JP2013186062A - 組成比測定方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】3元系の酸化物の組成比を容易に測定することができる方法を提供する。
【解決手段】第1元素および第2元素の双方または何れか一方と酸素元素とからなる2元系または3元系の酸化物であって各々の組成比が既知であり互いに異なる複数の標準試料それぞれに対してEPMA測定を行って特性X線スペクトルを求め、これら複数の標準試料それぞれの特性X線スペクトルのうちのOKα線スペクトルにおいてピーク強度に対して特定割合の強度となる2つのエネルギー位置E1,E2の中点位置Emを求め、この中点位置Emと組成比との間の関係式を作成する。この関係式を用いることで、第1元素,第2元素および酸素元素からなる3元系の酸化物である対象物のOKα線スペクトルの中点位置から、該対象物の組成比を求める。
【選択図】図1
【解決手段】第1元素および第2元素の双方または何れか一方と酸素元素とからなる2元系または3元系の酸化物であって各々の組成比が既知であり互いに異なる複数の標準試料それぞれに対してEPMA測定を行って特性X線スペクトルを求め、これら複数の標準試料それぞれの特性X線スペクトルのうちのOKα線スペクトルにおいてピーク強度に対して特定割合の強度となる2つのエネルギー位置E1,E2の中点位置Emを求め、この中点位置Emと組成比との間の関係式を作成する。この関係式を用いることで、第1元素,第2元素および酸素元素からなる3元系の酸化物である対象物のOKα線スペクトルの中点位置から、該対象物の組成比を求める。
【選択図】図1
Description
本発明は、EPMAによる組成比測定方法に関するものである。
EPMA(Electron Probe Micro Analyzer)は、加速した電子線を対象物に照射した際に該対象物で発生する特性X線のスペクトルを取得し、その特性X線スペクトルを解析することで、対象物を構成する元素を分析することができる。また、EPMAは、微小径に集束した電子線を対象物に照射することができるので、元素分析の位置分解能が高く、元素濃度分布を求めることができる。
非特許文献1には、様々な2元系の酸化物についてEPMA測定を行って得られた特性X線スペクトルが示されている。また、この非特許文献1には、2元系の酸化物の種類によって(すなわち、酸素元素と結合している相手の元素の種類によって)特性X線スペクトルの形状が異なることが示されている。
非特許文献1には、3元系の酸化物についてのEPMA測定結果は示されていない。EPMAにより3元系の酸化物の元素分析を行う場合、酸素元素と結合している2種の元素の種類の同定は可能ではあるが、これらの2種の元素の比率の解析は困難である。
EPMAにより3元系の酸化物の組成比を測定する方法として以下のような検量線法が考えられる。様々な組成比を有する多数の標準試料を作製し、これら多数の標準試料それぞれについてEPMA測定および化学分析を行って、EPMA測定で得られた特性X線強度と化学分析で得られた組成比との間の関係を表す検量線を作成する。化学分析は、対象物全体の平均的な組成情報しか得ることができないが、正確に元素を定量することができるので、この定量値を真値とすることができる。そして、対象物についてEPMA測定を行って得られた特性X線強度と上記の検量線とに基づいて、その対象物の組成比を得ることができる。
David W. Fisher, "Effect ofChemical Combination on the X-Ray Emission Spectra of Oxygen and Fluorine,"The Journal of Chemical Physics, Vol.42, No.11, pp.3814-3821 (1965)
ところで、上記のようなEPMA測定で得られる特性X線強度と化学分析で得られる組成比との間の関係を表す検量線は、EPMA装置毎に必要であり、また、EPMA測定条件毎に必要である。したがって、上記のような検量線の作成には膨大な手間を要する。
また、EPMA測定で得られる特性X線強度と化学分析で得られる組成比との間の関係は線形性を有していない。なぜなら、対象物に含まれる或る元素で発生した特性X線は、その対象物の内部から外部へ出て来るまでに周囲の同種の元素により吸収されて、対象物の外部にて測定される強度が小さくなるからである。このような線形性を有しない検量線を正確に作成するには、より多数の標準試料についてEPMA測定および化学分析を行う必要があり、この点でも膨大な手間を要することになる。
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、3元系の酸化物の組成比を容易に測定することができる方法を提供することを目的とする。
本発明の組成比測定方法は、第1元素,第2元素および酸素元素からなる3元系の酸化物である対象物の組成比を測定する方法であって、(1) 第1元素および第2元素の双方または何れか一方と酸素元素とからなる2元系または3元系の酸化物であって各々の組成比が既知であり互いに異なる複数の標準試料それぞれに対してEPMA測定を行って特性X線スペクトルを求める標準試料測定ステップと、(2) 複数の標準試料それぞれの特性X線スペクトルのうちのOKα線スペクトルにおいてピーク強度に対して特定割合の強度となる2つのエネルギー位置E1,E2の中点位置Em(=(E1+E2)/2)を求め、この中点位置Emと組成比との間の関係式を作成する関係式作成ステップと、(3) 対象物に対してEPMA測定を行って特性X線スペクトルを求める対象物測定ステップと、(4) 対象物の特性X線スペクトルのうちのOKα線スペクトルにおいてピーク強度に対して特定割合の強度となる2つのエネルギー位置E1,E2の中点位置Emを求め、この中点位置Emと関係式とに基づいて対象物の組成比を求める組成比算出ステップと、を備えることを特徴とする。
本発明の組成比測定方法は、関係式作成ステップおよび組成比算出ステップそれぞれにおいて、ピーク位置が異なる2以上のローレンツィアン形状の足し合わせにより特性X線スペクトルの形状が表されるとして各ローレンツィアン形状を求め、その求めた2以上のローレンツィアン形状を足し合わせたスペクトルに基づいて中点位置Emを求めるのが好適である。
本発明の組成比測定方法では、第1元素がSi元素であってもよいし、第2元素がGe元素であってもよい。また、第1元素または第2元素として、Si,Geの他、Cu,Ca,Ni,Co,Zr,B,V,Zn,Sn,Hf,Th,Mn,Cr,Mg,Al,Ti,Mo,Ta,Nb,Fe,Cd,Pb等、多種の元素が可能である。
本発明によれば、3元系の酸化物の組成比を容易に測定することができる。
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は、本実施形態の組成比測定方法のフローチャートである。本実施形態の組成比測定方法は、第1元素,第2元素および酸素元素からなる3元系の酸化物である対象物の組成比を測定する方法であって、標準試料測定ステップS1,関係式作成ステップS2,対象物測定ステップS3および組成比算出ステップS4を備える。
標準試料測定ステップS1では、第1元素および第2元素の双方または何れか一方と酸素元素とからなる2元系または3元系の酸化物であるN個の標準試料が用意され、これらN個の標準試料それぞれに対してEPMA測定が行われて特性X線スペクトルS1(E)〜SN(E)が求められる。これらN個の標準試料それぞれの組成比は、既知であって、互いに異なる。特性X線スペクトルSn(E)は、N個の標準試料のうち第nの標準試料のものである。ここで、Nは2以上の整数であり、nは1以上N以下の整数であり、EはX線エネルギー値を示す変数である。
関係式作成ステップS2では、各標準試料の特性X線スペクトルSn(E)のうちの酸素元素のKα線スペクトル(OKα線スペクトル)においてピーク強度に対して特定割合の強度となる2つのエネルギー位置E1,E2の中点位置Em(=(E1+E2)/2)が求められ、この中点位置Emと組成比との間の関係式が作成される。特定割合は、任意であるが、例えば50%とされる。この関係式は、第1元素および第2元素の双方または何れか一方と酸素元素とからなる2元系または3元系の酸化物について、その特性X線スペクトルのうちのOKα線スペクトルにおける中点位置Emから組成比Xを求めるためのものである。
対象物測定ステップS3では、対象物に対してEPMA測定が行われて、この対象物の特性X線スペクトルS0(E)が求められる。そして、組成比算出ステップS4では、対象物の特性X線スペクトルのうちのOKα線スペクトルにおいてピーク強度に対して特定割合の強度となる2つのエネルギー位置E1,E2の中点位置Emが求められ、この中点位置Emと上記関係式とに基づいて対象物の組成比が求められる。標準試料測定ステップS1および対象物測定ステップS3では、共通の装置により同一の測定条件でEPMA測定が行われるのが好ましい。
なお、特性X線スペクトルS0(E)〜SN(E)それぞれにリップルが重畳されている場合には、中点位置Emを正確に求めることができない場合がある。そのような場合には、中点位置Emを以下のようにして求めればよい。すなわち、各々のピーク位置が互いに異なる2以上のローレンツィアン形状の足し合わせにより特性X線スペクトルの形状が表されるとして、最小二乗法または準ニュートン法によるフィッティング処理により各ローレンツィアン形状(ピーク位置,ピーク強度および半値幅)を求める。そして、その求めた2以上のローレンツィアン形状を足し合わせたスペクトルに基づいて中点位置Emを求めることができる。また、フィッティング処理の前に、酸素元素のKα線ピークが基準値となるように各特性X線スペクトルを規格化してもよい。
以下では、第1元素がSi元素であって、第2元素がGe元素であるとして、より具体的な例について説明する。この場合、対象物および標準試料それぞれは、一般式Si1−XGeXO2で表される。ただし、0≦X≦1である。
標準試料測定ステップS1では、Ge組成比Xが既知であって互いに異なるN個の標準試料それぞれに対してEPMA測定が行われて特性X線スペクトルS1(E)〜SN(E)が求められる。関係式作成ステップS2では、特性X線スペクトルS1(E)〜SN(E) のうちのOKα線スペクトルにおいてピーク強度に対して特定割合の強度となる2つのエネルギー位置E1,E2の中点位置Emが求められ、この中点位置EmとGe組成比Xとの間の関係式が作成される。この関係式はGe組成比Xの一次関数で表される。
対象物測定ステップS3では、対象物Si1−XGeXO2に対してEPMA測定が行われて、対象物Si1−XGeXO2の特性X線スペクトルS0(E)が求められる。そして、組成比算出ステップS4では、この対象物Si1−XGeXO2の特性X線スペクトルS0(E)のうちのOKα線スペクトルにおいてピーク強度に対して特定割合の強度となる2つのエネルギー位置E1,E2の中点位置Emが求められ、この中点位置Emと上記関係式とに基づいて対象物Si1−XGeXO2のGe組成比Xが求められる。
次に、本実施形態の組成比測定方法の実施例について説明する。ここでは、6個のサンプルを用意した。そのうち5個のサンプル1〜5それぞれは、コア領域にGeがドープされたSiO2ガラスの光ファイバ母材であって、VAD法により作製された。5個のサンプル1〜5それぞれについてICPにより質量分析したところ、サンプル1のGe濃度は0.01%未満であり、サンプル2のGe濃度は3.9%であり、サンプル3のGe濃度は10.6%であり、サンプル4のGe濃度は14.9%であり、また、サンプル5のGe濃度は19.5%であった。
ICPはサンプル全体の平均的な組成情報しか得ることができない。これに対してEPMAは局所的な元素分析をすることができる。そこで、サンプル1〜5それぞれの断面において中心位置を通過するラインに沿ってEPMA測定を行って、そのライン上の分布情報を得て、これに基づいてサンプル1〜5それぞれの断面の中心におけるGe組成比を推定した。その結果、サンプル1のGe濃度は0.01%未満であり、サンプル2のGe濃度は5.0%であり、サンプル3のGe濃度は12.0%であり、サンプル4のGe濃度は24.3%であり、サンプル5のGe濃度は28.8%であった。なお、サンプル1は、Si元素および酸素元素からなる2元系の酸化物と見做し得る。
サンプル6として、Ardrich社製のGeO2(X≧99.9999%)を用いた。なお、サンプル6は、Ge元素および酸素元素からなる2元系の酸化物と見做し得る。
サンプル1〜5については、鏡面研磨を行って、その研磨面に対してEPMA測定を行った。サンプル6については、G2エポキシに樹脂埋めし、クロスセクション・ポリッシャにより断面加工した。
EPMA測定装置として日本電子(株)製JXA-8530Fを使用して、サンプル1〜6それぞれに対してEPMA測定を行った。EPMA測定条件としては、加速電圧は8kVであり、照射電流量は200nAであり、電子ビーム形状は円であり、電子ビーム径は20μmであり、エネルギー範囲は520〜537eVであり、サンプリングタイムは1sであり、積算回数は1回であり、X線分光結晶はTAPであり、PHA条件はベース0.4Vであり、ウィンドウは3.4Vであった。このような条件でEPMA測定を行って、サンプル1〜6それぞれの特性X線スペクトルを得た。また、OKα線ピークが基準値となるように各特性X線スペクトルを規格化した。
図2は、サンプル1の特性X線スペクトルを示す図である。この図に示されるように、この特性X線スペクトルにおいて、521eV付近のピークA、524eV付近のピークB、526eV付近のピークC、および、532eV付近のピークD、が認められる。ピークAは、Si3sとO2pとの混成軌道からO1s軌道に電子遷移する際に発生する特性X線に対応し、ピークBは、Si3pとO2pとの混成軌道からO1s軌道に電子遷移する際に発生する特性X線に対応し、ピークC,Dは、Si3dとO2pとの混成軌道からO1s軌道に電子遷移する際に発生する特性X線に対応する、とされている。この特性X線スペクトルの形状は、4個のローレンツィアン形状の足し合わせにより表すことができる。4個のローレンツィアン形状(ピーク位置,ピーク強度および半値幅)は、準ニュートン法によるフィッティング処理により求められる。
図3は、サンプル1の特性X線スペクトル、準ニュートン法により収束させた後のピークA〜Dそれぞれのローレンツィアン形状、および、これらピークA〜Dそれぞれのローレンツィアン形状を足し合わせたもの、を示す図である。同図に示されるように、EPMA測定を行って得られた実測の特性X線スペクトルは、準ニュートン法により収束させた後のピークA〜Dそれぞれのローレンツィアン形状を足し合わせたものと、よく一致している。したがって、これら4個のローレンツィアン形状を足し合わせたスペクトルを用いて以後の処理をすることで、より正確な組成比測定を行うことができる。
図4は、サンプル1〜6それぞれについてEPMA測定を行って得られた実測の特性X線スペクトルを示す図である。同図から判るように、ピークCのピーク位置が一定であるのに対して、ピークAのピーク位置はGe濃度により異なっている。すなわち、Ge濃度が大きいほど、ピークAのピーク位置は高エネルギー側にシフトしている。
図5は、サンプル1の特性X線スペクトルにおいて、互いに等しい強度となる2つのエネルギー位置の中点位置を各強度で求めて、これら中点位置を繋げた曲線を示す図である。同図中では、OKα線スペクトルにおいてピークCのピーク強度に対して50%の強度となる2つのエネルギー位置をE1,E2とし、これら2つのエネルギー位置E1,E2の中点位置をEmとして示している。Em=(E1+E2)/2 である。
図6は、サンプル1〜6それぞれの特性X線スペクトルについて求めた中間位置EmとGe濃度との関係を示すグラフである。同図に示されるように、Ge濃度の全範囲において、Ge濃度X(wt%)は中間位置Em(eV)に対して一次関数でよく表すことができる。この一次関数は Em=345.82X−181657 なる式で表され、誤差は R2=0.9928 である。一次関数でよく表すことができることから、2つの標準試料(例えば純SiO2試料および純GeO2試料)の特性X線スペクトルに基づいて、Ge濃度Xと中間位置Emとの間の関係を表す関係式を求めることができる。この関係式はGe濃度の全範囲において適用が可能である。
このように、第1元素および第2元素の双方または何れか一方と酸素元素とからなる2元系または3元系の酸化物の特性X線スペクトルのうちのOKα線スペクトルにおいてピーク強度に対して特定割合の強度となる2つのエネルギー位置E1,E2の中点位置Emは、該酸化物の組成比に対して一次関数でよく表される。このことを利用して、本実施形態の組成比測定方法は、N個の標準試料それぞれのOKα線スペクトルの中点位置Emに基づいて、この中点位置Emと組成比との間の関係式(一次関数式)を作成することができる。このとき、N=2でもよい。
そして、本実施形態の組成比測定方法は、この関係式を用いることで、第1元素,第2元素および酸素元素からなる3元系の酸化物である対象物のOKα線スペクトルの中点位置Emから、該対象物の組成比を求めることができる。本実施形態の組成比測定方法は、3元系の酸化物である対象物の組成比を容易に測定することができる。
Claims (4)
- 第1元素,第2元素および酸素元素からなる3元系の酸化物である対象物の組成比を測定する方法であって、
第1元素および第2元素の双方または何れか一方と酸素元素とからなる2元系または3元系の酸化物であって各々の組成比が既知であり互いに異なる複数の標準試料それぞれに対してEPMA測定を行って特性X線スペクトルを求める標準試料測定ステップと、
前記複数の標準試料それぞれの特性X線スペクトルのうちのOKα線スペクトルにおいてピーク強度に対して特定割合の強度となる2つのエネルギー位置E1,E2の中点位置Em(=(E1+E2)/2)を求め、この中点位置Emと組成比との間の関係式を作成する関係式作成ステップと、
前記対象物に対してEPMA測定を行って特性X線スペクトルを求める対象物測定ステップと、
前記対象物の特性X線スペクトルのうちのOKα線スペクトルにおいてピーク強度に対して前記特定割合の強度となる2つのエネルギー位置E1,E2の中点位置Emを求め、この中点位置Emと前記関係式とに基づいて前記対象物の組成比を求める組成比算出ステップと、
を備えることを特徴とする組成比測定方法。 - 前記関係式作成ステップおよび前記組成比算出ステップそれぞれにおいて、ピーク位置が異なる2以上のローレンツィアン形状の足し合わせにより特性X線スペクトルの形状が表されるとして各ローレンツィアン形状を求め、その求めた2以上のローレンツィアン形状を足し合わせたスペクトルに基づいて前記中点位置Emを求める、ことを特徴とする請求項1に記載の組成比測定方法。
- 前記第1元素がSi元素であることを特徴とする請求項1に記載の組成比測定方法。
- 前記第2元素がGe元素であることを特徴とする請求項3に記載の組成比測定方法。
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