JP2013208589A - 可視光応答性光触媒コーティング剤及びコーティング膜 - Google Patents

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Abstract

【課題】 本発明は、可視光照射により、安定に表面親水化し、かつ耐薬品性・耐摺動性に優れたコーティング膜及びコーティング剤を提供することにある。
【解決手段】 本発明にかかるコーティング膜は、酸化タングステン粒子と、該酸化タングステン粒子と物理的に接触するように配置され、酸素還元触媒となる助触媒粒子と、該酸化タングステン粒子の少なくとも大気と接する表面を覆う、酸化チタンからなる耐薬品性の被膜を備えることを特徴とする。

【選択図】 図1

Description

本発明は、可視光応答性光触媒コーティング膜と、その作製に用いるコーティング剤に関する。
近年、洗剤等の化学洗浄行為を用いずに、水や雨水により、基材表面の汚染物質を容易に除去可能な機能を有するセルフクリーニング機能が注目されている。中でも、酸化チタン等の紫外線応答光触媒を含む膜において、光触媒が太陽光に含まれる紫外線を吸収し、価電子帯中の電子が伝導帯に励起されることで、価電子帯に生成する正孔が、有機物を酸化分解したり、あるいは、表面近傍の格子酸素の酸化が起点となり、表面水酸基が増加することで、膜表面が水接触角で10°以下まで超親水化することで、表面を清浄化する技術が既に実用化されている。
しかしながら、従来の紫外線応答性酸化チタンを用いたセルフクリーニング膜では、屋外用途では、太陽光線のうちの約3%しか含まれない紫外線のみを利用するため、光吸収量が限定される。また、屋内用途では、室内に入る外光や室内用照明の照射環境では、紫外線はほとんど含まれていないため、十分なセルフクリーニング性は発揮されない。さらには、セルフクリーニング機能では除去できない大量の付着汚れ(例えば、浴室環境での、皮脂汚れ、シャンプー、リンス等の洗剤汚れや、屋外での鳥フン等の付着等)に対しては、化学洗剤でのメンテナンス洗浄による除去が必要とされる。このような状況において、太陽光線の約60%を占める可視光線に応答する可視光応答性光触媒を用いたセルフクリーニング膜が求められるようになっている。
そうした中で、いくつかの可視光応答性のセルフクリーニング膜が提案されている。非特許文献1では、基板上に酸素還元反応の助触媒となる白金微粒子を析出させた後、その上に、可視光応答性光触媒となる酸化タングステン(WO)コロイドを被覆製膜することで、酸化タングステンの可視光励起により生成する正孔による酸化反応由来の表面親水化と、酸化タングステンから、助触媒となる白金微粒子に移行した励起電子による酸素の多電子還元反応の反応場を分離することで、可視光応答によるセルフクリーニングが達成されることを報告している。一方で、水酸化銅クラスター(特許文献1)や白金(特許文献2)を担持させた酸化タングステン粒子と、酸化チタン(TiO)粒子を混合することで、可視光照射下での有機物分解活性が向上することも提案されている。
特開2009−233648 特開2011−101876
Miyauchiら、Phys.Chem.Chem.Phys.6258〜6265ページ、10号、2008年
可視光応答性セルフクリーニング膜における最も大きな課題として、可視光応答性光触媒として機能する酸化タングステンは、pH4以下の酸性あるいはpH10以上のアルカリ性の水溶液に接触すると、容易に溶解することが知られている。非特許文献1で提案されている酸化タングステン多孔質膜をベースとする膜では、屋内でのセルフクリーニング用途に用いた場合、酸性あるいはアルカリ性洗剤の接触により、容易に溶解してしまい、屋内用途に用いることができない。同様に、非特許文献1や非特許文献2で提案されている酸化チタン粒子と酸化タングステン粒子の混合系においても、酸化タングステンが露出している部分から、洗剤との接触による溶解が起こる可能性がある。
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、可視光照射により、安定に表面親水化し、かつ耐薬品性・耐摺動性に優れたコーティング膜と、その作製に用いるコーティング剤を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明にかかる可視光応答性光触媒コーティング膜は、酸化タングステン粒子と、該酸化タングステン粒子と物理的に接触するように配置され、酸素還元触媒となる助触媒粒子と、該酸化タングステン粒子の少なくとも大気と接する表面を覆う、酸化チタンからなる耐薬品性の被膜と、を備える。
このように基材上に形成された可視光応答性型光触媒コーティング膜が、従来の課題であった耐薬品性に優れ、さらに。可視光照射により、水接触角が10°以下に超親水化することを見出した。
また、本発明にかかる可視光応答性光触媒コーティング膜では、助触媒粒子が、Pt、Pd、Au、Ag、あるいは、CuやFe等の遷移金属を含むアモルファス酸化物(CuOx、FeOx:Xは任意の値)、あるいは、酸化物(CuO、Cu2O、Fe2O3、Fe3O4)から選ばれる少なくとも1種からなることも好ましい。
また、本発明にかかる可視光応答性光触媒コーティング膜では、助触媒粒子が、Pt、Pd、Au、Ag、CuO、Cu2O、Fe2O3から選ばれる少なくとも1種であることも好ましい。
また、本発明にかかる可視光応答性光触媒コーティング剤は、酸化タングステン粒子と、酸素還元触媒となる助触媒粒子と、チタンを含むバインダーと、を含有してなり、前記可視光応答性光触媒コーティング膜を形成することが可能である。
また、本発明にかかる可視光応答性光触媒コーティング剤では、酸化タングステン粒子に対する助触媒粒子の重量比率が0.01〜10であることも好ましい。
また、本発明にかかる可視光応答性光触媒コーティング剤では、酸化タングステン粒子と、該バインダーのモル比が1〜20であることも好ましい。
本発明によるコーティング膜及びコーティング剤によれば、可視光照射により、安定に表面親水化することで、セルフクリーニング性による優れた防汚性能を発現することが可能であり、さらに酸およびアルカリ性洗剤に対しても良好な耐薬品性を有することで、屋内外で利用可能な高い防汚性を実現可能となる。
本発明の実施形態におけるコーティング膜の構成を示す図である。 本発明における、光触媒反応に関するメカニズムの模式図である。 本発明の実施の形態における、実施例サンプルのX線回折パターンを示す図である。 本発明の実施の形態における、実施例サンプルの走査型電子顕微鏡観察における写真である。 本発明の実施の形態における、実施例サンプルの可視光照度3000Lx照射下での水接触角変化を示す図である。 本発明の実施の形態における、実施例サンプルの可視光照度10000Lx照射下での水接触角変化を示す図である。
コーティング膜
図1は、本発明にかかるコーティング膜の構成を示す図である。
図1に示すように、本発明におけるコーティング膜は、酸化タングステン(WO)粒子2の表面に、酸素還元触媒となる助触媒粒子4が物理的に接触するように配置される。
これにより、助触媒粒子4は、WO粒子2に物理的に接触して、かつ助触媒粒子表面の一部が大気に暴露されることで、WOの可視光励起により生じる励起電子が助触媒へ移行することが可能となり、助触媒に移行した複数の電子により、大気中の酸素の多電子還元(二電子還元:O+2H+2e → H、四電子還元:O+4H+4e → 2HO)が可能となり、励起電子による酸素還元反応活性が向上する。
また、本発明においては、WO粒子2の少なくとも大気と接する表面を覆う耐薬品性の被膜3とを備えており、この被膜が酸化チタンからなることを特徴とする。
これにより、酸・アルカリ性溶液への溶解が著しいWO粒子2の表面が、酸・アルカリ性溶液への溶解度が低く、非常に耐薬品性の高い酸化チタンで被覆されている構造となる。本発明における酸化チタン被覆層3は、緻密な構造であり、WOへの酸・アルカリの侵入を抑制可能である。ここで、酸化チタン被覆層3の緻密性の指標としては、好ましくは、走査型電子顕微鏡で観察される粒子間隙の平均細孔径が10nm以下であることにより、酸・アルカリの侵入を抑制可能となる。また、酸化チタン被覆層3を構成する酸化チタンの一次粒径としては、細孔からの薬品の侵入を抑制できる構造であればよいので、特に限定されないが、例えば、コーティングにより緻密で均一な膜質が確保できる1〜50nmが好ましい。
本発明におけるコーティング膜の被覆層に用いる酸化チタンとしては、アモルファスTiOや、結晶性TiOである、アナターゼ、ルチル、ブルッカイト等のいずれであっても良い。より好ましくは、酸・アルカリへの溶解がほぼ無いことが特徴である、結晶性のアナターゼあるいはルチル構造であることで、特に優れた耐薬品性を実現できる。また、本発明においては、モノマーあるいはオリゴマーからなるチタンを含むバインダーを出発原料として用いることで、WO粒子表面を緻密に被覆することが可能であるため、薬品の侵入によるWOの溶解による光触媒活性の低下を抑制できる。
本発明におけるコーティング膜を形成する際の基材としては、上記の加熱処理により変性するものでなければよく、特に限定されないが、例えば、ガラス(ソーダライム、ホウケイ酸ガラス、人工石英)、セラミック(アルミナ、ジルコニア)、金属等の種々の基材を好適に用いることができる。
本発明によるコーティング膜が、可視光照射下で、高い光触媒活性=セルフクリーニング性を有する理由は定かではないが、次のように予想される。但し、以下の理論はあくまで予想であって、本発明はこの理論に限定されるものではない。
図2に、本発明にかかる光触媒反応に関するメカニズムの模式図を示す。
まず酸素還元触媒である助触媒粒子が、WO粒子に物理的に接触して、かつ助触媒粒子表面の一部が大気に暴露されることで、WOの可視光励起により生じる励起電子が助触媒へ移行することが可能となり、助触媒に移行した複数の電子により、大気中の酸素の多電子還元(二電子還元:O+2H+2e → H、四電子還元:O+4H+4e → 2HO)が可能となり、励起電子による酸素還元反応活性が向上する。さらに、WOの価電子帯に光生成した励起正孔が、膜表面の有機物を酸化分解したり、膜表面付近の格子酸素を酸化し、表面近傍にある水分の解離吸着を促進することで、水酸基が増加して、水接触角が10°以下まで低下する親水化反応が起こる。この際、WOの価電子帯に生成した励起正孔が、同等のエネルギー準位にあるTiOの価電子帯に移行している可能性もある。この場合、WOで光生成した正孔の高い酸化力を維持できることから、有機物の酸化分解や親水化反応に対して高い活性を実現できる。
コーティング剤
本発明のコーティング剤は、酸化タングステン粒子と、酸素還元触媒となる助触媒粒子と、チタン含有バインダーを含むことを特徴とする。
本発明に用いる酸化タングステン粒子としては、波長400nm以上の可視光を吸収可能であればよく、単斜晶、三斜晶の結晶化酸化タングステン、あるいはアモルファス構造の酸化タングステンが好適に用いられる。中でも、可視光照射下での光触媒活性が高く、波長400〜500nmまでの可視光吸収が可能な、三斜晶酸化タングステンが、最も好適に用いられる。
本発明に用いる酸化タングステンの一次粒径としては、1nm〜5μmが好適である。1nm未満の酸化タングステンを用いた場合、量子サイズ効果により、バンドギャップが大きくなってしまい、可視光応答性光触媒として有効に機能しない恐れがある。また5μmより一次粒径が大きい場合、酸化タングステンの比表面積が低下するため、活性点の減少による光触媒活性の低下や、製膜後のコーティング膜が、粗大粒子により可視光線を散乱するため、濁った外観となること、更には、粗大粒子による表面ラフネスの増加により、機械的摺動に対する耐性が低下する懸念がある。また、本発明のコーティング液を製膜したコーティング膜の透明性を向上するためには、酸化タングステンの一次粒子径を小さければよく、その範囲としては、1nm〜500nmが好適であり、この範囲の一次粒径とすることで、膜の光学散乱が抑制され、光透過率の高い膜の製造が可能となる。これにより、可視光域での高い光透過性が求められる、外装・内窓ガラスや透明プラスチック等の透明基材への適用が可能となる。
本発明に用いる助触媒粒子としては、酸化タングステンと物理的に接触することで、酸化タングステンの光励起により生じる光励起電子を受け取ることで、酸素に電子を渡すことで、酸素の多電子還元反応の触媒となるものであれば良い。好適な助触媒粒子としては、Pt、Pd、Au、Ag、Ru、Ir、Rh等の貴金属元素の金属粒子や、CuやFe等の遷移金属を含むアモルファス酸化物や酸化物を好適に用いることができる。
この中で、酸素の多電子還元反応が効率的に起こるものとしては、Pt、Pd、Au、Agと、CuやFe等の遷移金属を含むアモルファス酸化物(CuOx、FeOx:Xは任意の値)や酸化物(CuO、CuO、Fe、Fe)を好適に用いることができ、これらを混合させたものでも良い。また、この中でも、コーティング膜を作製する際に焼成処理により膜の基板への焼付けを行う場合には、400℃以上での高温焼成前後で、結晶構造や粒子形状の変化が起こらない助触媒粒子を好適に用いることができ、Pt、Pd、Au、Ag、CuO、CuO、Feが好適である。
本発明の助触媒粒子の一次粒径としては、1〜100nmが好適である。1nmより小さい場合、量子サイズ効果により、助触媒粒子の電子構造が変化することで、酸素還元能が低下する恐れがある。また、100nmよりも大きい場合、助触媒粒子の光吸収が顕著に増加することで、可視光応答性光触媒の光吸収が減少して、光触媒活性が低下する恐れがある。
本発明のチタンを含むバインダーとしては、コーティング剤の溶媒として有機溶媒を利用する場合、チタンを含む化合物のモノマーや、2〜50分子程度のモノマー同士が脱水重縮合などにより連結した構造を有するオリゴマーを好適に用いることができる。ここで、チタンを含む化合物のモノマーとしては、例えば、アルコキシド(チタンテトラメトキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトラn−プロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラn−ブトキシド)、塩化物(四塩化チタン、三塩化チタン)、硫酸塩(硫酸チタン)を、モノマーとして好適に用いることができる。また、これらのチタンを含む化合物の加水分解による不安定化を抑制するために、アセチルアセトン、アセト酢酸エチル、乳酸、クエン酸、酪酸等のキャッピング剤を含んでも良い。
また、コーティング剤として、水を主体とする溶媒を利用する場合、チタンを含むバインダーとしては、加水分解反応を起こさずに、水に溶解可能なチタンを含むモノマー化合物やそのオリゴマー化合物を用いることができる。例えば、乳酸、酪酸、クエン酸等の水溶性キャッピング剤でチタンイオンを保護したチタン錯体を好適に用いることができ、ペルオキソ乳酸チタン錯体、ペルオキソリンゴ酸チタン錯体、ペルオキソ酪酸チタン錯体、ペルオキソクエン酸チタン錯体、乳酸チタン錯体、クエン酸チタン錯体等を用いることができる。
本発明のコーティング剤に用いる溶媒としては、上記のようなチタンを含むバインダーが溶解するものであればよく、水溶媒や、有機溶媒としては、特に限定しないが、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール溶媒や、メチルセロソルブ、エチルセルソルブ等のセロソルブ系溶媒、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、ベンゼン等や、これらを混合させたものを用いることができる。
本発明のコーティング剤の濃度としては、全重量から溶媒を除いた固形分の濃度として、0.01〜70wt%の範囲で用いることができ、さらに、基材への良好なコーティング膜の形成を実現する好適な固形分濃度としては、0.1〜50wt%の範囲である。この範囲の固形分濃度とすることで、高い分散安定性を確保することで、コーティング剤として長期使用可能であり、さらに基材への塗布後のコーティング膜が、均一な性状となることが期待できる。
本発明のコーティング液の組成としては、固形分として含まれる、酸化タングステン(WO)と、バインダーに含まれるチタン(Ti)のモル比率(MWO3/MTi)が、0.01〜100の範囲が好適である、このモル比率が、0.01より小さい場合、可視光応答性光触媒であるWOの膜中での存在比率が小さいため、可視光照射下での光触媒活性が小さくなる恐れがあり、モル比率が100より大きい場合、膜中でのバインダーとしての効果が小さくなることで、膜強度や耐摺動性の機械的特性の低下や、耐薬品性等の化学的特性の低下の恐れがある。
また、可視光応答下での光触媒特性が高く、さらに機械的及び化学的特性が高い膜となるための、最も好適なモル比率としては、1〜20である。この範囲のモル比率とすることで、コーティング膜を形成する際に、チタンを含むバインダーがWO粒子が被覆されて、チタンを含むバインダーがWO粒子同士をつなぐ構造となることで、コーティング膜を焼成した後に、耐薬品性の高いTiO被覆層がWO粒子表面を覆う構造となり、機械的強度や化学的特性に優れた膜とすることが可能となる。
また、本発明のコーティング剤に含まれる、WOに対する助触媒(C)の重量比率(W/WWO3)としては、0.01〜10が好適である。この重量比率(W/WWO3)が、0.01よりも小さい場合、酸素の多電子還元触媒としての助触媒の機能が小さく、可視光照射下での反応活性が低下する恐れがあり、10よりも大きい場合、助触媒による光吸収が顕著となることで、WOの可視光吸収量が低下するため、可視光照射下での光触媒活性が低下する恐れがある。
本発明のコーティング剤を作製する方法としては、上記の各成分を添加しながら、混合する方法が用いられる。WOとPtを粉末原料として用いる場合、コーティング剤中で良好に分散させる必要がある。この分散方法としては、容器中に、溶媒と粉末と、撹拌媒体としてセラミックボールやビーズを混合させた後、容器を回転させる、ボールミルやビーズミルによる湿式分散法や、溶媒と粉末と撹拌媒体を含む容器を、自転・公転運動を同時に、しかも高速で回転させることで、粒子を高分散化可能な遊星ミルによる湿式分散法を好適に用いることができる。この分散工程の際、粒子分散性を向上させるために、分散剤等の添加材を加えてもよい。
以上のようなコーティング剤を、基材に塗布・焼成することで、可視光照射によりセルフクリーニング性能を発揮するコーティング膜を作製することが可能となる。
本発明におけるコーティング膜の基材への塗布は、液剤塗布による製膜が可能な手法であれば、塗布方法は特に限定されない。例えば、スプレーコート、スピンコート、ディップコート、フローコート、静電噴霧法、刷毛塗り等の方法が利用可能である。
基材への塗布後の焼成処理によるコーティング膜の作製方法としては、基板上の膜を加熱できる方法であれば、加熱方法は特に限定されない。例えば、上記塗布後の膜から溶媒を除去するための乾燥工程(室温〜200℃)を経て、電気炉や赤外線加熱炉、ホットヒーター等で加熱焼成する方法が一般的に用いられる。この場合の加熱条件としては、チタンを含むバインダーを加熱分解することで、耐薬品性の高いTiO2に結晶相転移できる方法であればよいので、350〜700℃の温度で加熱すればよい。ここで、350℃よりも低い温度の場合、チタンを含むバインダーが十分分解されずに、膜の耐薬品性は低くなってしまい、700℃よりも高い温度の場合は、WOとチタンが反応して、可視光応答性光触媒として活性の低い複合酸化物が生成する恐れがあるため、膜の光触媒活性が低下してしまう可能性がある。よって、上記加熱温度での保持時間としては、上記のような、バインダーの未分解や複合酸化物の生成等の好ましくない事象が起こらない範囲であれば良く、10分〜5時間が好適である。
本発明におけるコーティング膜の膜厚は、特に限定しないが、10nm〜10μmの範囲とすることで、目視でのクラック等の外観不良を起こすことなく、可視光光触媒活性、耐摺動性、耐薬品性に優れた膜とすることが可能である。
以下の実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例)
可視光光触媒用コーティング液の作製
酸化タングステン粉末(三斜晶WO、一次粒径約100nm:和光純薬製)20グラムと白金黒(一次粒径50nm以下:和光純薬製)0.4グラムを乳鉢で5分間混練した後、分散剤となるエチルセルロースを含む有機ビヒクル(α-テルピネオール:ブチルカルビトール:エチルセルロース=65:15:20[重量比])2グラムと、エタノール20グラムを徐々に加えた。この混合溶液と、直径0.1mmのジルコニア製ビーズ20グラムを、ジルコニア製ポットに入れて密閉した後、遊星ミル装置(フリッチュ製、“Premium Line P−7”)にて、800rpmで15分間の分散処理を2回行うことで、高粘度スラリーを作製した。この高粘度スラリーに、エタノールを20グラム添加した後、キャッピング剤を添加したチタンアルコキシド溶液(NDH−510C;日本曹達製、TiO2換算:5wt%)60グラムを加えて、15時間室温で撹拌を行うことで、可視光応答性光触媒を含むコーティング剤を作製した。
コーティング膜の作製
上記で作製したコーティング膜を用いて、スピンコート法により、回転速度:1000rpmで10秒間の条件で、ホウケイ酸ガラス板(50×50×1mm厚)に製膜し、その後、60℃で30分乾燥させた後、500℃で1時間焼成することで、コーティング膜を作製した。
(比較例)
比較例として、紫外応答性酸化チタンコーティング膜を作製するため、上記チタンアルコキシド溶液(NDH−510C)を、実施例と同様のスピンコート及び焼成条件で処理することで、アナターゼ型酸化チタン膜を形成した。
コーティング膜の結晶構造と微細構造
実施例で作製したコーティング膜のX線回折測定結果を図3に示す。三斜晶WOとアナターゼTiOのピークが観測されたことから、WO粒子と被覆層であるアナターゼ型TiOが、反応することなく、膜中に安定に存在することが分かる。また、Ptのピークは観測されなかったが、添加量が微量であるために、検出されないものと考えられる。
また、実施例で作製したコーティング膜の走査型電子顕微鏡(日立製作所製、“S−800”)の写真を図4に示す。膜厚は、約500nmである。膜中の構造としては、約100nmのWO粒子の周りに、TiOが被覆されており、膜中に広がって存在していることが分かる。更に、全体的に、緻密構造ではなく、多孔質な構造をとっていることで、大気酸素が膜中の助触媒粒子と容易に接触可能な構造となっており、WO3に生成する光励起電子による酸素の多電子還元反応が、表面から基板界面まで起こるようなことが期待できる。また、膜中では、白金微粒子の凝集に由来する構造は観測されず、白金が膜中に良好に分散していることが予想された。
セルフクリーニング性能評価
各コーティング膜のセルフクリ−ニング性能の評価は、表面汚染物質としてステアリン酸を塗布した膜への、可視光照射による水接触角変化を測定することにより行った。まずステアリン酸(和光純薬製)をヘプタン(純正化学製)に溶解させた0.3wt%溶液を作製した。そして、予めBLBランプ(2mW/cm)による24時間以上の紫外線照射により、表面清浄化させた各光触媒膜に、ステアリン酸のヘプタン溶液をスピンコート法で2000rpm・20秒間製膜した。製膜後、70℃で10分乾燥させた。この汚染処理の後、紫外線カットフィルター(日東樹脂製アクリル樹脂板“クラレックス N−113”)で、405nm以下の波長をカットした白色蛍光灯(NECライティング製FL20SW)により、3000Lx、および10000Lxの照射条件で、可視光を照射した際の、水接触角の変化を測定した。それぞれの条件で、2サンプルずつ測定を行った。
3000Lx及び10000Lxの可視光を照射した際の水接触角の変化を図5と図6に示す。3000Lxでは、100時間以内に、10000Lxでは、40時間以内に、10°以下の接触角まで低下し、表面親水化が起こり、最終的には、5°以下の超親水状態になることが分かる。このことから、可視光照射下で、実施例のコーティング膜は良好に親水化する特性を有することがあきらかとなった。一方、比較例の酸化チタン膜は、300時間以上の可視光照射条件でも、接触角は約80°を維持し、親水化は起こらなかった。
耐薬品性、耐摺動性
耐薬品性試験として、実施例のコーティング膜サンプルを、アルカリ性洗剤(ジョンソン株式会社製カビキラー、pH13)に室温で15時間浸漬して、外観変化を調べた。アルカリ性洗剤への浸漬後も、実施例のコーティング膜の表面形態はほとんど変化していなかった。また、耐摺動試験として、水を含ませたスポンジを用いて、2000回摺動した後の外観を確認したが、全く外観に変化はなく、コーティング膜の脱離等は起こらないことを確認した。
1:コーティング膜
2:酸化タングステン粒子
3:酸化チタン被覆層
4:助触媒粒子
5:基材

Claims (6)

  1. 酸化タングステン粒子と、
    該酸化タングステン粒子と物理的に接触するように配置され、酸素還元触媒となる助触媒粒子と、
    該酸化タングステン粒子の少なくとも大気と接する表面を覆う酸化チタンからなる耐薬品性の被膜と、
    を備えることを特徴とする、基材上に形成された可視光応答性光触媒コーティング膜。
  2. 前記助触媒粒子が、Pt、Pd、Au、Ag、あるいは、
    CuやFe等の遷移金属を含むアモルファス酸化物(CuOx、FeOx:Xは任意の値)、あるいは、酸化物(CuO、CuO、Fe、Fe)から選ばれる少なくとも1種からなることを特徴とする、請求項1に記載の可視光応答性光触媒コーティング膜。
  3. 前記助触媒粒子が、Pt、Pd、Au、Ag、CuO、CuO、Feから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項2に記載の可視光応答性光触媒コーティング膜。
  4. 酸化タングステン粒子と、
    酸素還元触媒となる助触媒粒子と、
    チタンを含むバインダーと、を含有してなる
    請求項1〜3記載のコーティング膜を形成可能な可視光応答性光触媒コーティング剤。
  5. 該酸化タングステン粒子に対する助触媒粒子の重量比率が0.01〜10であることを特徴とする、請求項4記載の可視光応答性光触媒コーティング剤。
  6. 該酸化タングステン粒子と、該バインダーのモル比が1〜20であることを特徴とする、請求項4または5に記載の可視光応答性光触媒コーティング剤。
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