JP2013209699A - 真空蒸着装置および真空蒸着方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】真空蒸着室内に縦置きに配置した大型基板に蒸発源を用いて蒸着する際に、有機材料のような熱負荷で劣化しやすい材料を蒸着するときであっても、高速の成膜を可能とする。
【解決手段】真空蒸着装置100は、真空容器からなる蒸着室5と、基板1に蒸着膜を形成するための蒸発源31とを備える。蒸発源は、蒸着材料を貯留する蒸発室22とこの蒸発室で蒸発した蒸着材料を基板に放射するノズル21とを有する。蒸発室に供給する蒸着材料が貯留された材料ホッパー室11を蒸着室内に設け、この材料ホッパー室に貯留された蒸着材料4を蒸発室に搬送可能な蒸着材料搬送手段68を材料ホッパー室に付設する。蒸着材料搬送手段は、その先端部に断熱部材62を有する。
【選択図】図1
【解決手段】真空蒸着装置100は、真空容器からなる蒸着室5と、基板1に蒸着膜を形成するための蒸発源31とを備える。蒸発源は、蒸着材料を貯留する蒸発室22とこの蒸発室で蒸発した蒸着材料を基板に放射するノズル21とを有する。蒸発室に供給する蒸着材料が貯留された材料ホッパー室11を蒸着室内に設け、この材料ホッパー室に貯留された蒸着材料4を蒸発室に搬送可能な蒸着材料搬送手段68を材料ホッパー室に付設する。蒸着材料搬送手段は、その先端部に断熱部材62を有する。
【選択図】図1
Description
本発明は、真空蒸着膜を作成する真空蒸着装置および真空蒸着方法に係り、特に、大型基板上に有機EL膜を形成するのに好適な真空蒸着装置および真空蒸着方法に関する。
有機EL表示装置や照明装置に用いられる有機ELデバイスは、有機材料からなる有機薄膜層を、陽極と陰極の一対の電極で上下から挟み込んだ構造に形成されている。これらの一対の電極に電圧を印加すると、陽極側から正孔が、陰極側から電子がそれぞれ有機層に注入され、注入された正孔と電子が再結合して発光する。
上記有機薄膜層は、正孔注入層および正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層を含む多層膜が積層された構造になっている。有機層には、高分子材料および低分子材料のいずれも用いられるが、低分子材料を用いる場合には、真空蒸着装置を用いて真空蒸着により有機薄膜が形成される。
ところで、有機ELデバイスの特性は有機層の膜厚に大きく影響される。一方、有機薄膜を形成する基板は年々大型化してきている。そこで、有機ELデバイスを作成するには、基板上に形成される有機薄膜や電極用金属薄膜の膜厚を高精度に制御することはもちろんであるが、基板の大型化に伴う長時間連続稼動が必要になっている。
有機ELデバイスの作成や大型化した基板への真空蒸着を目的として、真空蒸着源または真空蒸着装置を改良することが種々提案されている。例えば、基板に薄膜を連続して形成するのに用いる蒸発源の例が、特許文献1に開示されている。この公報に記載の蒸着装置では、蒸気飛散分布を安定化させて所望の膜厚を得るために、蒸発装置内に固定配置した蒸発源に、材料供給用パイプを用いて真空装置外から蒸着材料を供給している。そして、蒸発源の重量を測定しながら、供給量を制御している。
また、特許文献2に記載の成膜装置では、有機材料を変質させることなく、少量ずつ蒸発させるために、蒸発源の上部に有機材料を収容するタンク室を設けている。そして、タンク室と蒸発源である蒸発室とを接続管で接続し、加熱したシールドガスを接続管に導入し、タンク内の有機材料をシールドガスとともに蒸発室内に移動させている。接続管の蒸発室側の接続部分は、小孔形状である。なお、接続管の上部には突条と突条間の溝で構成された螺旋が挿入されており、この螺旋の溝内から蒸着材料が接続管内へ落とされる。
蒸着源を有する蒸着装置のさらに他の例が、特許文献3に記載されている。この公報に記載の蒸着装置では、大型基板に適用するために、蒸着源はライン上に配列された開口から水平方向に蒸着物質を供給している。そして、複数の開口を有する蒸着端に蒸発物質の複数の供給管が接続されており、各供給管に流量制御手段を設けて、蒸着膜の均一化を図っている。
ところで、上記特許文献1に記載の蒸着装置では、蒸着源を真空チャンバ内に配置し、真空チャンバ外部から真空チャンバ内の蒸発源にノズルで蒸発材料を供給しているので、蒸発源に蒸着材料を供給する際は、一旦蒸着を停止しなければならない。したがって、真空蒸着工程のスループット性が低下する。また、蒸発源を真空チャンバ内に固定保持し、基板を回転させて基板上に形成される蒸着膜の膜厚均一性を確保しているが、基板を真空チャンバ内で回転させなければならず、大型の基板には対応が困難である。
特許文献2に記載の成膜装置では、蒸発源上部のタンク室内に蒸着材料を収容し、螺旋の溝を利用して少量ずつ蒸着材料を蒸発させている。これにより、変質しやすい有機材料からなる蒸着材料への熱負荷を軽減している。しかしながら、材料を保持するタンク室は真空槽内に配置されているのでその容量に限界があり、長時間蒸着を続けることが課題となっている。
また、蒸発室と蒸着材料が収容されるタンク室とを接続管で接続しており、さらに接続管の下端は小孔に形成された状態なので、蒸着材料は環境温度の影響を受けやすいが、蒸着材料投入時の温度変化による影響については考慮されていない。さらに、大型基板に対応するためには複数の蒸発源を同一の蒸着レートに制御する必要があるが、そのような蒸着レートの制御についても十分には考慮されていない。
特許文献3には、原料供給源から供給管を経由して、気化された材料を複数の開口を設けた供給端まで供給している。これにより大型基板への蒸着を可能としているが、常時、気化した状態に蒸着材料を維持するため加熱しており、有機材料のような熱負荷に弱い材料では熱負荷により変質して使用できなくなるまたは成膜の質が劣化する恐れがある。
本発明は、上記従来技術の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、真空蒸着室内に縦置きに配置した大型基板に蒸発源を用いて蒸着する際に、有機材料のような熱負荷で劣化しやすい材料を蒸着するときであっても、高速の成膜を可能とすることにある。さらに、このような大型基板から製造される有機ELデバイスにおける蒸着において、蒸着膜の膜厚を精度良く制御しながら長時間の連続成膜を可能にすることも目的とする。
上記目的を達成するため、本発明は、真空容器からなる蒸着室と、基板に蒸着膜を形成するための蒸発源とを備えた真空蒸着装置において、前記蒸発源は、蒸着材料を貯留する蒸発室とこの蒸発室で蒸発した蒸着材料を基板に放射するノズルとを有し、前記蒸発室に供給する蒸着材料が貯留された材料ホッパー室を前記蒸着室内に設け、この材料ホッパー室に貯留された蒸着材料を前記蒸発室に搬送可能な蒸着材料搬送手段を前記材料ホッパー室に付設し、前記蒸着材料搬送手段はその先端部に断熱部材を有することにある。
そしてこの特徴において、前記蒸発源は、前記ノズルが形成された面とは異なる面に開口を有し、前記蒸着材料搬送手段は、前記開口と前記材料ホッパー室間を接続する材料供給パイプと、前記材料供給パイプ内を往復動可能な材料搬送用ピストンとを有し、前記断熱部材は前記材料搬送用ピストンの先端部に配置してあることが好ましい。
さらに、前記材料搬送用ピストンの先端部に配置した断熱部材から、この材料搬送用ピストンの往復動方向に離隔して、他の断熱部材を前記材料搬送用ピストンに設けてもよく、基板に蒸着される蒸着膜の膜厚をモニターする膜厚モニターを前記蒸発源の近傍に配置し、この膜厚モニターの出力に基づいて前記蒸発室内の蒸着材料の残量を求める制御装置を設けてもよい。
さらにまた、前記蒸着材料搬送手段は、前記材料ホッパー室に一端側を固定された材料供給パイプと、この材料供給パイプ内を往復動可能な材料搬送用ピストンとを有し、前記断熱部材を前記材料搬送用ピストンの先端部に配置し、前記材料搬送用ピストンの先端が、前記ノズルを経て前記蒸発室まで往復動可能なように前記材料搬送用ピストンを配置するようにしてもよく、前記蒸発源を複数個列状に配置し、前記膜厚モニターを各蒸発源に配設し、前記制御手段は前記複数の蒸発源を各膜厚モニターの出力に基づいて個々に制御するようにしてもよい。
上記目的を達成する本発明の他の特徴は、有機ELデバイスの有機膜または電極膜を形成するために、蒸着室内に配置した基板に蒸発源内の蒸着材料をヒーターで加熱して前記基板に蒸着させる真空蒸着方法において、前記蒸発源の近傍に配設した材料ホッパー室に蒸着材料を貯留し、この材料ホッパー室の下部に接続された材料供給パイプ内を往復動可能な材料搬送用ピストンが前記材料ホッパー室内の蒸着材料の一部を保持し、その後前記材料供給パイプ内を通って前記蒸発源に形成した開口から前記蒸発源内の蒸発室に蒸着材料を供給し、前記蒸発源内に蒸着材料を供給した後は前記材料搬送用ピストン先端部に設けた断熱部材で前記蒸発源に設けた開口を塞ぐようにしたことにある。
そしてこの特徴において、前記蒸発源をヒーターで加熱して前記蒸発源内の蒸着材料を基板に蒸着中に、前記材料搬送用ピストンを用いた蒸発室への蒸着材料の供給動作を繰り返すことが好ましく、さらに前記蒸発室内の蒸着材料の液面高さを前記蒸着源の近傍に配置した膜厚モニターの出力から求め、この求めた液面に基づいて前記材料搬送用ピストンにより蒸着材料を前記蒸発室に供給し、基板への蒸着中に前記蒸発室内の蒸着材料の残量を一定に保つように前記材料搬送用ピストンによる蒸発室内への蒸着材料の供給を制御することが好ましい。
本発明によれば、蒸着源に蒸着材料を供給する供給手段を設け、この供給手段を作動させたときに供給手段の開口部を開閉可能な断熱手段を設けたので、蒸着源内部の温度分布を均一化でき、蒸着源からの蒸着材料の放射が一様化される。これにより、有機材料のような熱負荷で劣化しやすい材料を蒸着するときであっても、高速の成膜が可能になる。また、大型基板から製造される有機ELデバイスにおける蒸着においても、蒸着膜の膜厚を精度良く制御することが可能になり、さらに蒸着材料供給手段を設けたので、長時間の連続成膜が可能になる。
以下、本発明に係る真空蒸着装置を、図面を用いて説明する。以下の説明においては、有機ELデバイスの製造に用いる真空蒸着装置について説明するが、本発明は有機ELデバイスの製造用の真空蒸着装置に限るものではなく、金属膜や有機膜等の薄膜を蒸着する場合に適用可能である。
初めに、図7に示した生産工程図を用いて、有機ELデバイスの製造手順を説明する。図7においては、有機ELデバイスとして有機ELディスプレイを想定している。基板の上面に有機層およびこの有機層に流れる電流を制御する薄膜トランジスタ(TFT:thin film transistor)が形成されるTFT基板と、有機層を外部の湿気から保護する封止基板とを別個に準備し、それぞれの基板を複数の工程を経て、封止工程で組み合わせるのが、大きな流れである。
TFT基板が製造ラインに投入される(ステップS710)と、初めにウェット洗浄が施され(ステップS712)、次いでウェット洗浄された基板に対してドライ洗浄が施される(ステップS714)。ドライ洗浄では、紫外線照射による洗浄が含まれる場合もある。ドライ洗浄されたTFT基板に、TFTが形成される。図7ではTFTの形成が省略されている。TFTが形成されたTFT基板では、TFTの上にパッシベーション膜および平坦化膜が形成される。さらにその上に、有機EL層の下部電極が形成される。下部電極は、TFTのドレイン電極と接続している。下部電極をアノードとする場合は、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)膜が使用される。これらは、スパッタ法を用いて成膜される。
下部電極の上に有機EL層が形成される。有機EL層は複数の層から構成される。下部電極がアノードの場合は、下から、例えば、ホール注入層、ホール輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層の順に形成される。有機EL層は蒸着によって形成され(ステップS716)、この有機EL層の上に上部電極層が形成される。上部電極層は、蒸着により形成される。
有機EL層の上には、各画素共通に、ベタ膜で上部電極が形成される。有機EL表示装置がトップエミッションの場合は、上部電極にはIZO(登録商標)と呼ばれるIn2O3−ZnO等の透明電極が使用され、有機EL表示装置がボンディングボムエミッションの場合は、Al等の金属膜が使用される(ステップS718)。
一方、封止基板は、TFT基板と同様に、製造ラインに投入された(ステップS720)ら、ウェット洗浄(ステップS722)およびドライ洗浄(ステップS724)される。そして、デシカント(乾燥剤)が配置されてデシカントが形成される(ステップS726)。有機EL層は水分があると劣化をするので、内部の水分を除去するためにデシカントが使用される。デシカントには種々な材料を用いることが出来るが、有機EL表示装置がトップエミッションかボトムエミッションかによりデシカントの配置方法が異なる。デシカントの形成が終了したら、封止工程での貼り合わせのために基板の周囲部等にシール剤が塗布される(ステップS728)。
別々に製造されたTFT基板と封止基板は封止工程(ステップS740)において、組み合わされる。TFT基板と封止基板を封止するためのシール剤は、上述したように封止基板に形成される。封止基板とTFT基板を組み合わせた後、シール部に紫外線を照射して、シール部を硬化させ、封止を完了させる。
最後に、このように形成した有機EL表示装置に対して点灯検査を実行する(ステップS750)。点灯検査において、黒点や白点等の欠陥が生じている場合に、欠陥修正可能であれば修正する。これにより、有機EL表示装置が完成する。
上記有機ELデバイスの製造工程において、ステップS716における有機EL層およびステップS718における上部電極層の形成は、真空蒸着により実行される。この蒸着に用いる真空蒸着装置の具体的な実施例を、以下に説明する。なお、真空蒸着装置は、金属電極層(陽極)の上に正孔注入層や正孔輸送層、発光層(有機膜層)を、金属電極層(陰極、上部電極)の下に電子注入層や電子輸送層などを作成するのに用いられ、様々な材料の薄膜層を真空蒸着により多層積層して形成可能である。
図1に、真空蒸着装置100の一実施例を模式図で示す。図1に示すように、本発明に係る真空蒸着装置100は、熱負荷による蒸着材料4の劣化を防止するとともに長時間の連続成膜が可能なように、蒸着室5内に設けた蒸発源31に材料供給パイプ63および蒸着材料4を保持するための材料ホッパー室11を付設している。蒸着材料4を搬送および投入する際には、先端部分が断熱構造を有する材料搬送用ピストン61を用いて、材料ホッパー室11から蒸発源31内の蒸発室22へ蒸着材料4を搬送する。ピストン61が断熱構造に形成されているので、蒸着材料4を搬送および投入する際にも、蒸発源31の温度分布変化を可能な限り少なくすることができる。
より具体的には、本実施例の真空蒸着装置100では、真空に排気される蒸着室5内に垂直に基板1が配置されている。この基板1から所定間隔をおいて、蒸着源20が配置されている。蒸着源20の反基板側には、材料ホッパー室11が付設されている。材料ホッパー室11と蒸着源20とは、材料供給パイプ63で接続されている。
基板1の近傍であって蒸着源20よりも前方側、すなわち基板1の側に、この蒸着源20から蒸発する蒸着材料4が基板1に蒸着する量を計測するための膜厚モニター12が配置されている。膜厚モニター12は水晶振動子を備えており、表面に蒸発材料が付着することにより、その発振周波数が変動することで膜厚を測定する。膜厚モニター12が検出した信号は、膜厚制御計8で基板1面の膜厚に換算される。換算された膜厚に基づいて制御用パソコン10が、蒸発源31の周囲に配置したヒーター32への制御指令を蒸発源電源9に入力し、ヒーター32への通電量が制御される。制御用パソコン10は、蒸着データも記録する。
蒸着源20は、内部に蒸発室22が形成された蒸発源31と、蒸発源31を構成する壁面の一方側、本実施例では基板1に対向する側に形成され、蒸発室22に連通する開口21と、蒸発源31の外周部に配置されたヒーター32とを備えている。蒸発源31はリニア蒸発源と言われるもので、蒸発源31の開口21はノズルと呼ばれ、紙面垂直方向に間隔をおいて複数個形成されている。蒸発源31には、さらに図示しない坩堝温度を制御するための熱電対や熱を外部に漏らさないようにするための熱シールドおよび水冷シールド等が設けられている。蒸発源31の反基板側である背面側にも開口23が形成されており、材料搬送用ピストン62がこの開口23を通って往復動自在に蒸発室22内に到ることが可能になっている。
蒸発室22内には、所定量の蒸着材料4が予め収容されている。一方、材料ホッパー室11内にも真空蒸着材料である有機材料または電極形成用の金属が、所定量収容されている。材料ホッパー室11の底部付近には、材料搬送用ピストン61が往復動するための開口71が形成されている。蒸発源31の開口23と材料ホッパー室11の開口71間を材料供給パイプ63が接続しており、材料搬送用ピストン61のガイドとして作用する。蒸着材料4を、材料搬送用ピストン61の先端部においてところてん方式で押し出す構成である。材料搬送用ピストン61と材料供給パイプ63とは、蒸着材料搬送手段68を構成する。
蒸発源31の温度は、蒸着材料4として有機材料を使用する場合には、200℃から500℃程度に温度制御される。材料搬送用ピストン61を用いて材料ホッパー室11から蒸着材料4を蒸発源31へ搬送する本システムでは、ヒーター32と蒸発源電源9を用いて蒸発室22内を所望の温度に設定できる。
しかしながら、蒸着材料4を材料ホッパー室11から蒸着源20に搬送中および投入中には、蒸着源20に形成した開口23のため、蒸発源31の一部が温度低下する恐れがある。蒸発源31内に温度が不均一な部分があると、開口21から放射される蒸気2の流量がその温度変化分に対応して変動する。
そこで本実施例では、材料搬送用ピストン61のロッド部66の先端に、断熱部材で形成された断熱構造ピストン先端部62を設けている。これにより、蒸発源31の温度低下を防ぐことができる。すなわち、材料搬送用ピストン61の往復動に伴い、蒸発源31に形成した開口23を補充用の蒸着材料4が通過する場合であっても、蒸発源31の開口23をすぐに断熱構造ピストン先端部62が閉塞するので、蒸発室22内の温度低下を極力抑制できる。したがって、蒸着材料4を蒸発室22内へ温度低下させずに投入できるので、蒸着材料4の補給が随時可能になる。
従来は蒸着源の温度変化の影響を除くため、蒸着工程を中断しまたは蒸着工程の終了後に蒸着材料を蒸発源に供給していた。しかしながら本実施例によれば、随時蒸着材料4を蒸発源31内に補給できるので、蒸発源31内に貯留する蒸着材料4の量を少量に抑えることができ、蒸発源31やヒーター32などをすべて小型化できる。これにより、電力の投入量が小さくなり、基板1側への熱輻射の量も低減できる。
蒸発源31内に収容される蒸着材料4の量は、蒸発源31から放射される蒸気2の量を膜厚モニター12でモニターし、蒸発源電源9から出力される制御温度との大小を比較することにより、求められる。したがって、膜厚モニター12とヒーター32の電力や図示しない熱電対の計測温度等を監視すれば、蒸発源31内に貯留される蒸着材料4の量をほぼ一定量に調整できる。ここで、蒸発源31内の蒸着材料4の高さ(液状であれば液面高さ)により蒸気2の放射分布は影響され、高いほど広範囲の放射が可能となることが知られている。したがって、蒸発源31内の蒸着材料4の量を一定に制御すれば、蒸発源31から放射される蒸気2の放射分布が一定になり、基板1に蒸着される蒸着膜の膜厚分布の均一性が向上する。
図2に、蒸着源20及び材料ホッパー室11を取り出した縦断面図を示す。この図2は、蒸着材料を蒸発室22内へ搬送した後、蒸発源31の温度を一定に維持する状態を示している。材料搬送用ピストン61は、最も左側、すなわち蒸発室22内に留まる部分が最も少ない状態にある。断熱構造ピストン先端部62は、蒸発源31を構成する背面側壁面の位置に保持されているので、断熱構造ピストン先端部62を構成する断熱材により、蒸発源31からの熱の漏れを遮断もしくは低減し、蒸発源31の温度分布の変化を極力抑制できる。
本発明に係る蒸着源20及び材料ホッパー室11の他の組み合わせの例を、図3に示す。図3(a)は材料搬送用ピストン61の縦断面図であり、図3(b)〜図3(d)は材料搬送用ピストン61のピストン位置を変えて示す蒸着源20及び材料ホッパー室11の縦断面図である。
本実施例が上記実施例と相違するのは、材料搬送用ピストン61に2個の断熱構造ピストン先端部64、65を設けたことにある。図1および図2に示した実施例1では、蒸着材料4を搬送する時であって、材料搬送用ピストン61が備える断熱構造ピストン先端部62が材料ホッパー室11位置にある場合は、断熱構造ピストン先端部62を構成する断熱材が蒸発源31の開口23付近に位置していない。そのため、材料供給パイプ63から蒸発源31の熱が漏れるおそれがある。
本実施例では、図3(a)に示すように、材料搬送用ピストン61の先端に第1断熱構造ピストン先端部64を、材料搬送用ピストン61の先端部分であって第1断熱構造ピストン先端部64から所定距離だけ離れた部分に、断熱材からなる第2断熱構造ピストン先端部65を設けている。第2断熱構造ピストン先端部65には、材料搬送用ピストン61を往復動させるためにロッド部66が接続されている。
このように材料搬送用ピストン61に断熱材を2重に配置したので、蒸着材料4を搬送するときであっても蒸発源31からの熱の漏れを遮断または低減できる。2個の断熱構造ピストン先端部64、65間は、ピストン内材料搬送保持部67として、搬送中の蒸着材料4の貯蔵部として利用される。
図3(b)は、蒸着材料4を蒸発室22内に供給する直前の状態を示す図である。材料搬送用ピストン61は、移動可能な範囲の最も蒸発源31から遠ざかった位置に、図では右端側に位置している。第1断熱構造ピストン先端部64が、蒸発源31を構成する背面側壁面に形成された開口23の位置に来て、開口23を塞いでいる。蒸発源31を断熱材で一体化したので、蒸発源31の温度分布の変動を抑制することができる。
図3(c)および図3(d)は、図3(b)の状態から蒸着材料4を蒸発室22内へ供給する搬送動作時の状態を示す図であり、同図(c)は蒸着材料4を供給途中の図、同図(d)は蒸着材料4の供給動作が終了したとき時の状態を示す図である。図3(b)の状態では、材料ホッパー室11の底面付近にピストン内材料搬送保持部67が位置し、蒸着材料4がホッパー室11から材料搬送用ピストン61のピストン内材料搬送保持部67に移されている。
材料搬送用ピストン61に蒸着材料4が移されたので、図3(c)では、材料搬送用ピストン61の先端側を、材料供給パイプ63を経て蒸着室22内まで延在させている。蒸着材料42はまだ搬送途中であり、材料供給パイプ63内の蒸発室22側の先端付近に達した状態である。
さらに蒸着材料4の搬送が進み、材料搬送用ピストン61のピストン内材料搬送保持部67が完全に蒸発室22内に移動すると、ピストン内材料搬送保持部67に保持された蒸着材料44が蒸発室22内に投入または供給される。このとき、第2断熱構造ピストン先端部65が、蒸発源31の壁の開口23を塞ぐ。したがって、蒸発源31は基板1に対向する放射側の開口21を除き、一体化された断熱壁で構成され、蒸発源31からの熱の漏えいを遮断もしくは低減できる。
蒸着材料4(44)を蒸発室22に投入するタイミングや蒸発源31内の蒸着材料4の残量は、実施例1と同様に、膜厚モニター12で制御される。蒸発源31内の蒸着材料4の残量を、蒸発源31の下に圧電センサーを設置して、蒸発源31の重量を測ることでも検出可能である。また、蒸気2が放射される開口21側からレーザーを照射し、レーザー寸法測定機で蒸発室22内の蒸着材料4の高さ(液面)を測定する方法を用いることもできる。
本実施例では、開口23を蒸発源31の背面側に配置したが、開口23の位置はこの位置に限るものではなく、基板5の蒸着に関係するノズル21が形成された面以外であれば側面でも可能である。ただし、ヒーター32の配設の都合上、背面側に設ければヒーターを特殊形状とする必要がなく、容易に蒸着材料搬送手段68を蒸発源31に取り付けることができる。
本発明に係る蒸発源31及び材料ホッパー室11の他の組み合わせを、図4に示す。本実施例が実施例1および実施例2で示したものと相違するのは、上記各実施例では基板1を垂直に立てていたのに対し、本実施例では基板1は水平に配置されることにある。基板1を水平にして有機材料または金属材料を蒸着する場合には、基板1への塵埃等の付着を防止するため、基板1の蒸着面は下側になる。
基板1の下側に、蒸発源31および材料ホッパー室11を基板1に対向して配置するので、ヒーター32は蒸発源31の上部だけ加熱し、蒸発源31内でノズル21が詰まるのを防止している。ヒーター32を蒸発源31の下部にも配置することは可能であるが、その場合、材料供給パイプ63を蒸発源31の底面から所定高さの位置に設置する必要があるので、ヒーター32は材料供給パイプ63を避けた形状に変更する必要がある。
なお図示しないが、材料ホッパー室11とヒーター32が近接するので、ヒーター32の熱を断熱するリフレクターを材料ホッパー室11とヒーター32間に設けて、材料ホッパー室11内での蒸着材料4の熱劣化を低減する。本実施例では、材料搬送用ピストン61として実施例1に示したものを用いているが、実施例2で示した材料搬送用ピストン61を用いることも可能である。
本発明に係る蒸発源31と材料ホッパー室11の他の組み合わせを、図5及び図6を用いて説明する。本実施例が上記実施例1〜実施例3と異なるのは、上記各実施例では反基板側から蒸発室22に蒸着材料4を供給していたのに対し、本実施例では基板1に対向する側から蒸着材料4を蒸発室22に供給していることにある。
上記各実施例では、材料供給パイプ63を蒸発源31の反基板側に接続していたので、蒸発源31の壁面に形成した開口23からの熱の漏れにより、蒸発源31の温度分布が不均一になるのを対策する必要があった。本実施例では前面側、すなわち基板対向側から蒸着材料4を蒸発室22内に供給するので、そのような対策が不要となる。ただし、蒸気2の放射側に材料ホッパー室11を配置し、ノズル(開口)21に材料供給パイプ63を配置せざるを得ず、基板1への蒸着と蒸着材料4の蒸発室22への供給とを同時に実行することはできない。その代わり、本実施例では蒸発源31の改造が不要である。
図5に示す実施例では、材料搬送用ピストン61および材料供給パイプ63を蒸気2が放射されるノズル21側から挿入して使用する。材料供給パイプ63を蒸発源31のノズル21側から蒸発室22内に挿入するので、蒸気2がほとんど出ない状態まで蒸発源31の温度を下げてから、ノズル21側から蒸着材料4を供給および投入する。具体的には、蒸着材料4の蒸発温度よりも100℃以上温度を低下させた後、材料搬送用ピストン61を駆動して蒸着材料4を蒸発室22内に供給する。このようにすることにより、材料供給パイプ63が蒸気2で詰まることなく、蒸着材料4を蒸発室22内へ投入できた。
図5に示した実施例の変形例を、図6に示す。この図6では、蒸発源31内の蒸発室22に材料坩堝33を別個配置している。蒸発室22内に材料坩堝33を配置した結果、材料坩堝33内の蒸着材料4の高さ(液面)が、蒸発室22全体を蒸着材料4の収容場所にした場合に比べ高くなり、ノズル21側から水平に材料供給パイプ63を挿入しただけでは、材料坩堝33へ蒸着材料4を供給できない。そこで、材料坩堝33の形状に合わせて、材料供給パイプ63の挿入角度等を調整する。これにより、蒸発源31を改造することなく、材料坩堝33に蒸着材料4を供給できる。本変形例は、使用する蒸着材料により使用可能な材料坩堝が制限される場合に有効である。
上記各実施例及び変形例において、大型の基板1等に蒸着する場合、蒸発源31を複数個、縦列状または横列状に設けるのが好ましい。その場合、膜厚モニター12は、各蒸発源31に対して1対1に配設する。さらに、各膜厚モニター12ごとに膜厚制御計8を設けて、制御装置である制御用パソコン10が個々に制御するのが好ましい。
本発明の各実施例及び変形例によれば、複数の層から形成される有機EL層の蒸着膜及び電極層を、異物による汚染を抑えながら短いタクト時間で形成することができる。これにより、有機ELデバイス、特に有機EL表示装置の製造コストを低下させ、かつ歩留まりも向上させることができる。さらに、有機EL層の各層の成分を正確に制御することができ、有機ELデバイスの均一な品質を確保でき、信頼性の高い有機EL表示装置を製造可能になる。
1…基板、2…蒸気、4…蒸着材料、5…蒸着室、8…膜厚制御計、9…蒸発源電源、10…制御用パソコン(制御装置)、11…材料ホッパー室、12…膜厚モニター、20…蒸着源、21…開口(ノズル)、22…蒸発室、23…開口、31…蒸発源、32…ヒーター、33…材料坩堝、42、44…蒸着材料、61…材料搬送用ピストン、62…断熱構造ピストン先端部、63…材料供給パイプ、64…第1断熱構造ピストン先端部(断熱部材)、65…第2断熱構造ピストン先端部(他の断熱部材)、66…ロッド部、67…ピストン内材料搬送保持部、68…蒸着材料搬送手段、71…開口、100…真空蒸着装置。
Claims (9)
- 真空容器からなる蒸着室と、基板に蒸着膜を形成するための蒸発源とを備えた真空蒸着装置において、
前記蒸発源は、蒸着材料を貯留する蒸発室とこの蒸発室で蒸発した蒸着材料を基板に放射するノズルとを有し、前記蒸発室に供給する蒸着材料が貯留された材料ホッパー室を前記蒸着室内に設け、この材料ホッパー室に貯留された蒸着材料を前記蒸発室に搬送可能な蒸着材料搬送手段を前記材料ホッパー室に付設し、前記蒸着材料搬送手段はその先端部に断熱部材を有することを特徴とする真空蒸着装置。 - 前記蒸発源は、前記ノズルが形成された面とは異なる面に開口を有し、前記蒸着材料搬送手段は、前記開口と前記材料ホッパー室間を接続する材料供給パイプと、前記材料供給パイプ内を往復動可能な材料搬送用ピストンとを有し、前記断熱部材は前記材料搬送用ピストンの先端部に配置してあることを特徴とする請求項1に記載の真空蒸着装置。
- 前記材料搬送用ピストンの先端部に配置した断熱部材から、この材料搬送用ピストンの往復動方向に離隔して、他の断熱部材を前記材料搬送用ピストンに設けたことを特徴とする請求項2に記載の真空蒸着装置。
- 基板に蒸着される蒸着膜の膜厚をモニターする膜厚モニターを前記蒸発源の近傍に配置し、この膜厚モニターの出力に基づいて前記蒸発室内の蒸着材料の残量を求める制御装置を設けたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の蒸着装置。
真空蒸着装置。 - 前記蒸着材料搬送手段は、前記材料ホッパー室に一端側を固定された材料供給パイプと、この材料供給パイプ内を往復動可能な材料搬送用ピストンとを有し、前記断熱部材を前記材料搬送用ピストンの先端部に配置し、前記材料搬送用ピストンの先端が、前記ノズルを経て前記蒸発室まで往復動可能なように前記材料搬送用ピストンを配置したことを特徴とする請求項1に記載の真空蒸着装置。
- 前記蒸発源を複数個列状に配置し、前記膜厚モニターを各蒸発源に配設し、前記制御手段は前記複数の蒸発源を各膜厚モニターの出力に基づいて個々に制御することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の真空蒸着装置。
- 有機ELデバイスの有機膜または電極膜を形成するために、蒸着室内に配置した基板に蒸発源内の蒸着材料をヒーターで加熱して蒸発させ前記基板に蒸着させる真空蒸着方法において、
前記蒸発源の近傍に配設した材料ホッパー室に蒸着材料を貯留し、この材料ホッパー室の下部に接続された材料供給パイプ内を往復動可能な材料搬送用ピストンが前記材料ホッパー室内の蒸着材料の一部を保持し、その後前記材料供給パイプ内を通って前記蒸発源に形成した開口から前記蒸発源内の蒸発室に蒸着材料を供給し、前記蒸発源内に蒸着材料を供給した後は前記材料搬送用ピストン先端部に設けた断熱部材で前記蒸発源に設けた開口を塞ぐようにしたことを特徴とする真空蒸着方法。 - 前記蒸発源をヒーターで加熱して前記蒸発源内の蒸着材料を基板に蒸着中に、前記材料搬送用ピストンを用いた蒸発室への蒸着材料の供給動作を繰り返すことを特徴とする請求項7に記載の真空蒸着方法。
- 前記蒸発室内の蒸着材料の液面高さを前記蒸着源の近傍に配置した膜厚モニターの出力から求め、この求めた液面に基づいて前記材料搬送用ピストンにより蒸着材料を前記蒸発室に供給し、基板への蒸着中に前記蒸発室内の蒸着材料の残量を一定に保つように前記材料搬送用ピストンによる蒸発室内への蒸着材料の供給を制御することを特徴とする請求項8に記載の真空蒸着方法。
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JP2012079802A JP2013209699A (ja) | 2012-03-30 | 2012-03-30 | 真空蒸着装置および真空蒸着方法 |
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-
2012
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