JP2013223958A - インクジェット画像形成方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】記録媒体上に、沖津法によって計算されたSP値が20.0MPa1/2以上である樹脂によってキナクリドン系顔料の表面の少なくとも一部が被覆されてなる樹脂被覆キナクリドン系顔料を含むインク組成物を、複数の吐出孔102が二次元に配列され該吐出孔形成面にフッ素化合物を含む撥液膜103が設けられたノズルプレート101から吐出して画像を形成する工程を有する。
【選択図】図1
Description
インクジェット技術に用いられるインク(インク組成物)としては、顔料を含むインク(顔料インク)が広く用いられている。
例えば、着弾ヨレの発生を、フェイス濡れを抑制することで低減できるインクジェット用インクとして、顔料、水溶性樹脂、包接化合物及び水を含むインクジェット用インクであって、前記水溶性樹脂は疎水基を有し、前記包接化合物はシクロデキストリンまたはシクロデキストリンの誘導体であり、前記水溶性樹脂のうち、顔料に吸着せずに存在している水溶性樹脂の量の前記包接化合物の量に対する質量比が0.30以上9.00以下であるインクジェット用インクが知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、白抜け等の画像故障の発生を抑制し、耐擦過性の良好な画像を記録できるインクジェット記録用インクセットとして、シアン色用顔料、有機溶媒、中和剤、及び水を含有するシアン色系の水性インク組成物と、マゼンタ色用顔料、有機溶媒、中和剤、及び水を含有するマゼンタ色系の水性インク組成物と、イエロー色用顔料、有機溶媒、中和剤、及び水を含有するイエロー色系の水性インク組成物と、を含み、前記シアン色用顔料、前記マゼンタ色用顔料、及び前記イエロー色用顔料が、側鎖に芳香環及びエチレンオキシ基を有する特定の構造単位を含む水不溶性樹脂によって被覆された顔料であるインクジェット記録用インクセットが知られている(例えば、特許文献2参照)。
しかしながら、この方式のインクジェット画像形成方法では、ノズルプレートに設けられた撥液膜からのインクの切れ性が低下し、これによりインクの吐出曲がりが生じる場合がある。
また、上記の方式の画像形成方法では、複数の吐出孔から同時にインクが吐出されることにより高速で画像が形成されるので、画像が形成された記録媒体同士が積み重ねられる速度も速くなる傾向がある。画像が形成された記録媒体同士が積み重ねられる速度が速くなると、記録媒体上に形成された画像と該画像の上に積まれた別の記録媒体とが接着して画像が損傷を受ける、ブロッキングと呼ばれる現象が発生する場合がある。
しかし、SP値が比較的低い樹脂を用いた樹脂被覆キナクリドン系顔料では、上述のノズルプレートを用い複数の吐出孔から同時にインクを吐出して高速で画像を形成する場合において、上述したインクの切れ性の低下やブロッキングの発生が特に起こりやすいことが判明した。
<1> 記録媒体上に、沖津法によって計算されたSP値が20.00MPa1/2以上である樹脂によってキナクリドン系顔料の表面の少なくとも一部が被覆されてなる樹脂被覆キナクリドン系顔料を含むインク組成物を、複数の吐出孔が二次元に配列され該吐出孔形成面にフッ素化合物を含む撥液膜が設けられたノズルプレートから吐出するインク吐出工程を有するインクジェット画像形成方法である。
<2> 前記フッ素化合物がフッ化アルキル基を有する<1>に記載のインクジェット画像形成方法である。
<3> 前記撥液膜の沖津法によって計算されたSP値が、16.00MPa1/2以下である<1>又は<2>に記載のインクジェット画像形成方法である。
<4> 前記樹脂が、沖津法によって計算されたSP値が19.40MPa1/2以上である(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を20質量%〜90質量%含む<1>〜<3>のいずれか1つに記載のインクジェット画像形成方法である。
<5> 前記樹脂が、メチルメタクリレートに由来する構造単位、ベンジルメタクリレートに由来する構造単位、フェノキシエチルメタクリレートに由来する構造単位、ヒドロキシエチルメタクリレートに由来する構造単位、2−カルボキシエチルメタクリレートに由来する構造単位、N,N−ジメチルアミノエチルメタリレートに由来する構造単位、モルホリノエチルメタクリレートに由来する構造単位、テトラヒドロフルフリルメタクリレートに由来する構造単位、及び、グリシジルメタクリレートに由来する構造単位からなる群から選択される少なくとも1種を20質量%〜90質量%含む<1>〜<4>のいずれか1つに記載のインクジェット画像形成方法である。
<6> 前記樹脂が、メチルメタクリレートに由来する構造単位、ベンジルメタクリレートに由来する構造単位、フェノキシエチルメタクリレートに由来する構造単位、ヒドロキシエチルメタクリレートに由来する構造単位、2−カルボキシエチルメタクリレートに由来する構造単位、N,N−ジメチルアミノエチルメタリレートに由来する構造単位、モルホリノエチルメタクリレートに由来する構造単位、テトラヒドロフルフリルメタクリレートに由来する構造単位、及び、グリシジルメタクリレートに由来する構造単位からなる群から選択される少なくとも1種を30質量%〜60質量%含む<1>〜<5>のいずれか1つに記載のインクジェット画像形成方法である。
<7> 前記樹脂は、沖津法によって計算されたSP値が20.50MPa1/2以上である<1>〜<6>のいずれか1つに記載のインクジェット画像形成方法である。
<9> 前記キナクリドン系顔料が、C.I.ピグメント・レッド122を含む<1>〜<8>のいずれか1つに記載のインクジェット画像形成方法である。
<10> 前記インク組成物が、更に、自己分散性樹脂粒子を含む<1>〜<9>のいずれか1つに記載のインクジェット画像形成方法である。
<11> 更に、前記記録媒体上に、前記インク組成物と接触することで凝集体を形成可能な凝集剤を含む処理液を付与する処理液付与工程を有する<1>〜<10>のいずれか1つに記載のインクジェット画像形成方法である。
<12> 前記キナクリドン系顔料が、2種以上のキナクリドン系化合物を含むキナクリドン固溶体顔料(及び、必要に応じ塩基性シナジスト)を含有する<1>〜<11>のいずれか1つに記載のインクジェット画像形成方法である。
<13> 前記インク組成物は、更に、カルナバワックス、パラフィンワックス及びその誘導体、並びにこれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1種の難水溶性のワックス粒子を含む<1>〜<12>のいずれか1つに記載のインクジェット画像形成方法である。
本発明のインクジェット画像形成方法は、記録媒体上に、沖津法によって計算されたSP値が20.00MPa1/2以上である樹脂によってキナクリドン系顔料の表面の少なくとも一部が被覆されてなる樹脂被覆キナクリドン系顔料を含むインク組成物(以下、「インク」ともいう)を、複数の吐出孔が二次元に配列され該吐出孔形成面にフッ素化合物を含む撥液膜が設けられたノズルプレートから吐出するインク吐出工程を有する。本発明のインクジェット画像形成方法は、必要に応じその他の工程を有していてもよい。
以下、インクの切れ性及びインクの吐出曲がりに関し、図1及び図2を参照しながら説明する。
図1及び図2は、いずれも、複数の吐出孔102が設けられ、吐出孔102形成面(吐出面)に撥液膜103が設けられたノズルプレート101を用い、該ノズルプレート101からインク110を記録媒体200上に吐出して画像210を形成する様子を示している。
図1に示すように、撥液膜103からのインクの切れ性が良い場合は、撥液膜103上へのインクの付着(残留)が抑制されるので、インクの吐出曲がりも抑制されインク110が吐出孔102の真下に吐出される。これにより、記録媒体200上の所望の位置に画像210が形成される。
これに対し、図2に示すように、撥液膜103からのインクの切れ性が悪い場合には、撥液膜103上へインクが付着して付着インク111となり、付着インク111が撥液膜103上に残留する。この状態でインク110を吐出すると、吐出されたインク110は付着インク111の影響を受け、吐出孔からずれた位置に吐出される(吐出曲がり)。吐出曲がりが生じると、所望の位置とは異なる位置に画像210が形成される。
しかし、SP値が低い樹脂によりキナクリドン系顔料の表面の少なくとも一部が被覆されてなる樹脂被覆キナクリドン系顔料を含むインクを用いると、上述したノズルプレートを用い複数の吐出孔から同時にインクを吐出して高速で画像を形成する場合において、上述したインクの切れ性の低下が特に起こりやすいことが判明した。
インクの切れ性が顕著に向上する理由は明らかではないが、以下のように推測される。
即ち、撥液膜へのインクの付着の主たる要因は、インク中の樹脂被覆キナクリドン系顔料の撥液膜への付着であると考えられる。
そこで、樹脂被覆キナクリドン系顔料においてキナクリドン系顔料を被覆する樹脂のSP値と、フッ素化合物を含む撥液膜のSP値(例えば、16.00MPa1/2以下)と、に差を設けること、具体的には該樹脂のSP値を20.00MPa1/2以上とすることにより、撥液膜と樹脂被覆キナクリドン系顔料との親和性が低下するので、撥液膜への樹脂被覆キナクリドン系顔料の付着が抑制され、ひいては撥液膜へのインクの付着が抑制されるものと推測される。
特に、SP値が低い樹脂によりキナクリドン系顔料の表面の少なくとも一部が被覆されてなる樹脂被覆キナクリドン系顔料を含むインクでは、上述したとおりインクの切れ性が低下し、吐出精度が低下しやすいため、ブロッキングが発生しやすい傾向がある。
樹脂のSP値が20.00MPa1/2以上であることによりブロッキングが抑制される理由は明らかではないが、樹脂のSP値が20.00MPa1/2以上であることにより、インクの吐出精度が向上し、意図しないインクドットの重なりが抑制されるためと推測される。
ここで、沖津法とは、日本接着学会誌Vol.29,No.6(1993)249〜259項に記載された理論式(沖津俊直により提案されている溶解性パラメータ(SP値)の理論式)を用いたSP値の計算方法である。
まず、該樹脂を形成するための各重合性化合物(以下、重合性化合物を「モノマー」ともいう)のSP値を沖津法により求める。
次に、モノマー種毎に、モノマーのSP値と樹脂中における該モノマーの質量分率との積を求める。
次に、モノマー種毎に求められた上記の積を合算することにより、樹脂のSP値が求められる。
例えば、SP値15MPa1/2のモノマーA(10質量%)と、SP値18MPa1/2のモノマーB(20質量%)と、SP値20MPa1/2のモノマーC(70質量%)と、の共重合体である樹脂aのSP値は、下記式により求められる。
樹脂aのSP値(MPa1/2)
=15(MPa1/2)×(10/100)+18(MPa1/2)×(20/100)+20(MPa1/2)×(70/100)
=19.1(MPa1/2)
電気伝導度が上記範囲であることにより、撥液膜からのインクの切れ性がより向上する。
インク組成物における電気伝導度は、例えば、樹脂被覆キナクリドン系顔料における樹脂の選択により調整することができる。
本発明におけるインク組成物は、前記SP値が20.00MPa1/2以上である樹脂によってキナクリドン系顔料の表面の少なくとも一部が被覆されてなる樹脂被覆キナクリドン系顔料を含み、必要に応じその他の成分を含む。
更に、前記樹脂のSP値が20.00MPa1/2以上であることにより、ノズルプレートに設けられたフッ素化合物を含む撥液膜からのインク組成物の切れ性が向上する効果、及び、画像の耐ブロッキング性が向上する効果が得られる。
これらの効果をより効果的に奏する観点より、前記樹脂のSP値は、20.50MPa1/2以上であることが好ましい。
前記樹脂のSP値の上限には特に限定はないが、分散安定性及びインクの経時安定性の観点からは、該上限は、21.50MPa1/2であることが好ましく、21.00MPa1/2であることがより好ましい。前記樹脂のSP値が21.50MPa1/2以下であると、樹脂の水中への溶解及び該溶解による分散安定性の低下をより抑制でき、該分散安定性の低下に伴うインクの経時安定性の低下をより抑制できる。
例えば、従来、樹脂を形成するための重合性化合物の一種として、一般にエチルメタクリレートが用いられることがあったが、エチルメタクリレートのSP値は18.98Pa1/2である。
本発明では、該樹脂を形成するための重合性化合物として、エチルメタクリレートの使用量を抑え、かつ、エチルメタクリレートよりもSP値が高い重合性化合物(例えば、SP値が19.40MPa1/2以上の重合性化合物(例えば、(メタ)アクリル酸エステル))を用いることで、樹脂全体のSP値を20.00MPa1/2以上に調整し易い。
以下では、SP値が19.40MPa1/2以上の重合性化合物を、「高SP値モノマー」と称することがある。
前記高SP値モノマーとしては、分散安定性及びインクの経時安定性をより良好に維持できる点で、(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。
前記高SP値モノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸エステルとして、フェノキシエチルメタクリレート(20.68)、メチルメタクリレート(19.50)、ヒドロキシエチルメタクリレート(22.89)、ベンジルメタクリレート(20.21)、フェノキシエチルアクリレート(22.42)、メチルアクリレート(23.45)、ヒドロキシエチルアクリレート(27.34)、ベンジルアクリレート(22.15)、2−カルボキシエチルメタクリレート(23.04)、2−カルボキシエチルアクリレート(23.58)、N,N−ジメチルアミノエチルメタリレート(19.47)、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート(19.59)、モルホリノエチルメタクリレート(21.44)、モルホリノエチルアクリレート(21.68)、テトラヒドロフルフリルメタクリレート(20.03)、テトラヒドロフルフリルアクリレート(20.19)、グリシジルメタクリレート(21.82)、グリシジルアクリレート(22.23)等が挙げられる。
また、前記高SP値モノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸エステル以外の重合性化合物として、無水マレイン酸(30.93)、アクリルアミド(42.44)、メタクリルアミド(37.34)、が挙げられる。
この観点からみて、更に好ましくは、前記樹脂の構成を、前記高SP値モノマーに由来する構造単位を該樹脂の全量に対して20質量%〜90質量%(更に好ましくは30質量%〜90質量%、特に好ましくは30質量%〜80質量%)含む構成とすることである。
樹脂の全量に対する前記高SP値モノマーに由来する構造単位の含有量(以下、単に「高SP値モノマーに由来する構造単位の含有量」ともいう)が20質量%以上であると、樹脂全体のSP値を20.00MPa1/2以上により容易に調整できる。
前記高SP値モノマーに由来する構造単位として、好ましくは、メチルメタクリレートに由来する構造単位、ベンジルメタクリレートに由来する構造単位、フェノキシエチルメタクリレートに由来する構造単位、ヒドロキシエチルメタクリレートに由来する構造単位、2−カルボキシエチルメタクリレートに由来する構造単位、N,N−ジメチルアミノエチルメタリレートに由来する構造単位、モルホリノエチルメタクリレートに由来する構造単位、テトラヒドロフルフリルメタクリレートに由来する構造単位、及び、グリシジルメタクリレートに由来する構造単位からなる群から選択される少なくとも1種である。
前記高SP値モノマーに由来する構造単位として、更に好ましくは、メチルメタクリレートに由来する構造単位、ベンジルメタクリレートに由来する構造単位、フェノキシエチルメタクリレートに由来する構造単位、及びヒドロキシエチルメタクリレートに由来する構造単位からなる群から選択される少なくとも1種である。
前記高SP値モノマーに由来する構造単位の含有量が60質量%以下であれば、インク組成物の吐出安定性がより向上する。この理由は、該含有量が60質量%以下であることにより、前記ノズルプレートの吐出孔の目詰まりが抑制されるためと考えられる。インク組成物の吐出安定性が向上することにより、例えば、インク組成物を吐出した後のノズルプレートをそのまま放置し、再び、該ノズルプレートからのインク組成物の吐出を再開した場合においても、不吐出の吐出孔(以下、「ノズル」ともいう)の発生をより抑制しながら、より安定的にインク組成物を吐出できる。
前記樹脂としては特に限定はないが、分散安定性及びインクの経時安定性の観点からは、疎水性構造単位と親水性構造単位とを含む樹脂が好ましい。
ここで「水不溶性」とは、水100質量部(25℃)に対する溶解量が5.0質量部以下であることを指す。
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、SP値の観点から、メチル(メタ)アクリレートが最も好ましい。
前記親水性構成単位は、分散安定性の観点から、少なくともカルボキシル基を含むことが好ましく、ノニオン性基、とカルボキシル基を共に含む形態であることもまた好ましい。
本発明における樹脂において、インク組成物の切れ性及び画像の耐ブロッキング性向上の観点からは、SP値が19.40MPa1/2未満の重合性化合物に由来する構造単位の含有量は少ない方が好ましく、具体的には、樹脂全量に対し、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることが更に好ましく、20質量%以下であることが更に好ましい。
インク組成物の切れ性向上、画像の耐ブロッキング性向上、及びインク組成物の吐出安定性向上のバランスの観点からみて、SP値が19.40MPa1/2未満の重合性化合物に由来する構造単位の含有量は、樹脂全量に対し、10質量%〜50質量%が好ましい。
なお、酸価とは、樹脂の1gを完全に中和するのに要するKOHの質量(mg)で定義され、JIS規格(JISK0070、1992)記載の方法により測定されるものである。
前記分子量の下限として、より好ましくは25,000以上であり、更に好ましくは30,000以上である。
また、数平均分子量(Mn)では1,000〜100,000の範囲程度のものが好ましく、3,000〜50,000の範囲程度のものが特に好ましい。数平均分子量が前記範囲内であると、キナクリドン系顔料における被覆膜としての機能又はインク組成物の塗膜としての機能を発揮することができる。本発明における樹脂は、アルカリ金属や有機アミンの塩の形で使用されることが好ましい。
前記重合方法のうち、特にラジカル開始剤を用いた溶液重合法が好ましい。溶液重合法で用いられる溶剤は、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ベンゼン、トルエン、アセトニトリル、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール等の種々の有機溶剤が挙げられる。溶剤は、1種単独で又は2種以上を併用してもよい。また、水との混合溶媒として用いてもよい。重合温度は、生成するポリマーの分子量、開始剤の種類などと関連して設定する必要があり、通常は0℃〜100℃程度であるが、50〜100℃の範囲で重合を行なうことが好ましい。反応圧力は、適宜選定可能であるが、通常は1〜100kg/cm2であり、特に1〜30kg/cm2程度が好ましい。反応時間は、5〜30時間程度である。得られた樹脂は、再沈殿などの精製を行なってもよい。
前記疎水性構造単位としては、芳香族基含有モノマーに由来する構造単位及び(メタ)アクリルエステルに由来する構造単位が挙げられる。
また、前記一般式(I)において、L1は、*−COO−、*−OCO−、*−CONR2−、*−O−、又は置換もしくは無置換のフェニレン基を表し、R2は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基を表す。なお、L1で表される基中の*印は、主鎖に連結する結合手を表す。フェニレン基が置換されている場合の置換基としては、特に限定されないが、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、水酸基等、シアノ基等が挙げられる。
前記R1としては、分散安定性の観点から、水素原子又はメチル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
前記L1としては、分散安定性の観点から、*−COO−が特に好ましい。
前記2価の連結基として、好ましくは炭素数1〜25の連結基であり、より好ましくは炭素数1〜20の連結基であり、更に好ましくは炭素数1〜15の連結基である。中でも、特に好ましくは、炭素数1〜25(より好ましくは1〜10)のアルキレンオキシ基、イミノ基(−NH−)、スルファモイル基、及び、炭素数1〜20(より好ましくは1〜15)のアルキレン基やエチレンオキシド基[−(CH2CH2O)n−,n=1〜6(好ましくは1又は2)]などの、アルキレン基を含む2価の連結基等、並びにこれらの2種以上を組み合わせた基などである。
前記L2としては、分散安定性の観点から、単結合、又はエチレンオキシド基[−(CH2CH2O)n−,n=1〜6(好ましくは1又は2)]が特に好ましい。
前記「ヘテロ環が縮環した芳香環」とは、ヘテロ原子を含まない芳香族化合物(好ましくはベンゼン環)と、ヘテロ原子を有する環状化合物とが縮環した化合物である。ここで、ヘテロ原子を有する環状化合物は、5員環又は6員環であることが好ましい。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子が好ましい。ヘテロ原子を有する環状化合物は、複数のヘテロ原子を有していてもよい。この場合、ヘテロ原子は互いに同じでも異なっていてもよい。ヘテロ環が縮環した芳香環の具体例としては、フタルイミド、アクリドン、カルバゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾールなどが挙げられる。
前記Arとしては、無置換のベンゼン環、無置換のナフタレン環が好ましく、無置換のベンゼン環が特に好ましい。
前記親水性構造単位としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸に由来の構造単位が好ましく、前記樹脂中にはアクリル酸に由来の構造単位もしくはメタクリル酸に由来の構造単位のいずれか又は両方を含むことが好ましい。
このほかの親水性構造単位としては、非イオン性の親水性基を有するモノマーに由来の構造単位が挙げられ、例えば、親水性の官能基を有する(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類、及びビニルエステル類等の、親水性の官能基を有するビニルモノマー類を挙げることができる。
本発明におけるキナクリドン系顔料としては、その種類に特に制限はなく、従来公知のキナクリドン系顔料を用いることができる
本発明におけるキナクリドン系顔料を構成するキナクリドン系化合物としては、例えば、下記一般式(A)で表される化合物が挙げられる。
Xn−Q−Ym ・・・(A)
前記一般式(A)において、Qは、キナクリドン残基又はキナクリドンキノン残基を表す。X及びYは、各々独立に、水素原子、メチル基、クロル基、又はメトキシ基を表し、m及びnは、各々独立に1〜4の整数を表す。
本発明におけるインク組成物中のキナクリドン系顔料の含有量(2種以上の場合には総含有量)は、インク組成物の全量に対し、1.0質量%以上であることが好ましく、2.0質量%以上であることがより好ましく、4.0質量%以上であることが特に好ましい。
該含有量が1.0質量%以上であると、画像の光学濃度がより向上する。また、該含有量が1.0質量%以上であると、キナクリドン系顔料を被覆するための樹脂の含有量も増大する傾向があるため、本発明によるインクの切れ性向上の効果及び耐ブロッキング性向上の効果がより顕著に奏される。
該含有量の上限については特に限定はないが、20.0質量%が好ましく、15.0質量%がより好ましく、8.0質量%が更に好ましく、7.0質量%が特に好ましい。
本発明におけるキナクリドン系顔料は、2種以上のキナクリドン系化合物を含むキナクリドン固溶体顔料を含有することも好ましい。
これにより、記録媒体への画像の密着性がより向上する。
なお、無置換のキナクリドンとしては、α型、β型、γ型のいずれも用いることができるが、保存安定性の観点から、β型又はγ型無置換キナクリドンが好ましい。例えば、特開平10−219166号公報に記載の固溶体マゼンタ顔料を用いることもできる。
例えば、(i)粗製された無置換のキナクリドンとキナクリドン系化合物とを苛性アルカリの存在下、非プロトン系極性有機溶剤に溶解し、酸で中和再沈する方法(詳細は特開昭60−35055号公報の記載を参照できる。)、
(ii)可溶化量のアルコール及び塩基の存在下、粗又は補助顔料のキナクリドン化合物を粉砕し、得られる固体溶液を単離する方法(詳細は特開平2−38463号公報を参照できる。)、及び
(iii)2種以上の2,5−ジアリールアミノテレフタル酸誘導体を縮合環化させた後、顔料化処理(結晶形、大きさ、結晶型の制御)を施す方法(詳細は特開平10−219166号公報を参照できる。)、
等が挙げられる。
また、キナクリドン固溶体顔料の平均粒径は、保存安定性の観点から、0.01〜0.3μmが好ましく、より好ましくは0.03〜0.2μmである。なお、平均粒径は、電子顕微鏡(TEM)による画像解析(2万倍)により、100個の顔料の長径の平均値より求められる値である。
また、キナクリドン固溶体顔料のインク組成物中における含有量としては、インク組成物の全質量に対して、1〜15質量%が好ましく、より好ましくは2〜8質量%である。キナクリドン固溶体顔料の含有量が1質量%以上であることで、色相や色再現域がより良好になり、また該含有量が15質量%以下であることで、分散性及びその安定性を良好に維持する点で有利である。
固溶体顔料では、単なる顔料混合物のX線回折パターンとは異なる結晶独自の回折パターンを示すのに対し、単なる顔料混合物では、X線回折パターンが顔料それぞれのX線回折パターンの重ね合わせに相当するパターンとなり、そのピーク強度も複数の顔料の配合比率に比例する。このことから、固溶体顔料を単なる顔料混合物と区別できる。
本発明におけるキナクリドン系顔料が前記キナクリドン固溶体顔料を含有する場合、本発明におけるキナクリドン系顔料は、該キナクリドン固溶体顔料に加え、塩基性シナジストの少なくとも1種を含有することが好ましい。
これにより、樹脂被覆キナクリドン系顔料としたときに、キナクリドン固溶体顔料の表面を覆う前記樹脂の密着性がより向上し、分散性及び分散安定性がより向上する。更に、記録媒体への画像の密着性がより向上する。
前記塩基性シナジストは、前記親水性基の少なくとも1種が塩基性基である形態のシナジストである。以下では、塩基性シナジストを、単に「シナジスト」と称することがある。
また、前記シナジストが有する塩基性基は、1種のみであっても2種以上であってもよい。
また、前記塩基性シナジストの含有比率は、分散安定性の観点から、キナクリドン固溶体顔料100質量部に対して、0.5〜20質量部が好ましく、より好ましくは1〜10質量部である。シナジストの含有量が0.5質量部以上であることで、固溶体顔料の水系媒体中における分散性及びその安定性がより向上する。また、シナジストの含有量が20質量部以下であることで、吐出性の点で有利となる。
本発明における樹脂被覆キナクリドン系顔料において、キナクリドン系顔料(p)と樹脂(r)との比率(p:r)は、質量比で100:25〜100:140が好ましく、より好ましくは100:25〜100:50である。比率(p:r)は、樹脂が100:25の割合以上であると分散安定性と耐擦性が良化する傾向にあり、樹脂が100:140の割合以下であると分散安定性が良化する傾向がある。
転相乳化法は、基本的には、自己分散能又は溶解能を有する樹脂と顔料との混合溶融物を水に分散させる自己分散(転相乳化)方法である。また、この混合溶融物には、硬化剤又は高分子化合物を含んでなるものであってもよい。ここで、混合溶融物とは、溶解せず混合した状態、溶解して混合した状態、又はこれら両者の状態のいずれの状態を含むものをいう。「転相乳化法」による具体的な方法は、特開平10−140065号公報に記載されている方法を参照できる。
b)酸析法
酸析法は、樹脂と顔料とからなる含水ケーキを用意し、その含水ケーキ中の、樹脂が有するアニオン性基の一部又は全部を、塩基性化合物を用いて中和することによって、樹脂被覆顔料(カプセル化顔料)を製造する方法である。
酸析法は、具体的には、(1)樹脂と顔料とをアルカリ性水性媒体中に分散し、必要に応じて加熱処理を行なって樹脂のゲル化を図る工程と、(2)pHを中性又は酸性にすることによって樹脂を疎水化して、樹脂を顔料に強く固着する工程と、(3)必要に応じて、濾過及び水洗を行なって含水ケーキを得る工程と、(4)含水ケーキを中の、樹脂が有するアニオン性基の一部または全部を、塩基性化合物を用いて中和し、その後、水性媒体中に再分散する工程と、(5)必要に応じて加熱処理を行ない、樹脂のゲル化を図る工程と、を含む方法がある。
また、本発明におけるインク組成物は、この調製工程を設け、得られた樹脂被覆キナクリドン系顔料の分散物を溶媒(例えば水、有機溶媒等)と共に用いてインクとする方法により調製することができる。
工程(1):水不溶性樹脂、有機溶媒、中和剤、キナクリドン系顔料、及び水を含有する混合物を攪拌等により分散して分散物を得る工程
工程(2):前記分散物から前記有機溶媒を除去する工程
なお、より具体的には、特開平11−209672号公報及び特開平11−172180号の記載を参照することができる。
本発明におけるインク組成物は水を含むことが好ましい。
本発明における水としては、イオン交換水、蒸留水などのイオン性不純物を含まない水を用いることが好ましい。
また、インク組成物中における水の含有量は、目的に応じて適宜選択されるが、安定性および吐出信頼性確保の点から、インク組成物の全量に対し、好ましくは10質量%以上99質量%以下であり、より好ましくは30質量%以上80質量%以下であり、更に好ましくは、50質量%以上70質量%以下である。
本発明におけるインク組成物は、水溶性有機溶剤の少なくとも1種を含むことができる。水溶性有機溶剤の例としては、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルカンジオール(多価アルコール類);糖アルコール類;エタノール、メタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロパノールなどの炭素数1〜4のアルキルアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、1−メチル−1−メトキシブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル類等が挙げられる。これらは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
前記水溶性有機溶剤のインク組成物中における含有率は、安定性と吐出性の観点から、インク組成物の全質量に対して、1質量%以上60質量%以下が好ましく、5質量%以上40質量%以下がより好ましく、10質量%以上30質量%以下が特に好ましい。
本発明におけるインク組成物は、定着性、耐擦性、凝集性の観点から、樹脂粒子の少なくとも1種を含むことが好ましい。
前記樹脂粒子は、親水性モノマーに由来する構成単位および疎水性モノマーに由来する構成単位を含む自己分散性樹脂粒子であることがより好ましい。
自己分散性樹脂粒子を含むインク組成物は撥液膜への付着が起こりやすい傾向があるため、本発明におけるインク組成物が自己分散性樹脂粒子を含む場合には、本発明によるインクの切れ性向上効果及び耐ブロッキング性向上の効果がより顕著に奏される。
ここで分散状態とは、水性媒体中に水不溶性ポリマーが液体状態で分散された乳化状態(エマルション)、及び、水性媒体中に水不溶性ポリマーが固体状態で分散された分散状態(サスペンション)の両方の状態を含むものである。
本発明における自己分散性樹脂においては、インク組成物に含有されたときのインク定着性の観点から、水不溶性ポリマーが固体状態で分散された分散状態となりうる自己分散性樹脂であることが好ましい。
また、2環式または3環式以上の多環式(メタ)アクリレートに由来する構造を共重合比率として20質量%以上90質量%未満と、炭素数1〜4の鎖状アルキル基を含有する(メタ)アクリレートに由来する構造を共重合比率として10質量%以上80質量%未満と、カルボキシル基含有モノマーに由来する構造を酸価が25〜100の範囲で含み、親水性構造単位の総含有率が25質量%以下であって、重量平均分子量が10000〜20万であるビニルポリマーであることがより好ましい。
さらに、2環式または3環式以上の多環式(メタ)アクリレートに由来する構造を共重合比率として40質量%以上80質量%未満と、少なくともメチル(メタ)アクリレートまたはエチル(メタ)アクリレートに由来する構造を共重合比率として20質量%以上60質量%未満含み、アクリル酸又はメタクリル酸に由来する構造を酸価が30〜80の範囲で含み、親水性構造単位の総含有率が25質量%以下であって、重量平均分子量が30000〜15万であるビニルポリマーであることが特に好ましい。
・メチルメタクリレート/イソボルニルメタクリレート/メタクリル酸 共重合体(40/52/8)、ガラス転移温度:160℃
・メチルメタクリレート/イソボルニルメタクリレート/メタクリル酸 共重合体(50/44/6)、ガラス転移温度:140℃
・メチルメタクリレート/イソボルニルメタクリレート/メタクリル酸 共重合体(85/7/8)、ガラス転移温度:120℃
・メチルメタクリレート/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸 共重合体(85/7/8)、ガラス転移温度:100℃
・メチルメタクリレート/ジシクロペンタニルメタクリレート/メタクリル酸 共重合体(20/72/8)、ガラス転移温度:160℃
・メチルメタクリレート/イソボルニルメタクリレート/ジシクロペンタニルメタクリレート/メタクリル酸 共重合体(20/62/10/8)、ガラス転移温度:170℃
また、樹脂微子の粒径分布に関しては、特に制限は無く、広い粒径分布を持つもの、又は単分散の粒径分布を持つもの、いずれでもよい。また、単分散の粒径分布を持つ樹脂粒子を、2種以上混合して使用してもよい。
本発明の自己分散性樹脂の製造方法においては、モノマー混合物と、必要に応じて、有機溶剤及びラジカル重合開始剤とを含んだ混合物を、不活性ガス雰囲気下で共重合反応させて前記水不溶性ポリマーを製造することができる。
工程(1):水不溶性ポリマー、有機溶剤、中和剤、及び水性媒体を含有する混合物を攪拌して分散体を得る工程。
工程(2):前記分散体から、前記有機溶剤の少なくとも一部を除去する工程。
該混合物の攪拌方法に特に制限はなく、一般に用いられる混合攪拌装置や、必要に応じて超音波分散機や高圧ホモジナイザー等の分散機を用いることができる。
アルコール系溶剤としては、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、t−ブタノール、エタノール等が挙げられる。ケトン系溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。エーテル系溶剤としては、ジブチルエーテル、ジオキサン等が挙げられる。これらの有機溶剤の中では、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤とイソプロピルアルコール等のアルコール系溶剤が好ましい。
また、イソプロピルアルコールとメチルエチルケトンを併用することも好ましい。該溶剤を併用することで、凝集沈降や粒子同士の融着が無く、分散安定性の高い微粒径の自己分散性樹脂粒子を得ることができる。これは、例えば、油系から水系への転相時への極性変化が穏和になるためと考えることができる。
また、樹脂粒子の粒径分布に関しては、特に制限は無く、広い粒径分布を持つもの、又は単分散の粒径分布を持つもの、いずれでもよい。また、水不溶性ポリマーを、2種以上混合して使用してもよい。
尚、樹脂粒子の平均粒径及び粒径分布は、例えば、光散乱法を用いて測定することができる。
前記自己分散性樹脂粒子は自己分散性に優れており、ポリマー単独で分散させたときの安定性は非常に高いものである。しかし、例えば、顔料を安定に分散させる、所謂分散剤としての機能は高くないため、前記自己分散性樹脂が顔料を含有する形態でインク組成物中に存在すると、結果としてインク組成物全体の安定性が大きく低下する場合がある。
樹脂粒子(例えば自己分散性樹脂粒子)の本発明におけるインク組成物中の含有量としては、画像の光沢性などの観点から、インク組成物に対して、1〜30質量%であることが好ましく、2〜20質量%であることがより好ましく、2〜10質量%であることが特に好ましい。
本発明におけるインク組成物は、パラフィンワックス及びその誘導体、カルナバワックス、並びにこれらの混合物からなる群より選択される難水溶性のワックス粒子を含有することが好ましい。難水溶性のワックスを含有することにより、画像の耐擦過性がより向上する。
天然ワックスとしては、石油系ワックス、植物系ワックス、動植物系ワックスが挙げられる。
石油系ワックスとして、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム等、また、植物系ワックスとしてはカルナバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス、木ロウ等、また、動物植物系ワックスとしてはラノリン、みつろう等を挙げることができる。
合成ワックスとしては、合成炭化水素系ワックス、変性ワックス系が挙げられる。
合成炭化水素系ワックスとしては、ポリエチレンワックス、フィッシャー・トロブシュワックス等が挙げられ、また、変性ワックス系としてはパラフィンワックス誘導体、モンタンワックス誘導体、マイクロクリスタリンワックス誘導体等、及びこれらの誘導体を挙げることができる。
前記ワックスの中でも、カルナバワックスは、画像の耐擦過性を向上させる観点から好ましく、画像サンプルの後加工(冊子への加工等)における画像強度を向上させる点で好ましい。また、パラフィンワックス及びその誘導体は、炭素数20〜40の炭化水素を主成分とするもので、画像光沢感や、ノズル先端から水分蒸発防止、水分保持効果が優れている点で好ましい。
また、樹脂との相溶性が優れるため均質で良好な画像を形成しやすい観点では、ポリエチレンワックスが好ましい。さらに、ポリエチレンワックスは変性し易いため、その変性されたグリコール変性ポリエチレンワックスは、グリコールに起因する湿潤性を付与することができ、ノズル先端でのインク組成物の湿潤性効果がみられ、よって吐出安定性が一層効果的に出来る点でより好ましい。
本発明におけるインク組成物は、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール、(PVA)、及びポリエチレングリコール(PEG)から選ばれる1つ又は2つ以上を含有することが好ましい。PVP等を含有することにより、樹脂粒子やワックス粒子(好ましくはこれらの両方)を含有するインク組成とした場合に、ノズル孔近傍にインクの固着物が堆積し難くなると共に、インクが付着してもワイピング等による除去が容易になる。したがって、インクの吐出と吐出休止とが繰り返される使用形態でのインクの吐出曲がり及び不吐出が抑制され、インク吐出性、ひいては所期の高精細画像の形成性を安定化させることができる。この効果は、ノズル孔の内部表面にケイ素原子を含む膜(例えばシリコン又はその酸化膜(例:SiO2膜))を有する吐出ヘッドから吐出して、画像を形成する場合に特に優れる。
上記の中では、PVP等の含有比率は、吐出休止後に再吐出したときのインクの吐出曲がり及び不吐出の解消(具体的には、色抜け防止及び着弾位置精度の向上)の観点から、インク組成物の全質量に対して、0.01質量%以上0.5質量%以下が好ましく、長期に亘る吐出の安定性の確保の観点から、0.25質量%以上0.5質量%以下がより好ましく、0.05質量%以上0.2質量%以下が更に好ましく、0.05質量%以上0.1質量%以下が特に好ましい。
本発明におけるインク組成物は、コロイダルシリカ及びケイ酸アルカリ塩の少なくとも一方を含むことが好ましい。
これにより、ノズルプレートを用いたインク組成物の吐出を繰り返し行なったときの、該ノズルプレートに設けられた撥液膜の劣化(撥液性の低下)をより効果的に抑制できる。
この効果は、ノズルプレートとして、シリコンを含むノズルプレート(シリコンノズルプレート)を用いた場合により顕著である。
本発明におけるノズルプレート及び撥液膜については後述する。
コロイダルシリカは、平均粒子径が数100nm以下のケイ素を含む無機酸化物の微粒子からなるコロイドである。主成分として二酸化ケイ素(その水和物を含む)を含み、少量成分としてアルミン酸塩を含んでいてもよい。少量成分として含まれることがあるアルミン酸塩としては、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウムなどが挙げられる。
またコロイダルシリカには、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化アンモニウム等の無機塩類やテトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の有機塩類が含まれていてもよい。これらの無機塩類および有機塩類は、例えば、コロイドの安定化剤として作用する。
平均粒子径が200nm以下であることで、インク組成物によるノズルプレートや撥液膜等に対するダメージ(例えば、撥液性の低下等)をより効果的に抑制することができる。これは例えば、平均粒子径が小さいことで、粒子の総表面積が大きくなり、前記ダメージを、より効果的に抑制するためと考えることができる。またさらに、インク組成物の吐出性、粒子による研磨剤効果の観点からも、粒子の平均粒子径は200nm以下であることが好ましい。また、1nm以上の平均粒子径であることで、生産性が向上し、また性能のバラツキの少ないコロイダルシリカを得ることができる。
またコロイダルシリカの形状は、インクの吐出性能を妨げない限り、特に限定されない。例えば、球状、長尺の形状、針状、数珠状のいずれであってもよい。中でも、インクの吐出性の観点から、球状であることが好ましい。
本発明におけるインク組成物中におけるコロイダルシリカの含有量には特に制限はない。
コロイダルシリカの含有量は、例えば、インク組成物全量に対し、0.0001質量%〜10質量%とすることができ、0.01質量%〜3.0質量%であることが好ましく、より好ましくは0.02質量%〜0.5質量%であり、特に好ましくは0.03質量%〜0.2質量%である。インク組成物中の含有量が前記上限値以下であることで、インク組成物の吐出性がより向上し、またシリカ粒子の研磨剤効果によるインクジェットヘッドへの影響をより効果的に抑制できる。また前記下限値以上であることで、撥液膜の劣化(撥液性の低下)をより効果的に抑制できる。
前記ケイ酸アルカリ金属塩は、ケイ酸とアルカリ金属から構成され、メタケイ酸のアルカリ金属塩、オルトケイ酸のアルカリ金属塩等のいずれであってもよく、さらにこれらの混合物であってもよい。
前記ケイ酸アルカリ金属塩は、ケイ酸のアルカリ金属以外との塩、例えば、ケイ酸のアンモニウム塩(例えば、ケイ酸のテトラメチルアンモニウム塩)と比較して、インク組成物の分散安定性、臭気抑制の点で好ましい。
x(M2O)・y(SiO2) (a)
一般式(a)中、Mはナトリウムまたはカリウムを表し、xは1または2を、yは1〜4の整数を表す。前記一般式(a)で表されるケイ酸のアルカリ金属塩は、x=1、y=1の場合はメタケイ酸アルカリ金属塩と、x=2、y=1の場合はオルトケイ酸アルカリ金属塩とそれぞれ呼ばれ、いずれも水溶性を有するケイ酸アルカリ金属塩である。
本発明においては、ケイ酸アルカリ金属塩として、市販の化合物(例えば、水ガラス等)を用いてもよく、また、ケイ酸と、アルカリ金属の炭酸塩または水酸化物とを融解して得られるものを用いてもよいが、インク分散安定性の観点から、市販の化合物であるケイ酸ナトリウムまたはケイ酸カリウムを用いることが好ましい。
本発明におけるインク組成物は尿素を含むことが好ましい。
尿素は、保湿機能が高いため、固体湿潤剤としてインクの望ましくない乾燥、凝固を効果的に抑制することができる。
さらに本発明におけるインク組成物は、前述のコロイダルシリカと尿素とを含むことでインクジェットヘッド等のメンテナンス性がより効果的に向上する。
即ち、尿素の含有量が1.0質量%以上であって、コロイダルシリカの含有量が0.01質量%以上である組み合わせが好ましく、尿素の含有量が1.0質量%〜20質量%であって、コロイダルシリカの含有量が0.02質量%〜0.5質量%である組み合わせがより好ましく、尿素の含有量が3.0質量%〜10質量%であって、コロイダルシリカの含有量が0.03質量%〜0.2質量%である組み合わせが特に好ましい。
本発明におけるインク組成物は、尿素以外の固体湿潤剤をさらに含有してもよい。本発明において固体湿潤剤とは、保水機能を有し、25℃で固体の水溶性化合物を意味する。
尿素誘導体の具体例としては、N,N−ジメチル尿素、チオ尿素、エチレン尿素、ヒドロキシエチル尿素、ヒドロキシブチル尿素、エチレンチオ尿素、ジエチルチオ尿素等が挙げられる。
本発明におけるインク組成物は、上記成分に加えて必要に応じてその他の添加剤を含むことができる。
本発明におけるその他の添加剤としては、例えば、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤等の公知の添加剤が挙げられる。これらの各種添加剤は、インク組成物を調製後に直接添加してもよく、インク組成物の調製時に添加してもよい。具体的には特開2007−100071号公報の段落番号[0153]〜[0162]に記載のその他の添加剤などが挙げられる。
また、表面張力調整剤の添加量は、インクジェット方式で良好に打滴するために、インク組成物の表面張力を20〜60mN/mに調整する添加量が好ましく、20〜45mN/mに調整する添加量がより好ましく、25〜40mN/mに調整する添加量がさらに好ましい。
インク組成物の表面張力は、例えば、プレート法を用いて25℃で測定することができる。
更に、特開昭59−157636号公報の第(37)〜(38)頁、リサーチディスクロージャーNo.308119(1989年)記載の界面活性剤として挙げたものも用いることができる。また、特開2003−322926号、特開2004−325707号、特開2004−309806号の各公報に記載されているようなフッ素(フッ化アルキル系)系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等を用いることにより、耐擦性を良化することもできる。
また、これら表面張力調整剤は、消泡剤としても使用することができ、フッ素系化合物、シリコーン系化合物、及びEDTAに代表されるキレート剤等、も使用することができる。
本発明は、(a)HLBが15以上19以下であるノニオン系界面活性剤の少なくとも1種と、(b)HLBが10以上15未満であるノニオン系界面活性剤の少なくとも1種とを含む2種以上の界面活性剤を含有していることが好ましい。15≦HLB≦19を満たすノニオン系界面活性剤は、比較的親水性が高く、インク中の樹脂粒子の表面に吸着され難く、加熱に伴なうドット径変動の防止に効果がある。一方、この界面活性剤ではインクの動的表面張力が下がり難く、インクをノズルから吐出する際の吐出安定性が低下するおそれがあるため、10≦HLB<15の範囲のノニオン系界面活性剤を併用することが好ましい態様である。
HLB値=20×親水部の式量の総和/分子量
なお、上記動的表面張力とは、界面が不安定な流動・攪拌状態での表面張力をいい、動的表面張力計を用いて例えばインク組成物の0.1%水溶液の1Hz及び10Hz時に測定されるものである。
また、(b)HLBが10以上15未満であるノニオン系界面活性剤としては、HLB値以外に特に制限はなく、従来公知の比較的疎水的なノニオン系の界面活性剤から適宜選択して使用することができる。中でも、エチレンオキシド鎖(好ましくはその付加モル数が10以下)を有するノニオン系の界面活性剤が好ましい。また、HLBの範囲は、10〜14.5の範囲がより好ましい。HLBが10より小さいと、インク溶媒への溶解度が低下し、十分な分散性が得られなくなる場合がある。
8−ヘキサデシン−7,10−ジオール、7−テトラデシン−6,9−ジオール、2,3,6,7−テトラメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,6−ジエチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール等のアセチレングリコールのエチレンオキサイド誘導体を挙げることができる。
また、上市されている市販品を用いてもよく、例えば、日信化学工業(株)製のオルフィンE1010、同E1020等を使用することができる。また、HLBは、オルフィンE1010が14.0、オルフィンE1020が16.5である。
前記含有比率(a)/(b)は、加熱経時でのドット小径化を抑制する点で、10/2〜10/6の範囲がより好ましく、10/2〜10/4の範囲が特に好ましい。
また、本発明におけるインク組成物は、重合性化合物を少なくとも1種含むことにより、活性エネルギー線(例えば紫外線)硬化型のインク組成物として構成されていてもよい。この場合、インク組成物が(後述の処理液を用いる場合には、インク組成物及び処理液の少なくとも一方が)、更に重合開始剤を含むことが好ましい。
前記重合性化合物としては、例えば、2011−184628号公報の段落0128〜0144に記載されている公知の水溶性の重合性化合物や、特開2011−178896号公報の段落0019〜0034に記載されている公知の(メタ)アクリルアミド化合物(好ましくは2官能以上の(メタ)アクリルアミド化合物)が挙げられる。
前記重合開始剤としては、例えば、特開2011−184628号公報の段落0186〜0190や特開2011−178896号公報の段落0126〜0130に記載されている公知の重合開始剤が挙げられる。
インク組成物の粘度は、例えば、ブルックフィールド粘度計を用いて20℃で測定することができる。
またインク組成物のpHは、酸性化合物または塩基性化合物を用いて適宜調製することができる。酸性化合物または塩基性化合物としては通常用いられる化合物を特に制限なく用いることができる。
本発明におけるインク吐出工程は、記録媒体上に、前述のインク組成物(インク)を、複数の吐出孔が二次元に配列され該吐出孔形成面にフッ素化合物を含む撥液膜が設けられたノズルプレートから吐出する工程である。
インクジェット法によるインクの吐出は、例えば、エネルギーを供与することにより、所望の記録媒体、すなわち普通紙、樹脂コート紙、例えば特開平8−169172号公報、同8−27693号公報、同2−276670号公報、同7−276789号公報、同9−323475号公報、特開昭62−238783号公報、特開平10−153989号公報、同10−217473号公報、同10−235995号公報、同10−217597号公報、同10−337947号公報等に記載のインクジェット専用紙、フィルム、電子写真共用紙、布帛、ガラス、金属、陶磁器等にインクを吐出することにより行なえる。なお、本発明に好ましいインクの吐出方法として、特開2003−306623号公報の段落番号0093〜0105に記載の方法が適用できる。
尚、前記インクジェット法には、フォトインクと称する濃度の低いインクを小さい体積で多数射出する方式、実質的に同じ色相で濃度の異なる複数のインクを用いて画質を改良する方式や無色透明のインクを用いる方式が含まれる。
また、吐出方式としては、電気−機械変換方式(例えば、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型、シェアードウォール型等)、電気−熱変換方式(例えば、サーマルインクジェット型、バブルジェット(登録商標)型等)、静電吸引方式(例えば、電界制御型、スリットジェット型等)及び放電方式(例えば、スパークジェット型等)などを具体的な例として挙げることができるが、いずれの吐出方式を用いても構わない。
尚、前記インクジェット法により記録を行う際に使用するインクノズル等については特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができる。
ライン方式では、記録素子の配列方向と直交する方向に記録媒体を走査させることで記録媒体の全面に画像記録を行なうことができ、短尺ヘッドを走査するキャリッジ等の搬送系が不要となる。また、キャリッジの移動と記録媒体との複雑な走査制御が不要になり、記録媒体だけが移動するので、シャトル方式に比べて記録速度の高速化が実現できる。
本発明の画像形成方法は、これらのいずれにも適用可能であるが、一般にダミージェットを行なわないライン方式に適用した場合に、吐出精度(撥液膜からのインクの切れ性)及び画像の耐ブロッキング性の向上効果が大きい。
特に、ライン方式の中でも、記録媒体の1回の走査で画像を形成する、シングルパス方式においては、画像形成がより高速化されて、画像が形成された記録媒体同士が積み重ねられる速度も速くなるので、ブロッキングがより生じやすくなる。
従って、シングルパス方式の画像形成の場合に、吐出精度(撥液膜からのインクの切れ性)及び画像の耐ブロッキング性の向上効果が特に顕著となる。
本発明におけるノズルプレートには、フッ素化合物を含む撥液膜が設けられている。
前記フッ素化合物を含む撥液膜のSP値としては特に限定はないが、インクの切れ性をより向上させる観点から、沖津法によって計算された該撥液膜のSP値は、16.00MPa1/2以下が好ましく、15.00MPa1/2以下がより好ましく、13.00MPa1/2以下が特に好ましい。
本発明における撥液膜は、例えば、フッ化アルキルシラン化合物を用いて作製された撥液膜であることが好ましい。
前記フッ化アルキルシラン化合物としては、下記一般式(F)で表されるフッ化アルキルシラン化合物を好適に用いることができる。下記一般式(F)で表されるフッ化アルキルシラン化合物は、シランカップリング化合物である。
CnF2n+1−CmH2m−Si−X3 … 一般式(F)
前記一般式(F)において、nは1以上の整数を表し、mは0又は1以上の整数を表す。Xは、アルコキシ基、アミノ基、又はハロゲン原子を表す。なお、Xの一部がアルキル基で置換されていてもよい。
中でも、C8F17C2H4SiCl3が最も好ましい。
具体的には、前記フッ素化合物を含む撥液膜は、例えば、化学気相蒸着法による蒸着、フッ素樹脂のコーティング、フッ素系高分子等との共析メッキ、フッ素シラン処理、アミノシラン処理、フッ化炭素プラズマ重合等によって形成することができる。
前記フッ素化合物を含む撥液膜の形成方法として、より具体的には、下記の方法が挙げられる。
前記化学式において、CF3(CF2)8C2H4−がフルオロアルキル基であり、−SiCl3がトリクロロシリル基である。
この方法では、活性水素が表面に存在する基材をフルオロアルキルトリクロロシランが溶解した溶液にさらし、クロロシリル基(−SiCl)と活性水素とを反応させて基材とSi−O結合を形成する。この結果、フルオロアルキル基はSi−Oを介して基材に固定される。ここで、フルオロアルキル基が膜に撥液性を付与する。膜の形成条件によって、撥液膜は単分子膜や重合膜となる。
この方法では、撥液膜と基材との密着性を高めるために、二酸化珪素などの中間層を設けてもよい。
この方法は、フルオロアルキル鎖が膜に撥水性を付与し、金属酸化物が膜に高い機械的強度を付与する。
前記化学気相蒸着法の態様としては、テフロン(登録商標)製などの密閉容器の中にフッ化アルキルシラン化合物を入れた容器とノズルプレート(例えば、シリコン基板製のノズルプレート)を入れ、この密閉容器全体を電気炉中に置く等して昇温することでフッ化アルキルシラン化合物を蒸発させることにより、ノズルプレートの表面にフッ化アルキルシラン化合物の分子を堆積させる態様が挙げられる。
このようにして、化学気相蒸着法により例えばフッ化アルキルシラン化合物の単分子膜をノズルプレート上に形成することができる。この場合、ノズルプレートの蒸着面は親水化されていることが好ましい。具体的には、例えばシリコン基板製のノズルプレートの表面を紫外光(波長172nm)を用いて洗浄することで、有機不純物が除去されて清浄表面が得られる。このとき、シリコン表面は自然酸化してSiO2膜で覆われているため、表面に直ちに大気中の水蒸気が吸着して表面がOH基で覆われ親水性の表面となる。
即ち、低圧力でCF3(CF2)8C2H4SiCl3などのフルオロアルキルトリクロロシラン化合物及び水蒸気をCVDリアクタの中に導入することによって、シリコン基板の表面に撥液膜を堆積することができる。
CF3(CF2)8C2H4SiCl3などのフルオロアルキルトリクロロシラン化合物の分圧は、0.05〜1torr(6.67〜133.3Pa)の間(例えば0.1〜0.5torr(13.3〜66.5Pa))とすることができ、H2Oの分圧は0.05〜20torrの間(例えば0.1〜2torr)とすることができる。
堆積温度は、室温と摂氏100度との間とすることができる。コーティングプロセスは、例えば、Applied Micro Structures, Inc.からのMolecular Vapor Deposition(MVD)TMマシンを用いて実施することができる。
本発明におけるノズルプレートは、複数の吐出孔が二次元に配列された構成を有するものである。複数の吐出孔の数には特に限定はなく、画像形成の高速化等を考慮し、適宜選択できる。
前記シリコンとしては、単結晶シリコン又はポリシリコンを用いることができる。
また、前記シリコンノズルプレートとしては、例えば、シリコン基板上に、金属酸化物(酸化シリコン、酸化チタン、酸化クロム、酸化タンタル(好ましくはTa2O5)等)、金属窒化物(窒化チタン、窒化シリコン等)、金属(ジルコニウム、クロム、チタン等)などの膜が設けられたものを用いることもできる。
ここで、酸化シリコンは、シリコン基板の表面の全部又は一部が酸化されて形成されたSiO2膜であってもよい。
また、前記シリコンノズルプレートは、シリコンの一部をガラス(例:硼珪酸ガラス、感光性ガラス、石英ガラス、ソーダ石灰ガラス)に置き換えて構成されたものであってもよい。
上記のうち、特に、五酸化タンタル等をはじめとする酸化タンタルからなる膜は、インクに対して非常に優れた耐インク性を有し、特にアルカリ性のインクに対して良好な耐侵食性が得られる。
例えば、化学蒸着法(CVD)リアクタにシリコン基板を収容し、SiCl4及び水蒸気を導入することによって、シリコン基板上にSiO2膜を形成できる。
このとき、SiCl4の分圧は、0.05〜40torr(6.67〜5.3×103Pa)の間(例えば0.1〜5torr(13.3〜666.5Pa))とすることができ、H2Oの分圧は0.05〜20torrの間(例えば0.2〜10torr)とすることができる。堆積温度は、一般には室温と摂氏100度との間である。
また、他の態様として、シリコン基板上にスパッタリングすることによりSiO2膜を形成することができる。
いずれの態様においても、SiO2膜が形成されるべきシリコン基板表面は、SiO2膜を形成する前に(例えば、酸素プラズマを当てることによって)洗浄されることが好ましい。
図3は、本発明におけるノズルプレートを備えたインクジェットヘッドの一例を示す概略断面図である。
図3に示すように、インクジェットヘッド100は、吐出孔(ノズル)を有するノズルプレート11と、ノズルプレートの吐出方向と反対側に設けられたインク供給ユニット20とを備えている。ノズルプレート11には、インクを吐出する複数の吐出孔12が設けられている。ノズルプレート11の吐出面側には、フッ素化合物を含む撥液膜13が設けられている。
このノズルプレート11は、前述のシリコンを含むノズルプレート(シリコンノズルプレート)を用いることができ、例えば、少なくともノズル口内壁及びインク吐出方向側のプレート面にシリコンが露出した構造のシリコンノズルプレートが好ましい。
なお、図示しないが、ノズルプレート11は、シリコン基板と該シリコン基板上に設けられた酸化シリコン膜とからなるシリコンノズルプレートであってもよい。この場合、酸化シリコン膜は、シリコン基板とフッ素化合物を含む撥液膜13との間に配置される。
このように、複数の吐出孔にインクを多量に供給することが可能である
本インク吐出工程において、インク組成物が吐出される記録媒体としては特に制限はないが、一般のオフセット印刷などに用いられる、いわゆる上質紙、コート紙、アート紙などのセルロースを主体とする一般印刷用紙を用いることができる。セルロースを主体とする一般印刷用紙は、水性インクを用いた一般のインクジェット法による画像記録においては比較的インクの吸収、乾燥が遅く、打滴後に色材移動が起こりやすく、画像品質が低下しやすいが、本発明のインクジェット画像形成方法によると、色材移動を抑制して色濃度、色相に優れた高品位の画像の記録が可能である。
本発明のインクジェット画像形成方法は、前記記録媒体上に、前記インク組成物と接触することで凝集体を形成可能な凝集剤を含む処理液を付与する処理液付与工程を有することが好ましい。
本処理液付与工程では、インク組成物と接触することで凝集体を形成可能な処理液(処理液)を記録媒体に付与し、処理液をインク組成物と接触させて画像化する。この場合、インク組成物中の樹脂粒子や樹脂被覆キナクリドン系顔料などの分散粒子が凝集し、記録媒体上に画像が固定化される。これにより、インクジェット画像形成を高速化でき、更に、高速化しても濃度、解像度の高い画像が得られる。
なお、処理液における各成分の詳細及び好ましい態様については後述する。
本発明においては、処理液付与工程で処理液を付与した後に、インク吐出工程を設けた態様が好ましい。すなわち、記録媒体上に、インク組成物を吐出する前に、予めインク組成物中の色材(樹脂被覆キナクリドン系顔料)を凝集させるための処理液を付与しておき、記録媒体上に付与された処理液に接触するようにインク組成物を吐出して画像化する態様が好ましい。これにより、インクジェット記録を高速化でき、高速記録しても濃度、解像度の高い画像が得られる。
前記処理液は、前記インク組成物と接触したときに凝集体を形成できる水性組成物であり、具体的には、インク組成物と混合されたときに、インク組成物中の樹脂被覆キナクリドン系顔料などの分散粒子を凝集させて凝集体を形成可能な凝集成分を少なくとも含み、必要に応じて、他の成分を含んで構成することができる。
インク組成物と共に処理液を用いることで、インクジェット記録を高速化でき、高速記録しても濃度、解像度の高い画像が得られる。
処理液は、インク組成物と接触して凝集体を形成可能な凝集成分の少なくとも1種を含有する。インクジェット法で吐出された前記インク組成物に処理液が混合することにより、インク組成物中で安定的に分散している樹脂被覆キナクリドン系顔料等の凝集が促進される。
中でも、本発明においては、画像濃度、解像度、及びインクジェット画像形成の高速化の観点から、前記インク組成物のpH(25℃)が7.5以上であって、処理液のpH(25℃)が3〜5である場合が好ましい。
前記凝集成分は、1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
前記酸性化合物としては、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、硫酸基、スルホン酸基、スルフィン酸基、又はカルボキシル基を有する化合物、あるいはその塩(例えば多価金属塩)を使用することができる。中でも、インク組成物の凝集速度の観点から、リン酸基又はカルボキシル基を有する化合物がより好ましく、カルボキシル基を有する化合物であることが更に好ましい。
前記処理液が前記酸性化合物を含む場合、処理液中における酸性化合物の含有量としては、凝集効果の観点から、処理液の全質量に対し、5〜95質量%であることが好ましく、10〜80質量%であることがより好ましい。
前記多価金属塩あるいはポリアリルアミンとしては、周期表の第2属のアルカリ土類金属(例えば、マグネシウム、カルシウム)、周期表の第3属の遷移金属(例えば、ランタン)、周期表の第13属からのカチオン(例えば、アルミニウム)、ランタニド類(例えば、ネオジム)の塩、及びポリアリルアミン、ポリアリルアミン誘導体を挙げることができる。金属の塩としては、カルボン酸塩(蟻酸、酢酸、安息香酸塩など)、硝酸塩、塩化物、及びチオシアン酸塩が好適である。中でも、好ましくは、カルボン酸(蟻酸、酢酸、安息香酸塩など)のカルシウム塩又はマグネシウム塩、硝酸のカルシウム塩又はマグネシウム塩、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、及びチオシアン酸のカルシウム塩又はマグネシウム塩である。
また、処理液の表面張力としては、インク組成物の凝集速度の観点から、20〜60mN/mであることが好ましく、20〜45mN/mであることがより好ましく、25〜40mN/mであることがさらに好ましい。なお、表面張力は、Automatic Surface Tensiometer CBVP−Z(協和界面科学(株)製)を用いて25℃の条件下で測定されるものである。
本発明のインクジェット画像形成工程は、前記インク吐出工程の後、インク組成物の付与により形成されたインク画像に加熱面を接触させて加熱定着する加熱定着工程を有することが好ましい。
加熱定着処理を施すことにより、記録媒体上の画像の定着が施され、画像の擦過に対する耐性をより向上させることができる。
本発明のインクジェット画像形成方法は、必要に応じ、乾燥工程、下記メンテナンス工程、下記硬化工程等のその他の工程を有していてもよい。
本発明のインクジェット画像形成方法は、インク組成物またはインク組成物に由来するインク固着物(以下、「インク組成物等」ともいう)を、ノズルプレートに設けられた撥液膜から除去するメンテナンス工程を有していてもよい。
本発明のインクジェット画像形成方法は、撥液膜からのインク組成物の切れ性に優れているため、基本的には撥液膜へのインク組成物等の付着自体が抑制されている。しかし、仮に、撥液膜へインク組成物等が付着した場合であっても、該インク組成物等を容易に除去することができる。
またメンテナンス工程は、メンテナンス液をインクジェットヘッド周辺(例:インク流路等;以下、ヘッド等ともいう。)に付与することを含んでいてもよい。前記メンテナンス液をヘッド等に付与することにより、ノズル面のインク由来のインク固着物は溶解、又は膨潤等してさらに除去しやすくなる。
本発明の画像形成方法は、前記インク組成物が重合性化合物を更に含有する場合には、更に、前記インク付与工程により形成された画像に対して活性エネルギー線を照射して前記画像を硬化する硬化工程を有していてもよい。
これにより、形成される画像の耐擦性や記録媒体との密着性がより向上する。
前記活性エネルギー線としては、前記重合性化合物を重合可能なものであれば、特に制限はない。例えば、紫外線、電子線等挙げることができ、中でも、汎用性の観点から、紫外線であることが好ましい。また、活性エネルギー線の発生源として、例えば、紫外線照射ランプ(ハロゲンランプ、高圧水銀灯など)、レーザー、LED、電子線照射装置などが挙げられる。
前記紫外線強度は、硬化に有効な波長領域において、500〜5000mW/cm2であることが好ましい。
前記紫外線を照射する手段としては、通常用いられる手段を用いてもよく、特に紫外線照射ランプが好適である。紫外線照射ランプは、水銀の蒸気圧が点灯中で1〜10Paであるような、いわゆる低圧水銀灯、高圧水銀灯、蛍光体が塗布された水銀灯、UV-LED光源等が好適である。水銀灯、UV−LEDの紫外線領域の発光スペクトルは、450nm以下、特には184nm〜450nmの範囲であり、黒色或いは、着色されたインク組成物中の重合性化合物を効率的に反応させるのに適している。また、電源をプリンタに搭載する上でも、小型の電源を使用できる点で適している。水銀灯には、例えば、メタルハライドランプ、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンフラッシュランプ、ディープUVランプ、マイクロ波を用い外部から無電極で水銀灯を励起するランプ、UVレーザー等が実用されている。発光波長領域として上記範囲を含むので、電源サイズ、入力強度、ランプ形状等が許されれば、基本的には適用可能である。光源は、用いる重合開始剤の感度にも合わせて選択される。
≪樹脂分散剤の合成≫
樹脂分散剤として、下記樹脂分散剤P−1を作製した(樹脂分散剤P−1の作製に用いた各モノマー及び各モノマーの共重合比は下記表1に示すとおりである)。
(モノマーM−1の合成)
下記モノマーM−1(パラ置換体・メタ置換体の混合物)を以下の方法で合成した。
9(10H)−アクリドン9.76部とt−ブトキシカリウム5.61部とをジメチルスルホキシド30部に溶解させ、45℃に加熱した。ここにクロロメチルスチレン(セイミケミカル(株)製CMS−P、メタ体/パラ体=50/50(mol/mol)の混合物)15.26部を滴下し、50℃で5時間加熱攪拌を行なった。この反応液を蒸留水200部に攪拌しながら注ぎ、得られた析出物を濾別、洗浄することで、モノマーM−1を11.9部得た。モノマーM−1の構造は、1H−NMRで確認した。
上記で得られたモノマーM−1とメチルメタクリレートとメタクリル酸とを、モノマーM−1/メチルメタクリレート/メタクリル酸=10/80/10の質量比で混合し、モノマー混合物を得た。
攪拌機、冷却管を備えた300mlの三口フラスコに、上記モノマー混合物90gとメチルエチルケトン126gとを加え、窒素雰囲気下で75℃に加熱した。ここに、メチルエチルケトン8gに溶解させたジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート1.20gを加えて2時間反応させ、更に、メチルエチルケトン0.6gに溶解させたジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート0.50gを加えてさらに2時間反応させた。更に、メチルエチルケトン0.6gに溶解させたジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート0.50gを加えて80℃に昇温し、4時間加熱攪拌して未反応モノマーをすべて反応させ、モノマーM−1/メチルメタクリレート/メタクリル酸(共重合比[質量比]=10/80/10)共重合体(樹脂分散剤P−1)のポリマー溶液Aを得た。
ここで、未反応モノマーの消失は、1H−NMRで確認した。反応終了後、ポリマー溶液Aにメチルエチルケトン33gを加えて希釈し、樹脂分散剤P−1のポリマー溶液Bを得た。
得られた樹脂分散剤P−1の組成は1H−NMRで確認した。GPCより求めた樹脂分散剤P−1の重量平均分子量(Mw)は35100であった。
画像形成に用いるインクとして、マゼンタ色のインク組成物であるインク1を調製した。以下、詳細を説明する。
C.I.ピグメント・レッド122(Cromophtal Jet Magenta DMQ(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製;マゼンタ顔料)10部と、上記で得られた樹脂分散剤P−1のポリマー溶液Aと、メチルエチルケトン42部と、1mol/L NaOH水溶液5.5部(樹脂分散剤P−1に含まれる酸性基の量に対して1当量)と、イオン交換水87.2部と、をディスパー混合した。ここで、樹脂分散剤P−1のポリマー溶液Aの量は、樹脂分散剤P−1の量が4.5部となる量とした。
得られた混合物に対し、分散機(マイクロフルイダイザーM−140K、150MPa)を用い、更に10パスの分散処理を施した。
続いて、得られた分散物から、減圧下、55℃でメチルエチルケトンを除去し、さらに水の一部を除去することにより、顔料濃度が15.0%の水系の顔料分散物1(樹脂被覆マゼンタ顔料(樹脂被覆キナクリドン系顔料)の分散物)を得た。
攪拌機、温度計、還流冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた2リットル三口フラスコに、メチルエチルケトン560.0gを仕込んで、窒素雰囲気下で87℃まで昇温した。反応容器内は還流状態を保ちながら(以下、反応終了まで還流)、メチルメタクリレート232.0g、イソボルニルメタクリレート301.6g、メタクリル酸46.4g、メチルエチルケトン108g、及び「V−601」(和光純薬工業(株)製)2.32gからなる混合溶液を、2時間で滴下が完了するように等速で滴下した。
滴下完了後、1時間攪拌後、「V−601」1.16g及びメチルエチルケトン6.4gからなる溶液を加え、2時間攪拌する工程(1)を行なった。続いて、この工程(1)を4回繰り返し、さらに「V−601」1.16g及びメチルエチルケトン6.4gからなる溶液を加えて3時間攪拌を続けた。重合反応終了後、溶液の温度を65℃に降温し、イソプロパノール163.0gを加えて放冷した。得られた共重合体の重量平均分子量(Mw)は63000、酸価は65.1(mgKOH/g)であった。
得られた自己分散性樹脂粒子B−1をイオン交換水で希釈し25.0%の液の物性を測定した結果、pH7.8、電気伝導度461mS/m、粘度14.8mPa・s、体積平均粒径2.8nmであった。
上記で得られた顔料分散物1と、自己分散性樹脂粒子B−1の水性分散物と、下記組成中のその他の成分とを用い、下記の組成となるように各成分を混合した。これをプラスチック製のディスポーザブルシリンジに詰め、PVDF5μmフィルター(Millex−SV、直径25mm、ミリポア社製)で濾過し、マゼンタ色のインク組成物であるインク1を得た。
得られたインク1について、導電率計WM−50EG(東亜ディーケーケー(株)製)を用いて液温25℃における電気伝導度を測定したところ、表1に示す値であった。
・マゼンタ顔料(C.I.ピグメント・レッド122) … 6.5%
・前記樹脂分散剤P−1 … 2.9%
・前記自己分散性樹脂粒子B−1 … 5.0%
・トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(TPGmME) … 2.0%
(和光純薬工業社製、水溶性有機溶剤)
・ジプロピレングリコール(DPG) … 2.0%
(和光純薬工業社製、水溶性有機溶剤)
・サンニックスGP250(三洋化成工業社製、水溶性有機溶剤) …10.0%
・尿素 … 5.0%
・コロイダルシリカ(スノーテックスXS、固形分濃度20%、体積平均粒子径5nm、日産化学工業(株)製)(固形分) … 0.01%
・オルフィンE1010(日信化学工業(株)製、界面活性剤) … 1.5%
・イオン交換水 … 全体で100%となる量
下記組成となるように成分を混合し、処理液1を調製した。
〜処理液1の組成〜
・マロン酸 …11.25%
・DL−リンゴ酸 …14.5%
・ジエチレングリコールモノブチルエーテル(DEGmBE) … 4.0%
(和光純薬工業社製、水溶性有機溶剤)
・トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(TPGmME) … 4.0%
(和光純薬工業社製、水溶性有機溶剤)
・イオン交換水 … 全体で100%となる量
図3に示したようなシリコンノズルプレートを備えたインクジェットヘッドを用意し、これに繋がる貯留タンクに上記で得たインク1を詰め替えた。
上記SiO2膜は、上記シリコンノズルプレートのインク吐出方向側に設けられた膜であり、化学気相蒸着(CVD)法リアクタにSiCl4及び水蒸気を導入することによって成膜された膜である。上記SiO2膜の膜厚は、50nmである。
さらに、このSiO2膜上に酸素プラズマ処理が施され、酸素プラズマ処理後のSiO2膜上に、C8F17C2H4SiCl3を用いた化学気相蒸着法(CVD)により、C8F17C2H4SiCl3の積層膜(重合膜)である撥液膜2が設けられている。
ここでは、低圧力でC8F17C2H4SiCl3及び水蒸気をCVDリアクタの中に導入することによって、C8F17C2H4SiCl3の積層膜を製膜させ、さらに後処理として80℃/湿度80%条件で120分間加熱し、未反応のC8F17C2H4SiCl3同士を重合させて、C8F17C2H4SiCl3の積層膜(重合膜)である撥液膜2とした。撥液膜2の厚みは6.1nmであった。また、この撥液膜2のSP値を沖津法により求めたところ、12.81MPa1/2であった。ここで、撥液膜2のSP値はC8F17C2H4SiCl3の重合体のSP値として求めた。
その後、インクジェットヘッドを、前記ステージの移動方向(副走査方向)と直交する方向に対して、ノズルが並ぶラインヘッドの方向(主走査方向)が75.7度傾斜するように固定配置し、記録媒体を副走査方向に定速移動させながらインク液滴量2.4pL、吐出周波数24kHz、解像度1200dpi×1200dpiの吐出条件にて上記インク1をライン方式(シングルパス方式)で吐出し、50%ベタ画像を印画した。
印画直後、60℃で3秒間乾燥させ、更に60℃に加熱された一対の定着ローラ間を通過させ、ニップ圧0.25MPa、ニップ幅4mmにて定着処理を実施し、評価サンプルを得た。
得られたインク及び形成された画像について、以下の評価を行なった。評価結果を下記表1に示す。
1.5cm×3cmのシリコン板の全面に、上記のSiO2膜及び撥液膜2を順次形成し、試験片を得た。
得られた試験片を用いて、以下のようにして撥液膜に対するインクの切れ時間を測定し、インクの切れ性(液切れ)を評価した。
上記試験片(撥液膜)を2cmの深さまでインクに浸漬し(1cm未浸漬)、浸漬から2秒間経過後に引き上げた。
試験片(撥液膜)を引き上げてから、インクが撥液膜上から切れて落ちるまでの時間(切れ時間)を測定し、インクの切れ時間とした。
〜インクの切れ性の評価基準〜
A : インクの切れ時間が20秒以下であった。
B : インクの切れ時間が20秒よりも長く、40秒以下であった。
C : インクの切れ時間が40秒よりも長く、60秒以下であった。
D : インクの切れ時間が60秒よりも長い(試験片(撥液膜)を引き上げてから60秒経過してもインクが撥液膜上に残り、切れなかった)。
上記画像形成で得られた2枚の評価サンプルを4cm×4cmのサイズに裁断し、裁断された2枚の評価サンプルをベタ画像同士が接するようにして重ね、更にプレス機で1.0MPaの圧力を10秒間かけて2枚の評価サンプルをプレスした。
その後、2枚の評価サンプルを剥がし、このときの剥がれ易さ及び剥がした後の画像の損傷を目視で観察し、下記の評価基準に従って評価した。
耐ブロッキング性の評価は、プレス時のベタ画像の温度が25℃である条件、及び、プレス時のベタ画像の温度が35℃である条件の2条件について行なった。
〜耐ブロッキング性の評価基準〜
A: 2枚の評価サンプルを剥がすときに、貼り付き感無く自然に剥がれ、互いの紙への色移りも見られなかった。
B: 2枚の評価サンプルを剥がすときにわずかな貼り付き感があるものの、画像の損傷は見られなかった。
C: 2枚の評価サンプルを剥がすときに貼り付き感があり、画像の損傷がわずかに見られた。
D: 2枚の評価サンプルを剥がすときの貼り付き感が強く、画像の損傷が顕著であり、実用上問題があるレベルであった(但し、下記Eに該当する場合を除く)。
E: 2枚の評価サンプルを剥がすときの貼り付き感が非常に強く、画像及びコート層が損傷し、Dよりも劣るレベルであった。
上記画像形成で用いたインクジェットヘッドを、ステージの移動方向がノズル配列方向に対して垂直方向になるように固定した。次にこれに繋がる貯留タンクに上記インク1を詰め替えた。記録媒体として富士フイルム(株)製の画彩写真仕上げProを、ヘッドのノズル配列方向に対して垂直方向に移動するステージに貼り付けた。
次に、ステージを248mm/分で移動させ、インク滴量3.4pL、吐出周波数10kHz、ノズル配列方向×搬送方向75×1200dpiで96本のラインを搬送方向に対して平行に1ノズル(1つの吐出孔)当り2000発のインク滴を吐出して、印画サンプルを作製した。得られた印画サンプルを目視で観察して、すべてのノズル(吐出孔。以下同じ。)からインクが吐出されていることを確認した。
上記インク吐出後、25℃/80%RH/3時間ヘッドをそのままの状態で放置した後、新しい記録媒体を貼り付けて、再び同様の条件でインクを吐出して印画サンプルを作製した。得られた印画サンプルを目視で観察し、2000発吐出した後の不吐ノズル数を評価した。
不吐ノズル数(単位:本)を下記表1に示した。不吐ノズル数が10本以下であれば、実用上の許容範囲内である。
まず、実施例1において、樹脂分散剤P−1を、下記表1に示す樹脂分散剤に変更したこと以外は実施例1と同様にしてインク組成物を調製した。
次に、実施例1において、ノズルプレートに設けた撥液膜2、及び、インクの切れ性の評価の試験片に設けた撥液膜2を、それぞれ、化学気相蒸着法によるC8F17C2H4SiCl3の単分子膜(SAM膜)である撥液膜1に変更したこと、及び、インク1に代えて上記で得られたインク組成物を用いたこと以外は実施例1と同様にして、画像形成及び評価を行なった。
評価結果を表1に示す。
ここで、撥液膜1は、積層膜(重合膜)ではなく単分子膜が得られるように、C8F17C2H4SiCl3の濃度を調整したこと及び80℃/80%条件の後処理を実施しなかったこと以外は撥液膜2と同様にして形成した。撥液膜1の膜厚は1.5nmであった。また、撥液膜1のSP値を沖津法により求めたところ、15.67MPa1/2であった。ここで、撥液膜1のSP値はC8F17C2H4SiCl3の単分子(単量体)のSP値として求めた。
実施例1において、樹脂分散剤P−1を、下記表1に示す樹脂分散剤に変更したこと以外は実施例1と同様にしてインク組成物を調製し、実施例1と同様にして画像形成及び評価を行なった。評価結果を表1に示す。
・モノマーの略号と化合物名との対応は以下の通りである。
PEMA … フェノキシエチルメタクリレート
M−1 … 上記モノマーM−1
tBuMA … ターシャリーブチルメタクリレート
iPrMA … イソプロピルメタクリレート
EMA … エチルメタクリレート
MMA … メチルメタクリレート
HEMA … ヒドロキシエチルメタクリレート
MAA … メタクリル酸
BzMA … ベンジルメタクリレート
・モノマーの略号の後のカッコ内の数字は、沖津法によって求められたそのモノマーのSP値(単位:MPa1/2)を表す。
・「高SP値MA」は、SP値19.40MPa1/2以上の(メタ)アクリル酸エステルを指す。表1中の「高SP値MA」は、PEMA、MMA、HEMA、及びBzMAの4種である。
・「高SP値MAの比率(%)」は、樹脂分散剤の全量に対する、高SP値MAの合計量の比率(質量%)を表す。
更に、実施例1〜11では、インクの吐出安定性についても実用上の許容範囲内であった。特に、高SP値MAの比率が30質量%〜60質量%の範囲で、吐出安定性が顕著に向上することが確認された(実施例6〜8)。
実施例1において、樹脂分散剤P−1を、下記表2に示す樹脂分散剤に変更したこと以外は実施例1と同様にしてインク組成物を調製し、実施例1と同様にして画像形成及び評価を行なった。評価結果を下記表2に示す。
また、実施例12〜15では、吐出安定性がいずれも実用上の許容範囲内であった。
特に、高SP値MAの比率が30質量%〜60質量%の範囲で、吐出安定性が顕著に向上することが確認された(実施例12〜14)。
実施例1において、樹脂分散剤を、下記表3に示すモノマー及び共重合比の樹脂分散剤に変更したこと以外は実施例1と同様にしてインク組成物を作製し、実施例1と同様にして画像形成及び評価を行なった。評価結果を表3に示す。
カルボキシエチルMA … 2−カルボキシエチルメタクリレート
ジメチルアミノエチルMA … N,N−ジメチルアミノエチルメタリレート
モルホリノエチルMA … モルホリノエチルメタクリレート
テトラヒドロフルフリルMA … テトラヒドロフルフリルメタクリレート
グリシジルMA … グリシジルメタクリレート
・表3において「高SP値MA」は、具体的には、MMA、カルボキシエチルMA、ジメチルアミノエチルMA、モルホリノエチルMA、テトラヒドロフルフリルMA、及びグリシジルMAの6種である。
実施例12において、インク組成物の調製に用いた顔料分散物(樹脂被覆マゼンタ顔料の分散物)を、下記のマゼンタ固溶体顔料分散物(樹脂被覆マゼンタ固溶体顔料の分散物)に変更したこと以外は実施例12と同様にしてインク組成物を調製した。このインク組成物の調製では、下記キナクリドン固溶体顔料及び下記塩基性シナジストS1の合計量がインク組成物の全量に対し6.5%となるように、かつ、樹脂分散剤の含有量がインク組成物の全量に対し2.9%となるようにした。
得られたインク組成物を用い、実施例12と同様にして画像形成及び評価を行なった。
更に、実施例12及び実施例21のそれぞれの画像形成で得られた評価サンプルについて、下記の画像の密着性の評価を行なった。実施例12及び実施例21の評価結果を下記表4に示す。
(塩基性シナジストS1の合成)
2,9−ジメチルキナクリドンを、常法によりクロロアセトアミドメチル化した後、ジメチルアミノプロピルアミンを反応させ、ジメチルアミノプロピルアミノアセトアミドメチル−2,9−ジメチルキナクリドンを合成した。
C.I.ピグメント・バイオレット19とC.I.ピグメント・レッド122とのキナクリドン固溶体顔料(C.I.ピグメント・バイオレット19/C.I.ピグメント・レッド122(質量比)=30/70)10部と、前記塩基性シナジストS1を1部と、前記実施例12で用いた樹脂分散剤と同じ樹脂分散剤を4.9部と、メチルエチルケトン20部と、1mol/L NaOH水溶液8.1部とを加え、ロールミルで必要に応じて2〜8時間混練した後、混練物をイオン交換水60部に分散した。得られた分散物を減圧下、55℃でメチルエチルケトンを除去し、更に一部の水を除去した。
室温まで冷却し、高速遠心冷却機7550(久保田製作所製)を用いて、50mL遠心菅を使用し、7000rpmで30分間遠心処理を行ない、沈殿物以外の上澄み液を回収した。ナノトラック粒度分布測定装置UPA−EX150(日機装(株)製)を用いて、動的光散乱法により体積平均粒子径を測定したところ、80nmであった。その後、吸光度スペクトルから顔料濃度を求め、イオン交換水を加えて、固溶体顔料濃度15質量%のマゼンタ固溶体顔料分散物(樹脂被覆マゼンタ固溶体顔料の分散物)を得た。
〜密着性〜
評価サンプルを23℃、45%RHの環境下に24時間放置した。放置後の画像サンプルのベタ画像の表面に、長さ3cmのセロテープ(登録商標)(LP−12、ニチバン株式会社製)を貼り、5秒後にセロテープ(登録商標)を剥離した。その後、画像サンプルから剥離したセロテープ(登録商標)を目視で観察し、下記の評価基準にしたがって評価した。下記基準のうち、「D」は、実用上支障を来たす水準である。
<評価基準>
A:テープへの色の付着がなく、画像サンプルのベタ画像の劣化も認められなかった。
B:テープには色が付着したが、画像サンプルのベタ画像の劣化は認められなかった。
C:テープには色が付着し、画像サンプルのベタ画像の劣化も認められた。
D:テープの半分以上の面積に色が付着し、画像サンプルのベタ画像が脱落した。
−自己分散性ポリマーB−2の作製−
攪拌機、温度計、還流冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた2リットル三口フラスコに、メチルエチルケトン560.0gを仕込んで、87℃まで昇温した。反応容器内は還流状態を保ちながら(以下、反応終了まで還流)、メチルメタクリレート278.4g、イソボルニルメタクリレート243.6g、メタクリル酸58.0g、メチルエチルケトン108g、及び「V−601」(和光純薬工業(株)製)2.32gからなる混合溶液を、2時間で滴下が完了するように等速で滴下した。滴下完了後、1時間攪拌後、(1)「V−601」1.16g、メチルエチルケトン6.4gからなる溶液を加え、2時間攪拌を行った。続いて、(1)の工程を4回繰り返し、さらに「V−601」1.16g、メチルエチルケトン6.4gからなる溶液を加えて3時間攪拌を続けた。重合反応終了後、溶液の温度を65℃に降温し、イソプロパノール163.0gを加えて放冷した。得られた共重合体の重量平均分子量(Mw)は64000、酸価は65.1(mgKOH/g)、Tgは、157℃であった。
得られた自己分散性ポリマー微粒子水分散液23.2%の液の物性を測定した結果、pH:7.6、電気伝導度:440mS/m、粘度:12.3mPa・s、体積平均粒径:2.5nmであった。
C.I.ピグメント・レッド122(Cromophtal Jet Magenta DMQ(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製;マゼンタ顔料)14部と、前記樹脂分散剤P−1におけるモノマー種及び共重合比を下記表5に示すように変更して調製した樹脂分散剤P−2(SP値:20.32MPa1/2)のポリマー溶液Bと、メチルエチルケトン15部と、1mol/L NaOH水溶液4.22部と、イオン交換水62.5部とをディスパー混合した。ここで、樹脂分散剤P−2のポリマー溶液Bの量は、樹脂分散剤P−2の量が4.2部となる量とした。
得られた混合物に対し、分散機(マイクロフルイダイザーM−140K、150MPa)を用い、更に10パスの分散処理を施した。続いて、得られた分散物から、減圧下、55℃でメチルエチルケトンを除去し、さらに水の一部を除去することにより、顔料濃度が15.0%の水系の顔料分散物(樹脂被覆マゼンタ顔料(樹脂被覆キナクリドン系顔料)の分散物)を得た。
上記の顔料分散物2と自己分散性樹脂粒子B−2の水性分散物とを用い、下記の組成となるように各成分を混合した。これをプラスチック製のディスポーザブルシリンジに詰め、PVDF5μmフィルター(Millex−SV、直径25mm、ミリポア社製)で濾過し、マゼンタ色のインク組成物であるインクを調製した。
<インクの組成>
・マゼンタ顔料(C.I.ピグメント・レッド122) … 6.67%
・前記樹脂分散剤P−2 … 2.00%
・前記自己分散性樹脂粒子B−2 … 5.10%
・トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(TPGmME) … 2.00%
(和光純薬工業社製、水溶性有機溶剤)
・ジプロピレングリコール(DPG) … 2.00%
(和光純薬工業社製、水溶性有機溶剤)
・サンニックスGP250(三洋化成工業社製、水溶性有機溶剤) …10.00%
・2−ピロリドン(和光純薬工業社製、水溶性有機溶剤) … 2.00%
・尿素 … 5.00%
・コロイダルシリカ(スノーテックスXS、固形分濃度20%、体積平均粒子径5nm、日産化学工業(株)製)(固形分) … 0.06%
・オルフィンE1010(日信化学工業(株)製、界面活性剤) … 0.25%
・オルフィンE1020(日信化学工業(株)製、界面活性剤) … 1.00%
・PVP K15(和光純薬工業(株)製のポリビニルピロリドン) … 0.10%
・プロキセルXL2 … 0.30%
(AVECIA社製の1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン)
・消泡剤(BYK24) … 0.01%
・イオン交換水 … 全体で100%となる量
下記組成の諸成分を混合し、処理液2を調製した。処理液1のpH(25℃)を東亜DKK(株)製のpHメーターWM−50EGにて測定したところ、1.02であった。
<組成>
・オルトリン酸(85%水溶液) ・・・5.0%
・マロン酸 ・・・7.0%
・リンゴ酸 ・・・7.0%
・ジエチレングリコール ・・・4.0%
・トリエチレングリコールモノメチルエーテル ・・・4.0%
・イオン交換水 ・・・残量
上記で得られたインク及び処理液2を用い、以下に示す方法で画像を記録すると共に、評価を行なった。評価結果は、下記表5に示す。ここで、図3に示すようなシリコンノズルプレートを備えたインクジェットヘッドを用意し、これに繋がる貯留タンクに上記で得たインクを詰め替えた。シリコンノズルプレートは、実施例1と同様に、単結晶シリコンと該単結晶シリコン上に設けられた酸化シリコンの膜(SiO2膜)とで構成されており、図4に示すように2次元マトリクス状に配列された複数の吐出孔が設けられている。
記録媒体(塗工紙)として特菱アート(坪量104.7g/m2)を用意し、インクジェット記録装置として、図5に示す構造の記録装置を用意した。この記録装置を起動し、その硬質ゴムベルト上に記録媒体を固定して400mm/secの搬送速度で搬送し、以下に示す工程を経て画像を記録した。なお、図5中の<I>〜<V>は、下記の工程I〜工程Vにそれぞれ対応する。その後、得られた記録画像について、以下の評価を行なった。結果を下記表5に示す。
まず、アニロックスローラー11(線数100〜300/インチ)を備え、塗布量が制御されたロールコーターにて、付与量が1.2g/m2となるように処理液2を記録媒体の全面に塗布した。
<II.処理工程>
次いで、下記条件にて処理液2が塗布された記録媒体を、記録媒体の背面側(記録面の反対側)から接触型平面ヒーター22で加熱しながら、乾燥ファン21により送風し、乾燥処理及び浸透処理を施した。
・風速:10m/s
・温度:記録媒体の記録面側の表面温度が60℃となるように加熱
<III.画像形成工程>
GELJET GX5000プリンタヘッド(リコー(株)製のフルラインヘッド)を2基、無端の硬質ゴムベルトの走行方向(副走査方向)と直交する方向に対し、ノズルが並ぶラインヘッドの方向(主走査方向)が75.7°傾斜するように固定配置した。第1のインクジェットヘッド31及び第2のインクジェットヘッド32に上記で得たインクを装填し、第1のインクジェットヘッド31及び第2のインクジェットヘッド32をそれぞれから吐出されたインク滴が重なるようにヘッドの位置を調整した。その後、処理液2が塗布された記録媒体の塗布面に、下記条件にて各インクをインクジェット方式で吐出し、ベタ画像を記録した。
<条件>
・吐出液滴量:2.4pL
・解像度:1200dpi×1200dpi
<IV.インク乾燥工程>
次いで、乾燥領域に記録媒体をベルト搬送し、インクが着滴した記録媒体を、記録媒体の背面側(記録面の反対側)から接触型平面ヒーター42で加熱しながら、乾燥ファン41により送風し、下記条件で乾燥した。ここで、乾燥工程直後の画像が記録された記録媒体中の水分量をカールフィッシャー電量滴定法(CA−200、(株)三菱化学アナリテック製)で定量したところ、約2.0〜3.0g/m2であった。
<条件>
・乾燥方法:送風乾燥
・風速:15m/s
・温度:記録媒体の記録面側の表面温度が60℃となるように加熱
<V.定着工程>
次に、互いに圧接するシリコーンゴムローラー51と大径ドラム52とからなるローラー対の間を下記条件で通過させることにより画像に加熱定着処理を施し、そのまま図示しない回収トレイに重ねて回収した。なお、シリコーンゴムローラー51の表面には、接着防止のためにシリコーンオイルを薄く付与した。
〜条件〜
・シリコーンゴムローラー51:硬度50°、ニップ幅5mm
・ローラー温度:70℃
・ドラム52の表面温度:60℃
・圧力:0.2MPa
(耐擦過性)
第1のインクジェットヘッド31からインク吐出してベタ画像を形成した記録媒体を、25℃、60%RHの環境条件下に24時間静置した。その後、このベタ画像上に、画像が形成されていない記録媒体(画像形成したものと同じ記録媒体(本評価において「未使用サンプル」という。))を重ね、150kg/m2の荷重をかけて10往復擦り、未使用サンプルの白地部分へのインクの転写度合いを目視で観察し、下記の評価基準にしたがって評価した。評価結果は下記表5に示す。
<評価基準>
A:インクの転写は全くなかった。
B:インクの転写はほとんど目立たなかった。
C:インクの転写がわずかにみられたが、実用上問題ない程度であった。
D:インクの転写が多少みられた。
E:インクの転写が顕著であった。
上記で得られたインクを用い、上記のインクジェット記録装置でマットコート紙である(N)シルバーダイヤ(日本製紙(株)製)を記録媒体として画像出力した直後に、形成された画像上を、350gの荷重をかけた未印画の上記記録媒体((N)シルバーダイヤ)にて擦り、擦りに使用した未印画記録媒体の汚れの有無を目視で観察した。観察した汚れの程度を下記の評価基準にしたがって評価した。評価結果は下記表5に示す。
なお、この試験は、連続印画直後に積載される記録媒体同士の擦れ、及び作業者が印画物を取り扱う際の記録媒体同士の擦れによる色写りの発生を想定したものである。
<評価基準>
A:同一部分を5回擦っても殆ど汚れが目立たなかった。
B:4回の擦りで色汚れが目立った。
C:3回の擦りで色汚れが目立った。
D:2回の擦りで色汚れが目立った。
E:1回の擦りで色汚れが目立った。
実施例22において、インク組成を下記の組成に代えたこと以外は、実施例22と同様にして、インクを調製すると共に、処理液を調製し、画像記録及び評価を行なった。評価結果は、下記表5に示す。
・マゼンタ顔料(C.I.ピグメント・レッド122) … 6.67%
・前記樹脂分散剤P−2 … 2.00%
・前記自己分散性樹脂粒子B−2 … 5.10%
・トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(TPGmME) … 2.00%
(和光純薬工業社製、水溶性有機溶剤)
・ジプロピレングリコール(DPG) … 2.00%
(和光純薬工業社製、水溶性有機溶剤)
・サンニックスGP250(三洋化成工業社製、水溶性有機溶剤) …10.00%
・2−ピロリドン(和光純薬工業社製、水溶性有機溶剤) … 2.00%
・尿素 … 5.00%
・コロイダルシリカ(スノーテックスXS、固形分濃度20%、体積平均粒子径5nm、日産化学工業(株)製)(固形分) … 0.06%
・オルフィンE1010(日信化学工業(株)製、界面活性剤) … 0.25%
・オルフィンE1020(日信化学工業(株)製、界面活性剤) … 1.00%
・PVP K15(和光純薬工業(株)製のポリビニルピロリドン) … 0.10%
・プロキセルXL2 … 0.30%
(AVECIA社製の1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン)
・消泡剤(BYK24) … 0.01%
・セロゾール524(固形分) … 2.00%
(中京油脂(株)製、カルナバワックス)
・イオン交換水 … 全体で100%となる量
実施例22において、インク組成を下記の組成に代えたこと以外は、実施例22と同様にして、インクを調製すると共に、処理液を調製し、画像記録及び評価を行なった。評価結果は、下記表5に示す。
・マゼンタ顔料(C.I.ピグメント・レッド122) … 6.67%
・前記樹脂分散剤P−2 … 2.00%
・前記自己分散性樹脂粒子B−2 … 5.10%
・トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(TPGmME) … 2.00%
(和光純薬工業社製、水溶性有機溶剤)
・ジプロピレングリコール(DPG) … 2.00%
(和光純薬工業社製、水溶性有機溶剤)
・サンニックスGP250(三洋化成工業社製、水溶性有機溶剤) …10.00%
・2−ピロリドン(和光純薬工業社製、水溶性有機溶剤) … 2.00%
・尿素 … 5.00%
・コロイダルシリカ(スノーテックスXS、固形分濃度20%、体積平均粒子径5nm、日産化学工業(株)製)(固形分) … 0.06%
・オルフィンE1010(日信化学工業(株)製、界面活性剤) … 0.25%
・オルフィンE1020(日信化学工業(株)製、界面活性剤) … 1.00%
・PVP K15(和光純薬工業(株)製のポリビニルピロリドン) … 0.10%
・プロキセルXL2 … 0.30%
(AVECIA社製の1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン)
・消泡剤(BYK24) … 0.01%
・セロゾール428(固形分) … 2.00%
(中京油脂(株)製のパラフィンワックス)
・イオン交換水 … 全体で100%となる量
12,102・・・吐出孔
13,103・・・撥液膜
100・・・インクジェットヘッド
Claims (13)
- 記録媒体上に、沖津法によって計算されたSP値が20.00MPa1/2以上である樹脂によってキナクリドン系顔料の表面の少なくとも一部が被覆されてなる樹脂被覆キナクリドン系顔料を含むインク組成物を、複数の吐出孔が二次元に配列され該吐出孔形成面にフッ素化合物を含む撥液膜が設けられたノズルプレートから吐出するインク吐出工程を有するインクジェット画像形成方法。
- 前記フッ素化合物がフッ化アルキル基を有する請求項1に記載のインクジェット画像形成方法。
- 前記撥液膜の沖津法によって計算されたSP値が、16.00MPa1/2以下である請求項1又は請求項2に記載のインクジェット画像形成方法。
- 前記樹脂が、沖津法によって計算されたSP値が19.40MPa1/2以上である(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を20質量%〜90質量%含む請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のインクジェット画像形成方法。
- 前記樹脂が、メチルメタクリレートに由来する構造単位、ベンジルメタクリレートに由来する構造単位、フェノキシエチルメタクリレートに由来する構造単位、ヒドロキシエチルメタクリレートに由来する構造単位、2−カルボキシエチルメタクリレートに由来する構造単位、N,N−ジメチルアミノエチルメタリレートに由来する構造単位、モルホリノエチルメタクリレートに由来する構造単位、テトラヒドロフルフリルメタクリレートに由来する構造単位、及び、グリシジルメタクリレートに由来する構造単位からなる群から選択される少なくとも1種を20質量%〜90質量%含む請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のインクジェット画像形成方法。
- 前記樹脂が、メチルメタクリレートに由来する構造単位、ベンジルメタクリレートに由来する構造単位、フェノキシエチルメタクリレートに由来する構造単位、ヒドロキシエチルメタクリレートに由来する構造単位、2−カルボキシエチルメタクリレートに由来する構造単位、N,N−ジメチルアミノエチルメタリレートに由来する構造単位、モルホリノエチルメタクリレートに由来する構造単位、テトラヒドロフルフリルメタクリレートに由来する構造単位、及び、グリシジルメタクリレートに由来する構造単位からなる群から選択される少なくとも1種を30質量%〜60質量%含む請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のインクジェット画像形成方法。
- 前記樹脂は、沖津法によって計算されたSP値が20.50MPa1/2以上である請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のインクジェット画像形成方法。
- 前記インク組成物の全量に対する前記キナクリドン系顔料の含有量が、4.0質量%以上である請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載のインクジェット画像形成方法。
- 前記キナクリドン系顔料が、C.I.ピグメント・レッド122を含む請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載のインクジェット画像形成方法。
- 前記インク組成物が、更に、自己分散性樹脂粒子を含む請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載のインクジェット画像形成方法。
- 更に、前記記録媒体上に、前記インク組成物と接触することで凝集体を形成可能な凝集剤を含む処理液を付与する処理液付与工程を有する請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載のインクジェット画像形成方法。
- 前記キナクリドン系顔料が、2種以上のキナクリドン系化合物を含むキナクリドン固溶体顔料を含有する請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載のインクジェット画像形成方法。
- 前記インク組成物は、更に、カルナバワックス、パラフィンワックス及びその誘導体、並びにこれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1種の難水溶性のワックス粒子を含む請求項1〜請求項12のいずれか1項に記載のインクジェット画像形成方法。
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