JP2013188678A - 排水処理システム - Google Patents

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松田  学
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Abstract

【課題】発泡し易い排水でも減圧下で安定して蒸留できる排水処理システムを提供する。
【解決手段】減圧下で蒸留することによって排水を浄化する排水処理システム1である。蒸留釜10、排水槽20、消泡剤を貯留する薬液槽30、復水装置50、回収槽60、減圧ポンプ70、制御装置80を備える。制御装置80は、減圧蒸留前に排水の一部を供給し、減圧蒸留中に残りの排水を複数回に分けて追加供給する給液制御部84、排水の追加供給時に蒸留釜10内に消泡剤を注入する薬液注入制御部83を有している。
【選択図】 図1

Description

本発明は、排水を減圧下で蒸留することにより、排水を浄化する排水処理システムに関し、特に、蒸留中に発生する発泡を抑制する技術に関する。
減圧下で蒸留を行う場合、圧力変化に伴って沸点が変動するため、温度管理が難しく、安定状態を保つのは容易でない。そのため、処理水が発泡し易い場合、蒸留中に発泡が生じて泡が蒸留釜から溢れ出すという問題がある。特許文献1や特許文献2には、この問題に対する対策を講じた蒸発濃縮装置が開示されている。
特許文献1の蒸発濃縮装置では、密閉された釜の内部に加熱コイルが設置されている。加熱コイルの半分以上の面積は、貯留される液の液面よりも上になるように構成されている。そうすることで、発生した泡を直接加熱コイルで加熱して破裂し易くしている。
また、この蒸発濃縮装置には、消泡液を自動供給する機能も備えられている。具体的には、泡液面が異常検出位置に達した場合、蒸発濃縮運転が停止され、釜内はいったん大気圧に戻される。そうして、大気圧下の釜内に消泡液が供給される。その後、減圧を復帰して蒸発濃縮運転が再開される。
特許文献2の蒸発濃縮装置は、特許文献1の蒸発濃縮装置をベースに、より効率的に消泡及び蒸発濃縮ができるように構成されている。すなわち、特許文献2の蒸発濃縮装置の釜には、釜内の廃液を加熱コイルの上に散布する廃液循環ポンプや廃液循環配管が設置されている。消泡液は循環途中の廃液に添加される。
釜内に撹拌スクリューを備えた蒸発濃縮装置も存在する(特許文献3)。
特開平10−192601号公報 特開2005−125252号公報 特開2010−194505号公報
特許文献2の蒸発濃縮装置であれば、特許文献1の蒸発濃縮装置のように、釜内を大気圧に戻さなくても消泡剤が添加できるので処理性能に優れる。しかし、廃液を循環させる機構を新たに設置する必要があるため、構造が複雑になり、設備の大型化を招く。
本発明の目的は、設備の複雑化や大型化を招くことなく、発泡し易い排水でも減圧下で安定して蒸留できる排水処理システムを提供することにある。
本発明の排水処理システムは、減圧下で蒸留することによって排水を浄化する。排水処理システムは、蒸留釜と、前記蒸留釜に供給する排水を貯留する排水槽と、排水に添加する消泡剤を貯留する薬液槽と、前記蒸留釜で気化した水蒸気を冷却する復水装置と、前記復水装置で液化した蒸留水を回収する回収槽と、前記蒸留釜の内部に通じる減圧ポンプと、排水処理を制御する制御装置とを備える。前記制御装置は、減圧蒸留前の前記蒸留釜に前記排水槽の排水の一部を供給し、減圧蒸留中の前記蒸留釜に残りの排水を複数回に分けて追加供給する給液制御部と、排水の追加供給時に、前記蒸留釜内に消泡剤を注入する薬液注入制御部とを有している。
この排水処理システムによれば、排水を一度に供給するのではなく、減圧蒸留前に排水の一部が供給され、減圧蒸留中に残りの排水が複数回に分けて追加供給されるので、排水の水位を低位置に安定して保持できる。従って、発泡が生じても復水装置に泡が入り込むのを効果的に防ぐことができる。
減圧蒸留中に蒸留釜に排水を追加供給すると、その影響によって蒸留釜の内部に発泡が生じるおそれがある。それに対し、この排水処理システムでは、排水の追加供給のタイミングに合わせて蒸留釜内に消泡剤が注入されるので、効率的かつ効果的に発泡が抑制できる。
具体的には、前記回収槽は、前記復水装置に接続され、当該復水装置から回収する蒸留水を断続的に貯留する。前記減圧ポンプは、前記回収槽に接続され、当該回収槽及び前記復水装置を通じて前記蒸留釜の内部を減圧する。前記制御装置は、前記回収槽内の蒸留水が設定量に達した時に、前記復水装置に通じる流路を遮断し、当該回収槽の減圧を一時的に解除して蒸留水を流出させ、当該回収槽の減圧を復帰させる時に次第に減圧させる蒸留水回収制御部を有している。
そうすれば、蒸留釜内部の圧力変動が緩やかになるため、発泡を効果的に抑制できる。
更に、前記薬液注入制御部は、前記回収槽内の蒸留水が前記設定量に達するまでの回収時間を計測し、当該回収時間が閾値を下回った時に、前記蒸留釜内に消泡剤を注入するようにしてもよい。
蒸留水が排水で汚染されると回収時間は短くなる。従って、その異常状態を示す閾値と回収時間とを比較することで、蒸留釜内での過度な発泡を間接的に検知することができる。そして、そのタイミングで蒸留釜内に消泡剤を注入することで、効率的かつ効果的に発泡が抑制できる。
更に、前記薬液注入制御部は、前記蒸留釜内が設定温度に達した時に、当該蒸留釜内に消泡剤を注入するようにしてもよい。設定温度到達直後は温度や圧力が不安定なため、発泡し易い傾向がある。従って、そのタイミングに合わせて消泡剤を注入することで、効率的かつ効果的に発泡が抑制できる。
更に、前記薬液注入制御部は、減圧蒸留中の前記蒸留釜内に、間欠的に消泡剤を注入するようにしてもよい。そうすれば、減圧蒸留中、少量の消泡剤の添加で、消泡剤の効果を継続させることができ、発泡を効果的に抑制できる。
更に、前記薬液注入制御部は、前記蒸留釜への排水の供給を開始する前に、前記排水槽内に消泡剤を注入するようにしてもよい。そうすれば、排水槽内での発泡が抑制でき、予め排水に消泡剤を添加しておくことで、減圧蒸留初期までの発泡を抑制できる。
本発明によれば、発泡し易い排水であっても安定して効率よく浄化処理できる。
排水処理システムの構成の一例を示す概略図である。 制御装置の概略構成を示すブロック図である。 排水処理システムにおける基本的な運転プロセスを示すフロー図である。 運転プロセスの詳細を示すフロー図である。 運転プロセスの詳細を示すフロー図である。 回収槽での処理の詳細を示すフロー図である。 運転プロセスの詳細を示すフロー図である。 蒸留釜への消泡剤の注入に関するタイミングチャートである。 蒸留釜への消泡剤の注入に関するフロー図である。 蒸留釜への消泡剤の注入に関するフロー図である。 回収処理での減圧制御と蒸留釜の内部圧力との関係を示す概略図である。 減圧制御の応用例を示す概略図である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。ただし、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物あるいはその用途を制限するものではない。
<排水処理システムの構成>
図1に、排水処理システムの一例を示す。この排水処理システム1は、例えば、印刷工場等で排出される発泡性の排水(発泡し易い排水)の浄化処理に用いられる。排水は、排水処理システム1によって所定量ずつ処理され、汚染物質が濃縮された濃縮廃液と浄水とに分離される。濃縮廃液と浄水とを分離する処理は、排水を撹拌しながら減圧下で蒸留することによって行われる。濃縮廃液は廃棄され、浄水は再利用される。
排水処理システム1は、蒸留釜10や排水槽20、薬液槽30、浄水槽40、復水装置50、回収槽60、減圧ポンプ70、制御装置80などで構成されている。図1中、符号P1等が示す太線は、配管を表している。また、符号V1等は電磁弁等の制御可能な開閉弁を表している。排水処理は、排水処理システム1を構成している各装置が適宜協働することによって行われる。
排水槽20は、蒸留釜10に供給する排水を計量して貯留する通気性(密閉されていない)の容器である。排水槽20の上部の入水口には、図外の設備に連なる排水供給配管P0が接続されている。排水槽20には、この排水供給配管P0を通じて排水が供給される。排水槽20には又、貯留されている排水の水位を計測する第1水位計21が設置されている。第1水位計21の計測値は制御装置80に入力されており、制御装置80は、その計測値に基づいて排水槽20の排水量を計測し制御する。排水槽20の下部の出水口は、途中に第1開閉弁V1が設置された第1配管P1で蒸留釜10と接続されている。蒸留釜10には、この第1配管P1を通じて排水が供給される。
薬液槽30は、排水に添加する消泡剤を貯留する通気性の容器である。消泡剤は、液状にして使用される。消泡剤の種類や濃度、配合等は排水の性状に合わせて適宜選択できる。消泡剤の具体例としては、例えば、シリコン系消泡剤、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等を挙げることができる。一般に、消泡剤の効果は速効性があっても持続性に欠ける。従って、消泡剤の添加は、発泡が生じるタイミングで行うのが効果的である。消泡剤は、手投入等によって薬液槽30に投入される。
薬液槽30は、途中に第2開閉弁V2が設置された第2配管P2で排水槽20と接続されている。排水槽20には、この第2配管P2を通じて消泡剤が注入される。薬液槽30は又、途中に第3開閉弁V3が設置された第3配管P3で蒸留釜10と接続されている。蒸留釜10には、この第3配管P3を通じて消泡剤が注入される。
蒸留釜10は、排水を減圧蒸留する気密性の装置である。蒸留釜10には、釜本体11や撹拌機12、加熱機構13、廃棄口14、温度計15、圧力計16、水蒸気流出路17などが設けられている。釜本体11は、耐熱性及び耐圧性の容器であり、両端が塞がれた横長な円筒形状をしている。撹拌機12は、シャフト12aや掻き取り羽根12b、撹拌羽根12c、モータ12dなどで構成されている。シャフト12aは、釜本体11の内部にあってその両端部が釜本体11に軸支されており、横軸Jを中心に回転する。
モータ12dは、釜本体11の外部に設置され、制御装置80と協働してシャフト12aを回転駆動する。掻き取り羽根12b及び撹拌羽根12cは、シャフト12aに交互に取り付けられている。掻き取り羽根12bの先端は、釜本体11の内周面に接しており、回転に伴って釜本体11の内周面を摺り動くことでスケールの発生を防止する。撹拌羽根12cは、掻き取り羽根12bと共に、釜本体11の内部に貯留された排水を撹拌し、排水の温度や濃度を均一にする。
加熱機構13は、釜本体11の下部に2重底状に形成された蒸気室13aを有している。具体的には、隙間を隔てて釜本体11の外周面の概ね下半分を覆うように、釜本体11の下部に蒸気室カバー13bが一体に取り付けられている。蒸気室13aは、釜本体11の外面と蒸気室カバー13bの内面とによって気密状に区画されている。
蒸気室13aには、途中に第4開閉弁V4が設置された第4配管P4を通じて外部の蒸気供給装置STから蒸気が供給される。蒸気室13aに供給される蒸気の圧力は、熱量が不足しないように高圧に設定されている。従って、攪拌機12と加熱機構13との組み合わせにより、排水に効率よく熱が供給できる。蒸気室13aの内部で発生するドレン水は、ドレン水排出口13cから排水される。
廃棄口14は、釜本体11の下端部に開閉可能に設けられている。廃棄口14を通じて、一連の排水処理後に釜本体11の内部に残る濃縮廃液が排出される。温度計15及び圧力計16は、釜本体11の内部の温度及び圧力を計測し、その計測値を制御装置80に出力する。
水蒸気流出路17は、釜本体11の上隅部から上方に突出するように設けられている。水蒸気流出路17は、釜本体11の上部で復水装置50に接続されており、釜本体11の内部で発生する水蒸気は、水蒸気流出路17を通じて復水装置50に送られる。水蒸気流出路17にはフィルタ17aが設置されている。フィルタ17aにより、共沸物の復水装置50への浸入が低減される。水蒸気流出路17には又、フィルタ17aを洗浄する洗浄装置17bが設置されている。
復水装置50は、蒸留釜10で気化した水蒸気を冷却する気密性の装置である。復水装置50は、内部に復水室が形成された復水容器51と、復水室に設置された複数の冷却配管52とを有している。冷却配管52は、図外の冷媒供給装置と接続されており、冷却水等の冷媒が冷却配管52の内部を循環する。復水容器51の一方の上隅部に設けられた取入口を介して復水室と水蒸気流出路17とが通じている。復水容器51の他方の下隅部に設けられた取出口は、途中に第5開閉弁V5が設置された第5配管P5で回収槽60と接続されている。復水室で水蒸気が液化して生じる蒸留水は、第5配管P5を通じて回収槽60に回収される。
回収槽60は、回収した蒸留水を断続的に貯留する気密性の小型容器である。回収槽60には、貯留される蒸留水の水位を計測する第2水位計61が設置されている。第2水位計61の計測値は制御装置80に入力されており、制御装置80は、その計測値に基づいて回収槽60の蒸留水量を計測し制御する。
回収槽60は、途中に第6開閉弁V6が設置された第6配管P6を介して減圧ポンプ70と接続されている。減圧ポンプ70の具体例としては、例えば水封式真空ポンプが挙げられる。第6配管P6における第6開閉弁V6と回収槽60との間の部分には、第7配管P7の一端が接続されている。第7配管P7の他端は外部に開放されており、第7配管P7の途中には第7開閉弁V7が設置されている。
回収槽60の下部には採水口が設けられている。採水口は、途中に第8開閉弁V8が設置された第8配管P8でその下方に位置する浄水槽40と接続されている。浄水槽40には、この第8配管P8を通じて蒸留水が流出する。
浄水槽40は、回収槽60で回収された蒸留水を受け入れて貯留する通気性の容器である。浄水槽40の下部には、途中に第9開閉弁V9が設置され、送水ポンプ41に通じる第9配管P9が接続されている。浄水槽40の蒸留水は、送水ポンプ41によって図外の設備に供給される。浄水槽40には、貯留される蒸留水の水位を計測する第3水位計42が設置されている。第3水位計42の計測値は制御装置80に入力されており、制御装置80は、その計測値に基づいて送水ポンプ41を駆動し、浄水槽40の蒸留水量を制御する。
制御装置80は、コンピュータ等のハードウエアや、コンピュータに予め実装された処理プログラム等のソフトウエアなどで構成されている。廃水処理の一連のプロセスは、制御装置80が、減圧ポンプ70等の各装置や各開閉弁を総合的に制御することにより、自動的に行われる。
図2に、制御装置80の概略構成を表したブロック図を示す。制御装置80には、温度制御部81、圧力制御部82、薬液注入制御部83、給液制御部84、蒸留水回収制御部85、及び排出制御部86などが備えられている。
温度制御部81は、温度計15の計測値に基づいて、第4開閉弁V4との協働により、蒸留釜10の内部温度を制御する。圧力制御部82は、圧力計16の計測値に基づいて、減圧ポンプ70等との協働により、蒸留釜10の内部圧力を制御する。
薬液注入制御部83は、設定されたプログラムに基づいて、第2、3の開閉弁V2,V3との協働により、消泡剤の注入先、注入量及びタイミングを制御する。詳細は後述するが、薬液注入制御部83は、例えば、排水の追加供給時、蒸留水の回収時間が閾値を下回った時、又は蒸留釜10の内部が設定温度に達した時などに、蒸留釜10の内部に消泡剤を注入する処理を制御する。
給液制御部84は、設定されたプログラムに基づいて、第1開閉弁V1との協働により、排水の供給量及びタイミングを制御する。具体的には、給液制御部84は、第1開閉弁V1を開閉することにより、減圧蒸留前に、排水槽20の排水の一部を蒸留釜10に供給し、減圧蒸留中に、残りの排水を複数回に分けて蒸留釜10に追加供給する処理を制御する。
蒸留水回収制御部85は、第2水位計61の計測値に基づいて、圧力制御部82及び第8開閉弁V8との協働により、回収槽60の蒸留水の送水処理を制御する。具体的には、蒸留水回収制御部85は、回収槽60内の蒸留水が設定量に達した時に復水装置50に通じる流路を遮断し、回収槽60の減圧を一時的に解除して蒸留水を浄水槽40に流出させる処理を制御する。
排出制御部86は、設定されたプログラムに基づいて、撹拌機12及び廃棄口14との協働により、濃縮廃液の廃棄処理を制御する。
実施形態の排水処理システム1では、初期の状態において、第1〜第3、第7〜第9の開閉弁V1〜V3,V7〜V9は閉じられ、第4〜第6の開閉弁V4〜V6は開かれている。
<排水処理システム1の運転プロセス>
図3に、この排水処理システム1における基本的な運転プロセスを示す。廃棄処理システムでは、給液工程(ステップS1)、蒸留工程(ステップS2)、煮詰工程(ステップS3)、排出工程(ステップS4)からなる一連の工程により、所定量の排水の浄化処理が行われる。
(給液工程)
図4に、給液工程の詳細を示す。給液工程では、浄化処理する排水を蒸留釜10に供給する処理が行われる。まず、排水槽20に排水が供給される(ステップS11)。そうして、排水槽20に溜まる排水が計量され(ステップS12)、所定量(例えば250L)に達すると排水の供給は停止される。
排水槽20への排水の供給に合わせて第2開閉弁V2が一定時間開かれ、排水槽20の内部に消泡剤が注入される(ステップS13)。これにより、排水槽20の内部での発泡が抑制されるため、安定した排水の計量ができる。更に、予め排水に消泡剤を添加しておくことで、蒸留釜10への供給後から減圧蒸留の前半までの間、発泡を効果的に抑制することができる。
蒸留釜10への排水の供給に先立ち、圧力制御部82によって減圧が開始される(ステップS14)。減圧の開始は、排水の計量等の処理と同時又はその前であってもよい。具体的には、減圧ポンプ70が作動される。それにより、回収槽60及び復水装置50を通じて蒸留釜10の内部が減圧され、蒸留釜10の内部は、回収槽60や復水装置50の内部と共に、予め設定された所定圧(例えば、−80〜−90kPa)まで減圧される。
次に、第1開閉弁V1が所定時間開かれ、圧力差を利用して排水槽20の排水の一部(例えば100L)が蒸留釜10に供給される(ステップS15)。排水の全部を供給するのではなく、排水の一部だけを供給することで、蒸留釜10の内部での排水の水位を低くすることができる。側方から見て、少なくともシャフト12aよりも下方に水位が位置するように設定する。
そうすることで、排水の水面と水蒸気流出路17との間の距離が大きくなるため、発泡しても蒸留水への混入を効果的に抑制できる。加熱機構13との接触面積が相対的に増加するため、熱供給効率も向上する。撹拌機12による撹拌作用も相対的に増加するため、蒸留効率も向上する。
(蒸留工程)
図5に、蒸留工程の詳細を示す。蒸留工程では、まず、撹拌、加熱及び冷却が開始される(ステップS21)。具体的には、モータ12dが駆動され、シャフト12a、掻き取り羽根12b及び撹拌羽根12cが所定の速度で回転する。モータ12dの駆動と同時又はその後に、蒸気供給装置から蒸気が蒸気室13aに供給される。それにより、釜本体11の内部(特に排水)は間接的に加熱され、昇温する。
温度制御部81によって第4開閉弁V4が制御され、釜本体11の内部温度が排水の沸点に相当する設定温度(例えば、60℃)に達すると、釜本体11の内部温度はその設定温度に保持される。温度制御部81は、圧力制御部82との協働により、釜本体11の内部圧力に合わせて設定温度を調整する。設定温度に達すると、排水が沸騰し、多量の水蒸気が発生し始める。発生した水蒸気は、水蒸気流出路17を通って復水装置50の復水室に流入する。
釜本体11の内部温度が設定温度に達する前に、復水装置50の冷却配管52に冷媒が循環供給される。それにより、復水室に流入する水蒸気は間接的に冷却されて液化し、復水室に蒸留水が生じる。生じた蒸留水は、第5配管P5を通じて回収槽60に回収される(ステップS22)。回収槽60に回収された蒸留水は、蒸留水回収制御部85により、回収槽60に断続的に貯留しながら浄水槽40に送られる。
図6に、回収槽60の蒸留水を浄水槽40に送る処理の流れを示す。第2水位計61の計測値に基づいて、蒸留水回収制御部85は、回収槽60に溜まった蒸留水が上限の設定量(例えば7L)に達したか否かを判断する(ステップS51)。そして、その設定量に達した場合には(ステップS51でYES)、蒸留水回収制御部85は、回収槽60の減圧を一時的に解除する(ステップS52)。
具体的には、蒸留水回収制御部85は、第5開閉弁V5を閉じた後、第6開閉弁V6を閉じ、第7開閉弁V7を開けて回収槽60の内部を大気圧に戻した後、第8開閉弁V8を開ける。それにより、回収槽60に溜められた蒸留水は浄水槽40に流出する。蒸留水回収制御部85は、蒸留水が下限の設定量に達したか否かを判断する(ステップS53)。本実施形態の排水処理システム1では、数秒で下限の設定量に達するように設定されている。
そして、蒸留水が下限の設定量に達した場合には(ステップS53でYES)、蒸留水回収制御部85は、回収槽60の減圧を復帰する(ステップS54)。具体的には、第5開閉弁V5及び第6開閉弁V6を開け、第7開閉弁V7及び第8開閉弁V8を閉じる。蒸留工程から煮詰工程の間、これら一連の処理が繰り返し行われる。
釜本体11の内部の排水量は、時間の経過とともに減少していく。そこで、図5に示したように、給液制御部84は、排水槽20に残る排水を複数回に分けて追加供給する(ステップS23)。具体的には、所定のタイミング、所定の回数及び供給量で排水を追加供給する(例えば、2分間隔で10Lの排水を計15回供給)。そうすることで、減圧蒸留中の排水の水位を下限近くの適正な範囲に保持することができ、安定した処理が行える。
(煮詰工程)
排水槽20から所定量の排水全てを蒸留釜10に供給した後は、継続して減圧蒸留が行われる。すなわち、煮詰工程では、撹拌しながら釜本体11の内部温度や内部圧力が一定に保持され、蒸留水が回収される。
(排出工程)
図7に、排出工程の詳細を示す。排出工程では、回収された蒸留水が設定量に達した時に、排出制御部86により、減圧蒸留を停止して釜本体11の底部に残る濃縮廃液を廃棄する処理が行われる。まず、撹拌、加熱及び冷却が停止される(ステップS41)。具体的には、第4開閉弁V4が閉じられて蒸気室13aへの蒸気の供給が停止される。その後、モータ12dが停止される。それと前後して、復水装置50への冷媒の供給も停止される。
そして、減圧ポンプ70が停止され、減圧が停止される(ステップS42)。第7開閉弁V7が開かれ、回収槽60、復水装置50及び蒸留釜10の内部が大気圧に戻される。
このとき、洗浄装置17bにより、水蒸気流出路17に設置されたフィルタ17aの洗浄が行われる。減圧蒸留時にフィルタ17aに汚れが付着して、目詰まりが進むと、蒸留釜10の内部圧力や内部温度が不安定になり、過度な発泡が生じて蒸留水が汚染されるおそれがある。そこで、減圧蒸留を行うたびにフィルタ17aの洗浄を行うことで、間接的に発泡を抑制することができる。
そうした後、廃棄口14が開かれる。撹拌機12が駆動され、その押し出し作用により、濃縮廃液は蒸留釜10の外部に排出される(ステップS43)。そうして、濃縮廃液が排出されると、撹拌機12は停止し、廃棄口14は閉じられ、排水処理システム1は排水処理を行う初期の状態に復帰する。
<排水処理システム1の細部構成>
この排水処理システム1では、減圧蒸留下で発泡性の排水が処理されるため、減圧蒸留中は極めて発泡し易くなっている。しかも、本実施形態の排水処理システム1では、撹拌が行われるため、排水中に空気を巻き込んで発泡が助長される。減圧蒸留中に過度な発泡が生じると、蒸留水が汚染され、浄化処理を適切に行えないおそれがある。そこで、この排水処理システム1では、発泡が効率的かつ効果的に抑制できるように工夫されている。
減圧蒸留中の最適なタイミングで、蒸留釜10の内部に消泡剤が注入される。図8に、そのタイミングチャートを示す。
(設定温度到達時の消泡剤の注入)
減圧蒸留の開始後、最初に釜本体11の内部温度が設定温度に達した時に消泡剤が注入される。具体的には、図9に示すように、薬液注入制御部83は、温度計15の計測値に基づいて蒸留釜10の内部温度が設定温度に到達したか否かを判断する(ステップS61)。そして、設定温度に到達した場合には(ステップS61でYES)、図8にt1で示したように、第3開閉弁V3が一定時間開かれる(例えば10秒)。そうすることで、圧力差による吸引作用により、薬液槽30の消泡剤が蒸留釜10の内部に消泡剤が一定量吸い込まれ、注入される。
釜本体11の内部温度や内部圧力は、温度制御部81や圧力制御部82によって制御されているが、設定温度に到達した直後は不安定であるため、発泡し易い傾向がある。従って、釜本体11の内部温度が設定温度に到達するタイミングに合わせて消泡剤を排水に添加することで、少量の消泡剤の添加で発泡を効果的に抑制することができる。
(追加供給時の消泡剤の注入)
排水を追加供給する時に、蒸留釜10の内部に消泡剤を注入する処理が行われる。具体的には、薬液注入制御部83により、図8にt2で示したように、排水の追加供給時に合わせて第3開閉弁V3が一定時間開かれ(例えば1秒)、蒸留釜10の内部に一定量の消泡剤が注入される。
蒸留釜10の内部に、排水が追加供給された場合、その影響で蒸留釜10の内部圧力や内部温度が変動し、発泡が生じ易くなる。従って、排水を追加供給するタイミングに合わせて消泡剤を排水に添加することで、少量の消泡剤の添加で発泡を効果的に抑制することができる。
(減圧蒸留中の消泡剤の注入)
減圧工程及び煮詰工程における減圧蒸留中に、蒸留釜10の内部に間欠的に消泡剤を注入する処理が行われる。具体的には、薬液注入制御部83により、図8にtiで示したように一定の時間間隔で(例えば180秒)、同図にt3で示したように第3開閉弁V3が一定時間開かれ(例えば0.5秒)、蒸留釜10の内部に一定量の消泡剤が間欠的に注入される。なお、追加供給時の注入とタイミングが重なった場合は、追加供給時の注入が優先されるように設定されている。
そうすることで、減圧蒸留中、少量の消泡剤の添加で、消泡剤の効果を継続させることができ、発泡を効果的に抑制することができる。
(蒸留水回収異常時の消泡剤の注入)
正常な状態であれば、回収槽60で、蒸留水が下限の設定量から上限の設定量に達するまでの時間(回収時間)は安定している。しかし、正常に運転していても、フィルタ詰まりの原因となる成分が蒸留水に含まれるため、処理時間が経つとフィルタ17aは次第に詰まってくる。フィルタ17aの詰まりが進めば、蒸留釜10の内部で過度な発泡が生じ易くなる。その結果、発泡に伴って排水が復水装置50にまで浸入するようになると、蒸留水に混じって排水も回収槽60に回収されるため、回収時間は短くなる。
そこで、そのような場合に臨時的に消泡剤を注入する処理が行われる。図10に、その処理のフローチャートを示す。薬液注入制御部83には、経験上得られた所定の閾値Tr(例えば60秒)が予め設定されている。薬液注入制御部83は、回収時間がその閾値Trを下回るか否かを判断する(ステップS71)。そして、回収時間が閾値Trを下回った場合には(ステップS71でYES)、第3開閉弁V3が所定時間開かれ(例えば10秒)、蒸留釜10の内部に一定量の消泡剤が注入される(ステップS72)。
それにより、蒸留釜10の内部で発生している過度な発泡が抑制され、回収槽60への排水の混入を阻止することができる。
薬液注入制御部83は、制御装置80のカウンタ機能を用い、排水処理の開始後、回収時間が閾値Trを下回った回数をカウントし、記憶する(ステップS73)。そして、薬液注入制御部83は、カウンタのカウント数が3に達したか否かを判断する(ステップS74)。カウント数が3に達した場合(ステップS74でYES)、薬液注入制御部83は、カウンタをリセットするとともに、排水処理を緊急停止する(ステップS75,S76)。
排水処理中に3回連続して回収時間が閾値Trを下回る場合は、フィルタ17aの汚れが進んだ結果、制御による発泡の抑制が困難な状態となっている。従って、この場合は、排水処理が緊急停止され、フィルタ17aの交換を促す警告等が発せられる。なお、カウント数は3回以外の値に変更可能である。
(蒸留水回収時における減圧制御)
上述したように、蒸留工程や煮詰工程では、蒸留水の回収処理が繰り返し行われる。その度に、回収槽60では減圧の解消及び復帰の処理が行われる。蒸留釜10の減圧は回収槽60を介して行われているため、その際、第6開閉弁V6等の開閉を切り替える制御のみで減圧復帰を行うと、その影響で蒸留釜10の内部圧力が変動して発泡が生じ易くなる。
図11に、回収処理での減圧制御と蒸留釜10の内部圧力との関係を概略的に示す。減圧解除状態から直ちに減圧状態に切り替えると、回収槽60での急激な圧力変化の影響により、蒸留釜10の内部で一時的な圧力変動が生じて沸点が低下し、発泡が生じ易くなる。
従って、減圧を復帰させる(減圧状態に戻す)時には次第に減圧させる制御を行うのが好ましい。例えば、図12に示すように、蒸留水回収制御部85が圧力制御部82と協働することにより、第6開閉弁V6の開き制御を一度に行わずに、開閉操作を複数回行った後に開くようにすればよい。そうすれば、プログラムを変更するだけで、次第に減圧させることができる。
減圧を復帰させる時に次第に減圧させることで、それに伴って蒸留釜10の内部の圧力変動が緩やかになり、沸点の低下も軽減される。従って、回収処理に伴って発生する発泡を効果的に抑制することができる。なお、第6開閉弁V6等を開度調整可能にし、その開度の制御によって減圧制御してもよい。
このように、本実施形態の排水処理システム1には、発泡の効果的な抑制を可能にする制御を中心とした機構が組み込まれているので、発泡性の排水でも、設備の複雑化や大型化を招くことなく、安定して浄化処理できる。
なお、本発明にかかる排水処理システムは、上述した実施形態に限定されず、それ以外の種々の構成をも包含する。例えば、蒸留釜10や減圧ポンプ70等、排水処理システムの具体的構成は、仕様に応じて適宜変更可能である。浄水槽は必須でない。排水処理システムの各装置は、近接して配置するのが好ましいが、離れて配置してもよい。
1 排水処理システム
10 蒸留釜
12 撹拌機
13 加熱機構
14 廃棄口
17 水蒸気流出路
20 排水槽
30 薬液槽
40 浄水槽
41 送水ポンプ
50 復水装置
60 回収槽
70 減圧ポンプ
80 制御装置
81 温度制御部
82 圧力制御部
83 薬液注入制御部
84 給液制御部
85 蒸留水回収制御部
86 排出制御部
P1〜P9 第1配管〜第9配管
V1〜V9 第1開閉弁〜第9開閉弁
ST 蒸気供給装置

Claims (6)

  1. 減圧下で蒸留することによって排水を浄化する排水処理システムであって、
    蒸留釜と、
    前記蒸留釜に供給する排水を貯留する排水槽と、
    排水に添加する消泡剤を貯留する薬液槽と、
    前記蒸留釜で気化した水蒸気を冷却する復水装置と、
    前記復水装置で液化した蒸留水を回収する回収槽と、
    前記蒸留釜の内部に通じる減圧ポンプと、
    排水処理を制御する制御装置と、
    を備え、
    前記制御装置は、
    減圧蒸留前の前記蒸留釜に前記排水槽の排水の一部を供給し、減圧蒸留中の前記蒸留釜に残りの排水を複数回に分けて追加供給する給液制御部と、
    排水の追加供給時に、前記蒸留釜内に消泡剤を注入する薬液注入制御部と、
    を有している排水処理システム。
  2. 請求項1に記載の排水処理システムにおいて、
    前記回収槽は、前記復水装置に接続され、当該復水装置から回収する蒸留水を断続的に貯留し、
    前記減圧ポンプは、前記回収槽に接続され、当該回収槽及び前記復水装置を通じて前記蒸留釜の内部を減圧し、
    前記制御装置は、
    前記回収槽内の蒸留水が設定量に達した時に、前記復水装置に通じる流路を遮断し、当該回収槽の減圧を一時的に解除して蒸留水を流出させ、当該回収槽の減圧を復帰させる時に次第に減圧させる蒸留水回収制御部を有している排水処理システム。
  3. 請求項2に記載の排水処理システムにおいて、
    前記薬液注入制御部は、更に、前記回収槽内の蒸留水が前記設定量に達するまでの回収時間を計測し、当該回収時間が閾値を下回った時に、前記蒸留釜内に消泡剤を注入する排水処理システム。
  4. 請求項1に記載の排水処理システムにおいて、
    前記薬液注入制御部は、更に、前記蒸留釜内が設定温度に達した時に、当該蒸留釜内に消泡剤を注入する排水処理システム。
  5. 請求項1に記載の排水処理システムにおいて、
    前記薬液注入制御部は、更に、減圧蒸留中の前記蒸留釜内に、間欠的に消泡剤を注入する排水処理システム。
  6. 請求項1に記載の排水処理システムにおいて、
    前記薬液注入制御部は、更に、前記蒸留釜への排水の供給を開始する前に、前記排水槽内に消泡剤を注入する排水処理システム。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2016195978A (ja) * 2015-04-06 2016-11-24 大成建設株式会社 感染性排水の曝露防止装置
JP2018161600A (ja) * 2017-03-24 2018-10-18 株式会社 アメロイド日本サービス社 廃液減容設備及び油水廃液の減容方法
JP2021058890A (ja) * 2021-01-20 2021-04-15 株式会社アメロイド 油水廃液を減容する方法
CN115779456A (zh) * 2022-12-09 2023-03-14 广州博斯科态生物科技有限公司 一种中药提取浓缩装置

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