(実施形態1)
以下では、本実施形態のフレネルレンズ1について図1(a),(b)を参照しながら説明する。
本実施形態のフレネルレンズ1は、第一面10が平面であり、第一面10とは反対側の第二面20が複数(図示例では、3つ)のレンズ面21を有している。フレネルレンズ1は、各レンズ面21それぞれを構成する非球面の中心軸CA0,CA1,CA2を互いに異ならせてあり、1つの像面I上で各レンズ面21それぞれの焦点F(F0),F(F1),F(F2)の位置をずらしてある。なお、フレネルレンズ1で取り扱う光は、可視光に限らず、赤外光あるいは紫外光でもよい。要するに、フレネルレンズ1の材料は、このフレネルレンズ1で取り扱う光の波長に基づいて適宜の材料を採用することができる。
フレネルレンズ1は、中心レンズ部1aと、中心レンズ部1aを取り囲む複数(図示例では、2つ)の輪帯状レンズ部1bとを有している。輪帯状レンズ部1bの数は、特に限定するものではなく、3つ以上でもよい。フレネルレンズ1は、第一面10とは反対側の第二面20が複数のレンズ面21を有する集光レンズであり、中心レンズ部1aのレンズ面21が凸面となっている。要するに、フレネルレンズ1は、凸レンズに比べて厚みを薄くすることが可能な集光レンズである。
各輪帯状レンズ部1bは、第二面20側に山部11bを有している。山部11bは、中心レンズ部1a側の側面からなる立ち上がり面(非レンズ面)22と、中心レンズ部1a側とは反対側の側面からなるレンズ面21とを有している。したがって、フレネルレンズ1の第二面20は、各輪帯状レンズ部1bそれぞれにおけるレンズ面21を有している。また、フレネルレンズ1の第二面20は、中心レンズ部1aにおけるレンズ面21も有している。なお、図1(b)には、第一面10を入射面、第二面20を出射面とした場合について、光線の進行経路を細い実線で示して矢印を付してある。本実施形態のフレネルレンズ1では、図1(b)に示したように、フレネルレンズ1の第一面10に直交する方向から第一面10に入射した光線が、複数のレンズ面21ごとに異なる焦点F(F0),F(F1),F(F2)に集光されていることが分かる。
ところで、フレネルレンズ1は、各レンズ面21を構成する非球面が、それぞれ、双曲面(二葉双曲面の一方の双曲面)25の一部からなる。以下では、説明の便宜上、図1(a)のフレネルレンズ1において、3つの双曲面25にそれぞれ異なる符合を付して説明する。ここでは、中央のレンズ面21に対応するものを双曲面250、中央のレンズ面21に最も近い第1輪帯となるレンズ面21に対応するものを双曲面251、中央のレンズ面21に2番目に近い第2輪帯となるレンズ面21に対応するものを双曲面252とする。要するに、中央のレンズ面21に対応する双曲面25を除いた双曲面25のうち、中央のレンズ面21に近い側から順に数えてn(n≧1)番目の第n輪帯となるレンズ面21に対応するものを双曲面25nとする。
また、ここでは、中央のレンズ面21を構成する非球面に対応する双曲面250の中心軸CA0と、第1輪帯となるレンズ面21を構成する非球面に対応する双曲面251の中心軸をCA1、第2輪帯となるレンズ面21を構成する非球面に対応する双曲面の中心軸をCA2とする。
図1(a)のフレネルレンズ1において、双曲面250,251,252は、焦点F0,F1,F2を原点、双曲面25の中心軸CA0,CA1,CA2をz軸とし、z軸にそれぞれ直交するx軸、y軸を有する直交座標系を定義すると、下記の(1)式で表される。
ここで、フレネルレンズ1のレンズ材料の屈折率をn、レンズ面21のバックフォーカスをfとすると、(1)式のa,b,cは、(2)式、(3)式、(4)式でそれぞれ与えられる。
本実施形態のフレネルレンズ1では、双曲面250の中心軸CA0と双曲面251の中心軸CA1とを平行とし且つずらしてある。また、本実施形態のフレネルレンズ1では、双曲面250の中心軸CA0と双曲面252の中心軸CA2とを非平行としてある。つまり、フレネルレンズ1は、双曲面250,251の中心軸CA0,CA1と双曲面252の中心軸CA2とを傾けてある。
ここで、本実施形態のフレネルレンズ1では、第一面10を平面とし、双曲面250,251それぞれの中心軸CA0,CA1を第一面10上の互いに異なる点の法線上に設け、双曲面252の中心軸CA2を第一面10上の更に異なる点の法線に対して斜交させてある。要するに、フレネルレンズ1は、双曲面250,251それぞれの中心軸CA0,CA1を第一面10に対して直交させ。双曲面252の中心軸CA2を第一面10に対して斜交させてある。なお、双曲面250,251の中心軸CA0,CA1は、平行となっている。
フレネルレンズ1は、第一面10上の点と、その点における法線がレンズ面21に交差する交点とを結ぶ方向を、レンズ厚さ方向と規定した場合、第一面10が平面であれば、第一面10上の各点における法線に沿った方向がレンズ厚さ方向となる。したがって、図1(a),(b)の各々においては、上下方向が、レンズ厚さ方向となる。なお、レンズ厚さ方向に沿った1つの仮想直線を含む断面形状(ここでは、第一面10の法線を含む断面形状)において、第一面10に平行な面と各レンズ面21とのなす角度は鈍角であり、第一面10に平行な面と各立ち上がり面22とのなす角度は略直角である。
各山部11bの高さおよび隣り合う山部11bの頂点間の間隔は、フレネルレンズ1において集光対象として取り扱う光(可視光、赤外光、紫外光などの電磁波)の波長以上の値に設定する必要がある。例えば、波長10μmの赤外光(赤外線)を集光対象とする場合には、各山部11bの高さおよび隣り合う山部11bの頂点間の間隔を10μm以上とする必要がある。
また、フレネルレンズ1は、第一面10から30cmだけ離れたところから意識せずに眺めた場合に第二面20側のレンズ模様を視認できないことを要求されるような場合、隣り合う山部11b間の間隔を0.3mm以下とすることが好ましい。一方、隣り合う山部11b間の間隔を小さくするほど山部11の数が増えるので、隣り合う山部11b間の間隔は、例えば0.1〜0.3mmの範囲で設定することが、より好ましい。
フレネルレンズ1の材料であるレンズ材料については、このフレネルレンズ1で取り扱う光の波長などに応じて適宜選択すればよく、例えば、プラスチック(ポリエチレン、アクリル樹脂など)、ガラス、シリコン、ゲルマニウムなどから、適宜選択すればよい。例えば、光の波長が赤外線の波長域にある場合には、例えば、ポリエチレン、シリコン、ゲルマニウムなどを選択すればよく、光の波長が可視光の波長域にある場合には、例えば、アクリル樹脂、ガラスなどを選択すればよい。また、光の波長が紫外光の波長域にある場合には、例えば、ガラスなどを選択すればよい。
本実施形態のフレネルレンズ1は、レンズ面21それぞれを構成する非球面の中心軸CA0,CA1,CA2を互いに異ならせてあり、1つの像面I上で各レンズ面21それぞれの焦点F(F0),F(F1),F(F2)の位置をずらしてある。これにより、本実施形態のフレネルレンズ1では、1つの像面I上で結像される像をぼかすことなく像の大きさを大きくすることが可能となる。
(実施形態2)
以下では、本実施形態のフレネルレンズ1について図2(a),(b)を参照しながら説明する。なお、実施形態1と同様の構成要素は同一の符号を付して説明を適宜省略する。
本実施形態のフレネルレンズ1は、複数のレンズ面21それぞれを構成する非球面の中心軸CA0,CA1,CA2を互いに非平行としてある。本実施形態のフレネルレンズ1は、各レンズ面21を構成する非球面が、それぞれ双曲面25の一部からなる点は実施形態1と同様であるが、中心軸CA0,CA1,CA2の位置などが相違する。
ところで、実施形態1のフレネルレンズ1では、第一面10上の各点の法線のうち、各レンズ面21に交差する任意の法線と、当該法線が交差するレンズ面21に対応する非球面の中心軸CA0,CA1,CA2の1つである中心軸CA2が非平行である。これに対して、本実施形態のフレネルレンズ1では、第一面10上の各点の法線のうち、各レンズ面21に交差する任意の法線と、当該法線が交差するレンズ面21に対応する非球面の中心軸CA0,CA1,CA2の全てが非平行である。すなわち、本実施形態のフレネルレンズ1では、全ての中心軸CA0,CA1,CA2のいずれも第一面10に斜交している。
図2(b)には、第一面10を入射面、第二面20を出射面とした場合について、光線の進行経路を細い実線で示して矢印を付してある。本実施形態のフレネルレンズ1では、図2(b)に示したように、フレネルレンズ1の第一面10の法線に斜交する方向から第一面10に入射した光線が、複数のレンズ面21ごとに異なる焦点F(F0),F(F1),F(F2)に集光されていることが分かる。
フレネルレンズ1は、各レンズ面21を構成する非球面が、それぞれ双曲面25(250),25(251),25(252)の一部からなり、第一面10上の各点の法線のうちレンズ面21に交差する任意の法線と、当該任意の法線が交差するレンズ面21それぞれに対応する双曲面25の中心軸CA0,CA1,CA2とが、非平行である。ここで、本実施形態のフレネルレンズ1では、第一面10が平面なので、双曲面25の中心軸CA0,CA1,CA2は、第一面10上の各点の各々における法線に対して斜交する。
以下では、説明の便宜上、図2(a)のフレネルレンズ1において、第一面10の点A1,A2,B1,B2,C1,C2それぞれにおける法線と第二面20との交点をA1’,A2’,B1’,B2’,C1’,C2’とし、第一面10の点A1,A2,B1,B2,C1,C2それぞれにおける法線をA1−A1’,A2−A2’,B1−B1’,B2−B2’,C1−C1’,C2−C2’と称する。
また、以下では、中央のレンズ面21に交差する法線A1−A1’,A2−A2’と双曲面250の中心軸CA0とのなす角度をθ0(図示せず)とする。また、以下では、中央のレンズ面21に最も近い第1輪帯となるレンズ面21に交差する法線B1−B1’,B2−B2’と双曲面251の中心軸CA1とのなす角度をθ1とする。また、以下では、中央のレンズ面21に2番目に近い第2輪帯となるレンズ面21に交差する法線C1−C1’,C2−C2’と双曲面25の中心軸CA2とのなす角度をθ2とする。フレネルレンズ1は、θ0<θ1<θ2となっている。要するに、フレネルレンズ1は、第一面10上の各点における法線と、その法線が交わる第二面20の各レンズ面21を構成する非球面の中心軸CA0,CA1,CA2とがなす角度が、外側の輪帯状レンズ部1bほど大きくなる。
本実施形態のフレネルレンズ1では、実施形態1と同様、レンズ面21それぞれを構成する非球面の中心軸CA0,CA1,CA2を互いに異ならせてあり、1つの像面I上で各レンズ面21それぞれの焦点F(F0),F(F1),F(F2)の位置をずらしてある。これにより、本実施形態のフレネルレンズ1では、1つの像面I上で結像される像をぼかすことなく像の大きさを大きくすることが可能となる。
また、本実施形態のフレネルレンズ1は、第一面10上の各点の法線のうち双曲面25の一部からなるレンズ面21に交差する任意の法線と、当該任意の法線が交差するレンズ面21に対応する双曲面25の中心軸とが、非平行である。しかして、本実施形態のフレネルレンズ1では、外界から第一面10へ斜め入射する入射光を効率良く集光することが可能となる。
本実施形態のフレネルレンズ1を備えた光学検出器として、図3(a),(b)に示す構成のセンサ装置を例示する。
このセンサ装置では、プリント配線板からなる回路基板8に、パッケージ4が実装されている。このパッケージ4は、円盤状のステム5と、このステム5に接合される有底円筒状のキャップ6と、このキャップ6の底部に形成された開口部6aを閉塞するように配置され所望の光線を透過する機能を有する光線透過部材7とで構成されている。
また、パッケージ4内には、複数の受光エレメントを有する光学検知素子2を保持した素子保持部材(例えば、MID基板など)3が収納されている。そして、センサ装置は、レンズアレイ100を有するカバー部材9が、パッケージ4を覆うように回路基板8の一表面側に配置されている。
光学検知素子2は、2つの受光エレメントを有するデュアルタイプの焦電素子からなる赤外線センサ素子により構成してある。赤外線センサ素子は、デュアルタイプの焦電素子に限らず、例えば、4つの受光エレメントを有するクワッドタイプの焦電素子でもよい。光学検知素子2が焦電素子からなる赤外線センサ素子の場合、受光エレメントは、例えば、一対の電極と、当該一対の電極間に挟まれた焦電体とからなる受光部で構成され、一対の電極のうち少なくともフレネルレンズ1側の電極がNiCrなどの赤外線を吸収可能な電極材料により形成されたものとすることができる。焦電体は、バルクでもよいし、薄膜でもよい。また、赤外線センサ素子は、受光エレメントがサーモパイルや抵抗ボロメータなどにより構成されたものでもよい。また、光学検知素子2は、受光エレメントがフォトダイオードにより構成されたものでもよい。受光エレメントの数は、2つや4つに限らず、複数であればよい。
光学検知素子2として赤外線センサ素子を用いる場合には、光線透過部材7として、シリコン基板やゲルマニウム基板などを用いることが好ましい。また、この場合、パッケージ4は、ステム5とキャップ6との両方とも金属材料により形成し、光線透過部材7とキャップ6とを導電性材料により接合することが好ましい。なお、この場合、カバー部材9とパッケージ4との間の空間の空気層が、断熱層として機能する。
レンズアレイ100は、複数枚のレンズ100aが一面(図示例では、一平面)上で組み合わされたものであり、各レンズ100aそれぞれが、フレネルレンズ1により構成されている。ただし、隣り合うフレネルレンズ1は、重なり合うように配置されており、輪帯状レンズ部1b(図2(a)参照)の一部を切り欠いた形状となっている。また、各フレネルレンズ1は、各レンズ21それぞれを構成する非球面の中心軸CA0,CA1,CA2が光学検知素子2の受光面を通るように設計されている。
センサ装置の検知エリアは、赤外線センサ素子とレンズアレイ100とで決まる。したがって、センサ装置の検知エリアには、各フレネルレンズ1のレンズ面21ごとに、受光エレメントの数の検知ビームが設定される。検知ビームは、赤外線センサ素子への赤外線の入射量がピーク付近になる小範囲であって、検知対象の物体からの赤外線を検出する有効領域であり、検出ゾーンとも呼ばれる。
図4は、光学検知素子2がデュアルタイプの焦電素子からなる赤外線センサ素子の場合の所望の検知面190における検知ビーム200を模式的に示したものであり、検知ビーム200が対応する受光エレメントの極性を、“+”、“−”の符号で示してある。要するに、検知ビーム200には、受光エレメントに1対1で対応した極性がある。
赤外線センサ素子は、2つの矩形状の受光エレメントが平面視において離間して配置されている。検知面190における検知ビーム200の形状は、その検知ビーム200に対応する受光エレメントと略相似形である。本実施形態のセンサ装置では、上述のフレネルレンズ1を備えているので、同一の受光エレメントに対応する複数の検知ビーム200が重なる。これにより、センサ装置は、検知面190における不感エリアを低減することが可能となる。
また、本実施形態のセンサ装置は、異なる受光エレメントに対応する検知ビーム200同士が重ならないようにフレネルレンズ1の各レンズ面21を設計してある。これにより、センサ装置は、光学検知素子2としてデュアルタイプの焦電素子やクワッドタイプの焦電素子などのように極性の異なる受光エレメントが並んで配置されたものを用いた場合に、異なる極性の受光エレメントに対応する検知ビーム200が重なった領域が不感エリアとなってしまうのを防止することが可能となる。
しかして、本実施形態の光学検出器であるセンサ装置では、光学検知素子2として例えばデュアルタイプやクワッドタイプの焦電素子からなる赤外線センサ素子を用いた場合でも、検知面190上の不感エリアを低減することが可能となる。
なお、図4には、3×2個の検知ビーム200しか図示していないが、図3(a),(b)に示したセンサ装置では、レンズアレイ100が8枚のフレネルレンズ1により構成されているので、検知エリア内に8×3×2個の検知ビームが設定される。レンズアレイ100におけるフレネルレンズ1の数は、特に限定するものではない。
本実施形態の光学検知器において、図2(a)のフレネルレンズ1の代わりに、実施形態1で説明したフレネルレンズ1を用いてもよい。
(実施形態3)
以下では、本実施形態のフレネルレンズ1について図5を参照しながら説明する。なお、実施形態2と同様の構成要素は同一の符号を付して説明を適宜省略する。
図5(b)には、第一面10を入射面、第二面20を出射面とした場合について、光線の進行経路を細い実線で示して矢印を付してある。本実施形態のフレネルレンズ1では、図5(b)に示したように、フレネルレンズ1の第一面10の法線に斜交する方向から第一面10に入射した光線が、複数のレンズ面21ごとに異なる焦点F(F0),F(F1),F(F2)に集光されていることが分かる。
ところで、本実施形態のフレネルレンズ1は、各レンズ面21を構成する非球面が、それぞれ、楕円錐30の側面の一部からなる。このフレネルレンズ1は、第一面10上の各点の法線のうち楕円錐30の側面の一部からなるレンズ面21に交差する任意の法線と、当該任意の法線が交差するレンズ面21に対応する楕円錐30の中心軸とが、非平行である(つまり、傾いている)。本実施形態のフレネルレンズ1では、各レンズ面21を構成する非球面の中心軸CA0,CA1,CA2が、楕円錐30(300),30(301),30(302)の中心軸により構成されるものとする。
ここにおいて、各楕円錐30は、第二面20側に頂点Pが位置するとともに第一面10側に底面(図示せず)が位置している。また、本実施形態のフレネルレンズ1では、第一面10が平面なので、楕円錐30の中心軸は、第一面10上の各点の各々における法線に対して斜交する。また、第一面10上の点と、その点における法線がレンズ面21に交差する交点とを結ぶ方向を、レンズ厚さ方向と規定した場合、第一面10が平面であれば、第一面10上の各点における法線に沿った方向がレンズ厚さ方向となる。したがって、図5(a),(b)の各々においては、上下方向が、レンズ厚さ方向となる。よって、フレネルレンズ1は、各レンズ面21それぞれが、第二面20側に頂点Pが位置するとともに第一面10側に底面が位置し且つ中心軸がレンズ厚さ方向に対して斜交する楕円錐30の側面の一部により構成されている。なお、レンズ厚さ方向に沿った1つの仮想直線を含む断面形状(ここでは、第一面10の法線を含む断面形状)において、第一面10に平行な面と各レンズ面21とのなす角度は鈍角であり、第一面10に平行な面と各立ち上がり面22とのなす角度は略直角である。
ところで、実施形態2のフレネルレンズ1では、各レンズ面21を構成する非球面の中心軸CA0,CA1,CA2が入射面である第一平面10の法線に対して斜交している。このため、実施形態2のフレネルレンズ1では、各レンズ面21が第一面10の法線に対して回転対称ではない。したがって、実施形態2のフレネルレンズ1やフレネルレンズ1用の金型は、旋盤などによる回転加工で製作することが困難である。
そこで、実施形態2のフレネルレンズ1やフレネルレンズ1用の金型の製作時には、多軸制御の加工機を用い、ノーズ半径(コーナ半径ともいう)が数μmの鋭利なバイト(工具)の刃先のみを工作物に点接触させて微小ピッチで切削加工を行うことで各レンズ面21あるいは各曲面を形成する必要がある。工作物は、フレネルレンズ1を直接形成するための基材や、金型を形成するための基材である。このため、実施形態2のフレネルレンズ1では、フレネルレンズ1やフレネルレンズ1用の金型の製作における加工時間が長くなり、フレネルレンズ1のコストアップの要因となってしまう。
これに対して、フレネルレンズの入射面である平面の法線を含む断面形状において各レンズ面の断面形状が直線であれば、バイトを工作物に対して傾けて刃の側面を線接触させて切削加工を行うことが可能となる。これにより、フレネルレンズは、レンズ面あるいはレンズ面に応じた曲面の形成が可能であるため、加工時間を大幅に短縮することが可能となる。ここで、出射面における各レンズ面の形状が入射面の法線を回転軸として回転対称となるフレネルレンズにおいては、各レンズ面を円錐台の側面により近似することで、各レンズ面の断面形状を直線とできることが知られている(例えば、米国特許第4787722号明細書)。
ところで、出射面における各レンズ面の形状が入射面の法線を回転軸として回転対称となるフレネルレンズにおいて、各レンズ面を円錐台の側面により近似したものでは、軸外収差が発生してしまう。
本願発明者らは、外界から第一面10へ斜め入射する入射光を利用する場合に軸外収差の発生を抑制することが可能であり、且つ、低コスト化が可能であるという課題を解決するために、まず、第二面20を、中心軸が第一面10の法線に対して斜交する複数の双曲面(二葉双曲面の一方の双曲面)25それぞれの一部により構成した基本構造に関して、レンズ厚さ方向に沿った1つの仮想直線を含む断面形状において、複数の双曲面25それぞれの上記一部を直線で近似することを考えた。
ここで、双曲面25は、当該双曲面25の回転軸に直交する断面上の各点における接線の集合が円錐となる。したがって、出射面における各レンズ面の形状が入射面の法線を回転軸として回転対称となるフレネルレンズにおいては、各レンズ面を円錐の側面の一部により近似することができる。
ところで、任意の平面の中心を原点として、当該任意の平面において互いに直交するx軸とy軸とを規定し、当該任意の平面に直交するz軸を規定した直交座標系においては、円錐の任意の点の座標を(x,y,z)とし、b,cを係数として、円錐の方程式は下記の標準形で表される。ここで、係数cは、zに無関係な定数である。
この円錐をxy平面に平行な2つの面で切り取った円錐台では、上述の基準構造における各双曲面25それぞれの上記一部を近似することはできない。
一方、双曲面25は、当該双曲面25の回転軸に垂直でない断面上の各点における接線40の集合が楕円錐となる。ここで、本願発明者らは、上述の基準構造における双曲面25を、双曲面25の主軸に斜交する平面と双曲面25との交線上の各点において、双曲面25と接する楕円錐30で近似できる点に着目し、各レンズ面21それぞれを、第二面20側に頂点Pが位置するとともに第一面10側に底面(図示せず)が位置し且つ中心軸(図示せず)がレンズ厚さ方向に対して斜交する楕円錐30の側面の一部により構成することを考えた。
図5(a)のフレネルレンズ1において、それぞれ楕円錐30の一部により構成されるレンズ面21に着目すれば、楕円錐30が、その楕円錐30に内接する双曲面25をもち、楕円錐30と双曲面25との交線上の各点においては両者の接線の傾きが一致する。これにより、楕円錐30と双曲面25との交線上の各点を通る光線は、双曲面25の回転軸上の一点に集光される。本実施形態のフレネルレンズ1では、複数のレンズ面21のうちの少なくとも1つのレンズ面21を、楕円錐30と双曲面25の交線を含むように楕円錐30の一部を切り取った形状とすることによって、外界から第一面10へ斜め入射する入射光を利用する場合に軸外収差の発生を抑制することが可能となり、且つ、低コスト化が可能となる。ここにおいて、フレネルレンズ1は、山部11bの高さが低いほど、この山部11bを通る光線を一点に集光しやすくなるので、楕円錐30と楕円錐30に内接する双曲面25の交線が、山部11bと交わることが望ましい。
各山部11bの高さおよび隣り合う山部11bの頂点間の間隔は、フレネルレンズ1において取り扱う光(集光対象の光)の波長以上の値に設定する必要がある。例えば、波長10μmの赤外線を集光対象とする場合には、各山部11bの高さおよび隣り合う山部11bの頂点間の間隔を10μm以上とする必要がある。また、フレネルレンズ1は、第一面10から30cmだけ離れたところから意識せずに眺めた場合に第二面20側のレンズ模様を視認できないことを要求されるような場合、隣り合う山部11b間の間隔を0.3mm以下とすることが好ましい。一方、隣り合う山部11b間の間隔を小さくするほど山部11の数が増えるので、隣り合う山部11b間の間隔は、例えば0.1〜0.3mmの範囲で設定することが、より好ましい。
本実施形態のフレネルレンズ1では、レンズ厚さ方向に直交し(つまり、平面からなる第一面10に平行で)且つ輪帯状レンズ部1bにおける山部11bの谷からの高さが山部11bの最大高さの1/2となる平面15上に、楕円錐30と楕円錐30に内接する双曲面25との交線が存在する。したがって、本実施形態のフレネルレンズ1では、図5(b)に示すように、レンズ面21と平面15との交点上を通る光線を、焦点Fに集光する。
一般の楕円錐の方程式は、任意の平面の中心を原点として、当該任意の平面において互いに直交するx軸とy軸とを規定し、当該任意の平面に直交するz軸を規定した直交座標系において、楕円錐の任意の点の座標を(x,y,z)とし、a,b,cを係数として、下記の標準形で表される。ここで、係数cは、zに無関係な定数である。
以下では、説明の便宜上、図5(a)のフレネルレンズ1において、3つの楕円錐30にそれぞれ異なる符合を付して説明する。ここでは、中央のレンズ面21に対応するものを楕円錐300、中央のレンズ面21に最も近い第1輪帯となるレンズ面21に対応するものを楕円錐301、中央のレンズ面21に2番目に近い第2輪帯となるレンズ面21に対応するものを楕円錐302とする。要するに、ここでは、中央のレンズ面21に近い側から順に数えてn(n≧1)番目の第n輪帯となるレンズ面21に対応するものを楕円錐30nとする。また、ここでは、各楕円錐300,301,302それぞれの頂点P,P,Pを頂点P0,P1,P2とし、各楕円錐300,301,302それぞれの中心軸をCA0,CA1,CA2とする。要するに、ここでは、第n輪帯となるレンズ面21に対応する楕円錐30nの頂点をPnとし、その楕円錐30nの中心軸をCAnとする。そして、各楕円錐300,301,302それぞれについて、頂点P0,P1,P2を原点として、中心軸CA0,CA1,CA2をz軸とし、z軸に直交する断面における楕円の長径方向に沿ってx軸、短径方向に沿ってy軸を規定した直交座標系を定義する。すると、各楕円錐300,301,302の式は、各直交座標系において、上述の(6)式で表すことができる。なお、図5(a)では、楕円錐300,301,302に内接する双曲面25,25をそれぞれ双曲面250,251,252としてある。
また、第一面10上の各点の各々における法線に対して、その法線が交わる第二面20のレンズ面21の中心軸は傾いている。図5(a)では、説明の便宜上、第一面10の点A1、A2,B1,B2,C1,C2それぞれにおける法線と第二面20との交点をA1’,A2’,B1’,B2’,C1’,C2’とし、第一面10の点A1、A2,B1,B2,C1,C2それぞれにおける法線をA1−A1’,A2−A2’,B1−B1’,B2−B2’,C1−C1’,C2−C2’と称する。
本実施形態のフレネルレンズ1では、レンズ厚さ方向に沿った1つの仮想直線を含む断面形状(第一面10の法線を含む断面形状)において、各レンズ面21が直線である。これにより、本実施形態のフレネルレンズ1では、バイトを工作物(フレネルレンズ1を直接形成するための基材や、金型を形成するための基材)に対して傾けて刃の側面を線接触させて切削加工を行うことで、レンズ面21あるいはレンズ面21に応じた曲面の形成が可能となる。したがって、本実施形態のフレネルレンズ1では、フレネルレンズ1やフレネルレンズ1用の金型の製作時においてバイトによる工作物の加工時間を短縮することが可能となる。フレネルレンズ1の材料であるレンズ材料については、このフレネルレンズ1で取り扱う光の波長などに応じて適宜選択すればよく、例えば、プラスチック(ポリエチレン、アクリル樹脂など)、ガラス、シリコン、ゲルマニウムなどから、適宜選択すればよい。例えば、光線の波長が赤外線の波長域にある場合には、ポリエチレン、シリコン、ゲルマニウムなどを選択すればよく、光線の波長が可視光の波長域にある場合には、アクリル樹脂、ガラスなどを選択すればよい。また、金型の材料は特に限定するものではないが、例えば、リン青銅などを採用することができる。なお、金型を用いてフレネルレンズ1を成形する場合には、例えば、射出成形法や圧縮成形法などにより成形すればよい。
以上説明した本実施形態のフレネルレンズ1は、第一面10が平面であり、第二面20が複数のレンズ面21を有するものであり、各レンズ面21それぞれが、第二面20側に頂点Pが位置するとともに第一面10側に底面が位置し且つ中心軸がレンズ厚さ方向に対して斜交する楕円錐30の側面の一部により構成されている。ここで、本実施形態のフレネルレンズ1は、第一面10上の各点の法線のうち楕円錐30の側面の一部からなるレンズ面21に交差する任意の法線と、当該任意の法線が交差するレンズ面21に対応する楕円錐30の中心軸とが、非平行である。しかして、本実施形態のフレネルレンズ1では、外界から第一面10へ斜め入射する入射光を利用する場合に軸外収差の発生を抑制することが可能であり、且つ、低コスト化が可能となる。なお、フレネルレンズ1は、少なくとも各レンズ面21のうちの1つを、楕円錐30の側面の一部により構成することにより、外界から第一面10へ斜め入射する入射光を利用する場合に軸外収差の発生を抑制することが可能であり、且つ、低コスト化が可能となる。
また、本実施形態のフレネルレンズ1では、実施形態1と同様、各レンズ面21それぞれを構成する非球面の中心軸CA0,CA1,CA2を互いに異ならせてあり、1つの像面I上で各レンズ面21それぞれの焦点F(F0),F(F1),F(F2)の位置をずらしてある。これにより、本実施形態のフレネルレンズ1では、1つの像面I上で結像される像をぼかすことなく像の大きさを大きくすることが可能となる。
本実施形態のフレネルレンズ1を実施形態2の光学検知器におけるフレネルレンズ1の代わりに用いてもよい。
(実施形態4)
以下では、本実施形態のフレネルレンズ1について図6(a),(b)を参照しながら説明する。
本実施形態のフレネルレンズ1の基本構成は実施形態3と略同じであり、複数のレンズ面21のうち中央のレンズ面21を構成する非球面を、双曲面25の一部としてある点が相違する。なお、実施形態3と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
図6(b)には、第一面10を入射面、第二面20を出射面とした場合について、光線の進行経路を細い実線で示して矢印を付してある。本実施形態のフレネルレンズ1では、図6(b)に示したように、フレネルレンズ1の第一面10の法線に斜交する方向から第一面10に入射した光線が、複数のレンズ面21ごとに異なる焦点F(F0),F(F1),F(F2)に集光されていることが分かる。
実施形態3のフレネルレンズ1は、複数のレンズ面21の全てを楕円錐30の一部により構成することが可能である。しかしながら、複数のレンズ面21の全てを楕円錐30の一部により構成した場合には、中心レンズ部1aのレンズ面21が楕円錐300の頂点P0を含んでしまい、この頂点P0において曲面が不連続となるため、頂点P0を通る光線が焦点F(F0)に集光されいくい。
これに対して、本実施形態のフレネルレンズ1では、複数のレンズ面21のうち中央のレンズ面21、言い換えれば、中心レンズ部1aのレンズ面21を、上述の双曲面25の一部としてある。
しかして、本実施形態のフレネルレンズ1は、実施形態3のフレネルレンズ1に比べて、集光性能を向上させることが可能となる。また、本実施形態のフレネルレンズ1を実施形態2の光学検知器におけるフレネルレンズ1の代わりに用いた場合には、感度を向上させることが可能となる。
中心レンズ部1aのレンズ面21が双曲面25の一部である場合、フレネルレンズ1用の金型の製作にあたっては、バイトのすくい面をレンズ面21に応じた曲面に対して垂直となるように傾けながら動かすことにより加工できる。この場合は、バイトのノーズ半径が、双曲面25の曲率半径よりも小さければ加工できるので、中央レンズ部1aのレンズ面21が双曲面25の一部であっても加工時間を短縮することが可能となる。
フレネルレンズ1は、中心レンズ部1aのレンズ面21が、双曲面25に限らず、対称軸がレンズ厚さ方向に対して斜交し且つ曲率が連続的に変化する非球面であれば、実施形態3のフレネルレンズ1に比べて、集光性能を向上させることが可能となる。要するに、フレネルレンズ1は、複数のレンズ面21のうち中央のレンズ面21を、曲率が連続的に変化する非球面により構成することが好ましい。そして、フレネルレンズ1は、第一面10上の各点の法線のうち非球面により構成される中央のレンズ面21に交差する任意の法線と、当該任意の法線が交差する中央のレンズ面21に対応する非球面の対称軸(非球面が双曲面25の一部の場合には双曲面25の中心軸)とが、非平行である(つまり、傾いている)ことが好ましい。これにより、フレネルレンズ1は、集光性能を向上させることが可能となる。ここにおいて、フレネルレンズ1は、この非球面にとっての対称軸と、中央のレンズ面21を第一面10の中心軸に平行な方向へ投影したときの第一面10での投影領域における各点の法線とが、非平行であればよい。
本実施形態のフレネルレンズ1は、実施形態3のフレネルレンズ1と同様に、楕円錐30と楕円錐30に内接する双曲面25との交線が、山部11bと交わることが望ましい。図6(a)のフレネルレンズ1では、レンズ厚さ方向に直交し(つまり、平面からなる第一面10に平行で)且つ輪帯状レンズ部1bにおける山部11bの谷からの高さが山部11bの最大高さの1/2となる平面15上に、楕円錐30と楕円錐30に内接する双曲面25の交線が存在する。したがって、本実施形態のフレネルレンズ1では、図6(b)に示すように、各レンズ面21と平面15との交点上を通る光線を、それぞれ、焦点F(F0),F(F1),F(F2)に集光する。
図6(a)のフレネルレンズ1において、中心レンズ部1aのレンズ面21に対応する双曲面25は、焦点Fを原点、双曲面25の中心軸CA0をz軸とし、z軸にそれぞれ直交するx軸、y軸を有する直交座標系を定義すると、上述の(1)式で表される。
また、各楕円錐301,302は、それぞれ、頂点P1,P2を原点として、中心軸CA1,CA2をz軸とし、z軸に直交する断面における楕円の長径方向に沿ってx軸、短径方向に沿ってy軸を規定した直交座標系を定義すると、上述の(6)式で表すことができる。
なお、第一面10に対して入射角が45°で入射する光線を中心レンズ部1aから焦点F0に集光させる場合、中心レンズ部1aの双曲面25の中心軸CA0と第一面10の法線とのなす角度は、スネルの法則により、27.5°とすればよい。すなわち、中心軸CA0は、第一面10の法線に対して27.5°だけ傾ければよい。
本実施形態のフレネルレンズ1では、実施形態1と同様、レンズ面21それぞれを構成する非球面の中心軸CA0,CA1,CA2を互いに異ならせてあり、1つの像面I上で各レンズ面21それぞれの焦点F(F0),F(F1),F(F2)の位置をずらしてある。これにより、本実施形態のフレネルレンズ1では、1つの像面I上で結像される像をぼかすことなく像の大きさを大きくすることが可能となる。
本実施形態のフレネルレンズ1を実施形態2の光学検知器におけるフレネルレンズ1の代わりに用いてもよい。
(実施形態5)
以下では、本実施形態のフレネルレンズ1について図7(a),(b)を参照しながら説明する。本実施形態のフレネルレンズ1の基本構成は実施形態4と略同じであり、第一面10が第二面20側とは反対側に凸となる曲面である点が相違する。なお、本実施形態のフレネルレンズ1では、第一面10が曲率半径の大きな球面の一部からなるが、球面の一部に限定するものではない。
図7(b)には、第一面10を入射面、第二面20を出射面とした場合について、光線の進行経路を細い実線で示して矢印を付してある。本実施形態のフレネルレンズ1では、図7(b)に示したように、フレネルレンズ1の第一面10の法線に斜交する方向から第一面10に入射した光線が、複数のレンズ面21ごとに異なる焦点F(F0),F(F1),F(F2)に集光されていることが分かる。
ところで、実施形態4のフレネルレンズ1では、レンズ材料としてポリエチレンを採用した場合、第一面10が平面であるため、射出成形の冷却、固化過程で生じる収縮むらなどにより、ひけ(sink mark)や、うねりが発生し、外観が損なわれてしまう懸念がある。また、例えば図3に示した構成の光学検出器をテレビやエアコンなどの機器に搭載する場合、フレネルレンズ1は、機器の外観の一部をなすこととなる。このため、フレネルレンズ1は、機器のデザイン性を損なわないために、第一面10を、機器の表面における第一面10の周辺部と略面一となる形状とすることが、より好ましい。
そこで、レンズ材料としてポリエチレンを採用し射出成形により製作する場合、フレネルレンズ1は、図7(a)に示すように、曲率半径が大きな曲面(曲率が小さな曲面)とすることが好ましい。この場合、レンズ厚さ方向は、第一面10上の各点の各々における法線方向である。本実施形態のフレネルレンズ1では、第一面10を、第二面20側とは反対側に凸となる曲面とすることにより、うねりの方向を一方向に抑制することが可能となり、外観が損なわれるのを防止することが可能となる。なお、フレネルレンズ1は、第一面10を、非球面である双曲面25の一部からなる中央のレンズ面21よりも曲率半径が大きく且つ双曲面25とは反対側に凸となるなだらかな曲面とすることが好ましい。
本実施形態のフレネルレンズ1では、軸外収差が許容値を超えない範囲で、第一面10の曲率を設計すれば、レンズ材料としてポリエチレンを採用して、軸外収差の発生を抑制しつつ、ひけや、うねりの発生を抑制することが可能となる。さらに、フレネルレンズ1の外観面となる第一面10を、機器の表面における第一面10の周辺部と同じ曲率とすれば、機器のデザイン性を高めることが可能となる。
本実施形態のフレネルレンズ1では、実施形態4と同様に、中心レンズ部1aのレンズ面21が双曲面25の一部により構成されている。ここで、本実施形態のフレネルレンズ1では、実施形態4と同様に双曲面25の中心軸CA0を27.5°だけ傾けた場合、45°の入射角で入射する光線に対して軸外収差が大きくなる。そこで、本実施形態のフレネルレンズ1のように、第一面10が球面の一部からなる場合には、さらに、双曲面25の中心軸CA0を、この双曲面25に関して実施形態1において定義した直交座標系のxz面内で双曲面25の頂点のまわりに回転して傾けることにより、軸外収差を小さくすることが可能となる。
本実施形態のフレネルレンズ1は、実施形態3のフレネルレンズ1および実施形態4のフレネルレンズ1と同様に、楕円錐30と楕円錐30に内接する双曲面25の交線が、山部11bと交わることが望ましい。図7(a)のフレネルレンズ1では、輪帯状レンズ部1bにおける山部11bの谷からの高さが山部11bの最大高さの1/2となる平面15上に、楕円錐30と楕円錐30に内接する双曲面25との交線が存在する。したがって、本実施形態のフレネルレンズ1では、図7(b)に示すように、各レンズ面21と平面15との交点上を通る光線を、それぞれ、焦点F(F0),F(F1),F(F2)に集光する。
図7(a)のフレネルレンズ1において、中心レンズ部1aの双曲面25は、双曲面25の焦点を原点、中心軸CA0をz軸とし、z軸にそれぞれ直交するx軸、y軸を有する直交座標系権を定義すると、上述の(1)式で表される。また、各楕円錐301,302は、それぞれ、頂点P1,P2を原点として、中心軸CA1,CA2をz軸とし、z軸に直交する断面における楕円の長径方向に沿ってx軸、短径方向に沿ってy軸を規定した直交座標系を定義すると、上述の(6)式で表すことができる。
フレネルレンズ1は、中心レンズ部1aのレンズ面21に対応する双曲面25に関して、実施形態4の中心レンズ部1aの双曲面25の中心軸CA0を、上述のxz面内で双曲面25の頂点のまわりに2.5°だけ回転して傾けることが好ましい。これにより、フレネルレンズ1は、軸外収差を小さくすることが可能となる。また、第一面10上の各点における法線は、第一面10の曲率中心に向かっており、その法線が交わる第二面20の各レンズ面21の中心軸CA1,CA2とは傾いている。像面Iの法線と第1輪帯になるレンズ面21に対応する楕円錐301の中心軸CA1とのなす角度をθ1、像面Iと第2輪帯になるレンズ面21に対応する楕円錐302の中心軸CA2とのなす角度をθ2とすれば、θ1<θ2となる。
本実施形態のフレネルレンズ1では、実施形態1と同様、各レンズ面21を構成する非球面の中心軸CA0,CA1,CA2を互いに異ならせてあり、1つの像面I上で各レンズ面21それぞれの焦点F(F0),F(F1),F(F2)の位置をずらしてある。これにより、本実施形態のフレネルレンズ1では、1つの像面I上で結像される像をぼかすことなく像の大きさを大きくすることが可能となる。
本実施形態のフレネルレンズ1を実施形態2の光学検知器におけるフレネルレンズ1の代わりに用いてもよい。
(実施形態6)
以下では、本実施形態のフレネルレンズ1について図8〜図10を参照しながら説明する。なお、本実施形態のフレネルレンズ1の基本構成は実施形態3と略同じなので、実施形態3と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
図10には、第一面10を入射面、第二面20を出射面とした場合について、光線の進行経路を細い実線で示して矢印を付してある。本実施形態のフレネルレンズ1では、図10に示したように、フレネルレンズ1の第一面10の法線に斜交する方向から第一面10に入射した光線が、複数のレンズ面21ごとに異なる焦点F(F0),F(F1),F(F2)に集光されていることが分かる。第一面10に入射角α1で入射する光線は、第一面10で屈折するが、その屈折角をα2とすれば、α2はスネルの法則により求めることができる。ここでは、第一面10が接している媒質の屈折率をn1、レンズ材料の屈折率をn2とすれば、スネルの法則により、
となる。したがって、本実施形態のフレネルレンズ1では、一例として、媒質が空気でn1=1、レンズ材料がポリエチレンでn2=1.53とし、α1=45°とすると、α2=27.5°となる。
各レンズ面21は、複数のレンズ機能面23からなる。各レンズ面21は、レンズ厚さ方向に交差する仮想面VPを境界として仮想面VPとのなす角度の異なるレンズ機能面23に分けられている。見方を変えれば、集光レンズ1の第二面20側は、図9に示すように、レンズ厚さ方向において仮想面VPの両側に存在する層251,252を積層し、層251,252間の境界をなくしたのと同様の構造となっている。
フレネルレンズ1は、各レンズ機能面23が、それぞれ楕円錐30(図8参照)の側面の一部からなる。また、フレネルレンズ1は、第一面10上の各点の法線のうち楕円錐30の側面の一部からなるレンズ機能面23に交差する任意の法線と、当該任意の法線が交差するレンズ機能面23に対応する楕円錐30の中心軸とが、非平行であり(つまり、傾いている)、且つ、互いの中心軸が非平行である(つまり、傾いている)。ここにおいて、各楕円錐30は、第二面20側に頂点が位置するとともに第一面10側に底面(図示せず)が位置している。本実施形態のフレネルレンズ1では、各レンズ機能面23それぞれを構成する非球面の中心軸が、各楕円錐30の中心軸CA01,CA02,CA11,CA12,CA21,CA22であり、レンズ機能面23それぞれに対応する楕円錐30の中心軸CA01,CA02,CA11,CA12,CA21,CA22が非平行である。
また、各楕円錐30の中心軸CA01,CA02,CA11,CA12,CA21,CA22は、第一面10の各点の各々における法線に対して斜交する。また、フレネルレンズ1は、第一面10上の点と、その点における法線がレンズ機能面23に交差する点とを結ぶ方向をレンズ厚さ方向と規定した場合、第一面10が平面であれば、第一面10上の各点における法線に沿った方向がレンズ厚さ方向となる。本実施形態のフレネルレンズ1は、第一面10が平面なので、各楕円錐30それぞれの中心軸CA01,CA02,CA11,CA12,CA21,CA22は、レンズ厚さ方向に対して斜交する。よって、フレネルレンズ1は、各レンズ機能面23それぞれが、第二面20側に頂点が位置するとともに第一面10側に底面(図示せず)が位置し且つ中心軸がレンズ厚さ方向に対して斜交する楕円錐30の側面の一部により構成されている。
各レンズ機能面23については、直線である接線40の集合(直線群)によって作られる連続面であり、直線群を構成する全ての接線40が交わる1点が上述の楕円錐30の頂点Pとなっている。したがって、各層251,252(図9参照)の厚さが微小であれば、双曲面の一部を楕円錐30の側面の一部により近似でき、レンズ厚さ方向に沿った1つの仮想直線を含む断面形状において、双曲面の上記一部を直線で近似することができる。
任意の平面の中心を原点として、当該任意の平面において互いに直交するx軸とy軸とを規定し、当該任意の平面に直交するz軸を規定した直交座標系においては、楕円錐の任意の点の座標を(x,y,z)とし、a,b,cを係数として、楕円錐の方程式は上述の(6)式からなる標準形で表される。
この標準形で表される楕円錐では、xy平面に平行な面との交線が楕円となる。レンズ厚さ方向に対して斜交する楕円錐30は、図8〜図10の左下に図示した直交座標系のように、レンズ厚さ方向に直交する面内(ここでは、第一面10に平行な面内)でx軸とy軸とを規定しレンズ厚さ方向に沿ったz軸を規定した直交座標系に対して、適宜の座標変換を行い新しい直交座標系を規定することにより、標準形で表すことができる。
図8では、フレネルレンズ1において、上述のように、6つの楕円錐30にそれぞれ異なる符合を付してある。ここでは、中心レンズ部1aのレンズ面21に対応する2つの楕円錐30,30をそれぞれ楕円錐3001,3002とする。また、中央のレンズ面21に最も近い第1輪帯となるレンズ面21に対応する2つの楕円錐30,30をそれぞれ楕円錐3011,3012、とし、中央のレンズ面21に2番目に近い第2輪帯となるレンズ面21に対応する2つの楕円錐30,30をそれぞれ楕円錐3021,3022とする。図8では、中央のレンズ面21に対応する楕円錐30を除いた楕円錐30のうち、中央のレンズ面21に近い側から順に数えてn(n≧1)番目の第n輪帯となるレンズ面21に対応する2つの楕円錐30,30のうち中心レンズ部1aに近い楕円錐30を楕円錐30n1とし、中心レンズ部1aから遠い楕円錐30を楕円錐30n2とする。また、図8では、各楕円錐3001,3002,3011,3012,3021,3022それぞれの頂点P,P,P,P,P,Pを頂点P01,P02,P11,P12,P21,P22とし、各楕円錐3001,3002,3011,3012,3021,3022それぞれの中心軸をCA01,CA02,CA11,CA12,CA21,CA22としている。要するに、図8では、第n輪帯となるレンズ面21に対応する楕円錐30n1,30n2の頂点をPn1,Pn2とし、その楕円錐30n1,30n2の中心軸をCAn1,CAn2としている。そして、図8では、各楕円錐3001,3002,3011,3012,3021,3022それぞれについて、頂点P01,P02,P11,P12,P21,P22を原点として、中心軸CA01,CA02,CA11,CA12,CA21,CA22をz軸とし、z軸に直交する断面における楕円の長径方向に沿ってx軸、短径方向に沿ってy軸を規定した直交座標系を定義する。すると、各楕円錐3001,3002,3011,3012,3021,3022の式は、各直交座標系において、上述の(6)式からなる標準形で表すことができる。なお、各頂点P01,P02,P11,P12,P21,P22の相対的な位置関係については、例えば、焦点F0を原点とし、焦点F0を含む像面I上に互いに直交するX軸、Y軸を規定し、像面Iに直交する方向にZ軸を規定した直交座標系を定義した場合、頂点P01,P02,P11,P12,P21,P22の座標(X,Y,Z)により表すことができる。
なお、図8中に示した角度θ01,θ02,θ11,θ12,θ21,θ22の定義は、次の通りである。角度θ01は、楕円錐3001について、頂点P01を原点として、中心軸CA01が第一面10に交差する点に立てた法線H01と中心軸CA01とのなす角度である。また、角度θ02は、楕円錐3002について、頂点P02を原点として、中心軸CA02が第一面10に交差する点に立てた法線H02と中心軸CA02とのなす角度である。また、角度θ11は、楕円錐3011について、頂点P11を原点として、中心軸CA11が第一面10に交差する点に立てた法線H11と中心軸CA11とのなす角度である。また、θ12は、楕円錐3012について、頂点P12を原点として、中心軸CA12が第一面10に交差する点に立てた法線H12と中心軸CA12とのなす角度である。また、θ21は、楕円錐3021について、頂点P21を原点として、中心軸CA21が第一面10に交差する点に立てた法線H21と中心軸CA21とのなす角度である。また、θ22は、楕円錐3022について、頂点P22を原点として、中心軸CA22が第一面10に交差する点に立てた法線H22と中心軸CA22とのなす角度である。
フレネルレンズ1は、レンズ機能面23に交差する任意の法線と、当該任意の法線が交差するレンズ機能面23に対応する楕円錐30の中心軸CA01,CA02,CA11,CA12,CA21,CA22とが、非平行である。また、フレネルレンズ1は、楕円錐3001,3002,3011,3012,3021,3022の中心軸CA01,CA02,CA11,CA12,CA21,CA22が互いに非平行である。
また、フレネルレンズ1は、第一面10上の各点における法線と、その法線が交わる第二面20の各レンズ機能面23の中心軸CA01,CA02,CA11,CA12,CA21,CA22とがなす角度が、外側の輪帯状レンズ部1bほど大きい。要するに、フレネルレンズ1は、外側に位置するレンズ機能面23に対応する楕円錐30ほど、中心軸CA01,CA02,CA11,CA12,CA21,CA22と法線とのなす角度が大きい。ただし、外側に位置するとは、第一面10から略同じ高さ位置にあるレンズ機能面23での相対的な位置関係を意味している。
以上説明した本実施形態のフレネルレンズ1は、第一面10とは反対側の第二面20が複数(図8の例では、3つ)のレンズ面21を有するものであり、各レンズ面21それぞれが、複数のレンズ機能面23(図8の例では、2つ)からなり、各レンズ機能面23が、楕円錐30の側面の一部により構成されている。このフレネルレンズ1は、第一面10上の各点の法線のうち楕円錐30の側面の一部からなるレンズ機能面23に交差する任意の法線と、当該任意の法線が交差するレンズ機能面23に対応する楕円錐30の中心軸CA01,CA02,CA11,CA12,CA21,CA22とが、非平行である。また、複数のレンズ機能面23は、互いの中心軸CA01,CA02,CA11,CA12,CA21,CA22が非平行である。しかして、本実施形態のフレネルレンズ1では、外界から第一面10へ斜め入射する入射光を利用する場合に軸外収差の発生を抑制することが可能であり、且つ、低コスト化が可能となる。このフレネルレンズ1においては、外側に位置するレンズ機能面23に対応する楕円錐30ほど、中心軸CA01,CA02,CA11,CA12,CA21,CA22と法線とのなす角度が大きいことが好ましい。これにより、フレネルレンズ1は、軸外収差の発生をより抑制することが可能となり、且つ、低コスト化が可能となる。
さらに説明すれば、本実施形態のフレネルレンズ1では、各レンズ面21が、レンズ厚さ方向に交差する仮想面VPを境界として仮想面VPとのなす角度の異なるレンズ機能面23に分けられている。そして、本実施形態のフレネルレンズ1では、各レンズ機能面23が、第二面20側に頂点Pが位置するとともに第一面10側に底面が位置し且つ中心軸CA01,CA02,CA11,CA12,CA21,CA22がレンズ厚さ方向に対して斜交する楕円錐3001,3002,3011,3012,3021,3022の側面の一部により構成されている。しかして、本実施形態のフレネルレンズ1では、レンズ厚さ方向に対して光軸が斜交する。また、本実施形態のフレネルレンズ1では、軸外収差の発生を抑制することが可能であり、且つ、低コスト化が可能となる。
本実施形態のフレネルレンズ1では、各レンズ面21のレンズ機能面23それぞれを構成する非球面の中心軸CA01,CA02,CA11,CA12,CA21,CA22を互いに異ならせてあり、1つの像面I上で各レンズ面21それぞれの焦点F(F0),F(F1),F(F2)の位置をずらしてある。これにより、本実施形態のフレネルレンズ1では、1つの像面I上で結像される像をぼかすことなく像の大きさを大きくすることが可能となる。
本実施形態のフレネルレンズ1を実施形態2の光学検知器におけるフレネルレンズ1の代わりに用いてもよい。
(実施形態7)
以下では、本実施形態のフレネルレンズ1について図11を参照しながら説明する。
本実施形態のフレネルレンズ1の基本構成は実施形態6と略同じであり、複数のレンズ面21のうち中央のレンズ面21を構成する非球面を、双曲面25の一部としてある点が相違する。なお、実施形態6と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態のフレネルレンズ1では、実施形態6と同様、レンズ面21を構成する非球面の中心軸CA0,CA11,CA12,CA21,CA22を互いに異ならせてあり、1つの像面(図示せず)上で各レンズ面21それぞれの焦点(図示せず)の位置をずらしてある。これにより、本実施形態のフレネルレンズ1では、1つの像面上で結像される像をぼかすことなく像の大きさを大きくすることが可能となる。また、フレネルレンズ1は、第一面10を実施形態5と同様に曲面としてもよい。
本実施形態のフレネルレンズ1を実施形態2の光学検知器におけるフレネルレンズ1の代わりに用いてもよい。