以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
まず、構成について説明する。
図1に示すように、本実施の形態に係る車両10は、駆動源としてのエンジン11と、変速装置20と、油圧制御装置30と、デファレンシャル機構40と、ドライブシャフト43と、駆動輪45と、ECU(Electronic Control Unit)100と、を備えている。本実施の形態では、車両用制御装置は、ECU100を含んで構成されるとともに、後述するトルクコンバータ50を含んで構成される変速装置20を制御するようになっている。
エンジン11は、ガソリンあるいは軽油等の炭化水素系の燃料と空気との混合気を、図示しないシリンダの燃焼室内で燃焼させることによって動力を出力する公知の内燃機関である動力装置により構成されている。エンジン11は、燃焼室内で混合気の吸気、燃焼および排気を断続的に繰り返すことによりシリンダ内のピストンを往復移動させ、ピストンに連結されたクランクシャフト15を回転させるようになっている。エンジン11に用いられる燃料は、ガソリンや軽油等に限られず、エタノール等のアルコールを含むアルコール燃料であってもよい。クランクシャフト15は、変速装置20に連結されるとともに、エンジン11で発生された動力を変速装置20に伝達するようになっている。
油圧制御装置30は、変速装置20に作動油としてのオイルを供給するとともに、供給するオイルの油圧を調整することにより、変速装置20を制御するようになっている。油圧制御装置30は、ECU100によって制御される複数のソレノイド弁等により、油圧回路の切り替えおよび油圧の制御をするようになっている。
ドライブシャフト43は、左ドライブシャフト43Lおよび右ドライブシャフト43Rを有している。駆動輪45は、左駆動輪45Lおよび右駆動輪45Rを有している。デファレンシャル機構40は、変速装置20から伝達された動力を、左ドライブシャフト43Lを回転させることによって左駆動輪45Lに伝達するとともに、右ドライブシャフト43Rを回転させることによって右駆動輪45Rに伝達するようになっている。これにより、デファレンシャル機構40は、カーブ等を走行する場合に、左駆動輪45Lと右駆動輪45Rとの回転数の差を吸収するようになっている。
駆動輪45は、ドライブシャフト43に取り付けられた金属製のホイールと、ホイールの外周に取り付けられた樹脂製のタイヤとを備えている。駆動輪45は、ドライブシャフト43によって伝達された動力により回転し、タイヤと路面との摩擦作用によって、車両10を走行させるようになっている。
ECU100は、中央演算処理装置としてのCPU(Central Processing Unit)と、固定されたデータの記憶を行うROM(Read Only Memory)と、一時的にデータを記憶するRAM(Random Access Memory)と、入力インターフェースと、出力インターフェース(いずれも図示しない)と、書き換え可能な不揮発性のメモリからなるEEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)と、通信手段と、を備えている。このECU100は、車両10の全体の制御を統括するための車両用電子制御装置となっている。
例えば、ROMには、本実施の形態に係る車両用制御プログラムやマップ等が記憶され、記憶装置として機能するようになっている。CPUは、このROMに記憶された制御プログラムやマップに基づいて演算処理を実行するようになっている。また、本実施の形態では、車両用制御プログラムは、ECU100によって予め決められた時間間隔(例えば、10ms)ごとに実行されるようになっている。
ROMに記憶されたマップとしては、後述するプライマリプーリ72の入力側油圧シリンダ73のプライマリシーブ圧Pinと、セカンダリプーリ77の出力側油圧シリンダ78のベルト挟圧Pdと、無段変速機70の変速比γと、後述するアクセルペダル19の開度(以下、アクセル開度Accともいう)との関係を示すマップがある。また、ROMに記憶されたマップとしては、目標エンジン出力を最適燃費で達成することのできる要求トルクおよび要求エンジン回転数を求める最適燃費線を表すマップがある。
また、ROMに記憶されたマップとしては、後述するタービン回転数Ntおよびエンジン回転数Neの比である速度比eと、容量係数Cとの関係を示すマップがある。さらに、ROMには、運転者がシフトレバー21を停止ポジションと走行ポジションとの間で切り替えた際に、切替後の容量係数Cを算出するためのマップが記憶されている。例えば、シフトレバー21がNポジションからDポジションに切り替えられた場合は、速度比eが1から0になるので、容量係数Cは速度比e=0における容量係数Cになる。また、例えば、シフトレバー21がDポジションからNポジションに切り替えられた場合は、速度比eが0から1になるので、容量係数Cは0になる。
また、RAMは、CPUによる演算結果や、後述する各種センサから入力されたデータ等を一時的に記憶するようになっている。また、不揮発性のメモリにより構成されたEEPROMやバックアップメモリ等によって、例えば、エンジン11の停止時に保存すべきデータ等を記憶するようになっている。
CPU、RAM、ROM、入力インターフェース、出力インターフェースは、バスを介して互いに接続されている。入力インターフェースには、各種センサが接続されていて、これらセンサが検出した信号が入力されるようになっている。出力インターフェースには、例えば、油圧制御回路31(図3参照)を構成するソレノイド弁等が接続されている。ECU100は、各種センサからの信号を入力インターフェースから入力し、必要に応じてRAMやROMを参照してCPUにより演算を行い、出力インターフェースから出力することにより、本実施の形態に係る各種制御を実行するようになっている。
車両10は、クランクセンサ81と、シフトセンサ82と、駆動軸回転数センサ83と、アクセル開度センサ84と、ブレーキセンサ88とを備えている。
クランクセンサ81は、クランクシャフト15のクランク位置やクランク角度を検知して、エンジン回転数Neを検出できるクランクポジションセンサにより構成されている。クランクセンサ81は、クランクシャフト15の回転数を検出して信号に変換し、その信号をECU100に入力するようになっている。ECU100は、クランクセンサ81によって入力された検出信号が表すクランクシャフト15の回転数を、エンジン回転数Neとして取得する。
シフトセンサ82は、シフト手段としてのシフトレバー21が、パーキング(P)、リバース(R)、ニュートラル(N)、ドライブ(D)、ロー(L)、マニュアル(M)等の各種シフトポジションのうちのどのシフトポジションにあるのかを検出するシフトポジションセンサにより構成されている。シフトセンサ82は、シフトレバー21のシフトポジションを検出して信号に変換し、その信号をECU100に入力するようになっている。ここでは、シフト手段としてシフトレバーを採用しているが、これには限られず、シフトボタン等であってもよい。
シフトレバー21は、DポジションやRポジションやLポジションやMポジションのような走行ポジションと、NポジションやPポジションのような停止ポジションとの少なくとも2つのシフトポジションのいずれかに切り替え可能になっている。また、シフトレバー21が走行ポジションにある場合は車両10が走行可能状態になるとともに、シフトレバー21が停止ポジションにある場合は車両10が停止状態になるようになっている。
駆動軸回転数センサ83は、左ドライブシャフト43Lの回転数を検出して信号に変換し、その信号をECU100に入力するようになっている。ECU100は、駆動軸回転数センサ83によって入力された左ドライブシャフト43Lの回転数を表す検出信号に基づいて、車両10の走行速度を算出するようになっている。本実施の形態では、駆動軸回転数センサ83は、左ドライブシャフト43Lの回転数を検出するようにしているが、これには限られず、右ドライブシャフト43Rの回転数を検出するようにしてもよい。
アクセル開度センサ84は、運転者の踏み込みにより操作されるアクセルペダル19の近傍に配置され、アクセル開度Accを検出するようになっている。アクセル開度センサ84は、アクセルペダル19の踏込み量に対してリニアな関係の出力電圧を得られるリニアタイプのアクセルポジションセンサにより構成されている。アクセル開度センサ84は、アクセル開度Accを検出して信号に変換し、その信号をECU100に入力するようになっている。ECU100は、アクセル開度センサ84によって入力された検出信号が表すアクセル開度Accを、エンジン11の出力として取得する。
ブレーキセンサ88は、運転者の踏み込みにより操作されるブレーキペダル41の近傍に配置され、ブレーキペダル41の踏込み量を検出するようになっている。ブレーキセンサ88は、ブレーキペダル41の踏込み量に対してリニアな関係の出力電圧を得られるリニアタイプのブレーキポジションセンサにより構成されている。ブレーキセンサ88は、ブレーキペダル41の踏込み量を検出して信号に変換し、その信号をECU100に入力するようになっている。
次に、変速装置20の構成について、図2に基づいて説明する。
変速装置20は、トルクコンバータ50と、前後進切り替え機60と、自動変速機としての無段変速機(以下、CVT:Continuously Variable Transmissionともいう)70と、減速歯車機構80とを備えている。エンジン11から出力された動力は、トルクコンバータ50→前後進切り替え機60→CVT70→減速歯車機構80という動力伝達経路を介してデファレンシャル機構40に伝達され、左駆動輪45Lおよび右駆動輪45Rに分配されるようになっている。
トルクコンバータ50は、ポンプインペラ51pと、タービンランナ51tと、ステータ51sと、フロントカバー52と、ロックアップクラッチ53とを備えている。トルクコンバータ50は、車両10のエンジン11とCVT70との間に設けられるとともに、エンジン11から入力した動力をCVT70に伝達するようになっている。
ポンプインペラ51pは、フロントカバー52を介してクランクシャフト15に連結されている。タービンランナ51tは、タービンシャフト54を介して前後進切り替え機60に連結されている。ステータ51sは、一方向クラッチを介して非回転部材に回転可能に支持されている。
ポンプインペラ51pとタービンランナ51tとは、対向して設けられている。ポンプインペラ51pとタービンランナ51tとの対向部には、それぞれ多数のブレードが備えられるとともに、オイルが充填されている。これにより、ポンプインペラ51pとタービンランナ51tとの間では、オイルを介して動力伝達が行われるようになっている。
タービンランナ51tには、ロックアップクラッチ53が設けられている。ロックアップクラッチ53は、タービンシャフト54と一体回転するように取り付けられるとともに、タービンシャフト54の軸方向に移動可能なように構成されている。また、ロックアップクラッチ53とフロントカバー52との間には、解放側油室55が形成されている。解放側油室55には、解放側油路56が連通している。ロックアップクラッチ53とタービンランナ51tとの間には、係合側油室57が形成されている。係合側油室57には、係合側油路58およびドレン油路59が連通している。
ロックアップクラッチ53は、係合側油室57内の係合側油圧Ponと解放側油室55内の解放側油圧Poffとのロックアップ差圧ΔP(=Pon−Poff)により、軸方向に移動してフロントカバー52に対して係合状態および解放状態に切り替わるようになっている。ロックアップクラッチ53は、ポンプインペラ51pおよびタービンランナ51tを一体的に連結して相互に一体回転させることにより、燃費向上を図るようになっている。
前後進切り替え機60は、ダブルピニオン型の遊星歯車装置によって構成されている。前後進切り替え機60は、サンギヤ61と、キャリヤ62と、リングギヤ63と、発進クラッチとしての前進クラッチ64と、後進ブレーキ66とを備えている。
サンギヤ61は、トルクコンバータ50のタービンシャフト54に連結されている。キャリヤ62は、サンギヤ61とリングギヤ63との間に設けられる第1のピニオンギヤ67および第2のピニオンギヤ68の各回転軸に回転可能に連結されるとともに、CVT70の入力軸であるプライマリシャフト71に連結されている。
前進クラッチ64は、キャリヤ62とサンギヤ61との間に設けられるとともに、油圧により係合状態と解放状態とに切り替わるようになっている。すなわち、前進クラッチ64は、トルクコンバータ50とCVT70との間に設けられるとともに、トルクコンバータ50とCVT70との間を係合する係合状態と、トルクコンバータ50とCVT70との間を解放する解放状態と、トルクコンバータ50とCVT70との間を所定のスリップ率でスリップさせる滑り状態と、の間で伝達状態を切り替えるようになっている。後進ブレーキ66は、リングギヤ63とハウジング65との間に設けられるとともに、油圧により係合状態と解放状態とに切り替わるようになっている。
前後進切り替え機60は、前進クラッチ64が係合状態であるとともに後進ブレーキ66が解放状態であると、サンギヤ61と、キャリヤ62と、リングギヤ63とが一体回転させられてタービンシャフト54がプライマリシャフト71に直結されるようになっている。これにより、前進方向の駆動力が、タービンシャフト54からプライマリシャフト71に伝達され、最終的には駆動輪45にまで伝達されるようになっている。
また、前後進切り替え機60は、前進クラッチ64が解放状態であるとともに後進ブレーキ66が係合状態であると、リングギヤ63は固定される。このため、タービンシャフト54と一体回転するサンギヤ61の回転方向に対して、第1のピニオンギヤ67および第2のピニオンギヤ68を介してキャリヤ62は反対方向に回転するようになっている。よって、キャリヤ62と連結したプライマリシャフト71はタービンシャフト54に対して逆回転させられるため、後進方向の駆動力が駆動輪45に伝達される。
CVT70は、駆動側プーリとしてのプライマリプーリ72と、被駆動側プーリとしてのセカンダリプーリ77と、ベルト75とを有している。ベルト75は、プライマリプーリ72およびセカンダリプーリ77のそれぞれに形成されたV溝に巻き掛けられている。CVT70は、プライマリプーリ72およびセカンダリプーリ77のV溝の内壁部とベルト75との間の摩擦力を利用して動力を伝達するようになっている。
本実施の形態では、プライマリプーリ72およびセカンダリプーリ77からのベルト75への挟圧力を制御する手段として、各プーリ72,77に供給される油の油圧を制御する構成としている。
プライマリプーリ72は、可動シーブ72aと、固定シーブ72bと、入力側油圧シリンダ73とを備えている。可動シーブ72aは、プライマリシャフト71に対して一体回転可能、かつ軸方向に移動可能に設けられている。固定シーブ72bは、プライマリシャフト71に対して一体回転可能、かつ軸方向に移動できないように設けられている。入力側油圧シリンダ73は、プライマリシーブ圧Pinにより可動シーブ72aを軸方向に移動するようになっている。
プライマリプーリ72は、入力側油圧シリンダ73により可動シーブ72aを軸方向に移動することにより、固定シーブ72bとの間のV溝幅を変更可能になっている。プライマリプーリ72は、V溝幅を変更することにより、有効径、すなわちベルト75の巻き掛け径を変更するようになっている。
セカンダリプーリ77は、可動シーブ77aと、固定シーブ77bと、出力側油圧シリンダ78とを備えている。可動シーブ77aは、セカンダリシャフト79に対して一体回転可能、かつ軸方向に移動可能に設けられている。固定シーブ77bは、セカンダリシャフト79に対して一体回転可能、かつ軸方向に移動できないように設けられている。出力側油圧シリンダ78は、ベルト挟圧Pdにより可動シーブ77aを軸方向に移動するようになっている。
セカンダリプーリ77は、出力側油圧シリンダ78により可動シーブ77aを軸方向に移動することにより、固定シーブ77bとの間のV溝幅を変更可能になっている。セカンダリプーリ77は、V溝幅を変更することにより、有効径、すなわちベルト75の巻き掛け径を変更するようになっている。
そして、油圧制御装置30から入力側油圧シリンダ73および出力側油圧シリンダ78に供給されるオイルの油圧により、プライマリプーリ72およびセカンダリプーリ77のV溝幅が変化して、伝動ベルト75の巻き掛け径が変更されるようになっている。CVT70は、プライマリプーリ72およびセカンダリプーリ77の軸方向に与えられる推力の制御により、実変速比を無段階に変化させることができる。
本実施の形態のCVT70では、入力側油圧シリンダ73のプライマリシーブ圧Pinが油圧制御回路31によって制御されることにより、プライマリプーリ72のV溝幅が変化してベルト75の巻き掛け径が変更される。これにより、ECU100は、CVT70の変速比γ(=プライマリシャフト71の回転数Nin/セカンダリシャフト79の回転数Nout)を連続的に変化させることができる。
また、本実施の形態のCVT70では、出力側油圧シリンダ78のベルト挟圧Pdが油圧制御回路31によって制御されることにより、ベルト75が滑りを生じないようにセカンダリプーリ77からのベルト挟圧力が制御される。
CVT70は、運転者の要求に応じてシフトレンジを切り替え可能になっている。CVT70は、シフトレンジとして、P(パーキング)レンジ、N(ニュートラル)レンジ、D(ドライブ)レンジ、R(リバース)レンジ、M(マニュアル)レンジ(シーケンシャルシフトレンジ)等を備えている。
変速装置20は、入力軸回転数センサ85と、出力軸回転数センサ86と、タービン回転数センサ87とを備えている。入力軸回転数センサ85は、プライマリシャフト71の回転数Ninを検出して信号に変換し、その信号をECU100に入力するようになっている。出力軸回転数センサ86は、セカンダリシャフト79の回転数Noutを検出して信号に変換し、その信号をECU100に入力するようになっている。タービン回転数センサ87は、タービンシャフト54の回転数Ntを検出して信号に変換し、その信号をタービン回転数NtとしてECU100に入力するようになっている。
次に、油圧制御装置30が有する油圧制御回路31の構成について、図3に基づいて説明する。
図3に示すように、油圧制御回路31は、オイル供給部200と、ライン圧調圧部300と、ロックアップクラッチ制御部400と、前進クラッチ制御部500と、シーブ圧制御部600とを備えている。これらはいずれもECU100により制御されるようになっている。
オイル供給部200は、図示しないオイルポンプによりオイルを供給するようになっている。ライン圧調圧部300は、オイル供給部200から供給されるオイルの油圧をライン圧PLに調圧するようになっている。また、ライン圧調圧部300は、ロックアップクラッチ制御部400にセカンダリ圧Psecおよび信号圧Psluを供給するとともに、前進クラッチ制御部500に信号圧Psluを供給するようになっている。
ロックアップクラッチ制御部400は、ライン圧調圧部300からのセカンダリ圧Psecおよび信号圧Psluに応じて、ロックアップクラッチ53にロックアップ差圧ΔPを供給するようになっている。前進クラッチ制御部500は、ライン圧調圧部300から供給された信号圧Psluにより前進クラッチ64の解放と係合とを切り替え可能になっている。
シーブ圧制御部600は、公知のまたは新規の構成からなり、ECU100の指示に従い、ライン圧PLを元圧として、プライマリプーリ72の入力側油圧シリンダ73にプライマリシーブ圧Pinを供給するとともに、セカンダリプーリ77の出力側油圧シリンダ78にベルト挟圧Pdを供給するようになっている。
本実施の形態の車両用制御装置は、トルクコンバータ50と、シフトレバー21と、を備え、シフトレバー21が走行ポジションにある場合は車両10が走行可能状態になるとともに、シフトレバー21が停止ポジションにある場合は車両10が停止状態になるようになっている。そして、本実施の形態の車両用制御装置は、トルクコンバータ50が複数の容量係数特性線を有するとともに、シフトレバー21のシフトポジションが切り替えられることにより、適用する前記容量係数特性線を切り替えるようになっている。
また、本実施の形態の車両用制御装置では、容量係数特性線は、シフトレバー21のシフトポジションの切替前の容量係数Cから切替後の容量係数Cまで直線状に変化する容量係数特性直線と、シフトレバー21のシフトポジションの切替前の容量係数Cから切替後の容量係数Cまで折れ線状に変化する容量係数特性折れ線と、を含んでいる。そして、ECU100は、シフトレバー21のシフトポジションの切り替えによりトルクコンバータ50の負荷トルクが所定量より多く増加または減少する場合は、容量係数特性折れ線を選択するようになっている。また、ECU100は、シフトレバー21のシフトポジションの切り替えによりトルクコンバータ50の負荷トルクが所定量より多く増加および減少しない場合は、容量係数特性直線を選択するようになっている。ここでの所定量としては0以外の値、あるいは0とすることができる。
さらに、本実施の形態の車両用制御装置では、シフトポジションの切り替えによりトルクコンバータ50の負荷トルクが所定量より多く増加する場合は、容量係数特性折れ線は、シフトポジションが切り替えられた直後に容量係数特性直線よりも急に増加する立ち上がり部C1と、立ち上がり部C1が切替後の容量係数Cに達してから容量係数Cが切替後までそのまま保持される保持部C2と、を備えている。
また、本実施の形態の車両用制御装置では、シフトポジションの切り替えによりトルクコンバータ50の負荷トルクが所定量より多く減少する場合は、容量係数特性折れ線は、切替前の容量係数Cが保持される保持部C3と、容量係数特性直線よりも急に減少して切替後の容量係数Cに達する立ち下がり部C4と、を備えている。
また、本実施の形態の車両用制御装置は、前進クラッチ64を備え、シフトレバー21のシフトポジションが切り替えられることにより前進クラッチ64の状態を切り替え、前進クラッチ64の状態の切り替えに対応して、適用する容量係数特性線を切り替えるようになっている。
次に、動作について説明する。
ECU100は、以下の車両用制御プログラムの処理を、予め決められた例えば10msごとの時間間隔で実行するようになっている。図4に示すように、ECU100は、シフトレバー21のシフトポジションが切り替えられたか否かを判断する(ステップS1)。シフトレバー21のシフトポジションが切り替えられたか否かは、シフトセンサ82により検出された信号に基づいて、ECU100により判断される。ここでは、ECU100は、シフトレバー21のシフトポジションが停止ポジションと走行ポジションとの間で切り替えられたか否かを判断するようにしている。
ECU100が、シフトレバー21のシフトポジションが切り替えられたと判断した場合は(ステップS1;YES)、ECU100は、前進クラッチ64の状態が変化したと判断する。例えば、シフトレバー21がNポジションからDポジションに切り替えられた場合は、ECU100は、前進クラッチ64が解放状態から滑り状態を経て係合状態に変化すると判断する。また、例えば、シフトレバー21がDポジションからNポジションに切り替えられた場合は、ECU100は、前進クラッチ64が係合状態から滑り状態を経て解放状態に変化すると判断する。
そして、ECU100は、切替後のシフトポジションでの容量係数Cを算出する(ステップS2)。ECU100は、例えば、シフトレバー21のシフトポジションに基づいて切替後の速度比eを算出し、その切替後の速度比eに基づいて切替後の容量係数Cを算出する。ECU100は、各算出をそれぞれ適宜なマップを利用することにより実行する。切替後のシフトポジションでの容量係数Cを算出する手順としては、上述の方法に限られないのは勿論である。
例えば、図5に示すように、ブレーキペダル41が踏み込まれた状態で、シフトレバー21がNポジションからDポジションに切り替えられた場合は、速度比eが0になるので、切替後の容量係数Cは速度比e=0における容量係数C0になる。また、例えば、ブレーキペダル41が踏み込まれた状態で、シフトレバー21がDポジションからNポジションに切り替えられた場合は、速度比eがほぼ1になるので、容量係数Cはほぼ0になる。
そして、図4に示すように、ECU100は、トルクコンバータ50の負荷トルクが所定量より多く増加または減少するか否かを判断する(ステップS3)。トルクコンバータ50の負荷が所定量より多く増加または減少するか否かは、切替後の容量係数Cに基づいて算出した切替後の負荷トルクが現在の負荷トルクに比べて増加または減少するか否かに基づいて、ECU100により判断される。ECU100が、負荷トルクが所定量より多く増減すると判断すれば(ステップS3;YES)、ECU100は、容量係数特性線として容量係数特性折れ線を選択する(ステップS4)。
ECU100は、選択した容量係数特性折れ線に基づいて、容量係数Cを算出する(ステップS5)。そして、ECU100は、算出した容量係数Cを設定容量係数Cとする。図5に示すように、シフトポジションの切り替えによりトルクコンバータ50の負荷トルクが所定量より多く増加する場合は、容量係数特性折れ線は、シフトポジションが切り替えられた直後に容量係数特性直線よりも急に増加する立ち上がり部C1と、立ち上がり部C1が切替後の容量係数C0に達してから容量係数Cが切替後までそのまま保持される保持部C2と、を備えている。これにより、図中破線で示す設定容量係数と図中実線で示す実容量係数とは、立ち上がり部C1および保持部C2の交点以外で設定容量係数が実容量係数より僅かに小さくなる程度の違いとなる。
また、シフトポジションの切り替えによりトルクコンバータ50の負荷トルクが所定量より多く減少する場合は、容量係数特性折れ線は、切替前の容量係数C0が保持される保持部C3と、容量係数特性直線よりも急に減少して切替後の容量係数C=0に達する立ち下がり部C4と、を備えている。これにより、図中破線で示す設定容量係数と図中実線で示す実容量係数とは、保持部C3および立ち下がり部C4の交点以外で設定容量係数が実容量係数より僅かに小さくなる程度の違いとなる。
そして、図4に示すように、ECU100は、容量係数Cに基づいて、トルクコンバータ50の推定負荷トルクを算出する(ステップS6)。ここで、設定容量係数と実容量係数との差が小さいので、車両用制御装置は、トルクコンバータ50の推定負荷トルクと実負荷トルクとの差を小さくすることができる。
さらに、ECU100は、推定負荷トルクに基づいて、目標タービン回転数Ntを設定する。また、ECU100は、目標タービン回転数Ntに基づいて、目標エンジン回転数Neを設定する。
ここで、車両用制御装置は、トルクコンバータ50の推定負荷トルクと実負荷トルクとの差を小さくするので、エンジン回転数Neは目標回転数に対して僅かに小さくなる。このため、車両用制御装置は、従来のようにトルクコンバータ50での実負荷トルクが推定負荷トルクより過度に大きくなることを抑制できるので、エンジン回転数Neの落ち込みによるショックの発生を抑制することができる。しかも、車両用制御装置は、トルクコンバータ50の推定負荷トルクが実負荷トルクに対して遅れを生じた場合に、従来のようにエンジントルクが実負荷トルクに対して過大に設定されることを抑制できるので、トルクコンバータ50に過剰な動力が入力されることを抑制できる。
また、ECU100が、トルクコンバータ50の負荷トルクが所定量より多く増減していないと判断すれば(ステップS3;NO)、ECU100は、図5中一点鎖線で示すように容量係数特性線として容量係数特性直線を選択する(ステップS7)。
この場合、図4に示すように、ECU100は、選択した容量係数特性直線に基づいて、容量係数Cを算出する(ステップS5)。そして、ECU100は、容量係数Cに基づいて、トルクコンバータ50の推定負荷トルクを算出する(ステップS6)。ここで、車両用制御装置は、トルクコンバータ50の推定負荷トルクが実負荷トルクに対して遅れを生じた場合に、従来のようにエンジントルクが実負荷トルクに対して過大に設定されることを抑制できるので、トルクコンバータ50に過剰な動力が入力されることを抑制できる。
また、ECU100が、シフトレバー21のシフトポジションが切り替えられていないと判断した場合は(ステップS1;NO)、ECU100は、前進クラッチ64の状態が変化していないと判断する。このため、ECU100は、容量係数特性線として容量係数特性曲線、すなわち図6(a)に実線で示す実容量係数を選択する(ステップS8)。
この場合、図4に示すように、ECU100は、選択した容量係数特性直線に基づいて、容量係数Cを算出する(ステップS5)。そして、ECU100は、容量係数Cに基づいて、トルクコンバータ50の推定負荷トルクを算出する(ステップS6)。ここで、シフトレバー21は切り替えられていないので、ECU100は、切替前および切替後の容量係数Cを考慮する必要がなく、制御を容易化することができる。
次に、上述した車両10において、運転者がブレーキペダル41を踏み込んだ状態でシフトレバー21のシフトポジションをNポジション→Dポジション→Nポジションと切り替えた際の動作を、図5に示すタイムチャートに沿って説明する。
シフトレバー21のシフトポジションがNポジションであるときは、前進クラッチ64は解放状態になっている。このとき、エンジン11はアイドリング状態であり、エンジン回転数Neは例えば600rpmとなっている。そして、前進クラッチ64が解放状態であるので、トルクコンバータ50のタービンランナ51tは回転可能になる。このため、タービン回転数Ntはエンジン回転数Neと同じ回転数になる。ここではエンジン回転数Neを600rpmとして例示しているが、これに限られないことは勿論である。
そして、T0において、運転者がシフトレバー21のシフトポジションをDポジションに切り替える。ECU100は、シフトセンサ82により検出された信号に基づいて、シフトポジションがDポジションに切り替えられたと判断する。ECU100は、前進クラッチ64を、T0における解放状態から滑り状態を経てT1における係合状態に切り替える。
そして、ECU100は、例えば、シフトレバー21がDポジションにある場合の速度比eを算出し、その速度比eに基づいて切替後の容量係数Cを算出する。ここでは、切替後の速度比eが0になるので、ECU100は、切替後の容量係数Cを速度比e=0における容量係数C0に設定する。
そして、ECU100は、トルクコンバータ50の負荷トルクが所定量より多く増加すると判断し、容量係数特性線として破線で示す容量係数特性折れ線を選択する。ECU100は、容量係数特性折れ線に基づいて、容量係数Cを算出し、設定容量係数Cとする。ここでの容量係数特性折れ線は、シフトポジションが切り替えられた直後に容量係数特性直線よりも急に増加する立ち上がり部C1と、立ち上がり部C1が切替後の容量係数C0に達してから容量係数Cが切替後までそのまま保持される保持部C2と、を備えている。これにより、図中破線で示す設定容量係数と図中実線で示す実容量係数とは、立ち上がり部C1および保持部C2の交点以外で設定容量係数が実容量係数より僅かに小さくなる程度の違いとなる。
そして、ECU100は、容量係数Cに基づいて、トルクコンバータ50の推定負荷トルクを算出する。ここで、設定容量係数と実容量係数との差が小さいので、車両用制御装置は、トルクコンバータ50の推定負荷トルクと実負荷トルクとの差を小さくすることができる。さらに、ECU100は、推定負荷トルクに基づいて、目標タービン回転数Ntを設定する。また、ECU100は、目標タービン回転数Ntに基づいて、目標エンジン回転数Neを設定する。
ここで、車両用制御装置は、トルクコンバータ50の推定負荷トルクと実負荷トルクとの差を小さくするので、エンジン回転数Neは目標回転数に対して僅かに小さくなる。このため、車両用制御装置は、従来のようにトルクコンバータ50での実負荷トルクが推定負荷トルクより過度に大きくなることを抑制できるので、エンジン回転数Neの落ち込みによるショックの発生を抑制することができる。しかも、車両用制御装置は、トルクコンバータ50の推定負荷トルクが実負荷トルクに対して遅れを生じた場合に、従来のようにエンジントルクが実負荷トルクに対して過大に設定されることを抑制できるので、トルクコンバータ50に過剰な動力が入力されることを抑制できる。
シフトポジションが完全にDポジションに切り替わったT1において、エンジン回転数Neは例えば500rpm程度に下がる。また、前進クラッチ64は係合されているとともに、ブレーキペダル41は踏み込まれているので、タービンランナ51tは回転できなくなる。このため、タービン回転数Ntは0rpmになる。
そして、シフトレバー21のシフトポジションがDポジションにあるT2において、運転者がシフトレバー21のシフトポジションをNポジションに切り替える。ECU100は、シフトセンサ82により検出された信号に基づいて、シフトポジションがNポジションに切り替えられたと判断する。ECU100は、前進クラッチ64を、T2における係合状態から滑り状態を経てT3における解放状態に切り替える。
そして、ECU100は、例えば、シフトレバー21がNポジションにある場合の速度比eを算出し、その速度比eに基づいて切替後の容量係数Cを算出する。ここでは、速度比eがほぼ1になるので、容量係数Cはほぼ0になる。
そして、ECU100は、トルクコンバータ50の負荷トルクが所定量より多く減少すると判断し、容量係数特性線として破線で示す容量係数特性折れ線を選択する。ECU100は、容量係数特性折れ線に基づいて、容量係数Cを算出し、設定容量係数Cとする。ここでの容量係数特性折れ線は、切替前の容量係数C0が保持される保持部C3と、容量係数特性直線よりも急に減少して切替後の容量係数C=0に達する立ち下がり部C4と、を備えている。これにより、図中破線で示す設定容量係数と図中実線で示す実容量係数とは、保持部C3および立ち下がり部C4の交点以外で設定容量係数が実容量係数より僅かに小さくなる程度の違いとなる。
そして、ECU100は、容量係数Cに基づいて、トルクコンバータ50の推定負荷トルクを算出する。ここで、設定容量係数と実容量係数との差が小さいので、車両用制御装置は、トルクコンバータ50の推定負荷トルクと実負荷トルクとの差を小さくすることができる。さらに、ECU100は、推定負荷トルクに基づいて、目標タービン回転数Ntを設定する。また、ECU100は、目標タービン回転数Ntに基づいて、目標エンジン回転数Neを設定する。
ここで、車両用制御装置は、トルクコンバータ50の推定負荷トルクと実負荷トルクとの差を小さくするので、エンジン回転数Neは目標回転数に対して僅かに小さくなる。このため、車両用制御装置は、従来のようにトルクコンバータ50での実負荷トルクが推定負荷トルクより過度に大きくなることを抑制できるので、エンジン回転数Neの落ち込みによるショックの発生を抑制することができる。しかも、車両用制御装置は、トルクコンバータ50の推定負荷トルクが実負荷トルクに対して遅れを生じた場合に、従来のようにエンジントルクが実負荷トルクに対して過大に設定されることを抑制できるので、トルクコンバータ50に過剰な動力が入力されることを抑制できる。
シフトポジションが完全にNポジションに切り替わったT3において、エンジン回転数Neは600rpm程度に上がる。また、前進クラッチ64は解放されているとともに、ブレーキペダル41は踏み込まれているので、タービンランナ51tは回転可能になる。このため、タービン回転数Ntはエンジン回転数Neと同じ回転数になる。
以上のように、本実施の形態に係る車両用制御装置によれば、ECU100は、シフトレバー21のシフトポジションが切り替えられた場合に、適用する容量係数特性線を切り替えるようになっている。このため、ECU100は、シフトレバー21のシフトポジションが切り替えられることにより、トルクコンバータ50の実負荷トルクの変化に対応した容量係数特性線を選択して、最適な推定負荷トルクを算出できるようになる。
これにより、ECU100は、トルクコンバータ50の実負荷トルクが増大するとともに、推定負荷トルクが実負荷トルクに対して遅れを生じた場合に、従来のように推定負荷トルクが実負荷トルクより過大にならないような容量係数特性線を選択するようにできる。よって、ECU100は、トルクコンバータの推定負荷トルクが実負荷トルクに対して遅れを生じた場合に、従来のようにエンジントルクが実負荷トルクに対して過大に設定されることを抑制できるので、トルクコンバータ50に過剰な動力が入力されることを抑制できる。
また、本発明の車両用制御装置によれば、シフトレバー21のシフトポジションがNポジションからDポジションに切り替えられたときのようにトルクコンバータ50の負荷トルクが大きく増加した場合にも、適用する容量係数特性線を切り替えるようになる。このため、車両用制御装置は、トルクコンバータの実負荷トルクの変化に対応した容量係数特性線を選択して、最適な推定負荷トルクを算出できるようになる。よって、車両用制御装置は、従来のようにトルクコンバータでの実負荷トルクが推定負荷トルクより過度に大きくなることを抑制できるので、エンジン回転数Neの落ち込みによるショックの発生を抑制することができる。
したがって、本発明の車両用制御装置によれば、推定負荷トルクが実負荷トルクに対して遅れた場合にエンジントルクが実負荷トルクよりも過大に設定されることを抑制できるとともに、シフトレバー21のシフトポジションが切り替えられた場合にトルクコンバータ50に起因するショックの発生を抑制できるようになる。
また、本発明の車両用制御装置によれば、ECU100は、シフトレバー21のシフトポジションの切り替えによりトルクコンバータ50の負荷トルクが所定量より多く増加または減少する場合は、容量係数特性折れ線を選択する。しかも、本発明の車両用制御装置によれば、容量係数特性折れ線は、負荷トルクが増大する場合は立ち上がり部C1および保持部C2を備えるとともに、負荷トルクが減少する場合は保持部C3および立ち下がり部C4を備えている。これにより、容量係数特性折れ線は容量係数特性直線に比べて実容量係数に近似するようになるので、ECU100は、トルクコンバータ50の実負荷トルクと推定負荷トルクとの差を小さくすることができる。
特に、図5に示すように、容量係数特性折れ線の立ち上がり部C1および保持部C2は、いずれも切替後の容量係数C0を超えていない。同様に、容量係数特性折れ線の保持部C3および立ち下がり部C4は、いずれも切替前の容量係数C0を超えていない。このため、図6(c)に示すように、この容量係数特性折れ線に基づいた推定負荷トルクが実負荷トルクに対して遅れを生じたとしても、実負荷トルクがピークを過ぎて小さくなった後に推定負荷トルクが実負荷トルクを超えることはない。
これにより、車両用制御装置は、トルクコンバータ50の推定負荷トルクが実負荷トルクより過度に大きくなることを抑制できるので、エンジン回転数Neが過剰に上昇することを抑制することができ、吹け上がりを防止することができる。また、シフトポジションが切り替えられることにより実負荷トルクが大きくなる場合であっても、立ち上がり部C1によって推定負荷トルクを実負荷トルクに近づけることができるため、エンジン回転数Neの落ち込みによるショックを抑制することができる。
また、本発明の車両用制御装置によれば、ECU100は、シフトレバー21のシフトポジションの切り替えによりトルクコンバータ50の負荷トルクが所定量より多く増加および減少しない場合は、容量係数特性直線を選択する。これにより、ECU100は、トルクコンバータ50の推定負荷トルクが実負荷トルクに対して遅れを生じた場合に、従来のようにエンジントルクが実負荷トルクに対して過大に設定されることを抑制できる。よって、ECU100は、トルクコンバータ50に過剰な動力が入力されることを抑制できる。
上述した本実施の形態の車両用制御装置においては、ECU100は、シフトレバー21がNポジションとDポジションとの間で切り替えられた場合について説明した。しかしながら、本発明に係る車両用制御装置においては、これに限られず、停止ポジションと走行ポジションとの間での切り替えを全て含めることができる。例えば、ECU100は、停止ポジションとしてNポジションの他にPポジションを含めることができるとともに、走行ポジションとしてDポジションの他にRポジションやMポジションを含めることができる。
また、本実施の形態の車両用制御装置においては、ECU100は、シフトレバー21が切り替えられた場合について説明した。しかしながら、本発明に係る車両用制御装置においては、これに限られず、前進クラッチ64の状態の切り替えに対応して、適用する容量係数特性線を切り替えるようにしてもよい。この場合、ECU100は、前進クラッチ64の状態の変化に伴ってトルクコンバータ50の負荷トルクが変動することに対応して、適用する容量係数特性線を切り替えるようにできるので、適切な容量係数特性線を選択できるようになる。
例えば、図4におけるステップS1では、ECU100は、シフトレバー21のシフトポジションが切り替えられたか否かに基づいて判断を行っているが、これの代わりに、ECU100は、前進クラッチ64の状態が切り替えられたか否かに基づいて判断を行うようにしてもよい。これにより、ECU100は、前進クラッチ64の状態が切り替えられた場合にはステップS2以降を実行し、前進クラッチ64の状態が切り替えられていない場合にはステップS8以降を実行するようにする。
あるいは、例えば、シフトレバー21がDポジションにあるとともに車両10が停止している場合に、前進クラッチ64を解放状態にしてトルクコンバータ50での発熱を抑制して燃費を向上するN制御において、本発明の車両用制御装置を適用することができる。この場合、ECU100は、N制御において、前進クラッチ64の状態が切り替えられたか否かを判断して、それに基づいて容量係数特性線を選択することができる。
また、本実施の形態の車両用制御装置においては、自動変速機としてCVT70を適用した場合について説明した。しかしながら、本発明に係る自動変速機の制御装置においては、これに限られず、自動変速機として複数のクラッチやブレーキやギヤを利用した有段変速機を適用してもよい。この場合、発進クラッチとしては、有段変速機の備える最もエンジン11側のクラッチ、例えばC1クラッチを利用することが好ましい。
以上のように、本発明に係る車両用制御装置は、トルクコンバータを備えた車両において、トルクコンバータの推定負荷トルクが実負荷トルクより過大になることを抑制できるとともに、シフトポジション切替時においてトルクコンバータに起因するショックを抑制できるという効果を奏するものであり、車両用制御装置に有用である。