JP2013218202A - ホログラムラベル及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】
レリーフホログラムを用いたホログラムラベルにおいて、その真正性を高めるために、加熱処理をすると、ホログラム再生像に安定的な変化が生じる新規なホログラムラベルを提供する。
【解決手段】
ホログラム形成層上に、透明反射性薄膜層及び、サーモクロミック薄膜層を設け、加熱処理手段により所定の加熱処理を施す前後のホログラム再生像の再生方向及び色調変化を目視にて判定可能とし、その偽造防止性を高めたホログラムラベルとした。
【選択図】 図1

Description

本発明は、新規なホログラムラベル、特に、位相ホログラムを呈するレリーフホログラムのレリーフ位置に、サーモクロミック薄膜を配した変色型もしくは発色型のホログラムラベル及びその製造方法に関するものである。
以下、サーモクロミック薄膜層が、「ある色調」から「別の色調」へと変化することを「所定の加熱」(熱板プレスまたは赤外線照射等による加熱をいう。)による「変色」といい、「無色」乃至は「白色」の状態から「有色」の状態へ変化することを、「所定の加熱」による「発色」という。(もしくは、「変色」と「発色」を併せて、新たな「色」を呈するという意味において、「呈色」ともいう。)
例えば、自然光でサーモクロミック薄膜層を照明した場合には、その自然光の一部の波長域の光をサーモクロミック薄膜層が吸収し、吸収されなかった光がそのサーモクロミック薄膜層から発することとなり、その吸収されなかった光が持つ「色調」、または、呈する「色」が、そのサーモクロミック薄膜層の「色調」、または、呈する「色」として観察される。
すなわち、サーモクロミック薄膜層によって再生されるホログラム再生像は、そのサーモクロミック薄膜層の「色調」、または、「呈色した色調」を帯びた「光」で再生されることとなる。(「色調を帯びた光」、及び、「呈色した色調を帯びた光(呈色光)」を併せて、「色調光」ともいう。)
ここで、「透明反射性薄膜層」の「透明反射性」とは、可視光領域の光、すなわち、その波長が400nm〜800nmの光を部分的に反射し、且つ、部分的に透過することを意味し、少なくとも、その波長域にある光を10%以上透過する薄膜層を意味する。
このような「薄膜層」を設けることにより、本発明のホログラムラベルは、「反射型」、及び「透過型」のいずれのタイプのホログラム再生像も観察可能とすることもできる。
本明細書において、配合を示す「部」は質量基準である。また、「ホログラム」はホログラムと、回折格子などの光回折性機能を有するものも含む。
(主なる用途)
本発明のホログラムラベルの主なる用途としては、ホログラムそのものを装飾用として用いる美術または工芸品分野や商業用分野があるが、それにとどまらず、偽造防止分野に使用されるホログラムラベルであって、具体的には、クレジットカード等の偽造されて使用されると、カード保持者やカード会社等に損害を与え得るもの、運転免許証、社員証、会員証等の身分証明書、入学試験用の受験票、パスポート等、紙幣、商品券、ポイントカード、株券、証券、抽選券、馬券、預金通帳、乗車券、通行券、航空券、種々の催事の入場券、遊戯券、交通機関や公衆電話用のプリペイドカード等がある。
これらはいずれも、経済的、もしくは社会的な価値を有する情報を保持した情報記録体であり、偽造による損害を防止する目的で、記録体そのものの真正性を識別できる機能を有することが望まれる。
また、これら情報記録体以外であっても、高額商品、例えば、高級腕時計、高級皮革製品、貴金属製品、もしくは宝飾品等の、しばしば、高級ブランド品と言われるもの、または、それら高額商品の収納箱やケース等も偽造され得るものである。また、量産品でも有名ブランドのもの、例えば、オーディオ製品、電化製品等、または、それらに吊り下げられるタグも、偽造の対象となりやすい。
さらに、著作物である音楽ソフト、映像ソフト、コンピュータソフト、もしくはゲームソフト等が記録された記憶体、またはそれらのケース等も、やはり偽造の対象となり得る。また、プリンター用のトナー、用紙など、交換する備品を純正材料に限定している製品などにも、偽造による損害を防止する目的で、そのものの真正性を識別できる機能を有することが望まれる。
(背景技術)
従来、情報記録体や上記した種々の物品(総称して、真正性識別対象物と言う。)の偽造を防止する目的で、その構造の精密さから、製造上の困難性を有すると言われるホログラムを真正性の識別可能なものとして適用することが多く行なわれている。しかしながら、ホログラムの製造方法自体は知られており、その方法により精密な加工を施すことができることから、ホログラムが単に目視による判定だけのものであるときは、真正なホログラムと偽造されたホログラムとの区別は困難である。
これらの真正性識別対象物、特にラベル形態や転写形態にてホログラム画像を施された物品は、ホログラム画像の目視確認という真正性識別のみでなく、新たな真正性識別方法を用いてその対象物の真正性を識別する必要が生じている。
(先行技術)
これらの要求に応えるため、ホログラムに積層して、入射した光の内、左回り偏光もしくは、右回り偏光のいずれか一方の光のみを反射する光選択反射層を有するホログラムラベルが提案された。(例えば、特許文献1参照。)
この光選択反射層として、コレステリック液晶を使用し、偏光板等を用いて確認する方法で偽造防止性を高めている。
しかしながら、特許文献1の記載にあるように、ホログラム形成層上の反射性薄膜層の反射率が高いため、コレステリック液晶層で反射されず透過した光(選択的反射光の補色光)が、この反射性薄膜層で反射し、再びコレステリック液晶層へ戻る(以下戻り光とする)ことにより、この戻り光が、コレステリック液晶を観察する際のノイズ成分となって、選択的反射光に付加または混在し、液晶本来の色調とならず、識別したり、視認することすら難しくなっていた。
また、コレステリック液晶材料そのものが高価であり、その液晶性能を引き出すためには液晶層に接して、配向膜の形成が不可欠であって煩雑であり、さらには、コレステリック液晶の光散乱性により、ホログラム画像を再生する光がその液晶層を通過するときに画像にボケや歪みを生じる等の問題があった。
このため、コレステリック液晶層の光散乱性を抑えたり、コレステリック液晶層そのものを薄くする等の工夫が考えられたが、コレステリック液晶層の光散乱性を抑えるために屈折率差を小さくしたり、コレステリック液晶層を薄くしたりすると、上記した光選択反射層としての機能が低下してしまい、ホログラム画像の鮮明性と偽造防止性能を確保する最適な条件を得ることが難しいという欠点を有していた。
これらの問題を受け、本出願人は、透明基材の一方の面に、ホログラムレリーフを有する透明樹脂層、及び、そのホログラムレリーフに接するように蛍光層が設けられているホログラムラベルを提案している。(特許文献2参照。)
このホログラムラベルは、紫外線照射により、蛍光層が発光し、一時的に可視光線を発することで、この可視光線によって再生されるホログラムが、瞬間的に出現するものである。しかし、このホログラムラベルは、紫外線照射を止めるとその発光が無くなり、もはや、ホログラム再生像を視認することができなくなるものであって、鑑賞性に劣るとともに、紫外線を照射しつつ観察するため、紫外線の反射等による、観察者の眼に対する悪影響も懸念された。
特開2007−90538号公報 特開2011−95445号公報
そこで、本発明はこのような問題点を解消するためになされたものである。その目的は、位相ホログラムのホログラム形成層、すなわちホログラムレリーフを有する透明樹脂の上に設けられた透明反射性薄膜層に接するようにサーモクロミック薄膜層を設け、自然光の下では、その透明反射性薄膜層による反射光によりホログラム再生像を視認でき、一見、通常のホログラムラベルのように観察できるものの、所定の加熱条件下で、色調が変化したホログラムを視認することができ、もしくは、新たな色調からなるホログラムを視認することができる、新規なホログラムラベル、及び、より鮮明なホログラム再生像を得ることができる、その製造方法を提供することである。さらに、呈色後は、その加熱を止めても呈色した色調を維持していることから、新規な装飾性及び、これを応用する偽造防止性を提供することである。
上記の課題を解決するために、
本発明のホログラムラベルの第1の態様は、
透明基材の一方の面に、ホログラム画像に対応した回折格子群を含むホログラムレリーフを有する透明樹脂層、前記ホログラムレリーフを形成する凹凸上に設けられた透明反射性薄膜層、前記透明反射性薄膜層に追従して均一な厚さで設けられたサーモクロミック薄膜層、及び粘着層が、この順序で設けられていることを特徴とするものである。
上記第1の態様のホログラムラベルによれば、
透明基材の一方の面に、ホログラム画像に対応した回折格子群を含むホログラムレリーフを有する透明樹脂層、前記ホログラムレリーフを形成する凹凸上に設けられた透明反射性薄膜層、前記透明反射性薄膜層に追従して均一な厚さで設けられたサーモクロミック薄膜層、及び粘着層が、この順序で設けられていることを特徴とするホログラムラベルを提供することができ、高い意匠性と高度な偽造防止性を持つホログラムラベルを提供できる。
本発明のホログラムラベルの第2の態様は、
前記サーモクロミック薄膜層の厚さが、0.01μm以上1.0μm以下であることを特徴とするものである。
上記第2の態様のホログラムラベルによれば、
前記サーモクロミック薄膜層の厚さが、0.01μm以上1.0μm以下であることを特徴とする第1の態様のホログラムラベルを提供することができ、鮮明度が著しく高いホログラム再生像を出現可能な、ホログラムラベルを提供できる。
第3の態様は、第1または2の態様のホログラムラベルの製造方法であって、
前記透明基材上に、均一な厚さの透明な層を形成し、前記透明な層上に、透明反射性薄膜層及び、均一な厚さのサーモクロミック薄膜層を形成した後に、前記透明な層、前記透明反射性薄膜層及び前記サーモクロミック薄膜層を同時に変形させて、前記透明樹脂層のホログラムレリーフを形成することを特徴とするものである。
上記第3の態様のホログラムラベルの製造方法によれば、
前記透明基材上に、均一な厚さの透明な層を形成し、前記透明な層上に、透明反射性薄膜層及び、均一な厚さのサーモクロミック薄膜層を形成した後に、前記透明な層、前記透明反射性薄膜層及び前記サーモクロミック薄膜層を同時に変形させて、前記透明樹脂層のホログラムレリーフを形成することを特徴とする第1または第2のいずれかの態様のホログラムラベルを提供することができ、自然光下でのホログラム再生像がより鮮明な、ホログラムラベルを提供できる。
ホログラム画像を再生する回折格子群が、ホログラムレリーフとして、透明樹脂層面上に略一平面として形成されており、このホログラムレリーフの上に透明反射性薄膜層が設けられているが、この透明反射性薄膜層が非常に薄く、均一な厚さで形成されているため、この透明反射性薄膜層の透明樹脂層と接している面がホログラムレリーフ形状を有していることは当然のこと、接していない面もホログラムレリーフ形状と同一形状を有するものと看做すことができる。
従って、この透明反射性薄膜層上に追従して均一な厚さで設けられたサーモクロミック薄膜層も、その透明反射性薄膜層に接している面、及び、接していない面の両面とも、ホログラムレリーフ形状と同一形状を有するものと看做すことが可能である。
すなわち、ホログラムレリーフは、位相ホログラムとしての位相差を「レリーフ形状」に現しており、この位相差を有する「レリーフ形状」でサーモクロミック薄膜層が設けられることにより、サーモクロミック薄膜層の「色調光」が、上記位相差を有して(含んで)、サーモクロミック薄膜層から発し、これによって、ホログラム再生像が観察されることとなる。(観察されるホログラム再生像は、あたかも、サーモクロミック薄膜層の「色調光」を照明光として、その「レリーフ形状を持つ面(3次元曲面)」を照明し、その面で反射された際に出現するホログラム再生像を意味する。これを「色調光によるホログラム再生像」という。)
そして、透明反射性薄膜層も、当然に「レリーフ形状」を有している。
本発明のホログラムラベルを、例えば、自然光下で観察した場合には、まず、透明反射性薄膜層において、その自然光の一部分が反射され、この反射光によるホログラム再生像(以下、「反射光によるホログラム再生像」ともいう。)が出現する。
自然光の残りの部分は、透明反射性薄膜層を透過して(以下、透過光という。透明反射性薄膜層による光の吸収はここでは無視して説明する。)、サーモクロミック薄膜層に到達し、サーモクロミック薄膜層により、さらにその一部分が吸収され、サーモクロミック薄膜層の「色調光」にあたる部分(サーモクロミック薄膜層の「色調光」に該当する波長域内にある部分という意味。)が、サーモクロミック薄膜層から発することとなる。
すなわち、サーモクロミック薄膜層をその「透過光」で直接照明したときにサーモクロミック薄膜層から反射して出てくる光が、新たな「サーモクロミック薄膜層の色調光」となっている。
そして、この「サーモクロミック薄膜層の色調光」が、サーモクロミック薄膜層の「レリーフ形状」を有して(含んで)発することにより、その「サーモクロミック薄膜層の色調光」によるホログラム再生像を出現させる。(以下、「色調光によるホログラム再生像」ともいう。)
この「サーモクロミック薄膜層の色調光」は、サーモクロミック薄膜層から発した直後に再び透明反射性薄膜層を透過するが、いずれの光成分も同一の「位相差」を受ける(サーモクロミック薄膜層の厚さに相当する位相変化を受けることを意味する。その厚さが均一であるため、「同一」の位相変化となる。)こととなり、ホログラム再生像に対する歪み等を発生することはない。
また、このサーモクロミック薄膜層を「呈色」させる「所定の加熱」を施した場合には、この呈色した「色調光」に該当する波長域内にある部分がサーモクロミック薄膜層から発することとなり、同様に、「色調光によるホログラム再生像」を出現させる。
以下、このサーモクロミック薄膜層によるホログラム再生の原理につき解説する。
サーモクロミック薄膜層の「色調」を帯びた光、または、サーモクロミック薄膜層の「変色」もしくは「発色」によって生じた「呈色した色調」を帯びた呈色光は、いずれも、サーモクロミック薄膜層から発散する光であり、これらの光がレリーフホログラムを再生する場合に生じるホイヘンスの2次波に対応する。
光が進む状況は、その波面の形状、すなわち、平面波、球面波、さらには、それらが混在する包絡線により表すことができ、ホイヘンスは、ある時点で光がある波面形状を持っているときに、その光の波面上に多数の点光源(ホイヘンスは「波源」としている。)を無数に並べ、この点光源からそれぞれ新たな球面波が発し、それらの球面波が重なり合って、新たな包絡線を形成するとしたが、この点光源から発する波が、ホイヘンスの2次波と呼ばれている。
レリーフホログラムの再生時には、その「ホログラムレリーフ面」そのものが、上記したある時点での波面形状と位置づけられ、この「ホログラムレリーフ面」に無数の点光源を配し、その点光源から発する球面波が、互いに重なり合って、ホログラムを再生する光の波となる。
すなわち、本発明のホログラムラベルの場合において、この2次波に相当するものが、ホログラムレリーフ形状を有するものと見做されるサーモクロミック薄膜層の「色調光」であり、この「色調光」がその役目を担い、ホログラム画像に対応した回折格子群を含むホログラムレリーフが有する位相差を含んで、その「色調光」を観察者側に発するものである。
この「色調光」が、ホログラムレリーフ面上の空間において干渉現象を起こし、その結果、所定の方向に所定のホログラム再生像(「色調光によるホログラム再生像」)を発現する。
サーモクロミック薄膜層が、その色調を変化させる様子を、サーモクロミック分子ポテンシャル曲線(図1参照。)を用いて、以下に説明する。
サーモクロミック分子S1(光吸収波長λを有する。この波長が、紫外領域や、赤外領域の場合は、無色透明と観察される。)は、熱伝導、赤外線等の放射線照射、自発熱等によってエネルギーを得て、励起状態の分子S*になる。(STEP1)
このとき、励起状態となったサーモクロミック分子S*は分子内反応、例えば、固相反応、電子供与体ー受容体の電子授受、結晶転移、脱水、(結晶)構造変化にともなう化学変化等により、その分子の幾何構造や、電子構造を変化させる。
この変化によって、サーモクロミック分子S*は、サーモクロミック分子S1とは違った波長の光λ′(可視光領域の波長。可視光領域の吸収極大を有することを意味する。また、λとλ´が逆の場合は、発色→消色へと変化することになる。)を吸収するサーモクロミック分子S2 へと変化する。
そして、サーモクロミック分子S2 は、熱エネルギーを吸収(STEP3)して、再び、サーモクロミック分子S1 へと戻る。
そしてこのSTEP1〜STEP3を繰り返すことが可能であって、この性質をサーモクロミズム性と呼び、その性質を示す薄膜層を、サーモクロミック薄膜層と称する。
S1の方がS2よりも熱的に安定であり、常温でS1が主成分となり、高温下でS1が主成分となる。
△HをS2とS1のエンタルピー差とすれば、S1の存在量とS2の存在量の比は、
[S2]/[S1]=K×EXP(−△H1/RT) ・・・ (1)
と表される。(R:気体定数、T:温度)
この比の温度依存性が、S1のサーモクロミズム性の温度に対する感度である。この感度は、△H1に比例しており、△H1の大きいほど、感度が高く好ましい。例えば、常温でS1とS2の比が9/1である場合、100℃でこの比が逆転するためには、△H1=10kcal/mol(キロカロリー/1分子)である必要がある。この△H1が大きいことは、活性化エネルギー△H2の値を大きなものとし、S1からS2への変化速度を下げることになるが、本発明の用途においては、この速度が比較的緩慢であっても、意匠性や、偽造防止性に影響しないものであれば問題とならない。
また、応答速度反応定数k(平衡に達するまでの速度定数)は、
k={kS1+kS2×EXP(△H1/RT)}×EXP(−△H2/RT)
となり、活性化エネルギー△H2が高いと反応速度が遅く、また、△H1が高いと応答速度が早くなるものの、S2からS1への逆反応を早めるため、平衡時におけるS2の存在量を低くする。このようにサーモクロミズムは、熱力学パラメーター△H1及び△H2によって制御される。
しかし、いかにS1からS2への変化が大きくても、両者のスペクトル差(色差)が小さければ、サーモクロミズム性は小さい。
スペクトル差の程度は、上記したような化学変化量に比例せず、個々のスペクトル位置によっても異なる。
「色変化」という観点からは、「無色」から「有色」への変化が、「鮮明な変化」として捉えやすく好適である。「有色」から「別の有色」への変化は、必ずしも鮮明とはならないが、互いに補色の関係にあれば、むしろ「色差」発生の程度は大きいものとなる。
S1が「無色」で、S2が「有色」の場合を、「クロミズム性」と呼び、逆の場合、すなわち、S1が「有色」で、S2が「無色」の場合を、「逆クロミズム性」という。
本発明の場合は、「クロミズム性」を示す場合の方が、その意外性から、意匠性及び、偽造防止性に優れるものとなる。
従って、サーモクロミック薄膜層に用いられるサーモクロミック材料としては、温度変化による変色が明瞭で且つ変色温度幅が狭ければ使用できるが、意匠性においても、その意外性を高めるためには、又は、偽造防止の目的に使うためには、その変色温度や、変色レベルが高い精度で繰り返し可能であって、所定の温度で急激に変化するものが望ましい。
特に、常温(室温)では、無色であって、所定の加熱により発色するものが、より望ましく、消色段階は、意匠性を求めるものにおいては、しばらく発色を維持しているものが望ましく、偽造防止目的であれば、速やかに消色するものが望ましい。
すなわち、サーモクロミック薄膜層は、あるときはサーモクロミック分子S1で構成され、あるときは、サーモクロミック分子S2で構成されていることになる。
サーモクロミック分子S1もしくは、S2はそれぞれ特徴のある光吸収曲線を有しており、サーモクロミック分子S1は波長λにおいて、サーモクロミック分子S2は波長λ´において大きな吸収(曲線)部分を持つ。
一例として、サーモクロミック分子S1における波長λが、紫外線領域にある場合、サーモクロミック分子S1は、無色透明であって、励起状態S*を経て、サーモクロミック分子S2に変化して初めて、可視光領域にある特定の波長(これが波長λ´の場合もある。)を中心とする光の吸収により、特定の色調を呈するようになる。
この「色調を呈する」状況は、サーモクロミック分子S2が、可視光領域において所定の光吸収曲線を有しており、このサーモクロミック分子S2に自然光等の白色光を当てた際に、特定の波長を含む所定の波長領域の光を吸収し、吸収されなかった波長領域の光が発散光として、サーモクロミック分子Bからなるサーモクロミック薄膜層から発することになる。
この例によるホログラムラベルにおいては、サーモクロミック分子S2から発する発散光が、上記したホイヘンスの2次波の役割を担うことになる。
より具体的には、サーモクロミック薄膜層がサーモクロミック分子S1で構成され、且つ、サーモクロミック薄膜層が無色透明である場合には、その位置にホログラムがあるとは認識できず、そのサーモクロミック薄膜層の背景にあるものが見えているが、熱伝導等の手段で、サーモクロミック薄膜層を加熱して昇温させることにより、サーモクロミック薄膜層が呈色して、上記した波長領域の光を発散し、その発散光(呈色光)の干渉により、その発散光の「呈色した色調」によるホログラムが空中に浮かんで見えることになる。
実際には、この透明反射性薄膜層の背後に、透明反射性薄膜層の「レリーフ形状」に追従してサーモクロミック薄膜層が設けられているので、サーモクロミック薄膜層が無色透明のときには、「色調光によるホログラム再生像」は観察されず、透明反射性薄膜層から生じる「反射光によるホログラム再生像」のみが観察され、そのサーモクロミック薄膜層を加熱し昇温させて、サーモクロミック薄膜層が呈色しているときは、「色調光によるホログラム再生像」及び、「反射光によるホログラム再生像」の両方が観察されることとなる。
この「色調光によるホログラム再生像」は、サーモクロミック薄膜層が、上記した△H2と△H1との差が大きい場合には、その「色調」をしばらく維持し、徐々に消色し、また、サーモクロミック薄膜層が、上記した△H2と△H1との差が小さい場合には、比較的すみやかに「色調」が消色し、再び、無色透明となる。
また、サーモクロミック分子S1、S2がいずれも可視領域の色調を呈する場合には、ホログラム再生像の色調が変わる(「変色」)現象が現れることになる。
本発明のホログラムラベルのこのような効果を意匠性ととらえて、鑑賞用途に採用してもよい。
また、△H2と△H1との差が小さいものの中でも、その消色の速さを非常に早いものとして、加熱手段をはずすと同時に消色するように設計し、ホログラム真正性判定者が、ホログラムラベル(もしくはホログラムラベル貼着物、または、転写物)保持者から、そのホログラムラベルを預かり、素早く加熱手段を僅かな時間あてて、その瞬間に、上記した呈色光によるホログラム再生像を視認して、真正であることを確認し、その後、すみやかに、そのホログラムラベルを、その保持者に返却するなど、その真正性判定を、その保持者に気づかれずに行うことを可能とすることもできる。
この場合には、消色の速さを、発色強度(もしくは、発色濃度)の半減期で表現して、その半減期が、0.1秒〜数秒となるように設計する必要がある。こうすることで、加熱手段を当てると、速やかに上記した変化が生じ、サーモクロミック分子S2の「色調」のホログラム再生像が現れ、加熱を止める(机の上に押し当てる等の不自然に見えない冷却手段を併用してもよい。)と、速やかに無色透明となる、真正性判定に優れるホログラムラベルを提供することができる。
もちろん、加熱後、発色を確認し、速やかに、再度、熱を加えて消色するような判定システムを用いることも好適である。以上のことは、サーモクロミック分子S1、S2がいずれも可視領域の色調を呈する場合であっても、同様に用いることができる。
次に、ホログラフィの原理について説明する。
物体がコヒーレント光で照明され,物体から回折された光が記録媒体(フォトレジスト等。)を照明しているとした場合、物体から回折されて記録面に到達した波面を物体波は、
F(x,y)=A(x,y)EXP[φ(x,y)]
であらわされる。ここで、
A(x,y) は物体波の振幅分布とし、
φ(x,y) は位相分布とする。
このとき、記録媒体には、記録媒体に到達する光波の強度分布が記録される。その強度分布は、
I(x,y)=|F(x,y)|2=A2(x,y) (1)
となり、位相分布は記録されない。
ここで,物体波にこれと干渉性のある光波(参照波という)を重ね合わせると,記録される光波の強度分布は、
I(x,y)=|F(x,y)+R(x,y)|2
=|F(x,y)|2+|R(x,y)|2
+F(x,y)R*(x,y)+F*(x,y)R(x,y) (2)
となる.(*は複素共役項を表す。)
ただし,参照光が記録面に角度θで入射する平面波であるとすれば、
R(x,y)=r(x,y)EXP(2πiαx) (3)
と書け、
α = SIN(θ)/λ (4)
である。(2)の第1項と第2項はそれぞれ、物体波の強度と参照波の強度でいずれも位相情報は欠落している。第3項と第4項は干渉の項でそれぞれ
F(x,y)R*(x,y)=
A(x,y)r(x,y)EXP[i [φ(x,y)−2παx] ] (5)
F*(x,y)R(x,y)=
A(x,y)r(x,y)EXP[−i [φ(x,y)−2παx]] (6)
とあらわされ、物体の位相項 φ(x,y) が残っている。(5)、(6)は互いに複素共役であり、(4.2)の第3項は物体の複素振幅分布を含んでいる。(5)、(6)を(2)に代入すると、
I(x,y)=|F(x,y)|2+|R(x,y)|2
+2A(x,y)r(x,y)COS [2παx−φ(x,y)] (7)
となる.物体波と参照波が干渉して干渉縞を形成していることがわかる。
このように、物体波に参照波を重ね合わせて干渉記録し、 物体の位相情報を欠落させずに記録する方法がホログラフィである。(7)を記録したものが「ホログラム」と呼ばれる。ホログラムの振幅透過率もしくは振幅反射率が、記録した強度分布 I(x,y)
比例し、
T(x,y)=τI(x,y) (8)
とかけるとする。このホログラムに、記録したときに用いた参照波を所定の角度であてると、ホログラムを透過もしくは反射してきた波面は、
T(x,y)R(x,y)=τ(|F(x,y)|2+|R(x,y)|2
+τF(x,y)|R(x,y)|2
+τF*(x,y)R2(x,y) (9)
とあらわすことが出来る.この第2項は
τF(x,y)|R(x,y)|2
τA(x,y)r2(x,y)EXP[iφ(x,y)]] (10)
第3項は、
τF*(x,y)R2(x,y)=
τA(x,y)r2(x,y)EXP[−iφ(x,y)+2πiα] (11)
とかける。
このことから、(9)の第1項は、照明光と同じ方向にホログラムを突き抜ける光束もしくは正反射する光束であり、第2項は、(10)より、物体光に比例した振幅を持つ光波であることがわかり、第3項は、(11)より、物体波と共役な位相分布を持ち、2θの方向に伝播する光波であることがわかる。
このようにして、ホログラフィの技術を使うと複素振幅分布を記録して再生することができる。
本発明の場合は、ホログラムの振幅透過率もしくは振幅反射率が、記録した強度分布に比例し、(8)の式で表されてはいるものの、このホログラムに、記録したときに用いた参照波を所定の角度であてるのではなく、(8)の振幅透過率もしくは振幅反射率と同様の空間的な分布を持つ発光波がこのホログラムから発せられることになる。
従って、参照光にホログラムに記録された位相項を付与するという従来のホログラム再生の原理によらず、既にホログラムに記録されている位相項を保持して発光波を放射するものである。従って、理論上は、物体の位相差を含む空間関数を持つ3次元の連続曲面状の発光面を有し、その一曲面から光が放射されることになる。
従来のホログラム再生原理を透過タイプについて、単純化して説明すると、参照光としての平行光をホログラムにあてた際、遮蔽部分では、平行光が遮蔽され、透過部分からのみその平行光を透過し、透過部分と遮蔽部分との境界において回折が起こり、物体の持つ位相項を受け取り、ホログラムを透過した成分全体が重ね合わさり、それがホログラム再生光となって観察者の目に届くものである。
本発明の場合は、上記した参照光としての平行光が存在せず、透明反射性薄膜層に接するように設けられた発光面での発光時(サーモクロミック薄膜層自体が「色」を有することや、所定の加熱でサーモクロミック薄膜層が「発色」もしくは「変色」し「色」を呈することを、「色」を発散するという意味で「発光」と捉えることを意味する。ホログラム原理の説明をする場合においては、敢えてこの「発光」という言葉を使用する。)、その放射光が物体の位相項を保持しており、その放射光同士の干渉現象により、ホログラム再生がなされるものである。
時間的且つ空間的コヒーレンス性を持たない放射光同士の干渉効果は、レーザー光のような十分な干渉を生じないが、低コヒーレント光で ホログラムを照明した際と同様のレベルでホログラム再生が行われる。例示すれば、レーザー光のような特別な光源による照明を用いず、家庭や、職場事務所等の一般的な環境において用いられている「蛍光灯」のような、「人工的に発生させた自然光」によっても、ホログラムを再生させることが十分可能である。但し、「人工的に発生させた自然光」であっても、その光源の大きさが、「点光源」であるか、「線状」であるか、もしくは「平面状」であるかによっても、また、その発光波長が、「単色光」であるか否か、さらには、その発光曲線の半値幅が狭いか否か等によって、その「ホログラム再生像の鮮明さ」は大きく左右されることになる。
以上のような原理によるホログラム再生であるため、ホログラム撮影時の参照光は平行光であることが好ましく(複雑な参照光を再現できないため。)、もしくは、「回折格子により表現されたホログラム」(回折格子は、物体光、参照光とも平行光である。)であることが好ましく、さらに、回折格子は計算機ホログラム等、電子線描画により形成したものが精密であり、好適である。
また、上記の理由から、ホログラム再生像をより鮮明にするためには、放射光に、時間的若しくは空間的なコヒーレンス性に類する特性を付与することが必要であり、例えば、発光する層の厚さを薄いものとしたり、発光波長の幅を狭くすることが望ましい。
また、加熱する際、一つのホログラム画像を再生するホログラムの全体、すなわち、対応するサーモクロミック薄膜層全体を均一に加熱、そして、昇温させることが必要であり、温度分布を精度よく制御した加熱板(温度分布を±1度以内とする等。)や、強度の均一な赤外線照射を行うこと、さらには、観察時、その放射光をフィルタリングして発色光のみを取り出したり、さらにそれを増幅することも有効である。
これらの加熱により、ホログラムレリーフ面に接するように設けられたサーモクロミック薄膜層から、より厳密には、そのサーモクロミック薄膜層に含まれるサーモクロミック分子等から個々に、加熱前の波長とは異なる波長の発光等が発現する。その発光等が、ホログラムレリーフと同一の空間的位相を含み、且つ、加熱前とは異なる波長(発光波長。)を有することから、ホログラムレリーフによる加熱前の回折方向とは異なる方向、すなわち、新たな発光波長による回折方向へホログラム像の再生が行われる。(回折方向とは、ホログラム再生像が再生される方向であり、再生方向ともいう。)
但し、このサーモクロミック薄膜層の厚さが、ホログラムレリーフとは無関係にそのホログラム面上に分布している場合には、その厚さ分布に起因する発光強度分布が、場合によっては、ホログラムを再生する光と不要な干渉を生じ、ホログラム再生像を不鮮明にする要因となり得る。
この要因を排除するため、サーモクロミック薄膜層を、ホログラムレリーフを形成する凹凸、すなわち、「レリーフ形状」に追従して均一な厚さで形成して、「レリーフ形状」のどの位置からも、同一の強度の発光が生じるようにし、ホログラム再生像の鮮明化を図る。
「ホログラムレリーフへ追従して、かつ、均一な厚さで形成する」とは、光が放出される「発光層」と位置づけられる「サーモクロミック薄膜層」の膜厚さが、より薄く、且つ、より均一であることが要求されることを意味する。
すなわち、透明反射性薄膜層と、「発光層」であるサーモクロミック薄膜層との界面である「発光面」の形状はもちろんのこと、その「発光層」の透明反射性薄膜層とは反対側の「面」の形状も、そのホログラムレリーフのレリーフ形状と同一乃至はほぼ同一となることが重要である。(この「発光面」とその「面」との間に、サーモクロミック薄膜層が存在している。)
ここで、ほぼ同一とは、「レリーフ形状」の凹凸の再現性(その二つの「面」の同一性を意味する。)が、90%以上、さらには、95%以上であることが望ましい。
これは、一つの凹凸の再現性であると同時に、ホログラムを再生する領域全体の再現性を示す指標である。
この再現性は、例えば、2つの3次元曲線の比較において、元の3次元曲線の凹凸領域の体積に対して、もう一つの3次元曲線との差分領域の体積が、その10%以内、さらには、5%以内にあることを意味する。これは、一つの凹凸の再現性であると同時に、ホログラムを再生する領域全体の再現性を示す指標である。簡易的な評価として、レリーフ断面同士を2次曲線で比較する方法を用いることも好適である。
本発明のホログラムラベルの加熱手段として、透明な発熱板を使用したり、紫外光や赤外光を使用した場合は、その板や光は観察者には見えず、あたかも(本来なら必要な)照明光のないところからホログラム再生像が浮き上がっているように観察されるが、このホログラム再生像は、昇温して呈色するというプロセスを経て発光するものであるため、その発光時の空間的なホログラムの位相を含んではいるとはいえ、その色調光同士の時間的及び空間的なコヒーレント性は小さく、ホログラム再生像は通常のレーザー再生レリーフホログラムのレーザー光による再生像より微弱であって且つ不鮮明となっている。
もちろん、ビーム形状の回折光を観察するのみであれば、その色調と回折方向を確認することは容易であり、そのままでも真正性の判定に差し支えないが、この微弱且つ不鮮明なホログラム再生像を観察者が認識しその存在を正確に判定可能とするために、サーモクロミック薄膜層の呈色性能を向上させ、且つ、回折角度を大きくとって波長―回折角依存性を強め、さらには、サーモクロミック薄膜層を薄くして、サーモクロミック薄膜層厚さ方向のばらつきを抑え且つ均一なものとすることが必要となる。(発光面が位相情報を含んでいるため、その空間的な形状を正確に再現するものとする。)
また、サーモクロミック薄膜層の色調光は、可視光領域にある「特定の吸収波長」を除くその「短波長側の領域の発光」と「長波長側の領域の発光」という二つの光(領域)の加色混合となることが多く、このことによるコヒーレント性の低下を招きやすい。このため、例えば、500nmに大きな吸収を有するサーモクロミック分子S2の場合には、「青色発光」と、「赤色発光」の加色混合により、通常なら「ピンク色の発光」色調となるところ、実際には、「青色発光」と「赤色発光」それぞれのホログラム再生像を再生し、それらが干渉して、ホログラム再生像の鮮明さを低下させるものである。
この現象を回避するためには、「特定の吸収波長」の波長幅の比較的大きいもの、そして、500nm以下の領域と、500nmを越える領域の2つの領域にその吸収領域を持つことで、「発光波長」が、500nm付近にあって、且つその半値巾の狭い(50nm以下。)「発光」を実現し、より鮮明なホログラム再生像を得ることも好適である。
さらに、時間的なコヒーレント性を発現させるため、サーモクロミック薄膜層の昇温と、冷却のサイクルを0.1秒〜1秒程度に高速変化させることも好適である。
これは、サーモクロミック薄膜層の「色が変化する温度」(サーモクロミズム温度。Tc温度ともいう。)を常温より高いものに設定し、赤外線ヒーター等による赤外線照射で、速やかに、Tc温度より高い温度まで薄膜層を昇温し、その赤外線照射を止めた後、速やかに冷却が進む(常温とTcの温度差が大きいほど、その冷却速度は速くなる。例えば、その差を20〜50度とする。冷却速度を確保するためには、20℃以上の差が必要であるし、その差が50℃を超えると、昇温に時間を要することとなる。)ようにし、薄膜層温度がTcより低くなった時点で、再び赤外線を照射して、薄膜層温度をTcより高いものとする、などの手法を用いることで達成できる。
これにより、一つの発光の発光面が、次の発光によって生じた発光面とは、互いに撹乱現象を起こさず、一つの発光面によって生じるホログラフィックな干渉現象により、鮮明なホログラム再生像を観察することができるようになる。このようにストロボ状の再生画像であっても、観察者には、連続して発光(再生)しているようにも見えるため、このような簡易な手段であっても目視で確認する場合には、鮮明なホログラム再生像を観察することができる。
サーモクロミック薄膜層は、サーモクロミック分子を樹脂に混入させたり、溶剤(若しくは水)に分散させたりしたサーモクロミック分子含有インキを、グラビア方式、オフセット方式、シルクスクリーン方式、ノズルコート方式さらにはインクジェット方式等でホログラムレリーフ上に形成することができる。
このとき、インキ中のサーモクロミック分子の含有割合を調整する等により、形成したサーモクロミック薄膜層を、ホログラムレリーフを形成する凹凸に追従して均一な厚さで形成することができる。
ホログラムレリーフの凹凸は例えれば、1μmレベルの周期で、深さ0.01μmレベルの凹凸を持つ、ゆるやかな曲線であって略平面と見做せるため、この略平面上に適宜な粘度(0.1〜10パスカル・秒)に調整し、インキの自重によるレベリング効果を発揮させることと、インキ中の固形分を10%以下、さらには5%以下とすることで、例えば、厚さ1μmに対して、そのばらつきを1/10以下に、さらには1/20以下に抑えることができる。
ここで、サーモクロミック薄膜層を均一な1μmオーダーの層としたが、ホログラム再生像の鮮明度を向上させるためには、サーモクロミック薄膜層を離散的に設けることも好ましく、このために、サーモクロミック薄膜層を形成する領域(面積方向の広がりを持つ領域を意味する。)の単位(サイズ)を1.0μm程度もしくはそれ以下、例えば0.01μm〜0.5μm、より好適には、0.01〜0.05μmとし、ホログラムレリーフ面内に均一に点在させることも好適である。そして、サーモクロミック薄膜層厚さ方向には、サーモクロミック分子、もしくは、サーモクロミック分子を吸着させた微粒子を単位として1〜10分子もしくは1〜10粒子で並んでいる状態とすることが好ましい。
中でも、ノズルコート方式やインクジェット方式、さらには、化学蒸着等の物理的蒸着法では、樹脂を使用せず溶剤等とサーモクロミック分子や粒子のみで薄膜を形成可能であり、サーモクロミック薄膜層として非常に薄く形成(サーモクロミック分子や粒子1〜10分子等。)することができるため好適である。その上にそれらのサーモクロミック薄膜を固定するために適宜な透明樹脂層を保護層として形成してもよい。
ところで、サーモクロミック材料は、ホログラム記録材料や、光メモリ用記録材料そのものとして用いることは可能であり、そのような用途は既に公知であるが、これらは、サーモクロミック材料に直接ホログラフィックな記録(干渉縞の記録)を行うものであって、サーモクロミック材料に微細な明暗の記録を行うものである。
この記録は、記録した領域のサーモクロミック分子に変化を与えない手法(変化を与えない程度に光を照射するなど。)を用いて、読み出されることになる。
これに対して、本発明のホログラムラベルは、均一に形成したサーモクロミック薄膜層を全て同様に(均一に)加熱し、均一な発色を生じさせるだけのものであって、ホログラム撮影光学系を組んでサーモクロミック薄膜層を露光するというような複雑な工程を必要とせず、サーモクロミック薄膜層そのものが「その形状として保有」している凹凸形状に、そのホログラム情報を担持させており、サーモクロミック薄膜層を均一に形成するだけでホログラム情報を「取得する」(「ホログラム再生情報」を「獲得する」という意味。)ことができるという顕著な効果を有するものである。
ホログラムレリーフは、周期1μm程度で、深さは、0.01μm、最大でも0.5μmの凹凸形状をしており、透明反射性薄膜層のレリーフ形状もこれと同等であって、この透明反射性薄膜層の凹部にのみサーモクロミック薄膜層を設けることで、ホログラムレリーフの周期に同調する形で、サーモクロミック薄膜層の有無、すなわち、発光の有無を設けることができる。
透明反射性薄膜層の凹部とは、透明反射性薄膜層上にサーモクロミック薄膜層を形成する際の凹部であって、通常の観察の仕方、すなわち、ホログラム形成層側から観察する場合には、凸部側となる。サーモクロミック薄膜層の有無を利用して発光強度分布を形成するためには、凹凸どちらかに部分的に形成すればよく、さらには、凹部全体をサーモクロミック薄膜層で埋めてもよく、もしくは、凹部の底の部分のほんの一部のみに形成してもよい。但し、その位相分布と形成する分布が同調する必要があるため、一部に形成する場合は、常に同一の位置に同一のサーモクロミック薄膜層の「量」を持って形成しなければならない。(この「量」が、発光強度に比例するため。)
凹部に選択的にサーモクロミック薄膜層を形成する方法としては、溶剤等に分散した粒径の非常に小さい、サーモクロミック分子を含むか、その表面に吸着させた微粒子(粒径が0.01μm等。樹脂を含まない。)インキを使用して、レリーフ形状の上にインキ層を形成し、溶剤が揮発する間に、微粒子が自重で凸部から凹部へと移動するようにしても良い。
また、規則的な回折格子を設け、その上に均一に設けたサーモクロミック薄膜層をフォトリソグラフィーを用いて、その規則的な回折格子に同調させて露光現像、エッチングすることにより、凹凸とサーモクロミック薄膜層を同調して設けることもできる。この方法によると、各凹部に点在するサーモクロミック薄膜層の厚さや大きさを制御可能であり、レリーフ面全体に、いわば”均一に”形成することができる。
以上の手法により形成したものは、上記のホログラムの原理において説明した、発光(放射光)にホログラムレリーフの位相情報を含ませること、に加え、その位相情報に同調した振幅情報をさらに含ませるものである。
従って、発光放射光に位相ホログラムと振幅ホログラムの両方のホログラム情報を含ませることができ、より鮮明なホログラムを得ることが可能となる。
これにより、その意匠性及び真正性判定性を向上することができる。
上記したホログラムの原理より、ホログラム再生像の鮮明度を高めるためには、サーモクロミック薄膜層の厚さは薄いことが望ましいが、薄くすればするほど、ホログラム再生時の発光強度が弱くなるため、サーモクロミック薄膜層厚さは、0.003μm以上1.0μm以下である必要があり、さらには、0.01μm以上0.1μm以下であることが好ましい。
0.003μm未満(最小粒径の粒子1個分)では、発光強度が弱すぎて、光電子倍増管を用いて増幅したとしても、迷光等のノイズとの区別がつきにくい。また、1.0μmを超えると、発光強度は本発明の目的には十分な強度を得ることが可能であるが、厚さ方向に複数存在する粒子からの発光により、ホログラムレリーフの位相情報を担う曲面の位置がその厚み方向に複数存在することになり、結果としてホログラム再生像が不鮮明となる。
これに対して、0.01μm以上として発光強度を確保し、0.1μm以下として、位相情報を担う曲面の位置を明確にして、ホログラム再生像を鮮明なものとする。
また、サーモクロミック薄膜層の厚さが厚くなることは、サーモクロミック薄膜層の「透明反射性薄膜層と接していない側」の「レリーフ形状」と、透明反射性薄膜層の「レリーフ形状」、さらには、ホログラムレリーフを有する透明樹脂層上に設けられている「ホログラムレリーフ」の「レリーフ形状」との間に、「ズレ」が発生する要因ともなる。
この「ズレ」は、「レリーフ形状」の深さ方向に発生し易く、サーモクロミック薄膜層の厚さが厚くなればなる程、その「ズレの大きさ」が大きくなる。
ホログラムレリーフにおける「深さ方向のズレ」は、ホログラム再生像の「明るさ」に強く影響し、ホログラムレリーフの深さが「最適深さ(最も明るいホログラム再生像を再生し得る深さを意味する。)」より一様に浅くなっても、また、一様に深くなっても、その「明るさ」が低下することとなる。
この「ズレ」を最小限に抑えるために、まず、透明基材上に、「均一な厚さの透明な層」を形成し、その透明な層の上に、透明反射性薄膜層及び、「均一な厚さのサーモクロミック薄膜層」を形成する。
このとき、透明基材として、表面平滑性の高いもの(例えば、その表面粗さ:Raが0.01μm以下。)を用いて、その表面上に、透明な樹脂材料を用いて、1μm〜10μmで形成し、その厚さ精度を±1%以内とした「均一な厚さの透明な層」を設け、その上に、厚さを高精度に制御した透明反射性薄膜層を設け、さらにその上に、サーモクロミック薄膜層を0.003μm〜1.0μmで形成し、その厚さ精度を±5%以内とした「均一な厚さのサーモクロミック薄膜層」を設ける。
この「均一な厚さの透明な層」のサーモクロミック薄膜層と接している平面が、下記する変形により、「ホログラムレリーフ」の「レリーフ形状」とされ、厚さを高精度に制御した透明反射性薄膜層そのものが「レリーフ形状」を有することとなり、さらに、「均一な厚さの透明な層」が、「ホログラム画像に対応した回折格子群を含むホログラムレリーフを有する透明樹脂層」となる。通常は、その透明樹脂層の厚さは、1μm〜30μmの厚さで形成するところ、より均一な厚さを実現すべく、より薄く形成する。
このような「均一さ」は、スピンコーティング方式等の精密コーティング方式により得ることができ、また、使用するインキ組成において、インキ中の固形分を0.5%〜5.0%と低く設定し、インキ塗布後に緩やかな乾燥を行うことで、その乾燥前の塗膜の厚さムラを1/20〜1/200の大きさとする手法を用いることもできる。
例えば、3μm厚さの透明な樹脂層を、その厚さ精度±1%、すなわち、±0.03μm以下の厚さムラで設け、その上に、厚さ精度±1%の透明反射性薄膜層で設け、さらに、その上に、1.0μm厚さのサーモクロミック薄膜層を、その厚さ精度±5%、すなわち、±0.05μm以下の厚さムラで設けて、「透明基材」上に、「均一な厚さの透明な層」と、「高精度に厚さを制御した透明反射性薄膜層」、及び、「均一な厚さのサーモクロミック薄膜層」を重ねて形成する。
この均一な3層に対して、そのサーモクロミック薄膜層の最表面上に、あらかじめホログラムレリーフを設けてある原版(プレス型。)を押し当て、適宜な加熱と加圧を加えて、その均一な2層を変形させ、「均一な厚さの透明な層」においては、「高精度に厚さを制御した透明反射性薄膜層」と接している面側のみを、そして、「高精度に厚さを制御した透明反射性薄膜層」や「均一な厚さのサーモクロミック薄膜層」においては、「薄膜層」そのものを、「レリーフ形状」とする。
これにより、「均一な厚さの透明な層」と「高精度に厚さを制御した透明反射性薄膜層」の界面、「高精度に厚さを制御した透明反射性薄膜層」と「均一な厚さのサーモクロミック薄膜層」の界面、及び、「均一な厚さのサーモクロミック薄膜層」の最表面に形成される「レリーフ形状」が、あらかじめ金型に設けていた「ホログラムレリーフ」と高い精度で同一となる。
この結果、透明反射性薄膜層によって反射する光は、非常に鮮明なホログラム再生像を再生し、サーモクロミック薄膜層により再生されるホログラム再生像もまた非常に鮮明なものとなる。
その透明反射性薄膜層は、蒸着や、CVD(化学蒸着法)などの真空薄膜法などにより、厚さ100nm〜2000nmで設けることができる。
さらに、適宜な基材上に、適宜な剥離層を設け、その上に、ホログラムレリーフを有する透明樹脂層、透明反射性薄膜層、サーモクロミック薄膜層、及び、適宜な接着剤層を設けた、「転写箔」として用いることも好適である。
本発明のホログラムラベルによれば、
透明基材の一方の面に、ホログラム画像に対応した回折格子群を含むホログラムレリーフを有する透明樹脂層、前記ホログラムレリーフを形成する凹凸上に設けられた透明反射性薄膜層、前記透明反射性薄膜層に追従して均一な厚さで設けられたサーモクロミック薄膜層、及び粘着層が、この順序で設けられていることを特徴とするホログラムラベルが提供され、自然光の下では、その透明反射性薄膜層による反射光によりホログラム再生像を視認でき、一見、通常のホログラムラベルのように観察できるものの、所定の加熱条件下で、色調が変化したホログラムを視認することができ、もしくは、新たな色調からなるホログラムを視認することができる、新規なホログラムラベルが提供される。
また、本発明のホログラムラベルの製造方法によれば、非常に鮮明なホログラム再生像を再生するホログラムラベルを提供することができる。
サーモクロミック分子ポテンシャル曲線を説明する図である。 本発明の一実施例を示すホログラムラベルAの断面図である。 本発明の一実施例を判定するプロセスである。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら、詳細に説明する。
(透明基材)本発明のホログラムラベルAで使用される透明基材1は、厚みを薄くすることが可能であって、機械的強度や、ホログラムラベルAを製造する際の加工に耐える耐溶剤性および耐熱性を有するものが好ましい。使用目的にもよるので、限定されるものではないが、フィルム状もしくはシート状のプラスチックが好ましい。(図2参照。)
例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリスルホン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリレート、トリアセチルセルロース(TAC)、ジアセチルセルロース、ポリエチレン/ビニルアルコール等の各種のプラスチックフィルムを例示することができる。
その中でも、紫外線等の励起光に対する耐性を有するもの、例えば、紫外線吸収剤を含むものであってもよい。紫外線吸収剤を含むものは、自然光等の中に含まれる紫外線により微かではあるが、予定外のホログラム再生を防ぐ効果も有する。
透明基材1の厚さは、通常5〜100μmであるが、ホログラム再生像の視認性を配慮する場合には、5〜50μm、特に5〜25μmとすることが望ましい。
但し、サーモクロミック薄膜層4を加熱板等による熱伝導方式によって加熱する場合には、熱伝導性の高いものを使用し、且つ、その厚さも薄い方が好ましく、5〜50μmとする。そして、加熱板を外した際には、速やかに放熱し、常温に戻るものを用いることが、その偽造防止性から、望ましい。
(ホログラム画像に対応した回折格子群を含むホログラムレリーフを有する透明樹脂層:以下、ホログラム形成層ともいう。)
本発明のホログラム画像に対応した回折格子群を含むホログラムレリーフを有する透明樹脂層2(ホログラム形成層2)を構成するための透明な樹脂材料としては、各種の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、もしくは電離放射線硬化性樹脂を用いることができる。(図2参照。)
熱可塑性樹脂としてはアクリル酸エステル樹脂、アクリルアミド樹脂、ニトロセルロース樹脂、もしくはポリスチレン樹脂等が、また、熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、アクリルウレタン樹脂、エポキシ変性アクリル樹脂、エポキシ変性不飽和ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、もしくはフェノール樹脂等が挙げられる。
これらの熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂は、1種もしくは2種以上を使用することができる。これらの樹脂の1種もしくは2種以上は、各種イソシアネート樹脂を用いて架橋させてもよいし、あるいは、各種の硬化触媒、例えば、ナフテン酸コバルト、もしくはナフテン酸亜鉛等の金属石鹸を配合するか、または、熱もしくは紫外線で重合を開始させるためのベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド等の過酸化物、ベンゾフェノン、アセトフェノン、アントラキノン、ナフトキノン、アゾビスイソブチロニトリル、もしくはジフェニルスルフィド等を配合しても良い。
また、電離放射線硬化性樹脂としては、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、アクリル変性ポリエステル等を挙げることができ、このような電離放射線硬化性樹脂に架橋構造を導入するか、もしくは粘度を調整する目的で、単官能モノマーもしくは多官能モノマー、またはオリゴマー等を配合して用いてもよい。
上記の樹脂材料を用いてホログラム形成層2を形成するには、感光性樹脂材料にホログラムの干渉露光を行なって現像することによって直接的に形成することもできるが、予め作成したレリーフホログラムもしくはその複製物、またはそれらのメッキ型等を複製用型として用い、その型面を上記の樹脂材料の層に押し付けることにより、賦型を行なうのがよい。
熱硬化性樹脂や電離放射線硬化性樹脂を用いる場合には、型面に未硬化の樹脂を密着させたまま、加熱もしくは電離放射線照射により、硬化を行わせ、硬化後に剥離することによって、硬化した透明な樹脂材料からなる層の片面にレリーフホログラムの微細凹凸を形成することができる。なお、同様な方法によりパターン状に形成して模様状とした回折格子を有する回折格子形成層も光回折構造として使用できる。
ホログラム形成層2の厚さは、1μm〜30μm、特には、3μm〜10μmとする。
この厚さが、1μm未満では、「レリーフ形状」を形成し難く、30μmを超えると、ホログラムラベルの処理工程や使用環境等による、ホログラム形成層2の熱膨張や、熱変形による「レリーフ形状」の劣化が起こり易くなる。そして、ホログラム形成層2の厚さが、3μm〜10μmであると、その処理工程中や使用の際の取扱い適性に優れる上、その均一性を向上させることができる。
レリーフホログラムは物体光と参照光との光の干渉による干渉縞を凹凸のレリーフ形状で記録されたもので、例えば、フレネルホログラムなどのレーザ再生ホログラム、及びレインボーホログラムなどの白色光再生ホログラム、さらに、それらの原理を利用したカラーホログラム、コンピュータジェネレーティッドホログラム(CGH)、ホログラフィック回折格子などがある。また、マシンリーダブルホログラムのように、その再生光を受光部でデータに変換し所定の情報として伝達したり、真偽判定を行うものであってもよい。
微細な凹凸を精密に作成するため、光学的な方法だけでなく、電子線描画装置を用いて、精密に設計されたレリーフ構造を作り出し、より精密で複雑な再生光を作り出すものであってもよい。このレリーフ形状は、ホログラムを再現もしくは再生する光もしくは光源の波長(域)と、再現もしくは再生する方向、及び強度によってその凹凸のピッチや、深さ、もしくは特定の周期的形状が設計される。凹凸のピッチ(周期)は再現もしくは再生角度に依存するが、通常0.1μm〜数μmであり、凹凸の深さは、再現もしくは再生強度に大きな影響を与える要素であるが、通常0.1μm〜1μmである。
単一回折格子のように、全く同一形状の凹凸の繰り返しであるものは、隣り合う凹凸が同じ形状であればある程、反射する光の干渉度合いが増しその強度が強くなり、最大値へと収束する。回折方向のぶれも最小となる。立体像のように、画像の個々の点が焦点に収束するものは、その焦点への収束精度が向上し、再現もしくは再生画像が鮮明となる。
レリーフ形状を賦形(複製ともいう。)する方法は、回折格子や干渉縞が凹凸の形で記録された原版をプレス型(スタンパという)として用い、上記ホログラム形成層2上に、もしくは、下記するサーモクロミック薄膜層4上に、その原版を重ね、加熱ロールなどの適宜手段により、両者を加熱圧着することにより、原版の凹凸模様を複製することができる。形成するホログラムパターン(一つのホログラム再生像を発現するホログラムレリーフを、一つのホログラムパターンという。)は、単独でも、複数でもよい。また、ホログラムレリーフを形成する領域の形も、単独領域としても、複数領域としてもよい。
上記の極微細な形状を精密に再現するため、また、複製後の熱収縮などの歪みや変形を最小とするため、原版は金属を使用し、低温、且つ、高圧下で複製を行う。
原版は、Niなどの硬度の高い金属を用いる。光学的撮影もしくは、電子線描画などにより形成したガラスマスターなどの表面にCr、Ni薄膜を真空蒸着法、スパッタリングなどにより5〜50nm形成後、Niなどを電着法(電気めっき、無電解めっき、さらには複合めっきなど)により50〜1000μm形成した後、金属を剥離することで作ることができる。
高圧回転式の複製に用いるためには、このNi層の厚み精度を高くする必要があり、通常±10μm、好ましくは、±1μmとする。このため、裏面の研磨や、平坦化方法を用いてもよい。
複製方式は、高圧とするため、平板式でなく、回転式を用い、線圧0.1トン/m〜10トン/m、好ましくは、5トン/m以上とする。複製用シリンダーは、その直径が小さいとレリーフの再現性が低下するため、複製シリンダー直径は大きい方が好ましく、通常、直径0.1m〜2.0m、好ましくは、1.0m以上の弧を使用する。
透明基材1上のホログラム形成層2をこの複製用シリンダーに沿って押し当て、裏面より金属製シリンダーにより上記圧力にて複製を実施する。複製後の熱収縮などの歪みや変形を最小限とするためには、透明基材1全体を加熱するのではなく、ホログラム形成層2面側の一部のみを加熱する方法が望ましい。通常60℃〜110℃に加熱する。さらには、裏面の金属製シリンダーを常温に保つ、もしくは冷却することで、さらにその精度を向上させることができる。
そして、上記した、ホログラムレリーフ形状を賦形(複製)する方法を用いて、あらかじめ、透明基材1上に、「均一な厚さの透明な層」(図示せず。この「透明な層」が本発明のホログラムラベルAのホログラム形成層2となる。)を形成し、その「透明な層」の上に、透明反射性薄膜層及び、「均一な厚さのサーモクロミック薄膜層」(図示せず。このサーモクロミック薄膜層が本発明のホログラムラベルAのサーモクロミック薄膜層4となる。)を形成したものの、その「均一な厚さのサーモクロミック薄膜層」上から、上記した原版を重ねて加熱ロールなどの適宜手段により、加熱、加圧することにより、原版の凹凸模様を、「均一な厚さの透明な層」に設けてホログラム形成層2とし、「均一な厚さのサーモクロミック薄膜層」に設けてサーモクロミック薄膜層4とすることで、「反射光によるホログラム再生像」及び、「色調光によるホログラム再生像」のいずれをも著しく鮮明にすることができる。
この際、透明基材1は、耐熱性や、耐圧力性が高く、この加熱、加圧によっては、何らの変形も受けない。
(透明反射性薄膜層)
ホログラム形成層2の上に透明反射性薄膜層3を形成する。(図2参照。)
本発明のホログラムラベルAでは、ホログラム形成層2の上に形成されているホログラムレリーフに接して、且つ、追従するように透明反射性薄膜層3を形成する。この透明反射性薄膜層3は、入射した光を反射する必要があるため、ホログラム形成層2よりも高い屈折率を有する透明な薄膜であれば、特に限定されない。
透明反射性薄膜層3としては、真空薄膜法などにより形成される非常に薄く透明性が発現した金属薄膜層、または、金属化合物薄膜層のいずれでもよいが、その透明性により、その背後にあるサーモクロミック薄膜層からのホログラム再生像を観察することができ、また、「ラベル」や「転写箔」として貼着もしくは転写後にその「ラベル」や「転写層」に覆われた被貼着体や被転写体上の画像などがホログラムを通して観察できるので好ましい。
具体的には、ほぼ無色透明な色相で、その光学的な屈折率がホログラム形成層2や、サーモクロミック薄膜層4のそれとは異なることにより、金属光沢が無いにもかかわらず、ホログラムなどの光輝性を視認できるものを用いることができる。
例えば、ホログラム形成層2や、サーモクロミック薄膜層4よりも光屈折率の高い薄膜には、例として、ZnS、TiO2、Al23、Sb23、SiO、SnO2、ITOなどがある。
好ましくは、金属酸化物又は窒化物であり、具体的には、Be、Mg、Ca、Cr、Mn、Cu、Ag、Al、Sn、In、Te、Ti、Fe、Co、Zn、Ge、Pb、Cd、Bi、Se、Ga、Rb、Sb、Pb、Ni、Sr、Ba、La、Ce、Auなどの酸化物もしくは窒化物他、または、それらを2種以上を混合したものなど(透明金属化合物)が例示できる。
またアルミニウムなどの一般的な光反射性(可視光波長のほぼ全域にわたる反射、すなわち、「全反射」に近い性質を有する。)の金属薄膜も、厚みが100nm以下になると、透明性が出てくるため、その厚さが10nm〜50nmの範囲で使用できる。
透明金属化合物を用いた透明反射性薄膜層3の形成には、透明金属化合物の蒸発温度が、金属よりも高いことから、高温加熱を要するものの、その厚さは、10〜2000nm程度、好ましくは20〜1000nmの厚さになるように、電子線加熱方式の蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、CVD(化学蒸着法)などの真空薄膜法などを用いて設けることができる。特に、形成する薄膜層を薄くしておくと、その熱的ダメージを少なくすることができる。
このホログラムラベルAに、蛍光灯等の照明光6を照射すると、その透明反射性薄膜層3による反射光によってホログラム再生像8(例えば、レインボーホログラム。)を視認することができる。
(サーモクロミック薄膜層)
本発明では、透明反射性薄膜層3の上に、サーモクロミック薄膜層4を形成する。(図2参照。)
透明反射性薄膜層3は、上記したように、非常に薄い層であって、且つ、ホログラム形成層2のホログラムレリーフに追従するように設けられているため、透明反射性薄膜層3のホログラム形成層2と反対の面(透明反射性薄膜層3形成時の露出面を意味する。)の形状は、ホログラム形成層2のホログラムレリーフと同一の形状(「レリーフ形状」)と看做すことができる。
このホログラムレリーフと同一の形状と看做された面上に、サーモクロミック薄膜層4を追従して均一な厚さで形成することで、このサーモクロミック薄膜層4の形状も、ホログラム形成層2のホログラムレリーフと同一の形状(「レリーフ形状」)と看做すことができるものとなる。
このサーモクロミック薄膜層4に用いられる、サーモクロミック分子(サーモクロミック材料)としては、有機化合物系と、無機化合物系があり、
有機化合物系としては、
縮合芳香環置換エチレン誘導体として、
スピロピラン類:スピロピラン化合物の閉環型(無色)と開裂してできる平面的開環型(有色)との間の熱感度の高い平衡状態によるもの、すなわち、ビアントロンやジキサンチレン、キサンチリジエンアンスロン(無色→各色)、ジーα,β−ナフトイソスピロピラン、ベンゾーβーナフトイソスピロピラン、3−アルキル−ジ−ナフトイソスピロピラン、ビアンスロン、ジキサンチレン、キサンチリデンアンスロン等、
異性化タイプ:サリチルアルデヒド・アニリン誘導体縮合生成物等、
共役系有機化合物として、トリフェニルメタン系(無色→緑)、(緑→無色)等、
メタモカラーとして、電子供与呈色性有機化合物(色素)、電子受容性化合物、有極性有機化合物の3成分系からなるもの等がある。
その電子供与性呈色性有機化合物としては、ジアリールフタリド類、インドリルフタリド類、ビニローグフタリド類、アザフタリド類、チアジン類、ボリアリールカルビナ−ル類、ロイコオーラミン類、アシルオーラミン類、アリールオーラミン類、ローダミンBラクタム類、インドリン類、スピロピラン類、フルオラン類、フルオレン類等があり、
フルオラン類としては、3,6−ジメトキシフルオラン、2−クロロ−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ジ−n−プロピルアミノフルオラン等、ジアリールフタリド類としては、3,3−ビス(4−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(4−ジメチルアミノフェニル)フタリド、3−(4−ジメチルアミノフェニル)−3−(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−オクチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド等、ビニローグフタリド系化合物としては、3−(4−ジエチルアミノフェニル)−3−[2,2−ビス(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)エテニル]フタリド、3,3−ビス[2,2−ビス(4−ピロリジノフェニル)エテニル]−4,5,6,7−テトラブロモフタリド等、アザフタリド類としては、3,3−ビス(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−4−アザフタリド等、チアジン類としては、ベンゾイルロイコメチレンブルー、p−ニトロベンゾイルロイコメチレンブルー等、スピロピラン系化合物としては、3−メチルスピロジナフトピラン、3−エチルスピロジナフトピラン、3−フェニルスピロジナフトピラン、3−ベンジルスピロジナフトピラン、3−プロピルスピロジベンゾピラン等、フルオレン類としては、3,6−ビス(ジメチルアミノ)フルオレンスピロ[9,3']−6'−ジメチルアミノフタリド、3,6−ビス(ジエチルアミノ)−3'−メチルスピロ[フルオレン−9,6'−6'H−クロメノ(4,3−b)インドール]等を用いることができる。
電子受容性化合物としては、炭素2〜5のヒドリン誘導体、フェノール性水酸基含有化合物、そのアルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基等置換物も、用いることができる。
具体的には、tert−ブチルフェノール、ノニルフェノール、ドデシルフェノール、スチレン化フェノール、2,2−メチレンビス(4−メチル−5−tert−ブチルフェノール)、α−ナフトール、β−ナフトール、ハイドロキノンモノメチルエーテル、グアヤコール、オイゲノール、p−クロロフェノール、p−ブロモフェノール、0−クロロフェノール、0−ブロモフェノール、0−フェニルフェノール、p−(p−クロロフェニル)−フェノール、0−(0−クロロフェニル)−フェノール、p−オキシ安息香酸メチル、p−オキシ安息香酸エチル、p−安息香酸プロピル、p−オキシ安息香酸ブチル、p−オキシ安息香酸オクチル、p−オキシ安息香酸rデシル、3−iso−プロピルカテコール、p−tert−ブチルカテコール、4.4−メチレンジフェノール、4.4−チオ−ビス(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)、1.1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサン、4,4−ブチリデン−ビス(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールS、 1.2−ジオキシナフタレン、クロロカテコール、ブロモカテコール、2.4−ジヒドロキシベンゾフェノン、フェノールフタレイン、0−クレゾールフタレイン、プロトカテキュ−酸メチル、プロトカテキュ−酸エチル、プロトカテキュ−酸プロピル、プロトカテキュ−酸オクチル、プロトカテキュ−酸ドデシル、2,4.6−)トリオキシメチルベンゼン、2,3.4−トリオキシエチルベンゼン、没食子酸メチル、没食子酸エチル、没食子酸プロピル、没食子酸ブチル、没食子酸ヘキシル、没食子酸オクチル、没食子酸ドデシル、没食子酸セチル、没食子酸ステアリル、2.3.5−トリオキシナフタレン、タンニン酸、フェノール樹脂等がある。
また、フェノール性水酸基を有する化合物の金属塩として、上記フェノール性水酸基を有する化合物のナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、亜鉛、アルコニウム、アルミニウム、マグネシウム、ニッケル、コバルト、スズ、銅、鉄、バナジウム、チタン、鉛、モリブデン等の金属の塩がある。
有極性有機化合物としては、
エステル類として、芳香族及び脂肪族カルボン酸のアルキルエステル、アリ−ルアルキルエステル、脂環アルキルエステル、分岐アルキルエステル及びそれらの置換誘導体があげられる。具体的には、パルミチン酸n−ブチル、ステアリン酸n−ブチル、ベヘン酸n−ブチル、酪酸2−エチルヘキシル、ベヘン酸2−エチルヘキシル、ミリスチン酸2〜エチルヘキシル、カプリン酸2−エチルヘキシル、カプロン酸2−メチルブチル、カプリル酸2−メチルブチル、ベヘン酸1−エチルプロピル、ラウリン酸2−メチルペンチル、ステアリン酸3−メチルブチル、パルミチン酸3,7−ジメチルオクチル、ステアリン酸3゜7−ジメチルオクチル、ベヘン酸3,7−ジメチルオクチル、エルカ酸n−ブチル、エルカ酸3,7−ジメチルオクチル、エルカ酸イソステアリル、イソステアリン酸セチル、12−ヒドロキシステアリン酸2−メチルペンチル、18−ブロモステアリン酸2−エチルヘキシル、2−ケトミリスチン酸イソステアリル、2−フルオロミリスチン酸2−エチルヘキシル、オレイン酸ステアリル、酪酸ベヘニル、酪酸セチル、リノール酸ステアリル、リノール酸ベヘニル、アラキン酸n−ブチル等が用いられる。
その芳香族カルボン酸、炭素数2〜5の脂肪族カルボン酸としては、マレイン酸、フマール酸、安息香酸、トルイル酸、p−tert−ブチル安息香酸、クロロ安息香酸、ブロモ安息香酸、エトキシ安息香酸、没食子酸、ナフトエ酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸等がある。
また、カルボン酸金属塩として、モノカルボン酸からポリカルボン酸の金属塩がある。
具体的には、酢酸、プロピオン酸、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ベヘニン酸、クロトン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リルン酸、モノクロル酢酸、モノブロム酢酸、モノフルオロ酢酸、グリコール酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸、リシノール酸、12−ヒドロキシステアリン酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セパチン酸、リンゴ酸、酒石酸、キラコラ酸、マレイン酸、フマール酸、ナフテン酸、安息香酸、トルイル酸、フェニル酢酸、桂皮酸、クロル安息香酸、ブロム安息香酸、エトキシ安息香酸、マンデル酸、プロトカテキュ−酸、バニリン酸、レゾルシン酸、ジオキシ安息香酸、ジオキシクロル安息香酸、没食子酸、ナフトエ酸、ヒドロキシナフトエ酸、フタル酸、フタル酸モノエチルエステル、ナフタレンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸モノメチルエステル、トリメリット酸、ピロメリット酸等があり、そのナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、亜鉛、ジルコニウム、アルミニウム、マグネシウム、ニッケル、コバルト,スズ、銅、鉄、バナジウム、チタン、鉛、モリブデン等の金属塩も用い得る。
さらに、酸性リン酸エステル化合物として、アルキル、分岐アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリ−ルエステル等及びそれらの誘導体が挙げられる。酸性リン酸エステル化合物にはモノエステル、ジエステルがあり、またそれらの混合物でもよい。酸性リン酸エステル化合物の金属塩として、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、亜鉛、ジルコニウム、アルミニウム、マグネシウム、ニッケル、コバルト、スズ、銅、鉄、バナジウム、チタン、鉛、モリブデン等の金属の塩を用い得る。
そして、トリアゾール化合物として、1.2.3−1−リアゾール、4(5)−ヒドロキシ−1,2,3−)リアゾール、5(61−メチル−1,2,3−ペンゾトリアゾール、5−クロロ−1,2,3−ベンゾトリアゾール、7−ニトロ−1,2,3−ベンゾトリアゾール、4−ベンゾイルアミノ−1,2,3−ベンゾトリアゾール、4−ヒドロキシ−1,2,3−ベンゾトリアゾール、ナフト−1,2,3−トリアゾール、1,2.3−ベンゾトリアゾール−4−スルフォオクチルアミド等を用いることができる。
液晶系は、液晶の立体構造変化が変色の元となるため、本発明の目的である「薄膜化」には不向きである。
さらに、ハロゲノ錯体として、
テトラハロゲノ銅(2)錯体:イソプロピル置換アンモニウム塩テトラクロロ銅(2)錯体、ジエチル置換アンモニウム塩テトラクロロ銅(2)錯体、メチルフェネチル置換アンモニウム塩テトラクロロ銅(2)錯体、ピペラジニウム置換アンモニウム塩テトラクロロ銅(2)錯体、イソプロピル置換アンモニウム塩トリクロロ銅(2)錯体があり、[[(CH32CH]NH32[CuCl4]、[(C252NH22[CuCl4]、[[(C6522)CH3]NH22[CuCl4]、[H2N(C242NH2]2[CuCl4]Cl2、[H2N(C242NH2]2[CuBr4]Br2、[[(CH32CH]NH3][CuCl3]:[サーモクロミック温度]40〜90℃等。:[色変化]緑色→黄色等。テトラハロゲノニッケル(2)錯体:[(C253NH]2[NiCl4]、[(CH33NH]2[NiCl4]、[(C65CH2)CH3NH2][NiCl4]、[(C252NH2]2[NiCl4]:70〜110℃等:褐色→青色([(CH32NH2]2[NiCl4]等は、150〜230℃であり使用できない。)。テトラヨード水銀(2)錯体:Ag2[HgI4]、Cu2[HgI4]:40〜70℃等:黄色→オレンジ(Pb2[HgI4]等は、130℃以上であり、使用できない。)等がある。
また、エチレンジアミン誘導体錯体として、C−置換エチレンジアミン類ニッケル(2)錯体:ビス(C−置換エチレンジアミン)ニッケル(2)錯体があり、[{Ni(H2O)2}{1,2-C48(NH222]Cl2、[{Ni(H2O)2}{3,3−(CH32−1,2−C48(NH222]Br2、[{Ni(H2O)2}{1,2-C48(NH222](NO32:40〜90℃:紫→黄色等、及び、N,N´−ジエチルエチレンジアミン錯体として、[Cu(H2O)2](ClO42:35℃:赤→青紫等がある。
ここで、[Cu(H2O)2](NO32等はサーモクロミック温度が150℃以上であり、非常に高温の加熱を要し、高いエネルギーを必要とする上、積層する他の基材の熱変形等の劣化を招くため、本発明の目的には使用できない。
さらに、含窒素配位子錯体として、ジニトロジアミン銅(2)錯体:[Cu(NO22(NH32]、[CuCL(NO2)(NH32]、[CuBr(NO2)(NH32]:31℃:紫→緑(急激)等、
ジクロロJニッケル(2)錯体として、トランス−2−(2´−キノリル)−メチレン−3−キノクリディノン等、
そして、重金属塩類(サーモカラー)として、ヘキサメチレンテトラミン錯体:[Co(H2O)6]Cl2・4H2O・2(C6H124)、[Co(H2O)6]Br2・3H2O・2(C6H124):50℃:ピンク→青、[Co(H2O)6]I2・2H2O・2(C6H124):50℃:緑→青、[Co(NCS)2(H2O)42(C6H124):85℃:オレンジ→青紫、エチレンジアミン類ニッケル(2)錯体:[Ni(H2O)2(N−CH3−C22(NH22]Cl2:45度:紫青→青緑ORオレンジ、[Ni(H2O)2(N−CH3−C22(NH22]Br2:45度:紫青→青緑、オレンジ等、を用いることができる。
特に、サーモクロミック温度が、常温に比較的近く、その色変化が急激なものが好適である。
また、無機化合物系としては、金属酸化物等の誘電体薄膜や、金属化合物微粒子を透明材料(ガラス、透明樹脂等)に分散したもの、さらには、反射型の調光特性(調光ミラー特性)を有する材料として、イットリウムやランタン等の希土類金属の水素化物、ガドリニウム等の希土類金属とマグネシウムの合金の水素化物、及びマグネシウム・ニッケル合金の水素化物等の薄膜や微粒子を用いることができ、特に、資源やコストの観点から、マグネシウム・ニッケル合金を用いたものは好適である。
反射型の調光特性を有する材料は、透明状態と鏡面状態を切り替えることが可能であって、その鏡面状態の時に、所定の光を反射し、その反射光がホログラムを再生するものである。
また、ルチル型の二酸化バナジウム(VO2)の粒子と、ルチル型の二酸化チタン(TiO2)の粒子とを含むサーモクロミック微粒子であって、その二酸化バナジウム粒子が、二酸化チタン(TiO2)粒子上に、二酸化チタン(TiO2)の粒子よりも大きく、ロッド状に成長しているサーモクロミック微粒子も、用い得る。
以下の説明において、無機化合物系は本来「種々の原子からなる化合物」と表現すべきであるが、有機化合物系と同様に説明するため、「材料」を表す言葉として、共通に捉えて説明するため、敢えて、「分子」という表現を使用する。
形成方法としては、一般的印刷方法、コーティング方法等も用いることは可能であるが、より精密な薄膜を形成する方法として、回転塗布法、キャスト法、スクリーン印刷法、ブレードコーティング法、ロール塗布法、水面展開法、LB(ラングミュア・ブロジェット)法等が挙げられ、ドライプロセスとしては真空蒸着法、スパッタリング法、化学蒸着法等が挙げられる。
特に、有機化合物系を均一に、且つ、分子レベルで薄膜形成するには、化学蒸着法が好適である。
より具体的には、サーモクロミック分子を透明な樹脂に均一に分散した樹脂分散型のインキや、水又は溶剤にサーモクロミック分子を分散した溶媒分散型のインキを作製し、それらを用いて、印刷方式や、コーティング方式さらには、インクジェット方式等の種々の形成方法を用いて、透明反射性薄膜層3の上に、その形状に接するように、また、追従するよう均一に、若しくは凹部に部分的に、サーモクロミック薄膜層4を形成することができる。
また、透明反射性薄膜層3の上に、直接、サーモクロミック分子を化学蒸着法によりサーモクロミック薄膜層4を形成することも、そのホログラムレリーフ追従性や、その均一性から好適であるとともに、電子ビーム加熱真空蒸着法における高温の電子ビームや、スパッタリング法におけるアルゴン原子の衝突がなく、分子の構造を維持しやすいため好適である。
また、透明反射性薄膜層3上にサーモクロミック薄膜層4を形成した後、フォトレジストを用いたフォトリソグラフィー法により、回折格子パターンに位置合わせして露光、現像、不要部除去によりフォトレジストのパターンを回折格子パターンの凹部に同調させ、エッチングによりサーモクロミック薄膜層4を除去して、凹部のみにサーモクロミック薄膜層4を残すことができる。(図示せず。)
逆に、透明反射性薄膜層3上にフォトレジスト層を形成し、回折格子パターンに位置合わせして露光、現像、不要部除去により、凸部にフォトレジストを残し、凹部を露出させて、この上にサーモクロミック薄膜層4を形成後、凸部上のフォトレジストを除去すると同時に、その真上にあるサーモクロミック薄膜層4を部分的に除去することにより、凹部のみにサーモクロミック薄膜層4を残すことができる。(図示せず。)
樹脂分散型のインキは、上記したサーモクロミック分子を、透明樹脂、例えば、熱可塑性樹脂としてはアクリル酸エステル樹脂、アクリルアミド樹脂、ニトロセルロース樹脂、もしくはポリスチレン樹脂等が、また、熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、アクリルウレタン樹脂、エポキシ変性アクリル樹脂、エポキシ変性不飽和ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、もしくはフェノール樹脂等に混入し、2次凝集を少なくするように、ガラスビーズやスチールビーズを用いたボールミル、ニーダー、ロールミル等による混練りを十分行い、溶剤等で粘度調整をして、グラビア方式、オフセット方式、シルクスクリーン方式、カーテンコート方式、ノズルコート方式、さらには、インクジェット方式を適宜用いて均一な厚さに形成することができる。
但し、サーモクロミック薄膜層4の厚さを、0.003μm以上3.0μm以下、さらには、0.01μm以上1.0μm以下とするためには、樹脂分散型インキの固形分を20%とし、溶剤若しくは水を溶媒とした塗布膜の厚さを、例えば、5.0μmとしたときに、溶媒を蒸発させた後の厚さ(サーモクロミック薄膜層の厚さとなる。)がその1/5となるようにし、1.0μmとすることができ、また、樹脂分散型インキの固形分を2%とし、溶剤若しくは水を溶媒とした塗布膜の厚さを、例えば、0.5μmとしたときに、溶媒を蒸発させた後の厚さ(サーモクロミック薄膜層の厚さとなる。)がその1/50となるようにし、0.01μmとすることができる。
このように、1.0μm〜0.01μmの厚さ範囲は、厚さ精度を維持しながら、上記のような通常の塗布方式を用い得る範囲でもある。
溶媒分散型のインキは、樹脂成分を含まず、サーモクロミック分子と溶媒のみであるため、樹脂分散型よりサーモクロミック薄膜層4の厚さを薄くすることができる。
溶媒としては、使用するサーモクロミック分子の極性に合わせ、水やアルコール系溶剤、若しくは、セルソルブ系、パラフィン系溶剤を用いて、サーモクロミック分子を溶解して保持させ、攪拌しながらカーテンコート、ノズルコート等によりホログラム形成層2上に設けることができる。
いずれにしても、ホログラムレリーフの凹凸が非常に小さい為、サーモクロミック薄膜層4を均一厚さで、且つ、その中のサーモクロミック分子が均一な密度となるように、もしくは、透明反射性薄膜層3上に均一に(部分形成の場合には形成してある部分同士が均一に)形成するためには、サーモクロミック分子が凝集して2次粒子状とならないようにする必要があり、溶剤(溶媒)へ溶解する方法や、ナノ粒子の表面に吸着させて、ナノ粒子顔料として薄膜形成することが好適である。
(粘着層)
上記のサーモクロミック薄膜層4の上に、粘着層5を設け、本発明のホログラムラベルAを形成する。
この粘着層5としては、従来公知の溶剤系及び水系のいずれの粘着剤、例えば、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル−アクリル共重合体、酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン樹脂や、天然ゴム、クロロプレンゴムなどのゴム系樹脂などが挙げられる。自然にやさしい材料構成とするために、特に、天然ゴムを主成分とするラテックス、それを変性したもの、特に天然ゴムにスチレン特にメタクリル酸メチルとをグラフト重合させて得た天然ゴムラテックス等の天然素材から作製されたものを用いても良い。
粘着層5の塗工量は、約8〜30g/m2(固形分)が一般的であり、従来公知の方法、すなわち、グラビアコート、ロールコート、コンマコートなどの方法で、塗布し乾燥して粘着層5を形成する。(図2参照。)
また、粘着層5の粘着力は、サーモクロミック薄膜層4と粘着層5との剥離強度で、JIS Z0237準拠の180°による剥離方法において、0.1〜1kg程度の範囲にすることが望ましい。もちろん、それ以上の剥離強度を有していても、本発明の目的には適合している。
さらに、透明基材1上に、適宜な剥離層を設け、粘着層5を接着剤層とし、ホログラムラベルAをホログラム転写箔として用いることも可能である。(図示せず。)
以下、本発明のホログラムラベルAにレインボーホログラムを形成した場合について説明する。
本発明のホログラムラベルAのサーモクロミック薄膜層4は、ホログラム形成層2のホログラムレリーフと同一と看做される形状(「レリーフ形状」)を有しているため、サーモクロミック薄膜層4が、例えば、「水色の色調」を有する場合、仮に、そのサーモクロミック薄膜層4、そのものを直接、蛍光灯等で照明できたとすると、「水色の色調」のみを基調とするホログラム再生像が出現することとなる。(図示せず。)
実際には、本発明のホログラムラベルAに、透明基材1側から、蛍光灯等の照明光5を照射すると、まず、透明反射性薄膜層3によって反射した反射光によるレインボーホログラム再生像8を視認することとなり、さらに、その透明反射性薄膜層3を透過した光のみが、その背後にあるサーモクロミック薄膜層4を照明することとなり、この照明を受けたサーモクロミック薄膜層4が、この「透過した光」の中の「水色の色調」に対応する波長成分の光のみを反射し、再び透明反射性薄膜層3を透過させ、これによって、その波長成分の光による水色を基調とするホログラム再生像7を視認することができるものとなる。
そして、このホログラムラベルAを、所定の加熱手段9である、127mm径125W赤外線乾燥用ランプの照明下に30秒間放置し(図3中、点線で示した。)、照明光10として蛍光灯等の下で観察すると、まず、透明反射性薄膜層3によって反射した反射光によるレインボーホログラム再生像12を視認することができ、さらに、サーモクロミック薄膜層4が、例えば、「水色の色調」から「ピンク色の色調」へと変色し、ピンク色のみを基調とした、透明反射性薄膜層3を透過する波長成分の光によるピンク色を基調としたホログラム再生像11が、上記したホログラム再生像7とは異なる再生方向に浮かび上がる(透明基材1、ホログラム形成層2は、無色透明な層であり、透明反射性薄膜層3も赤外線透過性が高いため、サーモクロミック薄膜層4が選択的に赤外線照射熱を吸収する。)こととなる。
特に、変色したサーモクロミック薄膜層4は、時間的に変化することなく、安定して「ピンク色の色調」を呈しており、透明反射性薄膜層3を透過する波長成分の光によるピンク色を基調とするホログラム再生像11の再生方向や色調変化を確実に判定することができ、このホログラムラベルAの真正性判定精度を高いものとすることができる。
(実施例1)
透明基材1として、12μmのPETフィルムの表面に、メラミン樹脂組成物を塗布し、ホログラム画像位置検知パターン付きのレリーフホログラム(「サーモ」の文字画像をレインボーホログラムとして記録したレリーフホログラム)の複製用型の型面を、接触させたまま加熱硬化させることにより(複製プロセスは図示せず。)、レリーフホログラムの形成を行ない、厚さ3μmのホログラム形成層2を得た。(図2参照。)
この上に、透明反射性薄膜層3として、アルバック社製電子線加熱蒸着装置を用いて、100nm厚さのTiO2薄膜層を設けた。(図2参照。)
この際、透明反射性薄膜層3は、ホログラム形成層2のホログラムレリーフ形状に追従して形成され、透明反射性薄膜層3そのものが、そのホログラムレリーフ形状と同一と見做される形状(「レリーフ形状」)を有していた。
さらに、この透明反射性薄膜層3の上に、下記組成の樹脂分散型のサーモクロミック分子含有インキ(サーモクロミック薄膜層4用インキ組成物)を用いてグラビアリバースコーティング方式により、サーモクロミック薄膜層4を、コーティング時10.0μm厚さで、透明反射性薄膜層3の「レリーフ形状」に接するように形成し、その後、乾燥温度を徐々に上昇させる乾燥方式により、塗膜内のマイグレーションを抑制しつつ、乾燥して、2.0μm厚さとした。(図2参照。)
このようにして形成したサーモクロミック薄膜層4は、透明反射性薄膜層3の「レリーフ形状」に追従しており、且つ、均一な厚さを有していた。
・<サーモクロミック薄膜層4用インキ組成物>
ビス(N,N−ジエチルエチレンジアミン)銅(II)硝酸塩(水和物) 1質量部
ウレタン樹脂 19質量部
メチルエチルケトン 20質量部
トルエン 30質量部
酢酸エチル 30質量部
さらに、サーモクロミック薄膜層4の上に、下記粘着層5用粘着剤組成物を用いて、下記組成の粘着層5用粘着剤組成物をグラビアコーティング方式により、コーティングし、乾燥して、20.0μmの厚さの粘着層5とし、実施例1の本発明のホログラムラベルAを形成した。(図2参照。)
・<粘着層5用粘着剤組成物>
酢酸ビニル−アクリル共重合体 30質量部
イソホロンジイソシアネート 1質量部
トルエン 20質量部
酢酸エチル 30質量部
メチルイソブチルケトン 19質量部
このホログラムラベルAを、照明光6として蛍光灯の下で観察したところ、水色を基調としたホログラム再生像7(「サーモ」の文字画像)と、レインボーホログラム再生像8(「サーモ」の文字画像)を観察することができた。(図3参照。)
さらに、このホログラムラベルAに、所定の加熱手段9として、127mm径125W赤外線乾燥用ランプの照明下に30秒間放置したところ、透明基材1及び、ホログラム形成層2は無色透明な層であり、透明反射性薄膜層3の赤外線透過率が高いため、サーモクロミック薄膜層4が選択的に赤外線照射熱を吸収した。
照明光10として蛍光灯の下で観察したところ、ピンク色を基調としたホログラム再生像11(「サーモ」の文字画像)が、水色を基調としたホログラム再生像7とは異なる回折方向(再生方向)に浮かび上がり、且つ、レインボーホログラム再生像12(「サーモ」の文字画像)を観察することができ、その真正性を確実に判定することができた。(図3参照。)
このことから、ホログラムラベルAは、高い意匠性と高度な偽造防止効果を有するものと思われた。
(実施例2)
サーモクロミック分子含有インキを下記組成とし、サーモクロミック薄膜層4を20μm厚さで、ホログラムレリーフに接するように形成し、乾燥して、0.5μm厚さとし、橙黄色のホログラム再生像を観察したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2の本発明のホログラムラベルAを得た。(図2参照。)
・<サーモクロミック薄膜層4用インキ組成物>
四硫化四窒素(粉体) 2.5質量部
エタノール 27.5質量部
ベンゼン 70質量部
このホログラムラベルAを実施例1と同様に観察したところ、このホログラムラベルAからは、加熱前においては、橙黄色を基調とする鮮明なホログラム再生像7を観察することができ、加熱後には、橙赤色を基調とする鮮明なホログラム再生像11を視認できたこと以外は、実施例1と同様に、良好な結果を得た。
(実施例3)
サーモクロミック分子として、ペリレンテトラカルボン酸ビスベンジルイミドを以下の手順にて合成した。
ペリレンテトラカルボン酸二無水物5gを水100gに分散、ベンジルアミン10gを加えて攪拌後、ろ過し、1%熱水酸化カリウム溶液による洗浄を行った後、水洗及びテトラヒドロフラン洗浄し、乾燥後、真空昇華精製により、茶褐色の結晶粉末を得た。
この結晶粉末を使用し、化学蒸着法により、直接、透明反射性薄膜層3上の「レリーフ形状」に接するように形成して、0.01μm厚さとしたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例3の本発明のホログラムラベルAを作製した。(図2参照。)
このホログラムラベルAを実施例1と同様に観察したところ、このホログラムラベルAからは、加熱前においては、オレンジ色を基調とする、より鮮明なホログラム再生像7を観察することができ、加熱後には、青緑色を基調とする、より鮮明なホログラム再生像11を視認できたこと以外は、実施例1と同様に、良好な結果を得た。
(実施例4)
透明基材1として、12μmの高平滑性PETフィルム(表面粗さRa:10nm)を用い、下記組成のホログラム形成層2層用組成物を用いて、スピンコーティング方式により、「均一な厚さの透明な層」を、乾燥後の厚さ2.0μmで形成し、
・<ホログラム形成層2用組成物>
メラミン樹脂 10質量部
トルエン 10質量部
イソプロピルアルコール 10質量部
メチルエチルケトン 30質量部
酢酸エチル 40質量部
この上に、高い厚さ制御をした透明反射性薄膜層として、高精度厚さ制御機能を有するアルバック社製電子線加熱蒸着装置を用いて、100nm厚さのTiO2薄膜層を設け、さらにその上に、下記組成のサーモクロミック薄膜層4用インキ組成物を用いて、スピンコーティング方式により、「均一な厚さのサーモクロミック薄膜層」を、乾燥後の厚さ1.0μmで形成し、
・<サーモクロミック薄膜層4用インキ組成物>
ビス(N,N−ジエチルエチレンジアミン)銅(II)硝酸塩(水和物) 1質量部
ウレタン樹脂 9質量部
メチルエチルケトン 20質量部
トルエン 40質量部
酢酸エチル 30質量部
その透明基材1、「均一な厚さの透明な層」、「透明反射性薄膜層」及び、「均一な厚さのサーモクロミック薄膜層」の4層構成のシートを形成した。(図示せず。)
その4層構成のシートの「均一な厚さのサーモクロミック薄膜層」最表面に、実施例1で用いたレリーフホログラム(「サーモ」の文字画像:図3参照)の複製用型の型面を接触させ、熱ロールプレス方式により、80℃、1トン/m、2m/分の条件にて、レリーフホログラムの形成を行ない、「均一な厚さの透明な層」と「透明反射性薄膜層」との界面の形状、「透明反射性薄膜層」と「均一な厚さのサーモクロミック薄膜層」との界面の形状、及び、「均一な厚さのサーモクロミック薄膜層」の最表面の形状を、いずれも「ホログラムレリーフ」の「レリーフ形状」とした(実質的に同一の形状という意味。)こと以外は、実施例1と同様にして、実施例4のホログラムラベルAを得た。
このレリーフホログラムの形成により、「均一な厚さの透明な層」がホログラム形成層2に、「均一な厚さのサーモクロミック薄膜層」がサーモクロミック薄膜層4となっている。(図2参照。)
このホログラムラベルAを、実施例1と同様に評価したところ、水色を基調とした、著しく鮮明なホログラム再生像7、及び、著しく鮮明なレインボーホログラム再生像8が出現し、さらに、加熱後は、ピンク色を基調とした、著しく鮮明なホログラム再生像11、及び、著しく鮮明なレインボーホログラム再生像12を確認することができたこと以外は、実施例1と同様に良好な結果を得た。(図3参照。)
(比較例)
サーモクロミック薄膜層を形成せず、ホログラムラベルを形成し、比較例とした。
実施例1と同様に観察したところ、蛍光灯の下で目視にて認識できるホログラム再生像を確認することができたが、加熱処理しても、ホログラム再生像に何らの変化も出現しなかった。
このことにより、このホログラムラベルが真正なものでないと容易に判断できた。
A ホログラムラベル
1 透明基材
2 ホログラム画像に対応した回折格子群を含むホログラムレリーフ を有する透明樹脂層(ホログラム形成層)
3 透明反射性薄膜層
4 サーモクロミック薄膜層(連続的な形成の場合、もしくは、部分 形成の場合がある。図2には、連続的な形成の場合を表す。)
5 粘着層
6 観察状態の例示:照明光
7 同上 :ホログラム再生像
8 同上 :レインボーホログラム再生像
9 同上 :所定の加熱手段
(熱板プレスまたは赤外線乾燥用ランプ等。) 10 同上 :照明光
11 同上 :ホログラム再生像
12 同上 :レインボーホログラム再生像

Claims (3)

  1. 透明基材の一方の面に、ホログラム画像に対応した回折格子群を含むホログラムレリーフを有する透明樹脂層、前記ホログラムレリーフを形成する凹凸上に設けられた透明反射性薄膜層、前記透明反射性薄膜層に追従して均一な厚さで設けられたサーモクロミック薄膜層、及び粘着層が、この順序で設けられていることを特徴とするホログラムラベル。
  2. 前記サーモクロミック薄膜層の厚さが、0.01μm以上1.0μm以下であることを特徴とする請求項1に記載のホログラムラベル。
  3. 請求項1または2記載のホログラムラベルの製造方法であって、
    前記透明基材上に、均一な厚さの透明な層を形成し、前記透明な層上に、透明反射性薄膜層及び、均一な厚さのサーモクロミック薄膜層を形成した後に、前記透明な層、前記透明反射性薄膜層及び前記サーモクロミック薄膜層を同時に変形させて、前記透明樹脂層のホログラムレリーフを形成することを特徴とするホログラムラベルの製造方法。
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WO2017068948A1 (ja) * 2015-10-23 2017-04-27 コニカミノルタ株式会社 サーモクロミックフィルム及びサーモクロミック複合体
WO2024063729A1 (en) * 2022-09-22 2024-03-28 Yorglass Cam Sanayi̇ Ve Ti̇caret Anoni̇m Şi̇rketi̇ Thermochromic paint

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