JP2013207833A - ハイブリッド車両およびその制御方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】エンジンおよび、エンジンと動力分割機構を介して接続された第1および第2の電動機を備えるハイブリッド車両において、第1および第2の電動機の異常発生時の退避走行を実現する。
【解決手段】ハイブリッド車両は、エンジンと、第1の電動機と、動力を出力するための出力部材と、出力部材、エンジンの出力軸、および第1の電動機の出力軸の三要素の各々を機械的に連結し、かつ、三要素のうちのいずれか一つを反力要素とすることによって、他の2つの要素間で動力伝達を可能とする動力分割機構と、出力部材に連結される第2の電動機とを備える。ECUは、第1および第2の電動機の異常が検知されたときにエンジンが運転中である場合には、第1および第2の電動機への給電を停止し、かつ、第1の電動機を駆動するインバータの多相オン制御を実行することにより、第1の電動機から引きずりトルクを発生させる。
【選択図】図5

Description

この発明は、ハイブリッド車両およびその制御方法に関し、より特定的には、内燃機関(エンジン)および、エンジンと動力分割機構を介して接続された電動機(モータ)を備えるハイブリッド車両およびその制御方法に関する。
この種のハイブリッド車両としては、たとえば特開2010−246221号公報(特許文献1)には、エンジンと、第1の電動機と、エンジンの出力軸と第1の電動機の回転軸と車軸とに3つの回転要素が接続された遊星歯車機構と、車軸に接続された第2の電動機とを備えたハイブリッド車両が開示される。この特許文献1に記載されるハイブリッド車両では、第2の電動機が回転駆動中に第2の電動機に故障が生じたときには、第2の電動機を駆動するインバータをゲート遮断する。さらに、インバータがゲート遮断されているときに、バッテリの充電が可能でない場合には昇圧コンバータをゲート遮断する一方で、第2の電動機の回転数が所定回転数以上の場合にはバッテリの電圧が昇圧されないように昇圧コンバータを制御する。また、第2の電動機の回転数が所定回転数未満の場合にはバッテリの電圧が昇圧されるように昇圧コンバータを制御する。これにより、電動機が比較的高い回転数で故障が生じても、インバータやバッテリに二次故障が生じるのを抑制する。
特開2010−246221号公報 特開2009−195026号公報 特開2010−12827号公報
しかしながら、上記の特許文献1に記載されるハイブリッド車両では、第1の電動機および第2の電動機の両方に故障が生じたときには、各々の電動機を駆動するインバータがゲート遮断されることにより、もはや車軸に駆動力を出力することが不可能となる。その結果、ハイブリッド車両の走行継続が不能となる虞がある。
それゆえ、この発明はかかる課題を解決するためになされたものであり、その目的は、エンジンおよび、エンジンと動力分割機構を介して接続された第1および第2の電動機を備えるハイブリッド車両において、第1および第2の電動機の異常発生時においても退避走行を実行可能とすることである。
この発明のある局面では、ハイブリッド車両は、エンジンと、第1の電動機と、動力を出力するための出力部材と、出力部材、エンジンの出力軸、および第1の電動機の出力軸の三要素の各々を機械的に連結し、かつ、三要素のうちのいずれか一つを反力要素とすることによって、他の2つの要素間で動力伝達を可能とする動力分割機構と、出力部材に連結される第2の電動機と、複数のスイッチング素子により構成され、第1の電動機への給電を制御するための第1のインバータと、第2の電動機への給電を制御するための第2のインバータと、第1および第2の電動機、ならびにエンジンの出力を制御するための制御装置とを備える。制御装置は、第1および第2の電動機の異常が検知されたときに、エンジンが運転中である場合には、第1および第2の電動機への給電を停止させるとともに、第1のインバータの複数のスイッチング素子を所定のスイッチングパターンに従ってオン・オフさせることによって、エンジンからの出力を用いて給電停止中の第1の電動機から電磁気的な作用に基づく引きずりトルクを発生させる。
好ましくは、制御装置は、ハイブリッド車両の車速およびアクセル開度に応じて設定された目標回転数となるようにエンジンの回転数を制御することによって、第1の電動機から発生する引きずりトルクを調整する。
好ましくは、第1の電動機は、多相モータである。第1のインバータは、電源線および接地線の間に互いに並列に接続され、多相モータの多相コイルに流れる電流をそれぞれ制御するための多相アームを含む。多相アームの各々は、電源線および接地線の間に、各相コイルとの接続点を介して直列接続された第1および第2のスイッチング素子を含む。制御装置は、多相アームを通じて第1および第2のスイッチング素子の一方を同時にオン状態に制御する多相オン制御を実行することにより、第1の電動機から引きずりトルクを発生させる。
好ましくは、制御装置は、アクセル開度が零のときには、多相オン制御を不実行とする。
この発明の別の局面では、ハイブリッド車両の制御方法であって、ハイブリッド車両は、エンジンと、第1の電動機と、動力を出力するための出力部材と、出力部材、エンジンの出力軸、および第1の電動機の出力軸の三要素の各々を機械的に連結し、かつ、三要素のうちのいずれか一つを反力要素とすることによって、他の2つの要素間で動力伝達を可能とする動力分割機構と、出力部材に連結される第2の電動機と、複数のスイッチング素子により構成され、第1の電動機への給電を制御するための第1のインバータと、第2の電動機への給電を制御するための第2のインバータとを含む。制御方法は、第1および第2の電動機の異常が検知されたときに、エンジンが運転中である場合には、第1および第2の電動機への給電を停止させるステップと、複数のスイッチング素子を所定のスイッチングパターン従ってオン・オフさせることによって、エンジンからの出力を用いて給電停止中の第1の電動機から電磁気的な作用に基づく引きずりトルクを発生させるステップとを備える。
この発明によれば、エンジンおよび、エンジンと動力分割機構を介して接続された第1および第2の電動機を備えるハイブリッド車両において、第1および第2の電動機の異常発生時においても退避走行を行なうことができる。
本発明の実施の形態によるハイブリッド車両の概略構成図である。 図1のハイブリッド車両におけるパワートレインの詳細を説明するための模式図である。 モータジェネレータMG1,MG2の制御構成を示す概略ブロック図である。 通常の走行時における回転数挙動を説明する図である。 モータジェネレータMG1,MG2の異常発生時における回転数挙動を説明する図である。 引きずりトルクを発生させるためのインバータの制御を説明する図である。 三相オン制御の実行時におけるモータジェネレータMG1の電流(三相電流)およびトルクと回転数との関係を示す図である。 本発明の実施の形態におけるモータジェネレータ異常発生時のエンジン回転数制御の概要を説明する図である。 目標エンジン回転数Ne*を算出するためのマップの一例を示す図である。 本発明の実施の形態によるハイブリッド車両におけるモータジェネレータ異常発生時の走行制御の制御処理手順を示すフローチャートである。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明を繰返さない。
図1は、本発明の実施の形態によるハイブリッド車両5の概略構成図である。
図1を参照して、ハイブリッド車両5は、エンジンENGと、モータジェネレータMG1,MG2と、バッテリ10と、電力変換ユニット(PCU:Power Control Unit)20と、動力分割機構PSDと、減速機RDと、前輪70L,70Rと、後輪80L,80Rと、電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)30とを備える。本実施の形態に係る制御装置は、たとえばECU30が実行するプログラムにより実現される。なお、図1には、前輪70L,70Rを駆動輪とするハイブリッド車両5が例示されるが、前輪70L,70Rに代えて後輪80L,80Rを駆動輪としてもよい。あるいは、図1に構成に加えて後輪80L,80R駆動用のモータジェネレータをさらに設けて、4WD構成とすることも可能である。
エンジンENGが発生する駆動力は、動力分割機構PSDにより、2経路に分割される。一方は、減速機RDを介して前輪70L,70Rを駆動する経路である。もう一方は、モータジェネレータMG1を駆動させて発電する経路である。
モータジェネレータMG1は、代表的には三相交流同期電動発電機により構成される。モータジェネレータMG1は、動力分割機構PSDにより分割されたエンジンENGの駆動力により、発電機として発電する。また、モータジェネレータMG1は、発電機としての機能だけでなく、エンジンENGの回転数を制御するアクチュエータとしても機能をも有する。
なお、モータジェネレータMG1により発電された電力は、車両の運転状態やバッテリ10のSOC(State Of Charge)の状態に応じて使い分けられる。たとえば、通常走行時や急加速時では、モータジェネレータMG1により発電された電力はそのままモータジェネレータMG2をモータとして駆動させる動力となる。一方、バッテリ10のSOCが予め定められた値よりも低い場合には、モータジェネレータMG1により発電された電力は、PCU20により交流電力から直流電力に変換されてバッテリ10に蓄えられる。
このモータジェネレータMG1は、エンジンENGを始動する際の始動機としても利用される。エンジンENGを始動する際、モータジェネレータMG1は、バッテリ10から電力の供給を受けて、電動機として駆動する。そして、モータジェネレータMG1は、エンジンENGをクランキングして始動する。
モータジェネレータMG2は、代表的には三相交流同期電動発電機により構成される。モータジェネレータMG2が電動機として駆動される場合には、バッテリ10に蓄えられた電力およびモータジェネレータMG1により発電された電力の少なくともいずれか一方により駆動される。モータジェネレータMG2の駆動力は、減速機RDを介して前輪70L,70Rに伝えられる。これにより、モータジェネレータMG2は、エンジンENGをアシストして車両を走行させたり、モータジェネレータMG2の駆動力のみにより車両を走行させたりする。
車両の回生制動時には、減速機RDを介して前輪70L,70RによりモータジェネレータMG2が駆動され、モータジェネレータMG2が発電機として作動させられる。これによりモータジェネレータMG2は、制動エネルギを電気エネルギに変換する回生ブレーキとして作用する。モータジェネレータMG2により発電された電力は、PCU20を介してバッテリ10に蓄えられる。
バッテリ10は、再充電可能な電力貯蔵要素であり、たとえば、ニッケル水素またはリチウムイオン等の二次電池により構成される。本発明の実施の形態において、バッテリ10は「蓄電装置」の代表例として示される。すなわち、電気二重層キャパシタ等の他の蓄電装置をバッテリ10に代えて用いることも可能である。バッテリ10は、直流電圧をPCU20へ供給するとともに、電力変換ユニット20からの直流電圧によって充電される。
PCU20は、バッテリ10よって供給される直流電力と、モータを駆動制御する交流電力およびジェネレータによって発電される交流電力との間で双方向の電力変換を行なう。
ハイブリッド車両5は、さらに、ハンドル40と、アクセルペダルポジションAPを検出するアクセルポジションセンサ44と、ブレーキペダルポジションBPを検出するブレーキペダルポジションセンサ46と、シフトポジションSPを検出するシフトポジションセンサ48とを備える。
また、モータジェネレータMG1,MG2には、ロータ回転角を検出する回転角センサ51,52がさらに設けられる。回転角センサ51によって検出されたモータジェネレータMG1のロータ回転角θ1および回転角センサ52によって検出されたモータジェネレータMG2のロータ回転角θ2は、ECU30へ伝達される。なお、回転角センサ51,52は、ECU30においてモータジェネレータMG1の電流、電圧等からロータ回転角θ1を推定し、また、モータジェネレータMG2の電流、電圧等からロータ回転角θ2を推定することによって、配置を省略してもよい。
ECU30は、エンジンENG、PCU20およびバッテリ10と電気的に接続されている。ECU30は、各種センサからの検出信号に基づいて、ハイブリッド車両5が所望の走行状態となるように、エンジンENGの運転状態と、モータジェネレータMG1,MG2の駆動状態と、バッテリ10の充電状態とを統合的に制御する。
図2は、図1のハイブリッド車両5におけるパワートレインの詳細を説明するための模式図である。
図2を参照して、ハイブリッド車両5のパワートレイン(ハイブリッドシステム)は、モータジェネレータMG2と、モータジェネレータMG2の出力軸160に接続される減速機RDと、エンジンENGと、モータジェネレータMG1と、動力分割機構PSDとを備える。
動力分割機構PSDは、図2に示す例では遊星歯車機構により構成され、クランクシャフト150に軸中心を貫通された中空のサンギヤ軸に結合されたサンギヤ151と、クランクシャフト150と同軸上を回転可能に支持されているリングギヤ152と、サンギヤ151とリングギヤ152との間に配置され、サンギヤ151の外周を自転しながら公転するピニオンギヤ153と、クランクシャフト150の端部に結合され各ピニオンギヤ153の回転軸を支持するプラネタリキャリヤ154とを含む。
動力分割機構PSDは、サンギヤ151に結合されたサンギヤ軸と、リングギヤ152に結合されたリングギヤケース155およびプラネタリキャリヤ154に結合されたクランクシャフト150の3軸が動力の入出力軸とされる。そしてこの3軸のうちいずれか2軸へ入出力される動力が決定されると、残りの1軸に入出力される動力は他の2軸へ入出力される動力に基づいて定まる。
動力の取出用のカウンタドライブギヤ170がリングギヤケース155の外側に設けられ、リングギヤ152と一体的に回転する。カウンタドライブギヤ170は、動力伝達減速ギヤRGに接続されている。リングギヤケース155は、本発明での「出力部材」に対応する。このようにして、動力分割機構PSDは、モータジェネレータMG1による電力および動力の入出力を伴って、エンジンENGからの出力の少なくとも一部を出力部材へ出力するように動作する。
さらに、カウンタドライブギヤ170と動力伝達減速ギヤRGとの間で動力の伝達がなされる。そして、動力伝達減速ギヤRGは、駆動輪である前輪70L、70Rと連結されたディファレンシャルギヤDEFを駆動する。また、下り坂等では駆動輪の回転がディファレンシャルギヤDEFに伝達され、動力伝達減速ギヤRGはディファレンシャルギヤDEFによって駆動される。
モータジェネレータMG1は、回転磁界を形成するステータ131と、ステータ131内部に配置され複数個の永久磁石が埋め込まれているロータ132とを含む。ステータ131は、ステータコア133と、ステータコア133に巻回される三相コイル134とを含む。ロータ132は、動力分割機構PSDのサンギヤ151と一体的に回転するサンギヤ軸に結合されている。ステータコア133は、電磁鋼板の薄板を積層して形成されており、図示しないケースに固定されている。
モータジェネレータMG1は、ロータ132に埋め込まれた永久磁石による磁界と三相コイル134によって形成される磁界との相互作用によりロータ132を回転駆動する電動機として動作する。またモータジェネレータMG1は、永久磁石による磁界とロータ132の回転との相互作用により三相コイル134の両端に起電力を生じさせる発電機としても動作する。
モータジェネレータMG2は、回転磁界を形成するステータ136と、ステータ136内部に配置され複数個の永久磁石が埋め込まれたロータ137とを含む。ステータ136は、ステータコア138と、ステータコア138に巻回される三相コイル139とを含む。
ロータ137は、動力分割機構PSDのリングギヤ152と一体的に回転するリングギヤケース155に減速機RDを介して結合されている。ステータコア138は、たとえば電磁鋼板の薄板を積層して形成されており、図示しないケースに固定されている。
モータジェネレータMG2は、永久磁石による磁界とロータ137の回転との相互作用により三相コイル139の両端に起電力を生じさせる発電機としても動作する。またモータジェネレータMG2は、永久磁石による磁界と三相コイル139によって形成される磁界との相互作用によりロータ137を回転駆動する電動機として動作する。
減速機RDは、プラネタリギヤの回転要素の一つであるプラネタリキャリヤ166がケースに固定された構造により減速を行なう。すなわち、減速機RDは、ロータ137の出力軸160に結合されたサンギヤ162と、リングギヤ152と一体的に回転するリングギヤ168と、リングギヤ168およびサンギヤ162に噛み合いサンギヤ162の回転をリングギヤ168に伝達するピニオンギヤ164とを含む。たとえば、サンギヤ162の歯数に対しリングギヤ168の歯数を2倍以上にすることにより、減速比を2倍以上にすることができる。
このようにモータジェネレータMG2の回転力は、減速機RDを介して、リングギヤ152,168と一体的に回転する出力部材(リングギヤケース)155に伝達される。すなわち、モータジェネレータMG2は、出力部材155から駆動輪までの間で動力を加えるように構成される。なお、減速機RDの配置を省略して、すなわち減速比を設けることなく、モータジェネレータMG2の出力軸160および出力部材155の間を連結してもよい。
PCU20は、コンバータ12と、インバータ14,22とを含む。コンバータ12は、バッテリ10からの直流電圧Vbを電圧変換して電源ラインPLおよび接地ラインGL間に直流電圧VHを出力する。また、コンバータ12は、双方向に電圧変換可能に構成されて、電源ラインPLおよび接地ラインGL間の直流電圧VHをバッテリ10の充電電圧Vbに変換する。
インバータ14,22は、一般的な三相インバータで構成されて、電源ラインPLおよび接地ラインGL間の直流電圧VHを交流電圧に変換してそれぞれモータジェネレータMG2,MG1へ出力する。また、インバータ14,22は、モータジェネレータMG2,MG1によって発電された交流電圧を直流電圧VHに変換して、電源ラインPLおよび接地ラインGL間に出力する。
図3は、モータジェネレータMG1,MG2の制御構成を示す概略ブロック図である。
図3を参照して、PCU20は、コンデンサC1,C2と、コンバータ12と、インバータ14,22と、電圧センサ11,13と、電流センサ24,28とを含む。
図1および図2に示したECU30は、モータジェネレータMG1およびMG2の運転指令および、コンバータ12の電圧指令値VHrefを生成するHV−ECU32と、コンバータ12の出力電圧VHが電圧指令値VHrefに追従し、かつ、モータジェネレータMG1,MG2が運転指令に従って動作するように、コンバータ12およびインバータ14,22を制御するMG−ECU35とを含む。
コンバータ12は、リアクトルL1と、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)素子Q1,Q2と、ダイオードD1,D2とを含む。リアクトルL1の一方端は、バッテリ10の電源ラインに接続され、他方端はIGBT素子Q1とIGBT素子Q2との中間点、すなわち、IGBT素子Q1のエミッタとIGBT素子Q2のコレクタとの間に接続される。IGBT素子Q1,Q2は、電源ラインPLと接地ラインGLの間に直列に接続される。IGBT素子Q1のコレクタは電源ラインPLに接続され、IGBT素子Q2のエミッタは接地ラインGLに接続される。また、各IGBT素子Q1,Q2のコレクタ−エミッタ間には、エミッタからコレクタ側へ電流を流すためのダイオードD1,D2はそれぞれ接続されている。
インバータ14は、U相アーム15と、V相アーム16と、W相アーム17とからなる。U相アーム15、V相アーム16、W相アーム17は、電源ラインPLおよび接地ラインGLの間に並列に設けられる。U相アーム15は、直列接続されたIGBT素子Q3,Q4から成り、V相アーム16は、直列接続されたIGBT素子Q5,Q6からなり、W相アーム17は、直列接続されたIGBT素子Q7,Q8から成る。また、各IGBT素子Q3〜Q8のコレクタ−エミッタ間には、エミッタ側からコレクタ側へ電流を流すダイオードD3〜D8がそれぞれ接続されている。
各相アームの中間点は、モータジェネレータMG2の各相コイルの各相端に接続される。すなわち、U,V,W相の3つのコイルの一端が中性点に共通接続されるとともに、U相コイルの他端がIGBT素子Q3,Q4の中間点に、V相コイルの他端がIGBT素子Q5,Q6の中間点に、W相コイルの他端はIGBT素子Q7,Q8の中間点にそれぞれ接続されている。
インバータ22は、インバータ14と同じ構成からなる。
電圧センサ11は、バッテリ10から出力される直流電圧Vbを検出し、その検出した直流電圧VbをMG−ECU35へ出力する。コンデンサC1は、バッテリ10から供給された直流電圧Vbを平滑化し、その平滑化した直流電圧Vbをコンバータ12へ供給する。
コンバータ12は、コンデンサC1から供給された直流電圧Vbを昇圧してコンデンサC2へ供給する。具体的には、コンバータ12は、MG−ECU35から信号PWMCを受けると、信号PWMCによってIGBT素子Q2がオンされた期間に応じて直流電圧Vbを昇圧してコンデンサC2に供給する。
また、コンバータ12は、MG−ECU35から信号PWMCを受けると、コンデンサC2を介してインバータ14および/またはインバータ22から供給された直流電圧を降圧してバッテリ10を充電する。
コンデンサC2は、コンバータ12からの直流電圧を平滑化し、その平滑化した直流電圧を、電源ラインPLおよび接地ラインGLを介してインバータ14,22へ供給する。電圧センサ13は、コンデンサC2の両端の電圧、すなわち、コンバータ12の出力電圧VH(インバータ14,22の入力電圧に相当する。以下同じ。)を検出し、その検出した出力電圧VHをMG−ECU35へ出力する。
インバータ14は、コンデンサC2から直流電圧VHが供給されると、MG−ECU35からの信号PWMI2に基づいて直流電圧を交流電圧に変換してモータジェネレータMG2を駆動する。これにより、モータジェネレータMG2は、トルク指令値TR2によって指定されたトルクを発生するように駆動される。
また、インバータ14は、ハイブリッド車両5の回生制動時、モータジェネレータMG2が発電した交流電圧をMG−ECU35からの信号PWMI2に基づいて直流電圧に変換し、その変換した直流電圧をコンデンサC2を介してコンバータ12へ供給する。なお、ここにいう回生制動とは、ハイブリッド車両5を運転するドライバーによるフットブレーキ操作があった場合の回生制動を伴なう制動や、フットブレーキを操作しないものの、走行中にアクセルペダルをオフすることで回生発電をさせながら車両を減速(または加速の中止)させることを含む。
インバータ22は、コンデンサC2から直流電圧が供給されると、MG−ECU35からの信号PWMI1に基づいて直流電圧を交流電圧に変換してモータジェネレータMG1を駆動する。これにより、モータジェネレータMG1は、トルク指令値TR1によって指定されたトルクを発生するように駆動される。
電流センサ24は、モータジェネレータMG1に流れるモータ電流MCRT1を検出し、その検出したモータ電流MCRT1をMG−ECU35へ出力する。電流センサ28は、モータジェネレータMG2に流れるモータ電流MCRT2を検出し、その検出したモータ電流MCRT2をMG−ECU35へ出力する。
さらに、回転角センサ51によって検出されたモータジェネレータMG1のロータ回転角θ1および回転角センサ52によって検出されたモータジェネレータMG2のロータ回転角θ2は、MG−ECU35およびHV−ECU32へ伝達される。
MG−ECU35は、電圧センサ11から直流電圧Vbを受け、電流センサ24,28からモータ電流MCRT1,MCRT2をそれぞれ受け、電圧センサ13からコンバータ12の出力電圧(すなわち、インバータ14,22の入力電圧)VHを受け、回転角センサ51,52からロータ回転角θ1,θ2をそれぞれ受ける。さらに、MG−ECU35は、HV−ECU32より、モータジェネレータMG1およびMG2の運転指令および、コンバータ12の電圧指令値VHrefを受ける。
なお、HV−ECU32から送出される運転指令には、モータジェネレータMG1,MG2の運転許可指令/運転禁止指令(ゲート遮断指令)や、トルク指令TR1,TR2、回転数指令等が含まれる。HV−ECU32から送出される運転指令には、さらに、エンジンENGへの出力要求(エンジンパワーおよびエンジン目標回転数)を示すエンジン制御指示が含まれる。このエンジン制御指示に従って、エンジンENGの燃料噴射、点火時期、バルブタイミング等が制御される。
そして、MG−ECU35は、出力電圧VH、モータ電流MCRT2およびトルク指令TR2に基づいて、インバータ14がモータジェネレータMG2を駆動するときに、インバータ14のIGBT素子Q3〜Q8をスイッチング制御するための信号PWMI2を生成し、その生成した信号PWMI2をインバータ14へ出力する。また、MG−ECU35は、出力電圧VH、モータ電流MCRT1およびトルク指令TR1に基づいて、インバータ22がモータジェネレータMG1を駆動するときに、インバータ22のIGBT素子Q3〜Q8をスイッチング制御するための信号PWMI1を生成し、その生成した信号PWMI1をインバータ22へ出力する。これらの際に、信号PWMI1,PWMI2は、たとえば周知のPWM制御方式に従う、センサ検出値を用いたフィードバック制御により生成される。
一方、HV−ECU32によりモータジェネレータMG2のゲート遮断指令が発せられている場合には、MG−ECU35は、インバータ14を構成するIGBT素子Q3〜Q8の各々がスイッチング動作を停止(すべてオフ)するように、ゲート遮断信号SDNを生成する。また、HV−ECU32によりモータジェネレータMG1のゲート遮断指令が発せられている場合には、MG−ECU35は、インバータ22を構成するIGBT素子Q3〜Q8の各々がスイッチング動作を停止(すべてオフ)するように、ゲート遮断信号SDNを生成する。
さらに、MG−ECU35は、電圧指令値VHrefと、直流電圧Vbおよび出力電圧VHとに基づいて、コンバータ12のIGBT素子Q1,Q2をスイッチング制御するための信号PWMCを生成してコンバータ12へ出力する。
また、MG−ECU35によって検知されたモータジェネレータMG1,MG2の異常に関する情報は、モータジェネレータMG1,MG2の運転指令とは反対方向に、HV−ECU32に対して送出される。HV−ECU32は、これらの異常情報をモータジェネレータMG1,MG2の運転指令へ反映することが可能に構成されている。
図1から図3に示した構成において、モータジェネレータMG1は本発明における「第1の電動機」に対応し、モータジェネレータMG2は本発明における「第2の電動機」に対応する。HV−ECU32およびMG−ECU35は、本発明における「制御装置」を構成する。
ここで、上述のように構成されたハイブリッド車両5では、動力分割機構PSDによる差動動作により、モータジェネレータMG1の回転数、エンジンENGの回転数および出力部材(リングギヤケース)155の回転数は、図4の共線図に示されるように、出力部材155に対するモータジェネレータMG1およびエンジンENGの回転数差が、一定比率を維持するように、それぞれの回転数が変化する。以下では、モータジェネレータMG2のトルクおよび回転数をTmおよびNmとも表記し、モータジェネレータMG1のトルクおよび回転数をTgおよびNgとも表記する。また、ハイブリッド車両5を駆動させる方向に作用するモータジェネレータMG2のトルクTmの方向を「正」とする。
図4を参照して、共線図L1は、モータジェネレータMG1のトルクTgにより、エンジンENGが起動されて、ハイブリッド車両5が所定の車速で走行している状態を示している。エンジンENGは、HV−ECU32によって決定されたエンジン要求パワーに基づいて定められた動作点(エンジン回転数NeおよびエンジントルクTe)で動作するように、エンジンECU(図示せず)によって制御される。
このようにモータジェネレータMG1およびMG2に異常が生じていない通常の走行状態では、モータジェネレータMG1は、負トルク(Tg<0)を出力し、発電する状態となる。
このとき、エンジントルクTeの反力を受け持つように出力されたトルクTgによって、出力部材155に機械的に伝達される駆動トルク(直達トルク)Tepは、Tep=−Tg×(1/ρ)で示される。なおρは、動力分割機構PSDにおけるギヤ比である。
一方、減速機RDのギヤ比(Gr)を用いて、モータジェネレータMG2のトルクTmによって出力部材155に発生するトルクは、Tm×Grで示される。したがって、出力部材155に作用する駆動トルクTpは、Tp=Tm×Gr−Tg×(1/ρ)で示される。
これに対して、ハイブリッド車両5では、モータジェネレータMG1およびMG2の回転駆動制御に支障を来たすような異常が生じた場合には、インバータ14および22をゲート遮断してモータジェネレータMG1およびMG2への給電を停止させる。また、図示しないシステムメインリレーをオフ状態(遮断状態)として、バッテリ10をPCU20から切り離した状態とする。この状態は、モータジェネレータMG1,MG2にそれそれ設けられた回転角センサ51,52および電流センサ24,28等の部品の故障により、モータジェネレータMG1,MG2の回転駆動制御を正常に行なえない状態である。また、この状態は、インバータ14,22が、ゲート遮断が可能な程度の故障の範囲内で、回転駆動制御を正常に行なえない状態も含まれる。たとえば、インバータ14,22の各IGBT素子Q3〜Q8に内蔵された自己保護回路から異常検知信号FINVが出力された場合などである。この異常検知信号FINVは、自己保護回路に含まれる電流センサ(または温度センサ)の出力に過電流(または過熱)が検出されたことに応じて、自己保護回路から出力される信号である。
しかしながら、上記のように、モータジェネレータMG1およびMG2への給電を停止すると、モータジェネレータMG1およびMG2のトルクを制御できなくなる。これにより、エンジントルクTeの反力を受け持つようにモータジェネレータMG1からトルクTgを発生させることができないため、共線図L2で示されるように、エンジントルクTeによってエンジン回転数NeおよびモータジェネレータMG1の回転数Ngが上昇するのみで、出力部材155に直達トルクTepを伝達することができない。さらに、モータジェネレータMG2からトルクTmを発生させることができないため、出力部材155に作用する駆動トルクTpは、Tp=0となる。これにより、ハイブリッド車両5の走行継続が不能となる虞がある。
そこで、本発明の実施の形態によるハイブリッド車両では、モータジェネレータMG1およびMG2の異常発生が検知された場合には、エンジンENGの回転に伴なって回転されるモータジェネレータMG1から電磁気的な作用に基づいた引きずりトルクTdr(負トルク)を発生させる。この引きずりトルクTdrとは、運転停止中のモータジェネレータMG1に接続されるインバータ22を所定のスイッチングパターンに従ってオン・オフさせることによって、モータジェネレータMG1から電磁気的な作用により発生するトルクである。
図5は、モータジェネレータMG1,MG2の異常発生時における回転数挙動を説明する図である。
図5を参照して、共線図L3に示されるように、モータジェネレータMG1から出力された引きずりトルクTdrによって、出力部材155には直達トルクTepが機械的に伝達される。なお、この直達トルクTepは、Tep=−Tdr×(1/ρ)で示される。これにより、引きずりトルクTdrの反力を受け持つように出力部材155に伝達された直達トルクTepを駆動トルクTpとして、ハイブリッド車両5の走行継続が可能となる。したがって、ハイブリッド車両5の走行中にモータジェネレータMG1およびMG2の異常が生じても、ハイブリッド車両5の退避走行を行なうことができる。
図6は、引きずりトルクを発生させるためのインバータ22の制御を説明する図である。
図6に示すように、エンジンENGの回転に伴なってモータジェネレータMG1が回転すると、その回転子(図示せず)に装着された磁石PMが回転する。これにより、モータジェネレータMG1の三相コイル巻線に誘起電圧が発生する。なお、コイル巻線に発生する誘起電圧は、モータジェネレータMG1の回転数に比例するため、モータジェネレータMG1の回転数が上昇すれば、モータジェネレータMG1に発生する誘起電圧も高くなる。
モータジェネレータMG1,MG2に異常が発生した場合には、上述のように、ゲート遮断信号SDNによりインバータ14,22を構成するIGBT素子Q3〜Q8の各々がスイッチング動作を停止(すべてオフ)することによって、モータジェネレータMG1,MG2への給電を停止する。さらに、モータジェネレータMG1への給電を制御するためのインバータ22においては、図6に示すように、U相アーム15、V相アーム16およびW相アーム17を通じて上アームおよび下アームの一方を同時にオン状態に制御する。図6の例では、U相上アームのIGBT素子Q3、V相上アームのIGBT素子Q5およびW相上アームのIGBT素子Q7を同時にオン状態に制御する。以下では、インバータの多相アームを通じて上アームおよび下アームの一方のIGBT素子を同時にオン状態に制御することを「多相オン制御」といい、本実施の形態のように、インバータの三相アーム(U相アーム15,V相アーム16,W相アーム17)を通じて上アームおよび下アームの一方のIGBT素子を同時にオン状態に制御することを「三相オン制御」と呼ぶこととする。また、この三相オン制御によって各IGBT素子Q3〜Q8がオン・オフされている状態を「三相オン状態」と呼ぶこととする。
図6に示すようにインバータ22の三相オン制御を実行することにより、モータジェネレータMG1の磁石PMが回転すると、IGBT素子Q3、IGBT素子Q5およびIGBT素子Q7の間で電流経路が形成されることとなる。これにより、モータジェネレータMG1のU相コイル巻線、V相コイル巻線、W相コイル巻線には、互いに略同じ振幅の交流波形を示すモータ電流Iu,Iv,Iwが誘起される。そして、この誘起されたモータ電流によって回転磁界が形成されることにより、モータジェネレータMG1には引きずりトルク(制動トルク)が発生する。
すなわち、モータジェネレータMG1の異常が発生した場合には、通常のPWM制御に基づいたスイッチング制御はできないものの、インバータ22のIGBT素子Q3〜Q8をオン状態またはオフ状態とすることが可能であるため、ゲート遮断されたインバータ22を三相オン制御に切換えることによりモータジェネレータMG1に引きずりトルクを発生させることができる。
図7は、三相オン制御の実行時におけるモータジェネレータMG1の電流(三相電流)およびトルクと回転数との関係を示す図である。
図7に示されるように、三相オン制御時には、モータジェネレータMG1から引きずりトルク(負トルク)が出力される。この引きずりトルクは、モータジェネレータMG1の回転数Ngが低下するに従って増大し、低回転域内の所定の回転数Nthで最大トルクTmaxとなる。一方、三相電流は、回転数Ngが低下するに従って減少している。
本実施の形態によるインバータ22の制御において、ECU30は、エンジンENGの運転中において、運転者によってアクセルペダルが踏み込まれた(アクセルがオンされた)場合に、三相オン制御を実行する。そして、アクセルがオフされると、三相オン制御を停止する。このような構成としたことにより、運転者によるアクセルオン(アクセル開度ACC>0%)に従って出力部材155に駆動トルクが発生する一方で、運転者によるアクセルオフ(アクセル開度ACC=0)に従って駆動トルクの発生が停止する。すなわち、運転者によるアクセルオンおよびアクセルオフに従うように、車両駆動力を発生させることができる。
さらに、アクセルがオンされている状態においては、ECU30は、ハイブリッド車両5の車速Vおよびアクセル開度ACCに応じて、エンジンENGの回転数Neを制御する。図8は、本発明の実施の形態におけるモータジェネレータ異常発生時のエンジン回転数制御の概要を説明する図である。
図8を参照して、ECU30は、アクセルオン時には、上述したインバータ22の三相オン制御を実行するとともに、エンジンENGを目標エンジン回転数Ne*に制御する回転数制御を実行する。なお、この回転数制御において、エンジン回転数Neは、許容最低回転数Neminを下限とし、許容最高回転数Nemaxを上限とする回転数域内に収まるように制御される。
図8には、車速V=0であって、エンジン回転数Ne=Neminであるときの共線図L4が示される。この共線図L4においては、モータジェネレータMG1の回転数Nmは、引きずりトルクTdrが最大トルクTmaxとなるときの回転数Nthより高くなっている。そのため、モータジェネレータMG1に発生する引きずりトルクTdrは、最大トルクTmaxより小さい値となる。なお、エンジン回転数Neを許容最低回転数Neminより低い回転数に下げることはできないため、共線図L4の状態からモータジェネレータMG1の回転数Nmを回転数Nthまで引き下げることができない。このように、車速V=0のときには、エンジン回転数Neが許容最低回転数Neminに制約されるため、最大トルクTmaxをモータジェネレータMG1に発生させることができない。
一方、共線図L4の状態(車速V=0)から車速Vが上昇すると、エンジン回転数Neが許容最低回転数Neminに固定された状態であっても、モータジェネレータMG1の回転数Nmが低下する。そして、共線図L5に示すように、車速VがV1に達すると、モータジェネレータMG1の回転数Nm=Nthとなり、引きずりトルクTdrが最大トルクTmaxとなる。すなわち、車速V=V1になったときに始めて、最大トルクTmaxをモータジェネレータMG1に発生させることが可能となる。
さらに、車速VがV1よりも高くなると、モータジェネレータMG1の回転数Nm=Nthとなるように、エンジン回転数Neを調整することができる。すなわち、共線図L6に示されるように、許容最高回転数Nemaxを超えない範囲で、モータジェネレータMG1の回転数Nm=Nthとなるようにエンジン回転数Neを上昇させることによって、引きずりトルクTdr=Tmax(最大トルク)をモータジェネレータMG1に発生させることができる。
このように、引きずりトルクTdr=Tmax(最大トルク)となるときのエンジン回転数Neは、車速Vに応じて変化する。一方、エンジン回転数Neには、許容範囲(Nemin〜Nemax)が定められている。そこで、ECU30は、ハイブリッド車両5の車速Vおよびアクセル開度ACCに応じて、所望の大きさの引きずりトルクTdrが得られるように、目標エンジン回転数Ne*を設定する。例えば、車速V=V1であって、アクセル開度ACC=100%であるときには、目標エンジン回転数Ne*を許容最低回転数Neminに設定する。これにより、モータジェネレータMG1から発生する引きずりトルクTdrは最大トルクTmaxとなり、出力部材155に伝達される直達トルクTepが最大となる。さらに、アクセル開度ACC<100%のときには、目標エンジン回転数Ne*を許容最低回転数Neminより高くすることによって、引きずりトルクTdrを最大トルクTmaxより小さくすることができるため、出力部材155に伝達される直達トルクTepを抑えることができる。
図9に示すように、目標エンジン回転数Ne*は、たとえば、車速Vおよびアクセル開度ACCをパラメータとして有するマップに従って、ECU30により算出される。目標エンジン回転数Ne*を算出するためのマップは、実験およびシミュレーションの結果に応じて予め開発者により作成される。目標エンジン回転数Ne*の算出方法はこれに限定されない。
図10は、本発明の実施の形態によるハイブリッド車両におけるモータジェネレータ異常発生時の走行制御の制御処理手順を示すフローチャートである。図10のフローチャートの各ステップは、基本的にはECU30によるソフトウェア処理によって実現されるが、ECU内に作製された電子回路によるハードウェア処理によって実現されてもよい。
図10を参照して、ECU30は、ハイブリッド車両5の走行中において、ステップS01により、モータジェネレータMG1,MG2の異常の有無を診断する。具体的には、ECU30は、モータジェネレータMG1,MG2にそれそれ設けられた回転角センサ51,52および電流センサ24,28等の部品の故障により、モータジェネレータMG1,MG2の回転駆動制御を正常に行なえない状態となった場合に、モータジェネレータMG1,MG2の異常と診断する。また、この状態は、インバータ14,22が、ゲート遮断が可能な程度の故障の範囲内で、回転駆動制御を正常に行なえない状態も含まれる。
ステップS02では、ECU30は、上記の異常診断において、モータジェネレータMG1の異常と診断されたか否かを判定する。モータジェネレータMG1の異常と診断されなかった場合(ステップS02のNO判定時)には、以降の処理がスキップされ、ECU30は処理をメインルーチンに戻す。
一方、モータジェネレータMG1の異常と診断された場合(ステップS02のYES判定時)には、ECU30は、ステップS03により、モータジェネレータMG2の異常と診断されたか否かを判定する。モータジェネレータMG2の異常と診断されなかった場合(ステップS03のNO判定時)には、以降の処理がスキップされ、ECU30は処理をメインルーチンに戻す。なお、本実施の形態では詳細な説明を省略するが、ステップS02,S03の処理によりモータジェネレータMG1およびMG2の一方が異常と診断された場合には、ECU30は、別途設定された処理フローに従って、正常と診断された他方のモータジェネレータを用いることにより、ハイブリッド車両5の退避走行を実行する。
モータジェネレータMG1およびMG2の異常と診断された場合(ステップS03のYES判定時)には、ECU30は、ステップS04により、エンジンENGが運転中であるか否かを判定する。なお、エンジンENGが運転中であるか否かは、周知の技術を利用して判定すればよいため、ここでは詳細な説明を省略する。
エンジンENGが運転中でない場合(ステップS04のNO判定時)には、以降の処理がスキップされ、ECU30は処理をメインルーチンに戻す。
これに対して、エンジンENGが運転中である場合(ステップS04のYES判定時)には、ECU30は、ステップS05により、運転者によってアクセルペダルが踏み込まれたか否か(アクセルオンされたか否か)を判定する。アクセルがオンされている場合(ステップS05のYES判定時)には、ECU30は、ステップS06により、インバータ22の三相オン制御を実行する。一方、アクセルがオフされている場合(ステップS05のNO判定時)には、ECU30は、ステップS07により、三相オン制御を不実行とする。
ステップS08では、ECU30は、ハイブリッド車両5の車速Vおよびアクセル開度ACCに応じて、所望の大きさの引きずりトルクTdrが得られるように、目標エンジン回転数Ne*を設定する。たとえば、ECU30は、車速Vおよびアクセル開度ACCが検出されると、図9に示したマップを参照することによって目標エンジン回転数Ne*を算出する。この目標エンジン回転数Ne*を示すエンジン制御指示に従って、エンジンENGの燃料噴射、点火時期、バルブタイミング等が制御される。
このようにして、車速Vおよびアクセル開度ACCに応じてモータジェネレータMG1から発生する引きずりトルクTdrが制御されると、出力部材155にはその引きずりトルクTdrに応じた大きさの直達トルクTepが駆動トルクとして作用する。これにより、退避走行中においても、運転者要求に応じた車両駆動力の制御が可能となる。
以上説明したように、この発明の実施の形態によるハイブリッド車両によれば、モータジェネレータMG1,MG2の異常発生時においてエンジンENGが運転中である場合には、エンジンENGの回転力によって回転駆動されるモータジェネレータMG1から引きずりトルク(負トルク)を発生させることができる。そして、この引きずりトルクの反力が、車両の駆動トルクとして出力部材155に作用することにより、ハイブリッド車両5の走行継続が可能となる。この結果、モータジェネレータMG1,MG2の異常発生時においても、ハイブリッド車両5の退避走行が実現される。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
5 ハイブリッド車両、10 バッテリ、11,13 電圧センサ、12 コンバータ、14,22 インバータ、15 U相アーム、16 V相アーム、17 W相アーム、20 電力変換ユニット、24,28 電流センサ、30 ECU、32 HV−ECU、35 MG−ECU、37 エンジンECU、40 ハンドル、44 アクセルポジションセンサ、46 ブレーキペダルポジションセンサ、48 シフトポジションセンサ、51,52 回転角センサ、70L,70R 前輪、80L,80R 後輪、131,136 ステータ、132,137 ロータ、133,138 ステータコア、134,139 三相コイル、150 クランクシャフト、151,162 サンギヤ、152,168 リングギヤ、153,164 ピニオンギヤ、154,166 プラネタリキャリヤ、155 リングギヤケース(出力部材)、160 出力軸、170 カウンタドライブギヤ、C1,C2 コンデンサ、D1〜D8 ダイオード、DEF ディファレンシャルギヤ、L1 リアクトル、MG1,MG2 モータジェネレータ、PSD 動力分割機構、Q1〜Q8 IGBT素子、RD 減速機、RG 動力伝達減速ギヤ。

Claims (5)

  1. エンジンと、
    第1の電動機と、
    動力を出力するための出力部材と、
    前記出力部材、前記エンジンの出力軸、および前記第1の電動機の出力軸の三要素の各々を機械的に連結し、かつ、前記三要素のうちのいずれか一つを反力要素とすることによって、他の2つの要素間で動力伝達を可能とする動力分割機構と、
    前記出力部材に連結される第2の電動機と、
    複数のスイッチング素子により構成され、前記第1の電動機への給電を制御するための第1のインバータと、
    前記第2の電動機への給電を制御するための第2のインバータと、
    前記第1および第2の電動機、ならびに前記エンジンの出力を制御するための制御装置とを備え、
    前記制御装置は、前記第1および第2の電動機の異常が検知されたときに、前記エンジンが運転中である場合には、前記第1および第2の電動機への給電を停止させるとともに、前記第1のインバータの前記複数のスイッチング素子を所定のスイッチングパターンに従ってオン・オフさせることによって、前記エンジンからの出力を用いて給電停止中の前記第1の電動機から電磁気的な作用に基づく引きずりトルクを発生させる、ハイブリッド車両。
  2. 前記制御装置は、前記ハイブリッド車両の車速およびアクセル開度に応じて設定された目標回転数となるように前記エンジンの回転数を制御することによって、前記第1の電動機から発生する前記引きずりトルクを調整する、請求項1に記載のハイブリッド車両。
  3. 前記第1の電動機は、多相モータであり、
    前記第1のインバータは、電源線および接地線の間に互いに並列に接続され、前記多相モータの多相コイルに流れる電流をそれぞれ制御するための多相アームを含み、
    前記多相アームの各々は、前記電源線および前記接地線の間に、各相コイルとの接続点を介して直列接続された第1および第2のスイッチング素子を含み、
    前記制御装置は、前記多相アームを通じて前記第1および第2のスイッチング素子の一方を同時にオン状態に制御する多相オン制御を実行することにより、前記第1の電動機から前記引きずりトルクを発生させる、請求項1または2に記載のハイブリッド車両。
  4. 前記制御装置は、アクセル開度が零のときには、前記多相オン制御を不実行とする、請求項3に記載のハイブリッド車両。
  5. ハイブリッド車両の制御方法であって、
    前記ハイブリッド車両は、
    エンジンと、
    第1の電動機と、
    動力を出力するための出力部材と、
    前記出力部材、前記エンジンの出力軸、および前記第1の電動機の出力軸の三要素の各々を機械的に連結し、かつ、前記三要素のうちのいずれか一つを反力要素とすることによって、他の2つの要素間で動力伝達を可能とする動力分割機構と、
    前記出力部材に連結される第2の電動機と、
    複数のスイッチング素子により構成され、前記第1の電動機への給電を制御するための第1のインバータと、
    前記第2の電動機への給電を制御するための第2のインバータとを含み、
    前記制御方法は、
    前記第1および第2の電動機の異常が検知されたときに、前記エンジンが運転中である場合には、前記第1および第2の電動機への給電を停止させるステップと、
    前記複数のスイッチング素子を所定のスイッチングパターン従ってオン・オフさせることによって、前記エンジンからの出力を用いて給電停止中の前記第1の電動機から電磁気的な作用に基づく引きずりトルクを発生させるステップとを備える、ハイブリッド車両の制御方法。
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