以下、本発明のエピタキシャル構造体及びその製造方法の実施形態について説明する。以下の各実施形態において、同じ部材は同じ記号で標示する。
(実施例1)
図1を参照すると、エピタキシャル構造体10の製造方法は、結晶成長用の第一成長表面101を有する基板100を提供するステップ(S11)と、基板100の第一成長表面101にバッファ層1041を形成するステップ(S12)と、バッファ層1041の基板100と離れる表面にカーボンナノチューブ層102を形成するステップ(S13)と、カーボンナノチューブ層102が形成されたバッファ層1041の表面に、第一エピタキシャル層104を成長させるステップ(S14)と、基板100及びバッファ層1041を除去して、カーボンナノチューブ層102を露出させ、エピタキシャル基板1001を形成し、該エピタキシャル基板1001が、第一エピタキシャル層104及びカーボンナノチューブ層102を含むステップ(S15)と、カーボンナノチューブ層102が露出したエピタキシャル基板1001の表面を第二成長表面201とし、この第二成長表面201に、第二エピタキシャル層106を成長させるステップ(S16)と、を含む。
ステップ(S11)において、基板100は、第一エピタキシャル層104に結晶成長用の第一成長表面101を提供し、この第一成長表面101は、第一エピタキシャル層104の結晶成長を支持するため用いられている。また、第一成長表面101は、平滑な表面であり、酸素又は炭素などの不純物は含まれていない。基板100は、単層構造又は多層構造を有する。基板100が単層構造を有する場合、基板100は、単結晶構造体である。この場合、基板100は、少なくとも一つの結晶面を含み、該結晶面は、第一エピタキシャル層104の第一成長表面101として用いられる。基板100が多層構造を有する場合、基板100は、少なくとも一層の単結晶構造体を含み、この単結晶構造体は少なくとも一つの結晶面を含み、該結晶面は、第一エピタキシャル層104の第一成長表面101として用いられる。基板100の単結晶構造体は、GaAs、GaN、AlN、Si、SOI(silicon on insulator)、SiC、MgO、ZnO、LiGaO2、LiAlO2及びAl2O3の一種又は数種からなる。基板100の材料は、形成しようとする第一エピタキシャル層104の材料に応じて選択可能であるが、第一エピタキシャル層104の材料と類似する格子定数及び熱膨張係数を有することが好ましい。本実施形態において、基板100は、サファイア基板である。
ステップ(S12)において、バッファ層1041を、分子線エピタキシー法(MBE)、化学ビームエピタキシー法(CBE)、減圧エピタキシー法、低温エピタキシー法、液相エピタキシー法(LPE)、選択エピタキシー法、有機金属気相エピタキシー法(MOVPE)、超高真空化学的気相堆積法(UHVCVD)、ハイドライド気相エピタキシー法(HVPE)及び有機金属気相成長法(MOCVD)の一種又は数種の方法によって結晶成長させる。
バッファ層1041の材料は、基板100の材料と同じでも異なっても良い。バッファ層1041が、基板100の材料と同じ材料からなる場合、前記成長方法は、ホモエピタキシャル成長である。バッファ層1041が、基板100の材料と異なる材料からなる場合、前記成長方法は、ヘテロエピタキシャル成長である。バッファ層1041の材料は、Si、GaAs、GaN、GaSb、InN、InP、InAs、InSb、AlP、AlAs、AlSb、AlN、GaP、SiC、SiGe、GaMnAs、GaAlAs、GaInAs、GaAlN、GaInN、AlInN、GaAsP、InGaN、AlGaInN、AlGaInP、GaP:Zn又はGaP:Nなどである。
本実施例において、有機金属気相成長法によって、バッファ層1041を成長させる。ここで、高純度アンモニア(NH3)を窒素源ガスとして、水素をキャリヤガスとして、トリメチルガリウム(TMGa)又はトリエチルガリウム(TEGa)をガリウムの原料ガスとして、トリメチルインジウム(TMIn)をインジウムの原料ガスとして、トリメチルアルミニウム(TMAl)をアルミニウムの原料ガスとして用いる。
バッファ層1041の成長方法は、サファイア基板を真空反応室に設置し、該反応室を1100℃〜1200℃まで加熱した後、キャリヤガス及び窒素源ガスを反応室に導入して、サファイア基板を200秒間〜1000秒間で焼成するステップ(S121)と、キャリヤガスの雰囲気で、反応室の温度を500℃〜650℃まで下げ、同時にガリウムの原料ガス及び窒素源ガスを反応室に導入して、低温GaNバッファ層1041を成長させるステップ(S122)と、を含む。
バッファ層1041の厚さは、10nm〜50nmである。基板100の格子定数と第一エピタキシャル層104の格子定数とは異なるので、バッファ層1041を設けることにより、第一エピタキシャル層104を成長させる工程において、格子不整合現象を減少させ、且つエピタキシャル成長の品質を改善することができる。
ステップ(S13)において、カーボンナノチューブ層102は、バッファ層1041の基板100と離れる表面に配置され、且つバッファ層1041と接触する。カーボンナノチューブ層102は、複数のカーボンナノチューブからなり、該複数のカーボンナノチューブは、カーボンナノチューブ層102の表面と平行する方向に沿って延伸する。カーボンナノチューブ層102は、バッファ層1041の表面に配置された際、前記複数のカーボンナノチューブの延伸方向は、バッファ層1041の表面と平行する。カーボンナノチューブ層102は、複数の空隙105を有し、該複数の空隙105によって、バッファ層1041の一部は露出される。
さらに、カーボンナノチューブ層102には、複数のカーボンナノチューブが均一に分散され、且つ該複数のカーボンナノチューブは分子間力で接続されている。該複数のカーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ又は多層カーボンナノチューブである。カーボンナノチューブ層102の厚さは、1nm〜100μm、1nm〜10μm或いは1nm〜200nmであり、好ましくは、1nm〜100nmである。カーボンナノチューブ層102は、パターン化された薄膜構造体である。パターン化されたカーボンナノチューブ層102には、複数の空隙105が形成されている。複数の空隙105は、カーボンナノチューブ層102に均一に分布し、且つカーボンナノチューブ層102の厚さ方向に沿ってカーボンナノチューブ層102を貫通する。空隙105は、隣接する複数のカーボンナノチューブによって囲まれて形成された微孔状か、又はカーボンナノチューブの軸方向に沿って延伸して、且つ隣接するカーボンナノチューブ間に形成されたストリップ状である。空隙105が微孔状である場合、空隙105の平均孔径は10nm〜500μmである。空隙105がストリップ状である場合、空隙105の平均幅は10nm〜500μmである。以下、“空隙105のサイズ”とは、孔径の直径又は空隙の幅を指す。空隙105のサイズは、10nm〜300μm、10nm〜120μm、10nm〜80μm或いは10nm〜10μmである。空隙105のサイズが小さいほど、第一エピタキシャル層104が成長する過程において、格子欠陥が発生する可能性は減少し、高品質の第一エピタキシャル層104を得ることができる。本実施形態において、第一空隙105のサイズは10nm〜10μmである。カーボンナノチューブ層102のデューティファクタ(dutyfactor)は、1:100〜100:1、1:10〜10:1、1:4〜4:1或いは1:2〜2:1である。好ましくは、カーボンナノチューブ層102のデューティファクタは、1:4〜4:1である。“デューティファクタ”とは、カーボンナノチューブ層102が、基板100の第一成長表面101を被覆した後における基板100の第一成長表面101の、カーボンナノチューブ層102で遮られた領域と、カーボンナノチューブ層102の空隙105により露出された領域との面積比を示す。
更に、パターン化されたカーボンナノチューブ層102におけるカーボンナノチューブの配列方式には規則がある。例えば、カーボンナノチューブ層102におけるカーボンナノチューブは、基本的に同じ方向に延伸し、且つバッファ層1041と基本的に平行する。或いは、カーボンナノチューブ層102におけるカーボンナノチューブは規則性に従って、二方向以上に沿って延伸する。前記同じ方向に延伸する隣接するカーボンナノチューブは分子間力で端と端が接続されている。
カーボンナノチューブ層102は、自立構造の薄膜の形状に形成されることができる。ここで、自立構造とは、支持体材を利用せず、カーボンナノチューブ層102を独立して利用することができるという形態のことである。すなわち、カーボンナノチューブ層102を対向する両側から支持して、カーボンナノチューブ層102の構造を変化させずに、カーボンナノチューブ層102を懸架させることができる。従って、カーボンナノチューブ層102は、容易にバッファ層1041に直接的に配置することができるため、複雑な工程を省略でき、量産化に寄与する。
カーボンナノチューブ層102は、複数のカーボンナノチューブからなる純カーボンナノチューブ構造体である。純カーボンナノチューブ構造体とは、カーボンナノチューブ層102を形成する工程において、カーボンナノチューブは表面修飾されていない又は酸化処理されていないものである。また、カーボンナノチューブ層102のカーボンナノチューブの表面は、化学的官能基を含まない。カーボンナノチューブ層102は、複数のカーボンナノチューブ及び添加材料からなるカーボンナノチューブ複合構造体であっても良い。前記添加材料は、グラファイト、グラフェン、炭化ケイ素、窒化ホウ素、窒化ケイ素、二酸化ケイ素、ダイヤモンド及びアモルファスカーボンなどの一種又は数種からなることができるが、金属炭化物、金属酸化物及び金属窒化物などの一種又は数種からなることもできる。添加材料は、カーボンナノチューブ層102のカーボンナノチューブの少なくとも一部の表面に被覆されるか又は空隙105内に充填されるが、添加材料は、カーボンナノチューブ層102のカーボンナノチューブを被覆することが好ましい。これにより、カーボンナノチューブの直径を大きくして、空隙105の直径を縮小させることができる。この際、添加材料は、化学気相蒸着法(CVD)、物理気相成長法(PVD)又はマグネトロンスパッタリング法などによって、カーボンナノチューブ層102のカーボンナノチューブの表面に被覆される。
カーボンナノチューブ層102を、バッファ層1041の表面に被覆させた後、さらに有機溶剤によって処理する。これにより、カーボンナノチューブ層102を、バッファ層1041の表面に更に緊密に接続させて、カーボンナノチューブ層102の機械的強靭性及び付着力を増加させることができる。前記有機溶剤によって処理する方法は、以下の二種の何れか一つの方法であってもよい。第一種では、有機溶剤をビュレットによってカーボンナノチューブ層102の表面に滴下し、該有機溶剤をカーボンナノチューブ層102に染み込ませる。第二種では、カーボンナノチューブ層102を、有機溶剤が入った容器に入れて浸漬させる。第一種と第二種で使用する有機溶剤は、エタノール、メタノール、アセトン、ジクロロエタン及びクロロホルムなどの揮発性有機溶剤の一種又は数種からなる。本実施形態において、有機溶剤はエタノールである。
カーボンナノチューブ層102は、少なくとも一枚の、厚さが0.5nm〜10μmであるカーボンナノチューブフィルム、又は少なくとも一本の、直径が0.5nm〜10μmであるカーボンナノチューブワイヤであるか、又はカーボンナノチューブフィルム及びカーボンナノチューブワイヤを組み合わせて形成される。カーボンナノチューブ層102が、複数のカーボンナノチューブフィルムからなる場合、複数のカーボンナノチューブフィルムは並列されて一層に配列されるか、又は複数のカーボンナノチューブフィルムは積層されて多層に配列される。この場合、隣接するカーボンナノチューブフィルムは、分子間力で結合されている。カーボンナノチューブ層102が、積層された複数のカーボンナノチューブフィルムからなる場合、カーボンナノチューブフィルムの積層された数を制御することにより、カーボンナノチューブ層102の厚さを制御することができる。カーボンナノチューブ層102において、積層されたカーボンナノチューブフィルムの層数は2層〜100層であるが、好ましくは、10層、30層又は50層である。カーボンナノチューブ層102が、複数のカーボンナノチューブワイヤからなる場合、複数のカーボンナノチューブワイヤは、間隔をおいて平行するように配置されるか、又は互いに交叉するように配置されるか、又は互いに編むことにより網状構造体とすることができる。この場合、カーボンナノチューブ層102において、間隔をおいて配置された隣接するカーボンナノチューブワイヤ間の距離は、0.1μm〜200μmであるが、10μm〜100μmであることが好ましい。この時、カーボンナノチューブ層102におけるカーボンナノチューブワイヤ間に形成された間隙は、つまり空隙105である。従って、カーボンナノチューブ層102における空隙105の幅は、間隔をおいて平行に配置されたカーボンナノチューブワイヤ間の距離を制御することによって調節することができる。また、空隙105の長さは、間隔をおいて平行して配置されたカーボンナノチューブワイヤの長さと等しくすることができる。
本発明のカーボンナノチューブ層102は、以下の(一)〜(四)のものが挙げられる。
(一)ドローン構造カーボンナノチューブフィルム
カーボンナノチューブ層102は、超配列カーボンナノチューブアレイ(非特許文献1を参照)から引き出して得られたドローン構造カーボンナノチューブフィルム(drawn carbon nanotube film)である。単一のカーボンナノチューブフィルムにおいて、複数のカーボンナノチューブが同じ方向に沿って、端と端とが接続されている。即ち、単一のカーボンナノチューブフィルムは、分子間力で長さ方向端部同士が接続された複数のカーボンナノチューブを含む。また、複数のカーボンナノチューブは、カーボンナノチューブフィルムの表面に平行して配列されている。図2及び図3を参照すると、単一のカーボンナノチューブフィルムは、複数のカーボンナノチューブセグメント143を含む。この複数のカーボンナノチューブセグメント143は、長さ方向に沿って分子間力で端と端とが接続されている。各カーボンナノチューブセグメント143は、相互に平行に分子間力で結合された複数のカーボンナノチューブ145を含む。単一のカーボンナノチューブセグメント143において、複数のカーボンナノチューブ145の長さは同じである。
ドローン構造カーボンナノチューブフィルムの製造方法は、カーボンナノチューブアレイを提供する第一ステップと、カーボンナノチューブアレイから、少なくとも一枚のカーボンナノチューブフィルムを引き伸ばす第二ステップと、を含む。
カーボンナノチューブ層102が、積層された複数のドローン構造カーボンナノチューブフィルムを含む場合、隣接するドローン構造カーボンナノチューブフィルムは、分子間力で結合されている。隣接するドローン構造カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブは、それぞれ0°〜90°の角度で交差している。好ましくは、図4に示すように、隣接するドローン構造カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブは、90°の角度で交差している。
カーボンナノチューブフィルムは、加熱処理によってその厚さを薄くすることができる。しかし、加熱処理する工程において、カーボンナノチューブフィルムが破壊されることを防止するために、一部を加熱する方法を採用する。具体的には、各カーボンナノチューブフィルムの一部を、レーザ又はマイクロ波によって加熱処理する。これにより、加熱されたカーボンナノチューブの一部は酸化するため、カーボンナノチューブフィルムの厚さを薄くすることができる。本実施形態において、カーボンナノチューブフィルムは、酸素を含む雰囲気でレーザ装置を移動させて一部を照射していく。これにより、一部から全体にわたって加熱処理することができる。具体的には、レーザをカーボンナノチューブフィルムに対して均一な速度で移動させて、カーボンナノチューブフィルムを加熱する。この時、レーザのパワー密度は、0.1×104W/m2より大きく、レーザスポットの直径は、1mm〜5mmである。また、レーザは、炭酸ガスレーザ装置により提供されることが好ましい。この時、炭酸ガスレーザ装置の電力は、30Wであり、レーザの波長は10.6μmであり、レーザスポットの直径は3mmである。
(二)カーボンナノチューブワイヤ
図5を参照すると、カーボンナノチューブワイヤは、分子間力で接続された複数のカーボンナノチューブからなる。この場合、一本のカーボンナノチューブワイヤ(非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤ)は、端と端とが接続された複数のカーボンナノチューブセグメント(図示せず)を含む。カーボンナノチューブセグメントは、同じ長さ及び幅を有する。さらに、各カーボンナノチューブセグメントには、同じ長さの複数のカーボンナノチューブが平行に配列されている。複数のカーボンナノチューブは、カーボンナノチューブワイヤの中心軸に平行に配列されている。この場合、一本のカーボンナノチューブワイヤの直径は、1μm〜1cmである。図6を参照すると、カーボンナノチューブワイヤをねじることで、ねじれ状カーボンナノチューブワイヤを形成することができる。複数のカーボンナノチューブは、カーボンナノチューブワイヤの中心軸を軸に、螺旋状に配列している。この場合、一本のカーボンナノチューブワイヤの直径は、1μm〜1cmである。カーボンナノチューブ構造体は、非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤ、ねじれ状カーボンナノチューブワイヤ、又はそれらの組み合わせのいずれか一種からなる。
カーボンナノチューブワイヤを形成する方法は、カーボンナノチューブアレイから引き出してなるカーボンナノチューブフィルムを利用する。カーボンナノチューブワイヤを形成する方法は、次の三種がある。第一種では、カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブの長手方向に沿って、カーボンナノチューブフィルムを所定の幅で切断して、カーボンナノチューブワイヤを形成する。第二種では、カーボンナノチューブフィルムを有機溶剤に浸漬させて、カーボンナノチューブフィルムを収縮させてカーボンナノチューブワイヤを形成する。第三種では、カーボンナノチューブフィルムを機械加工(例えば、紡糸工程)して、ねじれたカーボンナノチューブワイヤを形成する。更に詳細に説明すると、まず、カーボンナノチューブフィルムを紡糸装置に固定させる。次に、紡糸装置を作動させて、カーボンナノチューブフィルムを回転させ、ねじれたカーボンナノチューブワイヤを形成する。
(三)プレシッド構造カーボンナノチューブフィルム
カーボンナノチューブ層102は、少なくとも一枚のカーボンナノチューブフィルムを含む。このカーボンナノチューブフィルムは、プレシッド構造カーボンナノチューブフィルム(pressed carbon nanotube film)である。単一のカーボンナノチューブフィルムにおける複数のカーボンナノチューブは、等方的に配列されているか、所定の方向に沿って配列されているか、又は、異なる複数の方向に沿って配列されている。カーボンナノチューブフィルムは、押し器具によって所定の圧力をかけて、カーボンナノチューブアレイを押圧して倒すことにより形成された、シート状の自立構造を有するものである。従って、カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブの配列方向は、押し器具の形状及びカーボンナノチューブアレイを押す方向により決められる。
図7を参照すると、単一のカーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが配向して配列される場合には、該カーボンナノチューブフィルムは、同じ方向に沿って配列された複数のカーボンナノチューブを含む。ローラー形状を有する押し器具を利用して、同じ方向に沿ってカーボンナノチューブアレイを同時に押圧した場合、基本的に同じ方向に配列されたカーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブフィルムが形成される。また、ローラー形状を有する押し器具を利用して、異なる方向に沿って、カーボンナノチューブアレイを同時に押圧した場合、異なる方向に沿って、選択的な方向に配列されたカーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブフィルムが形成される。
カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブの傾斜の程度は、カーボンナノチューブアレイにかけた圧力に関係する。カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブとカーボンナノチューブフィルムの表面とは、角度αを成し、該角度αは0°以上15°以下である。好ましくは、カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブは、カーボンナノチューブフィルムの表面に平行する(即ち、角度αは0°である)。圧力が大きくなるほど、傾斜の程度は大きくなる。カーボンナノチューブフィルムの厚さは、カーボンナノチューブアレイの高さ及びカーボンナノチューブアレイにかけた圧力に関係する。即ち、カーボンナノチューブアレイの高さが高くなるほど、また、カーボンナノチューブアレイにかけた圧力が小さくなるほど、カーボンナノチューブフィルムの厚さは厚くなる。これとは逆に、カーボンナノチューブアレイの高さが低くなるほど、また、カーボンナノチューブアレイにかけた圧力が大きくなるほど、カーボンナノチューブフィルムの厚さは薄くなる。
(四)綿毛構造カーボンナノチューブフィルム
カーボンナノチューブ構造体は、少なくとも一枚のカーボンナノチューブフィルムを含む。このカーボンナノチューブフィルムは、綿毛構造カーボンナノチューブフィルム(flocculated carbon nanotube film)である。図8を参照すると、単一のカーボンナノチューブフィルムにおいて、複数のカーボンナノチューブは絡み合い、等方的に配列されている。カーボンナノチューブ構造体において、複数のカーボンナノチューブは均一に分布し、且つ配向せずに配置されている。単一のカーボンナノチューブの長さは、100nm以上であるが、100nm〜10cmであることが好ましい。カーボンナノチューブ構造体は、自立構造の薄膜の形状に形成されている。ここで自立構造とは、支持体材を利用せず、カーボンナノチューブ構造体を独立して利用することができるという形態のことである。複数のカーボンナノチューブは、分子間力で接近して相互に絡み合い、カーボンナノチューブネット状に形成されている。複数のカーボンナノチューブは配向せずに配置されて、且つ多くの微小な穴が形成されている。ここで、単一の微小な穴の直径は10μm以下である。カーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブは、相互に絡み合って配置されるので、該カーボンナノチューブ構造体は柔軟性に優れ、任意の形状に湾曲して形成させることができる。また、用途に応じて、カーボンナノチューブ構造体の長さ及び幅を調整することができる。カーボンナノチューブ構造体の厚さは、0.5nm〜1mmである。
綿毛構造カーボンナノチューブフィルムの製造方法は、下記のステップを含む。
第一ステップでは、まず、カーボンナノチューブ原料(綿毛構造カーボンナノチューブフィルムの元になるカーボンナノチューブ)を提供する。次いで、ナイフのような工具によって、カーボンナノチューブを基材から剥離して、カーボンナノチューブ原料を形成する。この時、カーボンナノチューブは、ある程度互いに絡み合っている。カーボンナノチューブの原料における、カーボンナノチューブの長さは、10マイクロメートル以上であるが、好ましくは100マイクロメートル以上である。
第二ステップでは、前記カーボンナノチューブ原料を溶剤に浸漬し、該カーボンナノチューブ原料を処理して、綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体を形成する。
カーボンナノチューブ原料を溶剤に浸漬した後、超音波式分散、又は高強度撹拌又は振動などの方法により、カーボンナノチューブを綿毛構造に形成させる。前記溶剤は、水又は揮発性有機溶剤である。超音波式分散方法の場合、カーボンナノチューブを含む溶剤を10〜30分間処理する。これにより、カーボンナノチューブは大きな比表面積を有し、カーボンナノチューブ間に大きな分子間力が生じるので、カーボンナノチューブは互いにもつれて、綿毛構造を形成する。
第三ステップでは、綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体を含む溶液を濾過して、最終的な綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体を取り出す。
具体的には、まず、濾紙が置かれたファネルを提供する。綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体を含む溶剤をこの濾紙が置かれたファネルに注いだ後、暫く放置して乾燥させると、綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体は分離する。図8を参照すると、綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブは、互いに絡み合って、不規則な綿毛構造を形成している。次いで、分離した綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体を容器に放置して、綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体を所定の形状に展開させて、この展開した綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体に所定の圧力を加えた後、綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体に残留した溶剤を加熱する、或いは該溶剤を自然に蒸発させれば、綿毛構造のカーボンナノチューブフィルムが形成される。
綿毛構造のカーボンナノチューブフィルムの厚さと面密度は、綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体が展開する面積によって、制御することができる。即ち、一定の体積を有する綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体は、展開される面積が大きくなるほど、綿毛構造のカーボンナノチューブフィルムの厚さ及び面密度は小さくなる。
また、微多孔膜とエアーポンプファネル(Air−pumping Funnel)を利用して、綿毛構造のカーボンナノチューブフィルムを形成することができる。具体的には、まず、微多孔膜とエアーポンプファネルを提供し、綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体を含む溶剤を、微多孔膜を介してエアーポンプファネルに注ぎ、該エアーポンプファネルを抽気して乾燥させると、綿毛構造のカーボンナノチューブフィルムが形成される。微多孔膜は、平滑な表面を有する。該微多孔膜において、単一の微小孔の直径は、0.22マイクロメートルである。微多孔膜は平滑な表面を有するので、カーボンナノチューブフィルムは、容易に微多孔膜から剥落することができる。さらに、エアーポンプを利用することにより、綿毛構造のカーボンナノチューブフィルムに空気圧をかけるので、均一な綿毛構造のカーボンナノチューブフィルムを形成させることができる。
ステップ(S14)において、第一エピタキシャル層104は、分子線エピタキシー法、化学ビームエピタキシー法、減圧エピタキシー法、低温エピタキシー法、液相エピタキシー法、選択エピタキシー法、有機金属気相エピタキシー法、超高真空化学的気相堆積法、ハイドライド気相エピタキシー法及び有機金属気相成長法などの一種又は数種の方法によって結晶成長させることができる。
第一エピタキシャル層104の厚さは、必要に応じて選択できる。具体的には、第一エピタキシャル層104の厚さは0.5nm〜1mmである。例えば、100nm〜500μm、200nm〜200μm或いは500nm〜100μmである。第一エピタキシャル層104の材料は、バッファ層1041の材料と同じか又は異なることができる。第一エピタキシャル層104は、半導体、金属又は合金のエピタキシャル層であることができる。前記半導体は、Si、GaAs、GaN、GaSb、InN、InP、InAs、InSb、AlP、AlAs、AlSb、AlN、GaP、SiC、SiGe、GaMnAs、GaAlAs、GaInAs、GaAlN、GaInN、AlInN、GaAsP、InGaN、AlGaInN、AlGaInP、GaP:Zn又はGaP:Nなどである。
第一エピタキシャル層104の製造方法は、ガリウムの原料ガスの導入を停止し、キャリヤガス及び窒素源ガスの導入を維持し、反応室の温度を1110℃〜1200℃まで昇温した後、30秒間〜300秒間にわたってアニーリング処理するステップ(S141’)と、カーボンナノチューブ層102及びバッファ層1041が設置された基板100を有する反応室の温度を1000℃〜1100℃に維持し、同時にガリウムの原料ガスを再び導入して、高温で高品質の第一エピタキシャル層104を成長させるステップ(S142’)と、を含む。
第一エピタキシャル層104の成長方法は、バッファ層1041の露出領域において、形成しようとする第一エピタキシャル層104の核を形成し、この核のサイズは主にバッファ層1041と垂直する方向に沿って増大して、複数のエピタキシャル結晶粒(図示せず)を形成するステップ(S141)と、前記複数のエピタキシャル結晶粒を、バッファ層1041の表面に平行して横方向結晶成長させて、隣接する結晶粒同士の合体によって全体のエピタキシャル膜(図示せず)を形成するステップ(S142)と、このエピタキシャル膜が、バッファ層1041に垂直する方向に増大して、第一エピタキシャル層104を形成するステップ(S143)と、を含む。
ステップ(S141)において、前記エピタキシャル結晶粒は、カーボンナノチューブ層102によって露出されたバッファ層1041の表面からカーボンナノチューブ層102の空隙105を貫通して成長する。ここで、形成しようとする第一エピタキシャル層104の核が、主にバッファ層1041の表面と垂直する方向に沿って成長することを縦方向結晶成長として定義する。
ステップ(S142)において、隣接する結晶粒同士の合体によって、複数のエピタキシャル結晶粒は互いに接続されて、一体構造を有するエピタキシャル膜を形成する。複数のエピタキシャル結晶粒及びエピタキシャル膜は共に、カーボンナノチューブ層102を包む。これによりカーボンナノチューブ層102のカーボンナノチューブも包まれて、複数のキャビティ103を形成する。このキャビティ103の内壁は、キャビティ103におけるカーボンナノチューブと接触する又は間隔を有する。これは、カーボンナノチューブと形成しようとする第一エピタキシャル層104との間の濡れ性によって決定される。複数のエピタキシャル結晶粒及びエピタキシャル膜からなる一体構造体の、基板100の第一成長表面101に面する表面は、凹凸構造を有するパターン化表面である。該凹凸構造は、パターン化されたカーボンナノチューブ層102に関係する。カーボンナノチューブ層102が、互いに間隔をあけて平行するように配置された複数のカーボンナノチューブワイヤからなる場合、複数のエピタキシャル結晶粒及びエピタキシャル膜からなる一体構造体の、基板100の成長表面101に面する表面には、平行且つ間隔を有する複数の溝が形成される。カーボンナノチューブ層102が、互いに交叉するように配置される、又は互いに編まれることにより網状構造体になる場合、複数のエピタキシャル結晶粒及びエピタキシャル膜からなる一体構造体の、基板100の成長表面101に面する表面には、交叉された複数の溝を含む網状溝が形成される。第一カーボンナノチューブ層102は、エピタキシャル結晶粒と基板100との間に格子欠陥が発生することを防止するために用いられる。ここで、基板100の第一成長表面101に平行な方向に沿って結晶成長することを横方向結晶成長と定義する。
ステップ(S143)において、前記エピタキシャル膜は、バッファ層1041に垂直な方向に増大する。バッファ層1041には、カーボンナノチューブ層102が配置されているので、ステップ(S142)において、エピタキシャル膜における欠陥は減少する。従って、エピタキシャル膜がバッファ層1041に垂直な方向に増大して形成された第一エピタキシャル層104も欠陥が減少する。
ステップ(S15)において、基板100及びバッファ層1041を除去するために、レーザ照射法、エッチング法又は熱膨張収縮法を利用する。前記基板100及びバッファ層1041を除去する方法は、基板100及びバッファ層1041の材料によって選択することができる。本実施例において、基板100及びバッファ層1041を除去する方法は、レーザ照射法である。
基板100及びバッファ層1041を除去する方法は、基板100の前記バッファ層1041が形成されない表面を研磨してから洗浄するステップ(S151)と、レーザビームを提供して、基板100、バッファ層1041及び第一エピタキシャル層104を照射するステップ(S152)と、レーザビームによって照射された基板100、バッファ層1041及び第一エピタキシャル層104を溶液に浸漬した後、基板100及びバッファ層1041を除去することによりエピタキシャル基板1001を形成するステップ(S153)と、を含む。
ステップ(151)において、レーザによって基板100を照射する場合、散乱現象が発生する可能性を減少させるために、基板100の表面を機械研磨法又は化学研磨法によって研磨して、滑らかな表面に加工する。さらにその後、基板100の表面にある金属不純物、油汚れ等を除去するために、基板100の表面を塩酸又は硫酸を用いて洗浄する。
ステップ(S152)において、カーボンナノチューブ層102が酸化することを防止するために、真空又は保護ガスの雰囲気で、基板100、バッファ層1041及び第一エピタキシャル層104をレーザビームで照射する。前記保護ガスは、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス等の一種又は数種である。
基板100の研磨された表面に対して垂直にレーザビームを照射する。つまり、レーザビームを、基板100と第一エピタキシャル層104の界面に照射する。レーザの波長は、バッファ層1041及び基板100の材料によって選択することができるが、レーザビームのエネルギーは、基板100のエネルギーバンドギャップより小さく、バッファ層1041のエネルギーバンドギャップより大きいことが好ましい。これにより、レーザビームは、基板100を透過してバッファ層1041に到達することができる。この時、バッファ層1041は、レーザを吸収して、急速に加熱されて分解される。本実施形態において、バッファ層1041は、エネルギーバンドギャップが3.3eVであり、基板100は、エネルギーバンドギャップが9.9eVのサファイアであるので、レーザビームの波長は248nmであり、エネルギーは5eVであり、パルス幅は20ns〜40nsであり、エネルギー密度は400mJ/cm2〜600mJ/cm2であり、光スポットは0.5mmの辺長を有する正方形である。レーザを照射する位置は、基板100の辺縁から開始され、その速度は、0.5mm/sの速度である。この時、バッファ層1041は、レーザを吸収して、ガリウムと窒素に分解される。これに対して、波長のレーザが第一エピタキシャル層104に吸収される量は少ないか、又は吸収されないので、第一エピタキシャル層104は、レーザによって基板100を照射する過程においては破壊されない。
ステップ(S153)において、前記ステップ(S152)において分解されたガリウムを酸溶液に浸漬させて除去する。これにより、基板100を第一エピタキシャル層104から分離させることができる。前記酸溶液は、塩酸、硫酸又は硝酸のような、ガリウムを溶解できる溶液である。カーボンナノチューブ層102は、第一エピタキシャル層104の第一キャビティ103内に設置されている。この原因は、前記ステップ(S152)において、バッファ層1041がレーザによって照射されて、ガリウムと窒素に分解される際、バッファ層1041の表面に配置されたカーボンナノチューブ層102は、窒素の作用によって、バッファ層1041の表面に吸着するための力が弱められる。従って、ステップ(S153)において、ガリウムが酸溶液で溶解された際、カーボンナノチューブ層102は、第一エピタキシャル層104の第一キャビティ103に残ることになる。更に、第一エピタキシャル層104とバッファ層1041との間には、カーボンナノチューブ層102が配置されているので、バッファ層1041と第一エピタキシャル層104との接触面は小さくなり、且つバッファ層1041と第一エピタキシャル層104間の応力も減少する。これにより、基板100を第一エピタキシャル層104から分離する工程は更に容易になり、且つ第一エピタキシャル層104に対する損傷を減少させることができる。
エピタキシャル基板1001は、第一エピタキシャル層104及びカーボンナノチューブ層102を含む。第一エピタキシャル層104は、少なくとも一つのパターン化表面を有する。該第一エピタキシャル層104のパターン化表面は、第二エピタキシャル層106が成長する第二成長表面201である。カーボンナノチューブ層102は、第一エピタキシャル層104のパターン化表面に埋め込まれている。カーボンナノチューブ層102は、複数の空隙105を含み、第一エピタキシャル層104の一部は複数の空隙105の中を突出している。この第一エピタキシャル層104の隣接する突出部がそれぞれカーボンナノチューブ層102のカーボンナノチューブを囲んで、複数のキャビティ103を形成する。キャビティ103は、溝又は止まり穴である。カーボンナノチューブ層102における一部のカーボンナノチューブは、キャビティ103によって露出される。
図9を参照すると、ステップ(S16)において、第二エピタキシャル層106の成長方法は、ステップ(S14)の第一エピタキシャル層104の成長方法と基本的に同じであるが、第二エピタキシャル層106を成長させる前に、バッファ層(図示せず)を設置するステップを設けることができる。前記バッファ層の材料は、第二エピタキシャル層106によって選択できる。本実施例において、第二エピタキシャル層106の材料は、第一エピタキシャル層104の材料と同じであり、第二エピタキシャル層106は、第一エピタキシャル層104の第二成長表面201から直接に成長する。
第二エピタキシャル層106の成長方法は、カーボンナノチューブ層102の空隙105によって露出された第二成長表面201に、複数のエピタキシャル結晶粒1062を形成するステップ(S161)と、複数のエピタキシャル結晶粒1062を第一エピタキシャル層104の表面に平行して成長させて(つまり、横方向結晶成長)、隣接する結晶粒同士の合体によって、一体のエピタキシャル膜1064を形成するステップ(S162)と、エピタキシャル1064膜が、第一エピタキシャル層104の表面に対して垂直する方向に増大して、第二エピタキシャル層106を形成し、エピタキシャル構造体10を形成するステップ(S163)と、を含む。
ステップ(S161)において、カーボンナノチューブは、エピタキシャル成長を支持しないので、複数のエピタキシャル結晶粒1062は、空隙105によって露出された第二成長表面201表面に成長する。
ステップ(S162)において、複数のエピタキシャル結晶粒1062を横方向結晶成長させて、隣接する結晶粒同士の合体によって、複数のエピタキシャル結晶粒1062は互いに接続して、エピタキシャル膜1064を形成する。エピタキシャル膜1064及び第一エピタキシャル層104は共にカーボンナノチューブを包む。
ステップ(S163)において、エピタキシャル膜1064を引き続き成長させて、第二エピタキシャル層106を形成する。第二エピタキシャル層106の厚さは、必要に応じて選択できる。具体的には、第二エピタキシャル層106の厚さは0.5nm〜1mmである。例えば、100nm〜500μm、200nm〜200μm或いは500nm〜100μmである。第二エピタキシャル層106の材料は、第一エピタキシャル層104の材料と同じか又は異なることができる。第二エピタキシャル層106の材料が第一エピタキシャル層104の材料と同じである場合、第二エピタキシャル層106はホモエピタキシャル層である。第二エピタキシャル層106の材料が第一エピタキシャル層104の材料と異なる場合、第二エピタキシャル層106はヘテロエピタキシャル層である。第二エピタキシャル層106及び第一エピタキシャル層104の材料及び厚さは、製造しようとする電子製品によって選択できる。
更に、第二エピタキシャル層106を成長させる前に、エピタキシャル基板1001の第二成長表面201にカーボンナノチューブ層(図示せず)を形成することができる。このカーボンナノチューブ層の構造は、カーボンナノチューブ層102の構造と同じであり、且つエピタキシャル層が成長する過程において、格子欠陥が発生することを制限し、エピタキシャル層の成長品質を高める。
(実施例2)
本発明の実施例2において、エピタキシャル構造体20の製造方法を提供する。実施例2のエピタキシャル構造体20の製造方法は、結晶成長用の第一成長表面101を有する基板100を提供するステップ(S21)と、基板100の第一成長表面101にカーボンナノチューブ層102を配置するステップ(S22)と、カーボンナノチューブ層102の基板100と離れる表面にバッファ層1041を配置するステップ(S23)と、バッファ層1041の表面に第一エピタキシャル層104を成長させるステップ(S24)と、基板100を除去し、カーボンナノチューブ層102を露出させ、エピタキシャル基板1001を形成し、該エピタキシャル基板1001は、第一エピタキシャル層104、バッファ層1041及びカーボンナノチューブ層102を含むステップ(S25)と、エピタキシャル基板1001におけるカーボンナノチューブ層102を露出させる第二成長表面201に、第二エピタキシャル層106を成長させるステップ(S26)と、を含む。
本実施例2のエピタキシャル構造体20の製造方法と、実施例1のエピタキシャル構造体10の製造方法とは同じであるが、異なる点は、基板100の第一成長表面101にカーボンナノチューブ層102を配置した後、バッファ層1041と第一エピタキシャル層104をそれぞれ形成することである。バッファ層1041と第一エピタキシャル層104とは一体構造であるので、基板100を除去した後、エピタキシャル基板1001はバッファ層1041を有する。即ち、エピタキシャル構造体20は、バッファ層1041を有する。バッファ層1041の第一エピタキシャル層104と離れる表面には、複数のキャビティ103が形成され、カーボンナノチューブ層102の一部のカーボンナノチューブは、このキャビティ103によって露出される。
(実施例3)
図10を参照すると、本発明の実施例3は、エピタキシャル構造体30の製造方法を提供する。エピタキシャル構造体30の製造方法は、結晶成長用の第一成長表面101を有する基板100を提供するステップ(S31)と、基板100の第一成長表面101にバッファ層1041を配置するステップ(S32)と、バッファ層1041の基板100と離れる表面にカーボンナノチューブ層102を配置するステップ(S33)と、カーボンナノチューブ層102が配置されたバッファ層1041の表面に、第一エピタキシャル層104を成長させるステップ(S34)と、基板100及びバッファ層1041を除去して、カーボンナノチューブ層102を露出させるステップ(S35)と、カーボンナノチューブ層102を除去し、エピタキシャル基板1002を形成し、該エピタキシャル基板1002は、パターン化された第二成長表面202を有するステップ(S36)と、第二成長表面202に、第二エピタキシャル層106を成長させるステップ(S37)と、を含む。
本実施例のエピタキシャル構造体30の製造方法と、実施例1のエピタキシャル構造体10の製造方法とは同じであるが、異なる点は、カーボンナノチューブ層102を除去することである。カーボンナノチューブ層102を除去した後、パターン化された第二成長表面202を有するエピタキシャル基板1002を形成し、第二エピタキシャル層106は、第二成長表面202に形成される。
カーボンナノチューブ層102を除去する方法は、プラズマエッチング法、レーザ加熱法又は炉内加熱法などである。本実施例においては、レーザ加熱法によって、カーボンナノチューブ層102を除去する。この場合、カーボンナノチューブ層102及び第一エピタキシャル層104を含む構造体を酸素雰囲気に置くステップ(S361)と、カーボンナノチューブ層102にレーザビームを照射するステップ(S362)と、を含む。
ステップ(S361)において、レーザビームは、固体レーザ装置、液体レーザ装置、気体レーザ装置又は半導体レーザ装置などのレーザ装置により提供される。レーザ装置のパワー密度は、0.053×1012W/m2である。レーザ装置のレーザスポットの直径は、1mm〜5mmである。カーボンナノチューブ層102にレーザビームを照射する時間は、1.8秒より小さい。本実施形態において、レーザビームは、炭酸ガスレーザ装置により提供する。炭酸ガスレーザ装置の電力は、30Wであり、レーザの波長は10.6μmであり、レーザスポットの直径は3mmである。レーザ装置のパラメータは、第一エピタキシャル層104の材料に応じて選択することができるが、レーザ装置からのレーザビームが、第一エピタキシャル層104を分解しない程度に設定されることが好ましい。
ステップ(S362)において、前記レーザビームは、直接カーボンナノチューブ102を照射する。カーボンナノチューブ層102は、吸収力に優れており、容易にレーザを吸収して酸化した後、除去される。カーボンナノチューブ層102にレーザビームを照射する場合、レーザビームをカーボンナノチューブ層102に対して相対移動しながら照射する。レーザビームは、カーボンナノチューブ層102におけるカーボンナノチューブの配向方向に対して平行方向又は垂直方向に沿って移動させることができる。レーザビームは、低スピードでカーボンナノチューブ層102に対して照射する場合、カーボンナノチューブ層102は、多量のエネルギーを吸収して短い時間で酸化することができる。本実施形態において、レーザビームがエピタキシャル構造体10に対して相対移動する速度は10mm/sより小さい。
(実施例4)
図11を参照すると、本発明の実施例4は、エピタキシャル構造体30の製造方法を提供する。エピタキシャル構造体30の製造方法は、結晶成長用の第一成長表面101を有する基板100を提供するステップ(S41)と、基板100の第一成長表面101にカーボンナノチューブ層102を配置するステップ(S42)と、カーボンナノチューブ層102を配置する第一成長表面101に、第一エピタキシャル層104を成長させるステップ(S43)と、基板100及びカーボンナノチューブ層102を除去し、エピタキシャル基板1002を形成し、該エピタキシャル基板1002がパターン化された第二成長表面202を有するステップ(S44)と、第二成長表面202に、第二エピタキシャル層106を成長させるステップ(S45)と、を含む。
本実施例4のエピタキシャル構造体30と、実施例3のエピタキシャル構造体30とは同じであるが、製造方法において異なる点は、基板100の第一成長表面101にバッファ層1041を配置するステップがないことである。
ステップ(S43)において、第一エピタキシャル層104の製造方法は、カーボンナノチューブ膜が配置されたサファイア基板を真空反応室に配置し、該反応室を1100℃〜1200℃まで加熱し、キャリヤガスを反応室に導入して、サファイア基板を200秒間〜1000秒間にわたって焼成するステップ(a)と、キャリヤガスの雰囲気で反応室の温度を500℃〜650℃まで下げ、同時にガリウムの原料ガス及び窒素源ガスを反応室に導入して、10nm〜50nmの低温GaNバッファ層1041を成長させるステップ(b)と、ガリウムの原料ガスの導入を停止し、キャリヤガス及び窒素源ガスの導入を維持し、反応室の温度を1110℃〜1200℃まで昇温して、30秒間〜300秒間にわたってアニーリング処理するステップ(c)と、反応室の温度を1000℃〜1100℃に維持し、ガリウムの原料ガスを再び導入することにより、低温GaNバッファ層1041の上にエピタキシャル層を成長させ、エピタキシャル構造体を形成するステップ(d)と、温度を1070℃まで下げ、ガリウムの原料ガスの流量を増加して、高品質なエピタキシャル層を成長させるステップ(e)と、を含む。
バッファ層1041の厚さは、カーボンナノチューブ層102の厚さより薄い。エピタキシャル層104を成長した後、走査型電子顕微鏡(SEM)及び透過型電子顕微鏡(TEM)によってサンプルを観察すると、図13及び図14に示されるように、色の暗い領域は、エピタキシャル層であり、色の明るい領域は基板である。また、エピタキシャル層の基板と接続する領域には、複数の溝が形成されており、エピタキシャル層に形成されたこの複数の溝は、基板によって閉塞されて複数のトンネルとなる。カーボンナノチューブ層102のカーボンナノチューブは、トンネルの中に位置する。
ステップ(S43)において、図12を参照すると、第一エピタキシャル層104の成長方法は、まず、バッファ層1041に形成しようとする第一エピタキシャル層104の核を形成して、核のサイズが主にバッファ層1041と垂直する方向に沿って増大して、複数のエピタキシャル結晶粒を形成するステップ(S431)と、複数のエピタキシャル結晶粒が横方向結晶成長して、隣接する結晶粒同士の合体によって一体のエピタキシャル膜を形成するステップ(S432)と、エピタキシャル膜がバッファ層1041に垂直する方向に増大して、第一エピタキシャル層104を形成するステップ(S433)と、を含む。
ステップ(S44)は、実施例1のステップ(S15)と基本的に同じであるが、異なる点は、基板100及びバッファ層1041を除去すると同時に、基板100に付着したカーボンナノチューブ層102を除去し、エピタキシャル基板1002を形成することである。
図15を参照すると、ステップ(S45)において、第二エピタキシャル層106の成長方法は、ステップ(S43)の第一エピタキシャル層104の成長方法と基本的に同じであるが、第二エピタキシャル層106を成長させる前に、バッファ層(図示せず)を設置することができる。バッファ層の材料は、第二エピタキシャル層106によって選択できる。本実施例において、第二エピタキシャル層106の材料は、第一エピタキシャル層104の材料と同じであり、第二エピタキシャル層106は、第一エピタキシャル層104の第二成長表面202に直接に成長する。
第二エピタキシャル層106の成長方法は、第一エピタキシャル層104のパータン化された第二成長表面202に、複数のエピタキシャル結晶粒1062を形成するステップ(S451)と、複数のエピタキシャル結晶粒1062が横方向結晶成長して、隣接する結晶粒同士の合体によって一体のエピタキシャル膜1064を形成するステップ(S452)と、エピタキシャル1064膜が、第一エピタキシャル層104表面に垂直する方向に増大して、第二エピタキシャル層106を形成し、エピタキシャル構造体30を形成するステップ(S453)と、を含む。
ステップ(S451)において、キャビティ103の底面及びキャビティ103の間の第一エピタキシャル層104の表面に、複数のエピタキシャル結晶粒1062を成長させる。複数のエピタキシャル結晶粒1062の垂直方向で成長する速度は速いため、成長過程において、キャビティ103の内部に成長する複数のエピタキシャル結晶粒1062は、キャビティ103の間の第一エピタキシャル層104表面に成長する複数のエピタキシャル結晶粒1062と同じ高さまで成長して、一つの平面を形成する。
ステップ(S452)において、複数のエピタキシャル結晶粒1062は、キャビティ103の内部を充填した後、横方向結晶成長して、隣接する結晶粒同士の合体によって複数のエピタキシャル結晶粒1062が互いに接続されて、エピタキシャル膜1064を形成する。
ステップ(S453)において、エピタキシャル膜1064を引き続き成長させて、第二エピタキシャル層106を形成する。第二エピタキシャル層106の厚さは、必要に応じて選択できる。具体的には、第二エピタキシャル層106の厚さは0.5nm〜1mmである。例えば、100nm〜500μm、200nm〜200μm或いは500nm〜100μmである。第二エピタキシャル層106の材料は、第一エピタキシャル層104の材料と同じか又は異なることができる。第二エピタキシャル層106及び第一エピタキシャル層104の材料と厚さは、製造しようと電子製品によって選択できる。
また、第二エピタキシャル層106を成長させる前に、エピタキシャル基板1002の第二成長表面202にカーボンナノチューブ層(図示せず)を設置することができる。このカーボンナノチューブ層の構造は、カーボンナノチューブ層102の構造と同じである。カーボンナノチューブ層は、エピタキシャル層が成長する過程において、格子欠陥が発生することを制限し、エピタキシャル層の成長品質を高める。
本発明のエピタキシャル構造体の製造方法は以下の優れた点がある。第一に、自立構造の複数の空隙を有するカーボンナノチューブ層を、直接的に基板の結晶面に配置して、エピタキシャル層を成長させるので、製造方法が簡単であり、且つコストが低い。第二に、基板の結晶面の一部がカーボンナノチューブ層の複数の空隙によって露出され、基板の該露出された結晶面からカーボンナノチューブ層の複数の空隙を通じて核が成長された後、横方向結晶成長させて、一体の第一エピタキシャル層を成長形成させる。この時、第一エピタキシャル層と基板との接触面積は小さい。これにより、第一エピタキシャル層と基板との間の結合力を減少させることができる。また、カーボンナノチューブ層は、第一エピタキシャル層が成長する過程において、格子欠陥が発生することを制限することができる。第三に、カーボンナノチューブ層を有する場合、エピタキシャル基板のパターン化された表面に、第二エピタキシャル層を成長する際、第一エピタキシャル層と第二エピタキシャル層との接触面を減少させるので、第一エピタキシャル層と第二エピタキシャル層との間の応力も減少し、より厚い第二エピタキシャル層を成長させることができる。第四に、第一エピタキシャル層は品質が高い、また、パターン化された表面は、格子欠陥が発生することを制限することができるので、第一エピタキシャル層に第二エピタキシャル層を成長させる際(特に、第一エピタキシャル層にホモエピタキシャル成長する場合)、第二エピタキシャル層の品質を高めることができる。従って、エピタキシャル構造体の品質を高めることができる。