JP2013209344A - 皮下脂肪蓄積抑制剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】皮下脂肪の蓄積を抑制するのに有効な新規な薬剤を提供する。
【解決手段】本発明は、フユイチゴ、ヨメナ、ムベ、リュウキュウイチゴ、インドヨメナ及びマテバシイの植物体又はその抽出物から成る群から選択される1又は複数の成分を含んで成る皮下脂肪蓄積抑制剤を提供する。
【選択図】なし
【解決手段】本発明は、フユイチゴ、ヨメナ、ムベ、リュウキュウイチゴ、インドヨメナ及びマテバシイの植物体又はその抽出物から成る群から選択される1又は複数の成分を含んで成る皮下脂肪蓄積抑制剤を提供する。
【選択図】なし
Description
本発明は、フユイチゴ、ヨメナ、ムベ、リュウキュウイチゴ、インドヨメナ及びマテバシイの植物体又はその抽出物から成る群から選択される1又は複数の成分を含んで成る皮下脂肪蓄積抑制剤、又はこれらの成分を含んで成るAPJ活性化剤に関する。
生体が余剰なエネルギーを蓄積していく、つまり肥満を呈する過程において、脂肪細胞はサイズの増大によって肥大化し、また新たな脂肪細胞の出現によって脂肪細胞数が増加する。すなわち脂肪組織の過剰状態である肥満は、個々の脂肪細胞の肥大化(hypertrophy)と脂肪細胞数の増加(hyperplasia)の両方に起因する。
ヒトは約60兆個の細胞から構成されているが、脂肪細胞の数は約300億個と推定されている。ヒトの脂肪細胞の平均直径は約60〜90ミクロンであり、白色脂肪組織の固定標本を観察しても、一様な大きさで単房性の脂肪滴をもつため、核は細胞膜に接触した形で平らに変形している。このような脂肪組織の形態は、肥満になると劇的に変化する。まず容易に観察されるのは、脂肪細胞サイズの増大である。肥満ヒトの場合、脂肪細胞は最大直径が140〜150ミクロンまでに肥大化する。この肥大化で体積が約3倍までになる(非特許文献1)。
ヒトは約60兆個の細胞から構成されているが、脂肪細胞の数は約300億個と推定されている。ヒトの脂肪細胞の平均直径は約60〜90ミクロンであり、白色脂肪組織の固定標本を観察しても、一様な大きさで単房性の脂肪滴をもつため、核は細胞膜に接触した形で平らに変形している。このような脂肪組織の形態は、肥満になると劇的に変化する。まず容易に観察されるのは、脂肪細胞サイズの増大である。肥満ヒトの場合、脂肪細胞は最大直径が140〜150ミクロンまでに肥大化する。この肥大化で体積が約3倍までになる(非特許文献1)。
肥満には内蔵脂肪型肥満と皮下脂肪型肥満とがあり、いずれも高血圧症などを含む軽度から重篤に至る様々な疾患につながる危険性を有し、現代人が悩まされる症状一つである。その解決法としては運動、食事制限、脂肪分・糖分摂取の制限、機能性食品の摂取など様々であり、より効率的な予防法・解消法が常に所望されている。
リンパ管が拡張し、リンパ管機能異常を有するマウスは肥満の表現型を示し、しかもその皮下脂肪層は、正常なものに比べ、顕著に厚いことも知られている(非特許文献2)。
アペリンは、1998年に、長らくオーファン受容体であった7回膜貫通型のGタンパク質共役型受容体であるAPJ(別名、AGTRL1:Angiotensin receptor like 1)に対する結合因子として牛の胃の細胞抽出液から単離された分子である。ヒトアペリンは、心臓、肺、腎臓、脂肪、胃、脳、副腎、内皮など様々な部位での発現が報告されており、77アミノ酸の前駆タンパク質に由来する36アミノ酸から成るアペリンAPJ受容体のリガンドとして知られる(非特許文献3)。アペリンの cDNA は77アミノ酸をコードするが、この前駆体からロング・フォーム(42〜77アミノ酸)とショート・フォーム(65〜77アミノ酸)が形成される。どちらのアペリンもAPJの活性化を誘導することが知られている。これまで、心血管系や中枢神経系で、APJの発現が報告されてきており、心臓では心筋収縮作用、神経系ではバソプレシンの発現を制御するなど、体液の調節機構に関与することが示唆されてきている。また、APJはエイズウイルスの受容体として感染にも関与することから、種々の観点からの創薬のターゲットとしてにわかに注目を浴びつつある受容体である。APJの発現は、血管系においては、血管内皮細胞や壁細胞に発現するとされてきており、アフリカツメガエルを用いた遺伝子ノックダウンの実験にて、アペリン/APJシステムが血管発生に必須の役割を果たすことが示され、またマウスやヒトにおいても本受容体の発現が内皮細胞に認められることから、哺乳類においても血管形成に関与することが予想されてきた(非特許文献4)。また、アペリンのノックアウトマウスの解析や、試験管内での血管系解析を通して、血管内皮細胞がAng1で刺激を受けた際に分泌するアペリンが血管径を制御することが報告されている(非特許文献5)。さらに、近年、アペリンが、皮膚リンパ管の機能安定化を促進し、皮下脂肪の蓄積を抑制することが明らかとなっている(特許文献1、特許文献2)。
増刊実験医学 Vol. 25, No.15 (2007), pp. 32-40
Nature Genetics 37(10) (2005), pp.1072-1081
Kawamata Y et al, (2001) Molecular properties of apelin: tissue distribution and receptor binding. BIOCHIMICA ET BIOPHYSICA ACTA. 2-3:162-171
実験医学 Vol. 26, No.9 (2008), pp. 1380-1383
Kidoya et al, (2008) Spatial and temporal role of the apelin/APJ system in the caliber size regulation of blood vessels during angiogenesis. EMBO J 27: 522-534
本発明の課題は、皮下脂肪の蓄積を抑制するのに有効な新規な薬剤、又はアペリンの受容体であるAPJを活性化する新規な薬剤を提供することにある。
本発明者は、以前、ウエスタンブロッティング法によって、ヒトリンパ管内皮細胞(以下、LEC)においてアペリンの受容体であるAPJが発現していることを確認した。また、リガンド活性を有するアペリン13、及び36でLECに刺激を負荷したところ、LECによる管腔形成が観察されることも確認した。さらに、アペリンを表皮で高発現する遺伝子を導入したマウスに紫外線照射した場合には、野生型マウスと比較してリンパ管の透過性、及び拡張が有意に抑制されたことが確認された。さらに、アペリンを表皮で高発現するマウスは、高脂肪の食餌を負荷したとしても、野生型に比べ、皮下脂肪蓄積量が有意に抑制されており、アペリンを欠損したマウスでは、高脂肪の食餌を負荷すると野生型に比べ、顕著な皮下脂肪の蓄積がみられることを確認した。これらの結果は、アペリンがリンパ管機能の正常化・安定化を介して、皮下脂肪蓄積抑制作用を示すことを意味するものである。
かかる知見に基づき、本発明者は、この度、アペリン/APJシグナル系を利用したスクリーニング方法を確立し、該スクリーニング方法を用いて、アペリン様薬剤、すなわちアペリンと同様の機能を有する薬剤として、フユイチゴ、ヨメナ、ムベ、リュウキュウイチゴ、インドヨメナ及びマテバシイの植物体又はその抽出物を選定した。
したがって、本願は以下の発明を包含する:
[1] フユイチゴ、ヨメナ、ムベ、リュウキュウイチゴ、インドヨメナ及びマテバシイの植物体又はその抽出物から成る群から選択される1又は複数の成分を含んで成る皮下脂肪蓄積抑制剤。
[2] 経口投与されることを特徴とする[1]に記載の皮下脂肪蓄積抑制剤。
[3] [1]に記載の皮下脂肪蓄積抑制剤を経口投与することからなる、皮下脂肪の蓄積を解消又は予防するための美容学的方法。
[4] フユイチゴ、ヨメナ、ムベ、リュウキュウイチゴ、インドヨメナ及びマテバシイの植物体又はその抽出物から成る群から選択される1又は複数の成分を含んで成るAPJ活性化剤。
[5] 経口投与されることを特徴とする[4]に記載のAPJ活性化剤。
[1] フユイチゴ、ヨメナ、ムベ、リュウキュウイチゴ、インドヨメナ及びマテバシイの植物体又はその抽出物から成る群から選択される1又は複数の成分を含んで成る皮下脂肪蓄積抑制剤。
[2] 経口投与されることを特徴とする[1]に記載の皮下脂肪蓄積抑制剤。
[3] [1]に記載の皮下脂肪蓄積抑制剤を経口投与することからなる、皮下脂肪の蓄積を解消又は予防するための美容学的方法。
[4] フユイチゴ、ヨメナ、ムベ、リュウキュウイチゴ、インドヨメナ及びマテバシイの植物体又はその抽出物から成る群から選択される1又は複数の成分を含んで成るAPJ活性化剤。
[5] 経口投与されることを特徴とする[4]に記載のAPJ活性化剤。
本発明に係る皮下脂肪蓄積抑制剤を経口投与することにより、皮下脂肪の蓄積の予防・解消が可能となる。
APJ受容体は、AGTRL1(アンジオテンシン受容体様1)とも称され、Gタンパク質共役型受容体(GPCR)の1つであり、380のアミノ酸から成る。この膜貫通領域は、アンジオテンシン(AT1)受容体と40〜50%の相同性を示す。APJ受容体は、αサブユニット(約40〜50kDa)、βサブユニット(約35kDa)及びγサブユニット(約10kDa)からなるヘテロ三量体Gタンパク質と共役しており、情報伝達(シグナル)カスケードに関連していることが知られている。APJ受容体が活性化していない状態ではα,β,γの各々のサブユニットは強く結合しているが、APJ受容体にアペリンが結合することにより、APJ受容体が活性化し、αサブユニットに結合しているGDPとGTPの交換反応がおこり、GTP結合型αサブユニットとβγサブユニットに解離する。これらのサブユニットは、各々の標的タンパク質・酵素を活性化し、シグナルを下流へと伝達する。その後、αサブユニットに結合したGTPは、αサブユニットのGTPase活性により分解されてGDPとなり、GDP結合型αサブユニットはβγサブユニットと結合し、不活性型の三量体を再び形成する。三量体Gタンパク質はαサブユニットの機能及び遺伝子の相違から、Gs、Gi、Go、Gq、Gt、Golf等のサブファミリーに分類されている。GsとGi はそれぞれアデニル酸シクラーゼの活性を亢進又は抑制し、Goは神経組織のシグナル伝達系に関係し、GqはホスホリパーゼCβを活性化し、そしてGtとGolfはそれぞれ視細胞(網膜)と臭細胞のシグナル伝達系に重要な役割を果たしている。APJ受容体がアペリンと結合した場合には、Gi経路を介してアデニル酸シクラーゼの活性が抑制されるため、その結果、細胞内のcAMP濃度が減少する。
本発明者は、上記アペリン/APJシグナル系を利用し、アペリン様薬剤のスクリーニング方法を確立した。具体的には、アペリン様薬剤のスクリーニングは、まず、1次スクリーニングとして、cAMPルシフェラーゼレポーターベクターをトランスフェクトした単離細胞(例えば、NIH-3T3細胞)を96ウェルプレートに播種し、そこに候補薬剤を添加してプレインキュベートし、フォルスコリンによりアデニル酸シクラーゼを活性化させた後、ルシフェラーゼの発光をルミノメーター(例えば、GloMaxTM 96 Microplate Luminometer(Promega))によりcAMP濃度を測定し、フォルスコリンによるcAMP濃度上昇を抑制した薬剤を選定とする。そして、次に、cAMP濃度の減少がAPJの活性化を介していることを確認するために、2次スクリーニングとして、1次スクリーニングで選定した薬剤とアペリン中和抗体(例えば、4G5)とを一緒に加え、1次スクリーニングと同様のルシフェラーゼアッセイを行う。その結果、中和抗体の添加により、cAMP濃度の減少が抑制され、80%以上、好ましくは90%以上、最も好ましくは100%までcAMP濃度の減少を回復する薬剤をアペリン様薬剤として選定することができる。
本発明者は、この度、上記スクリーニング方法により、フユイチゴ、ヨメナ、ムベ、リュウキュウイチゴ、インドヨメナ及びマテバシイの植物体又はその抽出物が、アペリンの受容体であるAPJを活性化させ、これにより、アペリンと同様の機能を有する蓋然性が極めて高いという知見を得た。したがって、本発明により、フユイチゴ、ヨメナ、ムベ、リュウキュウイチゴ、インドヨメナ及びマテバシイの植物体又はその抽出物から成る群から選択される1又は複数の成分を含んで成るAPJ活性化剤が提供される。
さらに、本発明者は、上述のとおり、アペリンがリンパ管機能の正常化・安定化を介して、皮下脂肪蓄積抑制作用を示す、という驚くべき知見を見出している。したがって、本発明により、特に、フユイチゴ、ヨメナ、ムベ、リュウキュウイチゴ、インドヨメナ及びマテバシイの植物体又はその抽出物から成る群から選択される1又は複数の成分を含んで成る皮下脂肪蓄積抑制剤が提供される。
フユイチゴ(Rubus buergeri)はバラ科イチゴ属に分類される植物の一種であり、常緑のつる性小低木である。日本の九州・四国・関東以西の本州や中国中南部・台湾・朝鮮半島南部に分布しており、果実は11月から1月ころに熟し、いわゆる木苺の形で、食用とされる。
ヨメナ(Aster yomena)はキク科の多年草であり、日本の中部地方以西の本州・四国・九州に分布する。一般に、野菊の一種として知られており、秋に薄紫か白い菊の花をつける。若芽は食用とされる。
ムベ(Stauntonia hexaphylla)はアケビ科ムベ属の常緑つる性木本植物であり、トキワアケビとも称される。日本の本州・関東以西、台湾、中国に分布している。果実は食用とされ、また茎や根は利尿作用を有し、生薬として用いられている。
リュウキュウイチゴ(Rubus grayana)はバラ科キイチゴ属に分類される植物の一種であり、落葉低木である。シマアワイチゴとも称され、日本の種子島・屋久島以南から琉球各島沿岸の山地、台湾の暖帯、亜熱帯に分布している。4月〜5月にかけて花をつける。果実は橙色で食用とされる。
インドヨメナ(Kalimeris indica)はキク科ヨメナ属に分類される植物の一種であり、常緑の多年草である。インド原産であり、日本では、四国・九州南部以南の沖縄などに分布する。高さ30cm程度であり、秋に開花する。ヨメナよりも一回り小さいことから、コヨメナとも称される。ヨメナと同様、若芽は食用とされる。
マテバシイ(Lithocarpus edulis)はブナ科の常緑高木であり、日本の本州の房総半島の南端、紀伊半島、九州から南西諸島の温暖な沿岸地に分布している。果実はタンニンをあまり含まないため、アク抜きを必要とせず、そのまま炒って食用とされる。粉状に粉砕してクッキーの生地に混ぜて食することもできる。
尚、本発明で使用する各植物の植物体又はその抽出物とは、各々の植物体の各種部位(花、花穂、果皮、果実、茎、葉、枝、枝葉、幹、樹皮、根茎、根皮、根、種子又は全草など)をそのまま又は乾燥したものを粉砕して乾燥粉末としたもの、又は、そのまま或いは乾燥・粉砕後、溶媒で抽出したものを意味する。
前記植物体の抽出部位としては、上記植物体のいずれの部位を用いてもかまわないが、フユイチゴについては葉、ヨメナ葉や茎、ムベについては茎や根、リュウキュウイチゴについては葉、インドヨメナについては葉や茎、マテバシイについては果実が好ましい。
これらの植物抽出物の抽出方法は特に限定されるものではないが、溶媒を用いた抽出法が好ましい。抽出を行う際には、上記原材料をそのまま使用することもできるが、粉末状に粉砕・細断して抽出に供した方が、穏和な条件で短時間に高い抽出効率で有効成分の抽出を行うことができる。
抽出温度は特に限定されるものではなく、原材料の粉砕物の大きさや溶媒の種類等に応じて適宜設定すればよい。通常は、室温から溶媒の沸点までの範囲内で設定される。また、抽出時間も特に限定されるものではなく、原材料の粉砕物の大きさ、溶媒の種類、抽出温度等に応じて適宜設定すればよい。さらに、抽出時には、撹拌を行ってもよいし、撹拌せず静置してもよいし、超音波を加えてもよい。
例えば、上記植物抽出物は、原材料を溶媒中に浸漬し、室温又は80℃〜100℃にて抽出することができる。抽出処理により得られた抽出液をろ過後、そのまま又は必要に応じて濃縮若しくは乾固したものを、活性成分として使用することができる。なお、この抽出処理の際には、原材料は細断又は粉砕したものを用いてもよい。また、生の原材料又は乾燥した原材料を用いてもよいし、あるいは焙煎した原材料を用いてもよい。焙煎方法は特に限定されるものではないが、80℃〜120℃で0.5時間〜2時間焙煎する方法が挙げられる。
抽出に使用される溶媒の種類は特に限定されるものではないが、水(熱水等を含む)、アルコール(例えばメタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール)、グリコール(例えば1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール)、グリセリン、ケトン(例えばアセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例えばジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、プロピルエーテル)、アセトニトリル、エステル(例えば酢酸エチル、酢酸ブチル)、脂肪族炭化水素(例えばヘキサン、ヘプタン、流動パラフィン)、芳香族炭化水素(例えばトルエン、キシレン)、ハロゲン化炭化水素(例えばクロロホルム)、又はこれらのうち2種以上の混合溶媒が好ましい。
このような抽出操作により、原材料から有効成分が抽出され、溶媒に溶け込む。抽出物を含む溶媒は、そのまま使用してもよいが、数日静置して熟成させてから用いても良い。さらに滅菌、洗浄、濾過、脱色、脱臭等の慣用の精製処理を加えてから使用してもよい。また、必要により濃縮又は希釈してから使用してもよい。さらに、溶媒を全て揮発させて固体状(乾燥物)としてから使用してもよいし、該乾燥物を任意の溶媒に再溶解して使用してもよい。
本発明に係る皮下脂肪蓄積抑制剤やAPJ活性化剤はリンパ管の構造の不安定化を原因とする皮下脂肪細胞の蓄積の予防・解消に有効な医薬品、化粧品又は食品として利用できる。皮下脂肪蓄積が伴う疾患、症状には例えば、肥満、セルライト、たるみ(皮膚老化、弾力低下)などが挙げられる。本発明の皮下脂肪蓄積抑制剤やAPJ活性化剤は皮下脂肪蓄積を抑えることで、このような疾患・症状の発症を予防・改善することができる。また、皮下脂肪型肥満の症状を抱える場合、軽度から重篤に至る様々な疾患・症候群に進行する場合がある。その例として、睡眠時無呼吸症候群、頻尿、無毛症、月経異常、ホルモン低下による発育不良、貧血、卵巣がん、子宮がん、乳がん、不妊症、肝硬変、痔、深部静脈血栓症、肺塞栓症、静脈血栓塞栓症などが挙げられる。本発明の皮下脂肪蓄積抑制剤やAPJ活性化剤はこのような疾患・症候群の発症を予防・改善することもできる。
本発明に係る皮下脂肪蓄積抑制剤やAPJ活性化剤は、その使用目的に合わせて用量、用法、剤型を適宜決定することが可能である。例えば、本発明の皮下脂肪蓄積抑制剤やAPJ活性化剤の投与形態は特に制限されるものではなく、経口、非経口、外用等であってよいが、好ましくは経口剤である。剤型としては、例えば軟膏、クリーム、乳液、ローション、パック、浴用剤等の外用剤、注射剤、点滴剤、若しくは坐剤等の非経口投与剤、又は錠剤、粉剤、カプセル剤、顆粒剤、エキス剤、シロップ剤等の経口投与剤を挙げることができる。
本発明の皮下脂肪蓄積抑制剤やAPJ活性化剤中のアペリン様薬剤(フユイチゴ、ヨメナ、ムベ、リュウキュウイチゴ、インドヨメナ及びマテバシイの植物体及び/又はその抽出物)の配合量は、用途に応じて適宜決定できるが、一般には剤全量中、0.00001〜20.0質量%、好ましくは0.00001〜10.0質量%である。
また、本発明の皮下脂肪蓄積抑制剤やAPJ活性化剤には、アペリン様薬剤(フユイチゴ、ヨメナ、ムベ、リュウキュウイチゴ、インドヨメナ及びマテバシイの植物体及び/又はその抽出物)以外に、例えば、通常の食品や医薬品に使用される賦形剤、防湿剤、防腐剤、強化剤、増粘剤、乳化剤、酸化防止剤、甘味料、酸味料、調味料、着色料、香料等、化粧品等に通常用いられる美白剤、保湿剤、油性成分、紫外線吸収剤、界面活性剤、増粘剤、アルコール類、粉末成分、色剤、水性成分、水、各種皮膚栄養剤等を必要に応じて適宜配合することができる。
さらに、本発明の皮下脂肪蓄積抑制剤やAPJ活性化剤を皮膚外用剤として使用する場合、皮膚外用剤に慣用の助剤、例えばエデト酸二ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、グルコン酸等の金属封鎖剤、カフェイン、タンニン、ベラパミル、トラネキサム酸及びその誘導体、甘草抽出物、グラブリジン、カリンの果実の熱水抽出物、各種生薬、酢酸トコフェロール、グリチルリチン酸及びその誘導体またはその塩等の薬剤、ビタミンC、アスコルビン酸リン酸マグネシウム、アスコルビン酸グルコシド、アルブチン、コウジ酸等の美白剤、グルコース、フルクトース、マンノース、ショ糖、トレハロース等の糖類、レチノイン酸、レチノール、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール等のビタミンA類なども適宜配合することができる。
本発明に係る皮下脂肪蓄積抑制剤やAPJ活性化剤は痩身を目的とする美容学的方法にも利用される。この美容学的方法は、例えば本発明に係る皮下脂肪蓄積抑制剤やAPJ活性化剤を皮下脂肪蓄積の気になる部位、例えばセルライト(脂肪の繊維組織)を呈している部位に適用し、そのまま放置するか又は例えばリンパ管液の流れの方向に即してマッサージなどを施し、リンパ管液の流れを促進するなどして行うことができる。この方法の適用箇所には顔面、首、手足、など、全身のあらゆる部位が挙げられる。
以下の実施例により、本発明を更に具体的に説明する。なお、本発明はこれに限定されるものではない。
実験1.アペリン様薬剤のスクリーニング系の確立
APJ発現細胞の培養
NIH3T3細胞にアペリン受容体APJを高発現させ、ハイグロマイシンで選択した安定株(大阪大学微生物病研究所高倉伸幸教授より供与)をcAMPルシフェラーゼレポーターベクターでトランスフェクトし、これを以下のcAMPルシフェラーゼアッセイに用いた。培養は200 μg/mlのハイグロマイシンを含む10% FBS含有DMEM培地(Invirtogen)で行った。アッセイ前日に、96穴プレートに1ウェルあたり2.0×105個の細胞を播種し、10% FBSと200 μg/mlハイグロマイシンを含むDMEM培地で培養した。
APJ発現細胞の培養
NIH3T3細胞にアペリン受容体APJを高発現させ、ハイグロマイシンで選択した安定株(大阪大学微生物病研究所高倉伸幸教授より供与)をcAMPルシフェラーゼレポーターベクターでトランスフェクトし、これを以下のcAMPルシフェラーゼアッセイに用いた。培養は200 μg/mlのハイグロマイシンを含む10% FBS含有DMEM培地(Invirtogen)で行った。アッセイ前日に、96穴プレートに1ウェルあたり2.0×105個の細胞を播種し、10% FBSと200 μg/mlハイグロマイシンを含むDMEM培地で培養した。
cAMPルシフェラーゼアッセイ
一晩培養した後、培地をアスピレーターで除き、1ウェルあたり100 μlの添加剤を含まないDMEM培地に交換した。3時間後、GloSensorTM cAMP 試薬(Promega)を1ウェルあたり4 μlずつ添加し、遮光し2時間室温で平衡化した。その後、アペリン13(ペプチド研究所)を0.4 μg/mlとなるように添加剤を含まないDMEM培地で希釈し、これを1ウェルあたり50 μlずつ添加し(最終濃度は0.1 μg/ml)、室温で5 分間プレインキュベートした。更に、40 μMに調整したフォルスコリン(Sigma)を50 μlずつ添加し(最終濃度は10 μM)、15 分間処理した。その後、GloMaxTM 96 Microplate Luminometer(Promega)を用いて発光を測定した。また、上記と同様のルシフェラーゼアッセイを、アペリンと共にアペリン中和抗体である4G5(大阪大学より供与)を添加して行なった。この場合、5 μg/mlとなるように中和抗体を含まないDMEM培地で希釈し、1ウェルあたり50 μlずつ添加した(最終濃度0.5 μg/ml)。同様に、最終濃度が1.5、5、15及び50 μg/mlとなるような中和抗体を調製し、それぞれウェルに添加した。コントロールとして、アペリンを添加せずに、20 μMのフォルスコリンを1ウェルあたり100 μl添加した。
一晩培養した後、培地をアスピレーターで除き、1ウェルあたり100 μlの添加剤を含まないDMEM培地に交換した。3時間後、GloSensorTM cAMP 試薬(Promega)を1ウェルあたり4 μlずつ添加し、遮光し2時間室温で平衡化した。その後、アペリン13(ペプチド研究所)を0.4 μg/mlとなるように添加剤を含まないDMEM培地で希釈し、これを1ウェルあたり50 μlずつ添加し(最終濃度は0.1 μg/ml)、室温で5 分間プレインキュベートした。更に、40 μMに調整したフォルスコリン(Sigma)を50 μlずつ添加し(最終濃度は10 μM)、15 分間処理した。その後、GloMaxTM 96 Microplate Luminometer(Promega)を用いて発光を測定した。また、上記と同様のルシフェラーゼアッセイを、アペリンと共にアペリン中和抗体である4G5(大阪大学より供与)を添加して行なった。この場合、5 μg/mlとなるように中和抗体を含まないDMEM培地で希釈し、1ウェルあたり50 μlずつ添加した(最終濃度0.5 μg/ml)。同様に、最終濃度が1.5、5、15及び50 μg/mlとなるような中和抗体を調製し、それぞれウェルに添加した。コントロールとして、アペリンを添加せずに、20 μMのフォルスコリンを1ウェルあたり100 μl添加した。
上記cAMPルシフェラーゼアッセイの結果を図1に示す。図1からもわかるように、アペリンによってcAMP濃度が減少する一方、アペリン中和抗体によるアペリン活性の消失に伴いcAMP濃度の減少は抑制されている。すなわち、上記のcAMPルシフェラーゼアッセイにおいて、まず、アペリンの代わりに候補薬剤を添加した場合にcAMP濃度を減少させる薬剤を探索し(1次スクリーニング)、次に、これらの薬剤の中から、アペリン中和抗体と一緒に添加した場合にcAMP濃度の減少が有意に抑制される薬剤をさらに選別すること(2次スクリーニング)により、アペリン受容体であるAPJの活性化を介してcAMP濃度を減少させる薬剤(すなわちアペリン様薬剤)を短時間かつ効率的に選定することが可能となる。
実験2.アペリン様薬剤のスクリーニング
候補薬剤として、約110種の食品素材(株式会社資生堂)を用いて、実験1において確立したスクリーニング系によりアペリン様薬剤の選定を行った。
具体的には、候補薬剤を400 μg/mlに調製し、実験1のcAMPルシフェラーゼアッセイで使用したアペリンの代わりに、1ウェルあたり50 μlずつ添加し(最終濃度100 μg/ml)、実験1と同様のアッセイを行った。
候補薬剤として、約110種の食品素材(株式会社資生堂)を用いて、実験1において確立したスクリーニング系によりアペリン様薬剤の選定を行った。
具体的には、候補薬剤を400 μg/mlに調製し、実験1のcAMPルシフェラーゼアッセイで使用したアペリンの代わりに、1ウェルあたり50 μlずつ添加し(最終濃度100 μg/ml)、実験1と同様のアッセイを行った。
図2に示されるとおり、フユイチゴ、ヨメナ、ムベ、リュウキュウイチゴ、インドヨメナ及びマテバシイの抽出物は、細胞内のcAMP濃度を有意に減少させ、またアペリン中和抗体(4G5)と共に添加した場合には、アペリン活性の消失によりcAMP濃度の減少が有意に抑制されていることから、これらの植物抽出物は、アペリンと同様の機能を有することが示された。
Claims (5)
- フユイチゴ、ヨメナ、ムベ、リュウキュウイチゴ、インドヨメナ及びマテバシイの植物体又はその抽出物から成る群から選択される1又は複数の成分を含んで成る皮下脂肪蓄積抑制剤。
- 経口投与されることを特徴とする請求項1に記載の皮下脂肪蓄積抑制剤。
- 請求項1に記載の皮下脂肪蓄積抑制剤を経口投与することからなる、皮下脂肪の蓄積を解消又は予防するための美容学的方法。
- フユイチゴ、ヨメナ、ムベ、リュウキュウイチゴ、インドヨメナ及びマテバシイの植物体又はその抽出物から成る群から選択される1又は複数の成分を含んで成るAPJ活性化剤。
- 経口投与されることを特徴とする請求項4に記載のAPJ活性化剤。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2012082187A JP2013209344A (ja) | 2012-03-30 | 2012-03-30 | 皮下脂肪蓄積抑制剤 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2012082187A JP2013209344A (ja) | 2012-03-30 | 2012-03-30 | 皮下脂肪蓄積抑制剤 |
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JP (1) | JP2013209344A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN103610822A (zh) * | 2013-12-06 | 2014-03-05 | 李凯 | 一种治疗结节性脂膜炎的中药 |
-
2012
- 2012-03-30 JP JP2012082187A patent/JP2013209344A/ja active Pending
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CN103610822A (zh) * | 2013-12-06 | 2014-03-05 | 李凯 | 一种治疗结节性脂膜炎的中药 |
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