以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
(1)ハニカム構造体:
まず、本発明のハニカムフィルタの一の実施形態について説明する。図1は、本発明のハニカムフィルタの一の実施形態を模式的に示す斜視図である。図2は、本発明のハニカムフィルタの一の実施形態を模式的に示す側面図である。図3Aは、図2に示すハニカムフィルタの第一端面を模式的に示す平面図である。図3Bは、図2におけるA−A’断面を模式的に示す断面図である。図3Cは、図2におけるB−B’断面を模式的に示す断面図である。図3Dは、図2におけるC−C’断面を模式的に示す断面図である。図3Eは、図2に示すハニカムフィルタの第二端面を模式的に示す平面図である。図4は、本発明のハニカムフィルタの一実施形態における、セルが螺旋を描くように形成された状態を説明するための模式図である。
図1〜図4に示すように、本実施形態のハニカムフィルタ100は、第一端面11及び第二端面12を有する多角筒形状の外周壁3と、この外周壁3の内部に配置された多孔質の隔壁1と、を備えたものである。図1〜図4に示すハニカムフィルタ100においては、外周壁3が、四角筒形状である。外周壁3の内部に配置された隔壁1により、複数のセル2が区画形成されている。本実施形態のハニカムフィルタにおいては、隔壁1の気孔率が、40〜70%である。
本実施形態のハニカムフィルタ100においては、複数のセル2が、第一端面11及び第二端面12の少なくとも一方の端面に開口部を有する。そして、図3A〜図3Eに示すように、複数のセル2が、第一端面11から第二端面12に延びる方向の回転軸Lに対して螺旋を描くように隔壁1によって区画形成されている。即ち、セル2を区画形成する隔壁1が、上記回転軸Lに対してねじれた状態で、四角筒形状の外周壁3の内部に配置されている。以下、「第一端面11から第二端面12に延びる方向」を、「ハニカムフィルタの軸方向」ということがある。本発明において、「螺旋」とは、蔓巻線状の3次元曲線の螺旋のことをいう。
例えば、図3Aは、ハニカムフィルタ100の第一端面11を模式的に示す平面図である。この第一端面11においては、セル2を区画形成する格子状の隔壁1が、紙面のx−y方向にそれぞれ平行に延びるように配置されている。図3Bは、ハニカムフィルタ100の第一端面11から、軸方向の長さの1/4の長さの部分における、ハニカムフィルタの軸方向に垂直な断面を示す断面図である。図3Bに示す断面においては、格子状の隔壁1が、紙面のx−y方向にそれぞれに対して、右回り(別言すれば、時計回り)に、15°回転した状態で配置されている。即ち、ハニカムフィルタ100の第一端面11から、軸方向の長さの1/4の長さの部分において、隔壁1によって区画形成されるセル2は、15°に相当する螺旋軌道を描いている。
図3Cは、ハニカムフィルタ100の第一端面11から、軸方向の長さの2/4の長さの部分における、ハニカムフィルタの軸方向に垂直な断面を示す断面図である。また、図3Dは、ハニカムフィルタ100の第一端面11から、軸方向の長さの3/4の長さの部分における、ハニカムフィルタの軸方向に垂直な断面を示す断面図である。図3Cに示す断面においては、格子状の隔壁1が、紙面のx−y方向にそれぞれに対して、右回りに、30°回転した状態で配置されている。また、図3Dに示す断面においては、格子状の隔壁1が、紙面のx−y方向にそれぞれに対して、右回りに、45°回転した状態で配置されている。即ち、ハニカムフィルタ100の第一端面11から、軸方向の長さの2/4の長さの部分において、隔壁1によって区画形成されるセル2は、30°に相当する螺旋軌道を描いている。また、ハニカムフィルタ100の第一端面11から、軸方向の長さの3/4の長さの部分において、隔壁1によって区画形成されるセル2は、45°に相当する螺旋軌道を描いている。上述した各断面における「回転角度」は、第一端面11におけるセル2の位置を基準とした、回転軸Lに対する回転角度のことである。
図3Eは、ハニカムフィルタ100の第二端面12を模式的に示す平面図である。この第二端面12においては、セル2を区画形成する格子状の隔壁1が、紙面のx−y方向にそれぞれに対して、右回りに、60°回転した状態で配置されている。このように、図1〜図4に示す本実施形態のハニカムフィルタ100は、複数のセル2が、第一端面11から第二端面12に延びる方向の回転軸Lに対して、螺旋を描くように形成されている。本実施形態のハニカムフィルタ100においては、第一端面11から第二端面12までの回転軸Lに対する回転角度が60°ということになる。以下、「第一端面11から第二端面12までの回転軸Lに対する回転角度」を、「螺旋回転角度」ということがある。この螺旋回転角度は、第一端面11と第二端面12とにおける、回転軸Lに対するセルの位相といえる。
そして、本実施形態のハニカムフィルタ100においては、外周壁3が多角筒形状(図1〜図4においては、四角筒形状)である。そのため、複数のセル2のうちの外周側に位置する少なくとも一のセル2bが、第一端面11から第二端面12に向かう途中で、外周壁3によって遮断されている。即ち、これまでに説明したように、本実施形態のハニカムフィルタ100においては、全てのセル2が、回転軸Lを回転中心として、ハニカムフィルタ100の軸方向に対して螺旋を描くように形成されている。ここで、外周側に位置する少なくとも一のセル2bは、上記回転軸Lを回転中心とした螺旋軌道が、四角筒形状の外周壁3によって寸断されている。このため、外周側に位置する少なくとも一のセル2bが、第一端面11から第二端面12に向かう途中で、外周壁3によって遮断されることとなる。以下、「外周壁3によって遮断されるセル2b」のことを、「遮断螺旋セル2b」ということがある。また、「第一端面11から第二端面12まで螺旋軌道を維持するように形成されたセル2a」のことを、「螺旋セル2a」ということがある。セル2の一部が、外周壁3によって区画され、完全にはセル2の流路が遮断されていないセルについては、上記「螺旋セル」に含まれるものとする。
本実施形態のハニカムフィルタ100においては、一つの回転軸Lに対して、全てのセル2が、同一回転方向に螺旋を描くように形成されていることが好ましい。また、ハニカムフィルタ100の軸方向における同一位置においては、全てのセル2の螺旋の回転角度が、同じであることが好ましい。即ち、図4に示すように、第一端面11から第二端面12までの螺旋回転角度が60°である場合、回転軸Lに対して、全てのセル2が、同一回転方向に、且つ、軸方向における同一位置において同じ回転角度となるような螺旋を描いていることが好ましい。ここで、セル2が螺旋を描くように形成されていることについて、図4を参照しつつ、更に詳細に説明する。図4においては、第一端面11から第二端面12(図1参照)までのセル2p,2q,2r,2s,2t,2uの螺旋軌道を破線によって示している。そして、図4においては、セル2p,2q,2r,2s,2t,2uの第二端面における開口位置を、波線が付された矩形によって示している。例えば、図4におけるセル2pは、回転軸Lからの距離が最も短いセルである。一方、セル2sやセル2t等のセルは、回転軸Lからの距離が、セル2pに比して長いセルである。セル2p,2q,2r,2s,2tにおける、それぞれの螺旋の回転角度は、いずれも60°である。セル2uは、上述した遮断螺旋セルであり、第一端面11から第二端面12(図1参照)に向かう途中で、外周壁3によってセル2uの流路が遮断されている。
図1〜図4に示すような本実施形態のハニカムフィルタ100は、粒子状物質の排出基準が緩い排ガス規制に対応した低捕集効率のフィルタとして好適に用いることができる。本実施形態のハニカムフィルタ100によれば、圧力損失を低減し、且つ煤やアッシュが過剰に堆積することを抑制することができる。例えば、ハニカムフィルタ100の第一端面11側を排ガスの流入面とした場合、第一端面11のセル2の開口部から流入した排ガスは、螺旋状のセル2内を通過して第二端面12側に移動する。この際、遮断螺旋セル2bに流入した排ガス中の煤やアッシュは、遮断螺旋セル2bを区画形成する隔壁1又は遮断螺旋セル2bを遮断する外周壁3によって捕集される。
また、螺旋セル2aに流入した排ガスは、螺旋の流れに沿って移動しつつ、その一部が、多孔質の隔壁1を透過する。即ち、第一端面11から第二端面12へと螺旋の流れに沿って移動する排ガスには、ハニカムフィルタの軸方向に向かう慣性力及び螺旋軌道による慣性力(別言すれば、遠心力)が生じる。このような慣性力によって、螺旋セル2a内を移動する排ガスが、螺旋セル2aの外側を区画する隔壁1を通過し、同時に、その排ガス中の煤やアッシュの一部が、多孔質の隔壁1によって捕集される。また、排ガスが隔壁1を透過せずとも、空気よりも質量のある煤やアッシュは、螺旋の流れによって生じる慣性力によって、隔壁1の表面に付着して捕集されることもある。また、螺旋セル2aに流入した排ガス中の残りの煤やアッシュは、第二端面12の螺旋セル2aの開口部から、浄化されたガスとともに排出される。
このように、本実施形態のハニカムフィルタ100は、遮断螺旋セル2b以外の螺旋セル2aの両端が、第一端面11及び第二端面12にて開口しているため、圧力損失が非常に低いものである。また、本実施形態のハニカムフィルタ100においては、排ガス中の煤やアッシュが、隔壁1によって全て捕集されるのではなく、煤やアッシュの一部が、第二端面12の螺旋セル2aの開口部から、浄化されたガスとともに排出される。そのため、隔壁1の表面に、煤やアッシュが過剰に堆積し難くなっている。
また、本実施形態のハニカムフィルタ100は、隔壁1の表面に、煤やアッシュが過剰に堆積し難くなっているため、再生制御装置も必要としない。再生制御装置とは、捕集した煤等を加熱燃焼させることによりフィルタの機能を再生するものである。このため、本実施形態のハニカムフィルタ100は、レトロフィット用の排ガス浄化フィルタとして良好に用いることができる。遮断螺旋セル2bには、煤やアッシュが経時的に堆積することとなるが、煤等の堆積による捕集効率や圧力損失に対する影響は極めて少ない。
多角筒形状の外周壁3は、第一端面11及び第二端面12に対して、各側面13が垂直となるように構成された直角筒であることが好ましい。また、外周壁3は、四角筒形状又は三角筒形状のものであることが好ましい。本実施形態のハニカムフィルタ100においては、図4に示すセル2uのように、外周側に位置する少なくとも一のセル2が、第一端面から第二端面に向かう途中で、外周壁3によって遮断されている。即ち、セル2uは、遮断螺旋セル2bである。外周壁3が、四角筒形状又は三角筒形状であると、外周側に位置するセル2が螺旋を描く場合に、螺旋の回転角度が比較的に小さな場合であっても、外周壁3によってセル2の流路が遮断され易くなる。例えば、外周壁が、六角筒形状や八角筒形状であっても、外周側に位置するセルが、外周壁によって遮断されたものであれば、図1〜図4に示すハニカムフィルタ100と同様の効果を得ることができる。但し、六角筒形状や八角筒形状の場合には、螺旋の回転角度を大きくしなければならないことがある。即ち、セル2を区画形成する隔壁1の、回転軸Lに対するねじれが大きくなり、ハニカムフィルタ100の強度が低下することがある。
ここで、本発明のハニカムフィルタの他の実施形態について説明する。図5は、本発明のハニカムフィルタの他の実施形態を模式的に示す斜視図である。図6は、本発明のハニカムフィルタの他の実施形態を模式的に示す側面図である。図7Aは、図6に示すハニカムフィルタの第一端面を模式的に示す平面図である。図7Bは、図6におけるD−D’断面を模式的に示す断面図である。図7Cは、図6におけるE−E’断面を模式的に示す断面図である。図7Dは、図6に示すハニカムフィルタの第二端面を模式的に示す平面図である。
図5〜図7Dに示すハニカムフィルタ200は、第一端面31及び第二端面32を有する三角筒形状の外周壁23と、この外周壁23の内部に配置された多孔質の隔壁21と、を備えたものである。外周壁23の内部に配置された隔壁21により、複数のセル22が区画形成されている。複数のセル22は、第一端面31及び第二端面32の少なくとも一方の端面に開口部を有するものである。隔壁21の気孔率が、第一の実施形態のハニカムフィルタと同様に、40〜70%である。
図5〜図7Dに示すハニカムフィルタ200においても、図7A〜図7Dに示すように、複数のセル22が、第一端面31から第二端面32に延びる方向の回転軸Lに対して螺旋を描くように隔壁21によって区画形成されている。即ち、セル22を区画形成する隔壁21が、上記回転軸Lに対してねじれた状態で、三角筒形状の外周壁23の内部に配置されている。
例えば、図7Aは、ハニカムフィルタ200の第一端面31を模式的に示す平面図である。この第一端面31においては、セル22を区画形成する格子状の隔壁21が、紙面のx−y方向にそれぞれ平行に延びるように配置されている。図7Bは、ハニカムフィルタ200の第一端面31から、軸方向の長さの1/3の長さの部分における、ハニカムフィルタの軸方向に垂直な断面を示す断面図である。図7Cは、ハニカムフィルタ200の第一端面31から、軸方向の長さの2/3の長さの部分における、ハニカムフィルタの軸方向に垂直な断面を示す断面図である。図7Bに示す断面においては、格子状の隔壁21が、紙面のx−y方向にそれぞれに対して、右回りに、15°回転した状態で配置されている。また、図7Cに示す断面においては、格子状の隔壁21が、紙面のx−y方向にそれぞれに対して、右回りに、30°回転した状態で配置されている。
図7Dは、ハニカムフィルタ200の第二端面32を模式的に示す平面図である。この第二端面32においては、セル22を区画形成する格子状の隔壁21が、紙面のx−y方向にそれぞれに対して、右回りに、45°回転した状態で配置されている。このように、図5〜図7Dに示すハニカムフィルタ200においては、第一端面31から第二端面32までの回転軸Lに対する回転角度が45°ということになる。このように構成された本実施形態のハニカムフィルタ200は、図1〜図4Eに示すハニカムフィルタ100と同様の効果を奏するものである。
即ち、本発明のハニカムフィルタは、以下の(1)〜(3)の構成を満たしたものであれば、図1〜図4Eに示すハニカムフィルタ100と同様の効果を奏するものである。(1)第一端面及び第二端面を有する多角筒形状の外周壁と、外周壁の内部に配置され、第一端面及び第二端面の少なくとも一方の端面に開口部を有する複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁と、を備えたハニカムフィルタであること。(2)隔壁の気孔率が、40〜70%であること。(3)複数のセルが、回転軸に対して螺旋を描くように隔壁によって区画形成され、且つ、外周側に位置する少なくとも一のセルが、第一端面から第二端面に向かう途中で、外周壁によって遮断されていること。なお、図5〜図7Dに示すハニカムフィルタ200は、外周壁23の形状が異なることと、螺旋回転角度が異なること以外は、図1〜図4Eに示すハニカムフィルタ100と同様に構成されている。また、セルが螺旋を描く際の回転の方向は、右回りであってもよいし、左回りであってもよい。
図1〜図4Eに示すような本実施形態のハニカムフィルタ100においては、多孔質の隔壁1の気孔率が、40〜70%である。隔壁の気孔率が40%未満では、螺旋セル2a内を流通する排ガスが、螺旋セル2aを区画形成する隔壁1を透過し難くなり、十分な捕集性能が得られない。また、隔壁の気孔率が40%未満では、ハニカムフィルタ100の圧力損失が増大してしまう。一方、隔壁の気孔率が70%を超えると、ハニカムフィルタ100の強度が低下してしまう。特に、本実施形態のハニカムフィルタ100は、隔壁1が回転軸Lに対してねじれた状態で配置されているため、隔壁1がねじれていない従来のハニカムフィルタと比較して、軸方向に対する圧縮強度が低くなる傾向がある。隔壁1の気孔率を70%以下とすることで、隔壁1が回転軸Lに対してねじれた状態で配置されていたとしても、フィルタとして十分な強度を得ることができる。本実施形態のハニカムフィルタ100においては、隔壁1の気孔率が、42〜66%であることが好ましく、45〜61%であることが更に好ましい。このように構成することによって、捕集性能を維持しつつ、強度に優れたものとすることができる。気孔率は、水銀ポロシメータによって測定した値である。
図1〜図4Eに示すハニカムフィルタ100においては、第一端面11と第二端面12とのそれぞれの中心点を結ぶ中心軸が、セル2の螺旋軌道の回転軸Lとなっている。なお、回転軸Lは、本実施形態のハニカムフィルタ100において、セル2の螺旋軌道を説明するための仮想的な軸である。本実施形態のハニカムフィルタ100における回転軸Lは、第一端面11上の第一の点と、第二端面12上の第二の点とを結んで形成される軸であることが好ましい。また、回転軸Lは、第一端面11の外周壁に内接する内接円の内部に存在する点と、第二端面12の外周壁に内接する内接円の内部に存在する点とを結んで形成される軸であることがより好ましい。更に、この回転軸Lは、以下の2つの円の内部に存在する2点を結んで形成される軸であることがより好ましい。一つ目の円は、第一端面11の外周壁に内接する内接円と同心円で、且つ当該内接円の1/2の半径の円である。2つ目の円は、第二端面12の外周壁に内接する内接円と同心円で、且つ当該内接円の1/2の半径の円である。
また、回転軸Lは、外周壁3が上述した直角筒である場合には、外周壁3の各側面に平行となる軸であることが好ましい。このように構成することによって、複数のセル2のうちの一部のセルを、遮断螺旋セル2bとし、複数のセル2のうちの残りのセルを、螺旋セル2aとすることができる。本実施形態のハニカムフィルタ100においては、外周壁3が直角筒であり、且つ、セル2の螺旋軌道の回転軸Lが、第一端面11と第二端面12とのそれぞれの中心点を結んで形成される軸であることが特に好ましい。
本実施形態のハニカムフィルタ100においては、第一端面11に開口するセル2の総数(個数)に対する、螺旋セル2aの個数の比率が、30〜95%であることが好ましい。このように構成することによって、良好な捕集性能を維持しつつ、圧力損失を低減することができる。なお、セル2の総数(個数)に対する、螺旋セル2aの個数の比率が、45〜90%であることが更に好ましく、60〜85%であることが特に好ましい。螺旋セル2a以外のセル2は、遮断螺旋セル2bである。セル2の総数に対する、螺旋セル2aの個数の比率が、30%未満であると、ハニカムフィルタの圧力損失が増大してしまう。一方、セル2の総数に対する、螺旋セル2aの個数の比率が、95%を超えると、遮断螺旋セル2bが少なくなり、捕集性能が低下することがある。
また、図1〜図4に示すような、外周壁3が、四角筒形状であるハニカムフィルタ100においては、螺旋セル2aの、第一端面11から第二端面12までの螺旋回転角度が、30〜240°であることが好ましい。このように構成することによって、良好な捕集性能を維持しつつ、圧力損失を低減することができる。螺旋セル2aの螺旋回転角度が30°未満の場合には、捕集性能が十分に発揮されないことがある。また、螺旋セル2aの螺旋回転角度が240°を超える場合には、圧力損失が増大することがある。外周壁3が、四角筒形状である場合において、螺旋セル2aの螺旋の回転角度は、60〜150°であることが更に好ましく、60〜90°であることが特に好ましい。
また、図5〜図7Dに示すような、外周壁23が、三角筒形状であるハニカムフィルタ200においては、螺旋セル22aの、第一端面31から第二端面32までの螺旋回転角度が、20〜210°であることが好ましい。このように構成することによって、外周壁が四角筒形状の場合と同様の効果を奏するものとなる。外周壁23が、三角筒形状である場合において、螺旋セル22aの螺旋回転角度は、30〜210°であることが更に好ましく、30〜90°であることが特に好ましい。
図1〜図4に示すような本実施形態のハニカムフィルタ100においては、隔壁1の厚さについては特に制限はない。隔壁1の厚さは、0.01〜0.9mmであることが好ましく、0.02〜0.7mmであることが更に好ましく、0.03〜0.6mmであることが特に好ましい。隔壁1の厚さが0.01mm未満であると、ハニカムフィルタの強度が低下することがある。隔壁1の厚さが0.9mmを超えると、隔壁透過抵抗が増大し、捕集効率が十分に得られないことがあり、さらに圧力損失が増大することがある。隔壁1の厚さは、ハニカムフィルタ100の回転軸Lに垂直な断面を顕微鏡観察する方法で測定した値である。
ハニカムフィルタ100のセル密度については特に制限はないが、20〜100個/cm2であることが好ましい。セル密度が、20個/cm2未満であると、強度が低下することがある。また、セル密度が、100個/cm2を超えると、圧力損失が増大することがある。なお、セル密度は、ハニカムフィルタ100の第一断面における、単位面積当たりのセルの個数のことである。セル密度は、25〜80個/cm2であることが更に好ましく、30〜50個/cm2であることが特に好ましい。
多孔質の隔壁1の平均細孔径については、特に制限はない。隔壁1の平均細孔径は、5〜100μmであることが好ましく、7〜80μmであることが更に好ましく、9〜50μmであることが特に好ましい。隔壁の平均細孔径が5μm未満であると、隔壁に粒子状物質の堆積が少ない場合でも圧力損失が増大することがある。隔壁の平均細孔径が100μmを超えると、隔壁1が脆くなり欠落し易くなることがある。隔壁1の平均細孔径は、水銀ポロシメータで測定した値である。
ハニカムフィルタ100のセル2の形状は、特に制限はない。ハニカムフィルタ100の軸方向に垂直な断面におけるセル2の形状は、三角形、四角形、五角形、六角形、八角形等の多角形、円形、又は楕円形であることが好ましい。また、上記断面におけるセル2の形状は、その他の不定形であってもよい。本実施形態のハニカムフィルタ100においては、ハニカムフィルタ100の軸方向にセル2が螺旋を描くように形成されているため、軸方向に垂直な断面におけるセル2の形状が、第一端面11におけるセル2の形状から多少歪んでいてもよい。また、上記断面におけるセル2の形状は、セル2の周縁の一部が外周壁3によって遮られていない場合のセル2の形状である。
多孔質の隔壁1は、セラミックを主成分とするものであることが好ましい。隔壁1の材質としては、炭化珪素、珪素−炭化珪素系複合材料、コージェライト、ムライト、アルミナ、スピネル、炭化珪素−コージェライト系複合材料、リチウムアルミニウムシリケート、及びアルミニウムチタネートからなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。これらの中でも、熱膨張係数が小さく、耐熱衝撃性に優れたコージェライトが好ましい。「セラミックを主成分とする」というときは、セラミックを全体の80質量%以上含有することをいう。
外周壁3は、本実施形態のハニカムフィルタ100の外周部分を構成するものである。複数のセル2のうちの外周側に位置する少なくとも一のセル2が、外周壁3によって遮断され、この遮断されたセル2が、遮断螺旋セル2bとなる。本実施形態のハニカムフィルタ100においては、外周壁3が、多角筒形状であり、四角筒形状又は三角筒形状であることが好ましい。
外周壁3の厚さについては、特に制限はない。外周壁3の厚さは、0.2〜9mmが好ましく、0.4〜6mmが更に好ましく、0.6〜2mmが特に好ましい。外周壁3の厚さが0.2mmより薄いと、ハニカムフィルタ100の強度が低下することがある。外周壁3の厚さが9mmより厚いと、ハニカムフィルタ100の圧力損失が増大することがある。
外周壁3は、セラミックを主成分とするものであることが好ましい。外周壁3の材質としては、具体的には、炭化珪素、珪素−炭化珪素系複合材料、コージェライト、ムライト、アルミナ、スピネル、炭化珪素−コージェライト系複合材料、リチウムアルミニウムシリケート、及びアルミニウムチタネートからなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。これらの中でも、熱膨張係数が小さく、耐熱衝撃性に優れたコージェライトが好ましい。隔壁1と外周壁3の材質は、同じであることが好ましいが、異なっていてもよい。外周壁3は、隔壁1と一体的に形成されたものではなく、螺旋を描くようにねじれた状態の隔壁1の外周部分を覆うように、別途配置されたものであることが好ましい。「一体的に形成」とは、例えば、隔壁1と外周壁3とが、一度の押出成形によって同時に形成され、且つその境界部分が存在しないような連続して形成されたもののことをいう。
多角筒形状の外周壁3の第一端面11及び第二端面12の大きさについては特に制限はない。多角形の第一端面11及び第二端面12においては、最も長い多角線の長さが、15〜800mmであることが好ましく、20〜200mmであることが更に好ましく、30〜60mmであることが特に好ましい。
ここで、回転軸Lと中心が同じ位置であり、且つ外周壁に内接する内接円の直径を、「円筒内接直径」とする。また、回転軸Lと中心が同じ位置であり、且つ外周壁に外接する外接円の直径を、「円筒外接直径」とする。本実施形態のハニカム構造体においては、上記「円筒外接直径」に対する、上記「円筒内接直径」の比率が、10〜90%であることが好ましく、30〜80%であることが更に好ましい。上記「円筒外接直径」に対する、上記「円筒内接直径」の比率が、10%未満であると、遮断螺旋セル2bが形成され難くなることがあり、90%以上だと遮断螺旋セル2bが多くなり圧力損失が大きくなりすぎることがある。
外周壁3の第一端面11から第二端面12までの長さについては特に制限はない。外周壁3の「第一端面11から第二端面12までの長さ」を、以下「軸方向の長さ」という。外周壁3の軸方向の長さは、ハニカムフィルタ100を設置するスペースの大きさに応じて適宜決定することができる。外周壁3の軸方向の長さは、15〜1200mmであることが好ましく、40〜800mmであることが更に好ましく、60〜400mmであることが特に好ましい。外周壁3の軸方向の長さは、同一の螺旋回転角度を実現する場合に、隔壁1のねじれの度合いに影響を与えるものである。即ち、外周壁3の軸方向の長さが短い場合には、同一の螺旋回転角度を実現する場合に、隔壁1のねじれの度合いが大きくなる。一方、外周壁3の軸方向の長さが長い場合には、同一の螺旋回転角度を実現する場合に、隔壁1のねじれの度合いが小さくなる。隔壁1のねじれの度合いが大きくなり過ぎると、ハニカムフィルタ100の軸方向の圧縮強度が低下することがある。外周壁3の軸方向の長さを上記数値範囲とすることで、コンパクトで且つ軸方向の圧縮強度が高いハニカムフィルタ100とすることができる。
(2)ハニカムフィルタの製造方法:
次に、本発明のハニカムフィルタを製造する方法について、図1〜図4に示すような外周壁が四角筒形状のハニカムフィルタを製造する方法を例に説明する。
本実施形態のハニカムフィルタを製造する際には、まず、図8及び図9に示すようなハニカム構造体500を作製する。図8及び図9に示すハニカム構造体500は、一方の端面511から他方の端面512まで延びる複数のセル502を区画形成する隔壁501、及び隔壁501を取り囲むように配設された外周壁543を有するものである。ハニカム構造体500は、円筒形状のものである。このハニカム構造体500においては、一方の端面511から他方の端面512に延びる方向の回転軸に対して、複数のセル502が螺旋を描くように隔壁501によって区画形成されている。
このようなハニカム構造体500の外周部分を研削加工して、角柱状の構造体を得、得られた角柱状の構造体の側面に、外周壁を再度配設することによって、本実施形態のハニカムフィルタを製造することができる。図8及び図9における破線Jは、ハニカム構造体500を研削加工する位置(研削加工位置)を示すものである。
図8及び図9に示すハニカム構造体500は、以下のようにして作製することができる。まず、セラミック原料を含有する成形原料を混合し混練して坏土を得る。セラミック原料としては、炭化珪素、珪素−炭化珪素系複合材料、コージェライト、ムライト、アルミナ、スピネル、炭化珪素−コージェライト系複合材料、リチウムアルミニウムシリケート、及びアルミニウムチタネートからなる群より選択される少なくとも一種を用いることが好ましい。なお、コージェライト化原料とは、シリカが42〜56質量%、アルミナが30〜45質量%、マグネシアが12〜16質量%の範囲に入る化学組成となるように配合されたセラミック原料である。コージェライト化原料は、焼成されてコージェライトになるものである。
また、成形原料は、上記セラミック原料に、分散媒、有機バインダ、無機バインダ、界面活性剤、造孔材等を更に混合して調製することが好ましい。各原料の組成比は、特に限定されず、作製しようとするハニカム構造体の構造、材質等に合わせた組成比とすることが好ましい。
分散媒としては、水を用いることができる。分散媒の添加量は、セラミック原料100質量部に対して、10〜30質量部であることが好ましい。
有機バインダとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、又はこれらを組み合わせたものとすることが好ましい。また、有機バインダの添加量は、セラミック原料100質量部に対して、0.5〜5質量部が好ましい。
界面活性剤としては、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等を用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。界面活性剤の添加量は、セラミック原料100質量部に対して、0.5〜2質量部が好ましい。
造孔材としては、樹脂粒子、デンプン、カーボン等を用いることができる。造孔材は、作製するハニカム構造体の隔壁に気孔を形成するためのものである。ハニカム構造体の隔壁が40〜70%となるように、造孔材の添加量を調整することが好ましい。造孔材を添加せずとも、得られるハニカム構造体の隔壁の気孔率を40〜70%にすることができる場合には、造孔材を添加しなくともよい。
成形原料を混練して坏土を形成する方法としては特に制限はなく、例えば、ニーダー、真空土練機等を用いる方法を挙げることができる。
次に、得られた坏土を成形して、円筒状のハニカム成形体を形成する。ハニカム成形体は、複数のセルを区画形成する隔壁を有するものである。坏土を成形してハニカム成形体を形成する方法としては特に制限はなく、押出成形、射出成形等の公知の成形方法を用いることができる。例えば、所望のセル形状、隔壁厚さ、セル密度を有する押出成形用口金を用いて押出成形する方法等を好適例として挙げることができる。押出成形用口金の材質としては、摩耗し難い超硬合金が好ましい。
ハニカム成形体を成形する場合には、上述した押出成形用口金を回転させながら坏土を押出成形することにより、得られるハニカム成形体に、螺旋状の捻りを加えることが好ましい。この際、押出成形されたハニカム成形体の先端部分を、受け台等によって受け止めて、押出成形された部分が、押出成形用口金の回転と同期して回転しないようにすることが好ましい。これにより、一方の端面から他方の端面に延びる方向の回転軸に対して、複数のセルが螺旋を描くように隔壁によって区画形成されてハニカム成形体を得ることができる。
押出成形用口金の回転の速度と、坏土の押出し速度とを調整することによって、ハニカム成形体における、螺旋回転角度を調節することができる。
また、押出成形用口金を回転させずに、一方の端面から他方の端面に延びるセルが形成されたハニカム成形体を得た後に、得られたハニカム成形体を捻ってもよい。即ち、得られたハニカム成形体に対して、一方の端面から他方の端面に延びる方向を回転軸として、複数のセルが螺旋を描くように捻りを加え、ねじれた状態のハニカム成形体を作成してもよい。
次に、得られたハニカム成形体を乾燥する。次に、乾燥したハニカム成形体を焼成する。これにより、図8及び図9に示すような、流体の流路となる複数のセル502を区画形成する多孔質の隔壁501を備えたハニカム構造体500を得ることができる。このハニカム構造体500においては、全てのセル502が、一方の端面511から他方の端面512まで螺旋を描くように隔壁501によって区画形成されている。即ち、ハニカム構造体500においては、全てのセル502が、「螺旋セル」になっている。
乾燥方法は、例えば、熱風乾燥、マイクロ波乾燥、誘電乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等を挙げることができる。なかでも、誘電乾燥、マイクロ波乾燥又は熱風乾燥を単独で又は組み合わせて行うことが好ましい。
ハニカム成形体を焼成する前には、このハニカム成形体を仮焼することが好ましい。仮焼は、脱脂のために行うものである。仮焼の方法については特に制限はない。例えば、ハニカム成形体中の有機物の少なくとも一部を除去することができればよい。上記有機物としては、有機バインダ、界面活性剤、造孔材等を挙げることができる。有機バインダの燃焼温度は100〜300℃程度である。このため、仮焼は、酸化雰囲気において、200〜1000℃程度で、10〜100時間程度加熱することが好ましい。
ハニカム成形体の焼成は、仮焼した成形体を構成する成形原料を焼結させて緻密化し、所定の強度を確保するために行われるものである。焼成の条件は、成形原料の種類により異なるため、その種類に応じて適当な条件を選択すればよい。例えば、コージェライト化原料を使用している場合には、焼成温度は、1350〜1440℃が好ましい。また、焼成時間は、最高温度でのキープ時間として、3〜10時間が好ましい。仮焼、本焼成を行う装置としては、電気炉、ガス炉等を挙げることができる。
次に、得られたハニカム構造体500の外周部分を研削加工して、角柱状の構造体(角柱構造体600)を得る。
次に、図10に示すように、得られた角柱構造体600の外周に、外周壁703を配設して、外周壁が四角筒形状のハニカムフィルタ700を製造する。角柱構造体600は、多孔質の隔壁701を有し、この隔壁701により、複数のセル702が区画形成されている。そして、図10に示すハニカムフィルタ700においては、複数のセル702が、第一端面711から第二端面712に延びる方向の回転軸に対して螺旋を描くように隔壁701によって区画形成されている。
図10に示すハニカムフィルタ700においては、複数のセル702のうちの外周側に位置する少なくとも一のセル702が、第一端面711から第二端面712に向かう途中で、外周壁703によって遮断されている。即ち、図8及び図9に示すハニカム構造体500を研削加工することにより、得られる角柱構造体600の外周側に位置する少なくとも一のセル502が、螺旋軌道の途中で寸断されることとなる。そして、この角柱構造体600の外周側に、新たに外周壁703を配設することにより、螺旋軌道の途中で寸断されたセル702が、外周壁703によって遮断されることとなる。
外周壁703を形成する方法としては、角柱構造体600の外周に、スラリー状のコート材を塗工し、塗工したコート材を乾燥する方法を挙げることができる。コート材を乾燥した後、更に焼成してもよい。このようなコート材としては、例えば、ハニカム構造体を作製するための坏土と同じ成分のものを挙げることができる。また、コート材は、セラミックセメントなどを用いた、セメントコート材であってもよい。
以上のようにして、本実施形態のハニカムフィルタを製造することができる。図8及び図9では、ハニカム構造体500が円筒形状である場合の例を示しているが、複数のセル502が螺旋を描くように、焼成前の成形体に捻りを加えられるような形状であれば、円筒形状以外の形状であってもよい。即ち、焼成前の成形体に捻りを加えることができ、且つ、得られたハニカム構造体の外周部分を研削加工して、角柱状の角柱構造体が得られるようなハニカム構造体であれば、ハニカム構造体の形状については特に制限はない。なお、成形体に捻りを加える際に、回転軸に対して均等な捻りを加え易いことから、ハニカム構造体500が円筒形状であることが好ましい。
また、図8及び図9では、角柱構造体600の形状が四角柱である場合の例を示しているが、三角柱等の他の多角柱であってもよい。多角柱における端面の角の数が多くなると、角柱構造体600の形状が、円柱に近くなる。角柱構造体600の形状が、円柱に近くなると、角柱構造体600の外周側のセル502が寸断され難くなることがある。このため、角柱構造体600の形状は、三角柱又は四角柱であることが好ましい。
(3)接合型ハニカムフィルタ:
次に、本発明の接合型ハニカムフィルタの一の実施形態について説明する。本実施形態の接合型ハニカムフィルタは、これまでに説明した本発明のハニカムフィルタを複数個備えたものである。ここで、図1〜図4に示すハニカムフィルタ100を複数個備えた接合型ハニカムフィルタを例に、本実施形態の接合型ハニカムフィルタについて説明する。図11は、本発明の接合型ハニカムフィルタの一の実施形態を模式的に示す斜視図である。
図11に示すように、本実施形態の接合型ハニカムフィルタ800は、これまでに説明した本発明のハニカムフィルタ100を複数個備えたものである。本実施形態の接合型ハニカムフィルタ800においては、複数個のハニカムフィルタ100が、互いの外周壁3の表面同士が対向するように隣接して配置された状態で接合されたものである。図11に示す接合型ハニカムフィルタ800は、第一端面11側から見た場合に、縦横それぞれ3個ずつ、合計で9個のハニカムフィルタ100が接合されたものである。ハニカムフィルタ100の外周壁3の表面同士は、接合層811によって接合されている。
接合層811は、ハニカムフィルタ100の外周壁3の表面同士を接合するための接合材によって形成されたものであることが好ましい。接合材としては、無機繊維、コロイダルシリカ、粘土、SiC粒子、有機バインダ、発泡樹脂等の充填材を水等の分散媒に分散させてスラリー状に調製されたものを挙げることができる。このような接合材を、ハニカムフィルタ100の外周壁3の表面(即ち、接合面)に塗工し、この接合材を塗工した面に、別のハニカムフィルタ100の外周面3の表面を当接させて、互いの外周壁3の表面同士を接合させる。接合材が乾燥して固化したものが、上述した接合層811となる。
接合層の厚さについては特に制限はない。接合層の厚さとしては、0.1〜9mmであることが好ましく、0.2〜5mmであることが更に好ましく、0.4〜3mmであることが特に好ましい。「接合層の厚さ」とは、接合型ハニカムフィルタの、ハニカムフィルタの軸方向に垂直な断面における、一のハニカムフィルタの外周壁の表面(接合面)から、接合層を介して接合されたハニカムフィルタの外周壁の表面(接合面)までの長さのことをいう。接合層の厚さが厚すぎると、接合型ハニカムフィルタの、ハニカムフィルタの軸方向に垂直な断面における、排ガスが通過する面積が相対的に小さくなり、圧力損失が増大することがある。接合層の厚さが薄すぎると、ハニカムフィルタ同士を接合する接合力が十分に得られないことがある。また、ハニカムフィルタの相互間に接合層が配置されることにより、各ハニカムフィルタが熱膨張又は熱収縮したときに、体積変化分を接合層によって緩衝させることができる。接合層の厚さが薄すぎると、上述した体積変化分を緩衝させる効果が十分に発現しないことがある。
本実施形態の接合型ハニカムフィルタ800においては、接合する個々のハニカムフィルタ100が、予め多角筒形状の外周壁3を備えているため、接合層811によるハニカムフィルタ100の接合が極めて容易である。本実施形態の接合型ハニカムフィルタ800は、本発明のハニカムフィルタを複数個接合したものであるため、本発明のハニカムフィルタと同様の効果を奏するものである。
図11においては、9個のハニカムフィルタ100を接合層811によって接合したものであるが、接合するハニカムフィルタ100の個数については特に制限はない。接合型ハニカムフィルタ800の大きさ、及びハニカムフィルタ100の大きさに応じて、接合するハニカムフィルタ100の個数を適宜決定することができる。
また、接合型ハニカムフィルタは、接合された複数個のハニカムフィルタの外周部分が研削加工され、研削加工された側面を覆うように配置された外壁を更に備えたものであってもよい。図12は、本発明の接合型ハニカムフィルタの他の実施形態を模式的に示す斜視図である。
図12に示す接合型ハニカムフィルタ801は、図11に示すような接合型ハニカムフィルタ800の外周部分が研削加工され、研削加工された側面を覆うように、更に外壁810が配置されたものである。このように構成することによって、接合型ハニカムフィルタ801の全体形状を、所望の形状とすることができる。接合型ハニカムフィルタ801を構成する各ハニカムフィルタ100は、多角筒形状の外周壁3を備えたものであるため、複数個のハニカムフィルタ100を接合した接合型ハニカムフィルタ800(図11参照)は、その全体形状が多角筒形状となる。ハニカムフィルタ100を接合層811によって接合した後、その外周部分を研削加工して、更に外壁810を設けることにより、個々のハニカムフィルタ100によって発現する効果を維持しつつ、接合型ハニカムフィルタ801を所望の形状とすることができる。
接合型ハニカムフィルタ801の外壁810としては、各ハニカムフィルタ100の外周壁3と同様の材料を用いて形成されたものであることが好ましい。
また、接合型ハニカムフィルタは、四角筒形状以外の他の多角筒形状の外周壁を備えたハニカムフィルタを、接合層によって接合したものであってもよい。図13は、本発明の接合型ハニカムフィルタの更に他の実施形態を模式的に示す斜視図である。図13に示す接合型ハニカムフィルタ802は、図5〜図7Dに示す三角筒形状の外周壁23を備えたハニカムフィルタ200を、接合層811によって接合したものである。図13に示す接合型ハニカムフィルタ802においては、6個のハニカムフィルタ200を、接合層811によって接合したものである。図13に示す接合型ハニカムフィルタ802においては、接合型ハニカムフィルタ802の外周部分が研削加工されておらず、接合型ハニカムフィルタ802の外周が、ハニカムフィルタ200の外周壁23によって構成されている。図13に示す接合型ハニカムフィルタ802においても、その外周部分を研削加工して、図12に示すような外壁810を更に配置してもよい。
また、接合型ハニカムフィルタを構成する各ハニカムフィルタは、その外周形状が同じものであってもよいし、外周形状が異なるものであってもよい。即ち、本発明の接合型ハニカムフィルタは、外周形状が異なるハニカムフィルタを複数個備え、これらのハニカムフィルタが、接合層によって接合されたものであってもよい。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
まず、セラミック原料を含有する成形原料を用いて、ハニカム成形体を成形するための坏土を調製した。セラミック原料として、コージェライト化原料を用いた。コージェライト化原料に、分散媒、有機バインダ、分散剤、造孔材を添加して、成形用の坏土を調製した。分散媒の添加量は、コージェライト化原料100質量部に対して、3質量部とした。有機バインダの添加量は、コージェライト化原料100質量部に対して、5質量部とした。造孔材の添加量は、コージェライト化原料100質量部に対して、10質量部とした。得られたセラミック成形原料を、ニーダーを用いて混練して、坏土を得た。
コージェライト化原料として、タルク、カオリン、アルミナ、シリカを、MgOが13.5質量%、Al2O3が36.0質量%、SiO2が50.5質量%という組成になるように調合した。
次に、得られた坏土を、真空押出成形機を用いて押出成形し、ハニカム成形体を得た。ハニカム成形体を成形する際には、真空押出成形機の押出成形用口金を、坏土の押出方向に対して垂直な面上を回転させながら押出成形を行った。押出成形されたハニカム成形体の先端部分を、受け台によって受け止めて、押出成形された部分が、押出成形用口金の回転と同期して回転しないようにした。
実施例1においては、得られるハニカムフィルタの螺旋回転角度が15°となるように、上記真空押出成形機の押出成形用を回転させた。ハニカム成形体の形状は、円筒状であり、端面の直径は、70mmであった。
次に、得られたハニカム成形体を高周波誘電加熱乾燥した後、熱風乾燥機を用いて120℃で2時間乾燥した。その後、1350〜1450℃で10時間焼成してハニカム構造体を得た。
得られたハニカム構造体は、一方の端面における隔壁の厚さが、0.3mmであり、セル密度が、40個/cm2であった。また、ハニカム構造体の一方の端面から他方の端面までの長さが、150mmであった。ハニカム構造体の隔壁の気孔率は、60%であった。気孔率は、水銀ポロシメータによって測定した値である。
得られたハニカム構造体の外周部分を研削加工して、端面が四角形の角柱構造体を作製した。角柱構造体は、ハニカム構造体の一方の端面及び他方の端面が四角形となるように研削加工されたものである。角柱構造体は、四角形の端面の一辺が50mmの正四角柱形状である。
得られた角柱構造体の外周面に、スラリー状のコート材を塗工した。角柱構造体の外周面に塗工したコート材を乾燥して、外周壁を作製した。外周壁の厚さは、3mmであった。このようにして、実施例1のハニカムフィルタを作製した。実施例1のハニカムフィルタの螺旋回転角度は、30°である。表1に、実施例1のハニカムフィルタの「外周壁の形状」、「螺旋回転角度(°)」、及び「気孔率(%)」を示す。
また、実施例1のハニカムフィルタについて、以下の方法で、「捕集性能」、「圧力損失」、「強度」、及び[アッシュ堆積]の評価を行った。結果を表1に示す。
[捕集性能]
実施例1のハニカムフィルタを、ディーゼルエンジンの排気系に搭載し、捕集性能を測定した。測定結果については、A、B、C、Y、及びZの5段階で評価した。捕集効率が30%以上、50%未満の場合を、評価Aとした。捕集効率が15%以上、30%未満の場合を、評価Bとした。捕集効率が10%以上、15%未満の場合を、評価Cとした。捕集効率が70%以上の場合を、評価Yとした。捕集効率が0%以上、10%未満の場合を、評価Zとした。
[圧力損失]
実施例1のハニカムフィルタを、ディーゼルエンジンの排気系に搭載し、圧力損失を測定した。測定結果については、A、B、C、及びZの4段階で評価した。測定された圧力損失の値が、比較例3の圧力損失と比較して、同等(具体的には、比較例3の圧力損失の値の20%減の値から、比較例3の圧力損失の値の20%増の値まで)の場合を、評価Aとした。測定された圧力損失の値が、比較例3の圧力損失の値に対して、30%以上で且つ60%未満の増加量である場合を、評価Bとした。測定された圧力損失の値が、比較例3の圧力損失の値に対して、60%以上で且つ200%未満の増加量である場合を、評価Cとした。測定された圧力損失の値が、比較例3の圧力損失の値に対して、200%以上の増加量である場合を、評価Zとした。
[強度]
実施例1のハニカムフィルタの強度を、圧縮試験機を用いて測定した。測定結果については、A、B、C、及びZの4段階で評価した。比較例3の強度と比較して、同等(具体的には、比較例3の強度の15%減の値から、比較例3の強度の15%増の値まで)の場合を、評価Aとした。測定された強度の値が、比較例3の強度の値に対して、15%超で且つ35%以下の減少量である場合を、評価Bとした。測定された強度の値が、比較例3の強度の値に対して、35%超で且つ60%以下の減少量である場合を、評価Cとした。測定された強度の値が、比較例3の強度の値に対して、60%超の減少量である場合を、評価Zとした。
[アッシュ堆積]
実施例1のハニカムフィルタに、ディーゼルエンジンの排気系に搭載して、10万km相当の走行試験を行い、アッシュ(灰)の堆積質量を測定した。測定結果については、A、B、C、Y、及びZの4段階で評価した。ハニカムフィルタに流入したアッシュ総量に対して、0質量%以上、20質量%未満のアッシュが堆積していた場合を、評価Aとした。 ハニカムフィルタに流入したアッシュ総量に対して、20質量%以上、40質量%未満のアッシュが堆積していた場合を、評価Bとした。ハニカムフィルタに流入したアッシュ総量に対して、40質量%以上、60質量%未満のアッシュが堆積していた場合を、評価Cとした。ハニカムフィルタに流入したアッシュ総量に対して、60質量%以上のアッシュが堆積していた場合を、評価Zとした。
(実施例2〜9、比較例1及び2)
螺旋回転角度、及び隔壁の気孔率が、表1となるように変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、ハニカムフィルタを製造した。得られたハニカムフィルタについて、実施例1と同様の方法で、「捕集性能」、「圧力損失」、「強度」、及び[アッシュ堆積]の評価を行った。結果を表1に示す。また、螺旋回転角度の変更は、真空押出成形機の押出成形用口金の回転速度を調節することによって行った。また、各隔壁の気孔率は、造孔材の添加量によって調節した。
(比較例3)
真空押出成形機の押出成形用口金を回転させず、一方の端面から他方の端面に向けてセルが真っ直ぐに延びるハニカム成形体を作製し、以下、実施例1と同様の方法で、ハニカムフィルタを作製した。得られたハニカムフィルタについて、実施例1と同様の方法で、「捕集性能」、「圧力損失」、「強度」、及び[アッシュ堆積]の評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例4)
真空押出成形機の押出成形用口金を回転させず、一方の端面から他方の端面に向けてセルが真っ直ぐに延びるハニカム成形体を作製し、以下、実施例1と同様の方法で、ハニカムフィルタを作製した。比較例4においては、ハニカムフィルタのセルのいずれか一方の端面における開口部分に、目封止部材を配設した。即ち、所定のセルの第一端面の開口部分と、残余のセルの第二端面の開口部分とに、目封止部材を配設してハニカムフィルタを作製した。得られたハニカムフィルタについて、実施例1と同様の方法で、「捕集性能」、「圧力損失」、「強度」、及び[アッシュ堆積]の評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例10)
実施例10においては、外周壁の形状が三角筒形状のハニカムフィルタを作製した。まず、実施例1と同様の方法によってハニカム構造体を作製した。得られたハニカム構造体の外周部分を研削加工して、端面が三角形の角柱構造体を作製した。角柱構造体は、ハニカム構造体の一方の端面及び他方の端面が三角形となるように研削加工されたものである。角柱構造体は、三角形の端面の一辺が45mmの正三角柱形状である。
得られた角柱構造体に、実施例1の角柱構造体の外周面に塗工したものと同じ材質のコート材を塗工した。角柱構造体の外周面に塗工したコート材を乾燥して、外周壁を作製した。外周壁の厚さは、40mmであった。このようにして、実施例10のハニカムフィルタを作製した。実施例10のハニカムフィルタの螺旋回転角度は、15°である。表2に、実施例10のハニカムフィルタの「外周壁の形状」、「螺旋回転角度(°)」、及び「気孔率(%)」を示す。
また、実施例1と同様の方法で、「捕集性能」、「圧力損失」、「強度」、及び[アッシュ堆積]の評価を行った。結果を表2に示す。
(実施例11〜18、比較例5及び6)
螺旋回転角度、及び隔壁の気孔率が、表2となるようにしたこと以外は、実施例10と同様の方法で、ハニカムフィルタを製造した。得られたハニカムフィルタについて、実施例1と同様の方法で、「捕集性能」、「圧力損失」、「強度」、及び[アッシュ堆積]の評価を行った。結果を表2に示す。また、螺旋回転角度の変更は、真空押出成形機の押出成形用口金の回転速度を調節することによって行った。また、各隔壁の気孔率は、造孔材の添加量によって調節した。
(比較例7)
真空押出成形機の押出成形用口金を回転させず、一方の端面から他方の端面に向けてセルが真っ直ぐに延びるハニカム成形体を作製し、以下、実施例10と同様の方法で、ハニカムフィルタを作製した。得られたハニカムフィルタについて、実施例1と同様の方法で、「捕集性能」、「圧力損失」、「強度」、及び[アッシュ堆積]の評価を行った。結果を表2に示す。
(結果)
表1及び表2に示すように、実施例1〜18のハニカムフィルタは、捕集性能に優れ、且つ圧力損失も低いものであった。比較例3及び7のハニカムフィルタは、隔壁によって区画形成されたセルが、一方の端面から他方の端面に向けて真っ直ぐに延びているため、捕集性能は極めて悪いものであった。そのため、比較例3及び7については、フィルタとしての用を成さないものであった。
また、比較例1及び5のハニカムフィルタは、隔壁の気孔率が低いため、螺旋セル内に流入した排ガスが、螺旋セルの外側を区画する隔壁を通過し難く、捕集性能が悪いものとなった。また、排ガスが隔壁を通過し難いため、圧力損失も増大していた。また、比較例2及び6のハニカムフィルタは、隔壁の気孔率が高すぎるため、ハニカムフィルタの強度が極めて低かった。
また、実施例1〜9のハニカムフィルタのうち、螺旋回転角度が30〜240°である実施例2〜6については、捕集性能と圧力損失とのバランスが特に良好であった。即ち、外周壁の形状が四角筒形状である場合には、螺旋回転角度が30〜240°であることが好ましいことが分かった。また、実施例10〜18のハニカムフィルタのうち、螺旋回転角度が20〜210°である実施例11〜15については、捕集性能と圧力損失とのバランスが特に良好であった。即ち、外周壁の形状が三角筒形状である場合には、螺旋回転角度が20〜210°であることが好ましいことが分かった。