド誘導体を挙げることができる。
また、上市されている市販品を用いてもよく、例えば、日信化学工業(株)製のオルフィンE1010、同E1020等を使用することができる。また、HLBは、オルフィンE1010が14.0、オルフィンE1020が16.5である。
本発明において少なくとも2種が含有されるノニオン系界面活性剤について、(a)HLBが15以上19以下である1種と、(b)HLBが10以上15未満である1種との含有比率〔(a)/(b);質量比〕は、10/1〜1/1の範囲が好ましい。HLB値の低い疎水的な界面活性剤に対する高HLB値で親水性の界面活性剤の比率が多いことで、インク滴のドット径の縮径変動(特に小径化)が防止され、中でも該含有比率が10/1以下となる範囲であると、インク組成物の動的表面張力を吐出に適切な範囲に維持しながら、加熱経時でインクドット径が小径化する現象を抑制することができる。
前記含有比率(a)/(b)は、加熱経時でのドット小径化を抑制する点で、10/2〜10/6の範囲がより好ましく、10/2〜10/4の範囲が特に好ましい。
ノニオン系界面活性剤のインク組成物中における総含有量としては、インク全量に対して、0.25質量%〜5質量%が好ましく、0.5質量%〜2質量%がより好ましい。総含有量が0.25質量%以上であると、インクの吐出性能を良好に維持することができる。また、総含有量が5質量%以下であると、インクの保存安定性の点で有利(粘度の変化、及び分散粒径の変化が小さい)である。また、2質量%以下であると、耐定着オフセット性、及び耐ブロッキング性にさらに優れる。
〜重合性化合物〜
また、本発明におけるインク組成物は、重合性化合物を少なくとも1種含むことにより、活性エネルギー線(例えば紫外線)硬化型のインク組成物として構成されていてもよい。この場合、インク組成物が(後述の処理液を用いる場合には、インク組成物及び処理液の少なくとも一方が)、更に重合開始剤を含むことが好ましい。
前記重合性化合物としては、例えば、2011−184628号公報の段落0128〜0144に記載されている公知の水溶性の重合性化合物や、特開2011−178896号公報の段落0019〜0034に記載されている公知の(メタ)アクリルアミド化合物(好ましくは2官能以上の(メタ)アクリルアミド化合物)が挙げられる。
前記重合開始剤としては、例えば、特開2011−184628号公報の段落0186〜0190や特開2011−178896号公報の段落0126〜0130に記載されている公知の重合開始剤が挙げられる。
本発明におけるインク組成物の粘度としては、インクの付与をインクジェット方式で行う場合、打滴安定性と凝集速度の観点から、1〜30mPa・sの範囲が好ましく、1〜20mPa・sの範囲がより好ましく、2〜15mPa・sの範囲がさらに好ましく、2〜10mPa・sの範囲が特に好ましい。
インク組成物の粘度は、例えば、ブルックフィールド粘度計を用いて20℃で測定することができる。
本発明におけるインク組成物のpHとしては、インク安定性と凝集速度の観点から、pH7.5〜10であることが好ましく、pH8〜9であることがより好ましい。尚、インク組成物のpHは25℃で、通常用いられるpH測定装置(例えば、東亜ディーケーケー(株)製、マルチ水質計MM−60R)によって測定される。
またインク組成物のpHは、酸性化合物または塩基性化合物を用いて適宜調製することができる。酸性化合物または塩基性化合物としては通常用いられる化合物を特に制限なく用いることができる。
<インク吐出工程>
本発明におけるインク吐出工程は、記録媒体上に、前述のインク組成物(インク)を、複数の吐出孔が二次元に配列され該吐出孔形成面にフッ素化合物を含む撥液膜が設けられたノズルプレートから吐出する工程である。
本工程におけるインクの吐出は、上記ノズルプレートを用いて行うこと以外には特に限定はなく、通常のインクジェット法を用いて行うことができる。
インクジェット法によるインクの吐出は、例えば、エネルギーを供与することにより、所望の記録媒体、すなわち普通紙、樹脂コート紙、例えば特開平8−169172号公報、同8−27693号公報、同2−276670号公報、同7−276789号公報、同9−323475号公報、特開昭62−238783号公報、特開平10−153989号公報、同10−217473号公報、同10−235995号公報、同10−217597号公報、同10−337947号公報等に記載のインクジェット専用紙、フィルム、電子写真共用紙、布帛、ガラス、金属、陶磁器等にインクを吐出することにより行なえる。なお、本発明に好ましいインクの吐出方法として、特開2003−306623号公報の段落番号0093〜0105に記載の方法が適用できる。
インクジェット法には特に制限はなく、公知の方式、例えば、静電誘引力を利用してインクを吐出させる電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変えインクに照射して放射圧を利用してインクを吐出させる音響インクジェット方式、及びインクを加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット(バブルジェット(登録商標))方式等のいずれであってもよい。
尚、前記インクジェット法には、フォトインクと称する濃度の低いインクを小さい体積で多数射出する方式、実質的に同じ色相で濃度の異なる複数のインクを用いて画質を改良する方式や無色透明のインクを用いる方式が含まれる。
また、インクジェット法で用いるインクジェットヘッドは、オンデマンド方式でもコンティニュアス方式でも構わない。
また、吐出方式としては、電気−機械変換方式(例えば、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型、シェアードウォール型等)、電気−熱変換方式(例えば、サーマルインクジェット型、バブルジェット(登録商標)型等)、静電吸引方式(例えば、電界制御型、スリットジェット型等)及び放電方式(例えば、スパークジェット型等)などを具体的な例として挙げることができるが、いずれの吐出方式を用いても構わない。
尚、前記インクジェット法により記録を行う際に使用するインクノズル等については特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができる。
インクジェット法によるインク吐出としては、短尺のシリアルヘッドを用い、ヘッドを記録媒体の幅方向に走査させながら記録を行なうシャトル方式と、記録媒体の1辺(幅方向の一辺)の全域に対応して記録素子が配列されているラインヘッドを用いたライン方式とがある。上記ラインヘッドの吐出面側にはノズルプレートが設けられ、該ノズルプレートには、記録素子に対応する位置に吐出孔が設けられる。
ライン方式では、記録素子の配列方向と直交する方向に記録媒体を走査させることで記録媒体の全面に画像記録を行なうことができ、短尺ヘッドを走査するキャリッジ等の搬送系が不要となる。また、キャリッジの移動と記録媒体との複雑な走査制御が不要になり、記録媒体だけが移動するので、シャトル方式に比べて記録速度の高速化が実現できる。
本発明の画像形成方法は、これらのいずれにも適用可能であるが、一般にダミージェットを行なわないライン方式に適用した場合に、吐出精度(撥液膜からのインクの切れ性)及び画像の耐ブロッキング性の向上効果が大きい。
特に、ライン方式の中でも、記録媒体の1回の走査で画像を形成する、シングルパス方式においては、画像形成がより高速化されて、画像が形成された記録媒体同士が積み重ねられる速度も速くなるので、ブロッキングがより生じやすくなる。
従って、シングルパス方式の画像形成の場合に、吐出精度(撥液膜からのインクの切れ性)及び画像の耐ブロッキング性の向上効果が特に顕著となる。
更には、本発明におけるインク吐出工程では、ライン方式による場合に、インク組成物を1種のみ用いるのみならず2種以上のインク組成物を用い、先に吐出するインク組成物(第n色目(n≧1)、例えば第2色目)とそれに続いて吐出するインク組成物(第n+1色目、例えば第3色目)との間の吐出(打滴)間隔を1秒以下にして好適に記録を行なうことができる。本発明においては、ライン方式で1秒以下の吐出間隔として、インク滴間の干渉で生じる滲みや色間混色を防止しつつ、従来以上の高速記録下で耐擦過性に優れ、ブロッキングの発生が抑えられた画像を得ることができる。また、色相及び描画性(画像中の細線や微細部分の再現性)に優れた画像を得ることができる。
インクジェットヘッドから吐出されるインクの液滴量としては、高精細な画像を得る観点で、0.5〜6pl(ピコリットル)が好ましく、1〜5plがより好ましく、更に好ましくは2〜4plである。
(フッ素化合物を含む撥液膜)
本発明におけるノズルプレートには、フッ素化合物を含む撥液膜が設けられている。
前記フッ素化合物を含む撥液膜のSP値としては特に限定はないが、インクの切れ性をより向上させる観点から、沖津法によって計算された該撥液膜のSP値は、16.00MPa1/2以下が好ましく、15.00MPa1/2以下がより好ましく、13.00MPa1/2以下が特に好ましい。
前記撥液膜に含まれるフッ素化合物としては、例えば、フッ化アルキル基を有する化合物を好適に用いることができる。
本発明における撥液膜は、例えば、フッ化アルキルシラン化合物を用いて作製された撥液膜であることが好ましい。
前記フッ化アルキルシラン化合物としては、下記一般式(F)で表されるフッ化アルキルシラン化合物を好適に用いることができる。下記一般式(F)で表されるフッ化アルキルシラン化合物は、シランカップリング化合物である。
2n+1−C2m−Si−X … 一般式(F)
前記一般式(F)において、nは1以上の整数を表し、mは0又は1以上の整数を表す。Xは、アルコキシ基、アミノ基、又はハロゲン原子を表す。なお、Xの一部がアルキル基で置換されていてもよい。
前記フッ化アルキルシラン化合物の例としては、C17SiCl(「1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルトリクロロシラン」や「FDTS」とも呼ばれている)、CF(CFSiClなどのフルオロアルキルトリクロロシラン、CF(CFSi(OCHや、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシルトリメトキシシランなどのフルオロアルキルアルコキシシラン、等を挙げることができる。
前記一般式(F)の中では、撥液性および撥液膜の耐久性の点で、nが1〜14の整数であって、mが0又は1〜5の整数であって、Xがアルコキシ基又はハロゲン原子である場合が好ましく、更には、nが1〜12の整数であって、mが0〜3の整数であって、Xがアルコキシ基又はハロゲン原子である場合が好ましい。
中でも、C17SiClが最も好ましい。
前記フッ素化合物を含む撥液膜の厚みとしては、特に制限はないが、0.2〜30nmの範囲が好ましく、0.4〜20nmの範囲がより好ましい。撥液膜の厚みは、30nmを超える範囲でも特に問題はないが、30nm以下であると膜の均一性の点で有利であり、0.2nm以上であるとインクへの撥水性が良好である。
前記フッ素化合物を含む撥液膜としては、例えば、フッ化アルキルシラン化合物の単分子膜(SAM膜)や、フッ化アルキルシラン化合物の積層膜を用いることができる。ここで、フッ化アルキルシラン化合物の積層膜には、フッ化アルキルシラン化合物が重合せずに積まれている膜のほか、フッ化アルキルシラン化合物の重合膜も含まれる。
前記フッ素化合物を含む撥液膜は、例えば、特開2011−111527号公報の段落0114〜0124に記載された方法によって形成することができる。
具体的には、前記フッ素化合物を含む撥液膜は、例えば、化学気相蒸着法による蒸着、フッ素樹脂のコーティング、フッ素系高分子等との共析メッキ、フッ素シラン処理、アミノシラン処理、フッ化炭素プラズマ重合等によって形成することができる。
前記フッ素化合物を含む撥液膜の形成方法として、より具体的には、下記の方法が挙げられる。
第1の例として、CF(CFSiClなどのフルオロアルキルトリクロロシランを基材と反応させて、撥水性の単分子膜や重合膜を形成する方法が挙げられる(例えば、特許第2500816号、特許第2525536号参照)。
前記化学式において、CF(CF−がフルオロアルキル基であり、−SiClがトリクロロシリル基である。
この方法では、活性水素が表面に存在する基材をフルオロアルキルトリクロロシランが溶解した溶液にさらし、クロロシリル基(−SiCl)と活性水素とを反応させて基材とSi−O結合を形成する。この結果、フルオロアルキル基はSi−Oを介して基材に固定される。ここで、フルオロアルキル基が膜に撥液性を付与する。膜の形成条件によって、撥液膜は単分子膜や重合膜となる。
第2の例として、CF(CFSi(OCHなどのフルオロアルキルアルコキシシランなどのフルオロアルキル基を含む化合物を含浸した多孔質性の基体を真空中で加熱し、前記化合物を蒸発させて基材表面を撥水性にする方法が挙げられる(例えば、特開平6−143586号公報参照)。
この方法では、撥液膜と基材との密着性を高めるために、二酸化珪素などの中間層を設けてもよい。
第3の例として、CF(CFSiClなどのフルオロアルキルトリクロロシランなどの化合物を用いて、基材表面にフルオロアルキルシランを化学気相蒸着法により形成する方法が挙げられる(例えば、特開2000−282240号公報参照)。
第4の例として、ジルコニアやアルミナなどの酸化物微粒子を基材表面に形成した後、その上にフルオロアルキルクロロシランやフルオロアルキルアルコキシシランなどを塗布する方法が挙げられる(例えば、特開平6−171094号公報参照)。
第5の例として、フルオロアルキルアルコキシシランに金属アルコキシドを加えた混合溶液を加水分解・脱水重合させた後に、この溶液を基材に塗布して焼成することにより、金属酸化物中フルオロアルキル鎖を有する分子が混合した撥液膜を形成する方法が挙げられる(特許第2687060号、特許第2874391号、特許第2729714号、特許第2555797号参照)。
この方法は、フルオロアルキル鎖が膜に撥水性を付与し、金属酸化物が膜に高い機械的強度を付与する。
以上の形成方法の中でも、前記第3の例として挙げた化学気相蒸着法が好ましい。
前記化学気相蒸着法の態様としては、テフロン(登録商標)製などの密閉容器の中にフッ化アルキルシラン化合物を入れた容器とノズルプレート(例えば、シリコン基板製のノズルプレート)を入れ、この密閉容器全体を電気炉中に置く等して昇温することでフッ化アルキルシラン化合物を蒸発させることにより、ノズルプレートの表面にフッ化アルキルシラン化合物の分子を堆積させる態様が挙げられる。
このようにして、化学気相蒸着法により例えばフッ化アルキルシラン化合物の単分子膜をノズルプレート上に形成することができる。この場合、ノズルプレートの蒸着面は親水化されていることが好ましい。具体的には、例えばシリコン基板製のノズルプレートの表面を紫外光(波長172nm)を用いて洗浄することで、有機不純物が除去されて清浄表面が得られる。このとき、シリコン表面は自然酸化してSiO膜で覆われているため、表面に直ちに大気中の水蒸気が吸着して表面がOH基で覆われ親水性の表面となる。
前記化学気相蒸着法の別の態様として下記の方法が挙げられる。
即ち、低圧力でCF(CFSiClなどのフルオロアルキルトリクロロシラン化合物及び水蒸気をCVDリアクタの中に導入することによって、シリコン基板の表面に撥液膜を堆積することができる。
CF(CFSiClなどのフルオロアルキルトリクロロシラン化合物の分圧は、0.05〜1torr(6.67〜133.3Pa)の間(例えば0.1〜0.5torr(13.3〜66.5Pa))とすることができ、HOの分圧は0.05〜20torrの間(例えば0.1〜2torr)とすることができる。
堆積温度は、室温と摂氏100度との間とすることができる。コーティングプロセスは、例えば、Applied Micro Structures, Inc.からのMolecular Vapor Deposition(MVD)TMマシンを用いて実施することができる。
(ノズルプレート)
本発明におけるノズルプレートは、複数の吐出孔が二次元に配列された構成を有するものである。複数の吐出孔の数には特に限定はなく、画像形成の高速化等を考慮し、適宜選択できる。
前記ノズルプレートとしては、シリコンを含むノズルプレート(以下、「シリコンノズルプレート」ともいう)が好適である。
前記シリコンとしては、単結晶シリコン又はポリシリコンを用いることができる。
また、前記シリコンノズルプレートとしては、例えば、シリコン基板上に、金属酸化物(酸化シリコン、酸化チタン、酸化クロム、酸化タンタル(好ましくはTa)等)、金属窒化物(窒化チタン、窒化シリコン等)、金属(ジルコニウム、クロム、チタン等)などの膜が設けられたものを用いることもできる。
ここで、酸化シリコンは、シリコン基板の表面の全部又は一部が酸化されて形成されたSiO膜であってもよい。
また、前記シリコンノズルプレートは、シリコンの一部をガラス(例:硼珪酸ガラス、感光性ガラス、石英ガラス、ソーダ石灰ガラス)に置き換えて構成されたものであってもよい。
上記のうち、特に、五酸化タンタル等をはじめとする酸化タンタルからなる膜は、インクに対して非常に優れた耐インク性を有し、特にアルカリ性のインクに対して良好な耐侵食性が得られる。
前記酸化シリコンからなる膜(SiO膜)を形成する方法の一態様を述べる。
例えば、化学蒸着法(CVD)リアクタにシリコン基板を収容し、SiCl及び水蒸気を導入することによって、シリコン基板上にSiO膜を形成できる。
このとき、SiClの分圧は、0.05〜40torr(6.67〜5.3×10Pa)の間(例えば0.1〜5torr(13.3〜666.5Pa))とすることができ、HOの分圧は0.05〜20torrの間(例えば0.2〜10torr)とすることができる。堆積温度は、一般には室温と摂氏100度との間である。
また、他の態様として、シリコン基板上にスパッタリングすることによりSiO膜を形成することができる。
いずれの態様においても、SiO膜が形成されるべきシリコン基板表面は、SiO膜を形成する前に(例えば、酸素プラズマを当てることによって)洗浄されることが好ましい。
(ノズルプレートを備えたインクジェットヘッド)
図3は、本発明におけるノズルプレートを備えたインクジェットヘッドの一例を示す概略断面図である。
図3に示すように、インクジェットヘッド100は、吐出孔(ノズル)を有するノズルプレート11と、ノズルプレートの吐出方向と反対側に設けられたインク供給ユニット20とを備えている。ノズルプレート11には、インクを吐出する複数の吐出孔12が設けられている。ノズルプレート11の吐出面側には、フッ素化合物を含む撥液膜13が設けられている。
図4は、ノズルプレート11の吐出面(撥液膜13形成面)を概念的に示す斜視図である。ノズルプレート11は、図4に示すように、複数の吐出孔(ノズル)が2次元配列されて設けられている。吐出孔の数には限定はなく、画像形成の高速化等を考慮して適宜選択でき、例えば、32×60個とすることができる。
このノズルプレート11は、前述のシリコンを含むノズルプレート(シリコンノズルプレート)を用いることができ、例えば、少なくともノズル口内壁及びインク吐出方向側のプレート面にシリコンが露出した構造のシリコンノズルプレートが好ましい。
なお、図示しないが、ノズルプレート11は、シリコン基板と該シリコン基板上に設けられた酸化シリコン膜とからなるシリコンノズルプレートであってもよい。この場合、酸化シリコン膜は、シリコン基板とフッ素化合物を含む撥液膜13との間に配置される。
インク供給ユニット20は、ノズルプレート11の複数の吐出孔12のそれぞれとノズル連通路22を介して連通する複数の圧力室21と、複数の圧力室21のそれぞれにインクを供給する複数のインク供給流路23と、複数のインク供給流路23にインクを供給する共通液室25と、複数の圧力室21のそれぞれを変形する圧力発生手段30とを備えている。
インク供給流路23は、ノズルプレート11と圧力発生手段30の間に形成されており、共通液室25に供給されたインクが送液されるようになっている。このインク供給流路23には、圧力室21との間を繋ぐ供給調整路24の一端が接続されており、インク供給流路23から供給されるインク量を所要量に絞って圧力室21に送液することができる。供給調整路24は、インク供給流路23に複数設けられ、このインク供給流路23を介して圧力発生手段30に隣接して設けられた圧力室21にインクが供給される。
このように、複数の吐出孔にインクを多量に供給することが可能である
圧力発生手段30は、圧力室21側から振動板31、接着層32、下部電極33、圧電体層34、上部電極35を順に積み重ねて構成されており、外部から駆動信号を供給する電気配線が接続されている。画像信号に応じて圧電素子が変形することで、インクがノズル連通路22を介してノズル12から吐出される。
また、吐出孔12の近傍には、循環絞り41が設けられており、常時インクが循環路42へ回収されるようになっている。これにより、非吐出時の吐出孔近傍のインクの増粘を防止することができる。
(記録媒体)
本インク吐出工程において、インク組成物が吐出される記録媒体としては特に制限はないが、一般のオフセット印刷などに用いられる、いわゆる上質紙、コート紙、アート紙などのセルロースを主体とする一般印刷用紙を用いることができる。セルロースを主体とする一般印刷用紙は、水性インクを用いた一般のインクジェット法による画像記録においては比較的インクの吸収、乾燥が遅く、打滴後に色材移動が起こりやすく、画像品質が低下しやすいが、本発明のインクジェット画像形成方法によると、色材移動を抑制して色濃度、色相に優れた高品位の画像の記録が可能である。
記録媒体としては、一般に市販されているものを使用することができ、例えば、王子製紙(株)製の「OKプリンス上質」、日本製紙(株)製の「しらおい」、及び日本製紙(株)製の「ニューNPI上質」等の上質紙(A)、王子製紙(株)製の「OKエバーライトコート」及び日本製紙(株)製の「オーロラS」等の微塗工紙、王子製紙(株)製の「OKコートL」及び日本製紙(株)製の「オーロラL」等の軽量コート紙(A3)、王子製紙(株)製の「OKトップコート+」及び日本製紙(株)製の「オーロラコート」等のコート紙(A2、B2)、王子製紙(株)製の「OK金藤+」及び三菱製紙(株)製の「特菱アート」等のアート紙(A1)等が挙げられる。また、インクジェット記録用の各種写真専用紙を用いることも可能である。
上記の中でも、色材移動の抑制効果が大きく、従来以上に色濃度及び色相の良好な高品位な画像を得る観点からは、好ましくは、水の吸収係数Kaが0.05〜0.5でmL/m・ms1/2の記録媒体であり、より好ましくは0.1〜0.4mL/m・ms1/2の記録媒体であり、更に好ましくは0.2〜0.3mL/m・ms1/2の記録媒体である。
水の吸収係数Kaは、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No51:2000(発行:紙パルプ技術協会)に記載されているものと同義であり、具体的には、吸収係数Kaは、自動走査吸液計KM500Win(熊谷理機(株)製)を用いて接触時間100msと接触時間900msにおける水の転移量の差から算出されるものである。
記録媒体の中でも、一般のオフセット印刷などに用いられるいわゆる塗工紙が好ましい。塗工紙は、セルロースを主体とした一般に表面処理されていない上質紙や中性紙等の表面にコート材を塗布してコート層を設けたものである。塗工紙は、通常の水性インクジェットによる画像形成においては、画像の光沢や擦過耐性など、品質上の問題を生じやすいが、本発明のインクジェット画像形成方法では、光沢ムラが抑制されて光沢性、耐擦性の良好な画像を得ることができる。特に、原紙とカオリン及び/又は重炭酸カルシウムを含むコート層とを有する塗工紙を用いるのが好ましい。より具体的には、アート紙、コート紙、軽量コート紙、又は微塗工紙がより好ましい。
<処理液付与工程>
本発明のインクジェット画像形成方法は、前記記録媒体上に、前記インク組成物と接触することで凝集体を形成可能な凝集剤を含む処理液を付与する処理液付与工程を有することが好ましい。
本処理液付与工程では、インク組成物と接触することで凝集体を形成可能な処理液(処理液)を記録媒体に付与し、処理液をインク組成物と接触させて画像化する。この場合、インク組成物中の樹脂粒子や樹脂被覆キナクリドン系顔料などの分散粒子が凝集し、記録媒体上に画像が固定化される。これにより、インクジェット画像形成を高速化でき、更に、高速化しても濃度、解像度の高い画像が得られる。
なお、処理液における各成分の詳細及び好ましい態様については後述する。
処理液の付与は、塗布法、インクジェット法、浸漬法などの公知の方法を適用して行なうことができる。塗布法としては、バーコーター、エクストルージョンダイコーター、エアードクターコーター、ブレッドコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、リバースロールコーター等を用いた公知の塗布方法によって行なうことができる。インクジェット法の詳細については、既述の通りである。
処理液付与工程は、インク吐出工程の前又は後のいずれに設けてもよい。
本発明においては、処理液付与工程で処理液を付与した後に、インク吐出工程を設けた態様が好ましい。すなわち、記録媒体上に、インク組成物を吐出する前に、予めインク組成物中の色材(樹脂被覆キナクリドン系顔料)を凝集させるための処理液を付与しておき、記録媒体上に付与された処理液に接触するようにインク組成物を吐出して画像化する態様が好ましい。これにより、インクジェット記録を高速化でき、高速記録しても濃度、解像度の高い画像が得られる。
処理液の付与量としては、インク組成物を凝集可能であれば特に制限はないが、好ましくは、凝集成分(例えば、2価以上のカルボン酸又はカチオン性有機化合物)の付与量が0.1g/m以上となる量とすることができる。中でも、凝集成分の付与量が0.1〜1.0g/mとなる量が好ましく、より好ましくは0.2〜0.8g/mである。凝集成分の付与量は、0.1g/m以上であると凝集反応が良好に進行し、1.0g/m以下であると光沢度が高くなり過ぎず好ましい。
また、本発明においては、処理液付与工程後にインク吐出工程を設け、処理液を記録媒体上に付与した後、インク組成物が吐出されるまでの間に、記録媒体上の処理液を加熱乾燥する加熱乾燥工程を更に設けることが好ましい。インク吐出工程前に予め処理液を加熱乾燥させることにより、滲み防止などのインク着色性が良好になり、色濃度及び色相の良好な可視画像を記録できる。
加熱乾燥は、ヒータ等の公知の加熱手段やドライヤ等の送風を利用した送風手段、あるいはこれらを組み合わせた手段により行なえる。加熱方法としては、例えば、記録媒体の処理液の付与面と反対側からヒータ等で熱を与える方法や、記録媒体の処理液の付与面に温風又は熱風をあてる方法、赤外線ヒータを用いた加熱法などが挙げられ、これらの複数を組み合わせて加熱してもよい。
(処理液)
前記処理液は、前記インク組成物と接触したときに凝集体を形成できる水性組成物であり、具体的には、インク組成物と混合されたときに、インク組成物中の樹脂被覆キナクリドン系顔料などの分散粒子を凝集させて凝集体を形成可能な凝集成分を少なくとも含み、必要に応じて、他の成分を含んで構成することができる。
インク組成物と共に処理液を用いることで、インクジェット記録を高速化でき、高速記録しても濃度、解像度の高い画像が得られる。
−凝集成分−
処理液は、インク組成物と接触して凝集体を形成可能な凝集成分の少なくとも1種を含有する。インクジェット法で吐出された前記インク組成物に処理液が混合することにより、インク組成物中で安定的に分散している樹脂被覆キナクリドン系顔料等の凝集が促進される。
処理液の例としては、インク組成物のpHを変化させることにより凝集物を生じさせることができる液体組成物が挙げられる。このとき、処理液のpH(25℃)は、インク組成物の凝集速度の観点から、1〜6であることが好ましく、1.2〜5であることがより好ましく、1.5〜4であることが更に好ましい。この場合、吐出工程で用いる前記インク組成物のpH(25℃)は、7.5〜9.5(より好ましくは8.0〜9.0)であることが好ましい。
中でも、本発明においては、画像濃度、解像度、及びインクジェット画像形成の高速化の観点から、前記インク組成物のpH(25℃)が7.5以上であって、処理液のpH(25℃)が3〜5である場合が好ましい。
前記凝集成分は、1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
前記処理液は、凝集成分として、酸性化合物の少なくとも1種を用いて構成することができる。
前記酸性化合物としては、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、硫酸基、スルホン酸基、スルフィン酸基、又はカルボキシル基を有する化合物、あるいはその塩(例えば多価金属塩)を使用することができる。中でも、インク組成物の凝集速度の観点から、リン酸基又はカルボキシル基を有する化合物がより好ましく、カルボキシル基を有する化合物であることが更に好ましい。
カルボキシル基を有する化合物としては、ポリアクリル酸、酢酸、グリコール酸、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、アスコルビン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ピリジンカルボン酸、クマリン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、若しくはこれらの化合物の誘導体、又はこれらの塩(例えば多価金属塩)等の中から選ばれることが好ましい。これらの化合物は、1種類で使用されてもよく、2種類以上併用されてもよい。
前記処理液は、前記酸性化合物に加えて、水系溶媒(例えば、水)を更に含んで構成することができる。
前記処理液が前記酸性化合物を含む場合、処理液中における酸性化合物の含有量としては、凝集効果の観点から、処理液の全質量に対し、5〜95質量%であることが好ましく、10〜80質量%であることがより好ましい。
また、高速凝集性を向上させる処理液の好ましい一例として、多価金属塩あるいはポリアリルアミンを添加した処理液も挙げることができる。
前記多価金属塩あるいはポリアリルアミンとしては、周期表の第2属のアルカリ土類金属(例えば、マグネシウム、カルシウム)、周期表の第3属の遷移金属(例えば、ランタン)、周期表の第13属からのカチオン(例えば、アルミニウム)、ランタニド類(例えば、ネオジム)の塩、及びポリアリルアミン、ポリアリルアミン誘導体を挙げることができる。金属の塩としては、カルボン酸塩(蟻酸、酢酸、安息香酸塩など)、硝酸塩、塩化物、及びチオシアン酸塩が好適である。中でも、好ましくは、カルボン酸(蟻酸、酢酸、安息香酸塩など)のカルシウム塩又はマグネシウム塩、硝酸のカルシウム塩又はマグネシウム塩、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、及びチオシアン酸のカルシウム塩又はマグネシウム塩である。
前記処理液が前記多価金属塩を含む場合、処理液中における多価金属塩の含有量としては、処理液の全質量に対し、1〜10質量%が好ましく、より好ましくは1.5〜7質量%であり、更に好ましくは2〜6質量%の範囲である。
処理液の粘度としては、インク組成物の凝集速度の観点から、1〜30mPa・sの範囲が好ましく、1〜20mPa・sの範囲がより好ましく、2〜15mPa・sの範囲がさらに好ましく、2〜10mPa・sの範囲が特に好ましい。なお、粘度は、VISCOMETER TV−22(TOKI SANGYO CO.LTD製)を用いて20℃の条件下で測定されるものである。
また、処理液の表面張力としては、インク組成物の凝集速度の観点から、20〜60mN/mであることが好ましく、20〜45mN/mであることがより好ましく、25〜40mN/mであることがさらに好ましい。なお、表面張力は、Automatic Surface Tensiometer CBVP−Z(協和界面科学(株)製)を用いて25℃の条件下で測定されるものである。
<加熱定着工程>
本発明のインクジェット画像形成工程は、前記インク吐出工程の後、インク組成物の付与により形成されたインク画像に加熱面を接触させて加熱定着する加熱定着工程を有することが好ましい。
加熱定着処理を施すことにより、記録媒体上の画像の定着が施され、画像の擦過に対する耐性をより向上させることができる。
加熱の方法は、特に制限されないが、ニクロム線ヒーター等の発熱体で加熱する方法、温風又は熱風を供給する方法、ハロゲンランプ、赤外線ランプなどで加熱する方法など、非接触で乾燥させる方法を好適に挙げることができる。また、加熱加圧の方法は、特に制限はないが、例えば、熱板を記録媒体の画像形成面に押圧する方法や、一対の加熱加圧ローラ、一対の加熱加圧ベルト、あるいは記録媒体の画像記録面側に配された加熱加圧ベルトとその反対側に配された保持ローラとを備えた加熱加圧装置を用い、対をなすローラ等を通過させる方法など、接触させて加熱定着を行なう方法が好適に挙げられる。
加熱加圧ローラ、あるいは加熱加圧ベルトを用いる場合の記録媒体の搬送速度は、200〜700mm/秒の範囲が好ましく、より好ましくは300〜650mm/秒であり、更に好ましくは400〜600mm/秒である。
<その他の工程>
本発明のインクジェット画像形成方法は、必要に応じ、乾燥工程、下記メンテナンス工程、下記硬化工程等のその他の工程を有していてもよい。
(メンテナンス工程)
本発明のインクジェット画像形成方法は、インク組成物またはインク組成物に由来するインク固着物(以下、「インク組成物等」ともいう)を、ノズルプレートに設けられた撥液膜から除去するメンテナンス工程を有していてもよい。
本発明のインクジェット画像形成方法は、撥液膜からのインク組成物の切れ性に優れているため、基本的には撥液膜へのインク組成物等の付着自体が抑制されている。しかし、仮に、撥液膜へインク組成物等が付着した場合であっても、該インク組成物等を容易に除去することができる。
前記メンテナンス工程においては、ワイパブレードによる掻き取り、布や紙類での払拭等によって、インク組成物またはインク組成物に由来する固着物を除去する。
またメンテナンス工程は、メンテナンス液をインクジェットヘッド周辺(例:インク流路等;以下、ヘッド等ともいう。)に付与することを含んでいてもよい。前記メンテナンス液をヘッド等に付与することにより、ノズル面のインク由来のインク固着物は溶解、又は膨潤等してさらに除去しやすくなる。
メンテナンス液の付与は、ワイパブレードによる掻き取り、布や紙類での払拭等の前であっても後であってもよい。好ましくは、メンテナンス液を付与後にワイパブレードを用いてノズル面を擦り(ワイピング)、インク固着物を掻き落とす方法、風圧やメンテナンス液等の液圧等により取り除く方法、及び布・紙類で払拭する方法が挙げられる。中でも、ワイパブレードによる掻き取り、布や紙類での払拭が好ましい。
前記ワイパブレードの材質は弾性を有するゴムが好ましく、具体的な材質としては、ブチルゴム、クロプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、ニトリルゴム等が挙げられる。ワイパブレードに撥インク性を付与するためにフッ素樹脂等によりコーティングしてあるワイパブレードを用いても構わない。
(硬化工程)
本発明の画像形成方法は、前記インク組成物が重合性化合物を更に含有する場合には、更に、前記インク付与工程により形成された画像に対して活性エネルギー線を照射して前記画像を硬化する硬化工程を有していてもよい。
これにより、形成される画像の耐擦性や記録媒体との密着性がより向上する。
前記活性エネルギー線としては、前記重合性化合物を重合可能なものであれば、特に制限はない。例えば、紫外線、電子線等挙げることができ、中でも、汎用性の観点から、紫外線であることが好ましい。また、活性エネルギー線の発生源として、例えば、紫外線照射ランプ(ハロゲンランプ、高圧水銀灯など)、レーザー、LED、電子線照射装置などが挙げられる。
前記紫外線強度は、硬化に有効な波長領域において、500〜5000mW/cmであることが好ましい。
前記紫外線を照射する手段としては、通常用いられる手段を用いてもよく、特に紫外線照射ランプが好適である。紫外線照射ランプは、水銀の蒸気圧が点灯中で1〜10Paであるような、いわゆる低圧水銀灯、高圧水銀灯、蛍光体が塗布された水銀灯、UV-LED光源等が好適である。水銀灯、UV−LEDの紫外線領域の発光スペクトルは、450nm以下、特には184nm〜450nmの範囲であり、黒色或いは、着色されたインク組成物中の重合性化合物を効率的に反応させるのに適している。また、電源をプリンタに搭載する上でも、小型の電源を使用できる点で適している。水銀灯には、例えば、メタルハライドランプ、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンフラッシュランプ、ディープUVランプ、マイクロ波を用い外部から無電極で水銀灯を励起するランプ、UVレーザー等が実用されている。発光波長領域として上記範囲を含むので、電源サイズ、入力強度、ランプ形状等が許されれば、基本的には適用可能である。光源は、用いる重合開始剤の感度にも合わせて選択される。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で測定した。GPCは、HLC−8020GPC(東ソー(株)製)を用い、カラムとして、TSKgel、Super Multipore HZ−H(東ソー(株)製、4.6mmID×15cm)を3本用い、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いた。また、条件としては、試料濃度を0.35/min、流速を0.35ml/min、サンプル注入量を10μl、測定温度を40℃とし、IR検出器を用いて行なった。また、検量線は、東ソー(株)製「標準試料TSK standard,polystyrene」:「F−40」、「F−20」、「F−4」、「F−1」、「A−5000」、「A−2500」、「A−1000」、「n−プロピルベンゼン」の8サンプルから作製した。
〔実施例1〕
≪樹脂分散剤の合成≫
樹脂分散剤として、下記樹脂分散剤P−1を作製した(樹脂分散剤P−1の作製に用いた各モノマー及び各モノマーの共重合比は下記表1に示すとおりである)。
<樹脂分散剤P−1の合成>
(モノマーM−1の合成)
下記モノマーM−1(パラ置換体・メタ置換体の混合物)を以下の方法で合成した。
9(10H)−アクリドン9.76部とt−ブトキシカリウム5.61部とをジメチルスルホキシド30部に溶解させ、45℃に加熱した。ここにクロロメチルスチレン(セイミケミカル(株)製CMS−P、メタ体/パラ体=50/50(mol/mol)の混合物)15.26部を滴下し、50℃で5時間加熱攪拌を行なった。この反応液を蒸留水200部に攪拌しながら注ぎ、得られた析出物を濾別、洗浄することで、モノマーM−1を11.9部得た。モノマーM−1の構造は、1H−NMRで確認した。
(樹脂分散剤P−1の合成)
上記で得られたモノマーM−1とメチルメタクリレートとメタクリル酸とを、モノマーM−1/メチルメタクリレート/メタクリル酸=10/80/10の質量比で混合し、モノマー混合物を得た。
攪拌機、冷却管を備えた300mlの三口フラスコに、上記モノマー混合物90gとメチルエチルケトン126gとを加え、窒素雰囲気下で75℃に加熱した。ここに、メチルエチルケトン8gに溶解させたジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート1.20gを加えて2時間反応させ、更に、メチルエチルケトン0.6gに溶解させたジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート0.50gを加えてさらに2時間反応させた。更に、メチルエチルケトン0.6gに溶解させたジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート0.50gを加えて80℃に昇温し、4時間加熱攪拌して未反応モノマーをすべて反応させ、モノマーM−1/メチルメタクリレート/メタクリル酸(共重合比[質量比]=10/80/10)共重合体(樹脂分散剤P−1)のポリマー溶液Aを得た。
ここで、未反応モノマーの消失は、1H−NMRで確認した。反応終了後、ポリマー溶液Aにメチルエチルケトン33gを加えて希釈し、樹脂分散剤P−1のポリマー溶液Bを得た。
得られた樹脂分散剤P−1の組成はH−NMRで確認した。GPCより求めた樹脂分散剤P−1の重量平均分子量(Mw)は35100であった。
ここで、沖津法により求められた各モノマーのSP値を用い、樹脂分散剤P−1のSP値を求めると20.17MPa1/2であった。
≪インク組成物の調製≫
画像形成に用いるインクとして、マゼンタ色のインク組成物であるインク1を調製した。以下、詳細を説明する。
<顔料分散物1の調製>
C.I.ピグメント・レッド122(Cromophtal Jet Magenta DMQ(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製;マゼンタ顔料)10部と、上記で得られた樹脂分散剤P−1のポリマー溶液Aと、メチルエチルケトン42部と、1mol/L NaOH水溶液5.5部(樹脂分散剤P−1に含まれる酸性基の量に対して1当量)と、イオン交換水87.2部と、をディスパー混合した。ここで、樹脂分散剤P−1のポリマー溶液Aの量は、樹脂分散剤P−1の量が4.5部となる量とした。
得られた混合物に対し、分散機(マイクロフルイダイザーM−140K、150MPa)を用い、更に10パスの分散処理を施した。
続いて、得られた分散物から、減圧下、55℃でメチルエチルケトンを除去し、さらに水の一部を除去することにより、顔料濃度が15.0%の水系の顔料分散物1(樹脂被覆マゼンタ顔料(樹脂被覆キナクリドン系顔料)の分散物)を得た。
<自己分散性樹脂粒子B−1の作製>
攪拌機、温度計、還流冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた2リットル三口フラスコに、メチルエチルケトン560.0gを仕込んで、窒素雰囲気下で87℃まで昇温した。反応容器内は還流状態を保ちながら(以下、反応終了まで還流)、メチルメタクリレート232.0g、イソボルニルメタクリレート301.6g、メタクリル酸46.4g、メチルエチルケトン108g、及び「V−601」(和光純薬工業(株)製)2.32gからなる混合溶液を、2時間で滴下が完了するように等速で滴下した。
滴下完了後、1時間攪拌後、「V−601」1.16g及びメチルエチルケトン6.4gからなる溶液を加え、2時間攪拌する工程(1)を行なった。続いて、この工程(1)を4回繰り返し、さらに「V−601」1.16g及びメチルエチルケトン6.4gからなる溶液を加えて3時間攪拌を続けた。重合反応終了後、溶液の温度を65℃に降温し、イソプロパノール163.0gを加えて放冷した。得られた共重合体の重量平均分子量(Mw)は63000、酸価は65.1(mgKOH/g)であった。
次に、得られた重合溶液317.3g(固形分濃度41.0%)を秤量し、イソプロパノール46.4g、20%無水マレイン酸水溶液1.65g(水溶性酸性化合物、共重合体に対してマレイン酸として0.3%相当)、2モル/LのNaOH水溶液40.77gを加え、反応容器内温度を70℃に昇温した。次に蒸留水380gを10ml/minの速度で滴下し、水分散化させた(分散工程)。その後、減圧下、反応容器内温度70℃で1.5時間保って、イソプロパノール、メチルエチルケトン、蒸留水を合計で287.0g留去し(溶剤除去工程)、プロキセルGXL(S)(アーチ・ケミカルズ・ジャパン(株)製)0.278g(ポリマー固形分に対してベンゾイソチアゾリン−3−オンとして440ppm)添加した。その後1μmのフィルターでろ過を実施し、ろ過液を回収し、固形分濃度26.5%の自己分散性樹脂粒子B−1の水性分散物を得た。
得られた自己分散性樹脂粒子B−1をイオン交換水で希釈し25.0%の液の物性を測定した結果、pH7.8、電気伝導度461mS/m、粘度14.8mPa・s、体積平均粒径2.8nmであった。
<インク1の調製>
上記で得られた顔料分散物1と、自己分散性樹脂粒子B−1の水性分散物と、下記組成中のその他の成分とを用い、下記の組成となるように各成分を混合した。これをプラスチック製のディスポーザブルシリンジに詰め、PVDF5μmフィルター(Millex−SV、直径25mm、ミリポア社製)で濾過し、マゼンタ色のインク組成物であるインク1を得た。
得られたインク1について、導電率計WM−50EG(東亜ディーケーケー(株)製)を用いて液温25℃における電気伝導度を測定したところ、表1に示す値であった。
〜インク1の組成〜
・マゼンタ顔料(C.I.ピグメント・レッド122) … 6.5%
・前記樹脂分散剤P−1 … 2.9%
・前記自己分散性樹脂粒子B−1 … 5.0%
・トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(TPGmME) … 2.0%
(和光純薬工業社製、水溶性有機溶剤)
・ジプロピレングリコール(DPG) … 2.0%
(和光純薬工業社製、水溶性有機溶剤)
・サンニックスGP250(三洋化成工業社製、水溶性有機溶剤) …10.0%
・尿素 … 5.0%
・コロイダルシリカ(スノーテックスXS、固形分濃度20%、体積平均粒子径5nm、日産化学工業(株)製)(固形分) … 0.01%
・オルフィンE1010(日信化学工業(株)製、界面活性剤) … 1.5%
・イオン交換水 … 全体で100%となる量
≪処理液の調製≫
下記組成となるように成分を混合し、処理液1を調製した。
〜処理液1の組成〜
・マロン酸 …11.25%
・DL−リンゴ酸 …14.5%
・ジエチレングリコールモノブチルエーテル(DEGmBE) … 4.0%
(和光純薬工業社製、水溶性有機溶剤)
・トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(TPGmME) … 4.0%
(和光純薬工業社製、水溶性有機溶剤)
・イオン交換水 … 全体で100%となる量
得られた処理液1について、東亜DDK(株)製pHメーターWM−50EGにて、pHを測定したところ、pH値は、1.10であった。また、協和界面科学(株)製 FASE Automatic Surface Tensionmeter CBVP−Zにて、表面張力を測定したところ、41.3mN/mであった。
≪画像形成≫
図3に示したようなシリコンノズルプレートを備えたインクジェットヘッドを用意し、これに繋がる貯留タンクに上記で得たインク1を詰め替えた。
ここで、シリコンノズルプレートは単結晶シリコンと該単結晶シリコン上に設けられた酸化シリコンの膜(SiO膜)とで構成されており、図4に示すように2次元マトリクス状に配列された複数の吐出孔が設けられている。
上記SiO膜は、上記シリコンノズルプレートのインク吐出方向側に設けられた膜であり、化学気相蒸着(CVD)法リアクタにSiCl及び水蒸気を導入することによって成膜された膜である。上記SiO膜の膜厚は、50nmである。
さらに、このSiO膜上に酸素プラズマ処理が施され、酸素プラズマ処理後のSiO膜上に、C17SiClを用いた化学気相蒸着法(CVD)により、C17SiClの積層膜(重合膜)である撥液膜2が設けられている。
ここでは、低圧力でC17SiCl及び水蒸気をCVDリアクタの中に導入することによって、C17SiClの積層膜を製膜させ、さらに後処理として80℃/湿度80%条件で120分間加熱し、未反応のC17SiCl同士を重合させて、C17SiClの積層膜(重合膜)である撥液膜2とした。撥液膜2の厚みは6.1nmであった。また、この撥液膜2のSP値を沖津法により求めたところ、12.81MPa1/2であった。ここで、撥液膜2のSP値はC17SiClの重合体のSP値として求めた。
画像形成に際しては、まず、記録媒体として特菱アート両面N(三菱製紙(株)製)を、500mm/秒で所定の直線方向に移動可能なステージ上に固定し、ステージ温度を30℃で保持し、これに上記で得た処理液1をバーコーターで約1.2μmの厚みとなるように塗布し、塗布直後に50℃で2秒間乾燥させた。
その後、インクジェットヘッドを、前記ステージの移動方向(副走査方向)と直交する方向に対して、ノズルが並ぶラインヘッドの方向(主走査方向)が75.7度傾斜するように固定配置し、記録媒体を副走査方向に定速移動させながらインク液滴量2.4pL、吐出周波数24kHz、解像度1200dpi×1200dpiの吐出条件にて上記インク1をライン方式(シングルパス方式)で吐出し、50%ベタ画像を印画した。
印画直後、60℃で3秒間乾燥させ、更に60℃に加熱された一対の定着ローラ間を通過させ、ニップ圧0.25MPa、ニップ幅4mmにて定着処理を実施し、評価サンプルを得た。
≪評価≫
得られたインク及び形成された画像について、以下の評価を行なった。評価結果を下記表1に示す。
<インクの切れ性>
1.5cm×3cmのシリコン板の全面に、上記のSiO膜及び撥液膜2を順次形成し、試験片を得た。
得られた試験片を用いて、以下のようにして撥液膜に対するインクの切れ時間を測定し、インクの切れ性(液切れ)を評価した。
上記試験片(撥液膜)を2cmの深さまでインクに浸漬し(1cm未浸漬)、浸漬から2秒間経過後に引き上げた。
試験片(撥液膜)を引き上げてから、インクが撥液膜上から切れて落ちるまでの時間(切れ時間)を測定し、インクの切れ時間とした。
〜インクの切れ性の評価基準〜
A : インクの切れ時間が20秒以下であった。
B : インクの切れ時間が20秒よりも長く、40秒以下であった。
C : インクの切れ時間が40秒よりも長く、60秒以下であった。
D : インクの切れ時間が60秒よりも長い(試験片(撥液膜)を引き上げてから60秒経過してもインクが撥液膜上に残り、切れなかった)。
<耐ブロッキング性>
上記画像形成で得られた2枚の評価サンプルを4cm×4cmのサイズに裁断し、裁断された2枚の評価サンプルをベタ画像同士が接するようにして重ね、更にプレス機で1.0MPaの圧力を10秒間かけて2枚の評価サンプルをプレスした。
その後、2枚の評価サンプルを剥がし、このときの剥がれ易さ及び剥がした後の画像の損傷を目視で観察し、下記の評価基準に従って評価した。
耐ブロッキング性の評価は、プレス時のベタ画像の温度が25℃である条件、及び、プレス時のベタ画像の温度が35℃である条件の2条件について行なった。
〜耐ブロッキング性の評価基準〜
A: 2枚の評価サンプルを剥がすときに、貼り付き感無く自然に剥がれ、互いの紙への色移りも見られなかった。
B: 2枚の評価サンプルを剥がすときにわずかな貼り付き感があるものの、画像の損傷は見られなかった。
C: 2枚の評価サンプルを剥がすときに貼り付き感があり、画像の損傷がわずかに見られた。
D: 2枚の評価サンプルを剥がすときの貼り付き感が強く、画像の損傷が顕著であり、実用上問題があるレベルであった(但し、下記Eに該当する場合を除く)。
E: 2枚の評価サンプルを剥がすときの貼り付き感が非常に強く、画像及びコート層が損傷し、Dよりも劣るレベルであった。
<吐出安定性>
上記画像形成で用いたインクジェットヘッドを、ステージの移動方向がノズル配列方向に対して垂直方向になるように固定した。次にこれに繋がる貯留タンクに上記インク1を詰め替えた。記録媒体として富士フイルム(株)製の画彩写真仕上げProを、ヘッドのノズル配列方向に対して垂直方向に移動するステージに貼り付けた。
次に、ステージを248mm/分で移動させ、インク滴量3.4pL、吐出周波数10kHz、ノズル配列方向×搬送方向75×1200dpiで96本のラインを搬送方向に対して平行に1ノズル(1つの吐出孔)当り2000発のインク滴を吐出して、印画サンプルを作製した。得られた印画サンプルを目視で観察して、すべてのノズル(吐出孔。以下同じ。)からインクが吐出されていることを確認した。
上記インク吐出後、25℃/80%RH/3時間ヘッドをそのままの状態で放置した後、新しい記録媒体を貼り付けて、再び同様の条件でインクを吐出して印画サンプルを作製した。得られた印画サンプルを目視で観察し、2000発吐出した後の不吐ノズル数を評価した。
不吐ノズル数(単位:本)を下記表1に示した。不吐ノズル数が10本以下であれば、実用上の許容範囲内である。
〔実施例2〕
まず、実施例1において、樹脂分散剤P−1を、下記表1に示す樹脂分散剤に変更したこと以外は実施例1と同様にしてインク組成物を調製した。
次に、実施例1において、ノズルプレートに設けた撥液膜2、及び、インクの切れ性の評価の試験片に設けた撥液膜2を、それぞれ、化学気相蒸着法によるC17SiClの単分子膜(SAM膜)である撥液膜1に変更したこと、及び、インク1に代えて上記で得られたインク組成物を用いたこと以外は実施例1と同様にして、画像形成及び評価を行なった。
評価結果を表1に示す。
ここで、撥液膜1は、積層膜(重合膜)ではなく単分子膜が得られるように、C17SiClの濃度を調整したこと及び80℃/80%条件の後処理を実施しなかったこと以外は撥液膜2と同様にして形成した。撥液膜1の膜厚は1.5nmであった。また、撥液膜1のSP値を沖津法により求めたところ、15.67MPa1/2であった。ここで、撥液膜1のSP値はC17SiClの単分子(単量体)のSP値として求めた。
〔実施例3〜11及び比較例1〜6〕
実施例1において、樹脂分散剤P−1を、下記表1に示す樹脂分散剤に変更したこと以外は実施例1と同様にしてインク組成物を調製し、実施例1と同様にして画像形成及び評価を行なった。評価結果を表1に示す。

以下、前記表1中の各成分について説明する(特に断りがない限り、共通する内容については後述の表2〜表5についても同様である)。
・モノマーの略号と化合物名との対応は以下の通りである。
PEMA … フェノキシエチルメタクリレート
M−1 … 上記モノマーM−1
tBuMA … ターシャリーブチルメタクリレート
iPrMA … イソプロピルメタクリレート
EMA … エチルメタクリレート
MMA … メチルメタクリレート
HEMA … ヒドロキシエチルメタクリレート
MAA … メタクリル酸
BzMA … ベンジルメタクリレート
・モノマーの略号の後のカッコ内の数字は、沖津法によって求められたそのモノマーのSP値(単位:MPa1/2)を表す。
・「高SP値MA」は、SP値19.40MPa1/2以上の(メタ)アクリル酸エステルを指す。表1中の「高SP値MA」は、PEMA、MMA、HEMA、及びBzMAの4種である。
・「高SP値MAの比率(%)」は、樹脂分散剤の全量に対する、高SP値MAの合計量の比率(質量%)を表す。
表1に示すように、SP値が20.0MPa1/2以上である樹脂によって被覆された樹脂被覆マゼンタ顔料を含むインク、及び、フッ素化合物を含む撥液膜が設けられたノズルプレートを用いた実施例1〜11では、撥液膜からのインクの切れ性に優れており、かつ、画像の耐ブロッキング性に優れていた。
更に、実施例1〜11では、インクの吐出安定性についても実用上の許容範囲内であった。特に、高SP値MAの比率が30質量%〜60質量%の範囲で、吐出安定性が顕著に向上することが確認された(実施例6〜8)。
〔実施例12〜15〕
実施例1において、樹脂分散剤P−1を、下記表2に示す樹脂分散剤に変更したこと以外は実施例1と同様にしてインク組成物を調製し、実施例1と同様にして画像形成及び評価を行なった。評価結果を下記表2に示す。
表2に示すように、実施例12〜15でも、撥液膜からのインクの切れ性に優れており、かつ、画像の耐ブロッキング性に優れていた。
また、実施例12〜15では、吐出安定性がいずれも実用上の許容範囲内であった。
特に、高SP値MAの比率が30質量%〜60質量%の範囲で、吐出安定性が顕著に向上することが確認された(実施例12〜14)。
〔実施例16〜20〕
実施例1において、樹脂分散剤を、下記表3に示すモノマー及び共重合比の樹脂分散剤に変更したこと以外は実施例1と同様にしてインク組成物を作製し、実施例1と同様にして画像形成及び評価を行なった。評価結果を表3に示す。
・表3において、モノマーの略号と化合物名との対応は以下の通りである。
カルボキシエチルMA … 2−カルボキシエチルメタクリレート
ジメチルアミノエチルMA … N,N−ジメチルアミノエチルメタリレート
モルホリノエチルMA … モルホリノエチルメタクリレート
テトラヒドロフルフリルMA … テトラヒドロフルフリルメタクリレート
グリシジルMA … グリシジルメタクリレート
・表3において「高SP値MA」は、具体的には、MMA、カルボキシエチルMA、ジメチルアミノエチルMA、モルホリノエチルMA、テトラヒドロフルフリルMA、及びグリシジルMAの6種である。

表3に示すように、実施例16〜20でも、撥液膜からのインクの切れ性に優れており、かつ、画像の耐ブロッキング性に優れていた。更に、吐出安定性がいずれも実用上の許容範囲内であった。
〔実施例21〕
実施例12において、インク組成物の調製に用いた顔料分散物(樹脂被覆マゼンタ顔料の分散物)を、下記のマゼンタ固溶体顔料分散物(樹脂被覆マゼンタ固溶体顔料の分散物)に変更したこと以外は実施例12と同様にしてインク組成物を調製した。このインク組成物の調製では、下記キナクリドン固溶体顔料及び下記塩基性シナジストS1の合計量がインク組成物の全量に対し6.5%となるように、かつ、樹脂分散剤の含有量がインク組成物の全量に対し2.9%となるようにした。
得られたインク組成物を用い、実施例12と同様にして画像形成及び評価を行なった。
更に、実施例12及び実施例21のそれぞれの画像形成で得られた評価サンプルについて、下記の画像の密着性の評価を行なった。実施例12及び実施例21の評価結果を下記表4に示す。
<マゼンタ固溶体顔料分散物の調製>
(塩基性シナジストS1の合成)
2,9−ジメチルキナクリドンを、常法によりクロロアセトアミドメチル化した後、ジメチルアミノプロピルアミンを反応させ、ジメチルアミノプロピルアミノアセトアミドメチル−2,9−ジメチルキナクリドンを合成した。
(マゼンタ固溶体顔料分散物の調製)
C.I.ピグメント・バイオレット19とC.I.ピグメント・レッド122とのキナクリドン固溶体顔料(C.I.ピグメント・バイオレット19/C.I.ピグメント・レッド122(質量比)=30/70)10部と、前記塩基性シナジストS1を1部と、前記実施例12で用いた樹脂分散剤と同じ樹脂分散剤を4.9部と、メチルエチルケトン20部と、1mol/L NaOH水溶液8.1部とを加え、ロールミルで必要に応じて2〜8時間混練した後、混練物をイオン交換水60部に分散した。得られた分散物を減圧下、55℃でメチルエチルケトンを除去し、更に一部の水を除去した。
室温まで冷却し、高速遠心冷却機7550(久保田製作所製)を用いて、50mL遠心菅を使用し、7000rpmで30分間遠心処理を行ない、沈殿物以外の上澄み液を回収した。ナノトラック粒度分布測定装置UPA−EX150(日機装(株)製)を用いて、動的光散乱法により体積平均粒子径を測定したところ、80nmであった。その後、吸光度スペクトルから顔料濃度を求め、イオン交換水を加えて、固溶体顔料濃度15質量%のマゼンタ固溶体顔料分散物(樹脂被覆マゼンタ固溶体顔料の分散物)を得た。
≪評価≫
〜密着性〜
評価サンプルを23℃、45%RHの環境下に24時間放置した。放置後の画像サンプルのベタ画像の表面に、長さ3cmのセロテープ(登録商標)(LP−12、ニチバン株式会社製)を貼り、5秒後にセロテープ(登録商標)を剥離した。その後、画像サンプルから剥離したセロテープ(登録商標)を目視で観察し、下記の評価基準にしたがって評価した。下記基準のうち、「D」は、実用上支障を来たす水準である。
<評価基準>
A:テープへの色の付着がなく、画像サンプルのベタ画像の劣化も認められなかった。
B:テープには色が付着したが、画像サンプルのベタ画像の劣化は認められなかった。
C:テープには色が付着し、画像サンプルのベタ画像の劣化も認められた。
D:テープの半分以上の面積に色が付着し、画像サンプルのベタ画像が脱落した。
表4に示すように、キナクリドン固溶体顔料を用いた実施例21では、撥液膜からのインクの切れ性、画像の耐ブロッキング性、及びインクの吐出安定性が、(固溶体顔料ではない)C.I.ピグメント・レッド122を用いた実施例12と同等に維持されていた。更に、実施例21では、実施例12と比較して、画像の密着性が向上した。
〔実施例22〕
−自己分散性ポリマーB−2の作製−
攪拌機、温度計、還流冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた2リットル三口フラスコに、メチルエチルケトン560.0gを仕込んで、87℃まで昇温した。反応容器内は還流状態を保ちながら(以下、反応終了まで還流)、メチルメタクリレート278.4g、イソボルニルメタクリレート243.6g、メタクリル酸58.0g、メチルエチルケトン108g、及び「V−601」(和光純薬工業(株)製)2.32gからなる混合溶液を、2時間で滴下が完了するように等速で滴下した。滴下完了後、1時間攪拌後、(1)「V−601」1.16g、メチルエチルケトン6.4gからなる溶液を加え、2時間攪拌を行った。続いて、(1)の工程を4回繰り返し、さらに「V−601」1.16g、メチルエチルケトン6.4gからなる溶液を加えて3時間攪拌を続けた。重合反応終了後、溶液の温度を65℃に降温し、イソプロパノール163.0gを加えて放冷した。得られた共重合体の重量平均分子量(Mw)は64000、酸価は65.1(mgKOH/g)、Tgは、157℃であった。
次に、得られた重合溶液317.3g(固形分濃度41.0%)を秤量し、イソプロパノール46.4g、20%無水マレイン酸水溶液1.65g(水溶性酸性化合物、共重合体に対してマレイン酸として0.3%相当)、2モル/LのNaOH水溶液40.77gを加え、反応容器内温度を70℃に昇温した。次に蒸留水380gを10ml/minの速度で滴下し、水分散化せしめた(分散工程)。その後、減圧下、反応容器内温度70℃で1.5時間保って、イソプロパノール、メチルエチルケトン、蒸留水を合計で287.0g留去し(溶剤除去工程)、プロキセルGXL(S)(アーチ・ケミカルズ・ジャパン(株)製)0.278g(ポリマー固形分に対してベンゾイソチアゾリン−3−オンとして440ppm)添加した。その後1μmのフィルターでろ過を実施し、ろ過液を回収し、固形分濃度23、2%の自己分散性ポリマー粒子B−2の水性分散物を得た。
得られた自己分散性ポリマー微粒子水分散液23.2%の液の物性を測定した結果、pH:7.6、電気伝導度:440mS/m、粘度:12.3mPa・s、体積平均粒径:2.5nmであった。
−顔料分散物2の調製−
C.I.ピグメント・レッド122(Cromophtal Jet Magenta DMQ(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製;マゼンタ顔料)14部と、前記樹脂分散剤P−1におけるモノマー種及び共重合比を下記表5に示すように変更して調製した樹脂分散剤P−2(SP値:20.32MPa1/2)のポリマー溶液Bと、メチルエチルケトン15部と、1mol/L NaOH水溶液4.22部と、イオン交換水62.5部とをディスパー混合した。ここで、樹脂分散剤P−2のポリマー溶液Bの量は、樹脂分散剤P−2の量が4.2部となる量とした。
得られた混合物に対し、分散機(マイクロフルイダイザーM−140K、150MPa)を用い、更に10パスの分散処理を施した。続いて、得られた分散物から、減圧下、55℃でメチルエチルケトンを除去し、さらに水の一部を除去することにより、顔料濃度が15.0%の水系の顔料分散物(樹脂被覆マゼンタ顔料(樹脂被覆キナクリドン系顔料)の分散物)を得た。
−インクの調製−
上記の顔料分散物2と自己分散性樹脂粒子B−2の水性分散物とを用い、下記の組成となるように各成分を混合した。これをプラスチック製のディスポーザブルシリンジに詰め、PVDF5μmフィルター(Millex−SV、直径25mm、ミリポア社製)で濾過し、マゼンタ色のインク組成物であるインクを調製した。
<インクの組成>
・マゼンタ顔料(C.I.ピグメント・レッド122) … 6.67%
・前記樹脂分散剤P−2 … 2.00%
・前記自己分散性樹脂粒子B−2 … 5.10%
・トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(TPGmME) … 2.00%
(和光純薬工業社製、水溶性有機溶剤)
・ジプロピレングリコール(DPG) … 2.00%
(和光純薬工業社製、水溶性有機溶剤)
・サンニックスGP250(三洋化成工業社製、水溶性有機溶剤) …10.00%
・2−ピロリドン(和光純薬工業社製、水溶性有機溶剤) … 2.00%
・尿素 … 5.00%
・コロイダルシリカ(スノーテックスXS、固形分濃度20%、体積平均粒子径5nm、日産化学工業(株)製)(固形分) … 0.06%
・オルフィンE1010(日信化学工業(株)製、界面活性剤) … 0.25%
・オルフィンE1020(日信化学工業(株)製、界面活性剤) … 1.00%
・PVP K15(和光純薬工業(株)製のポリビニルピロリドン) … 0.10%
・プロキセルXL2 … 0.30%
(AVECIA社製の1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン)
・消泡剤(BYK24) … 0.01%
・イオン交換水 … 全体で100%となる量
−処理液2の調製−
下記組成の諸成分を混合し、処理液2を調製した。処理液1のpH(25℃)を東亜DKK(株)製のpHメーターWM−50EGにて測定したところ、1.02であった。
<組成>
・オルトリン酸(85%水溶液) ・・・5.0%
・マロン酸 ・・・7.0%
・リンゴ酸 ・・・7.0%
・ジエチレングリコール ・・・4.0%
・トリエチレングリコールモノメチルエーテル ・・・4.0%
・イオン交換水 ・・・残量
−画像記録及び評価−
上記で得られたインク及び処理液2を用い、以下に示す方法で画像を記録すると共に、評価を行なった。評価結果は、下記表5に示す。ここで、図3に示すようなシリコンノズルプレートを備えたインクジェットヘッドを用意し、これに繋がる貯留タンクに上記で得たインクを詰め替えた。シリコンノズルプレートは、実施例1と同様に、単結晶シリコンと該単結晶シリコン上に設けられた酸化シリコンの膜(SiO膜)とで構成されており、図4に示すように2次元マトリクス状に配列された複数の吐出孔が設けられている。
[画像記録]
記録媒体(塗工紙)として特菱アート(坪量104.7g/m)を用意し、インクジェット記録装置として、図5に示す構造の記録装置を用意した。この記録装置を起動し、その硬質ゴムベルト上に記録媒体を固定して400mm/secの搬送速度で搬送し、以下に示す工程を経て画像を記録した。なお、図5中の<I>〜<V>は、下記の工程I〜工程Vにそれぞれ対応する。その後、得られた記録画像について、以下の評価を行なった。結果を下記表5に示す。
<I.処理液付与工程>
まず、アニロックスローラー11(線数100〜300/インチ)を備え、塗布量が制御されたロールコーターにて、付与量が1.2g/mとなるように処理液2を記録媒体の全面に塗布した。
<II.処理工程>
次いで、下記条件にて処理液2が塗布された記録媒体を、記録媒体の背面側(記録面の反対側)から接触型平面ヒーター22で加熱しながら、乾燥ファン21により送風し、乾燥処理及び浸透処理を施した。
・風速:10m/s
・温度:記録媒体の記録面側の表面温度が60℃となるように加熱
<III.画像形成工程>
GELJET GX5000プリンタヘッド(リコー(株)製のフルラインヘッド)を2基、無端の硬質ゴムベルトの走行方向(副走査方向)と直交する方向に対し、ノズルが並ぶラインヘッドの方向(主走査方向)が75.7°傾斜するように固定配置した。第1のインクジェットヘッド31及び第2のインクジェットヘッド32に上記で得たインクを装填し、第1のインクジェットヘッド31及び第2のインクジェットヘッド32をそれぞれから吐出されたインク滴が重なるようにヘッドの位置を調整した。その後、処理液2が塗布された記録媒体の塗布面に、下記条件にて各インクをインクジェット方式で吐出し、ベタ画像を記録した。
<条件>
・吐出液滴量:2.4pL
・解像度:1200dpi×1200dpi
<IV.インク乾燥工程>
次いで、乾燥領域に記録媒体をベルト搬送し、インクが着滴した記録媒体を、記録媒体の背面側(記録面の反対側)から接触型平面ヒーター42で加熱しながら、乾燥ファン41により送風し、下記条件で乾燥した。ここで、乾燥工程直後の画像が記録された記録媒体中の水分量をカールフィッシャー電量滴定法(CA−200、(株)三菱化学アナリテック製)で定量したところ、約2.0〜3.0g/mであった。
<条件>
・乾燥方法:送風乾燥
・風速:15m/s
・温度:記録媒体の記録面側の表面温度が60℃となるように加熱
<V.定着工程>
次に、互いに圧接するシリコーンゴムローラー51と大径ドラム52とからなるローラー対の間を下記条件で通過させることにより画像に加熱定着処理を施し、そのまま図示しない回収トレイに重ねて回収した。なお、シリコーンゴムローラー51の表面には、接着防止のためにシリコーンオイルを薄く付与した。
〜条件〜
・シリコーンゴムローラー51:硬度50°、ニップ幅5mm
・ローラー温度:70℃
・ドラム52の表面温度:60℃
・圧力:0.2MPa
[評価]
(耐擦過性)
第1のインクジェットヘッド31からインク吐出してベタ画像を形成した記録媒体を、25℃、60%RHの環境条件下に24時間静置した。その後、このベタ画像上に、画像が形成されていない記録媒体(画像形成したものと同じ記録媒体(本評価において「未使用サンプル」という。))を重ね、150kg/mの荷重をかけて10往復擦り、未使用サンプルの白地部分へのインクの転写度合いを目視で観察し、下記の評価基準にしたがって評価した。評価結果は下記表5に示す。
<評価基準>
A:インクの転写は全くなかった。
B:インクの転写はほとんど目立たなかった。
C:インクの転写がわずかにみられたが、実用上問題ない程度であった。
D:インクの転写が多少みられた。
E:インクの転写が顕著であった。
(マット紙耐擦性)
上記で得られたインクを用い、上記のインクジェット記録装置でマットコート紙である(N)シルバーダイヤ(日本製紙(株)製)を記録媒体として画像出力した直後に、形成された画像上を、350gの荷重をかけた未印画の上記記録媒体((N)シルバーダイヤ)にて擦り、擦りに使用した未印画記録媒体の汚れの有無を目視で観察した。観察した汚れの程度を下記の評価基準にしたがって評価した。評価結果は下記表5に示す。
なお、この試験は、連続印画直後に積載される記録媒体同士の擦れ、及び作業者が印画物を取り扱う際の記録媒体同士の擦れによる色写りの発生を想定したものである。
<評価基準>
A:同一部分を5回擦っても殆ど汚れが目立たなかった。
B:4回の擦りで色汚れが目立った。
C:3回の擦りで色汚れが目立った。
D:2回の擦りで色汚れが目立った。
E:1回の擦りで色汚れが目立った。
〔実施例23〕
実施例22において、インク組成を下記の組成に代えたこと以外は、実施例22と同様にして、インクを調製すると共に、処理液を調製し、画像記録及び評価を行なった。評価結果は、下記表5に示す。
<インク組成>
・マゼンタ顔料(C.I.ピグメント・レッド122) … 6.67%
・前記樹脂分散剤P−2 … 2.00%
・前記自己分散性樹脂粒子B−2 … 5.10%
・トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(TPGmME) … 2.00%
(和光純薬工業社製、水溶性有機溶剤)
・ジプロピレングリコール(DPG) … 2.00%
(和光純薬工業社製、水溶性有機溶剤)
・サンニックスGP250(三洋化成工業社製、水溶性有機溶剤) …10.00%
・2−ピロリドン(和光純薬工業社製、水溶性有機溶剤) … 2.00%
・尿素 … 5.00%
・コロイダルシリカ(スノーテックスXS、固形分濃度20%、体積平均粒子径5nm、日産化学工業(株)製)(固形分) … 0.06%
・オルフィンE1010(日信化学工業(株)製、界面活性剤) … 0.25%
・オルフィンE1020(日信化学工業(株)製、界面活性剤) … 1.00%
・PVP K15(和光純薬工業(株)製のポリビニルピロリドン) … 0.10%
・プロキセルXL2 … 0.30%
(AVECIA社製の1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン)
・消泡剤(BYK24) … 0.01%
・セロゾール524(固形分) … 2.00%
(中京油脂(株)製、カルナバワックス)
・イオン交換水 … 全体で100%となる量
〔実施例24〕
実施例22において、インク組成を下記の組成に代えたこと以外は、実施例22と同様にして、インクを調製すると共に、処理液を調製し、画像記録及び評価を行なった。評価結果は、下記表5に示す。
<インク組成>
・マゼンタ顔料(C.I.ピグメント・レッド122) … 6.67%
・前記樹脂分散剤P−2 … 2.00%
・前記自己分散性樹脂粒子B−2 … 5.10%
・トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(TPGmME) … 2.00%
(和光純薬工業社製、水溶性有機溶剤)
・ジプロピレングリコール(DPG) … 2.00%
(和光純薬工業社製、水溶性有機溶剤)
・サンニックスGP250(三洋化成工業社製、水溶性有機溶剤) …10.00%
・2−ピロリドン(和光純薬工業社製、水溶性有機溶剤) … 2.00%
・尿素 … 5.00%
・コロイダルシリカ(スノーテックスXS、固形分濃度20%、体積平均粒子径5nm、日産化学工業(株)製)(固形分) … 0.06%
・オルフィンE1010(日信化学工業(株)製、界面活性剤) … 0.25%
・オルフィンE1020(日信化学工業(株)製、界面活性剤) … 1.00%
・PVP K15(和光純薬工業(株)製のポリビニルピロリドン) … 0.10%
・プロキセルXL2 … 0.30%
(AVECIA社製の1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン)
・消泡剤(BYK24) … 0.01%
・セロゾール428(固形分) … 2.00%
(中京油脂(株)製のパラフィンワックス)
・イオン交換水 … 全体で100%となる量

前記表5に示されるように、ワックスを含有する実施例23〜24は、ワックスを用いない実施例22に比べ、より優れた耐擦過性が発現した。
11,101・・・ノズルプレート
12,102・・・吐出孔
13,103・・・撥液膜
100・・・インクジェットヘッド

Claims (13)

  1. 記録媒体上に、沖津法によって計算されたSP値が20.00MPa1/2以上である樹脂によってキナクリドン系顔料の表面の少なくとも一部が被覆されてなる樹脂被覆キナクリドン系顔料を含むインク組成物を、複数の吐出孔が二次元に配列され該吐出孔形成面にフッ素化合物を含む撥液膜が設けられたノズルプレートから吐出するインク吐出工程を有するインクジェット画像形成方法。
  2. 前記フッ素化合物がフッ化アルキル基を有する請求項1に記載のインクジェット画像形成方法。
  3. 前記撥液膜の沖津法によって計算されたSP値が、16.00MPa1/2以下である請求項1又は請求項2に記載のインクジェット画像形成方法。
  4. 前記樹脂が、沖津法によって計算されたSP値が19.40MPa1/2以上である(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を20質量%〜90質量%含む請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のインクジェット画像形成方法。
  5. 前記樹脂が、メチルメタクリレートに由来する構造単位、ベンジルメタクリレートに由来する構造単位、フェノキシエチルメタクリレートに由来する構造単位、ヒドロキシエチルメタクリレートに由来する構造単位、2−カルボキシエチルメタクリレートに由来する構造単位、N,N−ジメチルアミノエチルメタリレートに由来する構造単位、モルホリノエチルメタクリレートに由来する構造単位、テトラヒドロフルフリルメタクリレートに由来する構造単位、及び、グリシジルメタクリレートに由来する構造単位からなる群から選択される少なくとも1種を20質量%〜90質量%含む請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のインクジェット画像形成方法。
  6. 前記樹脂が、メチルメタクリレートに由来する構造単位、ベンジルメタクリレートに由来する構造単位、フェノキシエチルメタクリレートに由来する構造単位、ヒドロキシエチルメタクリレートに由来する構造単位、2−カルボキシエチルメタクリレートに由来する構造単位、N,N−ジメチルアミノエチルメタリレートに由来する構造単位、モルホリノエチルメタクリレートに由来する構造単位、テトラヒドロフルフリルメタクリレートに由来する構造単位、及び、グリシジルメタクリレートに由来する構造単位からなる群から選択される少なくとも1種を30質量%〜60質量%含む請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のインクジェット画像形成方法。
  7. 前記樹脂は、沖津法によって計算されたSP値が20.50MPa1/2以上である請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のインクジェット画像形成方法。
  8. 前記インク組成物の全量に対する前記キナクリドン系顔料の含有量が、4.0質量%以上である請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載のインクジェット画像形成方法。
  9. 前記キナクリドン系顔料が、C.I.ピグメント・レッド122を含む請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載のインクジェット画像形成方法。
  10. 前記インク組成物が、更に、自己分散性樹脂粒子を含む請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載のインクジェット画像形成方法。
  11. 更に、前記記録媒体上に、前記インク組成物と接触することで凝集体を形成可能な凝集剤を含む処理液を付与する処理液付与工程を有する請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載のインクジェット画像形成方法。
  12. 前記キナクリドン系顔料が、2種以上のキナクリドン系化合物を含むキナクリドン固溶体顔料を含有する請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載のインクジェット画像形成方法。
  13. 前記インク組成物は、更に、カルナバワックス、パラフィンワックス及びその誘導体、並びにこれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1種の難水溶性のワックス粒子を含む請求項1〜請求項12のいずれか1項に記載のインクジェット画像形成方法。
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