JP2013205344A - 電気泳動用試験具の製造装置および製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】電気泳動によるタンパク質の分離精度を向上できる電気泳動用試験具の製造装置および製造方法を提供すること。
【解決手段】ステージと、該ステージ上に設置された基材上にゲル材料液を塗布する塗布部と、冷却部とを備え、前記冷却部が、前記ステージと前記塗布部におけるゲル材料液とのうち少なくとも一方を冷却するように構成されたことを特徴とする電気泳動用試験具の製造装置。
【選択図】図1
【解決手段】ステージと、該ステージ上に設置された基材上にゲル材料液を塗布する塗布部と、冷却部とを備え、前記冷却部が、前記ステージと前記塗布部におけるゲル材料液とのうち少なくとも一方を冷却するように構成されたことを特徴とする電気泳動用試験具の製造装置。
【選択図】図1
Description
本発明は、基材上にゲル層が形成されてなる電気泳動用試験具の製造装置および製造方法に関する。
電気泳動法は、溶液またはこれに浸漬した親水性の支持体などの媒体に電圧をかけることによって、該媒体中の荷電物質がその電荷に応じて電界中を移動する現象を利用した分離分析法である。特に、媒体としてゲルを用いる電気泳動(ゲル電気泳動法)は、タンパク質および核酸のような生体高分子を分離する手法として、生化学、分子生物学などの生命科学分野や臨床検査の分野などにおいて広く利用されている。
タンパク質の電気泳動法には、主として、タンパク質の大きさ(分子量)により分離する方法と、電荷(等電点)により分離する方法とがある。分子量による分離には、ポリアクリルアミドゲルを用いて、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)の存在下で行う電気泳動(SDS-PAGE法)が広く利用されている。SDS-PAGE法では、タンパク質は一定の割合でSDSと結合してその電荷密度が一定となり、この状態でタンパク質が網目状構造を有するポリアクリルアミド中を移動することで、タンパク質は分子ふるい効果により、その分子量に応じて分離される。
等電点による分離には、pH勾配の存在下で行う電気泳動(等電点電気泳動法)が利用されている。等電点電気泳動法では、pH勾配中で、タンパク質が自身の等電点と等しいpHの位置に集まることによって、タンパク質が分離される。等電点電気泳動法の媒体として、従来は両性担体が用いられていたが、近年では、通電中にpH勾配が崩れることのない固定化pH勾配(Immobilized pH Gradient:IPG)ゲルがよく用いられている。
近年では、生物が有する全タンパク質の構造および機能を網羅的に解析することを目的とするプロテオーム解析の一環として、上記の2つの電気泳動法を組み合わせた二次元電気泳動法が利用されている。二次元電気泳動法では、一次元目に等電点電気泳動が行われ、続く二次元目にSDS-PAGEが行われる。これにより、数千種類ものタンパク質を高い分解能で一挙に分離することが可能となった。
このように、ゲル電気泳動法はタンパク質などの生体高分子の分離分析に不可欠な手法であるが、いずれの電気泳動法においても分析の精度および再現性は、用いるゲルの品質によるところが大きい。したがって、当該分野においては、分解能の高いゲルを搭載した電気泳動用試験具を安定して製造可能な技術の開発が望まれている。
例えば、特許文献1には、濃度が異なる2種類のゲル原液を撹拌槽で混合し、その混合液をゲル容器内へ底部から導入してゲル化させることにより濃度傾斜を有するゲルシートを作製する方法が開示されている。この場合、ゲル容器内へ導入する混合液中の各ゲル原液の割合を変化させることによって、所定の濃度傾斜を有するSDS-PAGE用ゲルシートが得られる。また、特許文献1に記載のグラジェントメイカーを用い、pHが異なる2種類のゲル原液を撹拌槽で混合し、その混合液をゲル容器内へ底部から導入してゲル化させることによりpH傾斜を有するゲルシートを作製することができる。この場合、ゲル容器内へ導入する混合液中の各ゲル原液の割合を変化させることによって、所定のpH傾斜を有するゲルシートが得られ、このゲルシートをpH傾斜方向に所定の幅で切断して細長いプレート上に貼り付けることにより、等電点電気泳動用のゲルプレートが得られる。
特許文献1に記載のゲルプレート製造方法では、ゲル容器内での濃度傾斜またはpH傾斜の管理が難しく、安定した品質のゲルプレートが得られ難いという面があった。そこで、濃度傾斜またはpH傾斜を精度よく管理できる技術として、プレート上にモノマー溶液を塗布するゲルプレート製造方法が特許文献2に開示されている。すなわち、プレート上に液たまりを形成し、液たまりにモノマー溶液を吐出した後、重合開始剤を塗布して塗布膜をゲル化させることにより、基材上にゲル層を形成する。この場合、濃度またはpHが異なる2種類のモノマー溶液を混合比率を変化させながら混合して液たまりに塗布することにより、所定の濃度傾斜を有するSDS-PAGE用ゲルシートまたは所定のpH傾斜を有する等電点電気泳動用のゲルプレートが得られる。
特許文献1および2のようにして作製されたゲル層を長期間保存できるようにするために、通常はゲル層を乾燥する。そして、使用時に乾燥膜に試料溶液を吸収させ膨潤させることにより、ゲル層を復元する。
特許文献2の製造方法では、液たまりとモノマー溶液とが混合した塗布膜に対して重合開始剤を吐出するため、塗布膜中に重合開始剤が均一に拡散する前からゲル化が開始する。そのため、得られたゲル層は、重合度が高く網目構造が細かい部分と重合度が低く網目構造が粗い部分が形成され易い。電気泳動でのタンパク質の分離は、高い分離精度を得る上でゲル層の網目構造が一様であることが重要であるが、特許文献2の製造方法で得られたゲル層ではこの点が不十分である。
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、電気泳動によるタンパク質の分離精度を向上できる電気泳動用試験具の製造装置および製造方法を提供することを目的とする。
かくして、本発明によれば、ステージと、該ステージ上に設置された基材上にゲル材料液を塗布する塗布部と、冷却部とを備え、前記冷却部が、前記ステージと前記塗布部におけるゲル材料液とのうち少なくとも一方を冷却するように構成された電気泳動用試験具の製造装置が提供される。
また、本発明の別の観点によれば、基材上にゲル材料液を塗布して塗布膜を形成する塗布工程と、前記塗布膜をゲル化させてゲル層を形成するゲル化工程とを含み、前記塗布工程において、基材と塗布されるゲル材料液とのうち少なくとも一方が冷却状態である電気泳動用試験具の製造方法が提供される。
また、本発明のさらに別の観点によれば、基材上にゲル材料液を塗布して塗布膜を形成する塗布工程と、前記塗布膜をゲル化させてゲル層を形成するゲル化工程とを含み、
前記塗布工程において、常温下でゲル材料液としてのモノマー溶液を基材上に塗布した後、基材上の前記モノマー溶液の塗布膜を冷却し、冷却された前記モノマー溶液の塗布膜にゲル材料液としての重合開始剤を塗布する電気泳動用試験具の製造方法が提供される。
前記塗布工程において、常温下でゲル材料液としてのモノマー溶液を基材上に塗布した後、基材上の前記モノマー溶液の塗布膜を冷却し、冷却された前記モノマー溶液の塗布膜にゲル材料液としての重合開始剤を塗布する電気泳動用試験具の製造方法が提供される。
本発明によれば、塗布工程において、基材上の塗布膜の温度が常温よりも低下する。そのため、塗布工程中では、塗布膜のゲル化が抑制され、塗布膜中に重合開始剤を均一に拡散させることができる。この結果、その後のゲル化工程において、塗布膜がむら無く一様にゲル化し、均一な網目構造を有するゲル層が形成され、高精度なタンパク質分離が可能となる高品質な電気泳動用試験具を得ることができる。
先ず、本発明の電気泳動用試験具の製造装置および製造方法によって製造される電気泳動用試験具について説明する。
(電気泳動用試験具について)
本発明において、電気泳動用試験具は、基材上にゲル層が形成され固定されたものであり、二次元電気泳動における一次元目の等電点電気泳動に用いられる試験具と、二次元電気泳動における二次元目のSDS−PAGEに用いられる試験具との両方が含まれる。すなわち、本発明の電気泳動用試験具の製造装置および製造方法は、これら両方の試験具を製造することができる。
本発明において、電気泳動用試験具は、基材上にゲル層が形成され固定されたものであり、二次元電気泳動における一次元目の等電点電気泳動に用いられる試験具と、二次元電気泳動における二次元目のSDS−PAGEに用いられる試験具との両方が含まれる。すなわち、本発明の電気泳動用試験具の製造装置および製造方法は、これら両方の試験具を製造することができる。
電気泳動用試験具の基材の形態は、特に限定されるものではなく、例えば、細長プレート、平板プレート、所定形状に成型したチップ等が挙げられる。基材の材料としては、電気泳動用試験具の基材としての機能が発揮できるものであれば特に限定されず、例えば、石英ガラス、無アルカリガラス等のガラス、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)等の樹脂、アルミナ、低温同時焼成セラミック等のセラミックスなどが挙げられる。また、基材が疎水性材料からなる場合、基材におけるゲル層が形成される面を親水性処理してもよく、これにより基材に対する後述のモノマー溶液の濡れ性が向上し、モノマー溶液がゲル化したゲル層と基材との密着性が向上する。親水性処理としては、硫酸を用いたニトロ化、硝酸を用いたスルホン化、酸素プラズマ処理等が挙げられる。
電気泳動用試験具のゲル層の材料は、電気泳動用試験具のゲル層としての機能が発揮できるものであれば特に限定されず、例えば、一般的なポリアクリルアミドゲルの材料としては、アクリルアミド(モノマー)、ビスアクリルアミド(架橋剤)、pH調整材料(pHバッファ)、テトラメチルエチレンジアミン(TEMED:重合促進剤)、過硫酸アンモニウム(APS:重合開始剤)および純水が挙げられる。
本発明において、ゲル層は、ゲル材料液を基材上に塗布しゲル化させることにより形成される。この際、予め重合開始剤を添加したゲル材料液(重合開始剤入りゲル材料液)を基材上に塗布する場合と、重合開始剤以外の材料を混合したモノマー溶液(重合開始剤を含まないゲル材料液)を基材上に塗布した後、この塗布膜上に重合開始剤を塗布する場合があり、本発明ではこれら両方の場合を包含する。
よって、本発明において、「ゲル材料液」とは、特に言及がない限り、予め重合開始剤を添加したゲル材料液、重合開始剤を含まないゲル材料液、および重合開始剤の全てを意味する。以下、「予め重合開始剤を添加したゲル材料液」を「重合開始剤入りゲル材料液」という場合があり、「重合開始剤を含まないゲル材料液」を「モノマー溶液」という場合がある。
(電気泳動用試験具の製造装置および製造方法について)
本発明の電気泳動用試験具の製造装置(以下、「試験具製造装置」という場合がある)は、ステージと、該ステージ上に設置された基材上にゲル材料液を塗布する塗布部と、冷却部とを備える。
また、本発明の電気泳動用試験具の製造方法(以下、「試験具製造方法」という場合がある)は、基材上にゲル材料液を塗布して塗布膜を形成する塗布工程と、前記塗布膜をゲル化させてゲル層を形成するゲル化工程とを含む。
本発明の電気泳動用試験具の製造装置(以下、「試験具製造装置」という場合がある)は、ステージと、該ステージ上に設置された基材上にゲル材料液を塗布する塗布部と、冷却部とを備える。
また、本発明の電気泳動用試験具の製造方法(以下、「試験具製造方法」という場合がある)は、基材上にゲル材料液を塗布して塗布膜を形成する塗布工程と、前記塗布膜をゲル化させてゲル層を形成するゲル化工程とを含む。
ステージは、基材を支持する台であり、例えば、基材と同じ材料(ガラス、樹脂、セラミックス等)、あるいはステンレス、チタン、ニッケル合金等の耐薬品性金属、銅、アルミニウム等の熱導電性が高い金属と耐薬品性材料との複合材にて形成することができる。また、ステージにおける基材を設置する上面には、基材を嵌め入れる位置決め凹部が設けられてもよい。
塗布部としては、ステージ上にセットされた基材上面の所定領域にゲル材料液を塗布できるものであれば特に限定されず、例えば、ピペッター、ディスペンサー、インクジェット装置等が挙げられる。これらの中でも、高精度に微小液滴を吐出して基材に付着させるインクジェットヘッドを備えたインクジェット装置を用いることが好ましい。インクジェットヘッドを用いれば、細長い基材の所定領域にも高精度かつ定量的に微小液滴を塗布することができるため、得ようとするゲル層の形成領域、膜厚、pH傾斜および濃度傾斜等を容易かつ高精度に制御することができる。
塗布部は、メンテナンス性の観点から、モノマー溶液と、重合開始剤とを個別に基材上に塗布するように構成されることが好ましい。すなわち、塗布部は、モノマー溶液を吐出するモノマー溶液吐出部と、重合開始剤を吐出する重合開始剤吐出部とを有するインクジェット装置であることが好ましい。
さらに、モノマー溶液吐出部が、第1液吐出部と第2吐出部とを有していてもよい。このようにすれば、試験具製造装置にて等電点電気泳動用試験具を製造する場合、第1吐出部が酸性モノマー溶液を吐出する酸性溶液吐出部であり、第2吐出部が塩基性モノマー溶液を吐出する塩基性溶液吐出部であるように構成することができる。これにより、酸性溶液吐出部からの酸性モノマー溶液と塩基性吐出部からの塩基性モノマー溶液の塗布量を調整することにより、ゲル層の高精度なpH傾斜を容易に形成することができる。
また、試験具製造装置にてSDS−PAGE用試験具を製造する場合、第1吐出部から第1の濃度のモノマー溶液を吐出し、第2吐出部から第1の濃度と異なる第2の濃度のモノマー溶液を吐出するように構成することができる。これにより、第1吐出部からのモノマー溶液と第2吐出部からのモノマー溶液の塗布量を調整することにより、ゲル層の高精度な濃度傾斜を容易に形成することができる。
また、試験具製造装置にてSDS−PAGE用試験具を製造する場合、第1吐出部から第1の濃度のモノマー溶液を吐出し、第2吐出部から第1の濃度と異なる第2の濃度のモノマー溶液を吐出するように構成することができる。これにより、第1吐出部からのモノマー溶液と第2吐出部からのモノマー溶液の塗布量を調整することにより、ゲル層の高精度な濃度傾斜を容易に形成することができる。
冷却部は、前記ステージと前記塗布部におけるゲル材料液とのうち少なくとも一方を冷却するように構成されている。すなわち、冷却部は、ステージのみを冷却するか、あるいは塗布部におけるゲル材料液のみを冷却するか、あるいはステージと塗布部におけるゲル材料液との両方を冷却するように構成されている。これにより、塗布工程中において、基材上の塗布膜の温度が常温より低下するため、塗布膜のゲル化を抑制しながら塗布膜中に重合開始剤を均一に拡散させることができる。この結果、その後のゲル化工程において、塗布膜がむら無く一様にゲル化し、均一な網目構造を有するゲル層が形成され、タンパク質を高精度に分離可能な高品質な電気泳動用試験具を得ることができる。このような観点から、冷却部は、ステージと塗布部におけるゲル材料液との両方を冷却することが特に好ましい。
冷却部としては、特に限定されず、例えば、ペルチェ素子、冷媒と熱交換器を用いたヒートポンプ等が挙げられる。試験具製造装置の小型化と低コスト化、および、冷却したい複数箇所を容易かつ少ないエネルギーで冷却することができる観点から、冷却部としてペルチェ素子を用いることが好ましい。
また、冷却部は、前記モノマー溶液吐出部におけるモノマー溶液と、前記重合開始剤吐出部における重合開始剤との少なくとも一方を冷却するように構成されてもよい。モノマー溶液吐出部から吐出されるモノマー溶液はゲル層の質量の大半を構成するため、モノマー溶液吐出部用の冷却部によってモノマー溶液を冷却することは、基材上に冷却された塗布膜を迅速に形成する上で有効である。モノマー溶液と重合開始剤の両方を冷却することが特に好ましく、これにより塗布工程中の塗布膜のゲル化をさらに抑制することができる。
試験具製造装置は、電気泳動用試験具の製造をより自動化する上で、ステージと塗布部を相対的に移動させる移動機構をさらに備えてもよい。移動機構としては、直線方向または平面方向に移動するものであれば特に限定されない。
例えば、直線的移動機構としては、モータにより駆動するボールネジ、チェーン・スプロケット、ベルト・プーリ、ラック・ピニオン等を用いたリニアガイド機構、エアーまたはオイルシリンダ機構等が挙げられる。平面的移動機構としては、直線的移動機構の組み合わせ、ロボットアーム等が挙げられる。
例えば、直線的移動機構としては、モータにより駆動するボールネジ、チェーン・スプロケット、ベルト・プーリ、ラック・ピニオン等を用いたリニアガイド機構、エアーまたはオイルシリンダ機構等が挙げられる。平面的移動機構としては、直線的移動機構の組み合わせ、ロボットアーム等が挙げられる。
等電点電気泳動用試験具を製造する場合は細長い基材上にゲル層を形成するため直線的移動機構を採用し、SDS−PAGE用試験具を製造する場合は平板形の基材上にゲル層を形成するため平面的移動機構を採用すればよい。さらに、このような移動機構は、固定した塗布部に対してステージを移動させるように構成されることが、装置構成を簡素化できる上で好ましい。
試験具製造装置は、ステージおよび塗布部を収納するケースと、ケース内に不活性ガスを導入する不活性ガス導入部とをさらに備えてもよい。これにより、不活性ガス雰囲気下で塗布工程を行うことができるため、ゲル化の阻害要因となる酸素が塗布膜中に混入することが防止されるため、高品質なゲル層を形成することができる。また、ケース内の空気を不活性ガスと置換することにより、乾燥雰囲気下で塗布工程を行うことができるため、ステージ周辺の結露が防止され、結露による水滴が基材に付着してゲル層の品質が低下するという不具合を防止できる。
塗布工程後にステージから塗布膜を有する基材を取り出して常温下に放置することにより、塗布膜の温度が徐々に上昇してゲル化が促進する。よって、ステージから塗布膜を有する基材を取り出すことによりゲル化工程が開始される。また、ゲル化をより促進して生産性を上げる上で、常温を超える雰囲気下で塗布膜をゲル化させる、基材を加熱する、あるいはこれらの両方を行うようにしてもよい。また、不活性ガス雰囲気下でゲル化工程を行ってもよい。
ゲル化工程後、形成されたゲル層を乾燥させる乾燥工程を行い、さらにその後に冷凍工程を行ってもよい。あるいは、ゲル化工程後、フリーズドライ工程を行ってもよい。これにより、電気泳動用試験具の保存性を高めることができる。
以下、図面を参照しながら本発明の電気泳動用試験具の製造装置および製造方法の実施形態を詳説する。
(実施形態1)
図1は本発明の電気泳動用試験具の製造装置の実施形態1を示す構成図である。また、図6(A)は実施形態1の製造装置により製造した等電点電気泳動用試験具を示す斜視図である。なお、実施形態1では、等電点電気泳動用試験具の製造装置および製造方法を説明する。
図1は本発明の電気泳動用試験具の製造装置の実施形態1を示す構成図である。また、図6(A)は実施形態1の製造装置により製造した等電点電気泳動用試験具を示す斜視図である。なお、実施形態1では、等電点電気泳動用試験具の製造装置および製造方法を説明する。
実施形態1の試験具製造装置は、基材Sがセットされるステージ10と、冷却部としての複数のペルチェ素子20と、塗布部としてのインクジェット装置30と、ステージ10を直線方向に移動させる移動機構40と、これらを収納する密閉可能なケース50と、ケース50内の空気を排気する排気部60と、ケース50内に不活性ガスを導入する不活性ガス導入部70と、図示しない制御部とを備える。なお、ケース50には図示しない開閉扉が設けられている。
移動機構40は、ペルチェ素子20を介してステージ10を支持する支持台40aを有し、この支持台40aが図示しないリニアガイド機構によって直線方向に往復移動可能とされている。塗布工程では、移動機構40によってステージ10は一定速度で移動すると共に、設定した吐出ピッチでゲル材料液がインクジェット吐出される。本実施形態の場合、吐出制御は次の如くである。
移動機構はガラススケール等を含み、基準距離(例えば、:0.1μm)毎に現在座標を常時、後述の制御部に出力する。なお、基準距離は移動機構の種類に依存する。制御部では、移動機構からの信号に対し、予め装置使用者が設定した分周比(例えば、30倍)に従って、整数倍された距離だけ移動機構が移動する毎に、インクジェットヘッドに信号を送る。そして、インクジェットヘッドは制御部からの入力信号に従って、ゲル材料液を吐出する。このような制御により、移動機構を連続的に動作させつつ、移動機構と吐出の同期をとっている。なお、本明細書において、「吐出ピッチ」とは、基準距離と分周比を掛け合わせた値であり、基準距離0.1μmの場合、装置使用者が分周比を30倍に設定することで吐出ピッチ3μmでのゲル材料液を吐出させることができる。
ステージ10を冷却するペルチェ素子20は、その吸熱面がステージ10の下面と接触し、放熱面が支持台40aの上面と接触している。これにより、ステージ10から奪われた熱が支持台40aへ伝えられるため、支持台40aはヒートシンクとしても機能する。
図1において、実線で示された支持台40aは待機位置にあり、塗布工程において2点鎖線で示された位置まで支持台40a、それに搭載されたペルチェ素子20、ステージ10および基材Sは直進する。これにより、ステージ10上にセットされた基材Sは、後述する第1〜第3インクジェットヘッド31b、32b、33bの真下を通過する。
インクジェット装置30は、酸性溶液吐出部31と、塩基性溶液吐出部32と、重合開始剤吐出部33と、負圧調整部34とを備える。
酸性溶液吐出部31は、酸性モノマー溶液Aを貯蔵する第1タンク31aと、第1インクジェットヘッド31bと、第1タンク31aから第1インクジェットヘッド31bへ酸性モノマー溶液Aを送る第1パイプ31cと、第1パイプ31cに設けられた図示しない電磁弁とを有し、水頭差を利用して第1タンク31aから第1インクジェットヘッド31bへ酸性モノマー溶液Aが供給されるように構成されている。
酸性溶液吐出部31は、酸性モノマー溶液Aを貯蔵する第1タンク31aと、第1インクジェットヘッド31bと、第1タンク31aから第1インクジェットヘッド31bへ酸性モノマー溶液Aを送る第1パイプ31cと、第1パイプ31cに設けられた図示しない電磁弁とを有し、水頭差を利用して第1タンク31aから第1インクジェットヘッド31bへ酸性モノマー溶液Aが供給されるように構成されている。
塩基性溶液吐出部32は、塩基性溶液Bを貯蔵する第2タンク32aと、第2インクジェットヘッド32bと、第2タンク32aから第2インクジェットヘッド32bへ塩基性溶液Bを送る第2パイプ32cと、第2パイプ32cに設けられた図示しない電磁弁とを有し、水頭差を利用して第2タンク32aから第2インクジェットヘッド32bへ塩基性モノマー溶液Bが供給されるように構成されている。
重合開始剤吐出部33は、重合開始剤Cを貯蔵する第3タンク33aと、第3インクジェットヘッド33bと、第3タンク33aから第3インクジェットヘッド33bへ重合開始剤Cを送る第3パイプ33cと、第3パイプ33cに設けられた図示しない電磁弁とを有し、水頭差を利用して第3タンク33aから第3インクジェットヘッド33bへ重合開始剤Cが供給されるように構成されている。
第1〜第3インクジェットヘッド31b〜33bとしては、サーマルジェット方式、ピエゾジェット方式、静電駆動方式等が挙げられるが、インクジェット装置30における各液(酸性モノマー溶液A、塩基性モノマー溶液B、重合開始剤C)を冷却する場合は、各液に熱を加えるサーマルジェット方式を用いず、ピエゾジェット方式または静電駆動方式を用いることが望ましい。
負圧調整部34は、第1〜第3タンク31a〜33aとパイプ35〜37にて接続されており、第1〜第3タンク31a〜33a内の気圧を管理し、第1〜第3インクジェットヘッド31b〜33bのノズル孔H(図5参照)から液が垂れ落ちない所定の圧力となるよう、第1〜第3タンク31a〜33a内を大気圧より低い所定圧で一定になるように調整する。なお、後述する排気部60の排気管60aにおける真空ポンプ60bとバルブ60cとの間に分岐管を接続し、電磁弁が設けられた前記パイプ35〜37を前記分岐管に接続することにより、負圧調整部34を構成することもできる。
第1〜第3インクジェットヘッド31b〜33bは一体化されて1組の吐出ヘッドユニットUが構成されており、この吐出ヘッドユニットUは図示しない固定部材にて固定されている。そして、図3に示すように、この基材Sの移動軌跡E上に、第1〜第3インクジェットヘッド31b〜33bは一列で配置されているが、ヘッド配置順はこの順番に限定されない。なお、実施形態1の場合、基材Sの移動方向の上流側から第1〜第3インクジェットヘッド31b〜33bの順で配置されている。
また、図3と図4に示すように、基材Sの移動軌跡Eと対向する第1〜第3インクジェットヘッド31b〜33bの下面には、移動軌跡Eの方向と直交する方向に複数のノズル孔Hが1列で設けられている。すなわち、1列のノズル孔群HGが、移動軌跡Eの方向と直交する方向に、かつ移動軌跡Eの幅を超える長さで延びている。ノズル孔径Dおよびノズル孔間隔Pは特に限定されないが、ノズル孔Hの径は10〜100μm程度が適当であり、ノズル孔間隔Pは100〜200μm程度が適当である。なお、ノズル列が直線状に配置されている場合、ヘッド向きを傾けることで見掛け上、ノズル孔間隔を狭くする方法も使用できる。また、第1〜第3インクジェットヘッド31b〜33bにおいて、ノズル孔群HGは2列以上の複数列で設けられていてもよい。
吐出ヘッドユニットUの外面にはペルチェ素子20が吸熱面を接触させて設けられると共に、第1〜第3タンク31a〜33aの外面にもペルチェ素子20が吸熱面を接触させて設けられている。このように構成することにより、各吐出部31〜33における各液(酸性モノマー溶液A、塩基性モノマー溶液B、重合開始剤C)が冷却されて増粘するため、各液に添加する増粘剤の添加量を低減することができる。なお、インクジェットヘッド側のペルチェ素子20とタンク側のペルチェ素子20のうちいずれか一方を省略してもよいが、インクジェットヘッド側のペルチェ素子20は残しておく方が好ましい。
排気部60は、ケース50の所定箇所に形成された排気孔と接続された排気管60aと、排気管60aと接続された真空ポンプ60bと、前記排気孔と真空ポンプ60bとの間の排気管60aに設けられたバルブ(電磁弁)60cとを備え、ケース50内の空気を外部に排出する。
不活性ガス導入部70は、ケース50の所定箇所に形成された導入孔と接続された導入管70aと、導入管70aと接続された不活性ガスボンベ70bと、前記排気孔とガスボンベ70bとの間の導入管70aに設けられたバルブ(電磁弁)70cとを備え、不活性ガスボンベ70b内の不活性ガス(例えば、窒素またはアルゴン等)をケース50内に導入する。
図示しない制御部は、試験具製造装置における各種の駆動部およびセンサと電気的に接続されている。ここで、各種駆動部としては、例えば、移動機構40のモータ、ペルチェ素子20の電源、ペルチェ素子20の放熱面側と熱交換する図示しないチラー、各電磁弁、真空ポンプ60b、負圧調整部34等が挙げられる。また、各種センサ(図示省略)としては、ステージ10上に設けられた温度センサ、第1〜第3インクジェットヘッド31b、32b、33b内の液温および気圧を検知する温度センサおよび圧力センサ等が挙げられる。
また、制御部は、所定のプログラムデータを記憶する記憶部、記憶部に所定のプログラムデータを入力する入力部、各種センサから入力された信号が入力された検知信号とプログラムデータとを比較する判定部、判定部からの制御信号を各駆動部へ出力する出力部等を備え、各種センサからの検知信号と所定のプログラムに基づいて、各種駆動部の駆動を制御して塗布工程を所定の手順で行う。
次に、本発明の試験具製造装置を用いた試験具製造方法の一例について説明する。
先ず、図1に示すように、待機位置にあるステージ10上に細長い矩形の基材Sをセットする。また、各ペルチェ素子20を通電して、ステージ10上の基材Sと、酸性溶液吐出部31の酸性モノマー溶液と、塩基性溶液吐出部32の塩基性モノマー溶液と、重合開始剤吐出部33の重合開始剤とを冷却する。なお、冷却温度としては、20℃以下が好ましく、例えば、5〜20℃である。続いて、ケース50を密閉し、排気部60を駆動してケース50内の空気を外部に排出した後、不活性ガス導入部70からケース50内に不活性ガス(例えば、窒素ガス)を大気圧付近まで導入する。
先ず、図1に示すように、待機位置にあるステージ10上に細長い矩形の基材Sをセットする。また、各ペルチェ素子20を通電して、ステージ10上の基材Sと、酸性溶液吐出部31の酸性モノマー溶液と、塩基性溶液吐出部32の塩基性モノマー溶液と、重合開始剤吐出部33の重合開始剤とを冷却する。なお、冷却温度としては、20℃以下が好ましく、例えば、5〜20℃である。続いて、ケース50を密閉し、排気部60を駆動してケース50内の空気を外部に排出した後、不活性ガス導入部70からケース50内に不活性ガス(例えば、窒素ガス)を大気圧付近まで導入する。
次に、所定のプログラムに基づく塗布工程が行われる。すなわち、図4(A)、(B)および図5(A)、(B)に示すように、移動機構40により支持台40aが矢印M方向に断続的に一定速度で移動すると共に、第1〜第3インクジェットヘッド31b〜33bから微小液滴La、Lb、Lcが一定時間間隔で断続的に吐出して、基材S上に常温より低温の塗布膜L3が形成される。
詳しく説明すると、図4(A)に示すように、基材Sの一端S1がインクジェット装置30の第1インクジェットヘッド31bのノズル孔群HGの真下位置まで移動したところで、第1インクジェットヘッド31bから冷却された酸性モノマー溶液の微小液滴Laが吐出されて冷却された基材S上に塗布される。これにより、図4(B)に示すように、常温より低温の酸性モノマー溶液の塗布膜L1が基材Sの一端S1側に形成される。この場合、ステージ10上に微小液滴Laが吐出されないように、第1インクジェットヘッド31bにおけるノズル孔群HGのうちから微小液滴Laを吐出するノズル孔Hが選択されており、これについては第2および第3インクジェットヘッド32b、33bでも同様である。
そして、基材Sの一端S1が第2インクジェットヘッド32bのノズル孔群HGの真下位置まで移動したところで、第2インクジェットヘッド32bから冷却された塩基性モノマー溶液の微小液滴Lbが吐出されて冷却された塗布膜L1上に塗布される。これにより、図5(A)に示すように、酸性モノマー溶液と塩基性モノマー溶液とが混合した混合モノマー溶液の塗布膜L2が基材Sの一端S1側に形成される。
そして、基材Sの一端S1が第3インクジェットヘッド33bのノズル孔群HGの真下位置まで移動したところで、第3インクジェットヘッド33bから冷却された重合開始剤の微小液滴Lcが吐出されて冷却された塗布膜L2上に塗布される。これにより、前記混合モノマー溶液と重合開始剤とが混合した重合開始剤入りゲル材料液の塗布膜L3(図5(B)参照)が基材Sの一端S1側に形成され、このようにして基材Sの一端S1側から他端S2側に向かって連続的に塗布膜L3が形成されていく。
そして、基材Sの他端S2が第1〜第3インクジェットヘッド31b〜33bを順次通過した時点で、図5(B)に示すように、第1〜第3インクジェットヘッド31b〜33bからの液滴吐出が順次停止し、塗布工程が完了する。なお、第1および第2インクジェットヘッド31b、32bからの酸性モノマー溶液(微小液滴La)および塩基性モノマー溶液(微小液滴Lb)の吐出量は、ゲル化工程後に得られるゲル層の長手方向(矢印M方向)のpH傾斜が所定の傾斜となるように調整される。
この塗布工程において、基材S上に形成される塗布膜L3は冷却状態が維持され、重合開始剤の不活性化が維持されているため、塗布膜L3のゲル化は抑制され続けると共に、重合開始剤が塗布膜L3中に均一に拡散していく。また、窒素雰囲気下で塗布工程が行われるため、ゲル化を阻害する酸素が塗布膜L3中に混入することがなく、その後のゲル化工程において塗布膜L3のゲル化を確実かつ順調に進めることができる。さらに、ケース50内は窒素置換により空気中の水分も排除されて乾燥雰囲気となるため、冷却された基材S上に結露が生じたり、冷却された吐出ヘッドユニットUの外面に結露が生じてその水滴が基材S上に落下して塗布工程が行えなくなるという不具合も確実に防止される。
その後、支持台40aが待機位置まで戻り、ケース50の扉を開けて基材Sを取り出し、ゲル化工程用のケース内に収納し、そのケース内で塗布膜L3のゲル化工程を常温下で行う。常温下のゲル化工程では、塗布膜L3の温度が常温までゆっくりと上昇するため、塗布膜L3のゲル化もゆっくりと進行し、均一な網目構造を有するゲル層が形成される。なお、常温下でのゲル化完了までには3〜5時間程度の時間を要する。ゲル化完了後は、図7に示すように、四方の端部に丸みを有するゲル層G1が基材S上に形成された等電点電気泳動用試験具GP1が得られる。この試験具GP1のゲル層G1の厚みとしては、例えば、200〜1000μm程度である。
試験具GP1を保存可能な状態とする場合、ゲル層G1をヒータにて加熱する、あるいはゲル層G1に熱風を吹き付けて乾燥する乾燥工程が行われる。図8は図7で示された等電点電気泳動用試験具を乾燥した状態を示す斜視図である。すなわち、乾燥工程によって、基材S上のゲル層G1が乾燥した乾燥膜D1を有する試験具GPDが得られる。さらに、乾燥工程後に、ゲル層G1を−20℃以下に冷却する冷却工程を行ってもよい。あるいは、乾燥工程および冷却工程の代わりに、フリーズドライ工程を行ってもよい。
(実施形態2)
実施形態1では、基材上に直接モノマー溶液を塗布した場合を例示したが、次の実施形態2のようにしてもよい。
図示省略するが、実施形態2の製造方法では、塗布工程において、基材上に予め水膜を形成し、この水膜上に実施形態1の如くモノマー溶液と重合開始剤を個別に塗布する。基材上への水膜形成は、例えば、ピペットにて所定量の純水を基材上に塗布することにより行われる。
実施形態1では、基材上に直接モノマー溶液を塗布した場合を例示したが、次の実施形態2のようにしてもよい。
図示省略するが、実施形態2の製造方法では、塗布工程において、基材上に予め水膜を形成し、この水膜上に実施形態1の如くモノマー溶液と重合開始剤を個別に塗布する。基材上への水膜形成は、例えば、ピペットにて所定量の純水を基材上に塗布することにより行われる。
実施形態2によれば、先ず基材上に水膜を形成し、水膜上にモノマー溶液を塗布するため、基材表面に対するモノマー溶液の濡れ性が改善される。また、塗布工程中は基材上の塗布膜が冷却され続けるため、水膜中にモノマー溶液が均一に拡散しながら重合開始剤も均一に拡散することができる。したがって、その後のゲル化工程において、塗布膜がゲル化して均一な網目構造を有するゲル層が形成される。
(実施形態3)
実施形態1および2では、塗布工程において、基材およびゲル材料液の少なくとも一方を冷却する場合を例示したが、次の実施形態3のようにしてもよい。
図示省略するが、実施形態3の製造方法では、前記塗布工程において、常温下でゲル材料液としてのモノマー溶液を基材上に塗布した後、基材上の前記モノマー溶液の塗布膜を冷却し、冷却された前記モノマー溶液の塗布膜にゲル材料液としての重合開始剤を塗布する。この場合、塗布前のモノマー溶液は常温であり、塗布前の重合開始剤は常温または冷却されている。このようにしても、その後のゲル化工程において、均一な網目構造を有するゲル層が形成される。
実施形態1および2では、塗布工程において、基材およびゲル材料液の少なくとも一方を冷却する場合を例示したが、次の実施形態3のようにしてもよい。
図示省略するが、実施形態3の製造方法では、前記塗布工程において、常温下でゲル材料液としてのモノマー溶液を基材上に塗布した後、基材上の前記モノマー溶液の塗布膜を冷却し、冷却された前記モノマー溶液の塗布膜にゲル材料液としての重合開始剤を塗布する。この場合、塗布前のモノマー溶液は常温であり、塗布前の重合開始剤は常温または冷却されている。このようにしても、その後のゲル化工程において、均一な網目構造を有するゲル層が形成される。
(他の実施形態)
1.実施形態1(図1参照)では、吐出ヘッドユニットUを固定しかつ移動機構40にてステージ10を移動させる場合を例示したが、ステージ10を固定しかつ吐出ヘッドユニットUを移動させるようにしてもよい。
1.実施形態1(図1参照)では、吐出ヘッドユニットUを固定しかつ移動機構40にてステージ10を移動させる場合を例示したが、ステージ10を固定しかつ吐出ヘッドユニットUを移動させるようにしてもよい。
2.実施形態1では、吐出ヘッドユニットUの下を基材Sが1度通過することにより塗布膜L3が形成される場合を例示したが、基材Sを1往復以上移動させて塗布膜L3を形成してもよい。この場合、重合開始剤の塗布時期を、例えば、毎回の移動時、所定回の移動時、あるいは最後の移動時に設定することができる。
3.実施形態1では、第1〜第3インクジェットヘッド31b〜33bが一体化された吐出ヘッドユニットを1組備え、1組の吐出ヘッドユニットにて1枚の基材S上に塗布膜L3を形成する等電点電気泳動用試験具の製造装置および製造方法を説明したが、吐出ヘッドユニットは2組以上の複数組みが設けられてもよい。この場合、複数組の吐出ヘッドユニットを基材の移動方向(矢印M方向)と直交する方向に並べると共に、ステージ10上に複数枚の基材を平行にセットし、各吐出ユニットにて各基材上に塗布膜を形成するように構成する。これにより、等電点電気泳動用試験具の生産性を高めることができる。
4.本発明はSDS−PAGE用試験具の製造装置および製造方法にも適用できる。この場合、支持台を副走査方向(矢印M方向:図1参照)およびこの方向と直交する走査方向に移動可能に構成すると共に、吐出ヘッドユニットの各ノズル孔群HG(図3参照)の方向を副走査方向に変更する。そして、ステージ上の平板形基材を走査方向に往動させながら液滴を吐出し、次に基材を副走査方向に所定距離移動させ(この間の液滴吐出は停止する)、その後、基材を走査方向に復動させながら液滴を吐出し、基材を副走査方向に所定距離移動させる(この間の液滴吐出は停止する)動作を繰り返す。この場合、所定の濃度傾斜を有するゲル層が得られるように、ゲル濃度が異なる2種類の液滴(モノマー溶液)を吐出量を調整しながら吐出する。
5.前記SDS−PAGE用試験具の製造装置および製造方法は、生産性の高い別の等電点電気泳動用試験具の製造装置および製造方法として用いることもできる。この場合、走査方向のpHは一定であり、副走査方向にpH傾斜が形成された平板形のゲル層を形成することができる。そして、このゲル層を基材と共に副走査方向に所定幅で切断することにより、図6(A)に示された試験具GP1を得ることができる。あるいは、ゲル層を乾燥した乾燥膜を基材と共に副走査方向に所定幅で切断することにより、図6(B)で示された試験具GPD1を得ることができる。
6.実施形態1では、モノマー溶液と重合開始剤を個別に基材上へ塗布する場合を例示したが、重合開始剤入りゲル材料液を基材上へ塗布してもよい。この場合、塗布工程中に重合開始剤入りゲル材料液のゲル化が進行しないよう、冷却状態の重合開始剤入りゲル材料液が用いられる。例えば、塗布部において、冷却されたモノマー溶液と冷却された重合開始剤とをノズル付近で混合し、さらにはノズル付近も冷却して吐出前の重合開始剤入りゲル材料液も冷却する。それに加え、基材を冷却してもよい。なお、実施形態2も同様である。
7.実施形態1の試験具製造装置において、インクジェット装置の代わりに、ピペッターまたはディスペンサーを用いてもよく、さらにこれらは、メンテナンス性の観点から、モノマー溶液と、重合開始剤とを個別に基材上に塗布するように構成されることが好ましい。
(実施例1)
実施形態1の製造装置を用い、かつ実施形態2の要領で塗布工程を行った後、常温で塗布膜をゲル化させて実施例1の等電点電気泳動用試験具(図6(A)参照)を製造した。この場合、ペルチェ素子による冷却温度を5℃に設定し、重合開始剤の吐出ピッチを130μmに設定した。
実施形態1の製造装置を用い、かつ実施形態2の要領で塗布工程を行った後、常温で塗布膜をゲル化させて実施例1の等電点電気泳動用試験具(図6(A)参照)を製造した。この場合、ペルチェ素子による冷却温度を5℃に設定し、重合開始剤の吐出ピッチを130μmに設定した。
その後、得られた等電点電気泳動用試験具のゲル層の表面状態を調べるために顕微鏡写真を撮った。図7は実施例1の等電点電気泳動用試験具におけるゲル層表面の顕微鏡写真である。図7から、実施例1の等電点電気泳動用試験具におけるゲル層表面には重合開始剤の液滴痕は見られなかった。この結果から、実施例1では、塗布工程において、基材を介して塗布膜が冷却され、それにより塗布膜中の重合開始剤が不活性化されたためゲル化が抑制され、かつ重合開始剤が塗布膜中を十分拡散し、その後のゲル化工程において塗布膜がむら無く一様にゲル化し、均一な網目構造を有するゲル層が形成されたと考えられる。
(比較例1)
基材を冷却しなかったこと以外は、実施例1と同様にして比較例1の等電点電気泳動用試験具(図6(A)参照)を製造した。その後、得られた等電点電気泳動用試験具のゲル層の表面状態を調べるために顕微鏡写真を撮った。図8は比較例1の等電点電気泳動用試験具におけるゲル層表面の顕微鏡写真である。図8から、比較例1の等電点電気泳動用試験具におけるゲル層表面には整然と並んだ複数個の重合開始剤の液滴痕を確認できた。この結果から、比較例1では、塗布工程において、基材を介して塗布膜が冷却されなかったため、塗布膜に重合開始剤の液滴が滴下した直後からゲル化が開始したため、重合開始剤の塗布膜中への拡散が十分行われず、その後のゲル化工程において塗布膜のゲル化にむらが生じてしまい、不均一な網目構造を有するゲル層が形成されたと考えられる。
基材を冷却しなかったこと以外は、実施例1と同様にして比較例1の等電点電気泳動用試験具(図6(A)参照)を製造した。その後、得られた等電点電気泳動用試験具のゲル層の表面状態を調べるために顕微鏡写真を撮った。図8は比較例1の等電点電気泳動用試験具におけるゲル層表面の顕微鏡写真である。図8から、比較例1の等電点電気泳動用試験具におけるゲル層表面には整然と並んだ複数個の重合開始剤の液滴痕を確認できた。この結果から、比較例1では、塗布工程において、基材を介して塗布膜が冷却されなかったため、塗布膜に重合開始剤の液滴が滴下した直後からゲル化が開始したため、重合開始剤の塗布膜中への拡散が十分行われず、その後のゲル化工程において塗布膜のゲル化にむらが生じてしまい、不均一な網目構造を有するゲル層が形成されたと考えられる。
(実施例2および比較例2)
実施例2および比較例2では、実施例1および比較例1の等電点電気泳動用試験具のゲル層を乾燥して、実施例2および比較例2の等電点電気泳動用試験具(図6(B)参照)を作製し、それらを用い、次の条件で2次元電気泳動における1次元目電気泳動を行った後、等電点の違いによるタンパク質の分離状況を観察した。
実施例2および比較例2では、実施例1および比較例1の等電点電気泳動用試験具のゲル層を乾燥して、実施例2および比較例2の等電点電気泳動用試験具(図6(B)参照)を作製し、それらを用い、次の条件で2次元電気泳動における1次元目電気泳動を行った後、等電点の違いによるタンパク質の分離状況を観察した。
《試薬膨潤》
実施例2および比較例2で作製したゲル層の乾燥膜を所定の容器に配置し、下記評価用マーカー溶液中に乾燥膜を18時間浸漬し、復元したゲル層内にマーカー等を浸透させた。なお、試薬膨潤の際、乾燥膜の上面から所定量のシリコンオイルを導入し、大気中の水分影響を受けない環境下で試料膨潤を行った。
実施例2および比較例2で作製したゲル層の乾燥膜を所定の容器に配置し、下記評価用マーカー溶液中に乾燥膜を18時間浸漬し、復元したゲル層内にマーカー等を浸透させた。なお、試薬膨潤の際、乾燥膜の上面から所定量のシリコンオイルを導入し、大気中の水分影響を受けない環境下で試料膨潤を行った。
<評価用マーカー溶液組成>
評価用マーカー溶液は、膨潤液、アンフォライト、ジチオトレイオール、タンパク質マーカーから構成され、具体的には下記組成である。
膨潤液:162μL
アンフォライト(pH3-10):1μL、ジチオトレイオール:4μL
タンパク質マーカー:1μL
ここで、タンパク質マーカーは、β-ラクトグロブミン、カルボニックアンヒドラーゼをそれぞれ蛍光ラベル化剤(IC5-OSu)で修飾した混合物を使用した。また、膨潤液は8Mウレア、2Mチオウレア、4wt%チャップス混合水溶液である。
評価用マーカー溶液は、膨潤液、アンフォライト、ジチオトレイオール、タンパク質マーカーから構成され、具体的には下記組成である。
膨潤液:162μL
アンフォライト(pH3-10):1μL、ジチオトレイオール:4μL
タンパク質マーカー:1μL
ここで、タンパク質マーカーは、β-ラクトグロブミン、カルボニックアンヒドラーゼをそれぞれ蛍光ラベル化剤(IC5-OSu)で修飾した混合物を使用した。また、膨潤液は8Mウレア、2Mチオウレア、4wt%チャップス混合水溶液である。
《電気泳動》
試薬膨潤させたゲル層を汎用の電気泳動装置にセットし、電極を介してゲル層両端に電界印加することでマーカー物質を電気泳動させた。泳動時の電界印加条件は数段階、段階的に電界を上げながら印加し、最終的に2kV、30分印加する方法とした。
試薬膨潤させたゲル層を汎用の電気泳動装置にセットし、電極を介してゲル層両端に電界印加することでマーカー物質を電気泳動させた。泳動時の電界印加条件は数段階、段階的に電界を上げながら印加し、最終的に2kV、30分印加する方法とした。
《スキャナ評価》
泳動直後に汎用のスキャナ評価装置を用い、ゲル層面内の蛍光強度分布を評価することでタンパク質の分離状況を観察した。
図9(A)および(B)は実施例2および比較例2の等電点電気泳動用試験具の表面を撮影した写真である。図9(A)より、本発明の製造方法で作製したゲルを用い、等電点電気泳動により、タンパク質を分離できることが確認できた。一方、比較例1のように表面に大きな凹凸がある状態のゲルでは、図9(B)のように、表面凹凸がタンパク質の泳動を阻害してしまうことが確認された。なお、図9(A)および(B)においてはゲル層の輪郭が判別し難いため黒線で縁取りした。
泳動直後に汎用のスキャナ評価装置を用い、ゲル層面内の蛍光強度分布を評価することでタンパク質の分離状況を観察した。
図9(A)および(B)は実施例2および比較例2の等電点電気泳動用試験具の表面を撮影した写真である。図9(A)より、本発明の製造方法で作製したゲルを用い、等電点電気泳動により、タンパク質を分離できることが確認できた。一方、比較例1のように表面に大きな凹凸がある状態のゲルでは、図9(B)のように、表面凹凸がタンパク質の泳動を阻害してしまうことが確認された。なお、図9(A)および(B)においてはゲル層の輪郭が判別し難いため黒線で縁取りした。
10 ステージ
20 ペルチェ素子(冷却部)
30 インクジェット装置(塗布部)
31 酸性溶液吐出部(モノマー溶液吐出部の第1吐出部)
31b 第1インクジェットヘッド
32 塩基性溶液吐出部(モノマー溶液吐出部の第2吐出部)
32b 第2インクジェットヘッド
33 重合開始剤吐出部
33b 第3インクジェットヘッド
40 移動機構
50 ケース
70 不活性ガス導入部
A 酸性モノマー溶液
B 塩基性モノマー溶液
C 重合開始剤
D1 乾燥膜
G1 ゲル層
GP1 使用可能な状態となった等電点電気泳動用試験具(ゲルプレート)
GPD1 保存可能な状態となった等電点電気泳動用試験具
L1、L2、L3 塗布膜
La 酸性モノマー溶液の微小液滴
Lb 塩基性モノマー溶液の微小液滴
Lc 重合開始剤
S 基材
20 ペルチェ素子(冷却部)
30 インクジェット装置(塗布部)
31 酸性溶液吐出部(モノマー溶液吐出部の第1吐出部)
31b 第1インクジェットヘッド
32 塩基性溶液吐出部(モノマー溶液吐出部の第2吐出部)
32b 第2インクジェットヘッド
33 重合開始剤吐出部
33b 第3インクジェットヘッド
40 移動機構
50 ケース
70 不活性ガス導入部
A 酸性モノマー溶液
B 塩基性モノマー溶液
C 重合開始剤
D1 乾燥膜
G1 ゲル層
GP1 使用可能な状態となった等電点電気泳動用試験具(ゲルプレート)
GPD1 保存可能な状態となった等電点電気泳動用試験具
L1、L2、L3 塗布膜
La 酸性モノマー溶液の微小液滴
Lb 塩基性モノマー溶液の微小液滴
Lc 重合開始剤
S 基材
Claims (9)
- ステージと、該ステージ上に設置された基材上にゲル材料液を塗布する塗布部と、冷却部とを備え、
前記冷却部が、前記ステージと前記塗布部におけるゲル材料液とのうち少なくとも一方を冷却するように構成されたことを特徴とする電気泳動用試験具の製造装置。 - 前記塗布部が、ゲル材料液としてのモノマー溶液を吐出するモノマー溶液吐出部と、ゲル材料液としての重合開始剤を吐出する重合開始剤吐出部とを有する請求項1に記載の電気泳動用試験具の製造装置。
- 前記冷却部が、前記モノマー溶液吐出部におけるモノマー溶液と、前記重合開始剤吐出部における重合開始剤との少なくとも一方を冷却するように構成された請求項2に記載の電気泳動用試験具の製造装置。
- 前記塗布部が、前記モノマー溶液吐出部と前記重合開始剤吐出部を有するインクジェット装置からなる請求項2または3に記載の電気泳動用試験具の製造装置。
- 前記ステージおよび前記塗布部を収納するケースと、該ケース内に不活性ガスを導入する不活性ガス導入部とをさらに備えた請求項1〜4のいずれか1つに記載の電気泳動用試験具の製造装置。
- 基材上にゲル材料液を塗布して塗布膜を形成する塗布工程と、前記塗布膜をゲル化させてゲル層を形成するゲル化工程とを含み、
前記塗布工程において、基材と塗布されるゲル材料液とのうち少なくとも一方が冷却状態であることを特徴とする電気泳動用試験具の製造方法。 - 基材上にゲル材料液を塗布して塗布膜を形成する塗布工程と、前記塗布膜をゲル化させてゲル層を形成するゲル化工程とを含み、
前記塗布工程において、常温下でゲル材料液としてのモノマー溶液を基材上に塗布した後、基材上の前記モノマー溶液の塗布膜を冷却し、冷却された前記モノマー溶液の塗布膜にゲル材料液としての重合開始剤を塗布することを特徴とする電気泳動用試験具の製造方法。 - 前記塗布工程において、ゲル材料液としてのモノマー溶液を基材上に塗布した後、基材上の前記モノマー溶液の塗布膜にゲル材料液としての重合開始剤を塗布する請求項6に記載の電気泳動用試験具の製造方法。
- 前記塗布工程において、塗布される前記モノマー溶液と塗布される前記重合開始剤とのうち少なくとも一方が冷却状態である請求項8に記載の電気泳動用試験具の製造方法。
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