以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
〔第1実施例〕
図1は、本発明の実施例に係るコンバインの全体を示す側面図である。図2は、本発明の実施例に係るコンバインの全体を示す平面図である。これらの図に示すように、本発明の実施例に係るコンバインは、左右一対の駆動自在な前車輪1,1、左右一対の操向操作自在な後車輪2,2、及び運転部3を有した走行機体を備え、運転部3の後方に配置して走行機体に設けた脱穀装置5及び穀粒タンク6を備え、脱穀装置5の前部から走行機体前方向きに延出するフィーダ7aを有した刈取り部7を備えて構成してある。穀粒タンク6は、脱穀装置5の横側から上方にわたって配備してある。
このコンバインは、稲、麦、トウモロコシなどの収穫作業を行なうものである。すなわち、このコンバインは、植立穀稈を刈取り部7によって刈取り処理し、刈取り穀稈の株元から穂先までの全体をフィーダ7aによって脱穀装置5に供給して脱穀処理し、脱穀装置5から排出される脱穀粒を穀粒タンク6に回収して貯留する。
走行機体について説明する。
走行機体は、前車輪1と後車輪2の間に設けられたエンジン4aを有する原動部4を備え、エンジン4aからの駆動力によって左右一対の前車輪1,1を駆動して自走する。走行機体は、運転部3に設けられた運転キャビン3aを備え、運転部3の運転キャビン内に搭乗して操縦するよう搭乗型になっている。
運転部3には、運転キャビン3aの左右の出入り口3b,3bの一方の出入り口3bの横外側に設けられた乗降用ステップ3c、及び他方の出入り口3bの横外側に設けられた作業用ステップ3dを備えている。乗降用ステップ3cは、階段構造に構成されている。
図3は、エンジン4aの出力を左右一対の前車輪1,1に伝達する走行伝動装置10を示す線図である。この図に示すように、走行伝動装置10は、エンジン4aの出力軸4bの駆動力を伝動ベルト11を介して主の変速機構12(以下、主変速機構12と称する。)の入力軸12aに伝達し、主変速機構12の出力軸12bの駆動力を副変速機構13の入力軸13aに伝達し、副変速機構13の出力ギヤ13bの駆動力を差動機構14に伝達し、差動機構14の左側の出力ギヤ14aの駆動力を、減速機構15を介して左側の前車輪1に伝達し、差動機構14の右側の出力ギヤ14aの駆動力を、減速機構15を介して右側の前車輪1に伝達するように構成してある。
左右の減速機構15は、前車輪1のリム内スペースに入り込むように配備してある。副変速機構13の出力軸13cの一端部に駐車ブレーキ16を取り付けてある。差動機構14の左右一対の出力ギヤ14a,14aを左右の減速機構15の入力軸に連動させる回転伝動軸17に、操向ブレーキ18を取付けてある。
主変速機構12の入力軸12aに、一対のギヤポンプで成る油圧ポンプ20,20を連動させてある。一対の油圧ポンプ20,20は、副変速機構13及び差動機構14を内装するミッションケース21に貯留された潤滑油を取り出すように構成してある。一方の油圧ポンプ20は、ミッションケース21から取り出した潤滑油を、刈取り部7を昇降操作する油圧シリンダ8(図1参照)、刈取り部7の掻込み回転リール7bを昇降操作する油圧シリンダ、及び穀粒タンク6をダンプ操作する油圧シリンダに作動油として供給するよう構成してある。他方の油圧ポンプ20は、ミッションケース21から取り出した潤滑油を、後車輪2を操向操作するパワーステアリング装置に作動油として供給するよう構成してある。
主変速機構12は、入力軸12aにポンプ軸23aが連結している静油圧式の無段変速部22と、無段変速部22のモータ軸24aにサンギヤ25が一体回転自在に連結している遊星変速部26とを備えて構成してある。
無段変速部22は、ポンプ軸23aを有した可変容量形で、かつプランジャ形の油圧ポンプ23、及びモータ軸24aを有したプランジャ形の油圧モータ24を備えて構成してある。遊星変速部26のリングギヤ27は、外周側に設けられた外歯ギヤを備え、この外歯ギヤにより、入力軸12aに一体回転自在に設けられた伝動ギヤ28に噛合い連動している。遊星変速部26のキャリヤ29は、出力軸12bに一体回転自在に連結している。
従って、主変速機構12は、入力軸12aに伝達されるエンジン4aからの一回転方向の駆動力を、無段変速部22に入力してこの無段変速部22において正回転及び逆回転の駆動力に変換して、かつ正回転及び逆回転の駆動力を無段階に変速して出力し、入力軸12aに伝達されるエンジン4aからの一回転方向の駆動力と無段変速部22が出力する正回転及び逆回転の駆動力とを、遊星変速部26に入力してこの遊星変速部26において合成して前進側及び後進側の合成駆動力を発生させ、発生した前進側及び後進側の合成駆動力を副変速機構13に出力する。
副変速機構13は、入力軸13aに一体回転及びシフト操作自在に設けられたシフトギヤ31を備え、シフトギヤ31が備える三つの変速ギヤ部を、出力軸13cが一体回転自在に支持する三つの変速ギヤ32a,32b,32cに係脱操作することにより、高速、中速、低速の三段階の変速状態に変速できるよう構成してある。
つまり、主変速機構12は、入力軸12aによって入力したエンジン4aからの一回転方向の駆動力を、無段変速部22による変速作用及び遊星変速部26による合成作用によって前進側と後進側の合成駆動力に変換して、かつ前進側及び後進側の合成駆動力を無段階に変速して出力軸12bから副変速機構13に出力することにより、左右一対の前車輪1,1を前進側と後進側に切り換えて駆動し、かつ前進側においても後進側においても無段階に変速して駆動する。従って、主変速機構12は、図4に示すように、無段変速部22を変速するだけで、副変速機構13の変速によって設定される高速、中速、低速の三段階の速レンジの変速線L1,L2,L3に沿わせて走行機体の走行方向及び走行速度を変更する。
すなわち、図4は、エンジン4aを設定回転数にアクセルセットした状態における無段変速部22の変速状態と走行機体の走行方向及び走行速度との関係を示す説明図である。図4に示す横軸は、無段変速部22の変速域及び速度位置を示し、横軸の[N]は、無段変速部22の中立位置を示し、横軸の[−max]は、無段変速部22の逆転変速域[R](逆転伝動状態での変速域)での最高速位置を示し、横軸の[+max]は、無段変速部22の正転変速域[F](正転伝動状態での変速域)での最高速位置を示す。横軸の[X]は、無段変速部22の逆転変速域[R]のうちの最高速位置[−max]と中立位置[N」の間に設定した設定中間速位置である。設定中間速位置[X]は、最高速位置[−max]と中立位置[N]の間の最高速位置[−max]寄りの箇所に位置するよう設定してあり、逆転変速域[R]のうちの設定中間速位置[X]より低速側の低速側逆転変速域部[RL]が、逆転変速域[R]のうちの設定中間速位置[X]より高速側の高速側逆転変速域部[RH]より広くなっている。図4に示す縦軸は、走行機体の走行速度を示し、縦軸の横軸と交差する位置[0]は、走行速度が零となる零位置を示し、縦軸の零位置[0]より上側の部位は、前進側の走行速度を示し、縦軸の零位置[0]より下側の部位は、後進側の走行速度を示す。縦軸の零位置[0]より下側の部位及び上側の部位は、零位置[0]から離れるほど走行速度が高速になることを示す。
図4に示す三本の変速線L1,L2,L3のうち、横軸に対する傾斜角が最小である変速線L1は、副変速機構13を低速の変速状態に変速して低速の速度レンジを設定した場合における走行速度の変化を示すものである。三本の変速線L1,L2,L3のうち、横軸に対する傾斜角が中間である変速線L2は、副変速機構13を中速の変速状態に変速して中速の速度レンジを設定した場合における走行速度の変化を示すものである。三本の変速線L1,L2,L3のうち、横軸に対する傾斜角が最大である変速線L3は、副変速機構13を高速の変速状態に変速して高速の速度レンジを設定した場合における走行速度の変化を示すものである。
図4に示すように、高速、中速、低速のいずれの速度レンジを設定した場合においても、無段変速部22を高速側逆転変速域部[RH]に変速することにより、遊星変速部26が後進側の合成駆動力を出力し、走行機体が後進走行する。無段変速部22を高速側逆転変速域部[RH]で減速側に変速していくに伴い、遊星変速部26が出力する後進側の合成駆動力の回転速度が減速していき、後進走行速度が減速していく。無段変速部22を高速側逆転変速域部[RH]で増速側に変速していくに伴い、遊星変速部26が出力する後進側の合成駆動力の回転速度が増速していき、後進走行速度が増速していく。無段変速部22が後進変速域[R]の最高速位置[−max]になると、遊星変速部26が出力する後進側の合成駆動力の回転速度が最高速になり、後進走行速度が最高速になる。
無段変速部22を設定中間速位置[X]に変速すると、遊星変速部26の出力が停止して、走行機体の走行が停止する。
無段変速部22を低速側逆転変速域部[RL]及び正転変速域[F]に変速すると、遊星変速部26が前進側の合成駆動力を出力し、走行機体が前進走行する。無段変速部22を低速側逆転変速域部[RL]で減速側に変速していくに伴い、遊星変速部26が出力する前進側の合成駆動力の回転速度が増速していき、前進走行速度が増速していく。無段変速部22が中立位置[N]になっても、遊星変速部26の出力が停止せず、走行機体が前進走行する。無段変速部22を正転変速域[F]で増速側に変速していくに伴い、遊星変速部26が出力する前進側の合成駆動力の回転速度が増速していき、前進走行速度が増速していく。無段変速部22が正転変速域[F]の最高速位置[+max]になると、遊星変速部26が出力する前進側の合成駆動力の回転速度が最高速になり、前進走行速度が最高速になる。
無段変速部22を正転変速域[F]で減速側に変速していくに伴い、遊星変速部26が出力する前進側の合成駆動力の回転速度が減速していき、前進走行速度が減速していく。無段変速部22が中立位置[N]になっても、遊星変速部26の出力が停止せず、走行機体が前進走行する。無段変速部22を低速側逆転変速域部[RL]で増速側に変速していくに伴い、遊星変速部26が出力する前進側の合成駆動力の回転速度が減速していき、前進走行速度が減速していく。無段変速部22が設定中間速位置[X]になると、遊星変速部26の出力が停止し、走行機体の走行が停止する。
図5は、無段変速部22に対する作動油補給を行なうチャージ装置を示す油圧回路図である。この図及び図3に示すように、チャージ装置は、無段変速部22にポンプ軸23aによって駆動される状態で設けた油圧ポンプ34を備え、この油圧ポンプ34により、ミッションケース21から潤滑油を取り出し、取出した潤滑油を給油路35を介して無段変速部22のチャージ油路36に作動油として供給する。
チャージ油路36に接続されたリリーフ油路37が備える可変リリーフ弁38は、リリーフ圧設定スプリング38aに連動された油圧シリンダ39を備え、油圧ポンプ23と油圧モータ24を接続する一対の駆動回路40,40の回路圧変化にかかわらず、油圧シリンダ39によって自動的にリリーフ圧調節されて回路圧に適応したリリーフ圧を備え、チャージ油路36による駆動回路40への作動油補充を確実に行なわせる。
すなわち、油圧シリンダ39は、リリーフ圧設定スプリング38aの一端側を受け止め支持するシリンダロッド41、及びシリンダロッド41の大径部41aと小径部41bに各別に油圧を作用させる一対の操作油室42a,42bを備えて構成してある。一対の操作油室42a,42bは、一対の給油路43,43を介して一対の駆動回路40,40に各別に接続してある。シリンダロッド41の大径部41aの小径部41bが連結している側での端面で成る受圧面44aの面積と小径部41bの受圧面44bの面積とを、同一又はほぼ同一に設定してある。
無段変速部22が正転状態及び逆転状態に変速されると、一対の駆動回路40,40の一方の駆動回路40の回路圧が他方の駆動回路40の回路圧より高圧になる。無段変速部22が正転状態に変速された場合と逆転状態に変速された場合とでは、回路圧が高圧になる方の駆動回路40が入れ替わる。一対の操作油室42a,42bの一方の操作油室42a,42bに高圧側の駆動回路40から油圧が供給され、他方の操作油室42b,42aに低圧側の駆動回路40から油圧が供給されるが、シリンダロッド41は、高圧側の駆動回路40から供給されて受圧面44a,44bに作用する油圧によってリリーフ圧設定スプリング38aが位置する側に摺動操作され、リリーフ圧設定スプリング38aを受け止め支持して可変リリーフ弁38のリリーフ圧を設定する。シリンダロッド41は、高圧側の駆動回路40の回路圧が高圧になるほど、受圧面44a,44bに作用する油圧の高圧のために、リリーフ圧設定スプリング38aが位置する側により移動する状態で摺動操作された状態でリリーフ圧設定スプリング38aを受け止め支持し、可変リリーフ弁38のリリーフ圧をより高く設定する。一方の操作油室42aに位置するシリンダロッド41の受圧面44aと、他方の操作油室42bに位置するシリンダロッド41の受圧面44bの面積が同じまたはほほ同じであることにより、高圧側となる駆動回路40bが入れ替わっても、シリンダロッド41は、高圧側の駆動回路40bからの油圧により、低圧側の駆動回路40bからの油圧に優先して摺動操作される。
従って、油圧シリンダ39は、高圧側となる駆動回路40bが入れ替わっても、高圧側の駆動回路40bからの油圧によって、低圧側の駆動回路40bからの油圧に優先して駆動されて、高圧側となる駆動回路40の回路圧が高圧になるほど、シリンダロッド41の摺動ストロークが大になるように駆動されて、可変リリーフ弁38のリリーフ圧を設定するのであり、リリーフ油路37は、駆動回路40の回路圧が高圧になるほど高圧のリリーフ圧を備え、駆動回路40の回路圧が高圧になっても、油圧ポンプ34からチャージ油路36に供給される作動油を駆動回路40に流入するようにリリーフしにくくする。
図5は、主変速機構12の変速操作を行なう変速操作装置46を示す油圧回路図である。図6は、主変速機構12の変速操作を行なう変速操作装置46を示す斜視図である。これらの図に示すように、変速操作装置46は、無段変速部22を構成する油圧ポンプ23の斜板に連動された変速シリンダ47、及び変速シリンダ47を一対の操作油路48,48を介して操作する操作弁49の操作部49aに連動機構50を介して連動されたレバー形の変速操作具51を備えて構成してある。
操作弁49は、パイロット油路52を介して給油路35に接続され、油圧ポンプ34からの油圧を変速シリンダ47に供給するよう構成してある。図7に示すように、変速操作具51は、運転座席3eの近くに機体前後方向に揺動移動自在に設けてある。変速操作具51は、運転座席3eの横側に位置するアームレスト53の前部に連設された操作具ガイド54に設けたガイド溝55を機体上下方向に挿通するよう配備されている。
変速操作装置46は、変速操作具51をガイド溝55に沿わせて機体前後方向に人為操作によって移動操作することにより、操作弁49を変速操作具51の操作力によって切り換え操作して変速シリンダ47を駆動及び停止操作し、変速シリンダ47によって油圧ポンプ23の斜板角を変更して無段変速部22を逆転状態、中立状態及び正転状態に変速し、主変速機構12を、前車輪1に後進駆動力を無段階に変速して伝達する後進状態、前車輪1に対する伝動を停止する停止状態、前車輪1に前進駆動力を無段階に変速して伝達する前進状態に変速する。
さらに詳述すると、変速操作具51をガイド溝55の後端側部位55aで移動操作することにより、変速シリンダ47が無段変速部22を高速側逆転変速域部[RH]で変速し、主変速機構12を後進状態に変速できる。
変速操作具51をガイド溝55の後端側部位55aと中間部位55bが接続する部位[ST]に操作すると、変速シリンダ47が無段変速部22を設定中間速位置[X]に変速し、主変速機構12を停止状態に変速できる。
変速操作具51をガイド溝55の中間部位55bで移動操作することにより、変速シリンダ47が無段変速部22を低速側逆転変速域部[RL]、及び正転変速域[F]の低速部位で変速し、主変速機構12を前進状態のうちの低速側であって、作業用の前進状態に変速できる。
変速操作具51をガイド溝55の前端側部位55cで移動操作することにより、変速シリンダ42が無段変速部22を正転変速域[F]の高速部位で変速し、主変速機構12を前進状態のうちの高速側であって、移動用の前進状態に変速できる。
図8は、エンジン4aの回転数調節及びアクセルセットを行なうアクセル操作装置60を示す斜視図である。この図に示すように、アクセル操作装置60は、運転部3に配備されたアクセル操作具としてのアクセルレバー61及びアクセルペダル62、アクセルレバー61の支軸61aから一体回動自在に延出する揺動自在なストッパアーム63、アクセルペダル62のペダルアーム62aとエンジン4aに備えられたアクセル装置64の操作アーム64aとを連動させる連動機構65を備えて構成してある。
アクセルレバー61の支軸61aが機体側に固定された支持部材66に回転自在に支持されており、アクセルレバー61は、支軸61aの軸芯で成るレバー軸芯Yまわりに揺動操作できるようになっている。ペダルアーム62aの基端側に設けた支軸62bが機体側に固定された支持部材に回転自在に支持されており、アクセルペダル62は、支軸62bの軸芯で成るペダル軸芯Zまわりに踏み込み操作できるようになっている。
アクセルレバー61を高速側に揺動操作すると、ストッパアーム63が、レバー軸芯Yまわりにアクセルレバー61と一体に揺動してペダルアーム62aの基部に設けてあるアーム部62cを押圧操作してアクセルペダル62をリターンバネ67に抗して踏み込み側(増速側)に揺動操作し、アクセルペダル62が連動機構65を介してアクセル装置64の操作アーム64aを揺動操作することにより、アクセル装置64をアクセルレバー61の操作位置に対応した速度位置に増速操作できる。
アクセルレバー61を低速側に揺動操作すると、ストッパアーム63がアクセルレバー61と一体に揺動してアーム部62cに対する押圧を解除してリターンバネ67がアクセルペダル62を踏み込み解除側(減速側)に揺動操作し、アクセルペダル62が連動機構65を介してアクセル装置64の操作アーム64aを揺動操作することにより、アクセル装置64をアクセルレバー61の操作位置に対応した速度位置に減速操作できる。
図8,9に示すように、アクセルレバー61の支軸61aに回転体68を一体回転自在に設け、この回転体68に摩擦制動体69によって摩擦制動力を付与するように構成してあり、アクセルレバー61を、揺動操作された任意の操作位置に、アクセルペダル62のリターンバネ67による復元力に抗して保持することができて、かつ、アクセルペダル62を、アクセルレバー61の操作位置に対応した操作位置にストッパアーム63によって受け止め保持することができて、アクセル装置64を、アクセルレバー61の操作位置に対応した速度位置に保持できるようになっている。
ストッパアーム63は、アクセルペダル62の踏み込み解除側への揺動を規制するようアーム部62cに受け止め作用するものだから、アクセルペダル62がアクセルレバー61の操作位置に対応する操作位置にストッパアーム63によって保持された状態であっても、アクセルペダル62は、保持されている操作位置より踏み込み側(増速側)に踏み込み操作できる。
従って、アクセル操作装置60は、アクセルレバー61をアイドリング位置[A]に操作すると、移動走行のアクセル調節及びアクセルセット状態になり、アクセル装置64をアイドリングの速度位置に調節操作し、かつ調節操作した速度位置にアクセル装置64をアクセルセットして、エンジン4aの回転数をアイドリング回転数に調節し、調節したアイドリング回転数を保持する。このとき、アクセル操作装置60は、アクセルペダル62の踏み込み操作により、アクセル装置64をアイドリングの速度位置より高速側に増速操作して、エンジン回転数をアイドリング回転数よりも高い回転数に、最高回転数まで増速調節することを可能し、かつ、アクセルペダル62のリターンバネ67による戻し操作により、アクセル装置64をアイドリングの速度位置に戻し操作して、エンジン回転数をアイドリング回転数に戻し調節することを可能にする。
アクセル操作装置60は、アクセルレバー61を作業位置としての作業操作域[B]に操作すると、作業走行のアクセル調節及びアクセルセット状態になり、アクセル装置64をアクセルレバー61の操作位置に対応した速度位置に調節操作し、かつ調節操作した速度位置にアクセル装置64をアクセルセットして、エンジン4aの回転数を作業走行のための設定回転数に調節し、調節した作業走行のためのエンジン4aの設定回転数を保持する。作業走行のためのエンジン4aの設定回転数としては、エンジン4aのアイドリング回転数と最高回転数との間の低速側の回転数範囲を設定してある。この回転数範囲における最高回転数は、副変速機構13の低速の変速状態において無段変速部22を正転変速域[F]の速度位置[K]に変速することによって走行速度が[V1]となり、副変速機構13の中速の変速状態において無段変速部22を正転変速域[F]の速度位置[K]に変速することによって走行速度が[V2]となるエンジン回転数である。
図6,10,11に示すように、変速操作具51の支軸51aに操作軸が連動された回転ポテンショメータにより、変速操作具51の操作位置を主変速機構12の変速状態として検出する変速検出センサ70を構成し、この変速検出センサ70、及び図8,9に示す如くアクセルレバー61の支軸61aに連動する電動モータで成るアクセルモータ71を備えて、主変速機構12とアクセル操作装置60とを連係させるアクセル連係手段72を構成してある。
アクセル連係手段72は、作業走行の走行速度を現出するものとして設定した設定速度(以下、作業用の設定速度と称する。)より高速側の変速状態に主変速機構12が変速されると、移動走行用に保持するためのものとして設定したアイドリング回転数より高回転数にエンジン回転数を保持するアクセルセット状態にアクセル操作装置60があれば、アクセル操作装置60をアクセルダウン操作し、アクセル操作装置60によって保持されるエンジン回転数をアイドリング回転数にする。
すなわち、図11に示すように、アクセル連係手段72は、変速検出センサ70及びアクセルモータ71を備える他、変速検出センサ70とアクセルモータ71を連係する制御装置73に設けたアクセル制御手段75を備えて構成してある。制御装置73は、マイクロコンピュータを利用して構成されることにより、アクセル制御手段75を備えている。
図8,9に示すように、アクセル検出センサ74は、アクセルレバー61の支軸61aに操作軸が連動された回転ポテンショメータによって構成してあり、アクセルレバー61の操作位置をアクセル操作装置60のアクセルセット状態として検出し、検出情報を制御装置73に出力する。
図8,9に示すように、アクセルモータ71に設けた出力ギヤ71aと摩擦制動体69に設けたギヤ部とが噛合っており、アクセルモータ71は、駆動されることにより、摩擦制動体69をアクセルレバー61のレバー軸芯Yまわりに回転操作して、回転体68を摩擦制動体69との摩擦連動によって回転操作することで、アクセルレバー61を揺動操作する。
アクセル制御手段75は、変速検出センサ70から入力する検出情報を基に、主変速機構12の変速状態が作業用の設定速度より高速側の変速状態であるか否かを判別し、かつアクセル検出センサ74から入力する検出情報を基に、アクセル操作装置60のアクセルセット状態がエンジン回転数をアイドリング回転数より高回転数に保持するアクセルセット状態であるか否かを判別する。アクセル制御手段75は、主変速機構12の変速状態が作業用の設定速度より高速側の変速状態でないと判別した場合、アクセル操作装置60の変速制御を実行しない。
アクセル制御手段75は、主変速機構12の変速状態が作業用の設定速度より高速側の変速状態であると判別し、かつアクセル操作装置60のアクセルセット状態がエンジン回転数をアイドリング回転数より高回転数に保持するアクセルセット状態であると判別した場合、アクセルモータ71を減速側に駆動操作してアクセルレバー61を減速側に操作することにより、アクセル操作装置60をアクセルダウン操作し、アクセル操作装置60によって保持されるエンジン回転数をアイドリング回転数にする。
図6,10,11に示すように、アクセルペダル62の支軸62bに操作軸が連動された回転ポテンショメータにより、アクセルペダル62の操作位置を、アクセル操作装置60の操作状態として検出するペダル検出センサ80を構成し、このペダル検出センサ80、変速モータ76、変速操作具51に連動させた電動モータで成る変速モータ76、及び制御装置73が備える変速制御手段77を備えて、アクセル操作装置60と主変速機構12とを連係させる変速連係手段78を構成してある。
変速連係手段78は、アクセル操作装置60がエンジン回転数を最高回転数に調節する調節状態に操作されると、主変速機構12の変速状態が作業走行のためのものとして設定した設定速度(作業用の設定速度)より高速の変速状態にあれば、主変速機構12を減速変速し、主変速機構12を作業用の設定速度の変速状態にする。
すなわち、図6,7に示すように、変速モータ76に設けた出力ギヤ76aと変速操作具51の支軸51aに相対回転自在に支持される摩擦連動体79に設けたギヤ部とが噛合っており、変速モータ76は、駆動されることにより、摩擦連動体79を変速操作具51の揺動軸芯まわりに回転操作して、変速操作具51を摩擦連動体79との摩擦連動によって揺動操作する。
変速制御手段77は、アクセル検出センサ74から入力する検出情報を基に、アクセル操作装置60の回転数調節状態がエンジン回転数を最高回転数に調節する回転数調節状態であるか否かを判別し、かつ変速検出センサ70から入力する検出情報を基に、主変速機構12の変速状態が作業用の設定速度より高速の変速状態であるか否かを判別する。変速制御手段77は、アクセル操作装置60の回転数調節状態がエンジン回転数を最高回転数に調節する回転数調節状態でないと判別した場合、主変速機構12の変速制御を実行しない。
変速制御手段77は、アクセル操作装置60の回転数調節状態がエンジン回転数を最高回転数に調節する回転数調節状態であると判別し、かつ主変速機構12の回転数調節状態が作業用の設定速度より高速の変速状態であると判別した場合、変速モータ76を減速側に駆動して変速操作具51を減速側に操作することにより、主変速機構12を作業用の設定速度の変速状態に減速変速する。
アクセルレバー61を最高速位置[MAX]に操作してエンジン回転数を最高回転数に調節する場合、アクセルペダル62をストッパアーム63によって踏み込み側に操作してエンジン回転数を最高回転数に調節する。従って、変速制御手段77は、アクセルレバー61を最高速位置[NAX]に操作してエンジン回転数を最高速位置に回転数調節した場合においても、アクセルペダル62によってエンジン回転数を最高回転数に調節した場合と同様に作用する。
従って、作業走行を行なう場合、アクセルレバー61を作業位置としての作業操作域[B]に操作することにより、アクセル操作装置60が作業用の回転数調節状態及びアクセルセット状態になり、アクセル装置64を作業用の速度状態に調節及びアクセルセットして、エンジン回転数を作業用の設定回転数に調節し、調節した設定回転数にエンジン回転数を保持することができ、変速操作具51をガイド溝55の中間部位55bに操作することにより、無段変速部22が作業走行の速度位置になって主変速機構12を作業用の設定速度に変速することができ、副変速機構13を低速の変速状態に変速してある場合、変速線L1の前進側での低速側部位で示される作業用の前進速度が前進走行速度となり、副変速機構13を中速の変速状態に変速してある場合、変速線L2の前進側での低速側部位で示される作業用の前進速度が前進走行速度となる。このとき、変速操作具51をガイド溝55の中間部位55bにおける前端部に操作することにより、無段変速部22が前進変速域[F]の速度位置[K](図4参照)になり、副変速機構13を低速の変速状態に変速してあれば、作業用の前進最高速度[V1](図4参照)になり、副変速機構13を中速の変速状態に変速してあれば、作業用の前進最高速度[V2](図4参照)になる。
このとき、変速操作具51をガイド溝55の前端側部位55cに操作されることがあると、無段変速部22が作業走行の速度位置[K]より高速の速度位置になって主変速機構12が作業用の設定速度より高速側の変速状態になることにより、アクセルレバー61がアイドリング位置[A]より高速側の操作位置に位置していて、アクセル操作装置60がエンジン回転数をアイドリング回転数より高回転数に保持するアクセルセット状態になっていることにより、アクセル操作装置60がアクセル連係手段72によってアクセルダウン操作され、アクセル操作装置60がアクセル装置64を減速操作してエンジン回転数をアイドリング回転数に調節する。
移動走行を行なう場合、アクセルレバー61をアイドリング位置[A]に操作することにより、アクセル操作装置60が、移動走行の回転数調節状態及びアクセルセット状態になり、アクセル装置64を移動用の速度状態に調節及びアクセルセットして、エンジン回転数をアイドリング回転数に調節し、調節したアイドリング回転数にエンジン回転数を保持することができ、アクセルペダル62により、アクセル装置64を増減速操作し、エンジン回転数をアイドリング回転数から最高回転数に至る範囲で調節しながら走行できる。
また、変速操作具51をガイド溝55の前端側部位[55c]に操作することにより、無段変速部22が作業走行の速度位置より高速の速度位置になって主変速機構12を作業用の設定速度より高速度に変速することができ、副変速機構13を低速の変速状態に変速してある場合、変速線L1の前進側での高速側部位で示される移動用の前進速度が前進走行速度となり、副変速機構13を中速の変速状態に変速してある場合、変速線L2の前進側での高速側部位で示される移動用の前進速度で前進走行することができ、副変速機構13を高速の変速状態に変速してある場合、変速線L3の前進側での高速側部位で示される移動用の前進速度で前進走行することができる。
移動走行の際、アクセルレバー61の最高速位置[MAX]への操作により、あるいはアクセルペダル62の踏み込み過ぎにより、エンジン回転数を最高回転数に調節する回転数調節状態にアクセル操作装置60を操作することがあれば、変速操作具51がガイド溝55の前端側部位[55c]に位置していて、主変速機構12が作業用の設定速度より高速の変速状態になっていることにより、主変速機構12が変速連係手段78によって減速変速されて作業用の設定速度の変速状態になり、主変速機構12が作業用の設定速度より高速の変速状態になったままで走行するに比べ、走行速度が速くなることを回避しながら走行できる。
エンジン4aから刈取り部7に動力伝達する伝動系に、刈取り部7に正転動力を伝達する正転クラッチ85、及び刈取り部7に逆転動力を伝達する逆転クラッチ86を設けてある。
図12は、正転クラッチ85及び逆転クラッチ86を切換え操作するクラッチ操作装置を示す平面図である。この図に示すように、クラッチ操作装置は、一本の切換えレバー87、及び切換えレバー87が挿通するガイド溝88を設けたレバーガイド89を備え、切換えレバー87をガイド溝88に沿わせて移動操作することによって正転クラッチ85及び逆転クラッチ86の切換えを行なえるように構成してある。
すなわち、ガイド溝88は、左右一対の前後向き溝部88a,88aと左右一対の前後向き溝部88a,88aの後端部に連通する横向き溝部88bとを備えて構成してある。
切換えレバー87を横向き溝部88bに沿わせて機体横方向に移動操作することにより、切換えレバー87が正転クラッチ85の操作部及び逆転クラッチ86の操作部に対して係脱する。切換えレバー87を一方の前後向き溝部88aに沿わせて機体前後方向に移動操作することにより、切換えレバー87が係合した逆転クラッチ86の操作部を入り位置と切り位置に切換え操作でき、切換えレバー87を一方の前後向き溝部88aの前端部に操作すると、逆転クラッチ86が入り状態になり、切換えレバー87を一方の前後向き溝部88aの後端部に操作すると、逆転クラッチ86が切り状態になる。
切換えレバー87を他方の前後向き溝部88aに沿わせて機体前後方向に移動操作することにより、切換えレバー87が係合した正転クラッチ85の操作部を入り位置と切り位置に切換え操作でき、切換えレバー87を他方の前後向き溝部88aの前端部に操作すると、正転クラッチ85が入り状態になり、切換えレバー87を他方の前後向き溝部88aの後端部に操作すると、正転クラッチ85が切り状態になる。
〔第2実施例〕
図13は、第2実施例の走行伝動装置10を示す線図である。第2実施例の走行伝動装置10は、無段変速部22及び遊星変速部26を備えて主変速機構12を構成しており、この点において第1実施例の走行伝動装置10と同じ構成を備えている。第2実施例の走行伝動装置10は、主変速機構12の入力軸12aと遊星変速部26のリングギヤ27とにわたって設けたHSTクラッチ95及びHMTクラッチ96を備え、この点において第1実施例の走行伝動装置10と異なる構成を備えている。第2実施例の走行伝動装置10は、副変速機構13の構造の点において第1実施例の走行伝動装置10と異なる構成を備えている。第2実施例の走行伝動装置10は、駐車ブレーキを備えず、この点において第1実施例の走行伝動装置10と相違している。第2実施例の走行伝動装置10は、最高速ロックアップ装置97を備え、この点において第1実施例の走行伝動装置10と異なる構成を備えている。
次に、第2実施例の走行伝動装置10について説明する。
HSTクラッチ95は、入り状態に切換え操作されることにより、主変速機構12の入力軸12aと遊星変速部26のリングギヤ27の連動を絶ちながらリングギヤ27を回転しないようにロックするよう作用し、走行伝動装置10をHSTモードに構成する。
HMTクラッチ96は、入り状態に切換え操作されることにより、主変速機構12の入力軸12aと遊星変速部26のリングギヤ27を連動させるよう作用し、走行伝動装置10をHMTモードに構成する。
副変速機構13は、入力軸13aと出力軸13cにわたって設けた二つのギヤ対、及び出力軸13cに一体回転及び摺動自在に設けた一つのシフトギヤ31を備え、シフトギヤ31を二つのギヤ対の出力軸側ギヤ13d,13eに対して係脱操作することにより、低速と高速の二段階の変速状態に切り換わるように構成してある。副変速機構13は、主変速機構12の出力を低速と高速の二段段階に変速して左右一対の前車輪1,1に伝達する。
図14は、走行伝動装置10のHSTモードにおける無段変速部22の速度位置と走行機体の走行方向及び走行速度との関係を示す説明図である。図15は、走行伝動装置10のHMTモードにおける無段変速部22の速度位置と走行機体の走行方向及び走行速度との関係を示す説明図である。図14及び図15に示す横軸は、無段変速部22の変速域及び速度位置を示し、横軸の[N]は、無段変速部22の中立位置を示し、横軸の[−max]は、無段変速部22の逆転変速域[R]での最高速位置を示し、横軸の[+max]は、無段変速部22の正転変速域[F]での最高速位置を示す。図14及び図15に示す縦軸は、走行機体の走行速度を示し、縦軸の横軸と交差する位置[0]は、走行速度が零となる零位置を示し、縦軸の零位置[0]より上側の部位は、前進側の走行速度を示し、縦軸の零位置[0]より下側の部位は、後進側の走行速度を示す。縦軸の零位置[0]より下側の部位及び上側の部位は、零位置[0]から離れるほど走行速度が高速になることを示す。
図14及び図15に示す二本の変速線L1,L2は、エンジン4aを設定回転数にアクセルセットした状態における走行速度の変化を示すものである。二本の変速線L1,L2のうち、横軸に対する傾斜角が小である変速線L1は、副変速機構13を低速状態に変速して低速の速度レンジを設定した場合における走行速度の変化を示すものである。二本の変速線L1,L2のうち、横軸に対する傾斜角が中間である変速線L2は、副変速機構13を高速状態に変速して高速の速度レンジを設定した場合における走行速度の変化を示すものである。
図14に示すように、走行伝動装置10をHSTモードに構成した状態では、副変速機構13によって高速、低速のいずれの速度レンジを設定した場合においても、無段変速部22を逆転変速域[R]に変速することにより、主変速機構12が後進側の駆動力を出力し、走行機体が後進走行する。無段変速部22を逆転変速域[R]で減速側に変速していくに伴い、主変速機構12が出力する後進駆動力の回転速度が減速していき、後進走行速度が減速していく。無段変速部22を逆転変速域[R]で増速側に変速していくに伴い、主変速機構12が出力する後進駆動力の回転速度が増速していき、後進走行速度が増速していく。無段変速部22が後進変速域[R]の最高速位置[−max]になると、主変速機構12が出力する後進駆動力の回転速度が最高速になり、後進走行速度が最高速になる。
無段変速部22を中立位置[N]に変速すると、主変速機構12の出力が停止し、走行機体の走行が停止する。
無段変速部22を正転変速域[F]に変速することにより、主変速機構12が前進側の駆動力を出力し、走行機体が前進走行する。無段変速部22を正転変速域[F]で減速側に変速していくに伴い、主変速機構12が出力する前進駆動力の回転速度が減速していき、前進走行速度が減速していく。無段変速部22を正転変速域[F]で増速側に変速していくに伴い、主変速機構12が出力する前進駆動力の回転速度が増速していき、前進走行速度が増速していく。無段変速部22が正転変速域[F]の最高速位置[+max]になると、主変速機構12が出力する前進駆動力の回転速度が最高速になり、前進走行速度が最高速になる。
図15に示すように、走行伝動装置10をHMTモードに構成した状態では、副変速機構13によって高速、低速のいずれの速度レンジを設定した場合においても、無段変速部22を逆転変速域[R]の最高速位置[−max]に変速すると、主変速機構12の出力が停止し、走行機体の走行が停止する。無段変速部22を逆転変速域[R]及び正転変速域[F]のいずれに変速しても、主変速機構12が前進側の駆動力を出力し、走行機体が前進走行する。無段変速部22を逆転変速域[R]で減速側に変速していくに伴い、主変速機構12が出力する前進駆動力の回転速度が増速していき、前進走行速度が増速していく。無段変速部22を正転変速域[F]で増速側に変速していくに伴い、主変速機構12が出力する前進駆動力の回転速度が増速していき、前進走行速度が増速していく。無段変速部22を前進変速域[F]の最高速位置[+max]になると、主変速機構12が出力する前進駆動力の回転速度が最高速になり、前進走行速度が最高速になる。
図16は、走行伝動装置10のための変速操作装置を示す平面図である。この図に示すように、変速操作装置は、一本のレバー形の変速操作具51、及び変速操作具51が挿通するガイド溝100を設けた操作具ガイド101を備え、変速操作具51をガイド溝100に沿わせて移動操作することによって、走行伝動装置10をHSTモード、HMTモード及び駐車状態に切り換わるように構成してある。
すなわち、ガイド溝100は、機体前後向きのHMT溝部100a及びHST溝部100b、HST溝部100bの中間部とHMT溝部100aの後端部を連通させる中立溝部100cを備えて構成してある。
変速操作具51を中立溝部100cに操作すると、副変速機構13のシフトギヤ31が中立位置になって、副変速機構13が出力を停止するよう中立状態になり、走行機体の走行が停止する。さらに、左右一対の操向ブレーキ18,18が共に入り状態になり、左右一対の前車輪1,1に駐車ブレーキが掛る。
変速操作具51をHMT溝部100aに操作すると、HMTクラッチ96が入り状態になり、かつ副変速機構13のシフトギヤ31が別の副変速操作装置によって選択された高速側や低速側の噛合い位置になって副変速機構13が高速や低速の変速状態になり、走行伝動装置10がHMTモードになる。変速操作具51をHMT溝部100aで機体前後方向に移動操作することにより、無段変速部22が変速し、図15に示す変速線L1及L2に沿って前進走行速度が変化する。変速操作具51をHMT溝部100aの後端部[ST]に操作すると、無段変速部22が逆転変速域[R]の最高速位置[−max]になり、走行機体が走行停止する。変速操作具51をHMT溝部100aの前端部に操作すると、無段変速部22が正転変速域[F]の最高速位置[+max]になり、前進走行速度が最高速になる。
変速操作具51をHST溝部100bに操作すると、HSTクラッチ95が入り状態になり、かつ副変速機構13のシフトギヤ31が別の副変速操作装置によって選択された高速側や低速側の噛合い位置になって副変速機構13が高速や低速の変速状態になり、走行伝動装置10がHSTモードになる。変速操作具51をHST溝部100bで機体前後方向に移動操作することにより、無段変速部22が変速し、図14に示す変速線L1及L2に沿って走行方向及び走行速度が変化する。変速操作具51をHST溝部100bの後端側部100brに操作すると、無段変速部22が逆転変速域[R]になり、走行機体が後進走行する。変速操作具51をHST溝部100bにおける後端側部100brの後端部に操作すると、無段変速部22が逆転変速域[R]の最高速位置[−max]になり、後進走行速度が最高速になる。変速操作具51をHST溝部100bの中間部[ST]に操作すると、無段変速部22が中立位置[N]になり、走行機体が走行停止する。変速操作具51をHST溝部100bの前端側部100dfに操作すると、無段変速部22が正転変速域[F]になり、走行機体が前進走行する。変速操作具51をHST溝部100bにおける前端側部100bfの前端部に操作すると、無段変速部22が正転変速域[F]の最高速位置[+max]になり、前進走行速度が最高速になる。
第2実施例の走行伝動装置10では、変速操作具51をHMT溝部100aの前端部に操作した場合、アクセル連係手段72が作動し、アクセル操作装置60のアクセルダウン操作が行なわれる。
〔第3実施例〕
図17は、第3実施例の走行伝動装置10の一部を示す平面図である。この図に示すように、第3実施例の走行伝動装置10では、前車輪1に制動作用する操向ブレーキ18を、減速機構15の減速ケース内に配備してある。
〔別実施例〕
(1)上記した実施例では、アクセル連係手段72によるアクセル操作装置60のアクセルダウン操作を行なわせる条件である変速機構12の変速状態として、移動走行のための変速状態のうちの低速側の変速状態を設定した例を示したが、移動走行のための変速状態の高速側の変速状態を設定して実施してもよい。
(2)上記した実施例では、アクセル連係手段72がアクセル操作装置60をアクセルダウン操作する際の操作目標のエンジン回転数として、アクセルダウン操作を実行させるか否かを決定するための基準としたエンジン回転数を設定した例を示したが、アクセルダウン操作を実行させるか否かを決定するための基準としたエンジン回転数より低速回転数のエンジン回転数を設定して実施してもよい。
(3)上記した実施例では、アクセル連係手段72がアクセル操作装置60をアクセルダウン操作する際の操作目標のエンジン回転数として、アイドリング回転数を設定した例を示したが、アイドリング回転数より高めのエンジン回転数を設定して実施してもよい。
(4)上記した実施例では、変速連係手段78が変速機構12を減速変速する際の変速目標の変速状態として、作業用の設定速度の変速状態を設定した例を示したが、移動走行のための変速状態のうちの低速側の変速状態を設定して実施してもよい。
(5)上記した実施例では、変速連係手段78が変速機構12を減速変速する際の変速目標の変速状態として、減速変速を実行させるか否かを決定するための基準とした変速状態を設定した例を示したが、減速変速を実行させるか否かを決定するための基準とした変速状態より低速の変速状態を設定して実施してもよい。
(6)上記した実施例では、変速機構12を無段変速が可能なものに構成した例を示したが、有段階に変速するよう構成して実施してもよい。
(7)上記した実施例では、前車輪1を駆動自在に備えた例を示したが、前車輪1を非駆動車輪とし、後車輪2を駆動自在に備えて、あるいは前車輪1及び後車輪2を共に駆動自在に備えて実施してもよい。
(8)上記した実施例では、副変速機構13を備えた例を示したが、副変速機構・を備えずに実施してもよい。
(9)上記した実施例では、走行装置として前車輪1及び後車輪2を備えた例を示したが、クローラ走行装置を備えて実施してもよい。