JP2013209723A - 成形性及び低温靭性に優れた高強度熱延鋼板及びその製造方法 - Google Patents

成形性及び低温靭性に優れた高強度熱延鋼板及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】穴広げ性と引張強度とのバランスに優れており、更には低温靭性にも優れた高強度熱延鋼板及びその製造方法を提供する
【解決手段】質量%で、所定範囲のC、Si、Mn、P、S、Al、N、Tiを含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼板であって、ミクロ組織がフェライト組織、ベイナイト組織又はこれらの混合組織からなるとともに、その平均結晶粒径が6.0μm以下であり、圧延面と平行な[211]面のX線ランダム強度比が2.4以下であり、球相等径で100nm以上のTiを含む析出物中に含まれるTi量の鋼中に占める質量%での割合が0.036%以下であり、球相等径で2.0nm以上10nm以下のTiを含む析出物の密度が2.0×1016個/cm3以上1.0×1018個/cm3以下であることを特徴とする
【選択図】図1

Description

本発明は、自動車の足回り部材等に使用される成形性及び低温靭性に優れた高強度熱延鋼板及びその製造方法に関するものである。
従来より、鋼板の軽量化を目的として鋼板を高強度化する試みが進められている。一般に、鋼板の高強度化は穴広げ性のような成形性の劣化を招くため、引張強度と穴広げ性とのバランスに優れた鋼板を如何にして得るかが重要となる。
例えば、特許文献1においては、フェライト、ベイナイト等の鋼中のミクロ組織の分率や、フェライト組織中の析出物を最適化することにより引張強度と穴広げ性とのバランスに優れた鋼板を得ることのできる技術が開示されている。
ここで、特許文献1の開示技術によって得られる鋼板の特性値は、引張強度で780MPa以上、穴広げ率で60%以上となっている。しかしながら、例えば自動車の足回り部材等として用いられる鋼板では、その特性値について引張強度で780MPa以上、穴広げ率で70%以上と、更に引張強度と穴広げ性とのバランスに優れた鋼板の提案が望まれていた。
また、熱延鋼板を初めとした比較的板厚の厚い鋼板は、その強度が増加するに連れ低温靭性が劣化し、延性脆性遷移温度が高くなる。延性脆性遷移温度が高くなった場合、その鋼板が自動車部品として成形されて用いられる際に、その部品への負荷が大きい場合に部品の脆性破壊を生じさせることが懸念される。従って、延性脆性遷移温度は低温に維持することが求められる。この観点からは、強度と成形性のバランスに加え、強度と靭性のバランスも改善することが望まれている。
特開2004−339606号公報
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、穴広げ性と引張強度とのバランスに優れており、更には低温靭性にも優れた高強度熱延鋼板及びその製造方法を提供することにある。
本発明者は、上述した課題を解決するために、鋭意検討の末、下記の成形性及び低温人生に優れた高強度熱延鋼板及びその製造方法を発明した。
発明1は、質量%で、C:0.03〜0.1%、Si:0.001〜2.0%、Mn:0.5〜3.0%、P:0.1%以下、S:0.005%以下、Al:0.005〜2.0%、N:0.02%以下、Ti:0.05〜0.2%、を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼板であって、ミクロ組織がフェライト組織、ベイナイト組織又はこれらの混合組織からなるとともに、その平均結晶粒径が6.0μm以下であり、圧延面と平行な[211]面のX線ランダム強度比が2.4以下であり、球相等径で100nm以上のTiを含む析出物中に含まれるTi量の鋼中に占める質量%での割合が0.036%以下であり、球相等径で2.0nm以上10nm以下のTiを含む析出物の密度が2.0×1016個/cm3以上1.0×1018個/cm3以下であることを特徴とする成形性及び低温靭性に優れた高強度熱延鋼板。
発明2は、更に、質量%で、Ca :0.0001〜0.005%、REM:0.0001〜0.02%の何れか一種又は両方を含有することを特徴とする発明1に記載の成形性及び低温靭性に優れた高強度熱延鋼板。
発明3は、更に、質量%で、B :0.0005〜0.003%を含有することを特徴とする発明1又は発明2に記載の成形性及び低温靭性に優れた高強度熱延鋼板。
発明4は、更に、質量%で、Cu :0.001〜1.0%、Cr :0.001〜1.0%、Mo :0.001〜1.0%、Ni :0.001〜1.0%、Nb :0.001〜0.1%、V :0.005〜0.1%の何れか一種又は二種以上を含有することを特徴とする発明1〜3の何れか1項記載の成形性及び低温靭性に優れた高強度熱延鋼板。
発明5は、発明1〜4に記載の成分を含有する鋼片を1200℃以上に加熱し、粗圧延工程において、下記の(1)式を満たす条件にて粗圧延を行い、かつ粗圧延の最終圧下を1100℃以上で行い、粗圧延終了から100秒以内に仕上げ圧延を開始し、945℃以上1035℃以下の温度域で仕上げ圧延を終了し、続いて冷却速度を20℃/sec以上として冷却を行い、続いて200℃以上540℃以下の温度域において巻き取ることを特徴とする成形性及び低温靭性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法。
[(1150℃以下となった後の最初の圧下前の板厚)−(1100℃以下となる前の最後の圧下後の板厚)]/(1150℃以下となった後の最初の圧下前の板厚)×100≧50(%) ・・・ (1)
発明6は、前記冷却を行なうときには、冷却速度を20℃/sec以上として冷却を行ない、続いて、550℃以上650℃以下の温度域で冷却速度を15℃/sec以下として2秒以上冷却を行ない、続いて、冷却速度を20℃/sec以上として冷却を行なうことを特徴とする発明5記載の成形性及び低温靭性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法。
第1発明〜第6発明によれば、引張強度と穴広げ性のバランスに優れ、低温靭性も優れた熱延高強度鋼板を得ることが可能となる。
Tiを含む粗大な析出物と穴広げ率との関係を示す図である。 粗圧延終了温度と、粗圧延終了〜仕上げ圧延開始までの時間とTiを含む粗大な析出物の析出量との関係を示す図である。 [211]面のX線ランダム強度比と穴広げ率との関係を示す図である。 仕上げ圧延終了温度と[211]面のX線ランダム強度比との関係を示す図である。 Tiを含む微細な析出物の密度と、ミクロ組織の平均結晶粒径と遷移温度との関係を示す図である。 仕上げ圧延終了温度と、1100℃〜1150℃の温度域での圧下率とミクロ組織の平均結晶粒径との関係を示す図である。
以下、本発明を実施するための形態として、強度と穴広げ性のバランス及び低温靭性に優れた高強度熱延鋼板及びその製造方法について説明する。
本発明者らは、上で説明した、強度と穴広げ性のバランス及び低温靭性に優れた高強度熱延鋼板を得る為に基礎的な研究を行った。
そして、高強度としながら穴広げ性を良好とするためには、フェライト及びベイナイトの何れか一方又は両方からなるミクロ組織とした上で、集合組織、結晶粒径、析出物の制御を行うことが重要であることを見出した。特に、析出物については、粗圧延〜仕上げ圧延間のオーステナイト域で析出するTiを含む粗大な析出物により延性破壊が促進され、穴広げ性が劣化することを新たに見出した。
また、高強度でありながら低温靭性も確保するためには、ミクロ組織の結晶粒の微細化を図ることと、Tiを含む微細な析出物の析出量を適切な範囲に制御することとが重要であることも知見した。具体的には、ミクロ組織の平均結晶粒径を6.0μm以下としつつ、Tiを含む微細な析出物(球相等径で2.0nm以上、10nm以下のTiを含む析出物)の密度を2.0×1016個/cm3以上1.0×1018個/cm3以下とすることが重要であると知見した。Tiを含む微細な析出物の析出量が少なすぎると高強度が得られず、析出量が多過ぎると低温靭性が劣化する。
ミクロ組織の結晶粒径を微細とするためには、粗圧延の圧下スケジュールの制御と、仕上げ圧延温度の低温化とが重要であり、低温で大圧下率の圧延を行うことが重要であることを知見した。また、Tiを含む微細な析出物の密度を所定の範囲とするためには、巻取り温度を200℃以上540℃以下とすることが重要であることを知見した。
以降において、本発明を完成するに至った基礎的研究結果について説明する。
本発明者は、フェライト組織及びベイナイト組織を主相とした鋼板の穴広げ性、破壊特性に対する支配要因について調査するため、以下のような検討を行なった。
本発明者は、後述の表1に示す鋼成分A、鋼成分Bの成分からなる供試鋼について、後述の表2に示す条件で熱間圧延、冷却、巻き取り等を行ない板厚2.9mmの熱延鋼板を製造した。そして、得られた熱延鋼板の機械的特性(強度、穴広げ率、低温靭性)、ミクロ組織、析出物の評価を行った。
引張強度については、供試鋼の1/2板幅部より試験片の長手方向が板幅方向と平行となるようにJIS Z 2201記載の5号試験片を製作し、得られた試験片からJIS Z 2241記載の方法に準拠して引張試験を行なって測定した。
穴広げ性については、供試鋼の1/2板幅部より圧延方向長さが150mm、板幅方向長さが150mmである試験片を製作し、日本鉄鋼連盟規格JFS T 1001−1996記載の方法に準拠して穴広げ試験を行なって、試験片の穴広げ率を測定することによって評価した。穴広げ性の評価にあたっては、一の供試鋼から20枚の試験片を製作し、製作した各試験片に穴広げ試験を行なって得られた測定値を算術平均して得られた穴広げ率を求めた。
ここで行なう打ち抜き穴広げ試験では、直径10mmの打ち抜きパンチを用い、打ち抜きパンチとダイ穴との隙間を試験片の板厚で除して得られる打ち抜きクリアランスを12.5%として、初期穴径(D0)10mmの打ち抜き穴を試験片に設け、次にその打ち抜き穴に頂角60°の円錐パンチを、打ち抜きパンチと同じ方向から押し込み、打ち抜き端面に発生した亀裂が板厚方向に貫通した時点での穴内径Dfを測定し、下記の式から求めることとした。ここで亀裂の板厚貫通は目視で行った。
λ(%)=[(Df−D0)/D0]×100
低温靭性については、鋼板の幅方向中央部より、試験片方向が幅方向、ノッチ方向が長手方向(T−L試験片)の2.5mm厚のサブサイズシャルピー試験片を作成し、温度を20℃、0℃、−30℃、−60℃、−90℃、−120℃、−150℃にてN=3でシャルピー試験を行い、延性破面率を求め、温度と延性破面率の関係から、延性破面率が50%となる温度(延性脆性遷移温度)を求めることより評価した。
Tiを含む粗大な析出物については、得られた熱延鋼板より30gの切り粉状のサンプルを得て、それを電気分解により溶解し、その後に残った残渣をサイズ0.1μmの穴の空いた紙で濾過し、ろ紙上に残った析出物の重量、Ti量を測定し、Tiを含む析出物中のTi量の鋼中に占める質量%での割合を求めることにより評価した。この方法により測定される析出物のサイズは、直径での球相当径で大凡100nm以上である。以下、このような方法により測定される対象としてのTiを含む粗大な析出物を単に粗大Ti析出物ともいう。
Tiを含む微細な析出物については、得られた熱延鋼板の幅方向中央部、板厚中心部よりサンプルを切り出し、3次元アトムプローブ(3DAP)法により鋼中の原子の3次元分布をサブナノメーターの分解能で求め、Ti原子が密集した部分をTiを含む析出物として判別し、そのTiを含む析出物として判別した部分のサイズを求めた。このサイズとしては直径での球相当径を求め、そのサイズが2.0nm以上10.0nm以下の範囲にあるTiを含む析出物についての単位体積当たりの個数を求め、これがTiを含む微細な析出物の密度であるとして、この密度によりTiを含む微細な析出物を評価した。以下、このような方法により測定される対象としてのTiを含む微細な析出物を単に微細Ti析出物ともいう。
ミクロ組織の調査は、鋼板の1/4板幅位置から板幅方向を法線に持つ断面(以下、L断面という。)が露出するように切り出して研磨し、ナイタール試薬によりこれを腐食した後、光学顕微鏡を用いて200〜500倍の倍率で鋼板の1/4板厚位置を観察して行なった。
ここで、ミクロ組織を調査する上では、破面遷移温度にミクロ組織の平均結晶粒径が影響していることが知られていることから、その平均結晶粒径を測定することとした。ミクロ組織の平均結晶粒径は以下のように求めた。測定対象となる鋼板の1/4板幅位置のL断面の板厚中心部であって、板厚方向に500μm、圧延方向に500μmの部分について、その結晶方位分布を2μmステップでEBSP法(Electron Back Scattering Pattern法)にて調査し、方位差が15°以上である点を結んで粒界として、その粒界からなる結晶粒の円相当径の数平均値を求め、これをミクロ組織の平均結晶粒径とした。
集合組織の調査は、X線ランダム強度比を測定することによって行なった。ここでいうX線ランダム強度比とは、特定の方位への集積のないランダムな方位分布をもつ標準試料のX線回折強度と、測定対象である供試鋼のX線回折強度とをX線回折測定により測定し、得られた供試鋼のX線回折強度を標準試料のX線回折強度で除して得られる数値のことを意味する。特定方位のX線ランダム強度比が大きいほど、鋼板中にその特定方位の結晶面を有する集合組織の量が多いことを意味している。
X線回折測定は、適切なX線管球を用いたディフラクトメーター法等を用いて行なった。X線回折測定用の試料は、鋼板の1/2板幅位置から板幅方向に20mm、圧延方向に20mmの大きさで切り出した試験片を機械研磨によって板厚方向に1/2板厚位置まで研磨した後、電解研磨等により歪みを除去することによって得た。X線回折測定は、得られた試料の1/2板厚位置について求めた。
以下に表1の鋼成分A、Bを対象に得られた知見を説明する。
図1はTiを含む粗大な析出物と穴広げ性(穴広げ率λ)との関係を示す図である。このように、Tiを含む粗大な析出物の析出量が少ないほど穴広げ性が良好となる。これは、Tiを含む粗大な析出物が延性破壊を促進して穴広げ性の劣化を招くため、このTiを含む粗大な析出物の析出を抑制することで穴広げ性が向上したためである。
図2は粗圧延終了温度(℃)と、粗圧延終了〜仕上げ圧延開始までの時間(秒)と、粗大Ti析出物の析出量との関係を示す図である。このように、粗圧延終了温度が低いほど、また、粗圧延終了〜仕上げ圧延開始までの時間が長いほど粗大Ti析出物の析出量が多くなる。これは、粗圧延終了温度が低いほど、また、粗圧延終了〜仕上げ圧延開始までの時間が長いほど、粗圧延での圧下後の歪誘起析出が促進されるためである。なお、ここでいう粗圧延終了温度とは、粗圧延の最終圧下を行うときの温度のことをいう。
図3は{211}面のX線ランダム強度比(以下、{211}面強度ともいう。)と穴広げ性(穴広げ率λ)との関係を示す図である。ここで、図中のサンプルでは、粗大Ti析出物の析出量がほぼ同じであるものをプロットした。このように、粗大Ti析出物の析出量が同レベルの場合、[211]面強度が小さいほど穴広げ率λが大きくなる。これは、[211]面強度が高いほど鋼板のr値の面内異方性が高くなり、それにより穴広げ加工時における圧延方向の端面への応力集中が高まり、き裂の発生・伝播が促進されるためである。
図4は、仕上げ圧延終了温度と{211}面強度との関係を示す図である。{211}面強度は、その{211}面のX線ランダム強度比で表している。このように、仕上げ圧延終了温度が低いほど{211}面強度が高くなる。これは、圧延温度が低くなると未再結晶γ粒からの変態が発生するようになり、その変態後のミクロ組織に{211}集合組織が多く含まれるためである。
図5は、球相等径で2.0nm以上、10nm以下の微細Ti析出物の密度と、ミクロ組織の平均結晶粒径と延性脆性遷移温度との関係を示す図である。このように、ミクロ組織の平均結晶粒径が小さいほど、また、微細Ti析出物の密度が減少するほど延性脆性遷移温度が低くなる。ミクロ組織の平均結晶粒径が小さい程遷移温度が低くなるのは、従来知見であるが、その場合に脆性破壊の起点となる大きなサイズの初期のクラックが生じにくくなるためである。また、微細Ti析出物の密度が減少することにより遷移温度が低温化するのは、微細な析出物の析出量が減少することにより転位が移動しやすくなり、き裂先端部の塑性変形が起きやすくなるためである。
図6は仕上げ圧延終了温度と1100℃〜1150℃の温度域での圧下率Rとミクロ組織の平均結晶粒径との関係を示す図である。ここでいう圧下率Rとは、以下の(1)式における左辺の数値で表される。このように、仕上げ圧延終了温度が低いほど、また、1100℃〜1150℃の温度域での圧下率Rが大きいほどミクロ組織の平均結晶粒径が小さくなる。仕上げ圧延終了温度が低いほどミクロ組織の平均結晶粒径が小さくなるのは、圧延後のオーステナイト組織の回復、再結晶が遅くなり、粒界や粒内のα変態時の核生成サイトが多く残存するようになるためである。また、1100℃〜1150℃の温度域での圧下率Rが大きいほどミクロ組織の平均結晶粒径が小さくなるのは、低温のγ域での圧下率が大きいほど再結晶γ粒が微細となるためである。
[(1150℃以下となった後の最初の圧下前の板厚)−(1100℃以下となる前の最後の圧下後の板厚)]/(1150℃以下となった後の最初の圧下前の板厚)×100≧50(%) ・・・ (1)
また、(1)式において、1100℃以上1150℃以下の温度域での圧下率Rを指標としたのは、下記の理由による。下限温度を1100℃としたのは、本発明においては1100以上で粗圧延が終了することを前提としているためである。上限温度を1150℃としたのは、(1)式の規定はγ粒の細粒化を図ることが目的であり、そのためには再結晶後の粒成長を避ける為に出来るだけ低温で圧下することが好ましく、低温での圧下率を規定する必要があるためである。
なお、本発明においては、目的とする穴広げ率を80%以上としており、その穴広げ率を得るためには、図1に示すように、Tiを含む粗大な析出物の割合を0.036%以下、図3に示すように、{211}面強度を2.4以下にする必要がある。また、Tiを含む粗大な析出物の割合を0.036%以下とするためには、図2に示すように、粗圧延終了温度を1100℃以上、粗圧延終了〜仕上げ圧延開始までの時間を100秒以下にする必要がある。また、{211}面強度を2.4以下とするためには、図4に示すように、仕上げ圧延終了温度を945℃以上とする必要がある。また、本発明においては、目的とする延性脆性遷移温度を−80℃以下としており、その遷移温度を得るためには、図5に示すように、ミクロ組織の平均結晶粒径を6.0μm以下、微細Ti析出物の密度を1.0×1018以下とする必要がある。
本発明は、以上を基に為されたものである。
続いて、本発明における鋼板の成分組成の限定理由について説明する。なお、以下では、成分組成における質量%を、単に%と記載する。
C :0.03〜0.1%
Cは、Nb、Ti等と結合して析出強化によって引張強度の向上に寄与する元素である。また、Cは、その含有量が低いほどミクロ組織が粗大になりやすく、遷移温度の増加を招いてしまう。Cは、その含有量が0.03%未満であるとこれらの効果について本発明の目的とするものを得ることができない。この観点から、Cの下限は0.03%とする。また、Cは、その含有量が大きすぎると、穴広げ性にとって好ましくない鉄炭化物(Fe3C)が過多に生成してしまう恐れがある。本発明の目的とする穴広げ性を得るうえでは、Cの含有量を0.1%以下にする必要がある。以上より、Cの含有量は、0.03%以上、0.1%以下とする。鉄炭化物(Fe3C)の生成を抑制し、更に優れた穴広げ性を得るうえでは、0.06%以下にすることが好ましい。
Si:0.001〜2.0%
Siは、予備脱酸に必要な元素であり、予備脱酸させる効果を十分に得るためには0.001%以上含有する必要がある。また、Siは、固溶強化元素として引張強度の向上に寄与するとともに、鉄炭化物(Fe3C)の生成を抑えて穴広げ性を良好なものとするうえで有効な元素である。しかし、Siの含有量は、2.0%超であると、そのような効果が飽和して経済性が低下する。このため、Siの含有量は、0.001%以上、2.0%以下とする。
Mn:0.5〜3.0%
Mnは、固溶強化元素として鋼板の引張強度向上に寄与する元素である。Mnは、本発明の目的とする引張強度を得るためには0.5%以上含有する必要がある。また、Mnの含有量は、3.0%超であると、熱間圧延時のスラブ割れが生じやすくなる。このため、Mnの含有量は、0.5〜3.0%とする。
P :0.1%以下(0%は含まず)
Pは、不可避的に混入する不純物であり、含有量の増加に伴い粒界での偏析量が増大し、穴広げ性の劣化を招く元素である。このため、Pの含有量は、低いほど望ましく、Pの含有量が0.1%以下の場合、これら穴広げ性の特性値について許容できる範囲となる。このため、Pの含有量は、0.1%以下とする。
S :0.005%以下(0%は含まず)
Sは、不可避的に混入する不純物であり、含有量が多すぎると、鋼片加熱時に鋼中でMnSを多量に生成し、これが熱間圧延により延伸された介在物となり、本発明の目的とする穴広げ性が得られない。このため、Sは、その含有量を0.005%以下とする。また、Sは、脱硫材を用いた脱硫を行なわない場合、その含有量を0.003%未満にすることが困難であることから、この場合のSの含有量は0.003%以上とする。
Al:0.005〜2.0%
Alは、溶鋼の脱酸に必要な元素であり、その含有量は、溶鋼を脱酸させる効果を十分に得るために0.005%以上添加する必要がある。また、Alは、引張強度の向上に寄与する元素であるが、2.0%超添加してもそのような効果が飽和して経済性が低下する。このため、Alの含有量は、0.005%以上、2.0%以下とする。
N :0.02%以下(0%は含まず)
Nは、Cよりも高温にてTi及びNbと析出物を形成し、Cを固定するのに有効なTi及びNbを減少させ、これにより引張強度の低下を招く。従って、Nの含有量は、極力低減させるべきであるが、0.02%以下ならば許容できる範囲である。また、引張強度の低下をより有効に抑えるためには、Nの含有量は0.005%以下とすることが好ましい。
Ti:0.05〜0.2%
Tiは、仕上げ圧延後にTiを含む微細な析出物として析出して析出強化による鋼板の引張強度の向上に寄与する元素である。本発明の目的とする引張強度を得るため、Tiは0.05%以上の添加が必要となる。また一方で、Tiはγ域でTiを含む粗大な析出物として析出すると穴広げ性を劣化させてしまう。また、Tiを含む微細な析出物の析出量が多くなり過ぎると低温靭性を劣化させてしまう。この観点から、Tiの上限は0.2%とする。
以上が、本発明に係る熱延鋼板の基本成分の限定理由であり、この基本成分の他の残部はFe及び不可避的不純物からなる。不可避的不純物としては、O、Zn、Pb、As、Sb等が挙げられ、これらをそれぞれ0.02%以下の範囲で含んでいても、本発明の効果を失するものではない。
また、本発明に係る熱延鋼板は、REM又はCaの何れか一種又は両方を下記のような含有量で含有していてもよい。
REM:0.0001〜0.02%
REM(希土類元素)は、穴広げ性を劣化させる原因となるMnS等の硫化物の形態を球形化させる元素である。REMの含有量が0.0001%未満であると、MnS等の硫化物の形態を球形化させる効果が十分得られないので、その下限を0.0001%とする。また、REMの含有量が0.02%超であると、このような効果が飽和して経済性の低下を招く。このため、REMの含有量は、0.02%以下とする。
Ca:0.0001〜0.005%
Caは、鋼中Sを球形のCaSとして固定しMnSの生成を抑制するとともに、MnS等の硫化物の形態を球形化させる元素である。Caの含有量が0.0001%未満であると、MnS等の硫化物の形態を球形化させる効果が十分得られないので、その下限を0.0001%とする。また、Caの含有量が0.005%超であると、延伸した形状の介在物となりやすいカルシウムアルミネートが多量に生じ、かえって穴広げ性を劣化させるので、Caの含有量の上限は0.005%以下とする。
また、本発明においては、必要に応じて、B、Cu、Cr、Mo、Ni、Nb、Vの何れか一種又は二種以上を下記のような含有量で含有していてもよい。
B : 0.0005〜0.003%
Bは、焼き入れ性を増加させ硬質相を増加させることにより強度を上げる元素である。Bは、その含有量が0.0005%未満では、その効果が十分得られない可能性がある。また、Bを多量に添加してしまうと、熱間圧延工程での未再結晶域の温度が拡大して、{211}面のX線ランダム強度比を増大させる未再結晶状態の圧延集合組織が熱間圧延工程終了後に多く残存してしまう。そのため、Bの含有量は0.003%以下にする必要がある。これらのことから、Bを添加する場合、その含有量は0.0005%〜0.003%にする必要がある。
Cu、Cr、Mo、Ni、Vは、析出強化若しくは固溶強化により熱延鋼板の引張強度を向上させる効果がある元素である。しかしながら、Cuの含有量が0.001%未満、Crの含有量が0.001%未満、Moの含有量が0.001%未満、Niの含有量が0.001%未満、Vの含有量が0.005%未満であると十分な引張強度向上の効果が得られず、Cuの含有量が1.0%超、Crの含有量が1.0%超、Moの含有量が1.0%超、Niの含有量が1.0%超、Vの含有量が0.1%超であると引張強度向上の効果が飽和して経済性の低下を招く。従って、これらの何れか一種又は二種以上を含有させる場合、Cuは0.001%以上1.0%以下、Crは0.001%以上1.0%以下、Moは0.001%以上1.0%以下、Niは0.001%以上1.0%以上、Vは0.005%以上0.1%以下の含有量とする必要がある。
Nb:0.001〜0.1%
Nbは、析出強化や、ミクロ組織の微細化により引張強度を向上させたり、本発明の目的とするミクロ組織の平均結晶粒径を得る元素として有効である。Nbは、その添加量が過度に少なすぎると本発明の目的とする引張強度、遷移温度が得られなくなる恐れがあるので、0.001%以上添加する必要がある。しかし、多量に添加すると、熱間圧延工程での未再結晶域の温度が拡大して、{211}面のX線ランダム強度比を増大させる未再結晶状態の圧延集合組織が熱間圧延工程終了後に多く残存してしまう。この観点からNbの上限は0.1%とする。
また、本発明においては、必要に応じて、Zr、Sn、Co、W、Mgを、合計1%以下含有していてもかまわない。
次に、本発明に係る熱延鋼板のミクロ組織、集合組織、介在物の限定理由について説明する。
ミクロ組織は、フェライト組織、ベイナイト組織又はこれらの混合組織である必要がある。これは、これらのミクロ組織の場合に、ミクロ組織全体の硬さが比較的均一となり、延性破壊が抑制されて、本発明の目的とする穴広げ性を得ることが可能となるためである。また、ミクロ組織中には、マルテンサイトと残留オーステナイトの混合物である島状マルテンサイト(MA)と呼ばれるミクロ組織が若干残存する場合がある。これは、延性破壊を促進して穴広げ率等を劣化させるので、残存しない方が好ましいが、面積分率で3%以下であれば許容される。
また、ミクロ組織は、その平均結晶粒径が6μm以下である必要がある。これは、その平均結晶粒径が6μm超の場合に、本発明の目的とする遷移温度が得られなくなるためである。
集合組織は、{211}面強度が2.4以下である必要がある。これは、{211}面強度が高いほど鋼板のr値の面内異方性が高くなり、それにより穴広げ加工時における圧延方向の端面への応力集中が高まり、き裂の発生・伝搬が促進され、穴広げ性の劣化を招くためである。この観点から、本発明の目的とする穴広げ性を得るために{211}面強度を2.4以下とする必要がある。
Tiを含む粗大な析出物の析出量が多い場合、この粗大な析出物により延性破壊が促進されて穴広げ性が劣化する。このため、穴広げ性を良好にする観点から、球相当径で100nm以上のTiを含む析出物を粗大Ti析出物としたとき、この粗大Ti析出物は、その粗大Ti析出物中に含まれるTi量の鋼中に占める質量%での割合を0.036%以下とする。なお、Tiを含む粗大な析出物の析出を抑制することは、Tiを含む微細な析出物の析出を促進し、析出強化により強度を得る観点からも好ましい。
また、球相当径で2.0nm以上10nm以下のTiを含む微細な析出物を微細Ti析出物としたとき、この微細Ti析出物は、その密度が2.0×1016個/cm3以上である必要がある。これより微細Ti析出物の密度が小さいと、微細Ti析出物による析出強化能が十分に得られず、引張強度の低下を招く恐れがある。また、微細Ti析出物は、その密度が1.0×1018個/cm3以下であれば、微細な析出物の析出量が減少することにより転位が移動しやすくなり、き裂先端部の塑性変形が起きやすくなり、遷移温度の低温化を図ることが可能となる。このような観点から、微細Ti析出物は、その密度を1.0×1018個/cm3以下とする。
次に、本発明に係る熱延鋼板を製造するための製造方法について説明する。
製鋼工程においては、例えば、高炉等によって溶銑を得た後、転炉にて脱炭処理や合金添加を行い、その後、出鋼した溶鋼に各種の二次精錬装置で脱硫処理、脱酸処理等を行なうことによって、目的とする成分含有量の溶鋼を溶製する。
二次精錬により目的とする成分含有量の溶鋼を溶製した後は、通常の連続鋳造又はインゴット法による鋳造の他、薄スラブ鋳造等の方法で鋳造して鋼片を得る。連続鋳造によって鋼片を得た場合は高温鋼片のまま熱間圧延機に直送してもよいし、この他に、室温まで冷却後に加熱炉によって再加熱した後にこれを熱間圧延するようにしてもよい。また、高炉によって溶銑を得る代替として、原料として鉄スクラップを使用し、これを電炉にて溶解した後、各種の二次精錬を行い、目的とする成分含有量の溶鋼を得るようにしてもよい。
次に、連続鋳造等により得られた鋼片を熱間圧延する際の製造条件について説明する。
まず、連続鋳造等により得られた鋼片を加熱炉にて加熱する。この際の加熱温度は、本発明の目的とする引張強度を得るうえで、1200℃以上に加熱する必要がある。1200℃未満であると、TiやNbを含む析出物がスラブ中に十分に溶解せずに粗大化し、TiやNbの析出物による析出強化能が得られず、本発明の目的とする引張強度が得られなくなる。
続いて、加熱炉より抽出した鋼片に対して粗圧延を行う。粗圧延工程においては、下記の(1)式を満たす条件にて粗圧延を行う必要がある。これは、比較的低温での大圧下を行うことによりγ粒の粒成長を抑制し、再結晶γ粒の細粒化を図り、これをもってミクロ組織の結晶粒の微細化を図るためである。
[(1150℃以下となった後の最初の圧下前の板厚)−(1100℃以下となる前の最後の圧下後の板厚)]/(1150℃以下となった後の最初の圧下前の板厚)×100≧50(%) ・・・ (1)
次に、粗圧延の最終圧下を行うときの温度である粗圧延終了温度は1100℃以上とする必要がある。これは、粗圧延の終了温度がこれ未満であると、粗圧延の圧下後の歪誘起析出が促進され、Tiを含む粗大な析出物の析出量が過度に増加するためである。
粗圧延終了から仕上げ圧延開始までの時間は100秒以内とする必要がある。これは、この時間が100秒超であると、Tiを含む粗大な析出物の析出量が過度に増加するためでる。
続いて、粗圧延をして得られた鋼片に対して仕上圧延を行う。この仕上圧延工程では、その終了温度を945℃以上1035℃以下の温度域とする必要がある。この温度域の下限値を945℃としたのは、仕上げ圧延終了温度がこれ未満であると、未再結晶γ粒からの変態が発生するようになり、その変態後の組織に[211]面強度を増加させる集合組織が多く含まれ、穴広げ性の低下を招くためである。また、この温度域の上限値を1035℃としたのは、仕上げ圧延終了温度を低くすることによって圧延後のオーステナイト組織の回復、再結晶が遅くなり、粒界や粒内のα変態時の核生成サイトが多く残るようになり、その結果、ミクロ組織の結晶粒の微細化が図れ、これをもって低温靭性の改善を図るためである。
続いて、仕上圧延工程により得られた鋼板をランアウトテーブル等で冷却する。この冷却工程では、冷却速度を20℃/sec以上とする必要がある。これは、冷却速度が20℃/sec未満であると、穴広げ性等の劣化の原因となるパーライトが生成されてしまううえ、ミクロ組織の平均結晶粒径が大きくなり遷移温度を劣化させてしまい、これら特性値について本発明の目的とするものが得られなくなる恐れがあるためである。
また、この冷却工程では、Tiを含む微細な析出物を適度に析出させ、より引張強度の優れた熱延鋼板を得るうえで、次に説明するような三段冷却工程を行うことが好ましい。この三段冷却工程では、初めに冷却速度を20℃/sec以上とした一段階目の冷却を行い、続いて、550℃以上650℃以下の温度域で冷却速度を15℃/sec以下として2秒以上の二段階目の冷却を行い、続いて、冷却速度を20℃/sec以上とした三段階目の冷却を行なうようにしてもよい。
三段冷却工程での一段階目の冷却で冷却速度を20℃/sec以上としたのは、これよりも小さい冷却速度であると、穴広げ性等の劣化の原因となるパーライトが生成されてしまう恐れがあるためである。
三段冷却工程での二段階目の冷却で冷却速度を15℃/sec以下としたのは、これよりも大きい冷却速度であると、微細な析出物が十分に析出しない恐れがあるためである。また、この冷却を行なう温度域を550℃以上としたのは、これよりも小さい温度域であると、短時間でTiを含む微細な析出物を析出させる効果が小さくなるためである。また、この冷却を行なう温度域を650℃以下としたのは、これよりも大きい温度域であると、TiC等のTiを含む析出物が粗大に析出し、十分な引張強度が得られないおそれがあるためである。また、650℃超の温度域ではパーライトが生成し穴広げ性を劣化させる可能性がある。この冷却を2秒以上としたのは、これよりも冷却時間が短いと、微細な析出物が十分に析出されないためである。また、この冷却時間は5秒以下とすることが好ましい。これは、5秒超であると、かえって析出物が粗大に析出し、引張強度の低下を招くためである。また、この冷却時間が5秒超の場合、パーライトが生成し、穴広げ性を劣化させる可能性がある。
三段冷却工程での三段階目の冷却で冷却速度を20℃/sec以上としたのは、二段階目の冷却の後に速やかに冷却を行なわないと析出物が粗大に析出し、引張強度の低下を招く恐れがあるためである。また、この冷却速度が20℃/sec未満であるとパーライトが生成し、穴広げ性を劣化させる可能性がある。
なお、各冷却工程において、20℃/sec以上の冷却速度は、例えば、水冷、ミストによる冷却等で実現され、15℃/sec以下の冷却速度は、例えば、空冷により実現される。
続いて、冷却工程又は三段冷却工程により冷却された鋼板を巻き取り装置等により巻き取る。この巻き取り工程では、200℃以上540℃以下の温度域において鋼板を巻き取ること必要となる。これは、200℃未満の温度域において鋼板を巻き取ると、微細Ti析出物の密度が小さくなってしまい、その結果、引張強度の低下を招いてしまう。また、540℃超の温度域において鋼板を巻き取ると、Tiを含む微細な析出物が過多に析出し、低温靭性が劣化する恐れがあるうえ、穴広げ性等の劣化の原因となるパーライトが生成してしまう。このため、巻取り温度は200℃以上540℃以下とする。
以上が本発明に係る熱間圧延工程の製造条件となるが、熱間圧延工程の終了後に、可動転位の導入による延性の向上や鋼板の形状の矯正を図ることを目的として、スキンパス圧延をするようにしてもよい。また、熱間圧延工程の終了後に、得られた鋼板の表面に付着しているスケールの除去を目的として酸洗するようにしてもよい。また、熱間圧延終了後又は酸洗後に、得られた鋼板に対してインライン若しくはオフラインでスキンパス圧延、又は、冷間圧延をしてもよい。
また、熱間圧延工程終了後に溶融めっき法によりめっき処理をして、鋼板の耐食性を向上させるようにしてもよい。また、溶融めっきに加えて合金化処理をするようにしてもよい。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。
まず、表1に示す鋼成分の溶鋼を転炉での溶製、二次精錬を行なうことによって溶製した。連続鋳造によりスラブを得た。その後に、表2に示すような製造条件で熱間圧延を行い、板厚2.9mmの鋼板を得た。得られた鋼板のミクロ組織、集合組織、得られた鋼板の機械的性質について表3に示す。ミクロ組織、集合組織、介在物の測定方法や機械的性質の測定方法は、上述の通りである。表1、2における下線は、本発明の範囲外である、又は、好ましい範囲外であることを意味する。
Figure 2013209723
Figure 2013209723
Figure 2013209723
鋼1、3、4、9、16、17は発明の要件を満たすものであり、引張強度が780(MPa)以上、穴広げ率が80(%)以上、破面遷移温度が−80(℃)以下と各特性値について本発明の目的とするものが得られている。
鋼番2、12は仕上げ圧延温度が所定より低いため、[211]面強度が低くなっており、その結果、穴広げ性が低くなっている。
鋼番5、13は仕上げ圧延温度が所定より高いため、ミクロ組織の平均結晶粒径が大きくなっており、その結果、遷移温度が高くなっている。
鋼番6、14は粗圧延終了〜仕上げ圧延開始までの時間が所定より長いため、粗大Ti析出物の析出量が大きくなっており、その結果、穴広げ性が低くなっている。
鋼番7、15は粗圧延終了温度が所定より低いため、粗大Ti析出物の析出量が大きくなっており、その結果、穴広げ性が低くなっている。
鋼番8は、粗圧延工程での(1)式に記載の圧下率Rが小さいため、ミクロ組織の結晶粒径が粗大化しており、その結果、遷移温度が高くなっている。
鋼番10は、巻取り温度が高すぎるため、パーライトが生成しており、その結果、穴広げ性が低くなっている。また、鋼番10は、巻取り温度が高すぎるため、微細Ti析出物が過多に析出しており、その結果、遷移温度が高くなっている。
鋼番11は、巻取り温度が低すぎるため、微細Ti析出物の密度が小さくなっており、その結果、強度が低くなっている。
鋼番18はSが所定より高いため、穴広げ性が低くなっている。
鋼番19はCが所定より低いため、ミクロ組織の結晶粒径が大きくなっており、その結果、遷移温度が過度に高くなっている。また、Cが所定より低い為、微細Ti析出物の密度が小さくなっており、引張強度も低くなっている。
鋼番20はCが所定より高いため、穴広げ性が低くなっている。
鋼番21はMnが所定より高いため、熱間圧延時に割れが生じ、熱延鋼板製品を得ることができなかった。

Claims (6)

  1. 質量%で、
    C:0.03〜0.1%、
    Si:0.001〜2.0%、
    Mn:0.5〜3.0%、
    P:0.1%以下、
    S:0.005%以下、
    Al:0.005〜2.0%、
    N:0.02%以下、
    Ti:0.05〜0.2%を含有し、
    残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼板であって、
    ミクロ組織がフェライト組織、ベイナイト組織又はこれらの混合組織からなるとともに、その平均結晶粒径が6.0μm以下であり、圧延面と平行な[211]面のX線ランダム強度比が2.4以下であり、球相等径で100nm以上のTiを含む析出物中に含まれるTi量の鋼中に占める質量%での割合が0.036%以下であり、球相等径で2.0nm以上10nm以下のTiを含む析出物の密度が2.0×1016個/cm3以上1.0×1018個/cm3以下であること
    を特徴とする成形性及び低温靭性に優れた高強度熱延鋼板。
  2. 更に、質量%で、
    Ca :0.0001〜0.005%、
    REM:0.0001〜0.02%
    の何れか一種又は両方を含有すること
    を特徴とする請求項1に記載の成形性及び低温靭性に優れた高強度熱延鋼板。
  3. 更に、質量%で、
    B :0.0005〜0.003%
    を含有すること
    を特徴とする請求項1又は2に記載の成形性及び低温靭性に優れた高強度熱延鋼板。
  4. 更に、質量%で、
    Cu :0.001〜1.0%、
    Cr :0.001〜1.0%、
    Mo :0.001〜1.0%、
    Ni :0.001〜1.0%、
    Nb :0.001〜0.1%、
    V :0.005〜0.1%
    の何れか一種又は二種以上を含有すること
    を特徴とする請求項1〜3の何れか1項記載の成形性及び低温靭性に優れた高強度熱延鋼板。
  5. 請求項1〜4の何れか1項に記載の成分を含有する鋼片を1200℃以上に加熱し、粗圧延工程において、下記の(1)式を満たす条件にて粗圧延を行い、かつ粗圧延の最終圧下を1100℃以上で行い、粗圧延終了から100秒以内に仕上げ圧延を開始し、945℃以上1035℃以下の温度域で仕上げ圧延を終了し、続いて冷却速度を20℃/sec以上として冷却を行い、続いて100℃以上540℃以下の温度域において巻き取ること
    を特徴とする成形性及び低温靭性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法。
    [(1150℃以下となった後の最初の圧下前の板厚)−(1100℃以下となる前の最後の圧下後の板厚)]/(1150℃以下となった後の最初の圧下前の板厚)×100≧50 ・・・ (1)
  6. 前記冷却を行なうときには、冷却速度を20℃/sec以上として冷却を行ない、続いて、550℃以上650℃以下の温度域で冷却速度を15℃/sec以下として2秒以上冷却を行ない、続いて、冷却速度を20℃/sec以上として冷却を行なうことを特徴とする請求項5に記載の成形性及び低温靭性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法。
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