JP2013204115A - 黄銅合金焼結押出材およびその製造方法 - Google Patents

黄銅合金焼結押出材およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高い強度特性を有する黄銅合金焼結押出材を提供する。
【解決手段】黄銅合金焼結押出材は、黄銅合金粉末およびマグネシウム粉末を含む混合粉末を焼結して押出加工することによって得られるものであって、押出材の素地中に、MgCuZn系の金属間化合物が分散していることを特徴とする。
【選択図】図3

Description

この発明は、高い強度を有する黄銅合金に関するものであり、特に、粉末冶金法によって製造した高強度黄銅合金焼結押出材に関するものである。
α−β二相黄銅合金は、優れた熱伝導性、優れた電気伝導性、耐食性および塑性加工性を有しており、自動車部品、家電部品、電気・電子・光学部品、配管部材(水栓金具、バルブ)などに広く利用されている。近年の地球温暖化防止対策を考えると、製品や部材の小型・軽量化や薄肉化が求められている。特に、比重が鉄よりも大きい黄銅合金については、高強度化により上記のニーズに対応する必要がある。
これまで、黄銅合金の高強度化に関する従来技術として、特開2000−119775号公報(特許文献1)が提案されている。この公報には、鋳造した黄銅合金に対して熱間押出加工を施すことにより、高い引張り強さを有する黄銅合金が得られることが開示されている。添加元素であるシリコン(Si)は、素地を構成するγ相を出現させることで黄銅合金の切削性を改善するという利点を発揮するが、その反面、硬質であるためにJIS H 3250−C3604、C3771などの黄銅合金に比べると、切削抵抗が大きく、工具寿命が短いなどの問題をもたらす。
高強度黄銅合金を開示している他の文献として、特許第3917304号公報(快削性銅合金、特許文献2)や、特許第3734372号公報(無鉛快削性銅合金、特許文献3)がある。これらの公報に開示された技術においては、ジルコニウムとリンを微量に添加することにより、通常の鋳造法で形成される樹脂状結晶を粒状結晶とし、しかもその大きさを10μmまで微細化させることにより、高い強度と延性を発現することを提案している。しかしながら、これらの公報に開示された黄銅合金においても、素地の硬さが従来の黄銅合金と比較して著しく硬いために、切削性が低下するとともに、工具寿命が短くなるといった問題がある。
特開2000−119775号公報 特許第3917304号公報 特許第3734372号公報
従来、黄銅合金の切削性を向上させるために、鉛(Pb)を添加することが行われていた。現在では、鉛成分の環境・人体への影響を考慮して、鉛代替物質として、ビスマス(Bi)添加による黄銅合金の快削性付与が行われている。しかしながら、ビスマス添加には、資源供給の不安、黄銅合金のリサイクル性の低下などの問題点が挙げられる。そこで、黄銅合金に対して快削性を付与する物質として、ビスマスに代わるものが求められている。
黄銅合金の高強度化のために、アルミニウム(Al)、マンガン(Mn)、ケイ素(Si)などの高強度化成分を多量に添加することが考えられる。これらの成分の固溶強化や、硬質な金属間化合物相の分散によって、複合強化を図ることができる。マグネシウムも高強度化成分の一つとして考えることができるが、マグネシウムは、黄銅合金の快削性を向上させるために添加する鉛やビスマスと高い反応性を有しているので、粗大で脆性な金属間化合物相を生成してしまう。かかる観点から、従来、マグネシウムは、黄銅合金の強化元素として採用されなかった。
黄銅合金の快削性付与物質として、鉛やビスマスに代えて、黒鉛(Graphite、以下Grと略す)を使用する場合がある。アルミニウム、マンガン、ケイ素は黒鉛との反応性が高く、粗大化した硬質な炭化物粒子を生成する。粗大で硬質な炭化物の生成は、快削性付与物質である黒鉛(Gr)量の減少をもたらすので、最終的に得られる黄銅合金の切削性および延性の低下が懸念される。
マグネシウムは、鉛やビスマスに対しては高い反応性を示すが、黒鉛にはほとんど反応しない。本願の発明者らは、この点に注目して本発明をなすに至った。
本発明の目的は、高い強度特性を有する黄銅合金焼結押出材を提供することである。
本発明の他の目的は、高い強度特性と良好な快削性を有する黄銅合金焼結押出材を提供することである。
本発明のさらに他の目的は、高い強度特性を有する黄銅合金焼結押出材の製造方法を提供することである。
本発明のさらに他の目的は、高い強度特性と良好な快削性を有する黄銅合金焼結押出材の製造方法を提供することである。
本発明に係る黄銅合金焼結押出材は、黄銅合金粉末およびマグネシウム粉末を含む混合粉末を固相温度域で焼結して押出加工することによって得られるものであって、押出材の素地中に、MgCuZn系の金属間化合物が分散していることを特徴とする。
素地中にMgCuZn系の金属間化合物が分散することにより、黄銅合金焼結押出材の強度特性が向上する。
好ましくは、黄銅合金粉末100質量部に対するマグネシウム粉末の添加量は、0.2〜1.5質量部である。
好ましくは、混合粉末は、マグネシウム粉末に加えて、黒鉛粒子を含む。この場合、押出材の素地中に、黒鉛粒子が分散している。MgCuZn系の金属間化合物および黒鉛粒子が素地中に分散することにより、黄銅合金焼結押出材の強度特性および被削性が向上する。
黄銅合金粉末100質量部に対する黒鉛粒子の好ましい添加量は、0.5〜1.5質量部である。
黄銅合金は、典型的には、亜鉛を28〜43質量%含み、残部が銅である。本発明の一実施形態では、黄銅合金は、6/4黄銅である。
黄銅合金の快削性付与物質として黒鉛を用いるのが好ましいので、好ましい押出材は、実質的に鉛およびビスマスを含まない黄銅合金からなる。不純物として不可避的に存在する微量の鉛やビスマスを含んでいても、「実質的に」含まないという意味に解釈しなければならない。
この発明に従った黄銅合金焼結押出材の製造方法は、以下の工程を備える。
(a)黄銅合金粉末とマグネシウム粉末とを混合して混合粉末を得る工程。
(b)混合粉末を成形・焼結して焼結体を得る工程。
(c)焼結体を熱間にて押出加工し、黄銅合金の素地中に、MgCuZn系の金属間化合物を析出して分散させる工程。
好ましくは、黄銅合金粉末100質量部に対するマグネシウム粉末の添加量は、0.2〜1.5質量部である。
好ましくは、混合粉末を得る工程は、マグネシウム粉末に加えて、黒鉛粒子を混合することを含む。黄銅合金粉末100質量部に対する好ましい黒鉛粒子の添加量は、0.5〜1.5質量部である。
好ましい実施形態では、焼結体を押出加工する前に、焼結体に溶体化処理を施す。
上記の特徴的な構成の技術的意義および作用効果等については、以下の項で詳細に説明する。
炭化物に関する標準生成自由エネルギーと温度との関係を示すエリンガム線図である。 押出材の光学顕微鏡による組織観察写真である。 Mg添加黄銅合金焼結押出材の結晶粒微細化機構を説明するための模式図である。 押出材の引張試験から得られた応力−歪み曲線を示す図である。 MgおよびGr添加黄銅合金焼結体の圧力負荷方向に対する垂直断面の組織観察結果を示す写真である。 押出材Cu−40Zn+1.0Mg+xGrのドリル切削加工試験によって得た送り速度の変化を示す図である。 押出材Cu−40Zn+1.0Mg+xGrの平均送り速度のGr添加量への依存性を示す図である。 1.0mass%の微量Mgを添加した押出材の最大引張応力値及び延性のGr添加量への依存性を示す図である。
[高強度化成分および快削性付与成分]
本願の発明者らは、黄銅合金の快削性を低下させることなく高強度化を実現できる元素として、マグネシウムを選んだ。溶解法では、マグネシウムを黄銅合金に添加することはできない。なぜなら、黄銅合金の溶湯温度は800〜900℃であるのに対し、マグネシウムの融点は650℃程度であるため、マグネシウムを添加したとしても大気中の酸素と反応して酸化物となり、マグネシウムとして存在できないからである。そこで、本発明では、粉末冶金法によってマグネシウムを添加し、マグネシウムの融点よりも低い温度域で成形・焼結することにした。
マグネシウムは黄銅合金の高強度化成分として有効に作用するが、マグネシウムを添加することによって快削性が低下してはならない。マグネシウムは、快削性付与物質として機能する鉛やビスマスに対して高い反応性を示す。そのため、高強度化成分としてマグネシウムを採用する本発明の実施形態では、快削性付与物質として鉛やビスマスを採用するのではなく、マグネシウムと反応しない黒鉛(Gr)を採用する。
図1は、炭化物に関する標準生成自由エネルギーと温度との関係を示すエリンガム線図である。図1のエリンガム線図においては、自由エネルギーの値がマイナスになるほど炭素と反応して炭化物を作りやすくなる。黄銅合金の高強度化成分として採用され得るアルミニウム(Al)、マンガン(Mn)およびチタン(Ti)は容易に安定な炭化物を形成するため、快削性付与物質として黒鉛(Gr)を採用する場合には、好ましい高強度化成分ではない。
他方、マグネシウムは、自由エネルギーの値がプラスであり、炭素とほとんど反応しない。仮に反応したとしても、その炭化物は非常に不安定であるので、化合物として存在しなくなる。
そこで、本発明の好ましい実施形態では、黄銅合金焼結押出材の高強度化と快削性とを両立させるために、高強度化成分としてマグネシウムを採用し、快削性付与成分として黒鉛を採用する。
[黄銅合金焼結押出材の作製]
黄銅合金は、典型的には、亜鉛を28〜43質量%含み、残部が銅である。代表的な黄銅合金として6/4黄銅および7/3黄銅があるが、本願の発明者らは6/4黄銅を用いて各種の実験を行った。また、実験で使用した黄銅合金は、実質的に、鉛およびビスマスを含まない。ただ不純物として、不可避的に微量の鉛やビスマスを含むことはあり得る。
本願発明者らは、まず、原料粉末として、平均結晶粒径が約150μmの黄銅合金粉末と、平均結晶粒径が約180μmの純マグネシウム粉末とを準備した。これらの原料粉末の混合割合を調整して、下記の試料粉末を作製した。
(a)Cu−40Zn粉末:6/4黄銅合金粉末のみからなる試料粉末である。
(b)Cu−40Zn+0.5Mg:6/4黄銅合金粉末100質量部に対してマグネシウム粉末を0.5質量部添加した混合粉末である。
(c)Cu−40Zn+1.0Mg:6/4黄銅合金粉末100質量部に対してマグネシウム粉末を1.0質量部添加した混合粉末である。
(d)Cu−40Zn+1.5Mg:6/4黄銅合金粉末100質量部に対してマグネシウム粉末を1.5質量部添加した混合粉末である。
上記の各試料粉末を卓上ボールミルを用いて、90rpm,60minにて単純混合した。混合後に、各試料粉末に対して、プラズマ放電焼結装置により焼結を行った。焼結条件は、成形圧力30MPa,焼結温度973K,保持時間30minとした。
次に得られた焼結体に対して、溶体化処理を行った後に押出加工を施した。具体的には、マッフル炉を用いて、Ar雰囲気にて、973K,15min保持した後、2000kNプレスにより直ちに熱間押出加工を施した。押出速度は3mm/s,押出比は37であった。
[Mg添加黄銅合金焼結押出材の組織観察]
得られた焼結押出材に対して、光学顕微鏡による組織観察を行った。図2は、押出材の光学顕微鏡による組織観察結果を示している。(a)はCu−40Zn試料粉末、(b)はCu−40Zn+0.5Mg試料粉末、(c)はCu−40Zn+1.0Mg試料粉末、(d)はCu−40Zn+1.5Mg試料粉末の結果を示す。いずれの押出材もα−β二相組織から構成されており、またSPS焼結体と比較して微細なα相が存在した。
Mg添加材の結晶粒界近傍には、1〜3μm程度の微細な金属間化合物相(IMCs)が均一に分散していた。押出材Cu−40Zn+1.5Mgの金属間化合物相は、押出材Cu−40Zn+0.5Mg、Cu−40Zn+1.0Mgと比較して粗大であった。X線回折による解析の結果、金属間化合物相をMg(Cu1−xZnと同定した。この微細な分散粒子は、押出前の予備加熱972K,15minによってマトリックス中に固溶したMgが、押出加工後の冷却過程において析出・成長したものと考えられる。
Mgの添加量が増加するにつれて、押出材の結晶粒は微細化している。具体的には、Cu−40Zn+1.0Mg押出材の平均結晶粒径は3.16μmであり、Mg無添加のCu−40Zn押出材と比較して50%微細化した。
[結晶粒微細化の機構]
図3は、Mg添加黄銅合金焼結押出材の結晶粒微細化機構を説明するための模式図である。焼結後の組織を見ると、α相とβ相とから成る結晶粒界の3重点にMgCuZn系の金属間化合物相が存在している。
焼結体に対して溶体化熱処理を行うと、金属間化合物相は母相中に固溶し、さらにα相からβ相への相変態によってβ相の比率が増加する。
溶体化した試料に押出加工を施すと、β相の動的再結晶とともに、β相からα相への相変態が起こり、続いて母相中に微細な金属間化合物粒子が再析出する。結晶粒微細化は、熱間押出加工中のβ相の動的再結晶、および冷却中に生じるβ相からα相への相変態において、微細なCuMgZn析出粒子が結晶粒界の移動をピンニングしたことによって、α相とβ相の粒成長を抑制したためと考えられる。
[Mg添加黄銅合金焼結押出材の硬度試験結果]
押出材Cu−40Zn、Cu−40Zn+0.5Mg、Cu−40Zn+1.0Mg、Cu−40Zn+1.5Mgに対して、微小部硬度試験を実施した結果、それぞれの硬度は137±5Hv、162±7Hv、176±5Hv、174±7Hvであった。硬度測定においては約15μm四方の圧痕を用いて測定を行ったことから、押出材中に分散する微細な金属間化合物相(1〜3μm)の影響は無視できると考えられる。
Mg無添加押出材Cu−40Znと比較して、押出材Cu−40Zn+0.5Mg、Cu−40Zn+1.0Mg、Cu−40Zn+1.5Mgの硬度増加量はそれぞれ25Hv、39Hv、37Hvであった。前述の組織構造に関する解析結果から、この硬度増加量はMgの固溶強化、結晶粒微細化による粒界での可動転位の固着・抑制および硬質β相の増加によると考えられる。
[Mg添加黄銅合金焼結押出材の引張試験結果]
各試料より引張試験片(平行部長さ:15mm)を採取し、歪み速度5×10−4/sにて引張試験を行った。押出材の引張試験から得られた応力−歪み曲線を図4に示す。
Mg添加量の増加に伴い、引張強度が向上した。特に、1.0mass%Mg添加材は耐力値328MPa、最大引張応力値553MPaを示し、Mg無添加材(耐力値:229MPa、最大引張応力値:464MPa)と比較して、それぞれ43%、19%増加した。また、その延性(破断伸び)は25%を保持した。
1.5mass%Mg添加材は、1.0mass%Mg添加材と同様の引張強度を示すものの、その延性は14%まで低下した。
Mg無添加材Cu−40Zn+0.5Mg、Cu−40Zn+1.0Mg、Cu−40Zn+1.5Mgの耐力値は、Mg無添加材Cu−40Znと比較して、それぞれ71MPa、99MPa、94MPaの増加を示した。耐力値向上要因は、前述したMgによる固溶強化および結晶粒微細化による粒界での可動転位の固着・抑制が挙げられる。
上記の試験結果から黄銅合金粉末100質量部に対するマグネシウム粉末の添加量を考察すると、硬度および引張強度向上の観点から下限を0.2質量部とし、延性(破断伸び)の観点から上限を1.5質量部とするのが望ましい。
[Mgを微量添加したGr複合快削性黄銅合金焼結体の組織構造]
Cu−40Zn粉末に1.0mass%の純Mg粉末および0.75mass%,1.25mass%のGr粒子を混合した試料(Cu−40Zn+1.0Mg+xGr,x=0.75mass%,1.25mass%)に対して、焼結温度973K,加圧力30MPa,真空度6Paの条件下にて焼結体を作製した。このプラズマ焼結体の圧力負荷方向に対する垂直断面の組織観察結果を図5に示す。
焼結体Cu−40Zn+1.0Mg+xGrはα−β二相組織によって構成されており、その旧粉末粒界にてGr粒子の粗大な凝集体が観察された。焼結体Cu−40Zn+1.0Mgにて観察されたMg(Cu1−xZn金属間化合物相(IMCs)は、焼結体Cu−40Zn+1.0Mg+xGrにおいても、旧粉末粒界近傍や旧粉末粒内の結晶粒界近傍に分散している。
プラズマ焼結体Cu−40Zn+1.0Mg+xGrのα相、β相中のMg固溶元素量に対して、WDSによる分析を実施した結果、Gr添加量に関わらず、α相およびβ相から0.9−1.4at.%(0.3−0.5mass%)程度のMg固溶元素が検出され、それはGr粒子を含まないプラズマ焼結体Cu−40Zn+1.0Mg(α相:1.05at.%(0.40mass%),β相:1.20at.%(0.46mass%))と同程度であった。
焼結体Cu−40Zn+1.0Mg+xGrの組織構造解析により、MgはGrと反応していないことが認められた。これにより、Mg微量添加がGr分散形態に対して影響を及ぼすことはなく、またGr粒子の複合化はMg固溶量やMg(Cu1−xZn金属間化合物の組成に影響しないことを確認した。これらの結果から、SPS焼結体Cu−40Zn+1.0Mg+xGrに対して、溶体化熱処理に続く熱間押出加工を施すことによって、高強度特性および快削性を両立する材料組織の実現が可能と考えられる。
[押出材のドリル切削加工試験]
押出材Cu−40Zn+1.0Mg+xGrのドリル切削加工試験を行った。得られた送り速度の変化を図6に示す。図6には、押出材Cu−40Zn+1.0Mgの切削加工試験結果も併記している。
押出材Cu−40Zn+1.0Mg+xGrにおいて、Gr添加量の増加に伴って送り速度の大幅な向上が確認された。10回目までの試験結果から、押出材Cu−40Zn+1.0Mg+0.75Gr,Cu−40Zn+1.0Mg+1.25Grの平均送り速度は、それぞれ0.15±0.04mm/s,0.28±0.03mm/sと求められた。この送り速度向上は、固体潤滑性を有するGr粒子の添加量増加によって、比切削抵抗が低減したためと考えられる。
押出材Cu−40Zn+1.0Mg+xGrの平均送り速度のGr添加量への依存性を図7に示す。押出材Cu−40Zn+1.0Mg+xGrの平均送り速度はGr添加量に比例して増加していることが認められる。
押出材Cu−40Zn+1.0Mg+xGrの切削加工試験において、試験回数増加に伴う顕著な送り速度低下は確認されなかった。これは、Gr粒子の固体潤滑性によって、被削材の比切削抵抗および工具刃先の摩耗が低減され、さらに、良好な切削屑排出性が維持されたことが理由として挙げられる。
[好ましい黒鉛の添加量]
以上の結果より、Gr粒子を複合化した快削性黄銅粉末合金においても、Mg微量添加による高強度特性の発現が可能である。耐力値向上の主要因はMgによる固溶強化と結晶粒微細化による粒界での可動転位の固着・抑制と考えられる。
押出材Cu−40Zn+1.0Mg+xGrは、Gr添加量の増加に伴い最大引張応力値と延性が減少した。1.0mass%の微量Mgを添加した押出材の最大引張応力値及び延性のGr添加量への依存性を図8に示す。
上記の試験結果から黄銅合金粉末100質量部に対する黒鉛粒子の添加量を考察すると、被削性向上の観点から下限を0.5質量部とし、延性(破断伸び)の観点から上限を1.5質量部とするのが望ましい。
本発明は、高い強度特性を有する黄銅合金焼結押出材として、あるいは高い強度特性と良好な快削性を有する黄銅合金焼結押出材として、有利に利用され得る。

Claims (12)

  1. 黄銅合金粉末およびマグネシウム粉末を含む混合粉末を焼結して押出加工することによって得られる黄銅合金焼結押出材であって、
    前記押出材の素地中に、MgCuZn系の金属間化合物が分散していることを特徴とする、黄銅合金焼結押出材。
  2. 前記黄銅合金粉末100質量部に対する前記マグネシウム粉末の添加量は、0.2〜1.5質量部である、請求項1に記載の黄銅合金焼結押出材。
  3. 前記混合粉末は黒鉛粒子を含み、
    前記押出材の素地中に、黒鉛粒子が分散している、請求項1または2に記載の黄銅合金焼結押出材。
  4. 前記黄銅合金粉末100質量部に対する前記黒鉛粒子の添加量は、0.5〜1.5質量部である、請求項3に記載の黄銅合金焼結押出材。
  5. 前記黄銅合金は、亜鉛を28〜43質量%含み、残部が銅である、請求項1〜4のいずれかに記載の黄銅合金焼結押出材。
  6. 前記黄銅合金は、6/4黄銅である、請求項5に記載の黄銅合金焼結押出材。
  7. 前記押出材は、実質的に鉛およびビスマスを含まない黄銅合金からなる、請求項1〜6のいずれかに記載の黄銅合金焼結押出材。
  8. 黄銅合金粉末とマグネシウム粉末とを混合して混合粉末を得る工程と、
    前記混合粉末を焼結して焼結体を得る工程と、
    前記焼結体を熱間にて押出加工し、黄銅合金の素地中に、MgCuZn系の金属間化合物を析出して分散させる工程とを備える、黄銅合金焼結押出材の製造方法。
  9. 前記黄銅合金粉末100質量部に対する前記マグネシウム粉末の添加量は、0.2〜1.5質量部である、請求項8に記載の黄銅合金焼結押出材の製造方法。
  10. 前記混合粉末を得る工程は、黒鉛粒子を混合することを含む、請求項8または9に記載の黄銅合金焼結押出材の製造方法。
  11. 前記黄銅合金粉末100質量部に対する前記黒鉛粒子の添加量は、0.5〜1.5質量部である、請求項10に記載の黄銅合金焼結押出材の製造方法。
  12. 前記焼結体を押出加工する前に、焼結体に溶体化処理を施す、請求項8〜11のいずれかに記載の黄銅合焼結金押出材の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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