JP2013194746A - 制震ダンパー及び制震構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】繰り返し荷重が入力されてもエネルギー吸収性能が低下しない又は低下が少ない。
【解決手段】積層ゴム50Rが軸方向(積層方向)に圧縮変形が生じると同時に、スライド機構130Rによって、第一加圧ブロック122Rが鉛直方向上側にスライドし、積層ゴム50Rは積層方向と直交するせん断方向に変形する。これにより、高面圧、大せん断ひずみ状態が実現される。そして、積層ゴム50の軸方向(積層方向)のひずみエネルギーが、せん断減衰特性によって消費され、これにより、エネルギーが吸収される。
【選択図】図3

Description

本発明は、制震ダンパー及び制震構造に関する。
特許文献1には、鉛直荷重と水平荷重を支持する主構造部材と、鉛直荷重を支持するが水平方向には変形しない副構造部材と、を高い減衰性を有する材料(減衰要素)を介して接合することにより、構造物の振動を減衰させる制震構造が提案されている。
また、建物に入力される地震力を、減衰させたり増幅を防いだりすることで、建物の振動を低減させる制震ダンパーが知られている。制震ダンパーとしては、鋼材に代表される金属材料の塑性挙動を用いた金属ダンパーやオイルダンパーに代表される粘性系制震ダンパーが知られている。
金属ダンパーは、継続時間の長い長周期地震動によって繰り返し荷重が入力されると、金属材料が低サイクル疲労を起こすためエネルギー吸収性能が低下する。
一方、オイルダンパーは、繰り返し荷重が入力されても、エネルギー吸収性能の低下は少ない。しかし、オイルを封入するオイルシール技術には精密な機械加工が要求されること等から、オイルダンパーは高コストなることが多い。
よって、オイル等の粘性材料を用いていない制震ダンパーであっても、繰り返し荷重が入力されてもエネルギー吸収性能が低下しない又は低下が少ない繰返し特性に優れた制震ダンパーが求められている。
特開平10−196720号
本発明は、上記事実を鑑み、繰り返し荷重が入力されてもエネルギー吸収性能が低下しない又は低下が少ない繰返し特性に優れた制震ダンパー及び制震構造を提供することが課題である。
請求項1の発明は、第一構造体に設けられた第一部材と、前記第一構造体に対して相対移動する第二構造体に設けられ、前記第一部材に対して接近及び離間する方向に移動する第二部材と、剛性を有する硬質層とゴム層とが交互に積層され、積層方向の両端が前記第一部材と第二部材とに固定された積層ゴム体と、前記第二部材の移動を、前記積層ゴム体の積層方向の変形と、積層方向と直交するせん断方向の変形と、に変換する変換手段と、を備える。
請求項1の発明では、第二部材の第一部材に対する移動が、変換手段によって、積層ゴム体を積層方向に変形させると共に、積層方向と直交するせん断方向に変形させる。よって、第二部材が第一部材に対して移動すると、積層ゴム体が積層方向に変形し且つ積層方向と直交するせん断方向にも大きく変形する。そして、積層ゴム体の積層方向のひずみエネルギーが、せん断減衰特性によって消費されることで、エネルギーが吸収される。
せん断方向の変形と積層方向の変形は、力の釣り合いを満たすように、相対移動方向の力と変形を変換する。また、積層ゴム体は、せん断方向に比べて積層方向の剛性が大きいため、積層方向の変形に対して大きな力が作用する。
積層ゴム体は、繰り返し荷重が入力されてもエネルギー吸収性能が低下しない、又は低下が少ない、優れた繰り返し性能を有する。よって、積層ゴム体を用いた制震ダンパーは繰り返し荷重が入力されても制震効果が発揮される。つまり、積層ゴム体を利用することで繰返し特性に優れた制震ダンパーとなる。
請求項2の発明は、前記変換手段は、前記第二部材の移動方向に対して積層方向が傾斜するように前記積層ゴム体を前記第一部材と第二部材とに固定する固定手段と、前記第一部材を前記第一構造体に対して前記第二部材の移動方向と交差する方向にスライドさせる、又は、前記第二部材を前記第二構造体に対して前記第二部材の移動方向と交差する方向にスライドさせるスライド手段と、を備える。
請求項2の発明では、第二部材が第一部材に対して移動すると、固定手段とスライド手段とによって、積層ゴム体が積層方向に変形すると共にせん断方向に変形する。このように簡単な機構で、積層ゴム体が積層方向に変形すると共にせん断方向に変形する。よって、低コストで繰返し特性に優れた制震ダンパーとなる。
請求項3の発明は、前記スライド手段は、硬質層と軟質層とが交互に積層された積層体で構成されている。
請求項3の発明では、硬質層と軟質層とが交互に積層された積層体でスライド手段が構成されている。よって、スライド手段を、例えばベアリング等を有する複雑な機械式のスライド機構と比較し、低コストである。したがって、更に低コストで繰返し特性に優れた制震ダンパーとなる。
請求項4の発明は、柱梁架構における上側又は下側のいずれか一方の梁に設けられ、傾斜面が設けられた第一部材と、剛性を有する硬質層とゴム層とが交互に積層され、前記第一部材の前記傾斜面に積層方向の一方の端部が固定された積層ゴム体と、前記積層ゴム体の積層方向の他方の端部が固定され、前記第一部材の前記傾斜面と平行の傾斜面を有する第二部材と、一端部が前記第二部材に接続され、他端部が前記柱梁架構における上側又は下側のいずれか他方の梁に接続された接続部材と、前記第一部材又は前記第二部材を鉛直方向にスライドさせるスライド手段と、
を備える制震ダンパー。
を備える。
請求項4の発明では、傾斜面とスライド手段とによって、架構の変形に伴い積層ゴム体を積層方向を変形させると共に積層方向と直交するせん断方向に変形させる。そして、積層ゴム体の積層方向のひずみエネルギーが、せん断減衰特性によって消費されることで、エネルギーが吸収される。
積層ゴム体は、繰り返し荷重が入力されてもエネルギー吸収性能が低下しない、又は低下が少ない、優れた繰り返し性能を有するので、繰り返し高い制震効果が発揮される。つまり、積層ゴム体を利用することで繰返し特性に優れた制震ダンパーとなる。
請求項5の発明は、柱梁架構における上側又は下側のいずれか一方の梁に設けられた、傾斜面が設けられた第一部材と、剛性を有する硬質層とゴム層とが交互に積層され、前記第一部材の前記傾斜面に積層方向の一方の端部が固定された積層ゴム体と、前記積層ゴム体の積層方向の他方の端部が固定された第二部材と、前記第二部材と前記接続部材とをそれぞれ回転支点として連結するリンク機構と、前記第二部材を前記第一部材に対して前記積層ゴムの積層方向と交差する方向にスライドさせるスライド手段と、を備える。
請求項5の発明では、傾斜面、リンク機構、及びスライド手段によって、架構の変形に伴い積層ゴム体を積層方向に変形させると共に積層方向と直交するせん断方向に変形させる。そして、積層ゴム体の積層方向のひずみエネルギーが、せん断減衰特性によって消費されることで、エネルギーが吸収される。
積層ゴム体は、繰り返し荷重が入力されてもエネルギー吸収性能が低下しない、又は低下が少ない、優れた繰り返し性能を有するので、繰り返し高い制震効果が発揮される。つまり、積層ゴム体を利用することで繰返し特性に優れた制震ダンパーとなる。
請求項6の発明は、前記第二部材は、前記積層ゴムに引張力が作用する方向に伸張する伸張機構を有している。
請求項6の発明では、積層ゴムに引張力が作用しない又は作用する引張力が小さくなる。よって、積層ゴムに引張力が作用することによる不具合が防止又は抑制される。
請求項7の発明は、請求項1〜請求項6のいずれか1項の制震ダンパーが対を成して設けられ、一方の前記制震ダンパーの前記第一部材と他方の前記制震ダンパーの前記第一部材とが、交互に前記第二部材に接近する方向に移動するように設けられている。
請求項7の発明では、一方の制震ダンパーの積層ゴム体と、他方の制震ダンパーとの積層ゴム体とが、交互に積層方向のひずみエネルギーがせん断減衰特性によって消費されるので、効果的に制震効果が発揮される。
以上説明したように本発明によれば、繰り返し荷重が入力されてもエネルギー吸収性能が低下しない又は低下が少ない繰返し特性に優れた制震ダンパー及び制震構造となる。
本発明の第一実施形態に係る制震ダンパーが設けられた架構を示す立面図である。 図1の第一実施形態の制震ダンパーを拡大した立面図である。 (A)は、図2の制震ダンパーが変形する前の状態を示す図であり、(B)は制震ダンパーが変形した状態を示す図である。 図3(B)に示す制震ダンパーが変形した状態の力の釣り合いを説明するための説明図である。 図9に示す高面圧せん断試験の結果を基に、図2に示す制震ダンパーによって得られる減衰力の特性を類推した結果を示すグラフである。 本発明の第二実施形態に係る制震ダンパーが設けられた架構を示す立面図である。 図6の第二実施形態の制震ダンパーを拡大した示す立面図である。 積層ゴムを示す正面図である。 高面圧せん断試験の結果を示すグラフであり、(A)はせん断変形とせん断方向荷重との関係(せん断特性)を示すグラフであり、(B)は軸方向の変位と軸方向荷重の関係(軸特性)を示すグラフであり、(C)は積層ゴムに蓄えられたエネルギーの軌跡をせん断方向の変形との関係で示すグラフである。 本発明の第三実施形態に係る制震ダンパーが設けられた架構を示す立面図である。 (A)は図10の第三実施形態の制震ダンパーの要部を拡大した立面図であり、(B)は(A)のB−B矢視図である。 (A)は架構が変形していない状態の図であり、(B)は架構が左右方向左側に変形し積層ゴムの圧縮方向に加圧ブロックが移動した場合の図であり、(C)は架構が左右方向右側に変形し積層ゴムの引張方向に加圧ブロックが移動した場合の図である。
<積層ゴム体における軸ひずみエネルギーのせん断減衰特性による消費>
まず、積層ゴム体の高面圧せん断試験において見られる軸ひずみエネルギーがせん断減衰特性によって消費される現象について説明する。
[積層ゴム]
まず、試験に用いた積層ゴム50について、図8を用いて説明する。なお。想像線(二点破線)で示すフランジ63はここでは関係がないので、説明を省略する(説明は後述する)。
図8に示すように、積層ゴム50は、円柱状の積層ゴム体52を有している。積層ゴム体52は、複数枚の円環状の金属板(硬質層)54と、同じく複数枚の円環状のゴム(ゴム層)56と、を円柱の軸方向(矢印S方向)に交互に積層されることによって構成されている。なお、積層ゴム体52(積層ゴム50)の軸方向は積層方向と一致する(矢印S)。
積層ゴム体52の、平面視における(軸方向(矢印S方向)に見た)円の中心部分には、減衰部材の一例としての円柱状のプラグ(コア)60が貫通している。また、積層ゴム体52の積層方向(軸方向)の両端部には、積層ゴム体52よりも大径のフランジ62が接合されている。
なお、本実施形態では、積層ゴム50の積層ゴム体52の直径は700mmの円柱形とされ、プラグ60は純鉛や鉛合金等の鉛を主成分とする材料で構成されている直径140mmの鉛プラグとされている。
なお、積層ゴム体52の外周面には被覆ゴム等で被覆されていてもよい。被覆ゴム等で被覆することで、例えば、金属板54が露出されないので、金属板54の劣化や腐食等が防止される効果が得られる。
[高面圧せん断試験]
つぎに、高面圧せん断試験について説明する
本試験は、積層ゴム50の面圧の変動とせん断変形の増減を数値的に連動させた高面圧せん断試験である。具体的には、積層方向(軸方向(矢印S))と、積層方向と直交するせん断方向と、を別々のジャッキで加力し、別々のロードセルで荷重を測定する。これにより積層ゴム50における「層方向(軸方向)の特性」と「せん断方向の特性」とを分離して得ることができる。
[高面圧せん断試験の結果]
図9を用いて試験の結果を説明する。
図9(A)はせん断変形とせん断方向荷重との関係(せん断特性)を示すグラフであり、図9(B)は軸方向変形(鉛直方向の変位)と軸方向荷重(鉛直荷重)との関係(軸特性)を示すグラフである。なお、鉛直変形の正の値は積層ゴムが圧縮され高さが低減している(沈み込んでいる)状態を示している。せん断方向変位が正のとき軸方向荷重が正(高面圧)となる実験条件としている。また、グラフにおける鉛直変位の0(mm)(鉛直荷重5(MN))の位置が、ループ始点である。そして、図9(A)を見ると高面圧の除荷時(変形の最大値から変形が0に戻る過程)でせん断方向の荷重変形関係が大きく膨らんでいる(E部)。すなわち、面圧の除荷時に大きくエネルギーが消費されていることが判る。なお、最大面圧時の鉛直変形量は、この試験では20mm程度である。
図9(C)は、積層ゴム50に蓄えられたエネルギーの軌跡をせん断方向の変形との関係で示すグラフである。この図9(C)には、せん断方向の荷重変形関係から求めたエネルギー(グラフの破線(1))と、軸方向の荷重変形関係係から求めたエネルギー(グラフの一点破線(2))と、せん断方向と軸方向のエネルギーの合計を(グラフの実線(3)と、を示している。
そして、せん断方向と軸方向のエネルギーの合計(グラフの実線(3))が、ギザギザを描いて上昇している。これは、積層ゴム50がエネルギーを吸収(消費)している様子が表われている。
また、変形が0(ゼロ)であるときのエネルギーの値は、それまでに吸収(消費)したエネルギーを、変形が0(ゼロ)でないときのエネルギーの値はそれまでに吸収(消費)したエネルギーとひずみエネルギーとの和を表している。
せん断方向の荷重変形関係から求めたエネルギー(グラフの破線(1))では、正の変形の最大値から変形が0(ゼロ)に戻る過程でエネルギーの値が増加している。これは、最大変形時に積層ゴムに蓄えられたエネルギーよりも多くのエネルギーが変形が0(ゼロ)に戻るまでに消費されたことを意味しており、エネルギー保存則からすると奇異である。
しかし、せん断方向と軸方向のエネルギーの合計(グラフの実線(3))では正の変形の最大値におけるエネルギーは変形が0(ゼロ)のエネルギーよりも大きく、最大変形時に積層ゴムに蓄えられたエネルギーの積層ゴム50(積層ゴム体52)の中の幾分かが変形が0(ゼロ)に戻るまでに消費され、消費されなかった分は弾性エネルギーとして解放されたと考えれば、エネルギーの釣り合いとして理解することができる。
この関係は、軸方向のひずみエネルギーとして蓄えられたエネルギーが除荷時にせん断方向の特性によって消費されたことを示している。
そして、上述した積層ゴム50(積層ゴム体52)のせん断方向の減衰特性を、積層ゴム50(積層ゴム体52)の軸方向の特性に直接反映させる構成とすることで、エネルギーを吸収するように構成したのが、本発明が適用された制震ダンパーである。
別の観点から説明すると、積層ゴム50(積層ゴム体52)にかかる荷重を、「積層ゴム50(積層ゴム体52)の軸方向の変形」と「軸方向と直交するせん断方向の変形」とに変換されるように構成したのが、本発明を適用した制震ダンパーである。
なお、上述した本試験では、せん断方向と軸方向とを、それぞれ別々のジャッキで加力し、それぞれ別々のロードセルで荷重を測定することにより、両方向の特性を分離して得た。しかし、軸方向の加力によってせん断方向の変形が導かれるように構成すれば、せん断方向の減衰特性を、軸方向の特性に直接反映させて測定することも可能である。
また、上述したせん断方向の減衰特性を軸方向の特性に直接反映させることで、エネルギーを吸収する効果を得るためには、減衰性能を有しているものが望ましい。例えば、免震構造建物の支持装置等に用いられることが多い鉛プラグ入り積層ゴムや高減衰積層ゴムなどの使用が考えられる。更に、より減衰性能を高めた積層ゴム、例えば、積層ゴム横断面の中心付近に中空を形成し、そこにゴム系の粘弾性材料を充填したものなどの使用は、本効果をえるためには有効と考えられる。
しかし、減衰性能を有しない積層ゴム体(例えば、天然ゴム系積層ゴム)であっても高面圧時には減衰性能を発揮することが別の実験で確認されている。よって、減衰性能を有する積層ゴム体よりも効果は低下するが、減衰性能を有しないとされる積層ゴム体もせん断方向の減衰特性を軸方向の特性に直接反映させることで、軸方向のエネルギーを吸収する効果を得ることができる。つまり、減衰性能を有しないとされる積層ゴム体も本発明に適用することができる。
<第一実施形態>
図1〜図3を用いて、本発明の第一実施形態に係る制震ダンパー及びこの制震ダンパーを用いた制震構造物について説明する。なお、積層ゴム50は、図1に示す構成と同様であるので、詳しい説明を省略する。また、積層ゴム50のプラグ60は図示が省略されている。
[構成]
図1に示すように、本実施系形態では、構造物10の架構12に制震ダンパー100L,100Rが設けられている。架構12は、左右の柱14L、14Rと梁(又はスラブ)16U,16Dとで構成された構造物10の基本構造部分とされている。
なお、制震ダンパー100L、100Rは、左右対称に一対設けられている。これらを区別する場合は、符号の後にL,Rを付して区別する。しかし、区別する必要がない場合は、これらを区別せずに符号の後のL,Rを省略し説明する。
図2に示すように、制震ダンパー100は、固定ブロック110、加圧ブロック120、及び積層ゴム50等を有している。
第一部材の一例としての固定ブロック110は、架構12における第一構造体の一例としての下側の梁16Dの左右方向の中央部分に設けられている(図1も参照)。固定ブロック110は、正面視における外形が下側に向かうほど幅広の台形状とされている。そして、固定ブロック110における左右方向の両側面は、下側に向かうに従って左右方向外側に傾斜した傾斜面112L,112Rが形成されている。なお、本実施形態では、傾斜面112の鉛直方向に対する角度θは、θ=9.05°(tanθ=0.167)に設定されている。
固定ブロック110と間隔をあけて、加圧ブロック120が配置されている。固定ブロック110と加圧ブロック120との間には積層ゴム50が配置され、両端部のフランジ62が固定ブロック110と加圧ブロック120とに固定されている(詳細は後述する)。
加圧ブロック120は、第二部材の一例としての第一加力ブロック122、第二加力ブロック126、及び、スライド機構130を有している。第一加圧ブロック122は、固定ブロック110の固定手段の一例としての傾斜面112と対向し且つ平行に配置された固定手段の一例としての傾斜面121と、傾斜面121と反対側の側面に形成された鉛直面123と、を有している。
第二加圧ブロック126は、第一加圧ブロック122の鉛直面123と対向且つ平行に配置された鉛直面125と、鉛直面125の反対側の側面に形成された面127と、を有している。
そして、第一加圧ブロック122の鉛直面125と第二加圧ブロック126の鉛直面125との間にスライド手段の一例としてのスライド機構130が配置されている。スライド機構130は、第一加圧ブロック122と第二加圧ブロック126とを鉛直方向にスライド自在に接続する。本実施形態では、滑り板136と摺動ブロック132とを有する既存の機械的な転がり装置(スライダー装置)を用いているので、詳しい説明を省略する。なお、摺動ブロック132は、鉛直方向に間隔をあけて複数設けられている。
固定ブロック110の傾斜面112と第一加力ブロック122の傾斜面121との間に積層ゴム50が配置されている。そして、積層ゴム50の軸方向の両端部に設けられたフランジ62が傾斜面112,121に固定されている。よって、積層ゴム50の軸方向(図8の矢印S)と傾斜面112,121とは直交する。しかし、積層ゴム50の軸方向は水平方向に対して角度θ=9.05°(tanθ=0.167)に傾いている。
図1に示すように、接続部材の一例としてのブレース部材150の一端部が加圧ブロック120の第二加圧ブロック126の面127に接合され、他端部が架構12の第二構造体の一例としての上側の梁16Uの両端(架構の隅部近傍)とに接合されている。よって、図1に示すように、制震ダンパー100L、100Lを中心にブレース部材150Lとブレース部材150Rとが略V状に配置されている。
[作用及び効果]
つぎに、本実施形態の作用及び効果について説明する。
地震動等の振動(外乱)により、図1に示す構造物10が左右に振動(水平移動)すると、架構12が平行四辺形状に変形し、上側の梁16Uが左右に水平移動する。つまり、上側の梁16Uと下側の梁16Dとが水平方向に相対移動する。
そして、構造物10が左側に移動し上側の梁16Uが左側に水平移動したときは、図3(B)に示すように、ブレース部材150Rによって、加圧ブロック120Rの第二加圧ブロック126Rが矢印X方向に移動する。なお、本実施形態における矢印X方向は、水平方向と一致又は略一致する。また、積層ゴム50に荷重が入力される方向である。なお、本実施形態における最大の変形量Lは、40mm(建物階高の1/100程度)とされている。
そして、第二加圧ブロック126Rの矢印X方向に移動により、積層ゴム50Rが軸方向(積層方向)に圧縮変形が生じると同時に、スライド機構130Rによって、第一加圧ブロック122Rが鉛直方向上側にスライドし、積層ゴム50Rは積層方向(軸方向)と直交するせん断方向に変形する。
このとき、スライド機構130Rの摩擦力を無視するとすれば、図4に示すように、積層ゴム50には軸方向の力F11のみが伝達される。よって、積層ゴム50Rの軸方向の変形による反力F12、せん断方向の変形による反力F13、及びスライド方向の力F21、F22のうち、スライド方向の力F21とF22とは常に釣り合うので、積層ゴム50のせん断方向の反力F13と軸方向の反力F12とが合成されたF30、すなわち、スライド方向に直交する方向(X方向と一致する方向)の反力F30のみが取り出される。これにより高面圧、大せん断ひずみの状態を作り出すことができ、よって、図9を用いて説明した積層ゴム50の軸方向(積層方向)のひずみエネルギーが、せん断減衰特性によって消費され、これにより、エネルギーが吸収される。
なお、スライド機構130Rを挟んだ第一加圧ブロック122Rと第二加圧ブロック126Rとの力の中心のずれによるモーメントの釣り合いがあるが、スライド機構130の摺動ブロック132の間隔(本実施形態では上下方向の間隔)を広くし、対応する滑り板136も広くすること等で、対応することができる。
なお、図1に示す構造物10が右側に移動し上側の梁16Uが右側に水平移動したときは、図示は省略するが、ブレース部材150Lによって、加圧ブロック120Lの第二加圧ブロック126Lが移動し、これにより、積層ゴム50Lが軸方向(積層方向)に圧縮変形が生じると同時に、スライド機構130Lによって、第一加圧ブロック122Lが鉛直方向上側にスライドし、積層ゴム50Lは積層方向と直交するせん断方向に変形する。これにより高面圧、大せん断ひずみの状態を作り出すことができ、そして、積層ゴム50の軸方向(積層方向)のひずみエネルギーが、せん断減衰特性によって消費され、これにより、エネルギーが吸収される。
また、このように制震ダンパー100Rの積層ゴム50Rと、制震ダンパー100Lとの積層ゴム50Lと、が交互に積層方向のひずみエネルギーがせん断減衰特性によって消費されることで、構造物10の振動が効果的に減衰する。つまり、効果的に制震効果が発揮される。
なお、図5は、制震ダンパー100によって得られる減衰力の特性を、前述した[高面圧せん断試験]によって類推した結果を示している。このグラフを見ると判るように、制震ダンパー100に要求される変形量L=40mm(建物階高の1/100程度、図3参照)の範囲においては、必要とされる標準的な減衰力の目安である1000kNが、ほぼ実現されていることが判る。また、制震ダンパー100の減衰定数は29%と類推される。したがって、積層ゴム50を用いた制震ダンパー100は、既存の制震ダンパー(例えば、既存のオイルダンパー)と同様に充分実用に供することができることが判る。なお、減衰定数は減衰の程度を示す定数である。
また、積層ゴム50は、免震支持装置として長周期地震動に対する繰返しに関する性能検証が充分に行われている。つまり、積層ゴム50は、繰り返し荷重が入力されてもエネルギー吸収性能が低下しない、又は低下が少ない、優れた繰り返し性能を有することが確認されている。よって、積層ゴム50を用いることで繰返し特性に優れた制震ダンパー100となる。
また、積層ゴム50は、同等の減衰力を発揮する、例えば、粘性系制震ダンパーの代表であるオイルダンパーと比較すると、安価である。よって、本実施形態の制震ダンパー100は、オイルダンパー等を用いる場合に必要がないスライド機構130を考慮しても、低コストの制震ダンパー100となる。
積層ゴム50は、免震構造建物の支持装置として多く用いられる丸型横断面形を有するものでも正方形の横断面形を有するものでもよい。丸型横断面形に積層ゴムは免震構造建物の支持装置として多く用いられているので低コストで利用できる。一方、長方形の断面形の積層ゴムは、壁内に制震ダンパー100を収める際に有利である。
ここで、地震に対する超高層建物などの安全性を高める技術として制震ダンパーを設置することは有効であり、東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)においても、その効果が立証された。また、近い将来発生が予想されている東海地震や東南海地震などの海溝型巨大地震では、より大きく、しかもより継続時間の長い長周期地震動が大都市域を襲うことが懸念されており、制震ダンパーにも継続時間の長い長周期地震動に対応できる性能が求められる。
そして、このような超高層建物などが長周期地震動を受けた際の揺れの大きさや継続時間の長さを抑制するために、本発明が適用された繰返し特性に優れ且つ低コストの制震ダンパー100を用いることで、超高層建物の耐震安全性能が低コストで向上させることができる。
<第二実施形態>
図6及び図7を用いて、本発明の第二実施形態に係る制震ダンパー及びこの制震ダンパーを用いた制震構造物について説明する。なお、第一実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
[構成]
図6に示すように、構造物10の架構12に制震ダンパー200L,200Rが設けられている。なお、第一実施形態と同様、制震ダンパー200L、200Rは、左右対称に一対設けられている。これらを区別する場合は、符号の後にL,Rを付して区別する。しかし、区別する必要がない場合は、これらを区別せずに符号の後のL,Rを省略し説明する。
図7に示すように、制震ダンパー200は、第一固定ブロック210、第二固定ブロック220、加圧ブロック230、積層体250、及び積層ゴム50を有している。なお、第一固定ブロック210は、左右の制震ダンパー200L,200Rで共通に使用されている。
第一構造体の一例としての第一固定ブロック210は、架構12における第一構造体の一例としての下側の梁16Dの左右方向の中央部分に設けられている(図6も参照)。第一固定ブロック210における左右方向の両側面は、鉛直面212L,212Rが形成されている。
第一部材の一例としての第二固定ブロック220は、第一固定ブロック210の鉛直面212と対向且つ平行に配置された鉛直面222と、鉛直面222の反対側の側面に形成された傾斜面224とを、有している。傾斜面224は、下側に向かうに従って第一固定ブロック210側に傾斜している。
そして、第一固定ブロック210の鉛直面212と第二固定ブロック220の鉛直面222Rとをスライド手段の一例としての積層体250が接続している。積層体250は、水平方向を軸方向とする円柱状とされ、複数枚の円板の金属板(硬質層)254と複数枚の円板状のゴム(ゴム層)256とが交互に積層されることによって構成されている。なお、本実施形態の積層体250には、積層ゴム50のようにプラグ60(図8)は埋め込まれていない。よって、第一固定ブロック210と第二固定ブロック220とが軸方向(積層方向)と直交するせん断方向へのスライドする際の抵抗が、プラグ60がある構成と比較し、小さくなる。
第二固定ブロック220の傾斜面224と間隔をあけて、第二部材の一例としての加圧ブロック230が配置されている。加圧ブロック230は、第二固定ブロック220の固定手段の一例としての傾斜面224と対向し且つ平行に配置された固定手段の一例としての傾斜面232と、反対側の側面に形成された面234と、を有している。
第二固定ブロック220の傾斜面224と加力ブロック230の傾斜面232との間に、積層ゴム50が配置されている。そして、積層ゴム50の軸方向両端に設けられたフランジ62が傾斜面224,232に固定されている。よって、積層ゴム50の軸方向(図8の矢印S)と傾斜面224,232とは直交する。
図6に示すように、ブレース部材150の一端部が加圧ブロック230の面234に接合され、他端部が架構12の上側の梁16Uの隅部近傍に接合されている。よって、図1に示すように、制震ダンパー200L、200Lを中心にブレース部材150Lとブレース部材150Rとが略V状に配置されている。
なお、別の観点から説明すると、第一実施形態の制震ダンパー100(図2参照)では加圧ブロック側にスライド機構を設けていたが、本実施形態の制震ダンパー200は梁16Dに設けられた固定ブロック側にスライド機構と同じ機能を有する積層体250を設けている(図2と図7とを比較参照)。
なお、第一実施形態の制震ダンパー100のスライド機構130を第二実施形態の積層体250に置き換えてもよいし、第二実施形態の制震ダンパー200の積層体250を第一実施形態のスライド機構130に置き換えてもよい。
[作用及び効果]
つぎに、本実施形態の作用及び効果について説明する。
第一実施形態と同様に、地震動等の振動(外乱)により、図6に示す構造物10が左右に振動(水平移動)すると、架構12が平行四辺形状に変形し、上側の梁16Uが左右に水平移動する。つまり、上側の梁16Uと下側の梁16Dとが相対移動する。
そして、図7に示すブレース部材150によって、加圧ブロック230が移動し、積層ゴム50が軸方向(積層方向)に圧縮変形が生じると同時に、積層体250によって、第二固定ブロック220が鉛直方向上側にスライドし、積層ゴム50は積層方向と直交するせん断方向に変形する。よって、図9を用いて説明した積層ゴム50の軸方向(積層方向)のひずみエネルギーが、せん断減衰特性によって消費され、これにより、エネルギーが吸収される。
本実施形態では、金属板(硬質層)254と複数枚の円板状のゴム(ゴム層)256とが交互に複数積層されることによって構成されている積層体250でスライドさせている。よって、例えばベアリング等を有する機械式のスライド機構と比較し、低コストである。したがって、更に低コストで繰返し特性に優れた制震ダンパー200となる。
なお、積層体250は、第一固定ブロック210に対して第二固定ブロック220をできるだけ抵抗を少なく鉛直方向にスライドさせることが望ましいので、前述したように本実施形態の積層体250は、プラグ等の減衰性能を有していない。また、軟質層としてゴムを用いる場合には天然ゴム系をもちいることが望ましい。
また、積層体250は、剛性を有する硬質層として金属板254を用いたが、これ限定されない。例えば、金属板254と同等又は略同等の剛性を有する樹脂材料で構成されていてよい。また、弾性を有する軟質層の材料としてゴム1256を使用したが、これに限定されない。例えば、ゴム256と同等又は略同等の弾性を有する樹脂材料を使用してもよい。
<第三実施形態>
図10〜図12を用いて、本発明の第三実施形態に係る制震ダンパー及びこの制震ダンパーを用いた制震構造物について説明する。なお、第一実施形態及び第二実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
[構成]
図10に示すように、構造物10の架構12に制震ダンパー300L,300Rが設けられている。なお、第一実施形態及び第二実施形態と同様、制震ダンパー300L、300Rは、左右対称に一対設けられている。これらを区別する場合は、符号の後にL,Rを付して区別する。しかし、区別する必要がない場合は、これらを区別せずに符号の後のL,Rを省略し説明する。また、図11は左側の制震ダンパー300Lのみが図示されているが、右側の制震ダンパー300Rも左右対称である以外は同様の構成である。また、図11では、構造を判りやすくするため、後述するガイドプレート314の一方(手前側)が図示されていない。
図10に示すように、制震ダンパー300は、固定ブロック310、加圧ブロック320、積層ゴム50、スライド機構350、リンク機構380等を有している。
第一部材の一例としての固定ブロック310L,300Rは、架構12における下側の梁16Dの左右方向の左側端部と右側端部とにそれぞれ設けられている。各固定ブロック310は、正面視における外形が下側に向かうほど幅広の台形状とされている。そして、固定ブロック310における左右方向の内側面は、下側に向かうに従って左右方向外側に傾斜した傾斜面312L,312Rが形成されている。なお、本実施形態では、傾斜面312の鉛直方向に対する角度θは、θ=9.05°(tanθ=0.167)に設定されている。
図11に示すように、固定ブロック310と間隔をあけて、第二部材の一例としての加圧ブロック320が配置されている。固定ブロック310と加圧ブロック320との間には積層ゴム50が配置され、両端部のフランジ62が固定ブロック310と加圧ブロック320とに固定されている。よって、積層ゴム50の積層方向(軸方向)は、水平に対してθ=9.05°傾いている。
加圧ブロック320は、加圧ブロック本体322と、加圧ブロック本体322に形成された穴部326に挿入及び引抜き可能に設けられたシアピン324と、を有している。シアピン324の挿入及び引抜き方向は、積層ゴム50の軸方向と一致している。つまり、挿入及び引抜き方向は、水平に対してθ=9.05°傾いている。そして、このシアピン324に積層ゴム50のフランジ62が取り付けられている(図12(C)を参照)。
加圧ブロック320は、スライド機構350によって、固定ブロック310に取り付けられている。スライド機構350は、固定ブロック310に設けられたガイドプレート314を有している。ガイドプレート314は、積層ゴム50及び加圧ブロック320の、図における手前側と奥側とに対向して配置されている。
そして、それぞれのガイドプレート314には、同じ形状の不整形のガイド孔318A,318Bが形成されている。これらガイド孔318A,318Bは、側面視において、上方側に向かって左右方向外側向かって傾斜した第一孔317と、第一孔317の下端部から左右方向内側に向かって延在する第二孔319と、で構成さている。
これら孔318A,318Bには、それぞれ、加圧ブロック320を貫通し突出するピン328A,328Bが挿通している。なお、A,Bを区別する必要がない場合は、A,Bを省略する。
図10に示すように、接続部材の一例としてのブレース部材150L、150Rと端部が接合され、この接合部部位から垂下する垂下部152と加圧ブロック320L,320Rとが、スライド機構350よって連結されている。
リンク機構380は、左右方向を長手方向とする板状のリンク部材382を有している。リンク部材382の一端部は、ピン156によって垂下部152と回転自在に連結されている。また、リンク部材382の他端部は、ピン386によって加圧ブロック320に回転自在に連結されている。
[作用及び効果]
つぎに、本実施形態の作用及び効果について説明する。
第一実施形態及び第二実施形態と同様に、地震動等の振動(外乱)により、図10に示す構造物10が左右に振動(水平移動)すると、架構12が平行四辺形状に変形し、上側の梁16Uが左右に水平移動する。つまり、上側の梁16Uと下側の梁16Dとが相対移動する。
そして、ブレース部材150とリンク部材382によって、加圧ブロック320が左右方向外側(X方向(図12(A)参照)に移動すると、積層ゴム50が軸方向(積層方向)に圧縮変形が生じる。図12(A)及び図12(B)に示すように、加圧ブロック320がX方向に移動すると、加圧ブロック320は、固定ブロック310に設けられたガイドプレート314のガイド孔318の第一孔317に沿ってスライドする。このとき、リンク機構380によって、リンク部材382が角度変化する。
このようにして、積層ゴム50は積層方向と直交するせん断方向に変形する。よって、図9を用いて説明した積層ゴム50の軸方向(積層方向)のひずみエネルギーが、せん断減衰特性によって消費され、これにより、エネルギーが吸収される。
なお、図12(B)において、R1は積層ゴム50の圧縮変形量(沈み込み量)を示し、R2は積層ゴム50のせん断変形量を示し、R3は積層ゴム50の層間変形量を示している。
また、ガイドプレート314に二つのガイド孔318A,318Bを設けることで、加圧ブロック320が傾くことなく、積層方向と直交する方向に移動する。なお、リンク機構380から伝達される層間変形によって生じる積層ゴム50の変形状態は、このガイド孔318(の第一孔317)の形状によって規定される。そして、このようにリンク機構380及びスライド機構350を用いることによって、リンク機構380のリンク部材382には、積層ゴム50の変形に関わる弾性エネルギーと吸収エネルギーに相当する力のみを伝達させることができる。
更に、本実施形態では、図12(C)に示すように、加圧ブロック320が左右方向内側(−X方向(図12(C)参照)に移動し、層間変形が積層ゴム50の引張変形方向となった場合には、加圧ブロック320からシアピン324が引き抜かれると共に、ガイドプレート314のガイド孔318の第二孔319に沿って移動することで、積層ゴム50に引張方向の変形が生じない構成となっている。
積層ゴム50に引張方向の変形が生じると、図9のマイナス側(「0(ゼロ)」よりも左側半分)に示される特性からわかるように、引張時のエネルギー吸収量は相対的に小さい(圧縮時と比較して小さい)。また、一般的に積層ゴム50に過大な引張変形が生じることは望ましいことではないとされている。よって、層間変形が積層ゴム50の引張変形方向に生じる場合に、シアピン324の働きによって積層ゴム50に引張方向の変形を生じさせないことは、好適とされる。
なお、本実施形態では、シアピン324及び第二孔319によって積層ゴムに引張力が作用する方向に伸張する構成であったが、これに限定されない。シアピン324及び第二孔319以外の伸張機構であってもよい。更に、第一実施形態及び第二実施形態にも伸張機構を適用してもよい。
<その他>
尚、本発明は上記実施形態に限定されない。
[積層ゴム体]
例えば、積層ゴム50(積層ゴム体52)のプラグ60は、純鉛や鉛合金等の鉛を主成分とする材料で構成されているが、これに限定されない。鉛の他に、錫、アルミニウム等の金属や合金等を材料として使用されていてもよい。
このように、積層ゴムは減衰性能を有しているものが望ましい。上記以外としては、例えば、免震構造建物の支持装置として多く用いられる免震鉛プラグ入り積層ゴム体や高減衰積層ゴム体等、更により減衰性能を高めた積層ゴム、例えば、積層ゴム横断面の中心に中空を形成しそこにゴム系の粘弾性材料を充填した積層ゴムの使用も有効である。
なお、減衰性能を有しないとされる天然ゴム系積層ゴムも、前述したように高面圧時には減衰性能を発揮することが実験で確認されているので、使用することは可能である。
また、剛性を有する硬質層として金属板54を用いたが、これ限定されない。例えば、金属板54と同等又は略同等の剛性を有する樹脂材料で構成されていてよい。
また、本実施形態の角度θは一例であってこれに限定されない。角度θは、積層ゴム体52のせん断方向と軸方向に生じる力の大きさのバランスや軸方向の加力によってせん断変形がスムーズに導かれること等を考慮し、せん断方向の減衰特性を軸方向の特性として反映させるための適切な値を適宜設定すればよい。
また、例えば、上記実施形態では、傾斜面とスライド機構又は積層体とで、せん断方向の減衰特性を軸方向の特性に反映させる構成の例を示したが、これに限定されるものではない。例えば、図8の想像線(二点破線)で示すフランジ63のように、積層ゴムのフランジ側に傾斜面を設けてもよい。更に、傾斜面でなく、積層ゴムに荷重が入力される方向に対して、積層方向が傾斜するように固定されていれば、どのような構成であってもよい。また、スライド機構又は積層体以外の方法や構成で、スライドさせてもよい。例えば、平滑なすべり面で構成されたスライド機構であってもよい。要は、第二部材の移動を積層ゴム体の積層方向の変形と積層方向と直交するせん断方向の変形とに変換されればよい。
また、例えば、上記実施形態では、図1、図6、及び図10に示すように、ブレース部材150Lとブレース部材150Rとが略V状に配置されていたが、これに限定されない。ブレース部材150Lとブレース部材150Rとが逆V状に配置された構成(図1、図6の上下が逆となって構成)であってもよい。
或いは、水平にブレース部材150Lとブレース部材150Rとを配置してもよい。つまり、図1及び図6が上面視の状態となるように配置した構成であってもよい(図1、図6、及び図10が上面図となる構成)。
また、上記設置構成は一例であって、これに以外の設置構成で本発明が適用された制震ダンパーを設置してもよい。
更に、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得ることは言うまでもない
10 構造物
12 架構(柱梁架構)
16D 梁(第一構造体、一方の梁)
16U 梁(第二構造体、他方の梁)
52 積層ゴム体
54 金属板(硬質層)
56 ゴム(ゴム層)
100 制震ダンパー
110 固定ブロック(第一部材)
112 傾斜面(固定手段、変換手段)
121 傾斜面(固定手段、変換手段)
122 第一加圧ブロック(第二部材)
126 第二加圧ブロック(接続部材)
130 スライド機構(スライド手段、変換手段)
150 ブレース部材(接続部材)
200 制震ダンパー
210 第一固定ブロック(第一構造体)
220 第二固定ブロック(第一部材)
230 加圧ブロック(第二部材)
250 積層体(スライド手段、変換手段)
254 金属板(硬質層)
256 ゴム(軟質層)
300 制震ダンパー
310 固定ブロック(第一部材)
312 傾斜面(固定手段、変換手段)
319 第二孔(伸張機構)
320 加圧ブロック(第二部材)
324 シアピン(伸張機構)
350 スライド機構(スライド手段、変換手段)
380 リンク機構(変換手段)
X 移動方向

Claims (7)

  1. 第一構造体に設けられた第一部材と、
    前記第一構造体に対して相対移動する第二構造体に設けられ、前記第一部材に対して接近及び離間する方向に移動する第二部材と、
    剛性を有する硬質層とゴム層とが交互に積層され、積層方向の両端が前記第一部材と第二部材とに固定された積層ゴム体と、
    前記第二部材の移動を、前記積層ゴム体の積層方向の変形と、積層方向と直交するせん断方向の変形と、に変換する変換手段と、
    を備える制震ダンパー。
  2. 前記変換手段は、
    前記第二部材の移動方向に対して積層方向が傾斜するように前記積層ゴム体を前記第一部材と第二部材とに固定する固定手段と、
    前記第一部材を前記第一構造体に対して前記第二部材の移動方向と交差する方向にスライドさせる、又は、前記第二部材を前記第二構造体に対して前記第二部材の移動方向と交差する方向にスライドさせるスライド手段と、
    を備える請求項1に記載の制震ダンパー。
  3. 前記スライド手段は、硬質層と軟質層とが交互に積層された積層体で構成されている、
    請求項1又は請求項2に記載の制震ダンパー。
  4. 柱梁架構における上側又は下側のいずれか一方の梁に設けられ、傾斜面が設けられた第一部材と、
    剛性を有する硬質層とゴム層とが交互に積層され、前記第一部材の前記傾斜面に積層方向の一方の端部が固定された積層ゴム体と、
    前記積層ゴム体の積層方向の他方の端部が固定され、前記第一部材の前記傾斜面と平行の傾斜面を有する第二部材と、
    一端部が前記第二部材に接続され、他端部が前記柱梁架構における上側又は下側のいずれか他方の梁に接続された接続部材と、
    前記第一部材又は前記第二部材を鉛直方向にスライドさせるスライド手段と、
    を備える制震ダンパー。
  5. 柱梁架構における上側又は下側のいずれか一方の梁に設けられ、傾斜面が設けられた第一部材と、
    剛性を有する硬質層とゴム層とが交互に積層され、前記第一部材の前記傾斜面に積層方向の一方の端部が固定された積層ゴム体と、
    前記積層ゴム体の積層方向の他方の端部が固定された第二部材と、
    他端部が前記柱梁架構における上側又は下側のいずれか他方の梁に接続された接続部材と、
    前記第二部材と前記接続部材とをそれぞれ回転支点として連結するリンク機構と、
    前記第二部材を前記第一部材に対して前記積層ゴムの積層方向と交差する方向にスライドさせるスライド手段と、
    を備える制震ダンパー。
  6. 前記第二部材は、前記積層ゴムに引張力が作用する方向に伸張する伸張機構を有している請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の制震ダンパー。
  7. 請求項1〜請求項6のいずれか1項の制震ダンパーが対を成して設けられ、
    一方の前記制震ダンパーの前記第一部材と他方の前記制震ダンパーの前記第一部材とが、交互に前記第二部材に接近する方向に移動するように設けられている制震構造。
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