JP2013202753A - サーメット製切削工具 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐熱衝撃性、耐欠損性にすぐれたサーメット製切削工具を提供する。
【解決手段】
Reを含有しTiを主成分とし、周期律表4a、5aおよび6a族の炭化物、窒化物、炭窒化物を1種または2種以上含有する硬質相、Coおよび/またはNiを主成分とする結合相、およびRe富裕相を有するTi基サーメットであって、前記Re富裕相は、前記Ti基サーメットの表面に形成され、走査型電子顕微鏡による断面組織観察で0.5〜2.0μmの平均層厚を有し、含有元素の中で最もReの重量が多く占める相であり、その含有量は40wt%以上であるサーメットを工具基体とすることにより、前記課題を解決する。
【選択図】図1
【解決手段】
Reを含有しTiを主成分とし、周期律表4a、5aおよび6a族の炭化物、窒化物、炭窒化物を1種または2種以上含有する硬質相、Coおよび/またはNiを主成分とする結合相、およびRe富裕相を有するTi基サーメットであって、前記Re富裕相は、前記Ti基サーメットの表面に形成され、走査型電子顕微鏡による断面組織観察で0.5〜2.0μmの平均層厚を有し、含有元素の中で最もReの重量が多く占める相であり、その含有量は40wt%以上であるサーメットを工具基体とすることにより、前記課題を解決する。
【選択図】図1
Description
本発明は、各種鋼や鋳鉄などの高熱発生を伴う高速切削に用いた場合に、耐熱衝撃性および耐欠損性にすぐれ、長期に亘って耐摩耗性を発揮するチタン基(Ti基)サーメット製切削工具(以下、単にサーメット工具という)に関するものである。
一般に、被覆工具には、各種の鋼や鋳鉄などの被削材の旋削加工や平削り加工にバイトの先端部に着脱自在に取り付けて用いられるインサート、被削材の穴あけ切削加工などに用いられるドリルやミニチュアドリル、さらに被削材の面削加工や溝加工、肩加工などに用いられるソリッドタイプのエンドミルなどがあり、またインサートを着脱自在に取り付けてソリッドタイプのエンドミルと同様に切削加工を行うインサート式エンドミル工具などが知られている。
そして、被覆工具の工具基体として、タングステンカーバイト(WC)を主成分とする超硬合金やチタン(Ti)を主成分とするTi基サーメットなどの焼結合金が広く使われている。これらの焼結合金については、その性能改善のために新規組成開発や組織開発が続けられている。
特に、Ti基サーメットは、超硬合金に比べて熱伝導率が低くかつ熱膨張係数が1.3倍大きいという性質上、熱衝撃に対する抵抗が低いという問題があり、熱衝撃が厳しくなる条件下での切削では突発的な欠損が発生するなどの不具合があった(例えば、特許文献1参照)。
そこで、Ti基サーメットの性能向上のため種々の方法が提案されている。例えば、特許文献2には、Ti基サーメットの表面におけるTi、Wおよび結合相の濃度分布を変化させることにより、熱衝撃の激しい切削条件でも信頼性の高い切削が可能となることが開示されている。
また、Ti基サーメットの組成についても種々検討されており、例えば、特許文献3には、原料粉末として表面にレニウム(Re)金属を被覆した炭窒化チタン粉末を用いてサーメットを作成することにより、サーメットをより高温で焼成しても焼結体組織の成長が抑制され、その機械的特性(硬度、強度、靭性など)が向上することが開示されている。
ところが、近年の切削加工装置の自動化はめざましく、一方で切削加工に対する省力化および省エネ化、さらに低コスト化の要求は強く、これに伴い、切削工具には被削材の材種にできるだけ影響を受けない汎用性、すなわち、できるだけ多くの材種の切削加工が可能な切削工具が求められる傾向にあり、サーメット工具においても使用寿命の一段の長期化が望まれている。
サーメット工具は、一般的に超硬工具に比して、耐熱衝撃性、耐欠損性が不十分であるため、熱衝撃に弱い。そのため、サーメット工具の使用寿命の長期化のためには、耐熱衝撃性および耐欠損性を向上させることが必要とされるが、前記従来のサーメット工具は、耐熱衝撃性、耐欠損性のいずれかが劣るものであり、これらの特性を相兼ね備えたものであるとは言えない。
サーメット工具は、一般的に超硬工具に比して、耐熱衝撃性、耐欠損性が不十分であるため、熱衝撃に弱い。そのため、サーメット工具の使用寿命の長期化のためには、耐熱衝撃性および耐欠損性を向上させることが必要とされるが、前記従来のサーメット工具は、耐熱衝撃性、耐欠損性のいずれかが劣るものであり、これらの特性を相兼ね備えたものであるとは言えない。
そこで、本発明が解決しようとする技術的課題、すなわち、本発明の目的は、耐熱衝撃性および耐欠損性を同時に向上させ、被削材を、高温発熱を伴う高速切削条件で切削した場合においても、長期に亘ってすぐれた切削性能を維持するサーメット工具を提供することである。
そこで、本発明者らは、前述のような観点から、被削材を、高温発熱を伴う高速切削条件で切削した場合においても、すぐれた耐熱衝撃性および耐欠損性を併せ持つサーメット工具を開発すべく、鋭意研究を行った結果、サーメットの組織構成として、サーメットの最外層に熱膨張係数の小さいレニウム(Re)富裕相を析出させることによって、熱衝撃による熱亀裂の発生が抑えられる、最外層へ圧縮応力が発生し、耐欠損性が向上するという新規な知見を得て、かかる知見に基づき、本発明を完成するに至ったものである。
具体的には、
(1)Reを含有しTiを主成分とし、周期律表4a、5aおよび6a族の炭化物、窒化物、炭窒化物を1種または2種以上含有する硬質相、Coおよび/またはNiを主成分とする結合相、およびReを含有するRe富裕相を有するTi基サーメットとする。
(2)さらに、前記Re富裕相は、走査型電子顕微鏡による断面組織観察で、0.5〜2.0μmの厚み有して、Ti基サーメットの表面に形成されている。
(3)前記Re富裕相は、Reを40wt%以上含有し、wt%でReが最も多く占めている。
(4)さらに、好ましくは、前記Ti基サーメットは、Reを3〜20wt%含有し、そのうち、周辺部に0.5〜3wt%含有し、結合相中に10〜30wt%含有するものとする。
ここで、硬質相の周辺部とは、例えば、TiCN単相からなる領域を芯部としてその周囲に存在し、走査型電子顕微鏡による観察にて濃灰色を呈する領域を意味しており、Tiを主成分として周期律表4a、5aおよび6a族を1種または2種以上含有する。すなわち、Reが硬質相中に均一に分散して存在するのではなく、硬質相の単相からなる芯部の周囲部に偏在して存在していることを意味しており、その含有割合は、周辺部全体に対して0.5〜3wt%である。つまり、本発明で云うところの硬質相の周辺部とは、硬質相の中心から何μm〜何μmと規定できる領域を意味しているのでなく、走査型電子顕微鏡により観察した際にTiより原子量が大きい原子が存在しているが故に濃灰色を呈する領域を意味している。そして、周辺部へのReの存在割合は、周辺部全体に対して0.5〜3wt%である。この事実は、エネルギー分散型X線分析装置(EDS)を備えた透過型電子顕微鏡(TEM)による断面観察により確認できる。
以上のような構成とする時、耐熱衝撃性と耐欠損性を同時に高め、高速切削での長寿命化を達成できる。
(1)Reを含有しTiを主成分とし、周期律表4a、5aおよび6a族の炭化物、窒化物、炭窒化物を1種または2種以上含有する硬質相、Coおよび/またはNiを主成分とする結合相、およびReを含有するRe富裕相を有するTi基サーメットとする。
(2)さらに、前記Re富裕相は、走査型電子顕微鏡による断面組織観察で、0.5〜2.0μmの厚み有して、Ti基サーメットの表面に形成されている。
(3)前記Re富裕相は、Reを40wt%以上含有し、wt%でReが最も多く占めている。
(4)さらに、好ましくは、前記Ti基サーメットは、Reを3〜20wt%含有し、そのうち、周辺部に0.5〜3wt%含有し、結合相中に10〜30wt%含有するものとする。
ここで、硬質相の周辺部とは、例えば、TiCN単相からなる領域を芯部としてその周囲に存在し、走査型電子顕微鏡による観察にて濃灰色を呈する領域を意味しており、Tiを主成分として周期律表4a、5aおよび6a族を1種または2種以上含有する。すなわち、Reが硬質相中に均一に分散して存在するのではなく、硬質相の単相からなる芯部の周囲部に偏在して存在していることを意味しており、その含有割合は、周辺部全体に対して0.5〜3wt%である。つまり、本発明で云うところの硬質相の周辺部とは、硬質相の中心から何μm〜何μmと規定できる領域を意味しているのでなく、走査型電子顕微鏡により観察した際にTiより原子量が大きい原子が存在しているが故に濃灰色を呈する領域を意味している。そして、周辺部へのReの存在割合は、周辺部全体に対して0.5〜3wt%である。この事実は、エネルギー分散型X線分析装置(EDS)を備えた透過型電子顕微鏡(TEM)による断面観察により確認できる。
以上のような構成とする時、耐熱衝撃性と耐欠損性を同時に高め、高速切削での長寿命化を達成できる。
本発明は、前記研究結果に基づいてなされたものであって、
「(1) Reを含有しTiを主成分とし、周期律表4a、5aおよび6a族の炭化物、窒化物、炭窒化物を1種または2種以上含有する硬質相、Coおよび/またはNiを主成分とする結合相、およびRe富裕相を有するTi基サーメットを工具基体とするTi基サーメット製切削工具であって、前記Re富裕相は、前記Ti基サーメット表面に形成され、走査型電子顕微鏡による断面組織観察で0.5〜2.0μmの平均層厚を有し、含有元素の中で最もReの重量が多く占める相であり、その含有割合は、Re富裕相全質量に対して40wt%以上であることを特徴とするTi基サーメット製切削工具。
(2) 前記ReのTi基サーメット全体に対する含有量が3〜20wt%であり、そのうち前記硬質相の周辺部に該周辺部の全質量に対して0.5〜3wt%存在し、前記結合相中に該結合相の全質量に対して10〜30wt%存在する含有することを特徴とする(1)に記載のTi基サーメット製切削工具。」
を特徴とするものである。
「(1) Reを含有しTiを主成分とし、周期律表4a、5aおよび6a族の炭化物、窒化物、炭窒化物を1種または2種以上含有する硬質相、Coおよび/またはNiを主成分とする結合相、およびRe富裕相を有するTi基サーメットを工具基体とするTi基サーメット製切削工具であって、前記Re富裕相は、前記Ti基サーメット表面に形成され、走査型電子顕微鏡による断面組織観察で0.5〜2.0μmの平均層厚を有し、含有元素の中で最もReの重量が多く占める相であり、その含有割合は、Re富裕相全質量に対して40wt%以上であることを特徴とするTi基サーメット製切削工具。
(2) 前記ReのTi基サーメット全体に対する含有量が3〜20wt%であり、そのうち前記硬質相の周辺部に該周辺部の全質量に対して0.5〜3wt%存在し、前記結合相中に該結合相の全質量に対して10〜30wt%存在する含有することを特徴とする(1)に記載のTi基サーメット製切削工具。」
を特徴とするものである。
つぎに、本発明サーメット工具のTi基サーメットを構成する各相の作用や、前記の通りに数値限定した理由を説明する。
硬質相:
硬質相は、Tiの炭化物、窒化物、炭窒化物、またはTiを主成分とし、周期律表4a、5aおよび6a族の1種または2種以上の元素の炭化物、窒化物、炭窒化物を1種または2種以上含んだ相からなり、耐摩耗性の向上、強度向上の作用を担う。
走査型電子顕微鏡で断面組織観察を行った時に、硬質相の面積割合が、80面積%未満であると前記作用が十分に奏されず、一方、95面積%を超えると、相対的に下記に説明するRe富裕相の量が少なくなり、本発明に特有の耐熱衝撃性を高め、熱亀裂の発生を抑えるという効果が十分に奏されない。
そこで、硬質相の面積割合は、80〜95面積%とすることが好ましい。
硬質相は、Tiの炭化物、窒化物、炭窒化物、またはTiを主成分とし、周期律表4a、5aおよび6a族の1種または2種以上の元素の炭化物、窒化物、炭窒化物を1種または2種以上含んだ相からなり、耐摩耗性の向上、強度向上の作用を担う。
走査型電子顕微鏡で断面組織観察を行った時に、硬質相の面積割合が、80面積%未満であると前記作用が十分に奏されず、一方、95面積%を超えると、相対的に下記に説明するRe富裕相の量が少なくなり、本発明に特有の耐熱衝撃性を高め、熱亀裂の発生を抑えるという効果が十分に奏されない。
そこで、硬質相の面積割合は、80〜95面積%とすることが好ましい。
Re富裕相:
ここで、本発明におけるRe富裕相とは、含有元素の中で最もReの重量が多く占める相であるが、Reは、高温での硬さの低下や熱膨張係数が小さいので、この相をサーメットの表面に配置することで、耐熱衝撃性を高め、熱亀裂の発生が抑えられる効果がある。また、最外層へ熱膨張係数の小さいRe富裕相を配置することでサーメット表面に圧縮応力が発生し、耐欠損性が向上する。ところが、Reの含有量が40wt%未満であると、耐熱衝撃性を高め、高温での塑性変形を抑える効果が十分でないため、Reの含有量は、40wt%以上と定めた。また、サーメットの表面に析出させるRe富裕相の厚みが、0.5μm未満であると前述したようなRe富裕相のもつ作用が十分に奏されず、一方、2.0μmを超えるとチッピングが発生しやすくなる。そこで、Re富裕相の厚みは、0.5μm〜2.0μmと定めた。
ここで、本発明におけるRe富裕相とは、含有元素の中で最もReの重量が多く占める相であるが、Reは、高温での硬さの低下や熱膨張係数が小さいので、この相をサーメットの表面に配置することで、耐熱衝撃性を高め、熱亀裂の発生が抑えられる効果がある。また、最外層へ熱膨張係数の小さいRe富裕相を配置することでサーメット表面に圧縮応力が発生し、耐欠損性が向上する。ところが、Reの含有量が40wt%未満であると、耐熱衝撃性を高め、高温での塑性変形を抑える効果が十分でないため、Reの含有量は、40wt%以上と定めた。また、サーメットの表面に析出させるRe富裕相の厚みが、0.5μm未満であると前述したようなRe富裕相のもつ作用が十分に奏されず、一方、2.0μmを超えるとチッピングが発生しやすくなる。そこで、Re富裕相の厚みは、0.5μm〜2.0μmと定めた。
結合相:
サーメットを構成する硬質相、Re富裕相以外の相は、結合相および不可避不純物であり、その主成分は、Coおよび/またはNiとする。ここで、Coおよび/またはNiを主成分とする理由は、これらの元素には、焼結性を向上させ、結合相を形成して、サーメットの強度を向上させる作用があるからである。
サーメットを構成する硬質相、Re富裕相以外の相は、結合相および不可避不純物であり、その主成分は、Coおよび/またはNiとする。ここで、Coおよび/またはNiを主成分とする理由は、これらの元素には、焼結性を向上させ、結合相を形成して、サーメットの強度を向上させる作用があるからである。
Reの含有量:
Ti基サーメット全体に含まれるReの含有割合は、サーメット全体に対して、3〜20wt%であることが好ましい。その理由は、3wt%未満であると、耐熱衝撃性を高め、高温での塑性変形を抑えるというReが有する効果が十分に発揮されないため好ましくない。一方、20wt%を超えると、著しい焼結性の低下を招き、かつ、相対的にサーメットの硬質材料の含有量が減少するため、サーメットの強度が低下するため好ましくないからである。
また、硬質相の周辺部に含まれるReの含有割合は、周辺部全体に対して、0.5〜3.0wt%であることが好ましい。その理由は、硬質相の周辺部に含まれるReの合量が、周辺部全体に対して、0.5質量%未満であると、十分な結合相との親和性が得られず耐欠損性の向上が見られないため好ましくない。一方、3.0質量%を超えると、耐欠損性の低下を招くため、好ましくないからである。
さらに、結合相中のRe含有割合が、結合相全体に対してが、10〜30wt%であることが好ましい。その理由は、結合相に含まれるReの含有割合が、10wt%未満であると、
十分な耐熱衝撃性の向上を得る事が出来ないため好ましくない。一方、30wt%を超えると、耐欠損性の低下を招くため、好ましくないからである。
Ti基サーメット全体に含まれるReの含有割合は、サーメット全体に対して、3〜20wt%であることが好ましい。その理由は、3wt%未満であると、耐熱衝撃性を高め、高温での塑性変形を抑えるというReが有する効果が十分に発揮されないため好ましくない。一方、20wt%を超えると、著しい焼結性の低下を招き、かつ、相対的にサーメットの硬質材料の含有量が減少するため、サーメットの強度が低下するため好ましくないからである。
また、硬質相の周辺部に含まれるReの含有割合は、周辺部全体に対して、0.5〜3.0wt%であることが好ましい。その理由は、硬質相の周辺部に含まれるReの合量が、周辺部全体に対して、0.5質量%未満であると、十分な結合相との親和性が得られず耐欠損性の向上が見られないため好ましくない。一方、3.0質量%を超えると、耐欠損性の低下を招くため、好ましくないからである。
さらに、結合相中のRe含有割合が、結合相全体に対してが、10〜30wt%であることが好ましい。その理由は、結合相に含まれるReの含有割合が、10wt%未満であると、
十分な耐熱衝撃性の向上を得る事が出来ないため好ましくない。一方、30wt%を超えると、耐欠損性の低下を招くため、好ましくないからである。
本発明サーメット工具によれば、Ti基サーメットが、高温での硬さの低下や熱膨張係数の小さいReを主成分とするRe富裕相を表面に析出させたものであることによって、耐熱衝撃性および耐塑性変形性を向上させることができる。その結果、高温にさらされる高速切削においても長期に亘って良好な切削性能を維持することができる。
つぎに、本発明サーメット工具を実施例により具体的に説明する。
原料粉末として、いずれも0.5〜2.0μmの平均粒径を有するTiCN(質量比で、TiC/TiN=50/50)粉末、Mo2C粉末、NbC粉末、TaC粉末、WC粉末、Co粉末、Ni粉末、およびRe粉末を用意し、これら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、ボールミルで24時間湿式混合し、乾燥した後、100MPaの圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を、以下の焼結条件、すなわち、
(1)常温から表2に示す第1加熱温度まで、10Pa以下の真空雰囲気中で加熱昇温し、
(2)前記第1加熱温度から、窒素ガスを焼結炉内に導入し、表2に示す窒素ガス雰囲気中(表2では、窒素雰囲気圧力(Pa)として示す)で第2加熱温度まで加熱昇温し、
(3)前記窒素ガス雰囲気中で、表2に示す時間(表2では、第2加熱保持時間(min)として示す)だけ第2加熱温度にて加熱保持を行い、
(4)前記第2加熱温度から、表2に示す第2雰囲気ガスにて第2雰囲気圧力(表2では、第2雰囲気(Pa)として示す)で表2に示す第3加熱温度まで、同じく表2に示す冷却速度(℃/min)にて冷却を行い、
(5)前記第3加熱温度から不活性ガスとしてArガスを用い、15℃/min以上の冷却速度で室温にまで冷却する。
以上(1)〜(5)の工程からなる条件で焼結し、表3に示されるISO規格・CNMG120408のインサート形状をもった本発明サーメット工具1〜10をそれぞれ製造した。
(1)常温から表2に示す第1加熱温度まで、10Pa以下の真空雰囲気中で加熱昇温し、
(2)前記第1加熱温度から、窒素ガスを焼結炉内に導入し、表2に示す窒素ガス雰囲気中(表2では、窒素雰囲気圧力(Pa)として示す)で第2加熱温度まで加熱昇温し、
(3)前記窒素ガス雰囲気中で、表2に示す時間(表2では、第2加熱保持時間(min)として示す)だけ第2加熱温度にて加熱保持を行い、
(4)前記第2加熱温度から、表2に示す第2雰囲気ガスにて第2雰囲気圧力(表2では、第2雰囲気(Pa)として示す)で表2に示す第3加熱温度まで、同じく表2に示す冷却速度(℃/min)にて冷却を行い、
(5)前記第3加熱温度から不活性ガスとしてArガスを用い、15℃/min以上の冷却速度で室温にまで冷却する。
以上(1)〜(5)の工程からなる条件で焼結し、表3に示されるISO規格・CNMG120408のインサート形状をもった本発明サーメット工具1〜10をそれぞれ製造した。
また、比較の目的で、表4に示される配合組成の圧粉体を、表2に示される種々の条件で焼結し、表5に示されるISO規格・CNMG120408のインサート形状をもった比較サーメット工具1〜10をそれぞれ製造した。
この結果、得られた本発明サーメット工具1〜10および比較サーメット工具1〜10について、これらを構成するサーメットの断面をエネルギー分散型X線分析装置(EDS)を備えた走査型電子顕微鏡(SEM))で観察し、サーメット表面のRe富裕相の平均層厚(μm)を計測するともに、サーメット全体に含まれるRe含有量(wt%)を求めた。さらに、Re富裕相中に含まれるReの含有量(wt%)、硬質相の周辺部、Re富裕相および金属結合相中のそれぞれの全質量を100とした時の、それぞれに含まれるReの含有割合(質量%)をエネルギー分散型X線分析装置(EDS)を備えた透過型電子顕微鏡(TEM)により求めた。その結果をそれぞれ表3、5に示した。
つぎに、本発明サーメット工具1〜10および比較サーメット工具1〜10について、これらをいずれも工具鋼製バイトの先端部に固定治具にてねじ止めした状態で、
被削材:JIS・SCM440の丸棒、
切削速度: 400m/min.、
切り込み: 1.5mm、
送り: 0.2mm/rev.、
切削時間: 5分、
の条件(切削条件A)での合金鋼の湿式連続高速切削加工試験(通常の切削速度および送りは、それぞれ、200m/min.、0.15 mm/rev.)、
被削材:JIS/FC300)の丸棒、
切削速度: 400m/min.、
切り込み: 2 mm、
送り: 0.3mm/rev.、
切削時間: 20分、
の条件(切削条件B)での鋳鉄の乾式連続高速切削加工試験(通常の切削速度および送りは、それぞれ、300m/min.、0.2mm/rev.)、
被削材:JIS・SCM440の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度: 300m/min.、
切り込み: 1.5mm、
送り: 0.2mm/rev.、
切削時間: 10分、
の条件(切削条件C)での合金鋼の湿式連続高速切削加工試験(通常の切削速度および送りは、それぞれ、200m/min.、0.1mm/rev.)、
を行い、いずれの高速切削加工試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。この測定結果を、表6に示した。
被削材:JIS・SCM440の丸棒、
切削速度: 400m/min.、
切り込み: 1.5mm、
送り: 0.2mm/rev.、
切削時間: 5分、
の条件(切削条件A)での合金鋼の湿式連続高速切削加工試験(通常の切削速度および送りは、それぞれ、200m/min.、0.15 mm/rev.)、
被削材:JIS/FC300)の丸棒、
切削速度: 400m/min.、
切り込み: 2 mm、
送り: 0.3mm/rev.、
切削時間: 20分、
の条件(切削条件B)での鋳鉄の乾式連続高速切削加工試験(通常の切削速度および送りは、それぞれ、300m/min.、0.2mm/rev.)、
被削材:JIS・SCM440の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度: 300m/min.、
切り込み: 1.5mm、
送り: 0.2mm/rev.、
切削時間: 10分、
の条件(切削条件C)での合金鋼の湿式連続高速切削加工試験(通常の切削速度および送りは、それぞれ、200m/min.、0.1mm/rev.)、
を行い、いずれの高速切削加工試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。この測定結果を、表6に示した。
表3、5、6に示される結果から、本発明サーメット工具は、高速切削条件においてもすぐれた耐熱衝撃性、耐欠損性を示し、長期に亘ってすぐれた耐摩耗性を示すのに対し、比較サーメット工具は、高速切削条件においては、耐熱衝撃性、耐欠損性の少なくとも1つが十分でなく、比較的短時間で使用寿命に至ることが明らかである。
前述のように、本発明サーメット工具は、高速切削加工用の切削工具として用いた場合は勿論のこと、耐熱衝撃性、耐欠損性、耐塑性変形性が要求される各種の機械部品の材料としても好適に使用することができるので、切削加工装置の自動化、並びに切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化、各種機械部品の長寿命化に十分満足に対応できるものである。
Claims (2)
- Reを含有しTiを主成分とし、周期律表4a、5aおよび6a族の炭化物、窒化物、炭窒化物を1種または2種以上含有する硬質相、Coおよび/またはNiを主成分とする結合相、およびRe富裕相を有するTi基サーメットを工具基体とするTi基サーメット製切削工具であって、前記Re富裕相は、前記Ti基サーメット表面に形成され、走査型電子顕微鏡による断面組織観察で0.5〜2.0μmの平均層厚を有し、含有元素の中で最もReの重量が多く占める相であり、その含有割合は、Re富裕相全質量に対して40wt%以上であることを特徴とするTi基サーメット製切削工具。
- 前記ReのTi基サーメット全体に対する含有量が3〜20wt%であり、そのうち前記硬質相の周辺部に該周辺部の全質量に対して0.5〜3wt%存在し、前記結合相中に該結合相の全質量に対して10〜30wt%存在する含有することを特徴とする請求項1に記載のTi基サーメット製切削工具。
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2020055050A (ja) * | 2018-09-28 | 2020-04-09 | 三菱マテリアル株式会社 | 硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆TiN基サーメット製切削工具 |
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2012
- 2012-03-29 JP JP2012076647A patent/JP2013202753A/ja active Pending
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2020055050A (ja) * | 2018-09-28 | 2020-04-09 | 三菱マテリアル株式会社 | 硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆TiN基サーメット製切削工具 |
JP7037121B2 (ja) | 2018-09-28 | 2022-03-16 | 三菱マテリアル株式会社 | 硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆TiN基サーメット製切削工具 |
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