[第1実施形態]
図1に示すように、内視鏡10は、例えば気管に挿入する気管支鏡であり、気管内に挿入される挿入部11と、挿入部11の基端部に連設された操作部12と、操作部12に接続されたユニバーサルコード13とを備えている。ユニバーサルコード13は、図示しないプロセッサ装置や光源装置などに接続される。
挿入部11内には、鉗子などの処置具14を挿通するための鉗子チャンネル16が配設されている。鉗子チャンネル16の一端は挿入部11の先端面で開口し、他端は操作部12に設けられた鉗子口口金17(以下、単に口金という)に接続している。また、鉗子チャンネル16は、挿入部11の先端面の開口から血液等の体液や体内汚物等の固形物などを吸引するための経路としても用いられる。操作部12内には、鉗子チャンネル16から分岐した吸引チャンネル(図示せず)が配設されており、この吸引通路は操作部12に設けられた吸引ボタン19に接続している。
吸引ボタン19は、操作部12外において負圧源(図示せず)に接続している。吸引ボタン19は、押圧操作またはその押圧操作の解除により、吸引通路と負圧源との連通/遮断を切り替える。
図2及び図3に示すように、操作部12には、口金17が固定される口金固定部20が形成されている。この口金固定部20に固定された口金17には、処置具14が挿通可能なディスポタイプの鉗子栓(栓体)21が装着されている。鉗子栓21は、処置具14により処置を行う際に体内の体液、汚物、空気等が鉗子チャンネル16内を逆流して口金17から外部に漏れることを防止する。
口金17は、鉗子チャンネル16に通じる内部管路23を有しており、口金固定部20の開口部に固定されている。この開口部から突出している口金17の先端部(以下、口金先端部という)17aは、他の部分よりも一回り細径に形成されている。
図4に示すように、口金先端部17aは、従来の内視鏡に設けられている鉗子口口金の先端部と同じ形状であり、外周面には、円環状に突出するフランジ部24が形成されている。このフランジ部24は、口金先端部17aの先端面に沿って配され、鉗子栓21の一部が係合する。以下、口金先端部17aの開口の奥側に向かう方向を「下方向」といい、この開口の手前側に向かう方向を「上方向」という。また、鉗子栓21の各部の下方向側の端部、端面をそれぞれ下端部、下端面といい、各部の上方向側の端部、端面をそれぞれ上端部、上端面という。
鉗子栓21は、下端面側から内部に口金先端部17aが挿入される栓本体26と、栓本体26に対して回転可能に取り付けられた移動部材27と、スリット部材28と、貫通孔部材29とを有する。栓本体26及び移動部材27は、プラスチックなどの樹脂材料で形成されている。また、スリット部材28、貫通孔部材29は、ゴムなどの樹脂材料で形成されている。
この栓本体26は、本体部31と、把持部32と、固定部33と、アーム部34とを有する。本体部31は、略円筒形状に形成され、内部には貫通孔部材29が配される。また、本体部31の上端部31aにはスリット部材28が組み付けられる。上端部31aの外周面には、嵌合溝31bが形成されている。スリット部材28の内周面には、内側へ突出する円環状の突出部28a(図3参照)が形成されており、この突出部28aが本体部31の嵌合溝31bに嵌合してスリット部材28が本体部31に取り付けられる。
本体部31は、上端部31aの下方に位置する円板部31c(図5参照)と、円板部31cの下方に位置する嵌合面31d(図5参照)とを有する。円板部31cは、外周面が本体部31の他の部分よりも一回り太径に形成されている。嵌合面31dは、移動部材27と回転自在に嵌合する円周面状に形成されている。
図5に示すように、本体部31は、下端面から内部に向かって切り欠かれた開口部31eを有する。開口部31eには、後述するように口金先端部17aが挿入される。開口部31eの端縁は、上方へ向かって徐々に内径が小さくなる方向に傾斜するテーパー面が形成されており、口金先端部17aを本体部31の内部へガイドする。開口部31eの上方には、貫通孔部材29が保持される保持部31f(図3参照)が形成されている。保持部31fは、貫通孔部材29の外周面に嵌合する。また、保持部31fには、図示しない嵌合溝が形成されている。貫通孔部材29の外周面には、外側へ突出する一対の突出部29a(図4参照)が形成されている。貫通孔部材29は、外周面が保持部31fに嵌合するとともに、上端面が本体部31の上端部に当接し、突出部29aが保持部31fの嵌合溝に嵌合して本体部31に内蔵されている。
本体部31は、下端面から円板部31cの下方まで軸方向に沿って切り欠かれた一対の切欠き部31g、嵌合面31dの一部が切り欠かれた組み付け溝31hを有する。切欠き部31gは180°ピッチ間隔で配されている。把持部32は、栓本体26に対して移動部材27を回転させるために設けられており、一方の切欠き部31gの上方、且つ円板部31cの外周面から径方向に突出して配されている。
図6に示すように、組み付け溝31hは、本体部31の軸方向と平行な直線部31iと、本体部31の周方向に沿った円周部31jとが直交するL字状の溝であり、切欠き部31gと所定間隔を置いた位置に直線部31iが、円板部31cの下方に円周部31jが配されている。組み付け溝31hには、後述する移動部材27の抜け止め突起部39が進入する。
一対のアーム部34は、本体部31の切欠き部31gの内部に配され、本体部31の軸方向とほぼ平行に延びる板状に形成されている。アーム部34は、弾性を有し、円板部31cの下端面と繋がっている。
一対の固定部33は、アーム部34の下端部と繋がっており、本体部31の径方向内側に係合爪33aが形成され、外側に移動部材27と当接するラチェット片33bが形成されている。固定部33は、アーム部34の弾性により本体部31の径方向に所定量移動可能となっている。
図3(A)に示すように、固定部33は、後述するように移動部材27からラチェット片33bへ押圧を受けたとき、係合爪33aが開口部31eの内部に進入する固定位置となり、図3(B)に示すように、移動部材27からの押圧が解除されたとき、アーム部34の弾性により係合爪33aが開口部31eから退避して取り外し位置に移動する。固定部33が固定位置にあるとき、係合爪33aが口金先端部17aのフランジ部24下端面に係合して鉗子栓21を口金先端部17aに固定する。一方、固定部33が取り外し位置にあるとき、係合爪33aがフランジ部24との係合を解除して、口金先端部17aに対して鉗子栓21を取り外し可能な状態となる。
図5に示すように、移動部材27は、円板部31cに外径を合わせた円筒部35と、この円筒部35の外周面上端部から突出し、栓本体26に対して移動部材27を回転させるための把持部36とを有する。円筒部35は、本体部31の嵌合面31dと回転可能に嵌合する内周面37と、内周面37の下端部に位置する一対の凹凸面38と、内周面37の上端部に位置する一対の抜け止め突起部39(図4参照)とが形成されている。凹凸面38は、栓本体26の固定部33、アーム部34とともに、ラチェット機構40を構成する。
一対の凹凸面38は、保持位置当接部41、解除位置当接部42、分離位置当接部43と、第1〜第3凸部44〜46とをそれぞれ有する。これらは、180度ピッチで連続して形成されており、鉗子栓21の手前側から視て反時計回り方向に、保持位置当接部41、第1凸部44、解除位置当接部42、第2凸部45、分離位置当接部43、第3凸部46、先程の保持位置当接部41と対面する位置にある保持位置当接部41、・・・(以下繰り返し)という順番で配されている。
抜け止め突起部39は、本体部31の組み付け溝31hの内部を移動する。移動部材27を栓本体26に対して組み付けるとき、組み付け溝31hの直線部31iに抜け止め突起部39の位置を合わせるとともに、移動部材27の内周面37を本体部31の嵌合面31dに嵌合させる。この組み付け溝31hの直線部31iに抜け止め突起部39が進入する着脱位置(分離位置)にあるとき、移動部材27は本体部31の軸方向に移動可能、すなわち栓本体26に対して着脱可能(分離可能)となっている。そして、組み付け溝31hの直線部31iの奥まで抜け止め突起部39を進入させた状態から、鉗子栓21の手前側から視て時計回り方向に移動部材27を回転させると抜け止め突起部39が組み付け溝31hの円周部31jへ進入する。組み付け溝31hの円周部31jが抜け止め突起部39を係止するため、移動部材27が栓本体26に対して離脱することが阻止される。以下、時計回りという場合は鉗子栓の手前側から見たときを基準とする。
一対の保持位置当接部41は、180°ピッチ間隔で互いに対面する位置にあり、固定部33のラチェット片33b同士の間隔よりも狭く配されている。一対の解除位置当接部42は、保持位置当接部41に対して反時計回り方向に所定間隔を置いて配され、且つラチェット片33b同士の間隔よりも広い間隔に配されている。一対の第1凸部44は、保持位置当接部41に対しては微小量、解除位置当接部42に対しては固定部33の移動を阻止する程度の突出量で内側に突出している。
一対の分離位置当接部43は、解除位置当接部42に対して反時計回り方向に所定間隔を置いて配され、且つラチェット片33b同士の間隔よりも広い間隔に配されている。抜け止め突起部39が組み付け溝31hの直線部31iに進入する着脱位置に合わせると、分離位置当接部43がラチェット片33bと対面する。一対の第2凸部45は、解除位置当接部42及び分離位置当接部43に対して固定部33の移動を阻止する程度の突出量で内側に突出している。また、一対の第3凸部46は、分離位置当接部43から保持位置当接部41に向かって徐々に内側へ突出する方向に傾斜するテーパー状に形成されている。
図7に示すように、移動部材27が着脱位置(分離位置)にあるとき、分離位置当接部43とラチェット片33bとが対面するとともに、上述したように、抜け止め突起部39が組み付け溝31hの直線部31iにあるため、移動部材27が栓本体26の軸方向に移動可能であり、栓本体26に対して移動部材27が着脱可能となっている。この着脱位置は、移動部材27が栓本体26に組み込まれるときに最初にセットされる位置である。移動部材27が着脱位置にあるとき、時計回り方向に移動部材27を回転させると、アーム部34の弾性変形により固定部33が第3凸部46を乗り越えて保持位置当接部41とラチェット片33bとが当接する保持位置にすることができる。なお、第3凸部46は、上述したテーパー状に形成されているため、移動部材27を着脱位置から保持位置に移動することは許容するが、保持位置にある移動部材27を反時計回り方向の着脱位置に回転させようとすると、第3凸部46が固定部33を阻止して移動部材27の移動を規制する。
図8に示すように、移動部材27を保持位置にしたとき、保持位置当接部41からの押圧によりアーム部34が弾性変形して固定部33を固定位置に保持させる。この保持位置は、口金先端部17aに鉗子栓21を取り付ける際にセットされる位置である。なお、鉗子栓21の出荷時には、移動部材27はこの保持位置にセットされている。移動部材27が保持位置にあるとき、時計回り方向に移動部材27を回転させて、移動部材27の把持部36を栓本体26の把持部32の位置に合わせると、アーム部34の弾性変形により固定部33が第1凸部44を乗り越えて解除位置当接部42とラチェット片33bとが当接する解除位置にすることができる。
図9に示すように、移動部材27を解除位置にしたとき、固定部33及びアーム部34が移動部材27の押圧から開放され、固定部33は移動部材27による保持から解除される。移動部材27による保持から解除された固定部33は、アーム部34の弾性力により取り外し位置への移動が許容される。この解除位置は、口金先端部17aから鉗子栓21を取り外す際にセットされる位置である。なお、栓本体26の把持部32は、移動部材27を解除位置に移動させたとき、移動部材27の把持部36と重なる位置に配されている。
移動部材27が解除位置にあるとき、反時計方向へ移動部材27を回転させようとしても第1凸部44が固定部33を阻止して移動部材27の移動を妨げる。このように、ラチェット機構40では、移動部材27が保持位置から解除位置へ移動することを許容するとともに、移動部材27が保持位置から解除位置に復帰することを規制する。
さらに、移動部材27が解除位置にあるとき、時計回り方向へ移動部材27を回転させようとしても第2凸部45が固定部33を阻止して移動部材27の移動を規制する。また、反時計方向に移動部材27を回転させようとしても、上述したように第1凸部44が固定部33を阻止して移動部材27の移動を規制する。よって、ラチェット機構40では、解除位置にある移動部材27が着脱位置へ移動することを規制することができるため、栓本体26に対する移動部材27の離脱を防ぐことができる。
図3に示すように、貫通孔部材29には、処置具14を挿通させる円形の貫通孔29bが形成されている。開口部31eから栓本体26の内部へ口金先端部17aが挿入されたとき、貫通孔部材29の下端面は、口金先端部17aのフランジ部24に密着する位置に配されている。
スリット部材28は、略円板状に形成され、その中心にスリット28bを有している。スリット28bは、処置具14が未挿通の状態では、弾性力によって密着状態になって水密・気密状態を保持する。一方、スリット28bは、処置具14を挿通させた状態では、弾性力によって、スリット内周面が処置具14の外周面に密着した状態になり、体液等の逆流による漏れを防止する。貫通孔29b及びスリット28bは、栓本体26の内部に口金先端部17aが挿入されたときに内部管路23と同軸上に配置される。このため、処置具14は、スリット28b、貫通孔29b、及び内部管路23を通って鉗子チャンネル16内に挿入される。
上記構成の鉗子栓21の取り付け及び取り外し処理について説明する。鉗子栓21の移動部材27は、メーカーからの出荷時の段階で保持位置にセットされて、栓本体26と移動部材27とが分離することが規制されている。
先ず、図10に示すように鉗子栓21を押し込むようにして、栓本体26の開口部31eから内部へ口金先端部17aを挿入して図2に示すような取り付け状態にセットする。このとき、貫通孔部材29の下端部が口金先端部17aのフランジ部24の上端面に密着するとともに、係合爪33aが口金先端部17aのフランジ部24を乗り越えてフランジ部24の下端面に係合する(図3(A)に示す状態)。このようにして鉗子栓21が口金17に固定される。
以上で鉗子栓21の取付処理が完了する。そして、挿入部11が患者の気管内に挿入された後、処置具14が鉗子栓21から鉗子チャンネル16に挿入されて各種の処置が施される。処置具14による処置を含む内視鏡10による検査・治療(以下、単に内視鏡検査・治療という)が全て終了した後、鉗子栓21の取り外し処理が開始される。
図11に示すように、移動部材27を保持位置から時計回りに回転させて解除位置にセットする。これにより、係合爪33aとフランジ部24との係合が解除されて、口金17からの鉗子栓21の取り外しが可能となる(図3(B)に示す状態)。次いで、鉗子栓21を上方向に引っ張り操作することにより、口金17から鉗子栓21が取り外される。
移動部材27が解除位置にセットされたときには、固定部33が第1及び第2凸部44,45に移動を阻止される。これにより、移動部材27を時計回り及び反時計回りに回転させることができなくなるので、移動部材27を再び保持位置にセットすることはできない。その結果、口金17に鉗子栓21を固定することができなくなるので、鉗子栓21の再使用が防止される。また、移動部材27を再び着脱位置にセットすることもできない。よって、一度移動部材27を取り外してから再度栓本体26に組み付けることもできないので、鉗子栓の再使用が防止される。
以上のように、簡単な作業だけで、鉗子栓21の取り外し処理を行うことが可能であり、従来の鉗子栓のように、一部を破壊する面倒な作業を行うことなく、且つ鉗子栓21の再使用を確実に防止することができる。また、破壊を伴う操作ではなく、移動部材27を移動させるという操作であるため、鉗子栓の把持部を先に破壊して、鉗子栓の一部分か口金に残り、取り外しを困難にしてしまうような失敗を防ぐことができる。また、栓本体26に対して移動部材27を回転させるための把持部32、36を栓本体26及び移動部材27に設けているので、移動部材27を回転させる動作を確実に行うことができる。
[第2実施形態]
次に、図12ないし図21を用いて本発明の第2実施形態の内視鏡用鉗子栓について説明を行う。上記第1実施形態の鉗子栓21では、出荷時の段階で移動部材27を保持位置にセットするラチェット機構40を備え、この保持位置にセットした状態のまま口金17に固定しているが、第2実施形態では、移動部材の着脱位置(分離位置)と保持位置との間にある使用前位置を有するラチェット機構を備え、出荷時の段階で、この使用前位置に移動部材をセットする。なお、上記第1実施形態と機能・構成上同一のものについては同一符号を付してその説明は省略する。
図12及び図13に示すように、鉗子栓50は、栓本体51と、移動部材52と、スリット部材28と、貫通孔部材29とを備える。栓本体51及び移動部材52は、プラスチックなどの樹脂材料で形成されている。栓本体51は、円板部31cの外周面から突出する指示突起部53、円板部31cに設けられた指標54a,54bを有する点を除けば、第1実施形態の栓本体26と基本的に同じ構成である。なお、指標54a,54bは栓本体51に所定の形状を刻む、または印刷することなどにより形成される。
図14に示すように、移動部材52は、円板部31cに外径を合わせた円筒部55と、この円筒部55の外周面から突出し、栓本体51に対して移動部材52を回転させるための把持部56とを有する。円筒部55は、内周面37と、内周面37の下端部に位置する凹凸面57と、抜け止め突起部39とが形成されている。凹凸面57は、固定部33、アーム部34とともに、ラチェット機構58を構成する。
一対の凹凸面57は、保持位置当接部41、解除位置当接部42、分離位置当接部59、使用前位置当接部60、第1及び第2凸部44,45、第3及び第4凸部61,62とをそれぞれ有する。これらは、180度ピッチで連続して形成されており、反時計回り方向に、保持位置当接部41、第1凸部44、解除位置当接部42、第2凸部45、分離位置当接部59、第3凸部61、使用前位置当接部60、第4凸部62、先程の保持位置当接部41と対面する位置にある保持位置当接部41、・・・(以下繰り返し)という順番で配されている。
一対の分離位置当接部59は、上記第1実施形態の分離位置当接部43と同様に、解除位置当接部42に対して反時計回り方向に所定間隔を置いて配され、且つラチェット片33b同士の間隔よりも広い間隔に配されているが、後述する使用前位置当接部60及び第4凸部62を形成した分範囲が小さく形成されている。抜け止め突起部39が組み付け溝31hの直線部31iに進入する着脱位置(分離位置)に合わせると、分離位置当接部59がラチェット片33bと対面する。
一対の使用前位置当接部60は、分離位置当接部59に対して反時計回り方向に、保持位置当接部41に対して時計回り方向にそれぞれ所定間隔を置いて配され、且つラチェット片33b同士の間隔よりも広い間隔に配されている。一対の第3凸部61は、分離位置当接部59から使用前位置当接部60に向かって徐々に内側へ突出する方向に傾斜するテーパー状に形成されている。一対の第4凸部62は、使用前位置当接部60から保持位置当接部41に向かって徐々に内側へ突出する方向に傾斜するテーパー状であり、且つ第3凸部61よりも突出量が大きく形成されている。
図15に示すように、移動部材52が着脱位置にあるとき、分離位置当接部59とラチェット片33bとが対面するとともに、移動部材52が栓本体51の軸方向に移動可能であり、栓本体51に対して移動部材52が着脱可能になる。この着脱位置は、移動部材52が栓本体51に組み込まれたときに最初にセットされる位置である。移動部材52が着脱位置にあるとき、時計回り方向に移動部材52を回転させると、固定部33が第3凸部61を乗り越えて使用前位置当接部60とラチェット片33bとが対面する使用前位置にすることができる。
図16に示すように、移動部材52を使用前位置にしたとき、ラチェット片33bは、使用前位置当接部60から押圧を受けていないため、固定部33は取り外し位置にある。この使用前位置は、口金先端部17aに鉗子栓50を取り付ける前にセットされる位置である。なお、鉗子栓50の出荷時には、移動部材52はこの使用前位置にセットされている。移動部材52が使用前位置にあるとき、時計回り方向に移動部材52を回転させて、移動部材52の把持部56を指示突起部53の位置に合わせると、固定部33が第4凸部62を乗り越えて保持位置当接部41とラチェット片33bとが当接する保持位置にすることができる。なお、第3凸部61及び第4凸部62は、上述したテーパー状に形成されているため、移動部材52を着脱位置から使用前位置、使用前位置から保持位置に移動することは許容するが、保持位置から使用前位置、使用前位置から着脱位置に回転させようとすると、第3凸部61及び第4凸部62が固定部33を阻止して移動部材52の移動を規制する。
なお、指示突起部53は、移動部材52を保持位置に移動させたとき、移動部材52の把持部56と重なる位置に配されている。この指示突起部53は、把持部56よりも突出量が小さく形成されている。また、指示突起部53の付近には、移動部材52を保持位置にしたことを示す指標54aが付されている。この指標54aとしては、例えば「Lock」という文字から構成される。なお、指標54aとしてはこれに限らず、保持位置を示すマークなどを形成してもよい。
図17に示すように、移動部材52を保持位置にしたとき、上記第1実施形態と同様に、保持位置当接部41からの押圧によりアーム部34が弾性変形して固定部33を固定位置に保持させる。この保持位置は、口金先端部17aに鉗子栓50を取り付け状態にするときセットされる位置である。移動部材52が保持位置にあるとき、時計回り方向に移動部材52を回転させて、移動部材52の把持部56を栓本体51の把持部32の位置に合わせると、上記第1実施形態と同様に、固定部33が第1凸部44を乗り越えて解除位置当接部42とラチェット片33bとが当接する解除位置にすることができる。
図18に示すように、移動部材52を解除位置にしたとき、固定部33及びアーム部34が移動部材52の押圧から開放され、固定部33は移動部材52による保持から解除される。移動部材52を解除位置にしたとき、上記第1実施形態と同様に、移動部材52による保持から解除された固定部33が取り外し位置へ移動する。さらに、上記第1実施形態と同様に、移動部材52が保持位置から解除位置へ移動することを許容するとともに、移動部材52が保持位置から解除位置に復帰することを規制する。この解除位置は、口金先端部17aから鉗子栓50を取り外す際にセットされる位置である。
なお、把持部32は、移動部材52を解除位置に移動させたとき、移動部材52の把持部56と重なる位置に配されている。また、把持部32の付近には、移動部材52を解除位置にしたことを示す指標54bが付されている。この指標54bとしては、例えば「Free」という文字から構成される。なお、指標54bとしてはこれに限らず解除位置を示すマークなどを形成してもよい。
さらに、ラチェット機構58では、上記第1実施形態と同様に、解除位置にある移動部材52が着脱位置へ移動することを規制することができるため、栓本体51に対する移動部材52の離脱を防ぐことができる。
上記構成の鉗子栓50の取り付け及び取り外し処理について説明する。鉗子栓50の移動部材52は、メーカーからの出荷時の段階で使用前位置にセットされて、栓本体51と移動部材52とが分離することが規制されている。
先ず、図19に示すように、栓本体51の開口部31eから内部へ口金先端部17aを挿入してフランジ部24の上端面に貫通孔部材29の下端部を密着させる。このとき、栓本体51の固定部33は、取り外し位置にあるため、口金先端部17aの挿入を妨げない。
図20に示すように、移動部材52を使用前位置から時計回りに回転させて保持位置にセットする。これにより、固定部33が取り外し位置から固定位置に移動して係合爪33aがフランジ部24の下端面に係合する。このようにして鉗子栓50が口金17に固定される。以上で鉗子栓50の取付処理が完了する。
内視鏡検査・治療が全て終了した後、鉗子栓50の取り外し処理を行う際は、図21に示すように、移動部材52を保持位置から時計回りに回転させて解除位置にセットする。これにより、係合爪33aとフランジ部24との係合が解除されて、口金17からの鉗子栓50の取り外しが可能となる。次いで、鉗子栓50を上方向に引っ張り操作することにより、口金17から鉗子栓50が取り外される。
移動部材52が解除位置にセットされたときには、上記第1実施形態と同様に、移動部材52を時計回り及び反時計回り方向に回転させることができなくなり、鉗子栓50の再使用が防止される。これにより、上記第1実施形態と同様の効果が得られる。
また、指示突起部53、及び指標54a,54bを確認することによって、移動部材52が保持位置及び解除位置にあることを容易に知ることができるので、鉗子栓50の取り付け、取り外しの作業を簡単に行うことができる。
[第3実施形態]
次に、図22ないし図31を用いて本発明の第3実施形態の内視鏡用鉗子栓について説明を行う。上記第1及び第2実施形態の鉗子栓21、50では、口金17に取り付けている間、常に固定部33を押圧して固定位置にするラチェット機構40、58を備えているが、第3実施形態では、口金17に取り付けている間は固定部を押圧せず、取り外し処理を行うとき、固定部を押圧して取り外し位置にするラチェット機構を備える。なお、上記第1及び第2実施形態と機能・構成上同一のものについては同一符号を付してその説明は省略する。
図22及び図23に示すように、鉗子栓70は、栓本体71と、移動部材72と、スリット部材28と、貫通孔部材29とを備える。栓本体71は、本体部73、把持部32、固定部75、アーム部76とを有する。本体部73は、後述するカム片78などが下方に配される分、軸方向の寸法が短くなる点を除けば第1実施形態の本体部31と基本的に同じ構成である。
一対のアーム部76は、切欠き部31g(図25参照)の内部に配され、本体部73の軸方向とほぼ平行に延びる板状に形成されている。アーム部76は、弾性を有し、円板部31cの下端面と繋がっている。
図25に示すように、一対の固定部75は、アーム部76の下端部と繋がっており、本体部73の径方向内側に係合爪75aが形成され、径方向外側にラチェット片75b、下端部に被押圧片75cが形成されている。固定部75は、アーム部76の弾性により本体部73の径方向に所定量移動可能となっている。
図24(A)に示すように、固定部75は、後述するように移動部材72から被押圧片75cへの押圧が解除されたとき、係合爪75aが開口部31eの内部に進入する固定位置となり、図24(B)に示すように、移動部材72から被押圧片75cへ押圧を受けたとき、アーム部76の付勢に抗して係合爪75aが開口部31eから退避して取り外し位置に移動する。固定部75が固定位置にあるとき、係合爪75aが口金先端部17aのフランジ部24下端面に係合して鉗子栓70を口金先端部17aに固定する。一方、固定部75が取り外し位置にあるとき、係合爪75aがフランジ部24との係合を解除して、口金先端部17aに対して鉗子栓70を取り外し可能な状態となる。
図25に示すように、移動部材72は、円板部31cに外径を合わせた円筒部77と、被押圧片75cと当接するカム片78と、円筒部77とカム片78とを連結する連結部79a,79bと、把持部36とを有する。円筒部77は、内周面37と、内周面37の下端部に位置する凹凸面80と、抜け止め突起部39とを有する。凹凸面80は、固定部75、アーム部76とともに、ラチェット機構81を構成する。
一対のカム片78は、凹凸面80と所定間隔を置いて配され、着脱位置(分離位置)から、保持位置、及び後述する中間位置までの範囲にあるとき、固定部75の被押圧片75cへの押圧を解除する押圧解除面78a、解除位置にあるとき、被押圧片75cを押圧し、アーム部76の付勢に抗して固定部75を取り外し位置に移動させる押圧面78bとを有する。さらに、カム片78は、開口部31eの外側、且つ円筒部77の下方に配されており、開口部31eへの口金先端部17aの挿入を妨げない。
一対の凹凸面80は、保持位置当接部83、中間位置当接部84、解除位置当接部85分離位置当接部86と、第1凸部87と、段差部88と、第2凸部89とを有する。これらは、反時計回り方向に、分離位置当接部86、第2凸部89、保持位置当接部83、第1凸部87、中間位置当接部84、段差部88、解除位置当接部85という順番で配されている。
一対の保持位置当接部83は、180°ピッチ間隔で互いに対面する位置にあり、固定部75のラチェット片75b同士の間隔に合わせて配されている。一対の中間位置当接部84は、保持位置当接部83に対して反時計回り方向に所定間隔を置いて配され、且つラチェット片75b同士の間隔に合わせて配されている。これにより、ラチェット片75bが保持位置当接部83及び中間位置当接部84と対面する位置にあるとき、固定部75が固定位置にある状態を保持する。一対の第1凸部87は、保持位置当接部83から中間位置当接部84に向かって徐々に内側へ突出する方向に傾斜するテーパー状に形成されている。
一対の解除位置当接部85は、反時計回り方向において中間位置当接部84と隣接する位置に配され、且つ中間位置当接部84よりも径方向外側、すなわちラチェット片75b同士の間隔よりも広い間隔で配されている。これにより、ラチェット片75bが解除位置当接部85と対面する位置にあるとき、固定部75が取り外し位置へ移動することを許容する。中間位置当接部84及び解除位置当接部85の間に位置する段差部88は、固定部75の移動を阻止する程度の長さに形成されている。
一対の分離位置当接部86は、保持位置当接部83に対して時計回り方向に所定間隔を置いて配され、且つラチェット片75b同士の間隔に合わせて配されている。一対の第3凸部89は、分離位置当接部86から保持位置当接部83に向かって徐々に内側へ突出する方向に傾斜するテーパー状に形成されている。
また、連結部79a,79bは、凹凸面80、カム片78の両端部、且つ被押圧片75cと当接する位置に配されている。移動部材72を時計回り方向に回転させていくと一方の連結部79bが被押圧片75cの移動を阻止して移動部材72の回転を規制する。
図26に示すように、移動部材72が着脱位置にあるとき、分離位置当接部86とラチェット片75bとが対面するとともに、移動部材72が本体部73の軸方向に移動可能であり、栓本体71に対して移動部材72が着脱可能になる。このとき、カム片78から被押圧片75cへの押圧が解除されているため、固定部75が固定位置に保持される。この着脱位置は、移動部材72が栓本体71に組み込まれたときに最初にセットされる位置である。移動部材72が着脱位置にあるときに、時計回り方向に移動部材72を回転させると、固定部33が第3凸部89を乗り越えて保持位置当接部83とラチェット片75bとが当接する保持位置になる。
図27に示すように、移動部材72を保持位置にしたとき、着脱位置のときと同様に、カム片78から被押圧片75cへの押圧が解除されているため、固定部75が固定位置に保持される。この保持位置は、口金先端部17aに鉗子栓70を取り付け状態にするときセットされる位置である。移動部材72が保持位置にあるとき、時計回り方向に移動部材72を回転させると、ラチェット片75bが第1凸部87を乗り越えて中間位置当接部84と対面する中間位置になる。
図28に示すように、移動部材72を中間位置にしたとき、保持位置のときと同様に、カム片78から被押圧片75cへの押圧が解除されているため、固定部75が固定位置に保持されている。引き続き、時計回り方向に移動部材72を回転させると、ラチェット片75bが中間位置当接部84、段差部88を通過して解除位置当接部85と対面する解除位置となる。
移動部材72を中間位置から解除位置へ移動させて、ラチェット片75bが段差部88を通過するとき、カム片78が押圧解除面78aから押圧面78bに切り換わる。これにより、カム片78が固定部75を押圧する直前まで、中間位置当接部84がラチェット片75bに当接するため、固定部75を安定して移動させることができる。もし中間位置当接部84が無く、ラチェット片75bが第1凸部87を乗り越えてから所定間隔を置いてカム片78が押圧解除面78aから押圧面78bに切り換わるようにした場合、第1凸部87を乗り越えてから固定部75が押圧面78bに押圧されるまでの間、固定部75の位置がフリーになるため固定位置から取り外し位置への移動が安定しない。また、中間位置当接部84が無くラチェット片75bが第1凸部87を乗り越えた直後にカム片78が押圧解除面78aから押圧面78bに切り換わるようにした場合、固定部75が第1凸部87及び押圧面78bの両方から干渉され、移動を妨げたげられる可能性があるが、本実施形態では、中間位置当接部84を設けたため、固定部75を安定して移動させることができる。
図29に示すように、移動部材72を解除位置にしたとき、カム片78から被押圧片75cが押圧を受けて固定部75が取り外し位置に移動する。この解除位置は、口金先端部17aから鉗子栓70を取り外す際にセットされる位置である。なお、把持部32は、移動部材72を解除位置に移動させたとき、栓本体71の把持部32と重なる位置に配されている。
移動部材72が解除位置にあるとき、反時計方向へ移動部材72を回転させようとしても段差部88が固定部75を阻止して移動部材72の移動を妨げる。このように、ラチェット機構81では、移動部材72が保持位置から解除位置へ移動することを許容するとともに、移動部材72が保持位置から解除位置に復帰することを規制する。
さらに移動部材72が解除位置にあるとき、時計方向へ移動部材72を回転させようとしても連結部79bが固定部75を阻止して移動部材72の移動を妨げる。また、反時計方向に移動部材72を回転させようとしても、上述したように段差部88が固定部75を阻止して移動部材72の移動を規制する。よって、ラチェット機構81では、解除位置にある移動部材72が着脱位置へ移動することを規制することができるため、栓本体71に対する移動部材72の離脱を防ぐことができる。
上記構成の鉗子栓70の取り付け及び取り外し処理について説明する。鉗子栓70の移動部材72は、メーカーからの出荷時の段階で保持位置にセットされ、栓本体71と移動部材72とが分離することが規制されている。
先ず、図30に示すように鉗子栓70を押し込むようにして、栓本体71の開口部31eから内部へ口金先端部17aを挿入して取り付け状態にセットする(図22に示す状態)。このとき、貫通孔部材29の下端部が口金先端部17aのフランジ部24の上端面に密着するとともに、係合爪75aがフランジ部24の下端面に係合する。このようにして鉗子栓70が口金17に固定される。以上で鉗子栓70の取付処理が完了する。
内視鏡検査・治療が全て終了した後、鉗子栓70の取り外し処理を行う際は、上記第1及び第2実施形態と同様に、移動部材72の把持部36を栓本体71の把持部32の位置に合わせて移動部材72を保持位置から時計回りに回転させて解除位置にセットする。図31に示すように、移動部材72を解除位置にセットした状態で鉗子栓70を上方向に引っ張り操作することにより、口金17から鉗子栓70が取り外される。
移動部材72が解除位置にセットされたときには、上記第1及び第2実施形態と同様に、移動部材72を時計回り及び反時計回り方向に回転させることができなくなり、鉗子栓70の再使用が防止される。これにより、上記第1及び第2実施形態と同様の効果が得られる。
[第4実施形態]
次に、図32ないし図38を用いて本発明の第4実施形態の内視鏡用鉗子栓について説明を行う。上記第1〜第3実施形態の鉗子栓21,50,70では回転式のラチェット機構40,58,81が設けられているが、第4実施形態では鉗子栓にスライド式のラチェット機構を設けている。なお、上記第1〜第3実施形態と機能・構成上同一のものについては同一符号を付してその説明は省略する。
図32及び図33に示すように、鉗子栓90は、栓本体91と、移動部材92と、スリット部材28と、貫通孔部材29とを備える。栓本体91は、プラスチックなどの樹脂材料で形成されており、本体部93、固定部94、アーム部95と、凹凸面96とを有する。本体部93は、組み付け溝31hに代えて組み付け溝93aが形成されている点を除けば、第1実施形態の本体部31と基本的に同じ構成である。一対の組み付け溝93aは、切欠き部31gと隣接する位置にあり、嵌合面31dに対して一段凹となり、且つ本体部93の軸方向と平行に配されている。
一対のアーム部95は、切欠き部31gの内部に配され、本体部31の軸方向とほぼ平行に延びる板状に形成されている。アーム部95は、弾性を有し、円板部31cの下端面と繋がっている。
図34に示すように、一対の固定部94は、アーム部95の下端部と繋がっており、本体部31の径方向内側に係合爪94aが形成されている。固定部94は、アーム部95の弾性により本体部31の径方向に所定量移動可能となっている。一対の凹凸面96は、固定部94及びアーム部95に対して本体部31の径方向外側に連続して配されている。
図35に示すように、固定部94は、凹凸面96が後述するように移動部材92からの押圧を受けたとき、係合爪94aが開口部31eの内部に進入する固定位置となり、図36に示すように、移動部材92からの押圧が解除されたとき、アーム部95の弾性により係合爪94aが開口部31eから退避して取り外し位置に移動する。
移動部材92は、プラスチックなどの樹脂材料で形成されており、円板部31cに外径を合わせた円筒部97と、この円筒部97の外周面から突出する一対の把持部98とを有する。円筒部97は、本体部31の嵌合面31dと回転可能に嵌合する内周面99と、内周面99の下端部に位置するラチェット片100と、ラチェット片100の両側に位置する回り止め突起部101とが形成されている。把持部98は、180°ピッチ間隔で互いに対面する位置にあり円筒部97の軸方向と直交する径方向に沿って配される。
回り止め突起部101は、本体部93の組み付け溝93aの内部を移動する。移動部材92を栓本体91に対して組み付け溝93aの位置に回り止め突起部101の位置を合わせるとともに、移動部材92の内周面99を本体部93の嵌合面31dに嵌合させる。組み付け溝93hが回り止め突起部101を係止するため、移動部材92が栓本体91に対して回転することが阻止されるとともに、移動部材92が栓本体91に対して軸方向に沿ってスライドすることができる。
一対のラチェット片100は、180°ピッチ間隔で互いに対面する位置にあり、栓本体91の凹凸面96、アーム部95とともに、ラチェット機構102を構成する。凹凸面96は、保持位置当接部103、解除位置当接部104と、第1及び第2凸部105,106とを有する。これらは、栓本体91の下方から上方に向かって第2凸部106、保持位置当接部103、第1凸部105、解除位置当接部104の順番に配されている。
一対の保持位置当接部103は、移動部材92のラチェット片100同士の間隔よりも広く配されている。一対の解除位置当接部104は、保持位置当接部103の上方の位置に、保持位置当接部103に対して所定間隔を置いて配され、且つラチェット片100同士の間隔よりも狭い間隔で配されている。一対の第1凸部105は、保持位置当接部103に対しては微小量、解除位置当接部104に対してはラチェット片100の移動を阻止する程度の突出量で内側に突出している。
一対の第2凸部106は、固定部94の下端部且つ保持位置当接部103の下方に隣接して配され、保持位置当接部103に対してラチェット片100の移動を阻止する程度の突出量で外側突出している。また、第2凸部106の下端は、上方に向かって徐々に外側へ突出する方向に傾斜するテーパー状に形成されている。
図37に示すように、第2凸部106の下端面にラチェット片100が位置する分離位置にあるとき、移動部材92は栓本体91の下方に移動可能であり、栓本体91に対して移動部材92が分離可能となっている。この分離位置は、移動部材92が栓本体91に組み込まれるときに最初にセットされる位置である。また、このとき、移動部材92の内周面99に合わせてアーム部95を内側へ若干弾性変形させている。そして、移動部材92が分離位置にあるとき、栓本体91に対して移動部材92を上方にスライドさせると、アーム部95の弾性変形によりラチェット片100が第2凸部106を乗り越えて保持位置当接部103とラチェット片100とが当接する保持位置にすることができる。
ラチェット機構102では、移動部材92を保持位置にしたとき、ラチェット片100から保持位置当接部103への押圧によりアーム部95の付勢に抗して固定部94を固定位置に保持する(図35に示す状態)。この保持位置は、口金先端部17aに鉗子栓90を取り付ける際にセットされる位置である。なお、鉗子栓90の出荷時には、移動部材92はこの保持位置にセットされている。移動部材92が保持位置にあるとき、把持部98を引っ張るようにして、上方に移動部材92をスライドさせると、アーム部95の弾性変形によりラチェット片100が第1凸部105を乗り越えて解除位置当接部104がラチェット片100と対面する解除位置にすることができる。
移動部材92を解除位置にしたとき、ラチェット片100からの押圧が解除され、固定部94は移動部材92による保持から解除される(図36に示す状態)。移動部材92による保持から解除された固定部94は、アーム部95の弾性力により取り外し位置への移動が許容される。この解除位置は、口金先端部17aから鉗子栓90を取り外す際にセットされる位置である。なお、円筒部97は、移動部材92を解除位置に移動させたとき、円板部31cと当接する。これにより移動部材92が栓本体91に対して上方に離脱することが規制される。
移動部材92が解除位置にあるとき、下方へ移動部材92をスライドさせようとしても第1凸部105がラチェット片100を阻止して移動部材92の移動を妨げる。このように、ラチェット機構102では、移動部材92が保持位置から解除位置へ移動することを許容するとともに、移動部材92が保持位置から解除位置に復帰することを規制する。
上記構成の鉗子栓90の取り付け及び取り外し処理について説明する。鉗子栓90の移動部材92は、メーカーからの出荷時の段階で保持位置にセットされ、栓本体91と移動部材92とが分離することが規制されている。
次いで、図35に示すように鉗子栓90を押し込むようにして、栓本体91の開口部31eから内部へ口金先端部17aを挿入して取り付け状態にセットする(図32に示す状態)。このとき、貫通孔部材29の下端部が口金先端部17aのフランジ部24の上端面に密着するとともに、係合爪94aが口金先端部17aのフランジ部24を乗り越えてフランジ部24の下端面に係合する。このようにして鉗子栓90が口金17に固定される。以上で鉗子栓90の取付処理が完了する。
内視鏡検査・治療が全て終了した後、鉗子栓90の取り外し処理を行う際は、移動部材92を保持位置から上方にスライドさせて解除位置にセットする。図36に示すように、移動部材92を解除位置にセットした状態で、鉗子栓90を上方向に引っ張り操作することにより、口金17から鉗子栓90が取り外される。移動部材92が解除位置にセットされたときには、移動部材92を上下いずれの方向にもスライドさせることができなくなり、鉗子栓90の再使用が防止される。これにより、上記第1及び第2実施形態と同様の効果が得られる。
[第5実施形態]
次に、図38ないし図44を用いて本発明の第5実施形態の内視鏡について説明を行う。上記第4実施形態の鉗子栓90では保持位置から解除位置へ上方に移動部材92をスライドさせるスライド式のラチェット機構102が設けられているが、第4実施形態では保持位置から解除位置へ移動部材を下方にスライドさせるスライド式のスライド式のラチェット機構を設けている。なお、上記第1〜第4実施形態と機能・構成上同一のものについては同一符号を付してその説明は省略する。
図38及び図39に示すように、鉗子栓110は、栓本体111と、移動部材112と、スリット部材28と、貫通孔部材29とを備える。栓本体111は、プラスチックなどの樹脂材料で形成されており、凹凸面96に代えて凹凸面113が形成されている点を除けば、第4実施形態の栓本体91と基本的に同じ構成である。
図40に示すように、移動部材112は、プラスチックなどの樹脂材料で形成されており、ラチェット片100に代えてラチェット片114が形成されている点を除けば、第4実施形態の移動部材92と基本的に同じ構成である。ラチェット片114は、内周面99の下端部に位置し、ラチェット片114の両側に回り止め突起部101が位置する。
一対のラチェット片114は、180°ピッチ間隔で互いに対面する位置にあり、栓本体111の凹凸面113、アーム部95とともに、ラチェット機構115を構成する。凹凸面113は、保持位置当接部116と、解除位置当接部117と、第1及び第2凸部118,119とを有する。これらは、栓本体111の上方から下方に向かって保持位置当接部116、第1凸部118、解除位置当接部117、第2凸部119の順番に配されている。
一対の保持位置当接部116は、移動部材92のラチェット片114同士の間隔よりも広く配されている。一対の解除位置当接部117は、保持位置当接部116の下方の位置に、保持位置当接部116に対して所定間隔を置いて配され、且つラチェット片114同士の間隔よりも狭い間隔で配されている。一対の第1凸部118は、保持位置当接部116に対しては微小量、解除位置当接部117に対してはラチェット片114の移動を阻止する程度の突出量で内側に突出している。
一対の第2凸部119は、固定部94の下端部且つ解除位置当接部117の下方に隣接して配され、解除位置当接部117に対してラチェット片114の移動を阻止する程度の突出量で外側突出している。
図41に示すように、第2凸部119の下端面にラチェット片114が位置する分離位置にあるとき、移動部材112は栓本体111の下方に移動可能であり、栓本体111に対して移動部材112が分離可能となっている。この分離位置は、移動部材112が栓本体111に組み込まれるときに最初にセットされる位置である。この移動部材112を栓本体111に組み込むときには、例えば治具などを用いて固定部94を固定位置よりも内側に引っ張ってアーム部95を弾性変形させた状態を保持しつつ、移動部材112を分離位置から、第2凸部119、解除位置当接部117、第1凸部118を通過させて保持位置当接部116とラチェット片114とが対面する位置まで移動部材112を移動させる。そして、固定部94を開放するとアーム部95の弾性変形により固定部94が固定位置に移動して保持位置当接部116とラチェット片114とが当接する保持位置にすることができる。
図42に示すように、ラチェット機構115では、移動部材112を保持位置にしたとき、ラチェット片114から保持位置当接部116への押圧によりアーム部95の付勢に抗して固定部94を固定位置に保持する。この保持位置は、口金先端部17aに鉗子栓110を取り付ける際にセットされる位置である。なお、鉗子栓110の出荷時には、移動部材112はこの保持位置にセットされている。移動部材112が保持位置にあるとき、把持部98を押し下げるようにして、下方に移動部材112をスライドさせると、アーム部95の弾性変形によりラチェット片114が第1凸部118を乗り越えて解除位置当接部117がラチェット片114と対面する解除位置にすることができる。
図43に示すように、移動部材112を解除位置にしたとき、ラチェット片114からの押圧が解除され、固定部94は移動部材112による保持から解除される。移動部材112による保持から解除された固定部94は、アーム部95の弾性力により取り外し位置への移動が許容される。この解除位置は、口金先端部17aから鉗子栓110を取り外す際にセットされる位置である。
移動部材112が解除位置にあるとき、上方へ移動部材112をスライドさせようとしても第1凸部118がラチェット片114を阻止して移動部材112の移動を妨げる。このように、ラチェット機構115では、移動部材112が保持位置から解除位置へ移動することを許容するとともに、移動部材112が保持位置から解除位置に復帰することを規制する。なお、第2凸部119は、移動部材112が解除位置にあるとき、ラチェット片114の移動を阻止する。これにより、移動部材112が栓本体111に対して下方に離脱することが規制される。
上記構成の鉗子栓110の取り付け及び取り外し処理について説明する。鉗子栓110の移動部材112は、メーカーからの出荷時の段階で保持位置にセットされ、栓本体111と移動部材112とが分離することが規制されている。
次いで、図42に示すように鉗子栓110を押し込むようにして、栓本体111の開口部31eから内部へ口金先端部17aを挿入して図38に示すような取り付け状態にセットする。このとき、貫通孔部材29の下端部が口金先端部17aのフランジ部24の上端面に密着するとともに、係合爪94aが口金先端部17aのフランジ部24を乗り越えてフランジ部24の下端面に係合する。このようにして鉗子栓110が口金17に固定される。以上で鉗子栓110の取付処理が完了する。
鉗子栓110の取り外し処理を行う際は、移動部材112を保持位置から下方にスライドさせて解除位置にセットする(図43に示す状態)。移動部材112を解除位置にセットした状態で鉗子栓110を上方向に引っ張り操作することにより、口金17から鉗子栓110が取り外される。移動部材112が解除位置にセットされたときには、移動部材112を上下いずれの方向にもスライドさせることができなくなり、鉗子栓110の再使用が防止される。
上記各実施形態では、アーム部及び固定部を栓本体と一体に形成し、付勢手段としてのアーム部の弾性により固定部を固定位置及び取り外し位置の間で移動自在としているが、本発明はこれに限らず、図44に示す鉗子栓120のように、固定部121を栓本体122とは別体で構成し、固定部121と栓本体122との間に付勢手段としてのバネ123を設ける構成としてもよい。この場合、例えば、固定部121は、栓本体122に形成された開口部122aから内部へ突出する固定位置、及び開口部122a内に退避する取り外し位置との間でスライドし、バネ123により固定位置及び取り外し位置のいずれか一方に付勢される構成とし、移動部材124からの押圧によりバネ123の付勢に抗して移動し、移動部材124からの押圧が解除されたときはバネの弾性力により復帰する構成にすればよい。
上記各実施形態では、鉗子チャンネル16に通じる口金17に取り付けられる鉗子栓21,50,70,90,110を例に挙げて説明を行ったが、例えば吸引チャンネル、送気送水チャンネルなどの内視鏡10の内部に配設される各種のチャンネルや管路に通じる口部に取り付けられる内視鏡用の栓体に本発明を適用することができる。
上記各実施形態では、気管に挿入する内視鏡10を例に挙げて説明を行ったが、例えば大腸に挿入される大腸内視鏡等の各種医療用内視鏡や、工業用途などの他の用途に使用される内視鏡などにも本発明を適用することができる。