JP2013205805A - 光学部材 - Google Patents

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【課題】反射防止膜としての機能を保持しつつ、ハードコート膜のクラックを防止することのできる反射防止膜を有する光学部材を提供する。
【解決手段】樹脂基板と、該樹脂基板上に設けられたハードコート膜と、該ハードコート膜上に設けられた反射防止膜とを有する光学部材であって、
前記反射防止膜が、樹脂基板側から低屈折率層と高屈折率層が交互に11〜15層積層されてなり、
前記低屈折率層がSiO2及びAl23から選ばれる少なくとも一種の金属酸化物からなり、前記高屈折率層がTa25、Nb25、ZrO2、TiO2、In23/SnO2(ITO)、及びCeO2から選ばれる少なくとも一種の金属酸化物からなり、
反射防止膜形成面に対して10°入射における400〜315nmの紫外光の平均反射率が80%以上であり、反射防止膜形成面に対して60°入射における400〜315nmの紫外光の平均反射率が40%以上であり、且つ、視感反射率が1.5%以下である、光学部材。
【選択図】なし

Description

本発明は、反射防止膜を有する光学部材に関する。
従来から、光の反射を防止するために、ハードコート膜を有する樹脂基板に反射防止膜を設けた光学部材が知られており、一般的に、反射防止膜は異なる屈折率を有する物質を複数層に積層した構造を有し、可視光の反射を防止するように設計される。紫外光領域は、可視光でないことから反射防止膜においては特に考慮されず、更に紫外線カットが望まれる用途においても、基板の樹脂自体の吸収により減衰して殆ど透過しないのでこれまで問題とされてこなかった。
従来の反射防止膜においては、可視光の反射や、反射防止膜そのものの傷やクラックを防止するもの(例えば、特許文献1)が提案されてきたが、樹脂基材やハードコート膜の変質を防止することのできる反射防止膜は存在しなかった。
特開2009−042278号公報
従来の光学部材においては、一般的にハードコート膜に紫外線吸収剤が添加されていない場合が多く、長時間紫外光に晒すとハードコート膜にクラックが発生するという問題を有していた。
そこで本発明は、反射防止膜としての機能を保持しつつ、ハードコート膜のクラックを防止することのできる反射防止膜を有する光学部材を提供することを課題とする。
本発明者は、従来の反射防止膜は可視光域のみを考慮した設計であり、多くの紫外線が樹脂基板に到達してしまうことに着眼し、反射防止膜に、紫外線領域の波長の光を反射する機能を持たせることで、ハードコート膜のクラックを防止することができることを見出した。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[2]である。
[1]樹脂基板と、該樹脂基板上に設けられたハードコート膜と、該ハードコート膜上に設けられた反射防止膜とを有する光学部材であって、
前記反射防止膜が、樹脂基板側から低屈折率層と高屈折率層が交互に11〜15層積層されてなり、
前記低屈折率層がSiO2及びAl23から選ばれる少なくとも一種の金属酸化物からなり、前記高屈折率層がTa25、Nb25、ZrO2、TiO2、In23/SnO2(ITO)、及びCeO2から選ばれる少なくとも一種の金属酸化物からなり、
反射防止膜形成面に対して10°入射における400〜315nmの紫外光の平均反射率が80%以上であり、反射防止膜形成面に対して60°入射における400〜315nmの紫外光の平均反射率が40%以上であり、且つ、視感反射率が1.5%以下である、光学部材。
[2]眼鏡用レンズである、[1]の光学部材。
本発明によれば、反射防止膜としての機能を保持しつつ、400〜315nmの紫外光を反射する特性を有するため、反射防止膜よりも内層側に位置するハードコート膜や、樹脂基材への紫外光の入射を防ぐことができ、ハードコート膜のクラックを防止することができる。
本発明の光学部材は、樹脂基材と、該樹脂基板上に設けられたハードコート膜と、該ハードコート膜上に設けられた反射防止膜とを有し、反射防止膜形成面に対して10°入射における400〜315nmの紫外光(以下、単に「UVA」とする)の平均反射率が80%以上であり、反射防止膜形成面に対して60°入射におけるUVAの平均反射率が40%以上であり、且つ、視感反射率が1.5%以下である。UVAは太陽から地表に到達する紫外光の99%以上を占めるとされているため、該UVAを反射する機能を反射防止膜に付与することで、太陽光由来の紫外光がハードコート膜や樹脂基板へ到達することを防止することができ、ハードコート膜の変質を防止することができ、クラックの発生を防止できる。特に、反射防止膜形成面に対して10°、60°の二つの入射角度における分光特性を特定の範囲とすることで、実使用における光入射のように様々な角度から光が入射する場合であっても、充分に紫外光の到達が防止され、ハードコート膜のクラックを防止することができる。本発明に用いられる反射防止膜により、紫外光の入射を防止することができるため、樹脂基材の黄変等の変質を防止することもできる。
本発明の光学部材における反射防止膜形成面に対して10°入射におけるUVAの平均反射率は80%以上である。ハードコート膜のクラックをより顕著に防止する観点から、85%以上が好ましく、88%以上がより好ましい。
本発明の光学部材における反射防止膜形成面に対して60°入射におけるUVAの平均反射率は40%以上である。ハードコート膜のクラックをより顕著に防止する観点から、43%以上が好ましい。
なお、本発明において入射の角度は、反射防止膜形成面の反射防止膜最外層側の法線方向を基準(0°)とした値である。
また、各入射角におけるUVAの平均反射率は実施例記載の方法により測定されるものとする。
本発明の光学部材における反射防止膜形成面の視感反射率は1.5%以下である。このような範囲を有することで、反射防止膜の本来の機能である、可視光の反射を防止することができる。視感反射率は、反射防止機能をより顕著に得る観点から、好ましくは1.0%以下であり、より好ましくは0.8%以下である。
本発明において視感反射率は、実施例記載の方法により測定されるものとする。
本発明の反射防止膜は、基板側から低屈折率層と高屈折率層が交互に積層されてなる。本発明における反射特性は低屈折率層及び高屈折率層に用いられる材料の屈折率を考慮して、当業者の技術常識に基づいて、上記UVAの平均反射率や、視感反射率などの分光特性が得られるように、各層の屈折率、積層数を考慮して、各層の厚さを光学薄膜シミュレーションソフトによる計算により求めて、真空蒸着法やイオンアシスト法など公知の方法によって積層することで得られる。
積層数は、11〜15層であり、好ましくは11〜14層であり、より好ましくは11〜13層である。11層以上とすることで、本発明のUVAの平均反射率及び視感反射率を得やすくなり、15層以下とすることで、樹脂基板上に反射防止膜を積層する際の発熱量を抑えることができる。
本発明の反射防止膜に用いられる低屈折率層は、SiO2及びAl23から選ばれる少なくとも一種の金属酸化物からなる。これらの金属酸化物の中でもSiO2が好ましい。低屈折率層の屈折率としては1.4〜1.5が好ましく、1.42〜1.48がさらに好ましい。低屈折率層の膜厚は、特に限定されないが、例えば10〜200nmの範囲から選ばれることが好ましい。ここで本発明において膜厚とは、物理膜厚を意味する。
本発明の反射防止膜に用いられる高屈折率層は、Ta25、Nb25、ZrO2、TiO2、In23/SnO2(ITO)、及びCeO2から選ばれる少なくとも一種の金属酸化物からなる。これらの金属酸化物の中でもTa25が好ましい。なお、In23/SnO2は、酸化インジウムスズ(ITO)を意味し、酸化インジウム(In23)に酸化スズ(SnO2)を添加した物質を意味する。高屈折率層の屈折率としては、1.9〜2.4が好ましい。高屈折率層の膜厚は、特に限定されないが、例えば10〜200nmの範囲から選ばれることが好ましい。
また、本発明の反射防止膜は、最外層が低屈折率層であることが好ましく、最外層の低屈折率層がSiO2層であり、その下の高屈折率層がTa25層であると好ましい。
本発明の反射防止膜は、最内層が下地層であることが好ましく、下地層の材質としては、SiO2が好ましい。
本発明の反射防止膜は、11層構成とする場合、例えば、各層の構成が樹脂基板側から順に第1層が20〜87nmのSiO2膜であり、第2層が19〜28.5nmのTa25膜であり、第3層が50〜63nmのSiO2膜であり、第4層が38〜46nmのTa25膜であり、第5層が46〜55nmのSiO2膜であり、第6層が38〜44nmのTa25膜であり、第7層が58〜66nmのSiO2膜であり、第8層が36〜42nmのTa25膜であり、第9層が43〜53nmのSiO2膜であり、第10層が38〜47nmのTa25膜であり、第11層が107〜123nmのSiO2膜であることが好ましい。
本発明の反射防止膜は、13層構成とする場合、例えば、各層の構成が樹脂基板側から順に第1層が50〜85nmのSiO2膜であり、第2層が25〜37nmのTa25膜であり、第3層が47〜58nmのSiO2膜であり、第4層が42〜47nmのTa25膜であり、第5層が47〜57nmのSiO2膜であり、第6層が41〜70nmのTa25膜であり、第7層が29〜67nmのSiO2膜であり、第8層が39〜51nmのTa25膜であり、第9層が47〜63nmのSiO2膜であり、第10層が41〜52nmのTa25膜であり、第11層が17〜36nmのSiO2膜であり、第12層が77〜84nmのTa25膜であり、第13層が96〜116nmのSiO2膜であることが好ましい。
本発明の光学部材に用いられる樹脂基板としては、特に限定されず、例えば、メチルメタクリレート単独重合体、メチルメタクリレートと1種以上の他のモノマーとの共重合体、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート単独重合体、ジエチレングリコールビスアリルカーボネートと1種以上の他のモノマーとの共重合体、イオウ含有共重合体、ハロゲン含有共重合体、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、不飽和ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン等が挙げられる。また、樹脂基板は、本発明に係る反射防止膜により、紫外線による劣化を顕著に防止する観点から、紫外線吸収剤を含まないものを用いることが効果的である。樹脂基板の屈折率は、1.5〜1.8が好ましい。
また、本発明の光学部材は、前記樹脂基板と反射防止膜との間に、ハードコート膜を有する。
ハードコート膜としては、例えば、金属酸化物コロイド粒子と有機ケイ素化合物よりなるコ−ティング組成物を硬化したものが一般的に用いられる。また、ハードコート膜は、本発明に係る反射防止膜により、紫外線による劣化を顕著に防止する観点から、紫外線吸収剤を含まないものを用いることが効果的である。
前記金属酸化物コロイド粒子としては、例えば、酸化タングステン(WO3)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ケイ素(SiO2)、酸化アルミニウム(Al23)、酸化チタニウム(TiO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化スズ(SnO2)、酸化ベリリウム(BeO)又は酸化アンチモン(Sb25)等が挙げられ、単独又は2種以上を併用することができる。
本発明の光学部材は、反射防止膜を成膜する前に、樹脂基板に金属ニオブを蒸着してもよい。
さらに、反射防止膜の最外層の上に、必要に応じ、撥水層が設けられていてもよい。
本発明の反射防止膜は、眼鏡レンズ、カメラレンズ、ワードプロセッサーのディスプレー等に付設する光学フィルター等の光学部材に適用することができ、特に眼鏡用レンズに適している。
眼鏡用レンズに本発明の反射防止膜を設ける場合には、より顕著なハードコート膜のクラック防止効果を得る観点から、凸面と凹面の両面に形成されることが好ましいが、生産性の観点から、凸面のみに形成されていてもよい。
次に、実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明する。
実施例及び比較例で得られた光学部材は以下に示す方法により物性を測定又は評価した。
(1)UVA分光特性
10°入射及び60°入射のUVAの平均反射率は、分光光度計U−4100((株)日立ハイテクノロジーズ)にて測定した。波長範囲315nm〜400nmにおいて、1nm刻みの反射率の平均値をUVA平均反射率とする。
(2)視感反射率
視感反射率(%)は、分光光度計U−4100((株)日立ハイテクノロジーズ)を用いて、ISO(国際標準化機構)によって2000年に発行された国際規格8980−4に準拠して測定した。なお、測定条件しては、入射角10°で波長380〜780nmの範囲とした。
(実施例1)
予めハードコート膜が形成された樹脂基板(プラスチックレンズ:HOYA(株)製,商品名:アイノア、屈折率1.67)の表面に1層目の下地層(低屈折率層)である酸化ケイ素層を形成し、その上に2層目〜11層目の反射防止膜を形成した。1層目の下地層と反射防止膜の2層目から11層目は、イオンアシスト法により蒸着を行い形成した。反射防止膜の構成を表1に示す。
Figure 2013205805
(比較例1)
表2の構成の反射防止膜を形成したこと以外は実施例1と同様の条件で比較例1の光学部材を製造した。
Figure 2013205805
(比較例2)
表3の構成の反射防止膜を形成したこと以外は実施例1と同様の条件で比較例2の光学部材を製造した。
Figure 2013205805
実施例1、比較例1及び2の反射防止膜の分光特性及び視感反射率を上記の方法で測定し、更にこれらの反射防止膜を有する光学部材を用いて下記の方法によりハードコート膜劣化試験を行った。
(ハードコート膜劣化試験)
UVA−340ランプ(295−365nm)を装着した紫外線蛍光ランプ式促進耐候試験機(QUV Weathering Tester(Q−Lab Corporation社製))を使用し、下記の条件で紫外線照射4時間、結露4時間を交互に繰り返しトータル2週間(336時間、42サイクル)光学部材の耐久試験を行った。なお、実際に眼鏡を装着した際にはレンズ面にはキズが存在することが考えられるため、本耐久試験は、実施例、比較例の眼鏡レンズの反射防止膜表面に傷が存在する状態で試験を行った。具体的には、眼鏡レンズ面に鋭利なダイヤモンドで傷を付けて、その傷の端部より生じたハードコート膜に形成されるクラックの本数をカウントした。クラックの評価は三波長蛍光灯の反射光および透過光による目視検査によって行った。
紫外線照射試験条件:0.77W/m2、温度45℃、入射角度0°〜70°
結露試験条件:温度45℃、湿度90%
これらの結果を表4に示す。
Figure 2013205805
本発明によれば、反射防止膜としての機能を保持しつつ、ハードコート膜や樹脂基板の変質を防止することのできる反射防止膜、及びそれを用いた光学部材を提供することができ、眼鏡用レンズなどにおいて利用される。

Claims (2)

  1. 樹脂基板と、該樹脂基板上に設けられたハードコート膜と、該ハードコート膜上に設けられた反射防止膜とを有する光学部材であって、
    前記反射防止膜が、樹脂基板側から低屈折率層と高屈折率層が交互に11〜15層積層されてなり、
    前記低屈折率層がSiO2及びAl23から選ばれる少なくとも一種の金属酸化物からなり、前記高屈折率層がTa25、Nb25、ZrO2、TiO2、In23/SnO2(ITO)、及びCeO2から選ばれる少なくとも一種の金属酸化物からなり、
    反射防止膜形成面に対して10°入射における400〜315nmの紫外光の平均反射率が80%以上であり、反射防止膜形成面に対して60°入射における400〜315nmの紫外光の平均反射率が40%以上であり、且つ、視感反射率が1.5%以下である、光学部材。
  2. 眼鏡用レンズである、請求項1に記載の光学部材。
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